DRAW:２２０ 正義の味方②　作：人喰い

(220)




ーーーーー私の名前は浜崎玲子(はまざき れいこ)。22歳。終焉の焔のエンジニアだ。

終焉の焔に入る前は、ある工場で働いていたのだけれど、発達障害が原因で職場内で風当たりの強い日々が続いたの。

誰も私の努力を認めてくれない。
誰も私に手を差し出してはくれない。

…まぁ、しょうがないことではあるんだろうけど、
社会っていうのはそういうものなんだと思った。

ろくでなしの両親から逃げるように家を出て就職したというのに、外にも私の居場所は無くて。
頭ん中がぐちゃぐちゃになって、ドロドロになって、とにかく、ぐわーって叫びたい気分。

玲子「……『自由』なんて、どこにもないじゃないーーーー」

そんな時、歪んだ視界の中に飛び込んできたのは、漆黒の闇ーーーーー否、私にとっては、一筋の光だった。





マイン「ーーーーーお前の言う、『自由』とは、なんだ？」


問う瞳は氷の様に冷ややかで、焔の様に熱い。


玲子「……」

私は問いに答えられなかった。
考えてみたけど、咄嗟に言葉にはできなくて。
私はただ、目の前のその“光”に手を伸ばしていた。

マイン「…ククク……ッ…！ 悪魔にもすがる思いという訳かーーーー」


悪魔。

彼はそう言った。


玲子「……っ…」


ーーーーーもう。

悪魔だろうが何だろうが構わない。

私の“世界”を、変えてくれるならーーーーー。


マイン「ーーーーー来い。
お前に“自由”ってやつを教えてやる」






それが私と、ボスーーーーマイン様との出会い。
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２２０ーーー
《正義の味方②》















【Side 鈴華】


鈴華【LP 8000】
(モンスター)
『ライトパルサー・ドラゴン』[ATK 2500]
『輝光竜 セイファート』[ATK 1800]
『輝白竜 ワイバースター』[ATK 1800]
伏せ:1
手札:3


玲子【LP 800】
(モンスター)
なし
伏せ:0
手札:7


◉TURN:０５◉




自分の攻撃によって苦しむ玲子の姿を見て、そのターンでトドメを差せたにも関わらず、攻撃を中断してしまう鈴華だったが、そんな鈴華に「それでよく正義の味方を名乗れたものだ」と玲子は怒る。
それを受けた鈴華は何のために闘っているかを再認識し、この決闘を戦い抜くと決意したのだった。

しかし、玲子のデッキは2ターンの沈黙を経て動き出す。
その狼煙となる1枚の魔法カードが、光を放ち発動されたのだーーーーー



玲子「永続魔法発動ーーーーー
『Ally of Justice』！！！」



鈴華はそのカードの放つ禍々しい邪気を感じ取り、思わず息を飲む。

鈴華「…！」

玲子「ーーー『Ally of Justice』がフィールドに存在する限り…！ あんたのフィールド、墓地のモンスターは、全て光属性になるわ！」

鈴華「！！」

玲子「……もっとも、墓地にモンスターはいないし、フィールドのモンスターはそもそも全員光属性だから、意味ないんだけど。
今は……ね」


鈴華はふと、エクリプスワイバーンの効果で手札に加えた1枚のカードに視線を移し、唇を噛む。
ーーーー『ダーク・アームド・ドラゴン』。
強力な盤面除去効果を持つ特殊召喚モンスターだが、その召喚条件は、“自分の墓地の闇属性モンスターが3体のみの場合”ーーーー墓地のモンスター全てが光属性となってしまっては、場に出すことすらできないのだ。


玲子「…更に！！ 『Ally of Justice』の効果発動！！」


②:このカードの発動時の効果処理として、手札を1枚捨て、EXデッキから闇属性・機械族Sモンスター1体を除外して発動できる。レベルの合計が除外したモンスターのレベルと同じになるように、デッキからレベルが異なる「A・O・J」モンスターを選び手札に加える。その後、手札の「A・O・J」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「A・O・J」モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。


