DRAW:２３８黙示録の獣機王“キング”　作：人喰い

(238)






───神星樹内部。
『美の間』と、その真下にあたる『基礎の間』を繋ぐ道の一室。


火群「───よし、行くぞ」


赤みがかった黒髪の小柄な少年───火群は一言そういうと、その部屋を後にする。

ニクス「ああ、先を急がねばな」

火群の持つ不死鳥の精霊───ガルドニクスも、真っ赤な和装の裾と金髪ポニーテールを揺らしながら後をついてゆく。

マンティス「………お、おう」

その様子を呆気に取られた様子で見つめる、逆立った赤髪に髭を生やした長身の男───マンティスは、足を止め視線を出入り口とは反対側…斜め下へと移すと、

マンティス「……あの決闘機兵、デュエリストレベルは相当上なハズなんだがなァ…」

呆れ気味に、そう呟いた。
視線の先には、ライフポイントが0になり倒れ伏した決闘機兵が1機。


マンティス「…これが、死の淵から蘇り、進化した【炎王】の力か……。
───ケッ！…まぁせいぜい、今のうちは利用させてもらうか」


遅れて、マンティスも火群たちの後をついてゆく。


３人が目指すは───和泉の囚われている『美の間』。


神星樹の決闘者達が、今まさに、生命の樹の中心部であるその地へと集結しようとしていた───















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２３８───
《黙示録の獣機王“キング”》














〜神星樹内部・峻厳の間←→慈悲の間〜




明日人【LP 2000】
(モンスター)
『森羅の神芽 スプラウト』[DEF 100]
(魔法)
『森羅の霊峰』(フィールド)
伏せ:0
手札:1
墓地:ティタニアル、ハイペリュトン、スプラウト、コピープラント、ロンファ、マルデル、森羅の施し、ワンフォーワン
除外:薔薇恋人、森羅の滝滑り


グングニール【LP 8000】
(モンスター)
『氷結界の龍 グングニール』[ATK 2500]
『氷結界の虎将 ウェイン』[ATK 2100]
『氷結界の虎将 ライホウ』[ATK 2100]
(魔法)
『氷結界の晶壁』(永続)
伏せ:0
手札:0
墓地:霜精、伝道師、守護陣、三方陣、一滴
除外:照魔師、氷結界(罠)

明日人「───『セリオンズ“リリー”ボレア』の効果！！」


《セリオンズ“リリー”ボレア/Therion "Lily" Borea》 †
効果モンスター
星８/風属性/植物族/攻2400/守2500
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分の墓地の、「セリオンズ」モンスターまたは植物族モンスター１体を対象として発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、対象のモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(2)：自分の手札・フィールドからカード１枚を墓地へ送って発動できる。
デッキから「セリオンズ」魔法・罠カード１枚を手札に加える。
(3)：このカードを装備した「セリオンズ」モンスターは、攻撃力が７００アップし、このカード名の(2)の効果を得る。


明日人「このカードを手札から特殊召喚し───墓地の『神樹獣ハイペリュトン』を装備する！！
現れろ！『セリオンズ“リリー”ボレア』！！」

『セリオンズ“リリー”ボレア』[ATK 2400]


