DRAW:７８ “精霊王”ルナ光臨　作：人喰い

(78)



◉結維side◉
〜山岳エリア・洞窟前〜


結維「ーーーこれで……終わりよ…ッッ！！ フェアリー・アーチャーの効果発動！！」


終焉の焔「がぁぁああっふぁあぅぁああっっ！！」【LP 1000→0】


結維「……はぁ…！ はぁ…ッ、全員…倒してやったわよ…」

身体は……まだ動く。
しかし、私が歩き出そうとした、その時だった。



？？「…かなりハデにやってくれたねー…」


1人の女性の声。
女性は近づいてくる。

結維「…！！」


巨乳の女子「…こんにちは！ “右腕ちゃん”！」

結維「…！ 私の事を知っているの…！？

巨乳の女子「いや、実はあんまり知らないんだー！ あはは！ って訳で色々聞かせてもらおうって思ってーーー“左腕ちゃん”の事もね」

結維「………！！」

巨乳の女子「それにしても、精霊反応が無いから随分探したよー、精霊のカードどっかに隠した？」

結維「…私は精霊のカードを手放したりなんかしてませんよ」

巨乳の女子「…まぁいっか！ じゃあさっさと私に精霊渡しちゃってよ」

結維「…残念ながらそれは出来ません」

巨乳の女子「…じゃあ実力行使で♪ と言っても、もう君に戦える力なんて残ってないと思うから、すぐ終わるかな？」

結維「……っ！」

この人の言う通り……流石にもう…、決闘をするだけの力は…っ！


ここまで……なの…！？



巨乳の女子「……ッ！」

目の前の女性は小型の機械を一瞬見て何かに気づき身構える。

“それ”は私にもわかった。
“なにか”が近づいてくる、そんな気配。






？？「…ぜぇぇえぇええぇぇえいっっ！！」




巨乳の女子「！！」

結維「……！？」

私の背後……森林エリアの方からものすごい勢いで駆けて来たのは、思わず見入ってしまう美しい金髪に、キャップ帽をかぶった長身の女性だった。



メアリー「ーーーハァイ♪ ワタシは『メアリー』。眼鏡のお嬢ちゃん、助太刀致すネ！」


レラ『…若干日本語がおかしいわよメアリーっ』

カードの精霊らしき金髪の女の子がメアリーと名乗る女性の後を追って来る。

結維「…あなたたちは…？」

メアリー「…ワタシはメアリー！『メアリー=ベイクウェル』！ WDCSのヨーロッパ圏代表、ってとこネ！」

レラ『…あ、私はメアリーの精霊「霊獣使い レラ」って言いますー。ま、私達、要はあなたの味方よっ』

結維「！」

味方…？ 助かった…っ！？

巨乳の女子「…ちょっとちょっとぉ！ 勝手に割って入んないでよぉ！ ただでさえ時間が無いってのに〜っ！」

メアリー「…あー、悪いねーっ、でも生憎ワタシも急いでんのよねー……っ！ あ、眼鏡のお嬢ちゃん」

結維「…？」

メアリー「…出会ったばっかでなんだけど、お嬢ちゃんそこそこ“できそう”だからさ。チョット頼みごといいかな？」

結維「…なんでしょう…？」

メアリー「ここに来る直前で、ゴスロリ風の女の子がセントラルホールの方に走って行くのを見たんだけど、多分避難しそびれた一般人なんだよね…」

結維「！！！」

鈴華……っっ！

メアリー「セントラルホールに向かった訳じゃ無いとは思うけど……今セントラルホールの付近はかなり危険な状態だから、その子を見つけて安全な場所まで避難させてほしいのよ。OK？」

結維「……わかりました」

メアリー「……？ ごめんねー、お嬢ちゃん。本来はワタシが声かけるべきだったんだろーけど、不覚にもすぐ見失っちゃってさ…」

結維「…構いません」

元はと言えば、私が悪いのだから……っ！

結維「…助けていただき、ありがとうございます」

私は一言お礼を言って、この場をメアリーさんに任せて鈴華を探しに森林エリアの方に駆け出す。


巨乳の女子「…あっ！！ 待ってってば！」

メアリー「…おっと、こっからはワタシが相手よ……っ！！」

巨乳の女子「……ッ！ マイン様……ごめんなさい……！ すぐにはそっちへ向かえなそうです…っ！」






〜〜〜



結維「ーーー！」

セントラルホールの周りに、白い柱みたいなのが……！ さっきまではあんなのなかった……一体あの場所で、何が起きているの……！？


私の足…！！ もっと早く…っ！！ 動いてよ…ッ！！
















遊戯王 Ph.X DRAW:７８
《“精霊王”ルナ光臨》















◉明日人side◉
〜セントラルホール付近の森林地帯〜


真和「ーーーさぁ行け、僕のモンスター達」


『ブンボーグ001』[ATK 3500]
『ブンボーグ002』[ATK 500]
『ブンボーグ003』[ATK 3500]
『ブンボーグ003』[ATK 3500]
『ブンボーグ003』[ATK 3500]


