DRAW:２０６ 選んだ道は…　作：人喰い

(206)



〜生命の樹内部・『栄光の間』〜


死闘の末、『魔轟神獣 ユニコール』操る決闘機兵『MZK-06』を倒し、和泉のいるであろう『美の間』に向かおうとした火群とニクスだったが、『美の間』へと続く通路、そしてその隣の『峻厳の間』に続く通路から現れた計25体の決闘機兵によって道を塞がれてしまっていたーーーーー



機兵「「「「ーーーーー決闘……決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘決闘」」」」





火群「冗談じゃねぇ……ッッ！！ お前等全員なんか相手してられっか！！」


対する火群が取った行動は、

火群「ニクスッ！！ “脚”だ！！」

叫び、右脚を軸に身体を反転させる。

ニクス『ああ！！』

ニクスも強気に応じ、その体は炎に包まれて行くーーーー
そしてニクスは姿を変え、真っ赤に燃える不死鳥を模した加速装置となって火群の脚部に装備された。

火群「ーーーーーっ」

視線の先には、３つの通路。
『勝利の間』へと続く通路。
『基礎の間』へと続く通路。
そして火群達が初めに転送された『王国の間』に続く通路。

火群（後戻りしたってしょうがない……、残る２つの『勝利の間』、『基礎の間』のどっちからでも『美の間』に行くことはできる…！）


機兵「「……決闘決闘決闘決闘決闘決闘」」


ニクス『……最短距離で行けるのは『基礎の間』からだ！！ 行くぞ火群！！』

火群「…ああ！！」

掛け声に合わせ火群は応じ、『基礎の間』に繋がる道へと向かって踏み出した。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２０６ーーー
《選んだ道は…》














〜生命の樹内部・小径[パス](栄光の間〜基礎の間)〜


脚部から炎を噴射させ通路を進む火群。途中、分かれ道がいくつかあったが、DUEL GEARのマップ機能により迷うことなく進んで行く。

ニクス『……通信はまだ途絶えたままか？』

火群「…ああ、ノイズが酷い。まずはせめて誰かと合流したいんだけどなーーーーっと、この辺でもう大丈夫だろ。
ありがとうニクス。元の姿に戻ってくれ」

追手の気配もなくなり、火群の指示の通りニクスは元の金髪ポニーテールの姿に戻った。

ニクス『…ここからは階段になっているようだな』

火群「…ああ、降りて行こう」


早足に階段を降りて行くと、2分ほどでマップが示す『基礎の間』までたどり着いた。



〜生命の樹内部・『基礎の間』〜


淡い紫色に包まれた一室に足を踏み入れ、30メートル程先にある人影に火群は目を細める。


火群「…………っ…」

ニクス『どうやらこちらの道も、簡単には進ませて貰えないようだなーーーーー』


無言で顔を強張らせ、正面の人物に歩いて行く火群。

火群（……スッキー先生の話を聞いた時は、まさかと思ったよ）

一歩、二歩、三歩。歩いて行く。

火群（そのあと、倒壊した学校を見に行って……、その場で戦えなかった後悔だけが俺の中に残った）

5メートル、10メートル、15メートル。距離を詰める。


火群「……なんで、あんなことをーーーーー」


黒スーツに身を包み、銀縁の眼鏡をかけた七三分けの長身男。
『基礎の間』の中央にて自らの腕を抱く、その男の7メートルほど手前で火群は立ち止まり、男の名を叫んだ。





火群「ーーーーー宮本先生ッッッ！！！」





真和「…………」

彼ーーーー『宮本 真和(みやもと まさかず』は部屋に響き渡る火群の怒声などまるで聴こえていないかの様に無言を貫いていたが、右手で眼鏡の位置を修正すると、光の反射で光る眼鏡の奥の瞳が、ギラリと火群を捉えた。
そして真和はゆっくりと口を開く。


