DRAW:２１０ -LINK-　作：人喰い

(210)




ーーーーー2ヶ月前。6月某日。


火群「ーーーー先生は、どうして先生になったんですか？」

真和「……そんな事、市瀬には関係無いだろう。
…さっさと問題を解け。僕も君のためだけにこれ以上残るわけにはいかない」

火群「…うわ、もう俺以外全員帰っちゃったのか…！ 気づかなかった…！」

真和「…あと3問。さっきの公式を使えば簡単に解けるはずだ。やってみろ」

火群「…は、はい…！ やってみます……」




ーーー５分後。



火群「だぁぁぁぁやっと終わったぁぁぁ！」

真和「……時間かかりすぎだ。
一つの問題にあれだけ時間をかけていたら、もしもの時に咄嗟の判断が出来ずに後悔する事になるぞ」

火群「……もしもの時って…？」

真和「………そうだなーーーーー例えば、自分の命に危険が迫った時」

火群「…そうそう訪れないと思うけどなぁ…」

真和「……もしくは、目の前の人間を救いたいと思った時……とかな」

火群「………っ……」

真和「……どうした？ 市瀬」

火群「…先生には、そういう経験があったんですか…？」

真和「…」

火群「……命に危険が迫った時…。目の前の誰かを救いたいと思った時……。
先生は間違った選択をして後悔した事があるんですか…？」


真和「………」


真和はおもむろに眼鏡を掛け直し窓の外に視線を移すと、


真和「……どうかな」


そんな風にはぐらかした。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーDRAW:２１０ーー
《-LINK-》















〜生命の樹 内部・『基礎の間』〜


火群【LP 6700】
(モンスター)
『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[ATK 3200]☆9
『炎王神獣 ガルドニクス』[ATK 2700]☆8
『炎王獣 ガネーシャ』[ATK 1800]☆4
伏せ:0
手札:5
墓地:バロンx1 ガネーシャx1 クリシュナx1
ダンディx1 幼炎王獣x1 炎王輪廻x1


真和【LP 3900】
(モンスター)
なし
(P)
『ブンボーグ００５』[♦︎10]
『ブンボーグ００６』[♦︎1]
(EX)
『ブンボーグ００７』☆7
『ブンボーグ００６』☆6
伏せ:0
手札:1
墓地:003 x1 002 x1 001 x1



真和「……感じる…この樹の内部にいると……ッッ………この空間での決闘を戦い抜く為のーーーー力が…ッ…！！」


真和の場の２体のモンスターは、上空に現れた『円』の右下と左下に赤く光る矢印となってセットされ、その円の中より未知なるモンスターが姿を現すーーーー

真和「……召喚条件は…ッ……機械族モンスター２体…！！
ブンボーグ001、007を素材にーーーーーリンク召喚！！！」


辺りは光に包まれ、気を失いそうな強烈な目眩が火群を襲った。

火群「……ッッ…！！ なんだよ……リンク召喚…ってーーーーー」

それだけではない。
『円』の中からモンスターが現れた事で、火群が先程から感じていたプレッシャーもより大きくなる。

火群「……そんな…ッ…あれはーーーーーッ」

見上げると、光の中より巨大な“何か”がズシンと音を立ててフィールドに堕ちた。
それを目で追いながら腕を交差して風圧を受ける火群。

火群「……ッ…！」

EXモンスターゾーンに堕ちたそれは、楕円形の機動兵器……だろうか。中心には動力源となる球形のコアの様なものが微かに見えるが、破損しているようだ。
半壊した真空管から漏れ出る“妖気”を咄嗟に感じ取り、ニクスは眉を寄せその“妖気”を放つ存在をキッと睨んだ。



真和「現れよ……ッッ……リンク２ーーーーー『クリフォート・ゲニウス』ッッ！！！」



青い縁のカードがEXモンスターゾーンへと置かれ、黒き衝撃波が部屋全体に広がるーーーーー

『クリフォート・ゲニウス』[ATK 1800]


