DRAW:７３ 森羅の守神　作：人喰い

(73)




◉結維side◉
〜山岳エリア・洞窟内部〜



鈴華「ーーー前回のあらすじ！☆
『“私達”の反撃開始よ(キリッ)』などと大見栄きったサイボーグ結維氏！ だがしかし、まるでぜんぜん、目的地へのルートもわかっていなかった！
そこで洞窟から妨害電波が出ている事に気付いた天才鈴華様はまずこの洞窟の奥を調べてみようと提案！
だけどサイボーグ結維氏は暗いのがとても苦手なようで、天才鈴華様に抱きついて離れません。そんな乙女達の熱き冒険が、今まさに始まろうとしていたーーー！！」


結維「ちょっと！ 勝手な事言わないデッ！！
第一怖がってなんか無いし！」

鈴華「じゃあ私の服の裾を引っ張るのはやめてもらえるかしらん？」

結維「それは無理っっっ！！！」

鈴華「確かに〜？ はぐれると困りますものねぇ〜？（……まさか結維さんにこんな弱点があったなんてね…！ これは…使える！！）」

結維（…この女……っ！ 頭チョココロネ農園のクセに私の弱みを握ったつもり？
あっ、甘いのよ、私はこの程度じゃーーー）


パキッ


結維「ぎにゃぁぁあああっっ！？」

ガバッ

鈴華「！？」

結維「ちょ！ なんか踏んだ！！ 今！！ 『パキッ』って！！」

鈴華「わ、わかったから一旦離れてもらえません！！？
それ以上キツく抱きしめられたら私…私…っ！！」

結維「…ハッ！
ご、ごめんなさい、雌と雌のイケナイセカイに目覚めさせるところだった…？」

鈴華「危うくあばらが折れるところでしたわよ！！」

結維「…洞窟内で叫ばないで。 音が反響してうるさい」

鈴華「」

結維「あっ待って1人で先に行かないでごめんってば」

鈴華「もうあなたなんて知りませんわ！」

結維「泣かないで鈴華、私が悪かったから」

鈴華「泣いてません！！」

鈴華はDUEL GEARの明かりを私の方へ向け勢いよく振り向き、半泣きで喚く。

鈴華「ーーー！」

すると、歩き始めていた鈴華の足がピタリと止まる。
私もそれに合わせて動かしかけていた足を反射的に止める。

鈴華「ゆ、結維さん、それ…」

そう言う鈴華の視線は私の足元に向いていた。
私はその場にしゃがみ込み、足元に散らばった破片のようなものを拾い上げる。

結維「……何これ、何かの破片？」

鈴華「あなたがさっき踏んだものじゃ…」

結維「……よくみたらこれ…決闘盤よ」

鈴華「決闘盤…！？ なんでこんなところに！？」

結維「…ますます怪しい場所ね…」

鈴華「ちょっと結維さん…、クールぶってるけど距離が近すぎますわ…」

結維「…うっさい…っ。とにかく進みましょ。この奥に何かがあることは間違いないわ」

鈴華「…はいはい」















遊戯王 Ph.X DRAW:７３
《森羅の守神》
















◉明日人side◉
〜セントラルホール付近の森林地帯〜



◉TURN０４◉

明日人【LP 7300】
場:0
伏せ:0
手札:3

放浪【LP 8000】
場:『戦神ー不知火』[ATK 3000]
『刀神ー不知火』[ATK 2500]
魔法:『アンデットワールド』
罠:『不知火流ー輪廻の陣』
伏せ:0
手札:1




アルセイ『我が名はアルセイ。「森羅の守神 アルセイ」と、君の持つカードには記されているはずだ』

明日人「ーーー！？ この枠の黒いカード…！ あなたが…！？」

アルセイ『いかにも。植物園の大樹の中から、君の事はよく見ていた。
明日人、君の意思が、私の精霊をここに生み出したんだ』

明日人「……俺が……？」


アルセイ『ーーー護るぞ。君の護りたかった、大切な自然を』


明日人「……ハイ！！」


放浪「ーーー大樹の……カード…」

明日人「……ッ！」

放浪「…まさかお前が持っていたとはな…。この間は“断罪の剣”とかいう野郎のせいで手に入らなかったから、丁度いい。お前を倒しそのカードをいただく…ッ！！」

明日人「…させるか…！！ 俺のターンだ！ ドロー！！」【手札 4】

不思議だ……さっきまで動かなかった身体が噓みたいに動く…！

アルセイ『…まずはなんとしてでもレベル8のモンスターを２体並べるんだ。できるか…？』

明日人「…やってみます！！
魔法カード『死者蘇生』発動！！ 墓地の『ローンファイア・ブロッサム』を特殊召喚！」[ATK 500]

明日人「さらに、ローンファイアの効果発動！ このカードをリリースし、デッキから現れろ！
ーーーその精神の美しさは、やがて花を咲かせすべてを魅了する！ 咲き誇れ！『桜姫 タレイア』！！」[攻 2800]


