DRAW:６８ 左腕の代償　作：人喰い

(68)




少年「ねぇ父さん。父さんにはどうして両腕が無いの？」

父「それはな、父さんがとても欲深い男だからだ」

少年「何か欲しいものの為に腕を失ったってこと？」

父「そういう事だ。父さんには、たとえ腕を切り落としてでも手に入れたい『魔法』があったんだ」

少年「腕は……『代償』ってこと…？」

父「『代償』……か。そうだな、その言葉がしっくりくる」

少年「それで、父さんはその『腕』を『代償』にどんな魔法を手に入れたの？

父「………」

少年「…？」

父「それはなーーー」













ーーーお前という悪魔だよ。マイン。


















遊戯王 Ph.X DRAW:６８
《左腕の代償》
















〜森林エリア〜結維side




マイン【LP 6000】
場:『インフェルノイド・ネヘモス』[ATK 3000]☆10
伏せ:0
手札:2
墓地:9


結維【LP 200】
場:『太陽神 ヒュペリオン・アル・メギド』[ATK 3000]☆10
『迅雷の騎士 ガイアドラグーン』[ATK 2600]★7
『ダイガスタ・フェニクス』[ATK 1500]★2
伏せ:0
手札:0



結維「ヒュペリオン・アル・メギドがシンクロ召喚に成功した時、デッキから『天空の聖域』を発動できる！」


《天空
てんくう
の聖域
せいいき
/The Sanctuary in the Sky》 †
フィールド魔法
このカードがフィールド上に存在する限り、
天使族モンスターの戦闘によって発生する
天使族モンスターのコントローラーへの戦闘ダメージは０になる。


マイン「…ほぅ」

結維「これが私の全力…！！ ヒュペリオン・アル・メギドの効果発動！！ 1ターンに1度、手札またはデッキから『代行者』モンスター1体を墓地に送り、相手フィールド上のカード1枚を破壊する！ 私はデッキの『奇跡の代行者 ジュピター』を墓地へ送り、ネヘモスを破壊！！」

ヒュペリオンが天より引き寄せた惑星に炎を灯し、ネヘモスに向けて発射する。


ヒュペリオン『消え……失せろ……ッッ！！』

ネヘモス『グギガァアアァアアアァアアッッ！！』

ネヘモスの身体をヒュペリオンの放った惑星が貫いた。


マイン「クク……ッ」

結維「それだけじゃない！ ヒュペリオンはこのターンの終わりまで、自身の効果で墓地へ送った『代行者』モンスターの効果を得る！」

《奇跡
きせき
の代行者
だいこうしゃ
ジュピター/The Agent of Miracles - Jupiter》 †
効果モンスター
星４/光属性/天使族/攻1800/守1000
１ターンに１度、自分の墓地に存在する「代行者」と名のついた
モンスター１体をゲームから除外して発動する事ができる。
自分フィールド上に表側表示で存在する天使族・光属性モンスター１体の攻撃力は、
エンドフェイズ時まで８００ポイントアップする。
また、フィールド上に「天空の聖域」が表側表示で存在する場合、
１ターンに１度、手札から天使族モンスター１体を捨てる事で、
ゲームから除外されている自分の天使族・光属性モンスター１体を選択して特殊召喚する。


結維「ジュピターの効果を得たヒュペリオンの効果発動！ 墓地の『神秘の代行者 アース』をゲームから除外し、ターン終了時まで攻撃力を800ポイントアップ！」

ヒュペリオン[ATK 3000→3800]


結維「ここで終わらせる……っ！ バトルフェイズ！！ 行って！ 私のモンスター達！！
まずはガイアドラグーンでダイレクトアタック！！」


ガイアドラグーン[ATK 2600]＊二回攻撃

ダイガスタ・フェニクス[ATK 1500]

ヒュペリオン[ATK3800]





マイン「………クク…、総合打点10500か……
だが、無駄だ」


結維「…！」


マインが左手を前に突き出すと、私の場のガイアドラグーンが裏守備表示になってしまう。

結維「え…っ！？ なに…？ 何をしたの…！？」


マイン「…簡単な事だ。俺は墓地に眠る『妖精伝姫ーシラユキ』の効果を発動した…！！」



《妖精伝姫
フェアリーテイル
－シラユキ/Fairy Tail - Snow》 †
効果モンスター
星４/光属性/魔法使い族/攻1850/守1000
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、
相手フィールドの表側表示モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2)：このカードが墓地に存在する場合、
自分の手札・フィールド・墓地からこのカード以外のカード７枚を除外して発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。


シラユキ[ATK 1850]


マイン「…ガイアドラグーンには少し眠ってもらっただけだ。といっても、もう覚めることもないだろうがなァ…！」

結維「……そんな…っ！ 私が展開してる中、途中で止めようと思えばいつでも止めれたのに…！ わざわざこのタイミングまで泳がせてたって事…っ！？」

マイン「……勝ちを確信した人間が絶望に堕ちる瞬間、そこに様々な負の感情が渦巻く…っっ！
それらの不完全な感情が合わさりやがては『完全』なものへと昇華する！……俺はそれが見たいんだ」