グングニール「…今更そんなモンスター1体出てきたところで───」

明日人「───バトルフェイズ」

機兵の言葉を遮る形で明日人はフェイズの移行を宣言する。

◉バトルフェイズ◉

明日人の視界には、先程から明日人のモンスター効果を封じている1体のモンスターしか見えていない───

明日人「…行け…！『セリオンズ“リリー”ボレア』！！『氷結界の虎将 ライホウ』を攻撃しろッ！！」

ライホウが居る限り、明日人が場のモンスターの効果を発動する為には手札を一枚捨てなければならず、既に明日人は手札を全て使い切ってしまっていた。


『セリオンズ“リリー”ボレア』
[ATK 2400]
───VS───
[ATK 2100]
『氷結界の虎将 ライホウ』


速攻。
神樹獣の魂を宿したリリーボレアによる攻撃。
地を抉るほどの強靭な薔薇による乱打を受け、虎将は破壊され超過ダメージが機兵に襲いかかる。


グングニール「……ッ！」【LP 8000→7700】

だが大したダメージではない。
それどころか、明日人の場には、もう攻撃できるモンスターはいない。
しかし───

◉メインフェイズ２◉

ライホウによる束縛は解かれ、モンスター効果の適用が可能となる───

明日人「“リリー”ボレアに装備されたハイペリュトンを墓地へ送り───“リリー”ボレアの更なる効果！！」


(2)：自分の手札・フィールドからカード１枚を墓地へ送って発動できる。
デッキから「セリオンズ」魔法・罠カード１枚を手札に加える。


明日人「俺がデッキから手札に加えるのは───『円盤闘技場 セリオンズ・リング』！！」


《円盤闘技場
えんばんとうぎじょう
セリオンズ・リング/Therion Discolosseum》 †
フィールド魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：このカードの発動時の効果処理として、デッキから「セリオンズ」モンスター１体を手札に加える事ができる。
(2)：１ターンに１度、自分のモンスターが戦闘で破壊される場合、
代わりにデッキから「セリオンズ」カードまたは「無尽機関アルギロ・システム」１枚を墓地へ送る事ができる。
(3)：１ターンに１度、自分または相手のモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、
自分の墓地の「セリオンズ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。


明日人「そしてセリオンズ・リングを発動！！」


宣言と共に、二人の闘う足場が競り上がり、円形の闘技場が空中で留まった。

グングニール「…！」

更に地中から現れたチューブが円盤闘技場に繋がり、辺りに炎が噴き上がる。
そこで向かい合うふたりは、まさしく剣闘士───

明日人「このカードの発動時、俺はデッキから『セリオンズ“キング”レギュラス』を手札に加える！！」[手札 1]

