DRAW:２３３ ヨゾラ ノ イチブ　作：人喰い

(233)







星奈【LP 3200→0】



◉winner◉
結維＆鈴華






「───おねーさん、最後にひとつ、お願い聞いてもらっていい？」



美の間へと続くエレベーターの前、仰向けで倒れる星奈。
彼女の身体からは、光の粒子が溢れ始めていた。


鈴華「……ええ」

結維「……いいわよ」


自らが神星樹に取り込まれてゆく事を悟った星奈の最期の言葉に、2人は優しく応じる。


星奈「───あたしの友達になってくれる？」


絞り出された星奈の言葉。
それは、今までずっと言いたくて、それでも誰にも言えなかった、人としての心からの言葉。

結維「───」

鈴華「───」

星奈は生まれつき精霊の力を持っていたがために物心つく前に両親に捨てられ、近所に住む同世代の子たちからは疎まれ、大人たちからも蔑ずまれ、ずっと人間が信じられないでいた。
同じく精霊の力を持つ瑞希とマインに拾われ、自分の居場所はここしかないのだと信じ生きてきた。
そんな星奈が、走って、走って、迷って出した答え。


鈴華「ふふ、何を言うかと思えば」

結維「…あんなに熱くなれるデュエルをしたのだから、私たちはもう───」



「「友達よ」」






デュエルで、人は分かり合える。

結維も鈴華も、デュエルを通じて沢山の出会いを経験し、時には苦悩した。

けれど最後には、必ず笑い合える。

最高のデュエルの後には、最高の関係性が生まれる。
それを、まだまだ多くの者に知ってもらわなければならない。

そのために、結維・鈴華・戒・栗須の4人は、再び歩き出した。

まずは捕らえられた、和泉を救出する為に。






＊＊＊






星奈「きゃは───」



ひとり残された星奈は、自らの身体が粒子となって天に昇ってゆくのを見上げ、一言、呟いた。





星奈「お星さま───きれーだな」















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２３３───
《ヨゾラ　ノ　イチブ》















〜神星樹内部・『美の間』〜

木の幹で覆われたエレベーターの扉が開き、その中から2人の女性が大広間へと足を踏み入れる。

メアリー「ここが……『美の間』───」

一方は腰までかかるウェーブがかった金髪に、キャップ帽をかぶったスタイルの良い長身の美女───メアリー=ベイクウェル。

瑞希「───あの日の続き、しよっか」

一方は体のラインのよく出た紺色のボディスーツを着用しており、二つに括られた長く綺麗な黒髪が印象的な少女───柏木 瑞希(かしわぎ みずき)。

2人は以前、WDCS予選が行われた会場『反帝(そりてい)アリーナ』にて戦っている。が、マインの撤退命令によりデュエルは中断、決着は付かず終いとなってしまっていたのだ。

メアリー「…！！和泉ちゃん！！」

部屋へと足を踏み入れた途端、メアリーは広間の中央に聳え立つ凍りついた樹の幹を見て思わず声を上げ、名を呼ぶ。


和泉「───」


そこには樹の幹に身体を拘束され、樹ごと氷付けにされた和泉の姿があった。

メアリー「……待っててね…。今、助けるから───」

静かな口調で呟くと、瑞希の方へ向き直り、


メアリー「………ええ、いいわよ。あの日の続き、しましょうか！！」


今度は挑発的な笑顔で言い放ち、決闘盤を構えた。


「「デュエルスタンバイ！！」」


メアリー【LP 8000】[手札 5]

瑞希【LP 8000】[手札 5]




「「決闘！！！！」」



◉TURN:０１◉

ターンプレイヤー:メアリー


メアリー「───ワタシは手札の『精霊獣 カンナホーク』を捨てて『風霊媒師ウィン』の効果発動！」


《風霊媒師
ふうれいばいし
ウィン/Wynn the Wind Channeler》 †
効果モンスター
星５/風属性/魔法使い族/攻1850/守1500
このカード名はルール上「霊使い」カードとしても扱う。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：手札からこのカードと風属性モンスター１体を捨てて発動できる。
デッキから「風霊媒師ウィン」以外の守備力１５００以下の風属性モンスター１体を手札に加える。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は風属性以外のモンスターの効果を発動できない。
(2)：このカードが手札に存在する場合、自分の風属性モンスターが戦闘で破壊された時に発動できる。
このカードを特殊召喚する。


メアリー「行くわよ───これがこの神星樹のパワーを得て産まれたワタシの新たな仲間…！！」

そう言ってメアリーはデッキを確認し、1枚のカードを引き抜いた。

───現代には存在し得ない、２色のモンスターカードを。

メアリー「ワタシが手札に加えるのは───『英霊獣使い-セフィラムピリカ』！！
そしてそのまま召喚！！」


《英霊獣使
えいれいじゅうつか
い－セフィラムピリカ/Ritual Beast Tamer Zeframpilica》 †
ペンデュラム・効果モンスター
星３/風属性/サイキック族/攻1000/守1500
【Ｐスケール：青１/赤１】
(1)：自分は「霊獣」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかＰ召喚できない。
この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
自分は「英霊獣使い－セフィラムピリカ」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：このカードが召喚・Ｐ召喚に成功した時、
「英霊獣使い－セフィラムピリカ」以外の自分の墓地の、
「霊獣」モンスターまたは「セフィラ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。


瑞希「ペンデュラム…モンスター…っ！
なんでアナタが───」

『英霊獣使い-セフィラムピリカ』[ATK 1000]