《クリフォート・ゲニウス/Qliphort Genius》 †
リンク・効果モンスター
リンク２/地属性/機械族/攻1800
【リンクマーカー：左下/右下】
機械族モンスター２体
(1)：リンク召喚したこのカードは魔法・罠カードの効果を受けず、
このカード以外のリンクモンスターが発動した効果も受けない。
(2)：１ターンに１度、このカード以外の、
自分及び相手フィールドの表側表示のカードを１枚ずつ対象として発動できる。
そのカード２枚の効果をターン終了時まで無効にする。
(3)：このカードのリンク先にモンスター２体が同時に特殊召喚された時に発動できる。
デッキからレベル５以上の機械族モンスター１体を手札に加える。


ニクス『……っ…！！』

火群「……『クリフォート』…ッッ……！！」

その名称に、火群たちは反応せざるを得なかった。
マインの父、八神コウの使っていた『クリフォート』の名を持つ未知なるカードーーーーリンクモンスター。
しかし、EX魔法カードに引き続き、リンクモンスター。初めて見るカードの連続で思考がまとまらない。
そんな火群の心中を察して、ニクスは火群に目配せしつつ口を開く。

ニクス『…マインは八神を打ち倒した後、八神のデッキを奪い神星樹の中へと入っていった…。奴らがクリフォートの力を手に入れていても不思議では無いーーーー』

火群「…けどそんな簡単に扱えるもんなのか…！？」

真和「……決して簡単な話では無い。
この力……、並大抵の決闘者ではとても扱えない程強力で…虚構だ…」

左手で頭を押さえ苦痛を堪えながら真和は言う。
これほど身体に影響を与えるとわかっていながらその力を使う真和の覚悟。決闘者なら理解することは容易いだろう。


真和「ーーーーー負けられない……僕は絶対に負けられないんだ…ッ…！」

火群「……！」


真和「……市瀬。お前は前に僕と教室で決闘した時、『決闘は魂と魂のぶつかり合いだ』…そう言ったな……。
ーーーーーその言葉、真実だったと認めよう」


言い終わりと同時に振り払われた左手。
周囲に怪しい空気が立ち込める。

真和「クリフォート・ゲニウスの効果発動…！！
私の場の『ブンボーグ００６』と、お前の場の『炎王獣 ガネーシャ』の効果をターン終了時まで無効化する…ッ！！」

瘴気がガネーシャを包み込もうと押し寄せる。火群は仰け反りながらも手を突き出し力強く握りしめた。

火群「…ッ…！ ガネーシャの効果…ッッ！！
モンスター効果の発動を無効にする！！」

ガネーシャを覆いかけていた瘴気は炎に包まれ跡形も無く消え、火群の場の白き不死鳥に炎が灯る。

火群「……ッその後！ 俺の場のアニマ・フェニックスを破壊する！！」

不死鳥の身体は炎に包まれ、その身を地中へと沈めていく。それと同時に火群の場全体を白炎が駆け巡った。

火群「…S召喚されたアニマ・フェニックスが破壊された場合、俺の場のモンスターは全て破壊されるーーーー」

白炎により、火群の場に残っていたガネーシャ、ガルドニクスの２体は破壊されてしまう。
その光景を見て真和は目を細める。

真和「……」

火群「…そしてアニマは……ッ…墓地の『ガルドニクス』モンスターに転生する…ッ！！
ーーーー甦れ！！『幼炎王獣 ガルドニクス』！！」[DEF 200]

