DRAW:２３５ 正義と悪を映す水鏡　作：人喰い

(235)





───神星樹内部・基礎の間と美の間を繋ぐ螺旋階段。


雫【LP 8000】

氷機兵【LP 8000】


◉TURN:０１◉


氷機兵「───氷結界の照魔師の効果発動！！」

《氷結界の照魔師/Revealer of the Ice Barrier》
効果モンスター
星４/水属性/魔法使い族/攻1700/守1000
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分フィールドに他の「氷結界」モンスターが存在する限り、相手はアドバンス召喚できない。
(2)：手札を１枚捨てて発動できる。
デッキから「氷結界」チューナー１体を特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。
(3)：自分が「氷結界」モンスターの効果を発動するために、
手札を墓地へ送る場合または捨てる場合、そのカード１枚の代わりに墓地のこのカードを除外できる。


氷機兵「手札より『氷結界の破術師』を捨て、デッキより現れよ、『氷結界の霜精』！！」


《氷結界
ひょうけっかい
の霜精
そうせい
/Hexa Spirit of the Ice Barrier》 †
チューナー・効果モンスター
星１/水属性/海竜族/攻 400/守 200
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分フィールドに他の「氷結界」モンスターが存在する限り、
相手フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は５００ダウンする。
(2)：自分メインフェイズに発動できる。
デッキからレベル３以下の「氷結界」モンスター１体を墓地へ送る。
このカードのレベルはターン終了時まで、そのモンスターと同じになる。


氷機兵「霜精の効果発動！！デッキより『氷結界の随身』を墓地へ送り、霜精のレベルは随身と同じ２となる！！」

『氷結界の霜精』☆1→☆2

雫と対峙する氷機兵の一手目───即座にチューナーを含むモンスター2体を用意し、レベルの調整までこなすその手には一切の迷いもない。

氷機兵「───レベル４『氷結界の照魔師』に、レベル２となった『氷結界の霜精』をチューニング！！」


◉◉◉☆４+☆２=☆６◉◉◉


雫「───！」

レベルの合計は───６。
辺りの冷気が強まるのの感じ、雫は思わず身震いするが、心までは凍えていない。
機兵の背後に影を落とす巨大な存在をしっかり見据え、拳をぎゅっと握り締める。


氷機兵「シンクロ召喚！！現れよ───我が分身！！
『氷結界の龍 ブリューナク』！！！」


猛吹雪の中、氷結界の龍がその姿を現す。
ところどころ槍の様に鋭利な氷を纏い、白銀の翼を羽ばたかせ、目の前に立ち塞がる小さな存在を威圧した。


『リュァアアアァアアァアアッッ！！！』[ATK 2300]☆６


雫「……！！」

咆哮がビリビリと肌を揺らす。しかし休む間もなく、機兵は更なる一手で畳み掛ける。

氷機兵「まだ終わりではない！！ワタシは永続魔法『氷結界の晶壁』を発動！！」


《氷結界
ひょうけっかい
の晶壁
しょうへき
/Freezing Chains of the Ice Barrier》 †
永続魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：このカードの発動時に、自分の墓地のレベル４以下の「氷結界」モンスター１体を対象にできる。
その場合、そのモンスターを特殊召喚する。
(2)：このカードが魔法＆罠ゾーンに存在し、自分フィールドに「氷結界」モンスターが３体以上存在する限り、
自分フィールドの「氷結界」モンスターはＥＸデッキから特殊召喚された相手モンスターが発動した効果を受けない。


氷機兵「発動時の効果処理により、墓地より『氷結界の随身』を復活させ、その効果を発動！！」

《氷結界
ひょうけっかい
の随身
ずいじん
/Zuijin of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星２/水属性/戦士族/攻 500/守 300
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードをリリースして発動できる。
手札からレベル５以上の「氷結界」モンスター１体を特殊召喚する。
(2)：このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベル３以上の水属性モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターのレベルを２つ下げ、このカードを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


氷機兵「自身をリリースし───手札より現れよ！！『氷結界の虎将 ガンダーラ』！！」[ATK 2700]☆７

雫「…シンクロ召喚だけじゃなく、更に最上級モンスターの展開を…っ！」

氷機兵「…ワタシはカードを1枚伏せ、ターンを終了───だが、このエンドフェイズ時、ガンダーラの効果が発動！！」



《氷結界
ひょうけっかい
の虎将
こしょう
ガンターラ/General Gantala of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星７/水属性/戦士族/攻2700/守2000
(1)：自分エンドフェイズに、「氷結界の虎将 ガンターラ」以外の
自分の墓地の「氷結界」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。


