DRAW:２４０ 天龍雪獄！放て魂の一撃　作：人喰い

(240)


【Side 小次郎】

〜YAGAMI本社ビル・司令室〜


小次郎「───ゼェ…ッ…ハァ……ッ！後は皆さんだけです！早く避難を！」


爽香「…！誰！？この美少年！？」

鈴音「……！！すごい怪我じゃない…！すぐに手当てしないと───」

シルバ「…君は───跡部の弟子か…！」

小次郎「…！貴方がシルバ殿でしたか…！跡部先生の古き友人の…！」

シルバ「外の状況は把握している。明石と鈴音さんは彼と一緒に外に出ていろ。俺はここに残る」

鈴音「！！そんな！無茶ですよ！」

爽香「そうですよ！私も残りますって！」

シルバ「お前たちがここでできる事はもう無い───わかったら出て行け」

一見キツい言い方ではあるが、自分達には外でできる事があるのだと鈴音は解釈し、黙って踵を返す。

爽香「ちょ！ちょちょ！鈴華ちゃんママ！？いいんすか！？」

鈴音「…ええ、私達は私達にできる事をするの。ここに居ても邪魔になるだけよ」

爽香「…っ！」

シルバ「───心配するな。俺は死なない。
……2人を頼む」

小次郎「───承知しました」

一言そう言って、小次郎は2人を連れて駆け出した。



シルバ「───」


司令室に一人残されたシルバは細く息を吐き、


シルバ「俺の死に場所は───ここじゃない」


そう、呟いた。


YAGAMI本社ビルがトリシューラの攻撃を受け氷漬けとなったのは、それから約3分後───小次郎が鈴音と爽香と共にビルから脱出して間も無くの事だった。















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２４０
《天龍雪獄！放て魂の一撃》














〜YAGAMI本社ビル・上空〜

竜貴「───ぁ……ぁ……」

氷漬けとなったビルを見下ろす竜貴はなんとか言葉を搾り出そうとするが、出てくるのは嗚咽の様な何かだけだ。

トリシューラ「護れなかった事を恥じる事は無い。貴様はよく戦った」

対する機兵は皮肉にも取れる激励を浴びせるが、竜貴の耳には届かない」

トリシューラ「…さて、これで人間界と神星樹との連携は完全に絶った。すぐにでも瑞希様の元へ戻る必要があるが───」

竜貴「……ッ…待てよ……コラ……ッ…」

トリシューラ「…安心しろ。すぐに葬ってやる───と言いたいところだが、このターンはムーラングレイスの効果によりバトルを行えぬ。我はこれでターンエンドだ」



『東雲 竜貴』【LP 8000】
(モンスター)
なし
(魔法・罠)
なし
伏せ:0
手札:1
墓地:ギザーム
除外:アスカロン、グラム、ゴルムファバル、セナート、テンペスト、竜の渓谷x2


『トリシューラの機兵』【LP 3500】
(モンスター)
・EXゾーン
『氷結界の還零龍 トリシューラ』[ATK 2700]☆11
・メインゾーン
『氷結界の守護陣』[DEF 1600]☆3 チューナー
『氷結界の御庭番』[DEF 1600]☆2
(魔法・罠)
『氷結界の晶壁』(永続魔法)
伏せ:0
手札:1
墓地:トリシューラ、照魔師、鏡魔師、霜精、ブリズド、ウェイン、
除外:クリスタルガール、ムーラングレイス


◉TURN:０４◉

竜貴「………」

どうする。どうする。どうする。
そんな当てのない考えばかりが竜貴の思考回路を埋め尽くす。

竜貴「俺の……ターン」

小次郎は？シルバさんは？ビルに残っていた他の人達は？どうなった？

竜貴「……ドローッ！！！」[手札 2]

けど今は引くしかない。デッキから、戦う為の“魂”を。

竜貴「……ハァ…ッハァ…ッッ…ハ…ァ…ッ！」

信じるしかない。生きていてくれている事を───

竜貴「…速攻魔法…発動……ッ！『疾風のドラグニティ』───ッ」


《疾風
しっぷう
のドラグニティ/Dragunity Whirlwind》 †
速攻魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：相手フィールドにのみモンスターが存在する場合に発動できる。
デッキから「ドラグニティ」チューナーと鳥獣族の「ドラグニティ」モンスターを１体ずつ効果を無効にして特殊召喚する。
ＥＸデッキから特殊召喚されたモンスターが相手フィールドに存在する場合、
さらに自分フィールドの「ドラグニティ」モンスターのみを素材としてドラゴン族Ｓモンスター１体をＳ召喚できる。
このカードの発動後、ターン終了時まで自分はドラゴン族モンスターしかＥＸデッキから特殊召喚できない。


瞬間───旋風が巻き起こる。

竜貴「…ッ…デッキより現れろッ！！！『ドラグニティードゥクス』！！『ドラグニティークーゼ』！！」

『ドラグニティークーゼ』[ATK 1000]☆2 チューナー
『ドラグニティードゥクス』[ATK 1500]☆4

竜貴「例えここでくたばっても…ッ…！！お前を絶対に神星樹の中へは行かせないッ！！それが俺の役目だ！！」

寒さで疲弊し切った身体を根性だけで動かし、竜貴は吠える。

竜貴「俺は特殊召喚した2体で───シンクロ召喚ッ！！」

◉◉◉☆4+☆2=☆6◉◉◉

竜貴「───同調せし竜騎士よ、フィールドに舞い降り、仇なす者に裁きを！
現れろ！！誇り高き雷の牙！『ドラグニティナイトーヴァジュランダ』！！」[ATK 1900]☆6