真和（……わざわざ盤面を減らした……？
……いや、下手に横に広げても超過ダメージでライフ削り取られ兼ねないと読んで、的を絞らせた…と言うのが正しいかーーーーー）

だが火群も最初からこんな展開を望んでいた訳ではない。裏目も多い、苦し紛れの一手なのだ。

火群「……ハァ…ッ…はァ…！
…さぁ…、次はどう来る…ッ……？」

真和（…このタイミングではガネーシャの破壊された時の効果発動は無しか……ならばーーーー）

間髪入れずに、真和の頭上で振り子が揺れ、空中に光の弧を描き出す。


真和「ーーーーペンデュラム召喚！！」


スケール
[♦︎１]〜[♦︎１０]


上空に開いた光の穴。
前のターンに行ったそれよりも大きく、強力な光。


火群「……！！ 先生は片方のEXゾーンを既に使っている……！ ペンデュラム召喚できたとしても、手札の００３のみのはずーーーー」

ニクス『……ッ…！！ いや違うッッ！』

何かを感じ取ったニクスは叫び、真和の場を睨み腰を落とす。

ニクス『あれを見ろ…！！ 火群ッ！』

促されるままに視線を移す火群。ニクスの目線の先ーーーーークリフォート・ゲニウスの居るEXモンスターゾーンの斜め後ろから伸びる、２つの赤い矢印が目に入る。

火群「…あの矢印は…！？」

リンク召喚の際に素材となったモンスターがその矢印の位置にセットされていたのを思い出し、火群はそっと息を呑む。
あのリンクモンスターが指し示す矢印の意味まではわからない。
けれど考えていたって仕方がない。

答えなどどうせすぐにわかる事だ。

ならば今必要なのは、その“未知”に対し臆せず立ち向かう“覚悟”だけーーーーー。


真和「……僕が特殊召喚するモンスターはーーーー２体ッッ！！！ 現れろ！！ 我が僕、ブンボーグよ！！」


光の中から２体のブンボーグが姿を現し、ゲニウスの示す矢印の方向にある二箇所のモンスターゾーンへと、それぞれペンデュラム召喚された。


EXデッキ→メインモンスターゾーン
『ブンボーグ００６』[ATK 1000]＊EXデッキの表のブンボーグの数x500攻撃力アップ。枚数０の為、上昇は無し。
『ブンボーグ００７』[ATK 1000→2000]＊墓地のブンボーグの数x500攻撃力アップ。
＊ブンボーグ・ベースによりそれぞれ攻撃力500アップ。

火群「…！？ EXデッキから２体のモンスターを…！？」

ニクス『……しかしどうやら、これであの矢印の正体……そしてリンクモンスターの役割がはっきりしたな』

ニクスは落ち着いた声色で言う。対する真和は疲弊を隠せぬ表情で、

真和「…そうーーーーゲニウスから伸びるこの矢印……名は『リンクマーカー』。
リンクマーカーの示す先のメインモンスターゾーンには…、EXモンスターゾーンと同じようにEXデッキからの特殊召喚が可能……！！」

火群「……ッ…！！
リンクモンスターは…、EXデッキから複数のモンスターを展開する為の中継役って訳か……！」

直後、先のP召喚に反応して、ゲニウスが黒く怪しく光りを放つーーーー


真和「ーーーーこの瞬間、クリフォート・ゲニウスのもう一つの効果が発動！！
このカードのリンク先に２体のモンスターが特殊召喚された時、デッキからレベル５以上の機械族モンスター１体を手札に加える！」

火群「……！」

真和「……それだけではない！ 特殊召喚された『ブンボーグ００６』の効果、そして僕の場に機械族モンスターが２体同時に特殊召喚された事で、墓地の『ブンボーグ００１』の効果が発動！！」


チェーン③『ブンボーグ００６』
『幼炎王獣ガルドニクス』の表示形式変更

チェーン②『ブンボーグ００１』
自身を墓地から特殊召喚

チェーン①『クリフォート・ゲニウス』
デッキからレベル５以上の機械族サーチ


真和「…まずは００６の効果で、お前の場の『幼炎王獣ガルドニクス』には攻撃表示になってもらう！」

『幼炎王獣ガルドニクス』[DEF 200]→[ATK 200]