氷機兵「その効果により、墓地に眠る『氷結界の破術師』を特殊召喚！！」[DEF 1000]

《氷結界
ひょうけっかい
の破術師
はじゅつし
/Warlock of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星３/水属性/魔法使い族/攻 400/守1000
(1)：自分フィールドに他の「氷結界」モンスターが存在する限り、
お互いに魔法カードはセットしなければ発動できず、
セットしたプレイヤーから見て次の自分ターンが来るまで発動できない。


氷機兵「場に『氷結界の破術師』と他の氷結界が存在する限り、互いに魔法カードはセットしなければ発動できず、次の自分のターンまで発動できない。この意味がわかるか…？」

雫「───」

氷機兵「呪われし力───『リチュア』はここで封印する」

雫の操る【リチュア】デッキは儀式召喚を主体とするデッキだ。儀式召喚の要である儀式魔法の発動に1ターンのラグが生まれてしまっては、本来の力を発揮できない。しかし───


雫「───その手の効果は、よく知ってます」

雫は言う。機兵もそれ以上言葉は必要ないと判断してか、

氷機兵「………ワタシのターンはこれで終了だ」

しばしの沈黙の末ターンの終了を宣言。雫にターンが回る。


氷機兵【LP 8000】
(モンスター)
『氷結界の龍 ブリューナク』[ATK 2300]
『氷結界の虎将 ガンダーラ』[ATK 2700]
『氷結界の破術師』[DEF 1000]
(魔法)
『氷結界の晶壁』(永続)
伏せ:1
手札:0
墓地:随身、照魔師


◉TURN:０２◉


迎えた雫のターン。雫のデッキにとってかなり手痛い一手を受けたにも関わらず、雫は目を瞑ったまま大きく深呼吸。





『───おっしゃあ！俺の勝ちだぜぇ！』


雫の脳裏には、合宿の時の光景が再生される───



〜〜〜〜


〜数日前・メアリーの別荘〜


雫【LP 0】

栗須【LP 8000】


雫「…うぅ……負けました…」


栗須と雫のデュエル。勝者は栗須だ。
俯く雫と、勝ち誇った様子の栗須。
そして戒と鈴華、和泉がその様子を見守っていた。

戒「完封…だな」

栗須「柏木さんも強かったが、この俺にはまだまだ及ばねぇみたいだなァ！なーっはっはっはァ！」

鈴華「何よ何よいい気になって！先攻で『魔封じの芳香』引けてただけじゃない！1ターン待たないと儀式できないなんて、圧倒的に相性不利じゃないの！」

戒「…それも立派な戦術だ。それに、その程度乗り越えられない様では、これから先の戦いについて来れるとは思えないな」

鈴華「キーーーっ！そんな言い方は無いんじゃなくて！？斬波さん！！」

雫「…いえ、斬波さんの言う通りです…。
現に斬波さんは、装備魔法を主体とする【聖騎士】デッキで、古宮さんの『魔封じの芳香』を打ち破っています…」

栗須「…あ、あれは手加減してやってただけだっつの！」

雫「…だから、今の私が皆さんに追いつくために必要なのは、対処力…！
特に、魔法カードを封じられたら何もできません…！その弱点はなんとしてでも克服しないと…」

鈴華「んー、とは言いましても…」

和泉「あ、わたし余りのカードたくさん持ってきたんだ！これでデッキ強化しようよ！」

雫「…はわわわ…っ…！こんなにたくさん…！ありがとうございます和泉さんっ！」

和泉「オープンに合わせて速攻魔法で除去できる『コズミック・サイクロン』…とかだとライフコストが重いかなぁ？」

鈴華「私のデッキみたいに、モンスターだけでも展開できるようにしてみるのは？」

和泉「…雫ちゃんのデッキに組み込めそうなのだと……『深海のディーヴァ』とか？」

雫「…なるほど…良いかもしれません…！」

和泉「あとは、いっそ罠で───そうだ！このカードなんてどうかなっ？」

ストレージのカードを見ていた和泉は、そう言って１枚のカードを抜き出した。




〜〜〜〜



雫「───よし！」


以前までは前髪で隠れていた真ん丸な瞳を見開くと、雫はデッキの上へと手を伸ばす。

無論、サレンダーなどしない。
最愛の姉を前にして、囚われた友人を救わずして、引き下がれるわけなどない。

雫「───私のターン！！」[手札 6]

