DRAW:２０５ 栄光の間　作：人喰い

(205)



〜生命の樹内部〜


橙色に包まれた広間で続く、火群と決闘機兵による決闘は、いよいよ大詰めといったところだったーーーーー

火群【LP 2600】
(魔法)
『炎王の孤島』(フィールド)
伏せ:1
手札:1
墓地:炎王獣ダンディx1 キリン x1 バロン x1 九尾 x1 ガネーシャ x1
除外:幼炎王獣 x1

機兵【LP 8000】
(モンスター)
『魔轟神獣 ユニコール』[ATK 2300]
伏せ:2
手札:2
墓地:レスキューキャットx1 ケルベラルx1 カラントーサx1 増Gx1 Dクロ x1



◉TURN ０６◉


火群「ーーーー破壊されたガネーシャの効果！！」

(2)：このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
「炎王獣 ガネーシャ」以外の自分の墓地の炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。


火群「墓地の『炎王獣 ダンディライオン』を特殊召喚！！」[ATK 1300]

三度現れた小獅子は荒ぶる炎を纏い咆哮する。そしてまだ火群の手は止まらない。

火群「……セットしていた永続魔法『補給部隊』を発動！」


《補給部隊
ほきゅうぶたい
/Supply Squad》 †
永続魔法
(1)：１ターンに１度、自分フィールドのモンスターが
戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動する。
自分はデッキから１枚ドローする。


機兵「……」

機兵は特に反応を示さず、微動だにしない。ボディから噴き出す黒焔がゆらりと揺れるだけだった。


火群「……そして、フィールド魔法、『炎王の孤島』の効果発動！
俺は手札の『炎王神獣 ガルドニクス』を破壊して、デッキから『炎王獣 バロン』を手札に！！」[手札 1]

この１連の流れで何も発動しなかった事から、決闘機兵の手札、伏せには手札を切れるカードがないことがほぼ確定したと言っていいだろう。
これで、蘇生したガルドニクスの効果で場を一掃するまでの道が整った。
しかしこのターンでDDクロウを使われた事で、その存在が火群の頭中にちらついて離れない。

火群（次のターン、頼むから引かないでくれよーーーー）

それだけを願い、

火群「…俺はこれでターンエンドだ」

火群はターン終了を宣言した。
そしてエンドフェイズの処理。

火群「……このエンドフェイズ時、ガネーシャの効果で蘇生したダンディライオンは破壊される」

小獅子は炎に包まれ、直後に火群の場の永続魔法が光りを放つ。

火群「…俺の場のモンスターが破壊された事で、補給部隊の効果発動！」

続けて墓地、手札と光が繋がるーーーー

火群「ーーーー更に破壊されたダンディライオン、バロンの効果！！」


チェーン③
『炎王獣 バロン』
手札から特殊召喚。

チェーン②
『炎王獣 ダンディライオン』
「綿火トークン」を１体、自分の場に特殊召喚。

チェーン①
『補給部隊』
デッキから１枚ドロー。


火群「バロン、そして綿火トークンを特殊召喚！！」

『炎王獣 バロン』[ATK 1800]

『綿火トークン』[DEF 0]

火群「……補給部隊の効果で１枚ドロー！！」[手札 1]

一連の処理後、機兵はこのタイミングにて１枚の伏せカードを発動させる。

機兵「……罠発動…！『強欲な瓶』…！！ コノ効果デ１枚ドロー スル…！！」[手札 3]


◉TURN ０７◉


機兵「……ワタシ ノ ターン！！ ドロー！！」[手札 4]

スタンバイフェイズ、火群の足元で猛る豪炎。
死しても蘇る、不死鳥の炎。

火群「ーーーーこのスタンバイフェイズ時、墓地のガルドニクスの効果発動！！」

火群は固唾を飲み、機兵の反応を伺う。

火群「……っ…！」

機兵「………」

またも２秒、沈黙を経て、


機兵「……チェーン ハ 無イ」


火群「……！」

その一言に安堵、墓地から不死鳥が姿を現す。

火群「ーーー墓地より現れろ！ 死しても蘇る不滅の翼！ 『炎王神獣 ガルドニクス』！！」[ATK 2700]