《桜姫
おうひ
タレイア/Talaya, Princess of Cherry Blossoms》 †
効果モンスター
星８/水属性/植物族/攻2800/守1200
このカードの攻撃力は、自分フィールド上の
植物族モンスターの数×１００ポイントアップする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカード以外のお互いのフィールド上の植物族モンスターは
カードの効果では破壊されない。


明日人「そして墓地の『薔薇恋人』を除外して効果発動！ 手札から現れろ！
ーーー向日葵は日の光を浴び、高く！強く！ 燃え上がる！ 崇拝せよ！『姫葵 マリーナ』！！」[攻2800]


《姫葵
ひまり
マリーナ/Mariña, Princess of Sunflowers》 †
効果モンスター
星８/炎属性/植物族/攻2800/守1600
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカード以外の自分フィールド上の植物族モンスター１体が
戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
相手フィールド上のカード１枚を選択して破壊できる。


放浪「……ッ、レベル8のモンスターが……２体…ッ！！」

アルセイ『…よし、上出来だ』

明日人「…アルセイ、この次はどうすれば…」

アルセイ『…２つの力を、掛け合わせてやればいい』

明日人「……２つの、力を…？」

アルセイ『私に合わせるんだ。明日人」

明日人「…はい！」


明日人・アルセイ「『レベル8のモンスター２体で、オーバーレイッッ！！！ エクシーズ召喚！！』」


放浪「…感じるぞ……精霊の…力を！！」


明日人「ーーー強大な力を蓄えし守護精霊よ……その強固なる意思で大地を揺るがせ！！
現れろ！『森羅の守神 アルセイ』！！」


アルセイ『…オオォオオオォォオオオッッッ！！』[DEF 3200]



《森羅
しんら
の守神
もりがみ
アルセイ/Alsei, the Sylvan High Protector》 †
エクシーズ・効果モンスター
ランク８/光属性/植物族/攻2300/守3200
レベル８モンスター×２
１ターンに１度、カード名を１つ宣言して発動できる。
自分のデッキの一番上のカードをめくり、
宣言したカードだった場合、手札に加える。
違った場合、めくったカードを墓地へ送る。
また、カードの効果によって自分のデッキからカードが墓地へ送られた場合、
このカードのエクシーズ素材を１つ取り除いて発動できる。
フィールド上のカード１枚を選択して持ち主のデッキの一番上または一番下に戻す。
「森羅の守神 アルセイ」のこの効果は１ターンに１度しか使用できない。


明日人「……これが……エクシーズ召喚…！！」

アルセイ『…私の効果を使え、明日人！』

明日人「…了解！ 森羅の守神 アルセイの効果発動！！ 『ローンファイア・ブロッサム』を宣言！ そしてデッキの上から一枚のカードをめくる！」


『ギガプラント』


明日人「…宣言したカードとは違う為、ギガプラントは墓地へ送られる…！」

放浪（…あいつ、カードを手札に加えようなどとは考えていない…！ 考えてるのはカードを墓地へ落とす事だけだ…！」


アルセイ『…続いてもう１つの効果だ！ 私のエクシーズ素材となったカード１枚を墓地へ送って発動するんだ！』

明日人「…はい！ アルセイのもう１つの効果！ 俺のデッキからカードが墓地へ送られたことにより、アルセイの素材となったマリーナを墓地へ送り、場のカード１枚を持ち主のデッキの上か下に送る！！」

放浪「…これが狙いか…！！」

明日人「俺がデッキに戻すのは、『アンデットワールド』！！」

問題は上か下、どちらに送るかだけど……、ドローロックよりも次のターン万全に動くことを考えて下にする方がいいか…。

明日人「…それをデッキの下に戻してもらう！！」

放浪「……ッ！」

明日人「…これにより、醜く腐敗していた植物達が、再び緑を取り戻す！！」

アルセイ『よくやったぞ明日人、さあ、ここからが力の見せ所だ』

明日人「俺は手札から、『思い出のブランコ』を発動！」


《思
おも
い出
で
のブランコ/Swing of Memories》 †
通常魔法
(1)：自分の墓地の通常モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。


明日人「この効果で墓地の『ギガプラント』を特殊召喚！！」


《ギガプラント/Gigaplant》 †
デュアルモンスター
星６/地属性/植物族/攻2400/守1200
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●１ターンに１度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
自分の手札・墓地から昆虫族または植物族モンスター１体を選んで特殊召喚する。


明日人「そしてギガプラントを再度召喚し、効果発動！ 墓地の『姫葵ーマリーナ』を特殊召喚！！」[ATK 2800]

放浪「……」

明日人「バトルだ！ マリーナで、刀神ー不知火を攻撃！〝ソーラー・ビーム〟！！」


『姫葵ーマリーナ』
[ATK 2800]
ーーーVSーーー
[ATK 2500]



放浪「…ッ、永続罠『不知火流 輪廻の陣』の効果を発動！ 俺の場の刀神ー不知火の除外し、俺がこのターン受けるダメージは０となる！」

明日人「…！ マリーナの攻撃は対象を失った為、中断だ…！」

放浪「更に、刀神ー不知火が除外された事により、マリーナの攻撃力を永続的に500下げる…！」

マリーナ[ATK 2800→2300]