勢いよく引いたカードを確認し、雫は脳内で戦略を組み立てる。

氷機兵「小さきモノよ───いくら考えた所で無駄だというのにな…」

雫「…私、小さきモノじゃありません！『柏木 雫(かしわぎ しずく)』です！
あなたを従える柏木 瑞希の妹、雫です！」


氷機兵「シズク…か。ならワタシも名乗らせて貰おう───」

機兵はそう言って背中の氷翼を雄々しく広げると、機兵とは思えないほど感情のこもった声色で名乗りを上げた。


氷機兵「───ワタシの名は『ブリューナク』。天を貫く氷魔の槍だ」















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２３５───
《正義と悪を映す水鏡》














雫「───私は手札の『シャドウ・リチュア』を捨てて効果発動！」


《シャドウ・リチュア/Gishki Shadow》 †
効果モンスター
星４/水属性/海竜族/攻1200/守1000
(1)：水属性の儀式モンスター１体を儀式召喚する場合、
このカード１枚で儀式召喚に必要な分のリリースとして使用できる。
(2)：このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「リチュア」儀式魔法カード１枚を手札に加える。


雫「デッキから『リチュアの氷魔鏡』を手札に加えます！」

開幕、発動したのはリチュアを代表する１枚。しかし───

ブリューナク「…フッ、だが氷結界の破術師の効果により、このターン儀式魔法は封じられている！」

雫「…でも、破術師を場から退けてしまえば良いだけの事！私は『リチュア・ビースト』を召喚！」[ATK 1500]


《リチュア・ビースト/Gishki Beast》 †
効果モンスター
星４/水属性/獣族/攻1500/守1300
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地のレベル４以下の「リチュア」と名のついた
モンスター１体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。


雫「『リチュア・ビースト』の効果！
墓地の『シャドウ・リチュア』を特殊召喚！」[DEF 1000]

今までは使う機会のなかった雫のEXデッキが、このタイミングで淡い光を放つ───

雫の場には、レベル４のモンスターが２体。

雫「───まだまだ行きますよっ！レベル4の『リチュア・ビースト』と『シャドウ・リチュア』で、オーバーレイネットワークを構築！！」

ブリューナク「……！」


雫「エクシーズ召喚！！
───荒ぶる怨念を有るべき場所へ！
来てください！『イビリチュア・メロウガイスト』！！」


美しい赤髪を優雅に揺らし、鏡の中より現れたのは、エクシーズモンスターの『イビリチュア』。


『イビリチュア・メロウガイスト』[ATK 2100]


雫「───バトル行きます！！メロウガイストで、『氷結界の破術師』を攻撃！！」



『イビリチュア・メロウガイスト』
[ATK 2100]
───VS───
[DEF 1000]
『氷結界の破術師』


儀水鏡を宿した禍々しい錫杖を掲げ、メロウガイストは破術師は破壊するべく攻撃を仕掛ける。

ブリューナク「───」

まずは展開を阻害している破術師を戦闘破壊し、そこから展開しようという雫の算段、しかし機兵がそれを想定しないはずなどない。

ブリューナク「伏せカードオープン───」

オープンと同時に、破術師へ攻撃を仕掛けたメロウガイストの全身がみるみる凍りついてゆく───

雫「！？」


ブリューナク「罠カード───『氷結界』」


《氷結界
ひょうけっかい
/Ice Barrier》 †
通常罠
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：相手モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。
その相手モンスターは、攻撃力が０になり、表示形式を変更できず、効果は無効化される。
(2)：墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキからレベル５以上の水属性モンスター１体を墓地へ送る。
その後、自分の墓地から水属性モンスター１体を選んで手札に加える事ができる。
この効果の発動後、次の自分ターンの終了時まで自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。


ブリューナク「この効果により、戦闘を行う相手モンスターの効果を無効にし、その攻撃力を───０にする！！」

雫「───！」

『イビリチュア・メロウガイスト』[ATK 2100→0]