火群「……！！」

真和「００１は自身の効果により墓地より特殊召喚！ 更に永続効果により、場の機械族モ１体につき５００…攻撃力が上昇する…！」

『ブンボーグ００１』[ATK 1000→3000]

真和「…そしてクリフォート・ゲニウスの効果でデッキから『ブンボーグ００５』を手札に加える…！！」[手札 2]

まだ止まらない。真和はここぞとばかりに、大切に抱えていたもう一枚の手札に指をかける。

真和「……『ブンボーグ００３』を召喚ッ！！」


《ブンボーグ００３
ゼロゼロスリー
/Deskbot 003》 †
効果モンスター
星３/地属性/機械族/攻 500/守 500
(1)：このカードが召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「ブンボーグ００３」以外の「ブンボーグ」モンスター１体を特殊召喚する。
(2)：１ターンに１度、自分フィールドの「ブンボーグ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、
自分フィールドの「ブンボーグ」カードの数×５００アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。


真和「……003の効果…！！ 召喚成功時、デッキから『ブンボーグ』モンスター１体を特殊召喚する…！！
現れろ！ 『ブンボーグ００９』！！」[ATK 500→1000]

『ブンボーグ００１』[ATK 3000→4000]


《ブンボーグ００９
ゼロゼロナイン
/Deskbot 009》 †
効果モンスター
星９/地属性/機械族/攻 500/守 500
(1)：１ターンに１度、自分メインフェイズ１に発動できる。
このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで、「ブンボーグ００９」以外の
自分フィールドの「ブンボーグ」モンスターの攻撃力の合計分アップする。
この効果を発動するターン、このカードしか攻撃できない。
(2)：このカードが戦闘を行う場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
(3)：このカードが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分フィールドの「ブンボーグ」カード１枚を破壊できる。


火群「……！！ あれは…、新田と剛田の二人を倒したっていう……先生のエースモンスター…！！」


ニクス（……このタイミングで００９……ッ…？ 攻撃力を集約させて勝負を決めに来るつもりか…！？）

火群（…いや……っ…だけど先生は俺の墓地にある『炎王輪廻』の存在に気づいているはず…！ だとすればーーーー）

火群は必死に思考を巡らす。このターンを凌ぎ、生き残る為に。

火群「…まだだ……まだーーーー」



真和「ーーーーバトルフェイズ」


ようやく成されたバトルの宣言。それと同時に火群の足元から帯のような炎が螺旋状に渦巻き立ち昇る。

火群「……ッ…！！この瞬間……墓地の『炎王輪廻』を除外して、効果発動！！」


②:墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分の場の炎属性モンスター１体を選んで破壊し、デッキから「炎王」モンスター１体を手札に加える。この効果は相手ターンでも発動できる。


火群「……俺の場の幼炎王獣を破壊しーーーーデッキから『炎王獣 バロン』を手札に！」[手札 6]

火群「ーーーー続けて、 俺の場の『炎王』が破壊された事で手札の『炎王獣 バロン』を特殊召喚！
更に効果で破壊された幼炎王獣の効果で墓地の『炎王獣 ガネーシャ』を特殊召喚！！」

『炎王獣 バロン』[DEF 200]

『炎王獣 ガネーシャ』[DEF 200]

火群の場に２体のモンスターが立ち塞がる。
対する真和の場は、

【EXモンスターゾーン】
『クリフォート・ゲニウス』[ATK 1800]

【メインモンスターゾーン】
『ブンボーグ００９』[ATK 1000]
『ブンボーグ００７』[ATK 2000]
『ブンボーグ００６』[ATK 1000]
『ブンボーグ００３』[ATK 1000]
『ブンボーグ００１』[ATK 4000]