明日人「くっ…！ うまく凌がれたか……」

アルセイ『だが、確実に追い詰めている。このままゆくぞ』

明日人「…カードを1枚伏せて、ターンエンド！ 」【手札 1】

明日人「そしてこのエンドフェイズ時、思い出のブランコで復活させたギガプラントは破壊される…。だけど同時に、マリーナの効果発動！ マリーナ以外の植物族モンスターが破壊された時、フィールドのカードを1枚破壊できる！ 対象は戦神ー不知火！！」

放浪「……ッ！ だが、戦神が破壊された時、除外されている守備力0のアンデット……刀神ー不知火を墓地へ戻す…！」


◉TURN０５◉


放浪「…俺のターン…！！」

明日人「…っ」

さっきまでと気迫が違う…！ 勝負はここからって訳か…！！

放浪「…無駄な抵抗してねぇでさっさと焼かれてればよかったものの…ッ！ 後悔させてやる……ッ！！ 俺の墓地の『戦神ー不知火』を対象に、墓地に存在する『妖刀ー不知火』の効果発動！！」


《妖刀
ようとう
－不知火
しらぬい
/Shiranui Spectralsword》 †
チューナー・効果モンスター
星２/炎属性/アンデット族/攻 800/守 0
「妖刀－不知火」の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが墓地に存在する場合、チューナー以外の
自分の墓地のアンデット族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターとこのカードを墓地から除外し、
その２体のレベルの合計と同じレベルを持つ
アンデット族Ｓモンスター１体をエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


明日人「……ッ！」

戦神を対象に発動してきたって事は……妖刀のレベルと合わせてレベルは10！ 東雲先輩を倒したモンスターを召喚する気だ…！！ だとしたら、打つタイミングはここしかない…！

明日人「…俺はこの瞬間…ッ、罠カードオープン！ 『針虫の巣窟』！！」


《針虫
はりむし
の巣窟
そうくつ
/Needlebug Nest》 †
通常罠
(1)：自分のデッキの上からカードを５枚墓地へ送る。


明日人「…この効果で俺はデッキの上から5枚を墓地へ送るッ！」

バッ！！

『ボタニカル・ライオ』
『スーペルヴィス』
『ギガプラント』
『ロードポイズン』
『増草剤』

放浪「…そんな事をしようと無駄だァ！！ 墓地の妖刀と戦神を除外！！
ーーー不滅の魂、炎となりて……立ち塞がる者全てを穿つ！！
シンクロ召喚！！ レベル10！
『炎神ー不知火』！！」[ATK 3500]


《炎神
ほむらがみ
－不知火
しらぬい
/Shiranui Sunsaga》 †
シンクロ・効果モンスター
星１０/炎属性/アンデット族/攻3500/守 0
アンデット族チューナー＋チューナー以外のアンデット族モンスター１体以上
自分は「炎神－不知火」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。
自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、
アンデット族Ｓモンスターを任意の数だけ選んでエクストラデッキに戻す。
その後、戻した数だけ相手フィールドのカードを選んで破壊できる。
(2)：自分フィールドのアンデット族モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分の墓地の「不知火」モンスター１体を除外できる。


放浪「…炎神の効果発動！ 全ての行動が無駄だったという事、教えてやる……ッ！！」

明日人「ーーー無駄なんかじゃ、ねぇ」

アルセイ『……！』

放浪「……？」

明日人「俺のデッキからカードが墓地に送られた事により、同時にアルセイの効果が発動！！ 素材を1つ取り除き………炎神ー不知火を、エクストラデッキに吹っ飛ばせぇ！！」

放浪「……チィィ！！ 炎神の効果で、墓地の戦神と刀神をエクストラデッキに戻し…ッ、アルセイとマリーナを破壊する……ッ！！！」


「「うぉおおぉおおおッッ！！」」


俺と放浪の雄叫びがぶつかり合い、同時に激しい爆発が起こる。
その爆風によって俺は3メートル程後方へ大きく吹っ飛び、木に叩きつけられた。

明日人「…ガっ…！」

爆発によって発生した煙が空へと登りながら晴れていくのを見ながら、崩れそうになる足を何とか抑え、俺は立ち上がる。

明日人「……ハァ…！ ハァ…ッ！」

晴れ行く煙の奥にかすかに見える放浪も、今まさに俺と同じように立ち上がったばかりという様子だった。


放浪「………」

明日人「……」

フィールドを見てみると、お互いの場にモンスターはおらず、あるのは放浪の『不知火流 輪廻の陣』のみ。そして互いの手札は1枚ーーー


放浪「…なぜ恐れない…」

そこで、ふと、放浪から放たれた言葉。

放浪「……なぜ植物が、炎を恐れない…」


なんだ。そんな簡単な質問か。



明日人「ーーーその“炎”みたいなヤツと、いっつも一緒にいるからだよ」










To Be Continued…




《次回予告》


不完全なものが集まり、やがてそれは完全へーーー


次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:７４ 灯る魔光焔