真和「ーーーー出席を取る」


火群「……は？」

呆気にとられる火群には目もくれず、

真和「市瀬」

始業のチャイムがなった直後の様に、極々自然と火群の姓を呼ぶ。

真和「…返事は？」

火群「…っはっ…はい！！」

咄嗟にいつものノリで返事をしてしまう火群。しかしあまりにも唐突な点呼に困惑して訳がわからないといった様子。

真和「……市瀬。お前をマイン様の元へ行かせる訳にはいかない」

しかし直後に真和の口から出たマインの名を聞いた事で、火群は改めて自分の恩師が終焉の焔の人間だという事実を突きつけられ表情を硬くする。

真和「…では、これより試験を開始する。
……その前に、改めて自己紹介をしよう」

火群「……っ」

真和「僕は黒髭中学校の元・数学教師にして、終焉の炎・上層『伍召焔』ペンデュラム召喚担当ーーーーー」


ーーーー《連立方程式-ｶｵﾃｨｯｸ・ﾛｼﾞｯｸ》
『宮本 真和』


そう名乗り、右手の人差し指と中指で眼鏡の位置を直しつつ左腕を前に構えた。
そして左腕に装着された三角定規型の決闘盤にデッキをセットする真和。

火群「…！」

それを見た火群も左腕の決闘盤を構え、決闘モードに移行させた。

ニクス『……火群、戦えるか？』

火群「…当たり前だ…ッ！！ 例え先生でも……ッ！
スッキー先生やクラース達を傷つけて……学校までめちゃくちゃにしたヤツをーーーー許せるわけなんてない！！」



真和「……。
…起立、気をつけーーーーー」


火群【LP 8000】

真和【LP 8000】



「「ーーーーー決闘！！！」」



先攻:火群


◉TURN ０１◉


真和「……さぁ、今回は前回の様な練習問題とは違う。
勉強の成果を見せてくれ」

教師時代と何一つ変わらない口調で、真和は言う。
その言葉の一つ一つが火群の耳に入る度、火群の中に怒りや悲しみが混ざった不可解な感覚が渦巻き消えない。


火群「……俺の…ターン！！」[手札 5]

手札を眺め戦略を組み立てる。

火群（…先生は絶対に俺たちのデータを徹底的に調べ上げてるはずだ……っ！ 出し惜しみなんてして勝てる相手じゃない…！！）


火群「ーーーー俺は、『炎王獣 クリシュナ』を召喚！！」[ATK 1200]☆4


《炎王獣 クリシュナ》＊Ph.X Original Cards
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻 1200/守 200
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに表側表示で存在する「炎王」モンスターが効果で破壊された場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル３以下の炎属性チューナー1体を特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は炎属性モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
③:このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地の「炎王」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


炎の中から現れたのは、火群が出発前に父に貰った新たな仲間、クリシュナ。
孔雀の羽の王冠に黒い肌の獣面で、両手に持った横笛からは炎が噴き出してた。

真和「……」

データにないカードの登場に真和は目を細め、じっくりと見定める。

火群「クリシュナの効果！！
召喚成功時、デッキから炎属性チューナーを特殊召喚する！」

直後、クリシュナは横笛を吹き始め、その音色は火群のデッキから幼き不死鳥を呼び寄せた。

火群「ーーー現れろ！！
『幼炎王獣 ガルドニクス』！！」


『幼炎王獣 ガルドニクス』[DEF 200]☆1 チューナー


火群「……まだまだぁ！
レベル４のクリシュナに、レベル1の幼炎王獣をーーーーチューニング！！」

2体のモンスターはそれぞれのレベルと同じ数の星となり、光の輪に連なるーーーー


火群「ーーーーシンクロ召喚！！
現れろ！ レベル５ーーーーー遍く満たす炎の化身！！
『炎王獣 ヴィシュヌ』！！」


光の中より現れたのは、青き身体に四つ腕の獣神。
荒ぶる炎をその身に纏わせ、雄叫びを上げる。



ヴィシュヌ『ガァァアァッッッ！！』[ATK 2400]☆５ チューナー


真和「……！」

真和は激しい咆哮に気圧されそうになるが、観察だけは怠らない。現れたモンスターを隅々まで視線を巡らす。

火群「ヴィシュヌがシンクロ召喚に成功した時、デッキから「炎王」モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる！！
現れろ！『炎王獣 ガネーシャ』！！」[DEF 200]

真和「…更なる展開を可能にするカードか……。更に呼び出したモンスターの効果は無効にされない……」

これでガネーシャによりモンスター効果の使用が制限された訳か、と分析する真和。

火群「……俺はこれでターンエンド！！」[手札 4]

初手は落ち着いた立ち上がり。1ターンに1度、モンスター効果を無効にできるガネーシャが睨みをきかせ、まだ効果の全てを発揮していないヴィシュヌは怪しげに炎を揺らす。


◉TURN ０２◉


当然、真和は終焉の焔がデータを元に火群達の対策を取っているのと同じように、火群等人間界の戦士達も自分達のデータを元に対策を取ってくると想定していた。

真和（…しかし、おかしい）

黒髭中学の生徒、剛田 武と新田 和也。そして家庭科教師である美 好と決闘をした事で、自分が『ブンボーグ』デッキの使い手であるという情報は火群も得ているだろう。
そしてその、圧倒的な“数字の暴力”による殺傷力もーーーーー


真和「…この程度の守りで僕に後攻1ターン目を渡すとはーーーーーなるほど、それが君の回答か」

冷たい一声。

火群「……はい」

火群は頷き、答える。
その火群の表情を見て、真和は悟った。

必ずこのターンで何か先手を打ってくると。

真和「……」

真和は火群の場のヴィシュヌを一瞬見てから視線を戻す。そして決闘盤からカードを引いた。

真和「僕のターン」[手札 6]

スタンバイフェイズを経て、メインフェイズ。


真和「……！！」


刹那。激しく燃える炎の帯が、蛇のようにうねりフィールドを駆け巡る。

真和「……これは……ッ…！？」

驚く真和。火群は僅かに笑みを浮かべ、


火群「…先生の強さは良く知ってる……だから出し惜しみは無しだ…ッ！！
ーーーー俺のとっておきを見せてやる！！」


拳を握り、高く突き上げた。







To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２０７ 命を燃やせ！爆炎同調






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