更に、と火群は続ける。

火群「自身の効果により蘇ったガルドニクスは、自分以外の全てのモンスターを焼き払う！
ﾘﾊﾞｲﾊﾞﾙ・ﾌﾞﾚｲｽﾞ
〝再生の業火〟！！」

不死鳥の召喚と共に業火がフィールドを荒れ狂い、互いのモンスターを一掃した。

『炎王獣 バロン』→破壊
『綿火トークン』→破壊

『魔轟神獣 ユニコール』→破壊
『ゼンマイニャンコ』→破壊


火群「まだだ…！！ 綿火トークンが破壊されたことで１枚ドロー！！ 俺の場のモンスターが破壊された事で、補給部隊の効果で更にドロー！！」[手札 3]

機兵「……！」

焦りを見せる機兵に畳み掛けるように、火群は再び墓地に手をかける。

火群「……前のターンに効果で破壊されたバロンの効果！！
デッキから『炎王炎環』を手札に！！」[手札 4]

火群「……これでユニコールを再び展開するにはまた手札を消費しなくちゃならないーーーーこの決闘、わかんなくなっただろ…？」

機兵「……ッ…、小癪ナ……ッ。
メインフェイズ ニ 移行…！」

挑発するような火群の口調に、機兵は僅かな苛立ちを見せる。

機兵「コノ 程度 デ、ワタシ ノ デッキ ガ 機能停止スル ト 思ウナヨ……！！」

火群（…ああ、そんな簡単にいくとは思ってない…！！ ここからが本当の勝負ーーーーー）

僅かな不安が残るなか、機兵は迷いの無い動作で１枚の魔法カードを発動させた。

機兵「ーーーー魔法発動！『エアーズロック・サンライズ』！！」


《エアーズロック・サンライズ/Ayers Rock Sunrise》 †
通常魔法
「エアーズロック・サンライズ」は１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：自分の墓地の獣族モンスター１体を対象として発動できる。
その獣族モンスターを特殊召喚し、
相手フィールドのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、
自分の墓地の獣族・鳥獣族・植物族モンスターの数×２００ダウンする。


機兵「……コノ効果デ墓地ノ『魔轟神獣 ユニコール』ヲ蘇生！！
更ニ、相手ノ場ノ モンスター ノ 攻撃力ヲ、ワタシ ノ 墓地 ノ獣族ノ数x２００ダウン！！」

墓地
『ゼンマイニャンコ』
『森の聖獣 カラントーサ』
『魔轟神獣 ケルベラル』
『レスキューキャット』


火群「決闘機兵の墓地には４体の獣族モンスター……！！」

機兵「ーーーヨッテ、貴様ノ モンスター『炎王神獣 ガルドニクス』ノ攻撃力 ハ ８００ダウン スル！！」


『炎王神獣 ガルドニクス』[ATK 2700→1900]


火群「……これくらい…！」

機兵「ーーーーバトル！！」

間髪入れずに宣言されたバトルフェイズ。

機兵「ユニコール！！ ガルドニクス ヲ 粉砕セヨ！！」

機兵が右手を掲げると、それに合わせてユニコールは地を蹴りガルドニクスへと突進、一瞬にして距離を詰め寄る。

機兵「……ソシテ、コノ ダメージステップ開始時、永続罠発動！！『幻獣の角』！！」

《幻獣
げんじゅう
の角
つの
/Horn of the Phantom Beast》 †
通常罠
発動後このカードは攻撃力８００ポイントアップの装備カードとなり、
自分フィールド上の獣族・獣戦士族モンスター１体に装備する。
装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分のデッキからカードを１枚ドローする。

機兵が発動したのは、最初のターンから伏せていたカード。

機兵「コレニヨリ、『魔轟神獣 ユニコール』ノ攻撃力ヲ８００アップ！！」

火群「…幻獣の角だったか…ッ…！ けど、予想してた通りだ…！！」

今まで温存して来たのは恐らく、もしガルドニクスを展開されても、コンバットトリックでガルドニクスを返り討ちにする為。
それと、伏せカードを残しておくことでこちらを少しでも動き辛くする為だと火群は考える。
しかし一旦盤面を返され手札も補充されてしまった事で、悠長に構えている余裕など無くなったのだろう。ライフ差という向こうの持つアドバンテージを活かし、無理をしてでも火群のライフを取りに来ざるを得なくなったのだ。