《ドラグニティナイト－ヴァジュランダ/Dragunity Knight - Vajrayana》
シンクロ・効果モンスター
星６/風属性/ドラゴン族/攻1900/守1200
ドラゴン族チューナー＋チューナー以外の鳥獣族モンスター１体以上
(1)：このカードがＳ召喚に成功した時、
自分の墓地のドラゴン族・レベル３以下の「ドラグニティ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(2)：１ターンに１度、このカードに装備された
自分フィールドの装備カード１枚を墓地へ送って発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで倍になる。


竜貴「ヴァジュランダの効果！墓地のクーゼを自身に装備！！」

トリシューラ「…！」

竜貴「まだだ！！装備されているクーゼの効果！」

《ドラグニティ－クーゼ/Dragunity Couse》 †
チューナー・効果モンスター
星２/風属性/ドラゴン族/攻1000/守 200
このカードをＳ素材とする場合、「ドラグニティ」モンスターのＳ召喚にしか使用できない。
(1)：フィールドのこのカードをＳ素材とする場合、
このカードのレベルを４として扱う事ができる。
(2)：このカードが装備カード扱いとして装備されている場合に発動できる。
装備されているこのカードを特殊召喚する。

竜貴「再び現れろ！『ドラグニティークーゼ』！！」

『ドラグニティークーゼ』[ATK 1000]

トリシューラ「…貴様のエースであるアスカロンは既に葬ったというのに、何をするつもりだ───？」

竜貴「…シルバさんの話じゃ、お前らに奪われた精霊はここに集まってるって話じゃねェか…！」

トリシューラ「…一体、何を───ッ」

竜霊山に眠っていた精霊の内、竜貴が手に入れる事ができたのは『ドラグニティナイトーアスカロン』のみ。
しかし、『永井放浪』によって奪われた精霊がこの地を彷徨っているというのなら───

竜貴「───だったらよぉ！！ここからでも呼びかけりゃあ届くんじゃねぇのかァ！？なァ！！」

神にでも何にでも、縋るしかない。
今は、ただ───

竜貴「俺は…！！レベル6の『ドラグニティナイトーヴァジュランダ』に…ッ、『ドラグニティークーゼ』を、自身の効果によりレベル４として扱い……ッ…チューニング！！」


◉◉◉☆6+☆4=☆10◉◉◉


竜貴「───同調せし竜騎士よ！今こそ熱風を身に纏い 、極光の輝きにて世界を照らせッ！！シンクロ召喚！！」

─── 一瞬。吹雪が止む。

トリシューラ「…ッ！」

同時に雲間から差し込んだ太陽の光が辺りを包み込み───


竜貴「現れろ！！遍く照らす太陽の神槍！！『ドラグニティナイトーアラドヴァル』！！！」


叫び、掲げた右手にカードが宿る。

トリシューラ「…ッこれは───」

直後、天より舞い降りた龍神は４対の羽を広げ、太陽を背に光を放つ。

その姿はまさに───太陽神。


『ドラグニティナイトーアラドヴァル』[ATK 3300]☆10


激しい輝きと共に現れた龍神と眼を合わせ、竜貴は静かに頷き、

竜貴「……俺に力を貸してくれ。これ以上、何も壊させない“力”を───！」


トリシューラ「この地にて彷徨う精霊を覚醒させたか───だが！」

僅かに驚きを見せた機兵だったが、機兵の場に守備表示で構えるは───冷気を放つ番犬。


『氷結界の守護陣』[DEF 1600]


トリシューラ「『氷結界の守護陣』が他の氷結界と共に場に存在する限り、その守備力以上の攻撃力を持つモンスター……即ち、攻撃力1600以上の貴様のモンスターは攻撃できない───」

それだけではない。
同じく守備表示で構える『氷結界の御庭番』が存在する限り、場の氷結界はモンスター効果の対象にならず、極め付けは永続魔法───『氷結界の晶壁』。

トリシューラ「更に『氷結界の晶壁』の効果により、場に氷結界が3体以上存在する時、場の氷結界はEXデッキから特殊召喚されたモンスターの効果を受けない───決死の一手も、我に届きはしないッ！」

竜貴「……ハァ…ッ…ハァ…ッ…！だからなんだってんだ…！俺はこれで……ターンエンドだ───」[手札 1]

強がって虚勢を張ってはみたものの、氷結界による強力なロック戦術に対し、これ以上打つ手がないのも事実───竜貴のターンは、アラドヴァル1体を召喚するだけで終わってしまった。しかし───

◉TURN:０５◉

そのアラドヴァルが放つプレッシャーもまた、機兵に対する牽制としては充分であると、安心して任せられるだけのカードパワーがアラドヴァルにはあると、竜貴は信じている。

トリシューラ「…我が氷結界の軍勢の前には、どの様な抵抗も無駄となる───我のターン！！」[手札 2]

力強くカードを引く機兵。間髪入れずに墓地のカードに手を伸ばす。

トリシューラ「墓地の『氷結界に至る晴嵐』を除外し───効果発動！」


(2)：このターンに墓地へ送られていないこのカードを墓地から除外し、
自分の墓地・除外状態の「氷結界」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。


トリシューラ「墓地の『氷結界の虎将 ウェイン』を手札に加え───ウェインの効果！」


(1)：相手フィールドにモンスターが存在し、
自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。


手札を減らさずの展開。竜貴は一瞬眉をひそめ、

竜貴「───ここだッ！！」

強気に、叫ぶ。

竜貴「───『ドラグニティナイトーアラドヴァル』の効果発動ッ！！」


《ドラグニティナイト－アラドヴァル/Dragunity Knight - Areadbhair》 †
シンクロ・効果モンスター
星１０/風属性/ドラゴン族/攻3300/守3200
「ドラグニティ」チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：相手がモンスターの効果を発動した時、
自分の墓地から「ドラグニティ」モンスター１体を除外して発動できる。
その発動を無効にし除外する。
(2)：このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動できる。
その相手モンスターを除外する。
(3)：Ｓ召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。
相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。


