DRAW:１０１ 一戦終えて…　作：人喰い

(101)




〜YAGAMI本社ビル・正面出入口〜



シルバ「ーーーお前達、何があった…！？」


警備A「………」

警備B「………」

警備C「………」


シルバ「…！（三人とも糸の様なもので全身を縛られて気を失っている…。
こんな芸当ができるのはーーー）」




？？「ーーー僕しか考えられないよね…♪ 旅人さん」


シルバの背後から現れる、飄々とした口調の黒ずくめの男。


シルバ「…！ “影絲の奇術師”ーーー『ジャラン』ッ！！」


ジャラン「…構えなくていいよ？ どうせ今はまだ僕らが戦うことは許されない。精霊王のかけた“制約”があるからね」

シルバ「…決戦の日まで、人間界の決闘者と、終焉の焔の決闘者間の決闘を禁止する、というものだな」

ジャラン「…そ。試しにうちの下っ端が人間界の決闘者に決闘を申し込んでみたんだけど、決闘盤にエラーが生じちゃって、決闘が正常に進行できないってことも検証済みさ。困ったもんだよね」

シルバ「……先程の黒焔とは正常に決闘が行えたが？」

ジャラン「…あーっ、あれね♪ 僕もびっくりしたんだ。マイン様が生み出した焔にコピーカードを持たせて試験的に決闘をさせてみたらあんなに上手く動いてくれちゃってさ」

シルバ「……なんだと…？」

ジャラン「…力が8つに分散されちゃってるから、多少知能に難ありって感じだけど、君たちが僕ら終焉の焔と決闘した時のデータを全てインプットしてるからね……経験の多い奴ほど苦戦するんじゃないかな…♪」