『魔轟神獣 ユニコール』
[ATK 2300→3100]
ーーーVSーーー
[ATK 1900]
『炎王神獣 ガルドニクス』


強化された角を構えたユニコールの、槍の如き一撃が不死鳥を貫き、超過分のダメージが火群の身体を痛めつける。

火群「……がっ…ッッ！！」【LP 2600→1500】

戦闘破壊により、互いの効果が発動する。


チェーン②『炎王神獣 ガルドニクス』
デッキから同名以外の『炎王』を特殊召喚。

チェーン①『幻獣の角』
デッキから１枚ドロー。


火群「……ガルドニクスが戦闘で破壊された時、効果発動！！ デッキから『炎王獣 ガネーシャ』を特殊召喚！！」[ATK 1800]

火群を守るために現れるガネーシャ。この段階での手札枚数差は4-3。ユニコールの無効化圏外だ。

機兵「『幻獣の角』ノ効果デ１枚ドロー！！」[手札 4]

バトルは終了し、メインフェイズ2。

機兵「……カード ヲ１枚伏セ、ターン…エンド ダ…！」[手札 3]


◉TURN ０８◉


火群【LP 1500】[手札 4]

機兵【LP 8000】[手札 3]


ライフ差は6500ーーーーしかし序盤に支払った代償に見合った見返りはあったと言えるだろう。火群は自分たちの勝利を疑わぬ真っ直ぐな瞳でカードを引いた。

火群「俺のーーーーターン！！」[手札 5]

スタンバイフェイズ、墓地のバロンが炎を巻き上げるーーーー

火群「…効果で破壊されたバロンの効果！！ デッキから『炎王獣 ヤクシャ』を手札に！！」[手札 6]

続けてメインフェイズに移行し、

火群「『炎王獣 ヤクシャ』を召喚！！」

火群「炎王の孤島の効果…！！ 俺の場のガネーシャを破壊して、デッキから『炎王獣 バロン』を手札に加える！！」[手札 6]

機兵「……！！ ココマデ手札枚数ヲ広ゲラレテシマッテハ……！」

火群「ーーーー手札調整なんて簡単にはできないよなァ！
破壊されたガネーシャの効果！！ 墓地より再び甦れ！！『炎王神獣 ガルドニクス』！！」[ATK 2700]

火群「……その後、補給部隊の効果で１枚ドロー！」[手札 7]

ドローの軌跡が火花を散らす。
手札枚数差は7-3。

ニクス『…今こそ私たちの力を見せる時だ…！！ 行くぞホムラ！！』

火群「……ああ！！ 墓地から特殊召喚されたガルドニクス１体でーーーーーオーバーレイ！！」

機兵「……！！」


火群の戦闘データを解析し尽くした決闘機兵でも、この光景はまるで予想などできなかった。それもそのはず、火群が実戦で“エクシーズ召喚”を行うのは、初めてなのだからーーーー


火群「地の底より蘇りし不死鳥よ……、悪を破壊し滅ぼす為に…ッ…〝破滅の焔〟を今こそ振るえッッ！！
エクシーズ召喚！！ ランク４ーーーーー
『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』！！」



《炎王神獣 ガルド・デストロイヤー》＊Ph.X Original Cards
エクシーズ・効果モンスター
星４/炎属性/鳥獣族/攻 3200/守 1200
炎属性レベル４モンスター×３体
このカード名のカードは1ターンに1度、墓地から特殊召喚している自分フィールドの「炎王神獣 ガルドニクス」の上に重ねてX召喚する事もできる。
①このカードがX召喚に成功した場合、このカードのX素材を全て取り除いて発動できる。相手フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×500のダメージを相手に与える。その後、自分の墓地の「炎王」魔法・罠カード1枚をこのカードの下に重ねてX素材にする事ができる。この効果で破壊したモンスターの効果は無効化される。
②1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのカード1枚を選んで破壊できる。この効果で破壊したカードの効果は無効化される。
③X召喚したこのカードが効果で破壊された場合に発動できる。自分フィールドのモンスターを全て破壊し、自分の墓地の「ガルドニクス」モンスター1体を選んで特殊召喚する。



黒焔が周囲を渦巻き、不死鳥の元で荒々しく燃え上がる。


ニクス『ーーーーはぁああぁああぁあぁぁぁあああっっ！！』[ATK 3200]