玲子「手札を1枚捨てて、EXデッキから闇属性・機械族Sモンスターを除外しーーーー」


手札→墓地
『A・O・J サウザンド・アームズ』

EXデッキ→除外
『A・O・J ディサイシブ・アームズ』


玲子「ーーー除外したSモンスターのレベルと同じになるように、デッキからそれぞれレベルの異なるA・O・Jモンスターを手札に加える！！」

鈴華「……！」

栗須「…除外した『A・O・J ディサイシブ・アームズ』のレベルは10…！ レベルの合計が10になるようにデッキからモンスターを手札に加えられるって事かよ…！！」



デッキ→手札
『A・O・J リーサル・ウェポン』☆5
『A・O・J サイクロン・クリエイター』☆3(チューナー)
『A・O・J アンリミッター』☆2


鈴華「1度に3枚のモンスターを…！？」

玲子「…それだけじゃないわよ！！
更にその後、手札からA・O・Jモンスター1体を特殊召喚できる！！
来て…！！『A・O・J リーサルウェポン』！！」[ATK 2200]☆5


大量に抱えた手札。加えてまだ召喚権も残っている。

玲子「…まだまだぁ！！ チューナーモンスター『A・O・J サイクロン・クリエイター』を召喚！！」[ATK 1400]☆3(チューナー)

《Ａ・Ｏ・Ｊ
アーリー・オブ・ジャスティス
サイクロン・クリエイター/Ally of Justice Cyclone Creator》 †
チューナー（効果モンスター）
星３/闇属性/機械族/攻1400/守1200
１ターンに１度、手札を１枚捨てて発動できる。
フィールド上のチューナーの数だけ、
フィールド上の魔法・罠カードを選んで持ち主の手札に戻す。


鈴華「…！！ チューナーモンスター…！！」

玲子「…えっと、多分これでいいはず…！
サイクロン・クリエイターの効果！！
私は手札の『A・O・J サンダー・アーマー』を捨てて、あんたの場の伏せカードを手札に戻すわ！！」

鈴華「…！！！」

サイクロン・クリエイターは、その名の通り竜巻を発生させ、鈴華の伏せカードを巻き上げる。

鈴華「…っひゃぁっっ！？」

舞い上がりそうになるスカートを片手で抑えながら、なんとか飛ばされたカードを掴む鈴華。
しかし息つく間もなくーーー直後、耳障りなモーター音が部屋中に響き渡る。


ｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｭｭｭｧｱｧｧｱｱｧｧｱｱｧｱｱ!!!!


鈴華「…ッッ…！ なにこの音…ッ…！！」

栗須「…ぐぁぁぁぁ！ 耳が…ァ…！！」


玲子「ーーーー私はあんたみたいに、敵に情けをかけたりなんかしないわよ…！！
レベル5の『A・O・J リーサルウェポン』に、レベル3の『A・O・J サイクロン・クリエイター』をチューニング！！」

モーター音がより一層強くなり、鈴華、栗須を更に苦しめた。


ｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｷﾞｭｭｭｧｱｧｧｱｱｧｧｱｱｧｱｱ!!!!

ｷﾞｭｷﾞｭｷﾞｭｷﾞｷﾞｷﾞｧｧｧｧﾝ!!!!


鈴華「…ッ…ひぁぁぁぁ！！！」

栗須「…ぐ……ァ…っ…！！ ぐぎぎぎぎ…ッ…！！」

そして同時に玲子の場のモンスターは光を纏い連なりーーーーー


玲子「ーーーーシンクロ召喚！！！
来て！！！ レベル8ーーーー光を喰らう正義の使者！！
『A・O・J ライト・ゲイザー』！！！」[ATK 2400]


《Ａ・Ｏ・Ｊ
アーリー・オブ・ジャスティス
ライト・ゲイザー/Ally of Justice Light Gazer》 †
シンクロ・効果モンスター
星８/闇属性/機械族/攻2400/守1600
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカードの攻撃力は、相手の墓地の
光属性モンスターの数×２００ポイントアップする。