アスカロンが竜貴のデッキにおける“攻め”の要なら、アラドヴァルはその逆───“守り”の要。

竜貴「墓地の『ドラグニティナイトーヴァジュランダ』をゲームから除外し───モンスター効果の発動を無効にし除外する！！」

ヴァジュランダの魂を糧に、アラドヴァルが放った火炎はウェインを焼き尽くす───が、

トリシューラ「…ッ！まさかその様な効果を持っていようとはな───だが、アスカロンと違い、そいつの効果は1ターンに1度まで…。
貴重な妨害札、切るのが少し早すぎた様だな…ッ」

「ここだ」と、強気に差し込んだ様に見えたが、結果的に、アラドヴァルの効果を早々に使わされた形となってしまった竜貴。

竜貴「……」

竜貴はアラドヴァルの効果を、『氷結界の晶壁』による耐性付与が行き届かない手札・墓地のモンスターに対して撃つしかなかったのだ。

トリシューラ「…我に対抗する為の“炎”の力───やはり長く生かしておくわけにはいかんな……墓地の『氷結界の依巫』を除外し、効果発動！」

(3)：自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合、
墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分フィールドに「氷結界トークン」（水族・水・星１・攻／守０）１体を特殊召喚する。

トリシューラ「我の場に『氷結界トークン』を特殊召喚！」

『氷結界トークン』[DEF 0]

トリシューラ「更に！魔法カード『貪欲なウツボ』を発動！！」

《貪欲
どんよく
なウツボ/Moray of Avarice》 †
通常魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：自分フィールドの表側表示の魚族・海竜族・水族モンスター１体を除外して発動できる。
自分は２枚ドローする。

トリシューラ「『氷結界トークン』を除外し2枚のカードをドローッ！！」[手札 3]

墓地効果で生成したトークンをコストにしてのドロー。機兵はすかさず引いたカードに指をかける。

トリシューラ「続けて『氷結界の随身を召喚し───効果発動！」

《氷結界
ひょうけっかい
の随身
ずいじん
/Zuijin of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星２/水属性/戦士族/攻 500/守 300
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードをリリースして発動できる。
手札からレベル５以上の「氷結界」モンスター１体を特殊召喚する。
(2)：このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドのレベル３以上の水属性モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターのレベルを２つ下げ、このカードを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

トリシューラ「自身をリリースし、手札より現れよ！『氷結界の虎将 グルナード』！！」[ATK 2800]

《氷結界
ひょうけっかい
の虎将
こしょう
グルナード/General Grunard of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星８/水属性/戦士族/攻2800/守1000
(1)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分は通常召喚に加えて１度だけ、自分メインフェイズに「氷結界」モンスター１体を召喚できる。

トリシューラ「まだだ！グルナードが場に存在する限り、我は通常召喚に加えて1度だけ、『氷結界』モンスターを追加召喚できるッ！現れよ！『氷結界の軍師』！」[ATK 1600]

《氷結界
ひょうけっかい
の軍師
ぐんし
/Strategist of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星４/水属性/魔法使い族/攻1600/守1600
(1)：１ターンに１度、手札から「氷結界」モンスター１体を墓地へ送って発動できる。
自分はデッキから１枚ドローする。

トリシューラ「氷結界の軍師の効果！我はコストで手札を墓地へ送る代わりに墓地に眠る『氷結界の照魔師』を除外し───1枚ドローッ！」[手札 1]

竜貴「……ッ…！」

ここまでの展開で、機兵の場には5体のモンスター。

EXゾーン
『氷結界の還零龍 トリシューラ』[ATK 2700]

メインゾーン
『氷結界の虎将 グルナード』[ATK 2800]
『氷結界の軍師』[ATK 1600]
『氷結界の守護陣』[DEF 1600]
『氷結界の御庭番』[DEF 1600]


