DRAW:２０４ ただ一つの突破口　作：人喰い

(204)





火群【LP 8000】
(場)
なし
手札:4
墓地:炎王獣ダンディx1

機兵【LP 8000】
(モンスター)
『魔轟神獣 ユニコール』[ATK 2300]
伏せ:1
手札:4
墓地:ケルベラルx1 カラントーサx1 増Gx1


◉TURN:０２◉


火群と決闘機兵MZK-06による決闘。
始まったばかりではあるが、『魔轟神獣 ユニコール』による妨害で思ったように始動できない火群にとってかなり苦しい展開となっていたーーーー
初動の『炎王の急襲』を潰され、増殖するGを発動された挙句、ダンディライオンの効果まで無効にし破壊されてしまう。次に火群が取る行動はーーーー


火群「ーーーー俺の場の『炎王』モンスターが効果で破壊された場合、『幼炎王獣 ガルドニクス』は手札から特殊召喚できる！」

ダンディライオンの破壊をトリガーに手札から後続を展開しようとするが、途端、ユニコールの角が輝きを放つ。

機兵「無駄ダ…！！ 互イ ノ 手札枚数ガ同ジ デアル限リ……ユニコール ノ 効果デ 貴様ノ発動シタ効果ハ無効トナリ、破壊サレル！！」

ニクス『……そんな事は当然把握している！！』

吠えるニクス。そして幼き不死鳥は墓地にて炎を巻き上げーーーー

火群「ーーー効果で破壊された幼炎王獣の効果！！」


《幼炎王獣 ガルドニクス》＊Ph.X Original Cards
チューナー・効果モンスター
星１/炎属性/鳥獣族/攻 200/守 200
このカード名の②③の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
①自分フィールドに表側表示で存在する「炎王」モンスターが効果で破壊された場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②このカードが効果で破壊された場合、「幼炎王獣 ガルドニクス」以外の自分の墓地または除外されている自分の「炎王」モンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
③このカードが墓地に存在し、自分フィールドに「炎王神獣」モンスターが存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は炎属性モンスターしか特殊召喚できない。


火群「……墓地の『炎王獣 ダンディライオン』を守備表示で特殊召喚！！」[DEF 200]

小獅子は再びフィールドに舞い戻り、それと同時に、

機兵「……『増殖するG』ノ効果デ１枚ドロー」[手札 5]

これで手札差を2枚まで広げ動きやすくなったもののこれ以上展開しても倒しきれなかった場合に、増殖するGにより更に増えた手札の前には、ユニコール無くしても今以上の劣勢を強いられるだろう。

火群「……これでターン終了だ」[手札 3]

まずは受けに回り、取れる選択肢を増やす事が先決だった。


◉TURN ０３◉


機兵「……ワタシ ノ ターン！！『無謀な欲張り』ノ効果デ、ドロー ハ デキナイ」[手札 5]

機兵は思考時間０で手札のモンスターを召喚する。おそらく、定石の行動が予めインプットされているのだ。

火群（考える時間もロクに与えてはくれないか……！）

機兵「ワタシ ハ『ゼンマイニャンコ』ヲ召喚！！」[ATK 800]

《ゼンマイニャンコ/Wind-Up Kitten》 †
効果モンスター
星２/地属性/獣族/攻 800/守 500
自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在するモンスター１体を選択して持ち主の手札に戻す。
この効果はこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り１度しか使用できない。


機兵「……『ゼンマイニャンコ』ノ効果発動！ 貴様ノ『炎王獣 ダンディライオン』ヲ手札ニ戻ス！！」

火群「……何…っ！？」[手札 4]

舞い上がったダンディライオンのカードを右手で取りつつ、火群は表情を曇らせる。

これにより再び手札枚数が並び、更には場までガラ空きになりーーーー

機兵「ーーーーバトルフェイズ」

宣言と同時に２体の獣が火群へと襲いかかった。

『魔轟神獣 ユニコール』
[ATK 2300]

『ゼンマイニャンコ』
[ATK 800]