結維「そんなことの為に…っ自分のモンスターをも犠牲にして…っ！」

マイン「…憎しみ、悲しみ、哀れみ、悔しさ、そして怒り！ お前もそういった不完全な感情をもっと表に出すんだ…ッッ！ 桜庭結維！」

結維「…！！」

また…！ あの“眼”……！！

結維「…意味…わかんない…っっての…！！
ヒュペリオンでシラユキを攻撃！！
〝サン・バースト・アルマゲドン〟！！」


『太陽神 ヒュペリオン・アル・メギド』
[ATK 3800]
ーーーVSーーー
[ATK 1850]
『妖精伝姫 シラユキ』


ヒュペリオンが最大の力を込めた巨大な炎の球体をシラユキめがけて振り落とす。
球体は地面に触れると同時に爆発し、あたりの闇を僅かに振り払う。


マイン「クク…ッ、そうだ…！ その怒りだ…！！」【LP 6000→4050】

結維「…ダイガスタ・フェニクスでダイレクトアタック！！」


『ダイガスタ・フェニクス』
[ATK 1500]


マイン「…ぐッ…！」【LP 4050→2550】

結維「…ハァ…ハァ…ッ…！！ あと一歩…！ 届かなかった…！！」

マイン「…ここまでだな。桜庭結維」

結維「……っ」

マイン「…俺のターン！ ドロー！！」[手札 3枚]

マイン「……何かを得るには常にリスクが付きまとう。『代償』を負わなければ、欲を満たすことなどできないんだ」

結維「……！？」


マイン「ーーー魔法発動！！『左腕の代償』ォォォッッ！！！」


《左腕
ひだりうで
の代償
だいしょう
/Left Arm Offering》 †
通常魔法
このカードを発動するターン、自分は魔法・罠カードをセットできない。
(1)：このカード以外の自分の手札が２枚以上の場合、
その手札を全て除外して発動できる。
デッキから魔法カード１枚を手札に加える。



結維「……左腕の……代償…！？」

ヒュペリオン『…馬鹿な……ッッ！ あのカードは……ッ！！』

ふと、左肩が痛む。

マイン「…俺はデッキから『魔法』を手に入れる代償として、手札を全て除外する」

結維「……っ！」

マイン「俺が手札に加えるのはーーー永続魔法『煉獄の虚無』！！ そしてこのカードを今ここに発動する！！」

《煉獄
れんごく
の虚夢
きょむ
/Void Imagination》 †
永続魔法
(1)：自分フィールドの元々のレベルが２以上の「インフェルノイド」モンスターは、
レベルが１になり、相手に与える戦闘ダメージは半分になる。
(2)：表側表示のこのカードを墓地へ送って発動できる。
自分の手札・フィールドから、
「インフェルノイド」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、
その融合モンスター１体をエクストラデッキから融合召喚する。
エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドにのみ存在する場合、
自分のデッキのモンスターも６体まで融合素材とする事ができる。


マイン「煉獄の虚無を墓地へ送り、その効果を発動！！」

結維「……！！ 」

マイン「俺はデッキから6体のモンスターを素材として融合召喚を行う！！」

『インフェルノイド・ネヘモス』
『インフェルノイド・リリス』
『インフェルノイド・アドラメレク』
『インフェルノイド・ルキフグス』
『インフェルノイド・アスタロス』
『インフェルノイド・ベルゼブル』


マイン「『愚鈍』、『拒絶』、『無感動』、『貪欲』、『不安定』、『物質主義』……六つの“悪徳”よーーー今こそここに集結せよ！！」

結維「ーーー！！」

マイン「ーーー煉獄の焔より蓄えられし不完全な“悪徳”は、虚無の世界にて完全へと成り替わる！！ 融合召喚！！ 地獄の果てより現れろ！！
『インフェルノイド・ティエラ』！！」



ティエラ『グギィィギガァアアァアアアァアアアッッ！！！』[ATK 3400]


結維「……なんて、禍々しい…っ！！」

マイン「…もっとも、これでも『完全体』にはまだ遠い…」

結維「……完全体になるとどうなるんですか…っ！」

マイン「…それは貴様には関係のないことだ。6割の力……右腕さえあれば、貴様にトドメを刺すには十分だからな」

結維「…っ！！」

マイン「ーーーインフェルノイド・ティエラの効果発動！！」


《インフェルノイド・ティエラ/Infernoid Tierra》 †
融合・効果モンスター
星１１/炎属性/悪魔族/攻3400/守3600
「インフェルノイド・ネヘモス」＋「インフェルノイド・リリス」＋「インフェルノイド」モンスター１体以上
(1)：このカードが融合召喚に成功した時に発動できる。
その融合素材としたモンスターの種類によって以下の効果を適用する。
●３種類以上：お互いはそれぞれ自分のエクストラデッキからカードを３枚選んで墓地へ送る。
●５種類以上：お互いのデッキの上からカードを３枚墓地へ送る。
●８種類以上：お互いはそれぞれ除外されている自分のカードを３枚まで選んで墓地へ戻す。
●１０種類以上：お互いの手札のカードを全て墓地へ送る。