氷漬けになってしまったメロウガイストの攻撃は破術師の結界を打ち破ることなどできず、反射した衝撃波が雫へと襲いかかる。

雫「…っ…！！」【LP 8000→7000】

破術師は守備表示だったためメロウガイストは破壊されず済んだが、氷結界による凍結は次のターン以降も続く。このままでは格好の的だ。

ブリューナク「思い知ったか……シズク、貴殿には万が一の希望もない！」

雫「……っ…はぁ……ッ…はぁ…！
たとえ希望がなくたって…！！諦める理由にはなりません…っ！！」

それに、そう簡単に破術師を突破させてくれるとも、雫は思っていない。

だからこその、“このカード”だ。

雫「───カードを2枚伏せて、ターンエンド！！」

ブリューナク「……これでも諦めぬと言うのか……面白い！！ならば貴殿には、最上級の敗北をくれてやろう！！」

◉TURN:０３◉

ブリューナク「ワタシのターン！ドロー！」[手札 1]

力強く引いた１枚。それを確認した機兵はすかさず墓地の効果を発動させた。

ブリューナク「ワタシは墓地の『氷結界』を除外し、効果発動！！」

(2)：墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキからレベル５以上の水属性モンスター１体を墓地へ送る。
その後、自分の墓地から水属性モンスター１体を選んで手札に加える事ができる。
この効果の発動後、次の自分ターンの終了時まで自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。

ブリューナク「デッキから『氷結界の虎将 ウェイン』を墓地へ送り、そのまま墓地のウェインを手札に加える！」

《氷結界
ひょうけっかい
の虎将
こしょう
ウェイン/General Wayne of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星５/水属性/戦士族/攻2100/守 400
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：相手フィールドにモンスターが存在し、
自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「氷結界」魔法・罠カード１枚を手札に加える。
(3)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
フィールドから相手の墓地へ送られる魔法・罠カードは墓地へは行かず除外される。

雫「…！」

ブリューナク「…手札1枚では大した展開もできないだろうと思ったか───まだまだこんなものではないぞ！手札のウェインの効果！」

(1)：相手フィールドにモンスターが存在し、
自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。


雫「───っこの瞬間！罠発動！『儀水鏡の幻影術』！！」

《儀水鏡
ぎすいきょう
の幻影術
げんえいじゅつ
/Aquamirror Illusion》 †
通常罠
手札から「リチュア」と名のついた儀式モンスター１体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚した儀式モンスターは攻撃できず、
エンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。

雫「───更に！」

雫の足元で、もう１枚の伏せカードが起き上がる。

雫（和泉さん…っ！今こそあなたから貰ったカードを使う時───！）

ブリューナク「…！」

雫「この発動に対して、罠カード『星逢の天河』を発動！！」

(1)：手札の儀式モンスター１体を相手に見せて発動できる。
そのモンスターとはカード名が異なり、レベルが同じ儀式モンスター１体をデッキから手札に加える。

雫「私は手札から公開するのは『イビリチュア・ジールギガス』！！」

『イビリチュア・ジールギガス』☆10


チェーン③『星逢の天河』
デッキからジールギガス以外の☆10儀式モンスターを手札に

チェーン②『儀水鏡の幻影術』
手札から「リチュア」儀式モンスター1体を特殊召喚(攻撃できずエンドフェイズに手札に戻る)

チェーン①『氷結界の虎将 ウェイン』
自身を手札から特殊召喚


ブリューナク「…！レベル10の儀式モンスター…！貴殿のデッキには、ジールギガス以外にも入っていると言うのか…！！」

雫「…はい！あなたの放つその“氷結界”の冷気を受けて、私のデッキは進化します！！」

やがて、周囲を凍てつかす冷気が光となって雫のデッキへと集まってゆく───

雫「エリアル───その光を受け、真の力を解放してください！！」

直後。

ぴちょん、と、水滴の落ちる音。

雫「───」

雫を中心に波紋が広がり、デッキから弾き出された───燦然と輝く1枚のカードが雫の手に宿った。

雫「そして───『儀水鏡の幻影術』の効果により、このカードを手札より特殊召喚───！」


手札に加えたカードを天高く掲げると、雫の背後に突如現れた儀水鏡が怪しげな輝きを放つ───


雫「来てください───『イビリチュア・ネーレイマナス』！！」


黒い靄の中より、それは現れた。
巨大な魚と融合した、半人半魚の青髪の少女。

ブリューナク「───！」

しかし、儀水鏡の力を使用して変異した他のイビリチュアがそれぞれ禍々しい姿をしているのに対し、このネーレイマナスは違う。
氷結界の力を得て、その身は神々しく光り輝いていた。