光の中より、突如として現れた巨大な機兵。
両目、両手、脚部の輪っか状の浮遊装置の様なものをはじめとした至る所からサーチライトのような光を発し浮遊する異質な存在を前に、鈴華は額から冷や汗をかく。

鈴華「…何よ…アレ…っ…！」

その機兵ーーーーライト・ゲイザーの身体には、墓地へ行ったはずのモンスターの亡骸が埋め込まれており、機体の半分がライト・ゲイザーの胴体から露出していた。


シムルグ『…墓地のモンスターを取り込んだと言うのか…！？』

玲子「…その通り…！！ 『Ally of Justice』の更なる効果！！」


③:自分が「A・O・J」Sモンスターの特殊召喚に成功した場合、そのSモンスターよりレベルの低い自分の墓地の「A・O・J」モンスター2体までを対象として発動できる。対象のモンスターを、特殊召喚した自分の「A・O・J」Sモンスター1体に装備カード扱いとして装備する。この効果で装備カードを装備しているモンスターは装備している「A・O・J」カードの効果を得る。


玲子「…この効果によりライト・ゲイザーに、墓地のリーサルウェポンとサウザンド・アームズを装備したのよ！」

栗須「…！！ でも攻撃力に変化はねぇ……一体何が変わったってんだ…！？」


玲子「ーーー更に！！この効果で装備したシンクロモンスターは、装備されたモンスターの効果を得る！！」


鈴華「！！！」


『A・O・J ライト・ゲイザー』[ATK 2400]
@『A・O・J リーサルウェポン』
『A・O・J サウザンド・アームズ』


《Ａ・Ｏ・Ｊ
アーリー・オブ・ジャスティス
リーサル・ウェポン/Ally of Justice Omni-Weapon》 †
効果モンスター
星５/闇属性/機械族/攻2200/守 800
このカードが戦闘によって光属性モンスターを破壊し墓地へ送った時、
デッキからカードを１枚ドローする。
さらに、この効果でドローしたカードがレベル４以下の闇属性モンスターだった場合、
そのカードを相手に見せて特殊召喚できる。


《Ａ・Ｏ・Ｊ
アーリー・オブ・ジャスティス
サウザンド・アームズ/Ally of Justice Thousand Arms》 †
効果モンスター
星４/闇属性/機械族/攻1700/守 0
このカードは相手フィールド上の全ての光属性モンスターに
１回ずつ攻撃できる。
このカードが光属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
そのダメージ計算前にこのカードを破壊する。



玲子「ーーーーこれでライト・ゲイザーは、あんたの光属性モンスター全てに攻撃可能…！！
これがライト・ゲイザー“全武装-ﾌﾙｱ-ﾑｽﾞ-”よ！！！！」

高らかに叫び、すかさずバトルフェイズへと移行する。


栗須「…西蓮寺さんの場には光属性モンスターしかいねぇ…！つまり全体攻撃…！！？」

鈴華（けど、攻撃力は『ライト・パルサー・ドラゴン』の方が上…！ ライトパルサーさえ残ってくれれば…！)


玲子「 やっちゃって…！！ライト・ゲイザー！！！」


『A・O・J ライト・ゲイザー』
[ATK 2400]
ーーーVSーーー
[ATK 1800]
『輝白竜 ワイバースター』


左腕を構え、鈴華のモンスターに照準を定める。
腕部で瞬く光は次第に大きくなり、放たれた極太のレーザーが輝白竜を貫いた。

鈴華「……ッ…！！」【LP 8000→7400】

超過ダメージが鈴華を襲い、風圧で茶髪のロールがくるくると舞う。
直後、フィールドから墓地へ送られたワイバースター、戦闘で光属性モンスターを破壊したライト・ゲイザーの効果がそれぞれ発動する。

チェーン②
『輝白竜 ワイバースター』
・デッキから『暗黒竜 コラプサーペント』を手札に加える。

チェーン①
『A・O・J ライト・ゲイザー』(『A・O・J リーサルウェポン』から得た効果)
・１枚ドローし、それがレベル４以下の闇属性モンスターなら特殊召喚できる。