２体の攻撃が直撃し、火群はその場に後ずさる。

火群「……が…はッ…！！」【LP 8000→4900】

胸を貫く痛み。額を流れる汗を右手で拭う。

機兵「……カード ヲ １枚伏セ、ターンエンド ダ」[手札 3]

機兵の決闘に派手さはない。
ただゆっくりと、じっくりと、確実に火群は追い詰められていた。


◉TURN ０４◉


火群「……俺の…ターン！！」[手札 5]

手札枚数は5-3。ユニコールの効果は適用外。
しかし機兵の構える２枚の伏せカードはおそらく、火群の効果発動に対して手札調整を行うカードである事が予想される。更にそれらに加え手札誘発による手札調整をされる可能性もある。考えるほど頭が痛くなる盤面だ。

火群（…けど、考える事をやめちゃダメだ…！ 今は待ち続ける……ッ…この状況を打開できるその瞬間をーーーーー）

火群「ーーーー俺は、モンスターをセットして、ターンエンドだ」[手札 4]















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２０４ーーー
《ただ一つの突破口》















◉TURN ０５◉


機兵「ーーーー……、ヤハリ『魔轟神獣 ユニコール』ノ 前ニ手モ足モ出ナイヨウダナ……！！
ワタシ ノ ターンッ！！」[手札 3]

『無謀な欲張り』によりドローはできないため手札は変わらず、そのままプレイを進める。

機兵「ーーーー伏セカードオープン！『強欲な瓶』！ コノ効果デ、１枚ドロー！」[手札 4]

発動したのは、前のターンにセットした方のカード。

火群「……！（初手で伏せたカードはわからないままか……）

手札の数が同じになったことでユニコールの角が青白く輝き、攻撃体制に入った。


機兵「……バトル！！『ゼンマイニャンコ』デ、セットモンスター ヲ 攻撃！！」

『ゼンマイニャンコ』
[ATK 800]

セットモンスターが表になり、現れた小獅子は身構える。

『炎王獣 ダンディライオン』
[DEF 200]

ゼンマイニャンコの攻撃によりダンディライオンは破壊されてしまう。
ダンディライオンは破壊された場合にトークンを生成する効果を持つが、ユニコールが居ては発動しても無効にされるだけだ。

火群「……っ…」

攻撃力800のモンスターでセットモンスターを攻撃する強気なプレイも、下級モンスターのほとんどが守備力200のモンスターで構成されている火群のデッキのデータに基づいた行動だろう、火群は続く攻撃に備えて腰を落とす。


機兵「『魔轟神獣 ユニコール』デ ダイレクトアタック！！」


『魔轟神獣 ユニコール』
[ATK 2300]


火群「ーーーー！」

白銀の一角が、再び火群を一閃ーーーーー

火群「……がふぁ…ッッ…！！ っぁぁがぁあっっっ！！」【LP 4900→2600】

ニクス『ホムラっっ！！』

その場に膝をつく火群をニクスは振り返るが、火群の顔を見て胸をなでおろす。

火群「…へへ…っ…」

笑っているのだ。

この危機的状況で。

ニクス『……そうだな。そうだったよな』

ニクスは目を瞑り、うんうんと頷く。

ニクス『私たちの決闘はいつだって、“逆境”を乗り越え……その先の“勝利”を掴む決闘であったなーーーーー』

そして目を開くと、二人の視線の向く先は真っ直ぐ前で重なる。


機兵「……何故コノ状況デ、ソンナ目ヲ スル事ガ デキル……？」

二人の視線の先、決闘機兵は心底不思議そうに問う。

ニクス『…さて……何故だろうな』

とぼけたように乾いた吐息を漏らすニクス。

火群「…もったいぶらずに言ってやろうぜ！！
……『この決闘、俺たちが絶対に勝つからだ』ってなぁ！！」

火群は自信満々に、右手を前に突き出した。



機兵「……ッ！ （……勝ツ…ダト……！？ ワタシ ノ 計算ニ狂イナド無イ……！！ ワタシ ガ 負ケル可能性ナドーーーーー）
カード ヲ１枚伏セ、ターンエンド！！」[手札 3]