『イビリチュア・ネーレイマナス』[ATK 3000]☆10


ブリューナク「……『イビリチュア・ネーレイマナス』…だと…！？」

データに無いモンスターの出現に戸惑う機兵。

ブリューナク「…だがそんなモノ、所詮は幻影術により産み出された幻に過ぎん！！
現れよ、『氷結界の虎将 ウェイン』！！」[ATK 2100]☆5

雫「幻かどうか、すぐにわかりますよ…っ！」

ブリューナク「戯言を…！特殊召喚されたウェインの効果！！デッキから『氷結界』魔法・罠カードを───」

手札に加える───と言いかけ、異変に気付く。
ウェインの身体が、水泡に包まれたのだ。

ブリューナク「───！」


雫「───『イビリチュア・ネーレイマナス』の効果」


(3)：１ターンに１度、相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。
自分フィールドの「リチュア」儀式モンスター１体を選んで持ち主の手札に戻し、
その発動を無効にし持ち主のデッキに戻す。


雫「ネーレイマナスを手札に戻す事で、その効果を無効にしてデッキに戻します！！
〝リチュアル・ミラー・リフレクション〟！！」

ブリューナク「何…ッ！？」

水泡に包まれたウェインは機兵のデッキへと舞い戻るが───

ブリューナク「…だが、状況は何一つ変わっていない事を忘れるな！墓地の『氷結界の随身』の効果！」


(2)：このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベル３以上の水属性モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターのレベルを２つ下げ、このカードを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


ブリューナク「場の『氷結界の破術師』のレベルを2つ下げ、随身は復活する！」

『氷結界の破術師』☆3→1

『氷結界の随身』[ATK 500]☆2

一度の妨害では止まらない。墓地から次々と効果を発動し展開を伸ばしてゆく。

ブリューナク「続けて手札から『氷結界の依巫』を特殊召喚！」[ATK 1000]


《氷結界
ひょうけっかい
の依巫
よりまし
/Speaker for the Ice Barriers》 †
効果モンスター
星４/水属性/魔法使い族/攻1000/守1800
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2)：自分フィールドに他の「氷結界」モンスターが存在する限り、
相手フィールドの守備表示モンスターは表示形式を変更できない。
(3)：自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合、
墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分フィールドに「氷結界トークン」（水族・水・星１・攻／守０）１体を特殊召喚する。


雫「…！」

伏せカードも盤面の妨害札も失った雫に対し、一切の容赦なく展開は続く。

ブリューナク「…まだだ！ワタシは場のレベル4以下の水属性モンスター『氷結界の破術師』と、魔法使い族モンスター『氷結界の依巫』を墓地へと送り───憑依合体！！」

雫「…っ…！？」

ブリューナク「デッキより現れよ───『憑依覚醒-ガギゴバイト』！！」


《憑依覚醒
ひょういかくせい
－ガギゴバイト/Awakening of the Possessed - Gagigobyte》 †
効果モンスター
星５/水属性/爬虫類族/攻2000/守 200
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードは自分フィールドの表側表示の、
魔法使い族モンスター１体とレベル４以下の水属性モンスター１体を墓地へ送り、
手札・デッキから特殊召喚できる。
(2)：このカードの(1)の方法で特殊召喚に成功した時に発動できる。
相手の手札をランダムに１枚選んで墓地へ送る。
その後、お互いにデッキから１枚ドローする。
(3)：このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「水霊術」カードまたは「憑依」魔法・罠カード１枚を手札に加える。