だが、どれもアラドヴァルの攻撃力3300には及ばない───が、

トリシューラ「───ゆくぞ。バトルだ」

当然竜貴も、その程度で終わると思っていない。必ず何か仕掛けてくる。そんな事は分かりきっている。

トリシューラ「還零龍よ！！アラドヴァルを攻撃せよ───〝氷獄のアイシクル・トリニティ・ゼロ〟！！」

竜貴「…ッ！！迎え撃てッ！アラドヴァル！！〝業火龍滅・アラドヴァル・サンレイズ〟！！」


『氷結界の還零龍 トリシューラ』
[ATK 2700]
───VS───
[ATK 3300]
『ドラグニティナイトーアラドヴァル』

灼熱の熱風と───極寒の吹雪。
そして両者の放つ、熱気と冷気をそれぞれ帯びた光線が衝突すると、激しい爆発が巻き起こる───

竜貴「……ッ！！」

トリシューラ「───ッ」【LP 3500→2900】

煙が晴れると、還零龍を凌駕したアラドヴァルの攻撃の余波が機兵を襲う───が、

トリシューラ「───」

力を失い、地に落ちてゆく還零龍。
還零龍は倒した。なのに。それなのに。

竜貴「なんで───吹雪は止まねェ…！」

それだけではなく、吹雪は強まる一方だ。
竜貴は異変を感じ目線を下に落とすと、落ちゆく還零龍が青白い輝きを放つのが見え、目を見開く。

トリシューラ「───相手によって破壊された還零龍の効果ッ！！」

その宣言と同時に還零龍の放つ輝きはより一層強まり、それを見た竜貴はすかさず、

竜貴「…ッ！アラドヴァルの効果ッ！！」

(2)：このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動できる。
その相手モンスターを除外する。

チェーン①
『氷結界の還零龍 トリシューラ』

チェーン②
『ドラグニティナイトーアラドヴァル』

竜貴「バトルで破壊したモンスターを除外する！！」

嫌な予感がし、追撃を指示する竜貴。

トリシューラ「───」

アラドヴァルの火炎が再び還零龍を焼き、今度こそトドメを差した……と思われたが───

竜貴「───ッ！？」

目の前の光景に竜貴は唖然とする。


『氷結界の龍 トリシューラ』[ATK 3300]☆9


突如として霧の中より現れし、氷結界の龍。

竜貴「なんで───」

更に異変は、竜貴の従えるアラドヴァルにも表れていた。


『ドラグニティナイトーアラドヴァル』[ATK 3300→1650]＊効果無効


竜貴「なんで───ッ！」

半身が凍りつき、空中でバランスを保つ事すらままならない状態のアラドヴァルを前に、竜貴は叫ぶ。

トリシューラ「───還零龍の怒りだ」

そう、破壊した後に還零龍を除外したとしても、1度発動したその効果は止まらない───

(2)：Ｓ召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。
自分のＥＸデッキ・墓地から「氷結界の龍 トリシューラ」１体を選び、攻撃力を３３００にして特殊召喚する。
相手フィールドに表側表示モンスターが存在する場合、
さらにそれらのモンスターは、攻撃力が半分になり、効果は無効化される。


トリシューラ「我は墓地より蘇り、貴様の場のモンスターは1匹残らず凍りつく───」

竜貴「……なん…だと…ッ…！」

トリシューラ「安心しろ。すぐに砕いてやる───貴様の魂と共にな…」

竜貴「───！」

トリシューラ「我は我自身で、『ドラグニティナイトーアラドヴァル』を攻撃！！
〝フリージング・ゼロ・ブラスト〟！！」


『氷結界の龍 トリシューラ』
[ATK 3300]
───VS───
[ATK 1650]
『ドラグニティナイトーアラドヴァル』


強化された氷竜の冷気を弱体化されたその身では受け切る事はできず、あえなく撃沈。その攻撃は竜貴の身にも襲いかかる。

竜貴「がぁあぁッ！！」【LP 8000→6350】

ダメージを受けた事で、竜貴を支えるレヴァテインの翼も凍りついてゆき、バランスが崩れる。

竜貴「…ッ……！…ッ破壊された…アラドヴァルの効果…ッ！！」

(3)：Ｓ召喚したこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。
相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

竜貴「お前の場の…ッ…氷結界の晶壁を破壊する…！！」

なんとか体勢を立て直しながらも発動を宣言し、アラドヴァルが散る間際に放った熱風が晶壁を打ち破った。しかし───

トリシューラ「…無駄な足掻きを…ッ、だがこれで貴様を守るものは何一つなくなった───『氷結界の軍師』の攻撃をその身に受けよ！」

『氷結界の軍師』
[ATK 1600]
───ATTACK───
【LP 6350】
『東雲 竜貴』

機兵の言う通り、竜貴を守るものは、もう何一つ無い───

竜貴「がっ…！！」【LP 6350→4750】

トリシューラ「───まだだ。『氷結界の虎将 グルナード』！プレイヤーへ直接攻撃！！」


『氷結界の虎将 グルナード』
[ATK 2800]
───ATTACK───
【LP 4750】
『東雲 竜貴』


竜貴「…がぁああぁああっ！！！」【LP 4750→1950】

氷結界のモンスター達による連撃が容赦なく竜貴を攻め立てる。だが、

竜貴「……ッ…ハァ……ッ…ハァ……ッ…まだ……ッ…負け……て……ね……ぇ…」

先の攻撃により、左手と右足は凍傷を起こし、右翼を失ったその状態においても、竜貴の眼は機兵を捉えて離さない。

ここでの勝敗が、この戦いの戦況を大きく動かすであろう。
それがわかっているから。
絶対に、諦めるわけにはいかない。

トリシューラ「この盤面を前にしても、まだその様な事が言えるのか…？」

しかし現実は非情である。
悠然と構える機兵の場には、5体の氷結界。

『氷結界の龍 トリシューラ』[ATK 3300]
『氷結界の虎将 ガンダーラ』[ATK 2800]
『氷結界の軍師』[ATK 1600]
『氷結界の守護陣』[DEF 1600]
『氷結界の御庭番』[DEF 1600]

『氷結界の守護陣』と他の氷結界が存在する限り、守護陣の守備力───1600以上の攻撃力を持つ竜貴のモンスターは攻撃できず、『氷結界の御庭番』が存在する限り、竜貴は場の氷結界をモンスター効果の対象にできない───

トリシューラ「カードを1枚伏せ───ターンエンド」

更にはダメ押しの伏せカード。

竜貴「───」

対する竜貴の場には1枚のカードも存在せず、手札は1枚のみ───


◉TURN:０６◉


ただ、それでも。


竜貴「……俺の…ターン───」


“心”は。

“魂”は。


竜貴「───ドロー」[手札 2]


“勝て”と叫ぶ。


竜貴「魔法発動───『調和の宝札』」


《調和
ちょうわ
の宝札
ほうさつ
/Cards of Consonance》 †
通常魔法
(1)：手札から攻撃力１０００以下のドラゴン族チューナー１体を捨てて発動できる。
自分はデッキから２枚ドローする。

竜貴「俺は手札の『ドラグニティーレムス』を捨て───2枚ドロー！！」[手札 2]