明日人「……なんだよ……これ…ッッ！！」

真和「…美しい数字の並び……！ この数字に埋もれて倒れる事を誇りに思え…！！


明日人「ーーーがぁぁああぁぁああっっ！！！」【LP 7300→0】


真和「……授業は終わりです。君の精霊のカードと、後ろで倒れている男の精霊も頂こう」

明日人「……ッ…！！」

俺の意識が朦朧とする中、最後に聞こえたのは、

ザッ…ザッ…

と、誰かが芝を踏み近づく音だった。






男「ーーーそこまでだ。これ以上貴様らに精霊を渡すわけにはいかない」


真和「…！！（この男……潜ってきた戦場の数が明らかに違う…！！）」

放浪「……ッ…お前、何者だ？」

男「…俺は名も無き次元の旅人だ。貴様らを斬りに来た」

真和「…仕方ないですね。間も無くリミットです。ここは退くのが100%正しい」

放浪「…チッ……！ また逃さなきゃなんねぇのか」

男「…随分と判断がいい。どうやら精霊王がこちらに来られたようだからな。抵抗したところで貴様らに勝ちは無い」

真和「…言ってくれますね…」

男「…そして忘れるな。終焉の焔には“次元の刃”が向けられたという事をーーー」

真和「……！ 行きますよ、放浪」

放浪「…俺に指図するな」


ザッ！！


男「……行ったか…。
……どうやらこの少年達は、まだまだ鍛える必要があるな…」







◉火群side◉
〜セントラルホール前〜





ルナ『ーーーそこまでです。マイン』




透き通った鈴の音の様な声が響く。


マイン「……精霊王……ッ！！」

ルナ『…マイン、直接出向くのが遅くなって、すみませんでした』

マイン「…ッ！ なぜ貴様が謝る…ッ！！」

ルナ『…貴方は私に「憤怒」の感情を向けている…。ならばそれに対し「慈愛」を授けるのが、「王」としての務めだからです』

ニクス（……『王』としての務め……か…）

マイン「貴様のその甘えた考え…ッ！ やはり虫唾が走る…！！」

ルナ『貴方の能力をそのランプに封じ込め、平和な人間界に送る事で、“人の心”というものを分かって頂きたかったのですが……。まさかランプを盗み出した挙句、人間界の者と徒党を組み反乱を起こすとは…）

千愛（…マインを人間界に送ったのには、そんな理由が…！）

ルナ『……私の見通しが甘かった所為で、人間界には多大な迷惑をおかけしました。本当にすみません』

精霊王はくるっと振り返り、俺の目を見て謝罪の言葉をかけた。
どこか幼げなのだが、とても綺麗な顔立ちで、エメラルドグリーンの澄んだ瞳が俺を優しく見据える。

マイン「……だが、それにしても人間界へ来るのが早すぎる…！ 俺と闘い、俺の力を封印した事で、10年やそこらでは回復できない程の力を消耗したはずだッ！」

ルナ『…ええ、今の私はまだ完全ではないので、私だけの力では人間界への扉を開く事は出来ません…。ですがある団体の協力で、私はこうして人間界へ来ることができました』

マイン「………ククク…ッ、なるほどな…。しかし俺からしてみれば、貴様から来てくれたのは好都合だ…」

ルナ『ーーー強がりは止しなさい。貴方はもうすでに今日の活動限界を超えています』

マイン「……ッッ！！」

火群「…！」

時間が無いっていうのは、活動限界が迫っていたからだったのか…！

マイン「…ならばどうするつもりだ…、今ここで俺を殺すか？ 貴様の『慈愛』とやらで」

ルナ『ただ武力をもって解決する事は容易です。しかしそれではまた新たな復讐の種を生み、根本は何も変わりません…。
それに、弱った貴方は死しても、その恨みは永遠に、人間界にも精霊界にも残る事でしょう』