雫「…チェーンブロックを組まずに、いきなりデッキからモンスターを召喚するなんて…っ！」

ブリューナク「それだけでは無い！この方法で特殊召喚されたガギゴバイトの効果───相手の手札をランダムに1枚墓地へ送り、その後お互いに1枚ドローする」

雫「───！」

ブリューナク「貴殿が今まで多くの相手を苦しめてきた手札破壊効果だ。その味を思い知れ───」


簡易的な水霊術により生み出された魔手が雫に迫る───その時だった。


雫「───ぁ」


雫の脳内に再び蘇った、いつかの日の記憶。




〜〜〜〜



「───私ね。雫ちゃんのお姉さんは、きっと生きてると思う」

「…どうして、そう思うんですか…？」

「…うまくは言えないんだけど、私が、お姉ちゃんだから…かな。お姉ちゃんは、妹を置いていったりしない…って思うんだ」

「───」

「だから、きっとどこかで、雫ちゃんを見守ってくれてると思う」

「───」


和泉「それでね、雫ちゃん。そのカードなんだけど」

雫「───？」

「七夕がモチーフになっててね。1年に1度しか会えない織姫と彦星が天の河の下で会うそのシーンがイラストに描かれてるんだ」

「……はい。とっても素敵なイラストです」

「だからさ───」

「───」

「織姫と彦星みたいに、どれだけ時間がかかっても、ふたりがこの星の下で再び巡り逢えるように、って意味も込めて、このカードを雫ちゃんに渡しておくね」






それは、決闘機兵製造工場にて、姉・瑞希との最悪の再会を果たす前日の記憶───




〜〜〜〜




雫「───この…瞬間！！」

反射的に、雫の墓地に眠る1枚が輝きを放つ───

雫「…墓地の…っ！！『星逢の天河』の効果発動っ！！」

(2)：墓地のこのカードを除外し、手札から儀式魔法カード１枚を墓地へ送って発動できる。
この効果は、その儀式魔法カード発動時の儀式召喚する効果と同じになる。

ブリューナク「───何…ッ！」

それは、ある意味“打たされた一手”。

雫「手札から儀式魔法『リチュアの氷魔鏡』を墓地へ送る事で───その効果を適用させます」

しかし、この局面を打開には、充分すぎる一手だった。

ブリューナク「…馬鹿な…！！罠カードによる儀式召喚だと…！？」

雫「───『リチュアの氷魔鏡』の効果発動！！」


《リチュアの氷魔鏡
ひょうまきょう
/Gishki Nekromirror》 †
儀式魔法
「リチュア」儀式モンスターの降臨に必要。
(1)：相手フィールドの表側表示モンスター１体をリリース、
またはレベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、
手札から「リチュア」儀式モンスター１体を儀式召喚し、自分はその元々の攻撃力分のＬＰを失う。
(2)：このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地の「リチュア」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターをデッキの一番上に戻し、このカードをデッキの一番下に戻す。


雫「…このカードは、今までの儀式召喚の常識を根本から覆すカードです」

ブリューナク「…ッ…？」

雫「儀式の生贄は───あなたの場の『氷結界の虎将 ガンダーラ』」

ブリューナク「───！？」

言葉の意味が理解できず、処理が追いつかない。
しかし一つだけわかるのは、自分の場のガンダーラが生贄となり、相手の場には再びあのモンスターが現れるというそのテキスト通りの事実だけ───

ブリューナク「…ワタシの場のモンスターを、レベル関係無くリリースし、儀式召喚を行うだと…！？
そんなこと…あって良いハズがないッ！！」

激しい抗議も、意味をなさない。
雫の背後には巨大な鏡が現れ、生贄に指名されたガンダーラが抵抗虚しく鏡の中へと吸い込まれ───



雫「降臨せよ！！
正義も悪も映し出し───深海を統べる叡智の女神！！
『イビリチュア・ネーレイマナス』！！」



鏡の中より、再びそれは現れた。


『イビリチュア・ネーレイマナス』[ATK 3000]☆10


───が、直後、


雫「───ぃぎ……ッ…ァぁああぁあァぁあっっ！！」【LP 7000→4000】

雫の身体を激痛が襲う。

ブリューナク「…！？」

その痛みは雫のライフを抉り取り、鏡の中へと吸い込まれた。

雫「…ただし、強力なカードには当然…っ…リスクも伴います…！
この効果で儀式召喚したネーレイマナスの攻撃力分……っ…！3000のライフを…私は失う───」

ブリューナク「自らのライフまでも生贄にしたと言うのか……ッ……だが！ガギゴバイトの効果は止まらない！！貴殿の残り2枚の手札の内1枚を墓地へ送らせて貰う！！」

雫「………！」

手札→墓地
『グリム・リチュア』

雫「墓地へ送られたのは『グリム・リチュア───大当たりです」

ブリューナク「…何…ッ？」

ガギゴバイトの処理でお互いにカードを1枚ずつ引き───

雫[手札 2]