手札に加えたのは、王の名を冠するモンスター。

グングニール「“キング”レギュラスだと…ッ…！？
だが…ッ、貴殿にそのカードを扱うことはできない…！！」

機兵の言う通り、このカードを使うための条件は揃っていない。

明日人「───…っ…」

グングニール「…無駄な足掻きはよせ…！！───貴殿は！！この大樹も！！仲間も！！護れず散ってゆくのだ！！」

明日人「……ハァ……ハァ…ッ」

身体も、限界が近い。
機兵の言う通り、無駄な足掻きなのかもしれない。

明日人「…いや、違う」

なにか。
なにかあるはずだ───


明日人「───」


この状況を打破する、最後の1ピースが───

明日人「───」


───そう思った、その時。




『───大樹の護り手よ』




どこからともなく───声。



明日人「……！？誰───」

辺りを見渡すが、この空間には明日人とグングニールの機兵、二人だけだ。


『───我は、この“樹”に宿る大いなる意思───』


その声は、神星樹を通じて明日人の脳内に直接発せられていた。


明日人「……神星樹の───…！？」


『───君の“意思”が聞きたい』


明日人「……ッ…俺の……意思…？」

『君がデュエルにかける───思いを聞かせてくれ」

明日人「───」

『───この決闘が、最後になるか。
それとも───新たな一歩となるか』

明日人「俺の───」


『───その“意思”に懸かっている』


明日人「───俺のデュエルの始まりは、『勝ちたい』だった」

炎のような少年に追いつきたくて、追い越したくて、始めたデュエル。
明日人のデュエルの原点は───そこにあった。

明日人「けど、剛田との一件、植物園での終焉の焔との初対面、権利戦…、WDCS予選……、思えば、火群とデュエルする様になってから負けばっかだ」

『───』

明日人「それから合宿で少しは強くなったと思ったら……学校襲撃の時は結局スッキー先生に迷惑かけちまった───」

『───』


明日人「───だから強くなりたい！！」

『───目の前の敵を、撃ち倒す為にか？』

明日人「───違う！！護りたいんだ！！今度こそ！！俺が望む力は、そのための力だ！！！」


『───』


明日人「それを気付かせてくれたヤツらの為にも！！こんなところで…！！氷漬けになってたまるか！！」


『───』


しばしの沈黙を経て、


『───ならば、示してみろ』


神星樹の意思は、一言そう言って、完全に姿を消した。

明日人「───！」



瞬間。


正面に、円環が現れ───


───明日人のEXデッキに輝きが灯った。


明日人「───俺は」

円環は8方向に向いた矢印から成っており、

明日人「『森羅の神芽スプラウト』と───」

その“意味”は分からずとも、

明日人「『セリオンズ“リリー”ボレア』を───」


“どうすればいいか”の答えだけは、直感で感じる事ができた。



明日人「───“リンクマーカー”にセット！！



宣言と同時に、円環を形成する8つの内2つ、右下と左下の矢印が赤く光輝く───


明日人「全部は護れないかもしれない───だからせめて……俺の手の届く範囲くらいは…ッ！！護ったらぁ！！」

EXデッキに宿った新たなカードを天高く掲げ、


明日人「───リンク召喚！！」


力強く、叫ぶ。


明日人「現れろ！！踊り実る豊穣の果実───『森羅の舞踏娘 ピオネ』！！」


現れたのは、なんとも妖艶な、踊り子。
ところどころに葡萄の果実のあしらわれた和装を身に纏い踊り舞う姿は、見るもの全てを魅了する程の美しさだった───


『森羅の舞踏娘 ピオネ』[ATK 1200]


グングニール「…リンク……召喚だと……ッ…！？何故、貴殿の様な者が───」

明日人「『森羅の舞踏娘 ピオネ』の効果発動！！」


《森羅
しんら
の舞踏娘
ぶとうこ
ピオネ/Sylvan Dancepione》 †
リンク・効果モンスター
リンク２/風属性/植物族/攻1200
【リンクマーカー：左下/右下】
植物族モンスター２体
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
自分のデッキの上からカードを３枚までめくる。
その中に植物族モンスターがあった場合、その内の２体までを選んで特殊召喚できる。
残りのカードは墓地へ送る。
この効果で特殊召喚したモンスターはリンク素材にできない。
(2)：自分の墓地の植物族モンスター１体を対象として発動できる。
このカードのリンク先のモンスターのレベルはターン終了時まで、対象のモンスターと同じになる。


明日人「俺はデッキの上から３枚のカードをめくる！！」


『森羅の隠蜜 スナッフ』

『森羅の施し』

『森羅の賢樹 シャーマン』


明日人「その中の植物族モンスター2体───スナッフとシャーマンを、ピオネのリンク先に特殊召喚する！！」

『森羅の隠蜜 スナッフ』[DEF 400]☆1

『森羅の賢樹 シャーマン』[DEF 2100]☆7


グングニール「…リンクモンスターを起点に更なる展開を……だがッ！見たところ、その効果で特殊召喚したモンスターはリンク素材にできず、レベルもバラバラだ！！
その程度の壁モンスターをいくら並べようと───」

無駄な足掻きに変わりはない。そう言いかけたところで、

明日人「───それは、どうかな」

明日人は僅かに笑みを浮かべ、お決まりのセリフを口にする。

グングニール「───！」

明日人「墓地の『椿姫 ティタニアル』を対象に、ピオネの更なる効果…発動ッ！！」


(2)：自分の墓地の植物族モンスター１体を対象として発動できる。
このカードのリンク先のモンスターのレベルはターン終了時まで、対象のモンスターと同じになる。


明日人「ティタニアルのレベルは８───よってリンク先のスナッフとシャーマンのレベルは……８となる！！」

『森羅の隠蜜 スナッフ』[DEF 400]☆1→8

『森羅の賢樹 シャーマン』[DEF 2100]☆7→8

グングニール「……ッ…レベル８のモンスターが……２体…ッ！！」

明日人「行くぜ…！！俺はレベル８となったスナッフとシャーマンで───オーバーレイ！！」

明日人の意思に応えるように、2体のモンスターは光となって点高く登ってゆく───


明日人「───強大な力を蓄えし守護精霊よッ！その強固なる意思で大地を揺るがせ！！
現れろ！『森羅の守神 アルセイ』！！」


《森羅
しんら
の守神
もりがみ
アルセイ/Alsei, the Sylvan High Protector》 †
エクシーズ・効果モンスター
ランク８/光属性/植物族/攻2300/守3200
レベル８モンスター×２
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：１ターンに１度、カード名を１つ宣言して発動できる。
自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合、そのカードを手札に加える。
違った場合、めくったカードを墓地へ送る。
(2)：自分のデッキのカードが効果で墓地へ送られた場合、
このカードのＸ素材を１つ取り除き、フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキの一番上または一番下に戻す。