鈴華「…『暗黒竜 コラプサーペント』を手札に！！」[手札 5]

玲子「私はデッキから１枚引くわ！！」[手札 6]

それだけではない。光属性モンスターが鈴華の墓地へ送られた事で、ライト・ゲイザーの放つ光がより一層強く、瞬く。

玲子「ーーーーライト・ゲイザーの効果！！ あんたの墓地の光属性モンスター１体につき２００……攻撃力がアップする！！」

『A・O・J ライト・ゲイザー』[ATK 2400→2600]

鈴華「…！！」


栗須「マズイぜ…！！ ライトパルサーの攻撃力まで上回っちまったぞ！！？」

強化を得たライト・ゲイザーの攻撃はまだ続く。光属性モンスターを殲滅するまで止むことはない。

『A・O・J ライト・ゲイザー』
[ATK 2600]
ーーーVSーーー
[ATK 1800]
『輝光竜 セイファート』


照準を輝光竜に合わせ、光線は再び放たれるーーーー

鈴華「…ぁ”ぁ”ぁ”ッッッ！！！」【LP 7400→6600】

蓄積するダメージに思わず声を上げるが、まだこの程度では倒れない。
“次”の攻撃に身構える。

玲子「…装備したリーサルウェポンの効果で１枚ドロー！！」[手札 7]


更にまた鈴華の墓地へ光属性モンスターが送られた事で、ライト・ゲイザーの攻撃力が上昇してしまう。

『A・O・J ライト・ゲイザー』[ATK 2600→2800]

そして直後、場に残ったライトパルサーへと邪悪な光は向けられた。

『A・O・J ライト・ゲイザー』
[ATK 2800]
ーーーVSーーー
[ATK 2500]
『ライトパルサー・ドラゴン』

音も無く放たれる光線。ライトパルサーは鈴華を守るように立ち塞がり、自らの身を犠牲にその威力を最小限まで抑えることに成功する。

鈴華「…ぅ…ッく…っっァァ！！」【LP 6600→6300】


『A・O・J ライト・ゲイザー』[ATK 2800→3000]


栗須「…これで攻撃力は3000…！！ 並のモンスターじゃ太刀打ちできねーぞ…！？
それにまた光属性モンスターが破壊されちまったってことはーーーー」

玲子「そうよ！ リーサルウェポンから得た効果で１枚ドロー！！」[手札 8]


栗須「…手札……8枚だと！？」

シムルグ『……それだけじゃない…、奴め、何か引いたようだぞ……？』

僅かに笑みを浮かべる玲子は、ドローしたカードを勢いよく前へ突き出し公開した。


『A・O・J D.D.チェッカー』


玲子「この効果でレベル4以下の闇属性モンスターをドローしたら、そのまま特殊召喚できるのよね…！
来なさい！『A・O・J D.D.チェッカー』！！」[ATK 1700]


《Ａ・Ｏ・Ｊ
アーリー・オブ・ジャスティス
Ｄ
ディー
.Ｄ
ディー
.チェッカー/Ally of Justice Quarantine》 †
効果モンスター
星４/闇属性/機械族/攻1700/守1200
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いに光属性モンスターを特殊召喚できない。


玲子「ーーーー追撃よ！！ D.D.チェッカー！！」

『A・O・J D.D.チェッカー』[ATK 1700]

鈴華「……が…っ…！！」【LP 6300→4600】

完全に油断していたところを突かれ、鈴華は思わずその場に膝をついてしまう。


栗須「…西蓮寺さん！！！」

叫ぶ栗須。その声はまだ鈴華にちゃんと届いていた。
まだ見える。まだ聞こえる。
まだ戦える。

鈴華「…はぁ…！ はぁ…っ…！
まだまだ…！ やれますわ…っっ！！」


玲子「…まだ…戦うつもりなのね…。
けど、D.D.チェッカー……このモンスターが場にいる限りーーーーーお互いに光属性モンスターを特殊召喚する事が出来ないわ」

鈴華「…なん……ですって…？」

玲子「これであんたのデッキは終わりよ…！！」

鈴華「……！！」

玲子の場で煌々と輝く永続魔法『Ally of Justice』。
この存在により、鈴華のフィールドだけでなく、墓地のモンスターまでもが全て光属性となってしまっているのだ。