マイン「ティエラの血肉となった悪魔は計6体……よって二種類の効果が適用される。お互いにデッキの上から3枚、そしてエクストラデッキのカード3枚を選び墓地へ送る…！！」

マイン「俺がエクストラデッキから墓地へ送ったカードは、3枚の『旧神 ヌトス』！！」


《旧神
キュウシン
ヌトス》 †
融合・効果モンスター
星４/光属性/天使族/攻2500/守1200
Ｓモンスター＋Ｘモンスター
自分フィールドの上記カードを墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる（「融合」は必要としない）。
自分は「旧神ヌトス」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：１ターンに１度、自分メインフェイズに発動できる。
手札からレベル４モンスター１体を特殊召喚する。
(2)：このカードが墓地へ送られた場合、
フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。

マイン「旧神 ヌトスが3枚墓地へ送られたことにより、貴様の場のモンスター3体を破壊するッッ！！」

結維「……くっ…！！」

ヒュペリオン『結維……ッ！！』


マイン「これで終焉だーーー焼き払え！！ ティエラッッ！！ プレイヤーに直接攻撃！！」

ティエラ[ATK 3400]

結維（時間は……稼げたかな…っ？）

マイン「〝終焔のファンタズマ・ヘル・スキュア〟！！！」


結維（絶対に和泉を護ってーーーソロデュエリストさん）



結維「ーーーッッ」【LP 200→0】










＊


ほぼ同時刻

〜セントラルホール前〜火群side


火群「和泉ーーーっっっ！！！」

セントラルホールが見えてきた…！
入り口付近に誰かいる…？
まてよ…っあいつは…！！





戒「ーーーうるさい遠くから叫ぶな。市瀬」

火群「戒っ！！」

戒「…灰にはなっていないようだな」

火群「…色々とあったけどなんとか生きてるぜ。
ってそれより！」

仰向けになって倒れている終焉の焔のメンバーらしき者が目に入る。

火群「…あ、あいつ、よく見たら植物園を襲ってきた“三本の火柱”の…！ 戒、お前が倒したのか…？」

戒「…当然だ。そんなことより、無駄話をしていていいのか？」

火群「！ そうだ！ 和泉のとこに行かないと……」


爽香「ーーーあ、あのぉ〜」


火群「…あっ、大会のお姉さん」

爽香「…あなた達、今何が起こってるのか教えてくれたり…しないかなぁ？」

戒「話す義理は無い。行くぞ、市瀬。桜庭和泉の元へ」

火群「…行くぞって、お前和泉がどこにいるか分かってんのか…？」

爽香「…あ！和泉さんだったら、さっき私の元へ来たよ！」

火群「…えっ！？ ホントですか！？」

爽香「モチのロン！ 前髪もさーってしたちっちゃな女の子も一緒に！」

火群「それ絶対柏木さんだ！ よかった！ 2人とも無事だったんだ！」

戒「それで、二人はどこに？」

爽香「セントラルホールの裏に大きな救護室があるんだけど、そこに案内したからそこにいるはずだよー！」

火群「ありがとうございます！！ それじゃさっそく…」

爽香「…あ、せっかくなので案内がてら私も同行していいカナ…？ こんなことになっちゃってもう大会どころじゃ無いし……ってか私一時的無職？ってゆーか」

戒「構わん。さっさと案内してくれ」

爽香「もうっ！ 斬波選手、私に冷たすぎません！？」

戒（こういう女には隙を見せるととことんペースを飲まれるからな…）

火群「…じゃ、まぁお願いします。お姉さん」

爽香「爽香ちゃんでいいよっ？」

戒「……」

火群「……」

爽香「なぜ黙る！？ 『ちゃん』付けは無理があると思ったか！？ 私まだ19なんですけどーーっ！」

戒「…うるさいさっさと案内してくれ」

爽香「あっいそいでるんだったっけ！ じゃあ行くよ！ 付いて来て！」


火群「……」


結維さんは、俺が助けるべきは結維さんではなく和泉だって言った。
でも結維さんも和泉も元は一人の人間で、そこに差なんてないはずなのに。
本当はどっちかを取るなんてできないはずだった。それなのに俺は結維さんを見捨ててーーー


ニクス『ーーー火群。迷うなと言ったはずだぞ』


火群（ニクス…）

ニクス『…結維なら大丈夫だ。お前が護ってやらなくても、一人で戦える。だが、和泉は違うだろ…？』


火群（…ごめん、また迷ってた。
結維さんが俺をここまで送り出してくれたんだ。その思いを無駄にするわけにはいかないよなーーー）











To Be Continued…




《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:６９ 迫る脅威