竜貴は引いたカードを確認し、即座に発動させた。

竜貴「永続魔法発動───『ドラグニティ・ドラフト』」

《ドラグニティ・ドラフト/Dragunity Draft》 †
永続魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：このカードの発動時に、自分の墓地のレベル４以下の「ドラグニティ」モンスター１体を対象にできる。
その場合、そのモンスターを手札に加える。
(2)：このカードが魔法＆罠ゾーンに存在し、
元々のレベルが５以上の自分の「ドラグニティ」モンスターが攻撃する場合、
そのモンスターはダメージステップ終了時まで相手の効果を受けない。


竜貴「墓地より手札に舞い戻れ───『ドラグニティードゥクス』！！」

疾風のドラグニティの効果で特殊召喚し、墓地へ送っておいたドゥクス───このカードは古くから竜貴を支えてきたドラグニティにおける展開の要だ。

竜貴「こいつがいれば……俺はまだ戦える！！『ドラグニティードゥクス』を召喚ッ！！」[ATK 1500]

《ドラグニティ－ドゥクス/Dragunity Dux》 †
効果モンスター
星４/風属性/鳥獣族/攻1500/守1000
(1)：このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地のドラゴン族・レベル３以下の「ドラグニティ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(2)：このカードの攻撃力は、自分フィールドの「ドラグニティ」カードの数×２００アップする。

竜貴「ドゥクスの効果発動！！墓地のクーゼをドゥクスに装備！！」

同時に、永続効果によりドゥクスの攻撃力が上昇する。

『ドラグニティードゥクス』[ATK 1500→2100]

竜貴「更に！ドゥクスに装備されたクーゼを、自身の効果により特殊召喚！」[ATK 1000]

続け様に竜貴の墓地から光が漏れ出る───

竜貴「墓地のレムスの効果発動！！」

(2)：自分フィールドに「ドラグニティ」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
このターン、自分はドラゴン族モンスターしかＥＸデッキから特殊召喚できない。

竜貴「墓地より甦れ！『ドラグニティーレムス』！！」[DEF 800]

トリシューラ「…懲りずにシンクロ召喚をしてくるか───だが！ドラグニティのシンクロモンスターがたかが1体出てきたところで───ッ」

竜貴「───俺は」

繋げ、希望を。

竜貴「『ドラグニティードゥクス』と───」

打ち砕け、絶望を。

竜貴「『ドラグニティーレムス』を───」

トリシューラ「…待て…ッ…何を───」

自分が何をしようとしてるのか、自分でもわからない。

ひとつ。

ただひとつ分かるのは───


竜貴「───“リンクマーカー”にセット」


───この召喚の方法だけ。


トリシューラ「───ッ！」

途端、両者の間に8つの矢印から成る巨大な円環が現れる。
同時に宙を舞った2体のモンスターが、それぞれ右下・左下へ向く矢印へと吸い込まれてゆき───


竜貴「───リンク召喚ッ！！！」


宣言と共に、円環の中より現れたるは───成長したレムスと、それに騎乗するドゥクスの姿。


竜貴「───現れろッ！！
未来を切り拓く、創世の雷槍！！
『ドラグニティナイトーロムルス』！！！」


飛来した竜騎士は雷を纏い、猛吹雪の中を優雅に飛び回る。

『ドラグニティナイトーロムルス』[ATK 1400]

トリシューラ「…ッ…リンク…召喚だと……ッ…！？なぜ貴様が───」

竜貴「…俺にもわかんねぇよ…、ただなぁ……前にも、こんな事があった」

竜貴が初めて、シンクロ召喚を行った時だ。
その時も、手が、口が、勝手に動き、新たな召喚法を覚醒させたのだ。


竜貴「俺はこれを───奇跡って呼ぶ事にしてる」


トリシューラ「…ッ…！！戯言は…ッ…我を打ち倒してから言って見せろォ！！東雲 竜貴ィィ！！」

予想外の出来事に声を荒げる機兵に対し、

竜貴「やってやるさ」

竜貴は一言そう言って、ボロボロの身体でファイティングポーズをとった。

竜貴「行くぜ───『ドラグニティナイトーロムルス』の効果発動！！」

《ドラグニティナイト－ロムルス/Dragunity Knight - Romulus》 †
リンク・効果モンスター
リンク２/風属性/ドラゴン族/攻1200
【リンクマーカー：左下/右下】
トークン以外のドラゴン族・鳥獣族モンスター２体
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ドラグニティ」魔法・罠カードまたは「竜の渓谷」１枚を手札に加える。
(2)：ドラゴン族モンスターがＥＸデッキからこのカードのリンク先に特殊召喚された場合に発動できる。
手札からドラゴン族・鳥獣族モンスター１体を守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、効果が無効化され、リンク素材にできない。

竜貴「俺はこのカード───『ドラグニティ・グロー』を手札に加え、発動！！」

《ドラグニティ・グロー/Dragunity Glow》 †
通常魔法
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分のデッキ・墓地からレベル５以上の「ドラグニティ」モンスター１体を選んで手札に加える。
(2)：墓地のこのカードを除外し、「ドラグニティ」モンスターが装備している
自分の魔法＆罠ゾーンのモンスターカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを守備表示で特殊召喚する。

竜貴「デッキからレベル5以上のドラグニティ───『ドラグニティアームズーミスティル』を手札に！！」

竜貴の展開は止まらない。

竜貴「そしてこいつが、お前の盤面に“隙”を作る───最後の一手だ！！手札の『鉄騎龍ティアマトン』の効果を発動ッ！！」


《鉄騎龍
てっきりゅう
ティアマトン/Iron Dragon Tiamaton》 †
特殊召喚・効果モンスター
星４/闇属性/ドラゴン族/攻2000/守 0
このカードは通常召喚できず、このカードの(1)の効果でのみ特殊召喚できる。
このカード名の(1)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：３枚以上のカードが同じ縦列に存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2)：このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。
このカードと同じ縦列の他のカードを全て破壊する。
(3)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードと同じ縦列の使用していないゾーンは使用できない。