激しい地鳴りと共に現れたのは、明日人の所有する精霊のカードにして、エースモンスター。
全身を植物で覆われた白き獣は、左右に雄々しく伸びた巨大な角を振り上げ、雄叫びを上げる。


『ガルォォォォオォォォォッッ！！！』

『森羅の守神 アルセイ』[DEF 3000]


明日人「ハァ…ッ…！ハァ……ッ！
頼むぜ……先生！！」

アルセイ「…明日人、よく耐えた。後はワタシに任せるのだ」


グングニール「…何故だ…ッ…身体はもう限界を迎えつつあるはず……なのに何故…ッ！」

明日人「アルセイの…ッ効果発動！！」


(1)：１ターンに１度、カード名を１つ宣言して発動できる。
自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合、そのカードを手札に加える。
違った場合、めくったカードを墓地へ送る。


この時点で明日人のデッキトップはわからない。
トップのカードを墓地へ送るために、何を宣言しても良い。

明日人「…機械のお前にはわかんねーだろうな」

グングニール「…ッ」

明日人「何度倒れても立ち上がる。
俺たち人間の───意地ってもんはな」

この時、明日人の脳裏に、一人の少年の姿が浮かんだ。

明日人「…俺が宣言するのは───」


なあ───火群。

これで少しは、並び立てたかよ───



明日人「───『炎王神獣 ガルドニクス』」



宣言したのは───親友の魂。

明日人にとって───最大の壁であり目標。


グングニール「───！」


宣言と同時に宙を舞った明日人のデッキトップが、立体映像により両者に公開される。


明日人「デッキトップのカードは───『ギガプラント』。
当然、墓地へ送られる───」

そして、この瞬間。

明日人「───『森羅の守神 アルセイ』の更なる効果！！」

(2)：自分のデッキのカードが効果で墓地へ送られた場合、
このカードのＸ素材を１つ取り除き、フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキの一番上または一番下に戻す。


明日人「アルセイのオーバーレイユニットを1つ使い───グングニール！！お前にはEXデッキに帰ってもらうぜ！！」

グングニール「…ッ…！！」

盤面の氷結界の龍に対し放たれた巨大な植物の幹は、地を這い、大地を揺るがし、割れた大地へと氷龍を飲み込んだ───

グングニール「おの…れェェ…ッ！！」

明日人「───まだだ！！俺は手札の『セリオンズ“キング”レギュラス』の効果発動ッ！！」

(1)：自分の墓地の、「セリオンズ」モンスターまたは機械族モンスター１体を対象として発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、対象のモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

明日人「このカードを手札から特殊召喚し───墓地の“リリー”ボレアは“キング”レギュラスへと装備される…ッ！
現れろ！！闘技場を制す黙示録の獣機王！！
『セリオンズ“キング”レギュラス』！！」

満を持して闘技場へ降り立ったのは───機械の身体に獅子の魂を宿した獣機王。
その圧倒的な存在感は、従える明日人すらも気圧されそうになるレベルのものだった。


『セリオンズ“キング”レギュラス』[DEF 1600]


明日人「…こいつは凄いな。想像以上だ…！
頼りにしてるぜ…！新入りさん！」

獣機王の腕は“リリー”ボレアの身体の一部を模した武具で強化されており、散っていった仲間の意思を継ぎ強敵に立ち向かう姿は、まさしく“王”と呼ぶに相応しい貫禄───


明日人「───俺はこれで……ターンエンドだ」


◉TURN:０４◉


グングニール「…勝ち誇るのは早い…！！我々に命を与えて下さったネロ様の為にも…ッ…負ける訳にはいかないのだ…ッッ！！ワタシのターン！！」[手札 1]

機兵は勢いよくカードを引き、引いたカードを確認すると、

グングニール「クク…デッキは勝てと言っている！！貴殿を貫くべき一枚をワタシの手に寄越した！！これで終わらせてくれる！！」

笑みを浮かべ、高らかに叫ぶ。

明日人「……！」

グングニール「ワタシの引いたカードは───『深海のディーヴァ』！！これを召喚し、効果発動！！」

《深海
しんかい
のディーヴァ/Deep Sea Diva》 †
チューナー・効果モンスター
星２/水属性/海竜族/攻 200/守 400
(1)：このカードが召喚に成功した時に発動できる。
デッキからレベル３以下の海竜族モンスター１体を特殊召喚する。