◉TURN ０６◉


考えて、考えて、考え抜いた結果、見えた勝利の映像(ヴィジョン)ーーーーその決着の瞬間へと望みを込めて、火群はカードを引いた。

火群「…俺のターンッッ！！ ドローッッ！！」[手札 5]

これ以上決闘を長引かせるわけにはいかない火群は、一瞬の隙を突いて一気に勝負をかけるための“賭け”に出る。


火群「俺は魔法カード『おろかな埋葬』を発動！！」

《おろかな埋葬
まいそう
/Foolish Burial》 †
通常魔法（制限カード）
(1)：デッキからモンスター１体を墓地へ送る。


火群「……」

この決闘の行方は、あの決闘機兵が『おろかな埋葬』に対してどれだけの脅威を感じているか、にかかっていると言っても過言ではなかった。

火群としては絶対に通したい一手。しかし一発目から自信ありげにその一手を打ち込んだ事で、相手からしてみれば『このカードを囮にして、手札調整用のカードを使わせる』動きに見えるのが自然。
火群のデッキには、『炎王の急襲』をはじめとし、『真竜皇 アグニマズドV』や『炎王の孤島』。通れば戦況を大きく変えられるカードが多く存在する。それらを安全に通すための囮として機兵の判断を迷わせるのには、十分な効果があると言えるだろう。
ましてや先程の強気な『絶対に勝つ』宣言の後だ。より警戒心は強まっていた。

機兵「……」

機兵は伏せてある『強欲な瓶』に手をかけるが、2秒間の沈黙を経て、

機兵「……チェーン ハ 無イ」

機兵の導き出した答えは、おろかな埋葬の効果を通す、というもの。
何を墓地に落とそうが、その後の展開に対して手札調整をすれば間に合うだろう、との判断だった。
しかし本当のところは、火群とニクスの真っ直ぐな瞳に気圧されたと言った方が正しいだろう。


火群「……なら遠慮なく、墓地にモンスターを送らせて貰うぜ。
俺が墓地へ送るのは、『炎王神獣 ガルドニクス』！！」


『炎王神獣 ガルドニクス』デッキ→墓地


６ターン目にしてニ度目の効果発動。ガルドニクスを墓地へ置く事が出来た。まずは第一関門突破と言ったところか。

火群「…続けて俺はカードを１枚伏せる」

手札調整のためのセット、これで枚数は3-3。

機兵「……」

セットのタイミングでも発動が無い事を確認し、火群は僅かに頰を吊り上げた。

火群「……よし…ッ…！
手札から速攻魔法ーーーー『炎王輪廻』を発動ッッ！！！」


《炎王輪廻》＊Ph.X Original Cards
速攻魔法
このカード名のカードは、１ターンに１度しか発動できない。
①自分の墓地の「炎王」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの元々のレベル・ランクの数だけ自分のデッキの上からカードをめくり、その中の炎属性モンスターを任意の枚数選んで破壊し、残りのカードとこのカードの発動時に選択したモンスターをデッキに戻しシャッフルする。
「炎王神獣」モンスターを対象としてこのカードを発動した場合、このカードの発動に対して相手はカードの効果を発動できない。
この効果を使用するターン、自分は炎属性モンスターしか特殊召喚できない。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分の場の炎属性モンスター１体を選んで破壊し、デッキから「炎王」モンスター１体を手札に加える。この効果は相手ターンでも発動できる。


火群「……墓地の『炎王神獣 ガルドニクス』を対象に効果を発動！！ そして『炎王神獣』を対象として発動したこの効果の発動に対し相手は、カードの効果を発動できない！！」


機兵「……ッ！！」

互いの手札枚数は2-3。ユニコールの効果は永続効果のため、チェーン不可であろうと無効にすることはできるが、あくまで“互いの手札枚数が同じの時のみ”という、相手ターンにおいてはフリーチェーンの手札調整があってこそ成り立つ制圧効果だ。
その手札調整を封じられてしまっては、弱い部分をさらけ出す事になる。