マイン「……」


ルナ『ーーーですから日を改めて、互いに全力の状態で雌雄を決する事と致しましょう』


マイン「……！！」

ルナ『ただし闘うのは、あなた方「終焉の焔」とーーーこの者達人間界の決闘者です』

火群「……ッ！！？」

マイン「……なん、だと…？」

火群「……ッ、待ってください…ッ！ それじゃあまた、人間界に危害が…ッ！！」

ルナ『…度々ご迷惑をおかけしてすみません。ですがやはり、マインの膨れ上がった憎悪に満ちた心は……あなた方『人間』でないと正す事はできないと、思うのです』

火群「……っ…」

ルナ『…実際にマイン、貴方は市瀬火群との決闘で、多少心が揺らいだ……違いますか？』

マイン「勝手な事を言うなッ！
……だが、精霊王、貴様を葬る為にはまだ多くの精霊が必要だと言うのも事実…！」

ルナ『…ええ、そのはずです』

マイン「ーーー人間界の者共との決闘を受けよう」

火群「………！！」

マイン「…ただし終焉の焔が勝利した際は人間界の精霊を全て我らの物とした上で、精霊王、貴様を葬る」

ルナ『…その時は私も全力で貴方のお相手をしましょう』

火群「…え…っ！？ ちょ…ッ」

ルナ『…市瀬火群。あなた方にも、少なからず終焉の焔と闘う理由はあるはずです』

火群「……でも…っ！」

いいのか？ こんな突然の勝負を受けてしまって…。奴を倒せるこのチャンスを逃して……次勝てる保証なんてないのに…！
負けたら全部、失うんだぞ…！？



ニクス『ーーー終焉の焔との全面対決、受けよう』



火群「…ニクス…！？」

ルナ『…貴方はーー』

ニクス『市瀬火群の持つ精霊のカード、「炎王神獣 ガルドニクス」だ』

ルナ『…貴方が不死鳥の…。話はそこにいるチアガールから聞いています』

千愛『！』

火群「…いやっ、ちょっと待ってくれって！ こんな勝負…、本当に受けるのか…？」


ニクス『ーーーああ、私達は勝つからな』


火群「……ニクス…っ」

ニクス『だがそのためには、最初から私達が力を合わせなくてはならない。協力してくれるか？ 火群』

火群「……ったく…。わかったよ！」

ニクス『…火群…！』

火群「この勝負受けるぜ…ッ！ マイン！！ 今度こそお前達とちゃんと決着をつける…ッ！！」

マイン「………」

ルナ『…では詳細はまた後ほど追って連絡します。それまでは両者とも個人での抗争は一切禁止です。身体を休めることに専念してください』

マイン「………今日のところは退いてやる。…と、言いたいところだが、勝負をせずともここにいる貴様らの精霊だけは頂いていくぞ……ッッ！！」

火群「……なに…ッ！？」

ルナ『……っ…？』


マインの左手元を見てみると、ゴスロリ風の衣装の女の子が首を掴まれていた。

火群「…おい…ッッ！！ その子…！！ 一般人じゃないか…ッ！？」

マイン「先ほどからその茂みの奥に隠れていたのでな……ッ、このか細き首を握り潰して欲しくなければ…、精霊のカードを渡せ…ッ！！」

ルナ『…ここまで堕ちましたか…ッ、マイン…！』

ニクス『…そんな無茶が通ると思うなッ！！』

ミシミシ……ッッ

少女「…あぁあぁぁああぁあぁあぁあっっっ！！！ 痛い…っ！！ 痛い……ッッ！！ やめて…！！」

ニクス『…！！』

マイン「…迂闊に近づくなよ、不死鳥。
俺には精霊の位置を示すレーダーがある…。貴様ら以外の精霊が死角から来ようと、対処するのは容易い。例えばーーー」

マインは突然、後方へ右腕を振り回した。
そしてその拳がマインの後ろから奇襲を仕掛けた人物の腹部に直撃する。



戒「……ッッが…ッはッッ…！！！」


火群「…戒…ッ！！？」

戒「……バケモノか…こいつは…！！」

そして戒はマインの拳を受け、その場に力無く倒れ込んでしまう。


マイン「ククク……ッッ！！ ハァーッハッハァッ！！ 丁度いい、貴様の精霊も頂こうか…。
…これでわかっただろう。貴様らの立場が」

火群「…くっ……そ…！！」

最後の最後にしてやられた…！！
レーダーで精霊の位置がわかるってなら、俺たちは下手に動けねぇし、外からの助けも……！
ニクスがいなきゃ奴らには絶対勝てない…！！
けど、あの女の子を見殺しにするなんて…！ 絶対にできない……ッ！！


雫「ーーー火群さん」

火群「…柏木…さん…っ？」

雫「…大丈夫。大丈夫ですよ。これを見てください…っ！」

火群「！！！」

柏木さんが俺に差し出したのは、結維さんの『左腕』ーーー
そしてその義手の中には、１枚のカードが入っていた。


火群「ーーー『マスター・ヒュペリオン』……！！！」







ーーーそして刹那。




音もなく近づいた“右手”が、マインの左手首を切断した。

マイン「……ッッッ…！！！」


マインの左腕は手首を境に二分され、掴まれていた少女はアップで二つに束ねた巻き髪を揺らし空中へと投げ出される。

少女「ーーーッ！」

だがその少女の身体は、すぐに空中で固定される。
音も無く近づいた右腕によって抱きかかえられたのだ。










結維「ーーー鈴華、それにみんな。遅くなってごめん！！」





鈴華「……結維……さん…っ！？」














To Be Continued…




《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:７９ 終結を告げる意思




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