鈴華のデッキは、モンスターの半分が光属性で構成されている。
そしてその大部分が特殊召喚モンスターであり、墓地の光、闇を除外して特殊召喚するカオスモンスターがほとんどだ。

栗須「…西蓮寺さん………ッ…」

これによりカオスモンスターをはじめ、ダーク・アームド・ドラゴンすら封じられ、鈴華にとって非常に絶望的な状況と言ってよかった。


鈴華「………」

玲子「ーーーーカードを2枚伏せて、ターンエンド！！」[手札 5]


◉TURN:０６◉


鈴華「…私の……ターン！！」[手札 6]

伏せカードを警戒すべきではあるけど、そんな事を言っていられないのも現状。引いたカードを即座に発動させる。

鈴華「……私は…！ フィールド魔法『混沌空間』を発動…！！」


《混沌空間
カオス・ゾーン
/Chaos Zone》
フィールド魔法
①：モンスターが表側表示で除外される度に、１体につき１つこのカードにカオスカウンターを置く。②：１ターンに１度、自分フィールドのカオスカウンターを４つ以上取り除き、取り除いた数と同じレベルを持つ、除外されている自分または相手のモンスター１体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。③：フィールドのこのカードが相手の効果で墓地へ送られた時に発動できる。このカードに置かれていたカオスカウンターの数以下のレベルを持つ、光・闇属性のモンスター１体をデッキから手札に加える。


鈴華「続けてーーーー墓地のワイバースターを除外して、手札から『暗黒竜 コラプサーペント』特殊召喚しますわ！！」[ATK 1800]

『A・O・J ライト・ゲイザー』[ATK 3000→2800]

栗須「…そっか！ 前のターンに闇属性のコラプサーペントを手札に加えてたのか！
これでD.D.チェッカーを倒せる！」

シムルグ『…だがあのエンジニアの狙い通り、最低でも、バトルフェイズを行なってからの展開を強いられてしまっている。
このターンで、残り800のライフを削り切るのは難しいだろう』


鈴華「…モンスターが表側表示で除外されたこの瞬間！ 『混沌空間』にカオスカウンターが置かれますわ…！」


『混沌空間』[◉0→1]


鈴華「ーーーーそして私は…！ コラプサーペントをリリースして……アドバンス召喚！！」

玲子「…！」

鈴華「…その煌めきは、黒ーーーー全てを覆う漆黒の焔っ！！
…来なさいっ！！『ダークフレア・ドラゴン』！！」[ATK 2400]

《ダークフレア・ドラゴン/Darkflare Dragon》 †
効果モンスター
星５/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守1200
このカードは自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを
１体ずつゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。
１ターンに１度、手札とデッキからドラゴン族モンスターを１体ずつ墓地へ送る事で、
自分または相手の墓地のカード１枚を選択してゲームから除外する。


咆哮とともに黒竜は舞い降りる。
そして翼を大きく広げると、紅蓮の炎を纏い攻撃の構えを取った。

鈴華「…ダークフレアの効果発動！！
私は手札、デッキからそれぞれ ドラゴン族モンスターを1体ずつ墓地へ送りーーーー」

手札→墓地
『ダーク・アームド・ドラゴン』

デッキ→墓地
『ギャラクシーサーペント』

栗須「…ダークアームドを…捨てた…！？」

シムルグ『恐らく、墓地のモンスターを光属性に変えられてしまっては、出せる場面は来ないと判断したのだろう』


2体の竜が鈴華の墓地へと埋葬されると同時に、玲子の墓地から火柱が上がる。

玲子「…！？」

鈴華「ーーーーーそして、あなたの墓地の『A・O・J サイクロン・クリエイター』をゲームから除外！ですわ！」

墓地→除外
『A・O・J サイクロン・クリエイター』

モンスターが除外された事で混沌空間にカウンターが灯るーーーー

『混沌空間』[◉1→2]