全てのゾーンを使い、計６体のモンスター。
その光景に火群は固唾を飲み、額からは汗が伝う。

火群「……ッーーーーー」

しかしまだ、その眼は死んでいないーーーーー

真和「……！ そんな薄い壁を並べたところで……ッ…！
僕のブンボーグをーーーーこの美しい数字の並びを止められると思うなよ…ッッ！！
『ブンボーグ００９』…！！ ガネーシャを攻撃しろッ！！
ーーーーー〝トランジェント・フルバースト〟ッッ！！！」


『ブンボーグ００９』
[ATK 1000]
ーーーVSーーー
[DEF 200]
『炎王獣 ガネーシャ』


ハサミをはじめとした文房具型の兵装が次々とガネーシャに襲いかかり、衝撃により爆発が起きる。
ガネーシャは破壊された事で、効果を発動しようと最後の力を振り絞り炎を燃え上がらせるが、

火群「…ガネーシャの効ーーーー…！？」

ガネーシャの炎は００９の持つハサミ型の剣によって斬り裂かれ消滅してしまう。

真和「……無駄だ…ッ！ ブンボーグ００９が戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時までカードの効果を発動できない！！」

火群「……く…ッ……！」

火群は爆風に身を構えながら次の攻撃に備え足に力を込めた。

真和「……続けてブンボーグ００７でバロンを攻撃！！」


『ブンボーグ００７』
[ATK 2000]
ーーーVSーーー
[DEF 200]
『炎王獣 バロン』


真和「……００７は守備貫通能力を持っている…ッ…超過ダメージを受けてもらうぞ…！！ 市瀬！！」

火群「…！！」

ハサミやカッターと言った裁断具がバロンへと突き立てられ、破壊された衝撃は火群にも襲いかかった。

火群「……がぁぁぁッッ！！」【LP 6700→4900】

バロンまでもが破壊され、火群の場は完全にガラ空きとなる。
爆煙が立ち込める中、真和は眼鏡を光らせ、火群にトドメを刺すべく攻撃の宣言を言い放つ。

真和「ーーーライズ召喚などさせるものか…ッ…！！
この一撃がーーーーー試験終了の鐘の音だッッ！！
ブンボーグ００１で……直接攻撃ッッ！！」




ーーーー刹那。


火群のフィールドに、鮮やかな、赤。

紅蓮の炎が、渦を巻く。


真和「……！？」

驚きを隠せぬ真和。
火群の魔法・罠ゾーンにて発動されているカードを見て、眼鏡を抑えながら眉を潜めた。

火群「…このカードは……ッ……ハァ…ッ…自分の場にカードが存在しない場合、手札から発動できるーーーー罠カード…『炎王転輪』…ッッ！！」


《炎王転輪》＊Ph.X Original Cards
通常罠
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。
①:このターンに効果で破壊された自分の墓地の炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスターを可能な限り特殊召喚する。この効果で４体以上のモンスターを特殊召喚した場合、相手フィールドの表側表示のカードの効果を次のターンのエンドフェイズ時まで無効にする。この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。


真和「…ッ……！！」


火群「ーーーーその効果により、墓地より甦れ……ッッ…！！ 俺のモンスター達！！」


『炎王獣 ダンディライオン』[DEF 200]

『幼炎王獣 ガルドニクス』[DEF 200]

『炎王神獣 ガルドニクス』[DEF 1700]

『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[DEF 2700]


紅蓮纏いしモンスター達が真和とブンボーグの前に立ち塞がる。その状況に真和は無意識のうちに後ずさり、拳を固く握り締めた。

火群「……ハァ…ハァ……ッ…！ 更に…！
この効果で４体以上のモンスターを特殊召喚した事で……先生の場に表側表示で存在するカードの効果を…、次のターンの終了時まで無効にするッ！！」

灼熱が真和の場を覆い尽くし、ブンボーグ達の上昇していた攻撃力は全て無と化すーーーー

『ブンボーグ００１』[ATK 4000→500]

『ブンボーグ００３』[ATK 1000→500]

『ブンボーグ００６』[ATK 1000→500]