ブリューナク[手札 1]

───処理後。

雫「儀式召喚したネーレイマナスの効果！！」


《イビリチュア・ネーレイマナス/Evigishki Neremanas》 †
儀式・効果モンスター
星１０/水属性/魔法使い族/攻3000/守1800
「リチュア」儀式魔法カードにより降臨。
(1)：このカードが儀式召喚に成功した場合、
自分の墓地の水属性モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
(2)：このカードはＥＸデッキから特殊召喚されたモンスターとの戦闘では破壊されない。
(3)：１ターンに１度、相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。
自分フィールドの「リチュア」儀式モンスター１体を選んで持ち主の手札に戻し、
その発動を無効にし持ち主のデッキに戻す。


雫「私が墓地から復活させるのは、今さっきあなたに墓地へ送られた───『グリム・リチュア』です！」[DEF 700]


《グリム・リチュア/Gishki Grimness》 †
効果モンスター
星２/水属性/魚族/攻 600/守 700
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：水属性の儀式モンスター１体を儀式召喚する場合、
このカード１枚で儀式召喚に必要な分のリリースとして使用できる。
(2)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「グリム・リチュア」以外の「リチュア」モンスター１体を特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は儀式モンスターでしか攻撃宣言できない。


ブリューナク「…ッ…！手札破壊を逆手に取ったと言うのか！！」

雫「『グリム・リチュア』の効果！デッキから『リチュア・アビス』を特殊召喚！」[DEF 500]


《リチュア・アビス/Gishki Abyss》 †
効果モンスター
星２/水属性/魚族/攻 800/守 500
(1)：このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「リチュア・アビス」以外の守備力１０００以下の「リチュア」モンスター１体を手札に加える。


雫「まだです！『リチュア・アビス』の効果で、デッキから『シャドウ・リチュア』を手札に！」[手札 3]

壁モンスターの展開と後続の確保。
流れは雫に傾きつつあった。が───

ブリューナク「あり得ぬ…！瑞希様から与えられたこの命！！全うするまで果てるわけにはいかぬ！！
我が分身───『氷結界の龍 ブリューナク』の効果発動！！」


《氷結界
ひょうけっかい
の龍
りゅう
ブリューナク/Brionac, Dragon of the Ice Barrier》 †
シンクロ・効果モンスター
星６/水属性/海竜族/攻2300/守1400
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：手札を任意の枚数墓地へ捨て、捨てた数だけ相手フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを持ち主の手札に戻す。

満を持して発動したブリューナクの効果。
辺りの冷気が瞬間的に強まった。

ブリューナク「…残り1枚の手札を捨て───と言いたいところだが、氷結界が効果を発動する為に手札を墓地へ送る場合、代わりに墓地の『氷結界の照魔師』を除外する事ができる！照魔師の魂を贄に、ネーレイマナスよ！主人の元へと帰るが良い！！」

墓地→除外
『氷結界の照魔師』

対象
『イビリチュア・ネーレイマナス』
持ち主の手札に戻す。


雫「───そう簡単にはいきません！一度場を離れたネーレイマナスは、再びその効果を使えます！ネーレイマナスの効果、発動！！


(3)：１ターンに１度、相手がモンスターの効果を発動した時に発動できる。
自分フィールドの「リチュア」儀式モンスター１体を選んで持ち主の手札に戻し、
その発動を無効にし持ち主のデッキに戻す。

雫「ネーレイマナスを手札に戻して───ブリューナクの効果を無効にし、EXデッキへと戻します！！
〝リチュアル・ミラー・リフレクション〟！！」

氷結界の龍と叡智の女神による激しい衝突の末、互いのエースモンスターはそれぞれ手札・EXデッキへと吹き飛ばされた。

雫「───」

ブリューナク「───」

両者しばしの沈黙を経て、

ブリューナク「…まだ…だ！ワタシは『ジェネクス・ウンディーネ』を召喚！！」[ATK 1200]☆3


《ジェネクス・ウンディーネ/Genex Undine》 †
効果モンスター
星３/水属性/水族/攻1200/守 600
(1)：このカードが召喚に成功した時、
デッキから水属性モンスター１体を墓地へ送って発動できる。
デッキから「ジェネクス・コントローラー」１体を手札に加える。