鈴華「…バトルですわ！！
ダークフレアで、D.D.チェッカーを攻撃！！」


『ダークフレア・ドラゴン』
[ATK 2400]
ーーーVSーーー
[ATK 1700]
『A・O・J D.D.チェッカー』


燃え盛る炎は玲子のモンスターを一瞬にして焼き払い、僅かに勢いを殺した炎が玲子の乗る決闘戦車へ襲いかかる。

玲子「……くぅ…っっ！！」[LP 800→100]


栗須「惜しい…！ あと一歩届かなかったか…！」


玲子「…はぁ…っ…！ はぁ…っっ！
その程度…！？ あなたが決闘に賭ける思いっていうのは！！」

玲子は息絶え絶えに問う。
目の前で今にも消えそうな命を前に、鈴華はーーーーー


鈴華「………」

しばしの沈黙を経て、

鈴華「…否定……したいところだけど、それは決闘の結果次第…、ですわね」

小さくそう呟き、拳を握る。

鈴華「…私は勝つ。
勝って前に進まなきゃ！！」


どれだけ辛い状況に立とうとも、決して揺るがぬ、まっすぐな瞳。

玲子「……！」

対する玲子はすでに、泣き叫びたくて仕方がないというのに。

口調をいくら強くしても、感情を押さえつけるには限度がある。それをこの場において、痛いほど痛感していた。

玲子「……説教なんて、慣れない事…するもんじゃないなぁ……」

急に弱気になり、目元に涙を浮かべる玲子を見て、鈴華はスカートの裾をきゅっと掴み、問う。


鈴華「……あなたは」


そんな風に、
人のために怒ったり泣いたりできるあなたは。


鈴華「どうして終焉の焔に手を貸すの？」


玲子「……！」

玲子の表情が強張る。

玲子「…わた…私は……っ…」

玲子は当然、《終焉の焔》が今までどれほどの破壊を行なってきたかを知っていて、直接自分が手を下すことはなくとも、その光景を少なからず見てきた。

玲子「…ぅ……ぁ…！」

その中で葛藤もあった。
自らの手が、黒く染まっていくことに対する、“本当にこの道を進んで良かったのか”という葛藤。

玲子「……いや…！！」

玲子は苦悶の表情で大きく首を振る。

玲子「…迷う必要なんて無い……！！
みんな……！！！！
みんなみんなみんなみんなっ！！！
私の技術を！！！
才能を！！！！！
認めてくれなかった！！！！
けどーーーーー」


マイン様は違った。


瑞希ちゃんも、

星奈ちゃんも、

ジャランくんも、

宮本さんも。


玲子「《終焉の焔》のみんなは…ッ私を避けたりしない…！！！」

鈴華「……っ…」

玲子「…“ここにいていいんだ”って……っ…“生きてていいんだ”って……ッ…そう思えたのっっ！！！」


身体の内から絞り出した、魂の叫び。
それを聞いて鈴華はふと、《終焉の焔》伍召焔の一人『常盤 星奈』と戦った時の事を思い出すーーーー




……………


…………




「ーーーーあなたは、なぜ笑顔で『破壊』を行えるの…？
……あなたが闘う理由って…？」



「……居場所を守る為、かな」

「……あたしには闘う事しかできないから……。あたしが闘う事をやめた時、あたしはまたひとりぼっちになっちゃうーーーー」

「ーーーーそれにねっ、マインさまは言ったの！
“あたしの力が必要だ”って」

「あたしはこの居場所を守りたい……居場所を与えてくれたマインさまの役に立ちたいーーーー」


「ーーーーだからあたしには、闘うしか道はないんだっっ！！！」




…………


……………




鈴華（…思えば、あの子もそうだった…）


決闘に賭ける、尋常ではない執念。
非戦闘員とて、その意思は同じ。

鈴華「…余計なことを聞いてしまって、ごめんなさい」


彼女らにとって闘う事は、生きる事と同じなのだーーーー


鈴華「ーーーー決闘を、続けましょう」


想いを新たに、決闘は再開される。

まもなく、決着の時ーーーーー





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２２１ 正義の味方③






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