『ブンボーグ００７』[ATK 2000→500]

『ブンボーグ００９』[ATK 1000→500]


火群「……はは…っ…美しい数字の並びじゃないっすか…先生」

なんとか軽口を叩いてみせるが、これ以上の防御策は用意されていない。



頼むから、このままターンを終了してくれ。

火群の切なる願い。

EXマジックも決闘中１度しか使用できない。次のターン。次のターンさえ回ってくればーーーー


真和「ーーーーーバトルフェイズを終了し、メインフェイズ２へと移行する……」


緊張の一瞬。


火群「……っ……」


ニクス『…ッ…………』


真和「………まだ…だ……ッッーーーー」

眼鏡の奥で見開かれる両眼。

直後、真和のEXデッキは白く光り輝く。


真和「ーーーーレベル６『ブンボーグ００６』と…レベル３『ブンボーグ００３』に……ッ…！
レベル１の『ブンボーグ００１』をチューニング…ッッ！！」

火群「……ッ…」

１０つの星が連なり、一筋の光となってフィールドを駆け巡るーーーーー

真和「ーーーーシンクロ召喚ッ！！
現れよーーーレベル１０『ブンボーグ・ジェット』ッッ！！」[ATK 500]


《ブンボーグ・ジェット/Deskbot Jet》 †
シンクロ・効果モンスター
星１０/地属性/機械族/攻 500/守 500
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
「ブンボーグ・ジェット」の(2)(3)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：このカードの攻撃力・守備力は、フィールドの「ブンボーグ」カードの数×５００アップする。
(2)：自分フィールドの「ブンボーグ」カード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、デッキから「ブンボーグ」モンスター１体を特殊召喚する。
(3)：自分フィールドの「ブンボーグ」カード１枚と
フィールドの表側表示のカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


ブンボーグ００６を素材とした事で空いたゲニウスのリンク先に、筆箱を模した巨大な戦闘機が現れ、影を落とす。

真和「……炎王転輪…。そのカードは予定外だった…。
伏せずにあえて手札に抱えていたのは、ブンボーグ００５の魔法罠破壊効果を知っていたから……か。なるほどな……」

床を見つめたまま、真和は続ける。

真和「…しかし炎王転輪で無効化できるのは、あくまでその時場に存在していたカードのみ……！
ブンボーグ・ジェットは効果により、場の『ブンボーグ』カードの数x５００…攻撃力を上昇させる！！」

『ブンボーグ・ジェット』[ATK 500→2500]

真和「……ブンボーグ・ジェットの効果…！ 僕のPゾーンの００５を破壊しーーーーデッキから『ブンボーグ００８』を特殊召喚…ッ…！」[ATK 500→2500]


火群「…何を……するつもりなんだ…！？」

このエンドフェイズにガルドニクスは破壊され、次の俺のターンに場のモンスターを一掃する。
それをケアするための戦闘破壊をしないまま、メインフェイズ２で動いてくるなんて、と、火群は疑問を抱いていた。

しかし直後、Pゾーンで破壊されたブンボーグ００５の効果発動により思考は遮られる。


(3)：このカードがＰゾーンで破壊された場合、
自分の墓地の「ブンボーグ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。


真和「……墓地より現れろ…！
『ブンボーグ００２』…！！」[DEF 500]

真和「……００２の特殊召喚成功時、デッキから『ブンボーグ』カード１枚を手札に加える事ができる……！ 僕が手札に加えるのはーーーーー『ブンボーグ・ベース』！！！」
[手札 2]

真和がこの局面で手札に加えたのは、既に発動済みであるフィールド魔法、『ブンボーグ・ベース』。

火群「……！？」

この不可解な行動の意味を考えるが、一つだけ、嫌な予感が火群の全身を怪しく包み込む。

真和「……続けて、Pゾーンにもう一枚の『ブンボーグ００５』をセットしーーーーー２枚目の『ブンボーグ・ベース』を発動するッ！！」

効果を無効にされていたブンボーグ・ベースが新しく生まれ変わり、再び場のブンボーグの攻守を強化するーーーーー

『ブンボーグ・ジェット』[ATK 4500→5000]