グングニール「この効果により…ッ、ワタシはデッキから───」

言いかけ、手を止める。

グングニール「……ッ…？……っっ…？？」

鋭き眼光が、機兵の全身を支配していた。

グングニール「……なん……だ…ッ…？」

機械であっても恐怖を覚える程の威圧感を放つのは───黙示録の獣機王。

───『セリオンズ“キング”レギュラス』。

明日人「『セリオンズ“キング”レギュラス』の効果───」

(2)：相手がカードの効果を発動した時、自分の手札・フィールドから「セリオンズ」モンスターカード１枚を墓地へ送って発動できる。
その効果を無効にする。

明日人「“キング”レギュラスに装備された“リリー”ボレアを墓地へ送り───相手の発動した効果を無効にする」

グングニール「───ッ」

明日人「こいつは俺のデッキにおける、新たな守備の要だ。
こいつがいる限り、俺のゴールに点は入れさせねぇ」

グングニール「…甘い…ッ…！甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘いッッ！！甘いのだ…ッ貴殿のデュエルはァァァ！！」

機兵は感情を剥き出しにし、翼を大きく広げた。感情の無い機械とは思えぬ行動に明日人は息を飲む。
そうだ。まだ、終わってない。
レギュラスの効果で無効にした深海のディーヴァは、まだ盤面に残っている───

グングニール「レベル5の『氷結界の虎将 ウェイン』に、レベル2の『深海のディーヴァ』をチューニング！！」


◉◉◉☆5+☆2=☆7◉◉◉


グングニール「───世界を白銀に染めるべく、再びその姿を現せ！！我が分身よ！！『氷結界の龍 グングニール』！！」

『氷結界の龍 グングニール』[ATK 2500]

グングニール「…貴殿の甘えたプレイスタイルが“キング”レギュラスを守備表示で置かせた…ッ！その事を後悔させてくれる…ッ！バトルだ！！」

◉バトルフェイズ◉

グングニール「“キング”レギュラスを貫けェ！！我が分身よ！！『氷結界の龍 グングニール』の攻撃！！
───氷撃龍槍“グングニル”！！！」


『氷結界の龍 グングニール』
[ATK 2500]
───VS───
[DEF1600]
『セリオンズ“キング”レギュラス』


明日人「───」

先程、自らを貫いた龍槍が再び明日人を襲う。
しかし今は、ひとりじゃない。

明日人「…通さねぇ、つってんだろ！！」

叫び、大地を踏み締める。

グングニール「───ッ！」

同時に闘技場全体が、激しく光輝き───

明日人「───『円盤闘技場 セリオンズ・リング』の効果！！」

(2)：１ターンに１度、自分のモンスターが戦闘で破壊される場合、
代わりにデッキから「セリオンズ」カードまたは「無尽機関アルギロ・システム」１枚を墓地へ送る事ができる。

明日人「俺のモンスターが戦闘で破壊される代わりに、デッキから『無尽機関アルギロ・システム』を墓地へ送る！！」

守備表示のレギュラスはグングニールの龍槍を両手で受け止め、握り潰す。粉々になり霧散してゆく氷の槍を見て、機兵は、

グングニール「…グ……ググ…我が龍槍が……届かぬだと……！？
こんな…ッ…こんな事が……ッ」

肩を落とし、両膝をついた。


明日人「お前の攻撃は、俺たちには届かない。この先にも進ませない。俺が守る。俺たちが護る───絶対に」


グングニール「…ク……クク……ッ…」

完全に打つ手を無くした機兵は明日人の言葉を受け、

機兵「………そうか……それが───」

小さく、呟く。

明日人「…ああ。そうだ」

対する明日人は、ふらつきながらも、しっかりと両脚を地につけ、


明日人「大地に根を張り、決して枯れない、決して折れない、決して倒れない───」



左手を掲げ、言った。



明日人「───これが俺のデュエルだ」








To Be Continued…