トリシューラ「…ッ！ティアマトンだと…！？」

竜貴「…知ってるみたいだな……こいつは同じ縦列にカードが3枚以上ある場合に特殊召喚できるモンスターだ」

トリシューラ「……更に特殊召喚に成功した時、同じ縦列のカードを全て破壊する効果を持つ───」


現在の盤面は、竜貴から見て、

[　　　][　　　][　　　　][　　　　][　伏せ　]
[御庭番][守護陣][トリシュ][グルナード][軍師]
　　　 [　　　]　　　　 [ロムルス]
[　　　][　　　][　　　　][ クーゼ ][　　　]
[　　　][　　　][　　　　][　　　　][ドラフト]


トリシューラ「…自分の永続魔法諸共、我の伏せカードを破壊しにくるか、それとも攻撃を封じている守護陣を狙うか───」

竜貴「…いや、俺がこいつを特殊召喚するのは、一番左───『氷結界の御庭番』！お前の正面だ！」

トリシューラ「…！」

竜貴から見て一番左のモンスターゾーンに雷が迸り、全身を鋼鉄で覆われた小型の龍が姿を現した。

『鉄騎龍ティアマトン』[ATK 2000]☆４

すると途端に、鉄騎龍の前後の足元が淡い光を放つ。

竜貴「特殊召喚されたティアマトンの効果！！」

(2)：このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。
このカードと同じ縦列の他のカードを全て破壊する。

竜貴「同じ縦列のカード───『氷結界の御庭番』を破壊する！！」

竜貴の合図により鉄騎龍が放った雷鎚は、場の氷結界に対象耐性を付与していた『氷結界の御庭番』を跡形も無く消し去り、その効果を遺憾無く発揮した。

トリシューラ「…ッ！！」

そして機兵は、恐らく一度きりであろうこのチャンス───竜貴が『氷結界の御庭番』を破壊した意図を考えていた。

トリシューラ（…対象耐性と攻撃制限の合間を縫って来たのは見事だが……ッ、奴はアスカロンを失った今、なぜ対象耐性を剥がして来た───？）

その意図を考える中で、機兵の脳内にある一つの可能性がよぎった。

トリシューラ（まさか───な）

しかしそこで、竜貴の次なる一手により思考は遮られる。

竜貴「更に俺は───レベル4の『鉄騎龍ティアマトン』に、レベル2の『ドラグニティークーゼ』をチューニング！！」

◉◉◉☆4+☆2=☆6◉◉◉

竜貴「───同調せし竜騎士よ！フィールドに舞い降り、虚構を打ち砕く槍となれ！！
シンクロ召喚！！現れろ！
『ドラグニティナイトーハールーン』！！」[ATK 1200]☆6 チューナー

まだ終わらない。まだ止まらない。

竜貴「ハールーンの効果！！墓地のクーゼをハールーンに装備し───クーゼは自身の効果で分離！」

『ドラグニティークーゼ』[ATK 1000]☆2 チューナー

竜貴「まだ……まだァ！！クーゼを墓地へ送り、手札より現れろ！『ドラグニティアームズーミスティル』！」

『ドラグニティアームズーミスティル』[ATK 2100]☆６

竜貴「ミスティルの効果で墓地のクーゼを装備し───分離だ！！」

『ドラグニティークーゼ』[ATK 1000]☆２ チューナー

トリシューラ「…何をしようと、無駄だ…ッ…！！無駄だと言っている！！」

竜貴「無駄じゃねぇ！！俺たちの積み上げてきたもんは……何一つなァ！！行くぜッ！！」

トリシューラ「……ッ…！」

竜貴「レベル６の『ドラグニティアームズーミスティル』と、『ドラグニティナイトーハールーン』の2体で───オーバーレイ！！」

2体の竜騎士は光を纏い宙を舞う。すると盤面の中央に巨大な渦が発生し、その中より“それ”は現れた。
雄々しく羽ばたく───神聖なる龍王。


竜貴「───エクシーズ召喚！！現れろ！ランク６！『聖刻龍王ーアトゥムス』！！」


『聖刻龍王ーアトゥムス』[ATK 2400]


トリシューラ「…何…ッ…！シンクロ、リンクだけでなく、エクシーズ召喚まで使いこなすだと……ッ…！？」

竜貴「アトゥムスの効果、発動ッ！！」

《聖刻龍王
せいこくりゅうおう
－アトゥムス/Hieratic Dragon King of Atum》 †
エクシーズ・効果モンスター
ランク６/光属性/ドラゴン族/攻2400/守2100
ドラゴン族レベル６モンスター×２
(1)：１ターンに１度、このカードのＸ素材を１つ取り除いて発動できる。
デッキからドラゴン族モンスター１体を選び、
攻撃力・守備力を０にして特殊召喚する。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

エクシーズ素材→墓地
『ドラグニティアームズーミスティル』

竜貴「デッキより現れろ───疾風纏いし竜騎士！！
今ここに舞い降り、全ての敵を薙ぎ払えッ！！『ドラグニティアームズーレヴァテイン』！！」


『ドラグニティアームズーレヴァテイン』[ATK 0]