『ブンボーグ００９』[ATK 1000→1500]

『ブンボーグ００８』[ATK 2000→2500]

『ブンボーグ００７』[ATK 2500→3000]

『ブンボーグ００２』[DEF 500→1000]


真和は全ての手札を使い果たし、満足気に天井を見上げ両手を広げると、ふと、口を開いた。

真和「…このままターンを終了しても、お前の潤沢な手札と墓地の前に、僕の敗北は避けられないだろう……」

なにかを悟ったような口調。
火群はただ無言で耳を傾ける。

真和「…………だが僕は、全てを犠牲にしてでも……お前を倒さなくてはならない」

火群「……っ…」


真和「ーーーーー『ブンボーグ・ベース』の更なる効果を発動」


宣言と共に、真和の場、墓地のブンボーグ達が眩い光を放つ。


火群「…ッ……！？ なんだ……ッッ！？」

やがてブンボーグ達は真和の頭上に集結し、その身を犠牲に巨大なエネルギー弾へと変化していくーーーーー


【コスト】
『ブンボーグ・ジェット』場→除外
『ブンボーグ００１』墓地→除外
『ブンボーグ００２』場→除外
『ブンボーグ００３』墓地→除外
『ブンボーグ００５』Pゾーン→除外
『ブンボーグ００６』Pゾーン→除外
『ブンボーグ００７』場→除外
『ブンボーグ００８』場→除外
『ブンボーグ００９』場→除外



ニクス『……！！！ マズイーーーーーッッ伏せろッッ！！ ホムラっっっ！！！』


ニクスの声を聞き、咄嗟に屈む火群。

直後に轟音。

地鳴りが響く中、“それ”は放たれた。


ﾄﾞｺﾞｫｵｵｫｵｫｵｵｫｵｵｫｵｵｵｫｵｫｵｫｵｵｯｯｯ!!!

ｺﾞｧｧｱｫｵｫｱｱｱｱｧｱｫｱｱｱｧｱｱｧｱｱｧｧｱｱｱｯｯｯ!!!


９種類のブンボーグの命を賭した一撃。
その一撃は凄まじく、火群の場だけではなく、手札、墓地まで全てデッキに返してしまう程だった。


火群「……は……ッ……？」[手札 0]

これまでの闘いの中でどれだけ暴れても傷一つつかなかった神星樹内部の床にできた巨大なクレーターに、火群は思わず呆気にとられてしまう。
ゆっくりと視線を真和に移すと、ぐらつく身体を無理矢理抑え立つ、酷く疲弊した真和の姿。

真和「……ハァ……ッ…！ ハァ……ッッ…！
これこそが…ブンボーグ・ベースの効果……ッ…〝ブンボーグの最終定理〟だ……ッーーーーー」


(3)：「ブンボーグ・ベース」以外の自分のフィールド・墓地の
「ブンボーグ」カード９種類を１枚ずつ除外して発動できる。
相手の手札・フィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す。


火群「……俺の場も……ッ…墓地も……手札まで…ッ…！」

真和「……これが終焉だ……ターンエンド」


エンドフェイズの宣言。
場に残ったのは真和の場のクリフォート・ゲニウスのみ。

火群「……っ……ッ……」

◉TURN:０５◉

火群（このドローで……全てが決まる……っ……）

今までもそういう状況はあった。しかし今回ばかりは状況が悪すぎる。

火群（引けるのか………俺に…っ…？）


真和「………さぁカードを引け…っ！ 市瀬……ッ…これがーーーー
お前にとってーーーーそして…ッ、僕にとっての……ッ…
ーーーーー最終問題だ…ッ」






To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２１１ デッキを信じる心






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