火群「…対象にしたモンスターのレベル分ーーーー８枚のカードをデッキの上からめくり、その中の炎属性モンスターを破壊する！！」


『炎王獣 バロン』→破壊
『炎王炎環』
『炎王転輪』
『炎王輪廻』
『炎王獣 キリン』→破壊
『炎王の孤島』
『九尾の狐』→破壊
『炎王獣 バロン』→破壊

『炎王神獣 ガルドニクス』墓地→デッキ


火群「ーーー破壊されたキリン、九尾の効果発動！！」


墓地が熱く燃え上がる。だが機兵も流石にここは黙っていない。

機兵「……コノ瞬間…！ 手札カラ、『D.D.クロウ』ヲ捨テ、貴様ノ墓地ノ『幼炎王獣 ガルドニクス』ヲ対象ニ効果発動！！
対象ノ カード ヲ 除外スル！！」

《Ｄ
ディー
.Ｄ
ディー
.クロウ/D.D. Crow》 †
効果モンスター
星１/闇属性/鳥獣族/攻 100/守 100
(1)：このカードを手札から墓地へ捨て、
相手の墓地のカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを除外する。
この効果は相手ターンでも発動できる。


火群「……！」

『幼炎王獣 ガルドニクス』墓地→除外

手札枚数は2-2。キリンと九尾の効果は無効となったが、火群にとってそれは些細なことでしかない。もうすでに“本命”は通っているからだ。

このターンまで温存してきた全ての“手”を、ここで出し切るーーーー


火群「……次だ！！ 『炎王獣 ガネーシャ』を通常召喚！！」[ATK 1800]

《炎王獣
えんおうじゅう
ガネーシャ/Fire King Avatar Arvata》 †
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードがフィールドに存在し、モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その発動を無効にし、このカード以外の自分の手札・フィールドの炎属性モンスター１体を選んで破壊する。
(2)：このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
「炎王獣 ガネーシャ」以外の自分の墓地の炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。


火群「ーーーー更に！！ フィールド魔法、『炎王の孤島』を発動ッッ！！」


《炎王
えんおう
の孤島
ことう
/Fire King Island》 †
フィールド魔法
「炎王の孤島」の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：自分メインフェイズにこの効果を発動できる。
自分の手札・フィールドのモンスター１体を選んで破壊し、
デッキから「炎王」モンスター１体を手札に加える。
(2)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこの効果を発動できる。
手札の鳥獣族・炎属性モンスター１体を特殊召喚する。
(3)：フィールドゾーンの表側表示のこのカードが、
墓地へ送られた場合または除外された場合に発動する。
自分フィールドのモンスターを全て破壊する。


発動と共に火群の背後から火山がせり出し、土煙を舞わせ火花を散らす。

機兵「……驚イタ………、マサカ、敢エテ ギリギリ マデ身ヲ削リ、コレ程マデ ノ カード ヲ 蓄エテイタトハナ……ッッ…！！」

火群「…これが“勝つ”為に考えた結果だ！！
それに、俺たちの力はまだまだこんなもんじゃない…っ！！ 俺は墓地の『炎王輪廻』を除外して効果発動！！」

自分フィールドの炎属性モンスターを破壊し、デッキから『炎王』モンスターを手札に加える効果。
手札は0-2。安心して効果を通せる状況だ。それに対する機兵は焦り気味に、緑色に発光している目を細める。

火群「……場のガネーシャを破壊し、俺がデッキから手札に加えるのはーーーー『炎王神獣 ガルドニクス』」

『炎王獣 ガネーシャ』場→破壊

『炎王獣 ガルドニクス』デッキ→手札

火群がガルドニクスのカードをデッキから引き抜くと、背後の火山が溶岩を噴き周囲に噴煙が広がり始めるーーーー

火群「…頼むぜニクス…！！」

そして信頼を込めてカードに指をかける。
触れると指に熱が伝い、心に、魂に、炎が灯るような暖かい感覚が火群を包んだ。





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２０５ 栄光の間






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