シルバ「…！」

ジャラン「……旅人さんは全然手の内を晒してくれないから困るんだよねー。データが取れなくて」

シルバ「……今日のお前達の襲撃は、データ収集が目的か」

ジャラン「…その通り♪ でもこれ以上は精霊王サマに怒られそうだから、決戦の日までは大人しくしてるつもりだよ」

シルバ「……信用ならんな」

ジャラン「…まぁまぁ、そう言わないでよ。君たちにとっても、今日という日はとってもプラスになったはずだしさ…♪」

シルバ「……っ…？」

ジャラン「………それじゃあね♪ 次は決戦の日、かな…？」

シルバ「…！ 待てぇッ！」

最後に含み笑いを見せたかと思うと、ジャランは黒い霧の中に姿を消していった。














◉遊戯王 Ph.X◉
ーーDRAW:１０１ーー
《一戦終えて…》

















【火群side】



火群「ーーー和泉っ！」

黒い霧が晴れ、その中から和泉と、傷だらけなチアガールが姿を現わす。

ニクス「…千愛。随分と派手にコケたみたいだな」

千愛「……ったく…、言ってなさい。にくす」


結維「………お疲れ、和泉」

和泉「…えへへ、ありがと。結維ちゃん」

火群「ーーーいずm……」

結維「…随分ふらついてるじゃない、和泉。肩、貸すわよ」

和泉「…これくらい大丈夫だってっ。…っわとと…っ」

火群「ーーーいz……」

結維「…ほら、言わんこっちゃない……。そのための私でしょ」

和泉「…あははは…っ、面目無い…」


火群「………」

雫「…あ、あの〜、火群さん？ そんなところで体育座りしてどうしたんですか…？」

火群「……か、柏木さん…」

雫「……？」

火群「……うがーーーっっ！！」

ﾊﾞｻｧｧ‼︎

雫「はぅわぁ！？
いきなり前髪めくりしないでくださいよぉっっ！！ 火群さんっ！」

鈴華「…何やってんだか…」

和泉「………っ…？」


ｻﾞｯ

戒「ーーーお前達、漫才をしている暇なんてないぜ。俺たちも早く上に向かうぞ」

火群「……戒！ わかった、みんな行こう！」


雫（…私、めくられ損じゃないですかぁ〜…）





＊



〜YAGAMI本社ビル・正面出入口〜


火群「ーーーシルバさん！ メアリーさん！」


シルバ「…ム、お前達か。随分と遅かったな」

メアリー「…ハァイ♪ なにはともあれお疲れちゃん！」

結維「…現状はどんな感じなの？」

メアリー「…私もちょうどさっき合流したばかりなんだよねー。丁度いいし、さっきの決闘の事も含め、情報交換と行きましょうか？」

火群「…はい！ お願いします」





………




シルバ「ーーーという訳だ。
すまないな、敵の幹部を逃してしまった」

火群「……へーきっすよ、どうせ一カ月後には、俺たちがぶっ倒すんで！」

戒「……」ｷﾞﾘｯ…

シルバ「……ッ…（……斬波少年…、怒りが隠しきれていないぞ……）」

メアリー「……奴らの使ってた地縛神ってカードは…、この時代のものじゃないって話があったけど、シルバさん、心当たりは…？」

シルバ「…無論、ある。実際目の当たりにするのは初めてだったが、数千年も前の戦いにて、ナスカの地上絵に封印されたと聞いている」

和泉「…！ 確かに、ナスカの地上絵の１つによく似たモンスターでした…！」

千愛「…その封印を、奴らが解いたって事なのかしら」

シルバ「…それは、考えにくい。奴らが直接地縛神の封印を解いたというならば、この人間界もタダでは済まないだろう…」

鈴華「……あんなのが現実に解き放たれたらって思うと、怖気が走りますわね…っ」

ニクス「…なるほど、な。それで奴らは、その強大な力を持つ地縛神のコピーカードを駒にして、わざわざ敵情視察に出向いてきたという訳だが、終焉の焔というのは割と自信過剰のように見えて慎重派なんだな」

メアリー「…そーねー。まぁ確かに、唐突な初見殺しにはあいたくないわよね」

戒「…データを元に戦う、か。奴らの中には、数字に強い戦闘員がいるのだろうな」


火群「あ、そういえば、今日ここに集められた他の決闘者達は……？」

シルバ「……地下3階への通路は瓦礫で封じられてしまっていたからな。非常口から皆脱出しているはずだ。心配するな」

火群「…よかった…」

シルバ「…何はともあれ、だ。今日はもう遅い。また後日話し合おう。合宿の件もあるからな」

メアリー「…えぇそうね、今日は解散！！
つっても……流石にあんたたちまだ中学生だし、送ってかなきゃね」


ｷｷｨｨｨ‼︎

？？「…そーゆー事なら、乗ってきな！」

ブレーキ音と共に、一台の乗用車が俺たちの目の前に現れる。

火群「！」

その運転席の窓を開けそこから顔を出したのは、スッキー先生だった。

火群「スッキー先生！」

好「…色々あったみたいじゃないカ、市瀬」

火群「…えぇ、それはもう…色々と」

好「…ま、話は車の中で聞かせて貰おっか。さぁ乗りな！」

火群「…はい！ありがとうございます！」



＊



〜帰り道・車内〜


戒とシルバさんはそれぞれ別で帰り、残りのメンバーはスッキー先生の車に乗せてもらう事になったんだけど……。


和泉「あ、あの…！」

雫「予想はしてましたが…っ」

鈴華「…これは…っっ」

結維「…いくらなんでも…っね」

火群「狭すぎィっっ！！」


運転手含め5人乗りの車に合計9人も乗っているのだ。車内の人口密度は当然とてつもないものであった。

火群「…ってか…っ、ニクスとチアガールも何しれっと乗ってんだ！ お前ら飛べるだろっ」

ニクス「私たちだって疲れてるんだ。別に構わんだろ」

千愛「…そーよ。飛ぶのだって楽じゃないの」

火群「ぐぬぬ……」

結維「……ちょっと鈴華、チョココロネ邪魔。食べていい？」

鈴華「ダメに決まってますわよ！！」

雫「…はわわ…っ、鈴華さん暴れないでください〜…！」

和泉「……ちょっと、火群くん…。さっきからおしりに何か当たってるんですけど」

火群「…！！ ごめんごめん本当にごめん！！」



好「…なんか話を聞くどころじゃなくなっちゃったねえ」

メアリー「…若いってのはいいね、とか思った？ コノミ」

好「…アタシゃそんな老けてないっつの」

メアリー「…あははは！ そういうセリフがすでに老けてるわ！」

好「…ったく…、余計なお世話よ。
……今日はガキども送ったらとことん付き合って貰うからネ、メアリー…！」

メアリー「…臨むところよ…♪ 今日は飲むぞー！！」







そんなこんなで、今日という日は過ぎ、合宿までの数日はゆっくり身体を休めようとか考えていた。
だが、これから襲い来る脅威に、この時の俺はまだ気づいていなかったーーー





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１０２ 数字に魂を奪われた男




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