竜貴と“具象化”中のレヴァテインは、精神体となってフィールドに現れた。しかし、

トリシューラ「それが貴様のデッキに残った最後のエースか……ッ！だが攻撃力0の貴様に何ができる！！」

機兵が指をさすレヴァテインも、竜貴同様、全身にダメージを負っていた。

レヴァテイン「…トリシューラ…と言ったか」

ボロボロな翼でなんとか宙に止まりながらも、機兵に語りかける。

レヴァテイン「お前にも…きっと分かるはずだ。人である主君に仕える、精霊のお前であれば」

トリシューラ「…なん…だと…ッ？」

レヴァテイン「信じる者のため闘う者の魂が───どれだけ強く輝くのかが」

トリシューラ「───ッ」

竜貴「───レヴァテインの効果……発動！！」

《ドラグニティアームズ－レヴァテイン/Dragunity Arma Leyvaten》 †
効果モンスター
星８/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
(1)：このカードは「ドラグニティ」カードを装備した自分フィールドのモンスター１体を除外し、
手札・墓地から特殊召喚できる。
(2)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ－レヴァテイン」以外の自分の墓地のドラゴン族モンスター１体を対象として発動できる。
そのドラゴン族モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(3)：このカードが相手の効果で墓地へ送られた時、
このカードに装備されていた自分・相手の墓地のモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。


竜貴「墓地に眠る『ドラグニティナイトーアラドヴァル』を───レヴァテインに装備する！！」

トリシューラ「…ッ…！！アラドヴァルを装備だと…ッ…！？」

竜貴「更に！！墓地の『ドラグニティ・グロー』を除外して効果発動ッ！！」

(2)：墓地のこのカードを除外し、「ドラグニティ」モンスターが装備している
自分の魔法＆罠ゾーンのモンスターカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを守備表示で特殊召喚する。

竜貴「───再び現れろ…ッ…！！そして旋風を巻き起こせッ！！『ドラグニティナイトーアラドヴァル』ッ！！」

『ドラグニティナイトーアラドヴァル』[DEF 3200]


竜貴「このターンまでの積み重ね───全部ぶつけるぜ…ッ…！！
俺は『ドラグニティークーゼ』1体で───リンク召喚！！」

再び現れた円環は、盤面中央───ロムルスの指す左下のフィールドに現れ、クーゼはその右───ロムルスの真下に位置する領域を指す矢印へとセットされた。

竜貴「───現れろッ！リンク１！！『守護竜ピスティ』！！」[ATK 1000]マーカー[→]

度重なるEXデッキからの召喚により、身体の節々から血が噴き出るが、そんな事を気にしている余裕などない。

竜貴「…ッ…！…ハァ…ッ…！ハァ…ッッ！！」

これ以上何もさせるな。

絶対に勝て。

ここで───確実に倒せ。


竜貴「ハァ…ッァァァッ！！
───連続リンク召喚だ…ッ！！リンク２の『ドラグニティナイトーロムルス』と、『ドラグニティアームズーレヴァテイン』をリンクマーカーにセット！！」

今度は2体の竜騎士が宙を舞う。
召喚されるのは、ロムルスが居たのと同じ、右側のEXゾーン。
矢印は───左、上、下の３つ。

竜貴「───リンク召喚！！
現れろ───リンク３！！『スリーバーストショット・ドラゴン』！！」[ATK 2400]


《スリーバーストショット・ドラゴン/Triple Burst Dragon》 †
リンク・効果モンスター
リンク３/闇属性/ドラゴン族/攻2400
【リンクマーカー：上/左/下】
トークン以外のモンスター２体以上
(1)：１ターンに１度、ダメージステップにモンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。
その発動を無効にする。
(2)：このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、
その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
(3)：このカードをリリースし、自分の墓地のリンク２以下のモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その後、手札からレベル４以下のドラゴン族モンスター１体を特殊召喚できる。
この効果はこのカードが特殊召喚したターンには発動できない。



トリシューラ「…一体、何を───」

データに無いカードの連発により、機兵はただただ思考を回す。しかしいくら考えても、考えられる展開はただ一つ───

竜貴「───わかってんだろ？俺が『氷結界の御庭番』を破壊した、あん時から───」

───なぜ、『氷結界の御庭番』を狙い撃ったのか。その答え。


竜貴「───『守護竜ピスティ』の効果発動」


《守護竜
しゅごりゅう
ピスティ/Guardragon Pisty》 †
リンク・効果モンスター
リンク１/闇属性/ドラゴン族/攻1000
【リンクマーカー：右】
レベル４以下のドラゴン族モンスター１体
自分は「守護竜ピスティ」を１ターンに１度しか特殊召喚できず、
その(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分はドラゴン族モンスターしか特殊召喚できない。
(2)：自分の墓地のモンスターまたは除外されている自分のモンスターの中から、
ドラゴン族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを、２体以上のリンクモンスターのリンク先となる自分フィールドに特殊召喚する。


その効果は、2体以上のリンクモンスターのリンクマーカーの先───つまり、同じモンスターゾーンに複数のマーカーが向いている場合、そのモンスターゾーンへと、墓地・除外ゾーンのドラゴン族モンスターを特殊召喚できる効果だ。

トリシューラ「…ッ…！『スリーバーストショット・ドラゴン』と、『守護竜ピスティ』のリンクマーカーが指す場所は同じ───ッ」

そう、全ては、この為の布石。

竜貴「俺は、除外されているドラゴン族モンスターを───スリーバーストショットとピスティのリンク先へと特殊召喚する！！」


今───次元の狭間より、天龍が帰還する。


竜貴「─── 再び旋風を巻き起こし…ッその揺るぎなき“魂”で、立ち塞がるもの全てを貫けッッ！！
現れろ！！ 『ドラグニティナイトーアスカロン』！！！」


───刹那。
呼びかけに応じ、再びその姿を表した天龍は、氷龍と再び対峙し、咆哮する。


「ガァアアァアァアアァアアアァアアッッ！！！」[ATK 3300]