ここまで温存していた召喚権による、ダメ押しの一手。

雫「…まだ召喚権が…っ…！」

ブリューナク「ウンディーネの効果により…ッ、デッキの『フィッシュボーグ・ランチャー』を墓地へ送り、デッキから『ジェネクス・コントローラー』を手札に！」[手札 1]

雫「…！」

ブリューナク「…更に！墓地の『フィッシュボーグ・ランチャー』の効果！！」

《フィッシュボーグ－ランチャー/Fishborg Launcher》 †
チューナー・効果モンスター
星１/水属性/魚族/攻 200/守 100
このカード名の効果は１ターンに１度しか使用できず、
このカードをＳ素材とする場合、水属性モンスターのＳ召喚にしか使用できない。
(1)：このカードが墓地に存在し、「フィッシュボーグ－ランチャー」以外の
自分の墓地のモンスターが水属性モンスターのみの場合に発動できる。
このカードを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。


ブリューナク「『フィッシュボーグ・ランチャー』を墓地から特殊召喚！！」[DEF 100]☆1 チューナー

雫「チューナー…モンスター…！」

ブリューナク「ワタシはレベル3の『ジェネクス・ウンディーネ』に、レベル1の『フィッシュボーグ・ランチャー』をチューニング』！！」


◉◉◉☆３+☆１=☆４◉◉◉


ブリューナク「───シンクロ召喚！！現れよ！『水晶機巧-クオンダム』！！」[ATK 1800]☆4

雫「…くっ…！」

ブリューナク「───バトルフェイズ！」

機兵の場には3体のモンスター。

『憑依覚醒-ガギゴバイト』[ATK 2000]

『水晶機巧-クオンダム』[ATK 1800]

『氷結界の随身』[ATK 500]


そして雫の場にも3体のモンスター。

『グリム・リチュア』[DEF 700]

『リチュア・アビス』[DEF 500]

『イビリチュア・メロウガイスト』[ATK 0]


ブリューナク「クオンダム！！まずはグリム・リチュアを攻撃！！」

『水晶機巧-クオンダム』
[ATK 1800]
───VS───
[DEF 700]

ブリューナク「…続けてガギゴバイト！！攻撃力が0となったメロウガイストを攻撃せよ！！」


『憑依覚醒-ガギゴバイト』
[ATK 2000]
───VS───
[ATK 0]
『イビリチュア・メロウガイスト』


雫「…くっ…ぁぁぁあぁあ！！」【LP 4000→2000】

闇の決闘により現実となった痛みが雫を再び襲う。
今の局面、氷結界の随身でメロウガイストを攻撃していれば雫のモンスターを全て破壊できたのだが、機兵はダメージを優先した。

雫「はぁ…っ…はぁ…っ…！ぁ……ッ…ぐ……っ…」

それは、闇の決闘において相手の戦意を喪失させるのに有効な手段であると同時に、『リチュアの氷魔鏡』を使うのに必要なライフを残してはいけないと判断してのことだった。


ブリューナク「……ターンエンドだ」



◉TURN:０４◉


そして迎えた雫のターン。

雫は朦朧とする意識の中で、カードを引くためデッキの上に指を乗せる。

雫「私…の…、…ターン…っ」

寒さでかじかむ指。唇は震え、歯がカチカチと音を立てる。
そんな雫の様子を見て、

ブリューナク「…理解、できぬ」

機兵は言う。

ブリューナク「呪われし力の代償は大きい…。その身体で…、一体何が成せると言うのだ…」

『呪われし力』。また、その言葉だ。

雫「…はぁ…っ…！はぁ……ッ…。
呪われた…力…、って、おとぎ話の中の話……ですよね。和泉さんから…、聞いた事があります…」

過去に和泉から聞いた、端末世界の『リチュア』の話。
魂を生贄に肉体を強化する儀式の話。
しかしその話を聞いてからも、雫の中でずっと変わらない思いがあった。

雫「……でも、私は決して、使い方を誤ったりしません」

ブリューナク「───…！」

雫「使い方さえ間違わなければ───その力に、良いも悪いもないって思います」


それは、
姉───瑞希へ宛てた言葉でもあった。


雫「私は」


大好きなお姉ちゃんと話がしたい。

大切な友達を助けたい。


雫「その為に、この力を使います」


だから───


雫「───この痛みを、“呪い”だなんて言わないでください」





To Be Continued…