業火の中よりニクスは現れる。
真紅の翼に黒き焔を纏い、発達した両腕は金色に輝き、その姿はフェニックスよりもガルーダに近い姿へと進化を遂げていた。


機兵「……馬鹿ナ…！！ コンナ カード……ッッ！ データ ニハ………」

火群「…あるわけないだろ？ 俺も使うのはこれが最初だからな」

和泉を傷付けた“破滅の焔。
この力を、この罪を背負い生きて行くと、昨日火群は決めた。
いざ邪悪なる黒焔を自らの手中に収めてみても、その決心は揺るがない。

機兵「……シカシ コノ焔ハ……マルデ………ッ」

恐れに近い感情を露わにする機兵など気に留めず火群は右手を突き出し、叫ぶ。


火群「ーーーーガルド・デストロイヤーのエクシーズ召喚成功時、X素材を全て取り除いて効果発動！！」

機兵「ッッ！」

『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』[ORU:1→0]

火群「相手フィールドのモンスター全てを破壊し…ッ！ 破壊した数x５００のダメージを受けて貰うぜ！！
〝ブラックエンド・ヘルフレア〟！！」

放たれた黒焔がユニコールを焼き尽くし、機兵にも灼熱が襲いかかる。

『魔轟神獣 ユニコール』→破壊

機兵「…グッ……！」【LP 8000→7500】

火群「その後、墓地の『炎王の急襲』をガルド・デストロイヤーのエクシーズ素材とする！！」

『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』[ORU:0→1]

もう二度と、力に支配されたりしない。
決意は右手に焔と燈り、激しく燃える。


火群「ーーーーガルド・デストロイヤーのもう一つの効果！！ エクシーズ素材を１つ使い、フィールドのカード１枚を破壊する！！」

『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』[ORU:1→0]

不死鳥の火球は機兵の場に残された伏せカードへ向けて放たれた。

機兵「…ッ…！ 伏セカードオープン…！！ 罠発動！『光の封札剣』！！」

《光
ひかり
の封札剣
ふうさつけん
/Lightforce Sword》 †
通常罠
(1)：相手の手札をランダムに１枚選んで裏側表示で除外する。
このカードの発動後、相手ターンで数えて４ターン目の相手スタンバイフェイズに、
そのカードを相手の手札に戻す。

届く寸前で発動された罠カードから光り輝く剣が放たれ、火群の手札の１枚に突き刺さり、裏側のまま地面に張り付けられてしまう。

手札→除外
『炎王輪廻』

火群「……！ こんな隠し球まで持ってたのか……。もっと早いうちに引かれてたらヤバかったかもしれないなーーーーー」

しかしこれで機兵の盤面は空。
すかさずバトルフェイズへと移行し、


火群「……ヤクシャでダイレクトアタック！！」

『炎王獣 ヤクシャ』[ATK 1800]

炎を纏った蹴撃を機兵は右腕で受ける。

機兵「……ガッ……ッ！」【LP 7500→5700】


火群「ーーーーまだまだぁ！！
『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』の攻撃ッ！！
ﾃﾞｽﾄﾛｲ・ﾊﾞ-ﾆﾝｸﾞ
〝破滅の黒焔翼〟！！」


ニクスは黒焔纏う翼を大きく広げ、金色に輝く右腕を真っ直ぐに突き出す。
やがて、翼の黒焔が構えた右手に集約され、直径２メートル程の炎弾となって放出された。

『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』[ATK 3200]

“悪”を破壊し滅する、渾身の一撃。
その攻撃を守る術はなく、全エネルギーが機兵に直撃する。

機兵「ーーーーーッッ！！！」【LP 5700→2500】

ライフは残ったが、前のターンに火群がバロンの効果で手札に加えたカードを、機兵は記録している。

機兵「……」

敗北を悟った機兵は左腕を落とし、不死鳥の黒焔をぼんやりと眺めていた。

機兵「……コノ焔ハ、『マイン様』ノ焔ニ極メテ近イ ガ……限リナク遠イ…」


火群「ーーーー手札から速攻魔法、『炎王炎環』を発動！！」

《炎王炎環
えんおうえんかん
/Circle of the Fire Kings》 †
速攻魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：自分フィールドの炎属性モンスター１体と
自分の墓地の炎属性モンスター１体を対象として発動できる。
対象の自分フィールドのモンスターを破壊し、
対象の墓地のモンスターを特殊召喚する。


火群「場のガルド・デストロイヤーを破壊し……ッ……三度墓地より現れろ！！
『炎王神獣 ガルドニクス』ッッ！！」


『炎王神獣 ガルドニクス』[ATK 2700]