トリシューラ「───ッ！馬鹿な───除外したアスカロンを再びフィールドに呼び寄せただと…ッ…！？」

竜貴「その眼にしかと刻め…ッ！！俺の拳を！！俺の魂を！！アスカロンの効果発動ッ！！」

(1)：自分の墓地から「ドラグニティ」モンスター１体を除外し、
相手フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを除外する。


そしてこの効果にターン1回の制約など───無い。

竜貴「墓地のドラグニティ達の魂を昇華させ───」

墓地→除外
『ドラグニティードゥクス』
『ドラグニティーギザーム』
『ドラグニティークーゼ』
『ドラグニティアームズーミスティル』

竜貴「───お前のモンスターを、全てッ！撃ち貫く！！」

対象
『氷結界の守護陣』
『氷結界の軍師』
『氷結界の虎将 グルナード』
『氷結界の龍 トリシューラ』

墓地より昇華した魂が槍となって機兵のフィールドに襲いかかった。
それにより『氷結界の守護陣』、『氷結界の軍師』『氷結界の虎将 グルナード』の3体はなす術なく貫かれ、爆散。残るは氷結界の龍ただひとりだ。しかし───

トリシューラ「───ッ！この程度で……朽ちるものかァァ！！墓地の『トリシューラの鼓動』を除外し───効果発動ッ！！」

(2)：自分フィールドの「氷結界」Ｓモンスターを対象とする
魔法・罠・モンスターの効果を相手が発動した時、
墓地のこのカードを除外して発動できる。
その効果を無効にする。


アスカロンの放った神槍を、トリシューラは絶対零度の領域で弾き返す。
両者一歩も譲らぬ攻防。互いの激しい咆哮が辺り一帯に鳴り響いた。

『ドラグニティナイトーアスカロン』[ATK 3300]

『氷結界の龍 トリシューラ』[ATK 3300]

2体の天龍がぶつかり合う最中、辺りは大嵐と猛吹雪に見舞われ、この闘いを制した方がこの世界の命運を握る───まさしくそんな光景がこの空間にはあった。


この光景を例えるなら───“天龍雪獄”。


トリシューラ「───」

竜貴「───」


その渦中に居ながらも、お互いにリソースをほとんど失い満身創痍の中、ふたりはただ見つめ合っていた。

トリシューラ「………」

このままバトルフェイズへと持ち込まれるかと思いきや、竜貴の背後から飛び上がった何かを見て、機兵は静かに呟いた。


トリシューラ「……それが貴様の、魂の輝きか」


見上げた上空には、光の槍となった───レヴァテインの姿。

竜貴「───アスカロンの……効果発動」


墓地→除外
『ドラグニティアームズーレヴァテイン』

対象
『氷結界の龍 トリシューラ』

レヴァテインが精霊の力を解放し神槍へと姿を変えた事で竜貴との“具象化”は解除されたが、落ちゆく身体をアラドヴァルが背中でキャッチした事で九死に一生を得た竜貴は、力の限り、叫ぶ。

竜貴「今度こそ───ぶっ飛びやがれッッ！！！」


そして放たれた魂の一撃。


トリシューラ「───ッ」


それは氷結界の龍を撃ち貫き───


◉バトルフェイズ◉


盤面のモンスターを全て失った機兵へと、天龍の最後の一撃が襲いかかる。

竜貴「…バトルだッッ！！『ドラグニティナイトーアスカロン』の攻撃！！
〝滅龍神槍・アスカロン・シェイバー〟！！！」


『ドラグニティナイトーアスカロン』
[ATK 3300]
───ATTACK───
【LP 2900】
『トリシューラの機兵』


トリシューラ「……ッ…貴様だけが…ッ…その魂を輝かせられると思うなよ…ッ…！！
負けられぬのは───こちらも同じだァァッ！！」

感情を剥き出しにし、機兵は叫ぶ。
そしてここまで開かれる事のなかった伏せカードが、遂に開かれた。

最終兵器。最後の手段。

トリシューラ「───トラップ発動ッ！！『波紋のバリアーウェーブフォース』！！

《波紋
はもん
のバリア －ウェーブ・フォース－/Drowning Mirror Force》 †
通常罠
(1)：相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て持ち主のデッキに戻す。


トリシューラ「貴様の攻撃表示モンスターには───全てデッキに帰ってもらう！！」

竜貴の場の攻撃表示モンスターは、4体。


『ドラグニティナイトーアスカロン』[ATK 3300]
『スリーバーストショット・ドラゴン』[ATK 2400]
『守護竜ピスティ』[ATK 1000]
『聖刻龍王ーアトゥムス』[ATK 2400]


その全てに青き波動が襲いかかり、衝撃波が辺りに広がった。



───直後。






トリシューラ「───ァ…？」【LP 2900→0】






神槍と化したアスカロンの一撃が、機兵の胴体を貫いていた。

機兵「…ガッ……ッ…！
な………に……ッ……？」

訳もわからず視線を動かす機兵の視界に、1枚のカードが映る。


それは、竜貴がターンの初めに発動した永続魔法───『ドラグニティ・ドラフト』。


竜貴「───『ドラグニティ・ドラフト』が場にある限り、攻撃を行うレベル５以上のドラグニティは───相手の効果を受けない」

トリシューラ「───ッ」

竜貴「……ハァ…ッ…ハァ……！
お前のデュエルに懸ける“魂”───ちゃんと伝わった」

トリシューラ「───」

竜貴「…だけど、俺の勝ちだ。
……これ以上、何も壊させねぇぞ……」


全ての力を出し切った最後の一打。
この一撃をもって決着がつき、天龍が遙か上空で光輝くと、戦々恐々としていたこの地に晴嵐が訪れた。








＊＊＊






「………」



三竜の鼓動が……潰えた。



少し早いけど、覚醒の時だよ。




「起きて───“ランセア”」






To Be Continued…