ニクス『……さて、ゲームエンドだ』


機兵「……ッ…！」

火群「…ガルドニクスの攻撃ーーーーー」


機兵（不思議……ダナ…）


火群「焼き貫け……ッッ！！」


機兵（戦ウ為ノ兵器トシテ造ラレタ存在ダトイウノニ……）


火群「ーーーーー
ーﾊﾞ-ﾆﾝｸﾞ・ｲﾚｲｻﾞ-ー
〝業火炎の抹焼熱線〟ッッ！！」


機兵（…全力ヲ尽クシタ末ノ敗北ガ………コンナニモ清々シイモノダトハナーーーーー）




機兵「ーーーーーッ……」【LP 2500→0】



◉Winner◉
-市瀬 火群-















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２０５ーーー
《栄光の間》














火群「ーーーーーハァ……っ…ハァ……っ…！ なんとか勝てたな…」

右手で汗を拭い、正面のニクスと目線を交わす。

ニクス『…一時はどうなる事かと思ったがな。
ったく、ヒヤヒヤさせる』

火群「……悪い悪い」

指先を上に向け顔の前に、ごめんのポーズを取りながら軽く謝り、ふと、５メートル程前で倒れる決闘機兵をちらと見る。

火群「……」

恐る恐る近付いてみると、細身のボディはバチバチと火花を散らし、とても動ける状態ではなさそうだった。

火群「………可哀想だよな…、闘う為だけに造られて……兵器として使われてーーーー」

機兵「……グ……グ……ギ……」

火群「…！ まだ完全に機能停止した訳じゃないのか…！」

機兵「……ガガ……ッ……貴様ノ決闘……ッ…見事ダッタ……」

機兵の目元は目の光が付いたり消えたりを繰り返していたが、かろうじて会話をする事はできるみたいだ。

機兵「…特別ニ、教エテヤロウ……、今我々ガ イル コノ場所ハ、『栄光の間』ーーーーー」

火群「…『栄光の間』だって……！？」

火群は慌ててマップを開き、現在地を確認する。
そこは確かに、元いた『王国の間』と１つ離れた橙色の部屋、『栄光の間』だった。

火群「…！」

ニクス『やはり…あの一瞬で転移させられたのか……』

機兵「…ソノ通リ……。マイン様 ノ 転移魔法 ニ ヨッテ……貴様等全員ハ別々ノ場所ヘ転送サレタノダ……」

火群「……みんなは無事なのか……！？」

機兵「…今ノ所ハ……ナ。
ダガ…、貴様等ノ実力デハ、上層部ノ連中ニハ絶対ニ勝テナイダロウ……」

ニクス『………どういう事だ？』

機兵「…何故ナラ連中ニハ、“EX魔法(エクストラマジック)”ガ アルカラナーーーーー」

そこまで言ったところで、

機兵「ーーーーーッッ！！！」

刹那。
機兵の頭部が爆散した。

火群「…！？」

ニクス『……ッ……口封じか…』

恐らく、余計な情報を話そうとすると爆破する様に、予め設定されていたのであろう。
周囲に散った機兵の破片を一つ一つ目で追いながら火群は固く拳を握る。

火群「………自分達の勝手で生み出して……、都合が悪くなったら即爆散……ってか」

ニクスも火群と同じ感情を抱いているだろう、唇を噛み、怒りを必死に抑える。



火群「……行こうニクス。まずはこの“右腕”の光が指し示す和泉の所に。
ーーーーマインをぶん殴るのはその後だ」




決意を新たに、火群は和泉の義手が示す先ーーーー『美の間』に続く道へと歩みを進めた。

しかしその時。


『美の間』へと続く道から、ガシャ……ガシャガシャ……と、何かが近づいてくる音。
よく聞いてみると、音はその隣の『峻厳の間』へと続く通路からも聞こえてきていた。

火群「…………」

火群たちは音の正体には既に気付いていたが、正直気付きたくなかったというのが本音だろう。何故ならーーーー



ｶﾞｼｬ...ｶﾞｼｬ...

機兵「決闘ダ」

ｶﾞｼｬｶﾞｼｬ...!!

機兵「決闘……ダ！！」

ｶﾞｼｬ...ｯ...!!

機兵「……決闘」


機兵「「「「決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘」」」」




進路を塞ぐようにして現れたのは、大量の決闘機兵。

数はざっと数えて、20〜30といったところだろうか。


火群「……一体であんだけつええのに……この数は流石に冗談じゃねぇぞ……ッ…！！」



機兵「「「……決闘…決闘決闘決闘」」」


機兵「ーーーー決闘 ダ」




To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２０６ 選んだ道は…






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