瑞希「…！いや、そんなことよりも、…感じる…！あのカードから………っ…！あれは…精霊王のチカラ…！？」

メアリー「行くわよ！！セフィラムピリカの効果で墓地のカンナホークを特殊召喚！！」


《精霊獣 カンナホーク/Spiritual Beast Cannahawk》
効果モンスター
星４/風属性/雷族/攻1400/守 600
自分は「精霊獣 カンナホーク」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：１ターンに１度、自分メインフェイズに発動できる。
デッキから「霊獣」カード１枚を除外する。
発動後２回目の自分スタンバイフェイズに、
この効果で除外したカードを手札に加える。


『精霊獣 カンナホーク』[ATK 1400]

メアリー「カンナホークの効果で、デッキの『精霊獣 アペライオ』を除外！！」


《精霊獣
せいれいじゅう
アペライオ/Spiritual Beast Apelio》 †
効果モンスター
星４/風属性/炎族/攻1800/守 200
自分は「精霊獣 アペライオ」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：１ターンに１度、自分の墓地の「霊獣」カード１枚を除外して発動できる。
このターン中、以下の効果を適用する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
●自分フィールドの「霊獣」モンスターの攻撃力・守備力は５００アップする。


メアリー「更に！！場のセフィラムピリカとカンナホークを除外して───融合召喚！！」

メアリーは高らかに叫び、天高く拳を突き上げる。
同時にメアリーのモンスター達も螺旋状に交差しながら天へと昇ってゆき、やがて2体は光となって交わった。


メアリー「───Come on‼︎『聖霊獣騎 カンナホーク』！！



《聖霊獣騎
せいれいじゅうき
カンナホーク/Ritual Beast Ulti-Cannahawk》 †
融合・効果モンスター
星６/風属性/雷族/攻1400/守1600
「霊獣使い」モンスター＋「精霊獣」モンスター
自分フィールドの上記カードを除外した場合のみ特殊召喚できる（「融合」は必要としない）。
(1)：１ターンに１度、除外されている自分の「霊獣」カード２枚を対象として発動できる。
そのカードを墓地へ戻し、デッキから「霊獣」カード１枚を手札に加える。
(2)：このカードを持ち主のＥＸデッキに戻し、除外されている自分の、
「霊獣使い」モンスター１体と「精霊獣」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。


『聖霊獣騎 カンナホーク』[ATK 1400]


メアリー「除外されているセフィラムピリカとカンナホークを対象に、『聖霊獣騎カンナホーク』の1つ目の効果！！
そしてそれにチェーンして、アペライオとセフィラムピリカを対象に2つ目の効果を発動するわ！！」


チェーン①『聖霊獣騎 カンナホーク』
対象のカード(『精霊獣 カンナホーク』『英霊獣使い-セフィラムピリカ』)を墓地に戻してデッキから『霊獣』カードを手札に。

チェーン②『聖霊獣騎 カンナホーク』
自身をEXデッキに戻して、対象のモンスター(『精霊獣 アペライオ』『英霊獣使い-セフィラムピリカ』)を守備表示で特殊召喚する。


メアリー「『聖霊獣騎 カンナホーク』はEXデッキに戻って分離！！」

『精霊獣 アペライオ』[DEF 200]
『英霊獣使い セフィラムピリカ』[DEF 1500]

メアリー「そして除外されていた『精霊獣 カンナホーク』を墓地へ戻して、デッキから『霊獣の連契』を手札に加えるわ！」

瑞希「…相変わらずすっごいデッキ。それを難なく扱うアナタを、もっと重くマークしておくんだった」

メアリー「言っとくけど、あの時のワタシとは違うわよ…！アペライオのエフェクト発動！！
墓地のカンナホークを除外する事で、このターン中、ワタシのフィールドの『霊獣』モンスターのスタッツは500ポイントアップ！！」

『精霊獣 アペライオ』[DEF 200→700]
『英霊獣使い セフィラムピリカ』[DEF 1500→2000]


メアリー「これでダメ押しよ！！手札の『ネメシス・コリドー』のエフェクト発動！！」


《ネメシス・コリドー/Nemeses Corridor》 †
効果モンスター
星４/風属性/雷族/攻1900/守 600
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：「ネメシス・コリドー」以外の除外されている自分のモンスター１体を対象として発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、対象のモンスターをデッキに戻す。
(2)：「ネメシス・コリドー」以外の除外されている
自分の「ネメシス」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。


メアリー「除外されているカンナホークをデッキに戻して特殊召喚！！」[ATK 1900]


瑞希「…ッ…！！あのカード……まさか…ッッ！！」

メアリー「オフコース…♪見せてあげる…！！融合召喚の新境地を！！」

そう言って帽子を後ろに回し、

メアリー「───ワタシは自分フィールドの『ネメシス・コリドー』1体をリリース！！」

メアリーは再び高く右手を突き上げる。
すると掲げた右手に、肩から指先にかけて電流が迸り、弾けた。



メアリー「斬波くん───力借りるよ！！
Come on‼︎『超雷龍-サンダードラゴン』！！」



《超雷龍
ちょうらいりゅう
－サンダー・ドラゴン/Thunder Dragon Colossus》 †
融合・効果モンスター（制限カード）
星８/闇属性/雷族/攻2600/守2400
「サンダー・ドラゴン」＋雷族モンスター
このカードは融合召喚及び以下の方法でのみ特殊召喚できる。
●雷族モンスターの効果が手札で発動したターン、
融合モンスター以外の自分フィールドの雷族の効果モンスター１体をリリースした場合に
ＥＸデッキから特殊召喚できる（「融合」は必要としない）。
(1)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事ができない。
(2)：このカードが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分の墓地の雷族モンスター１体を除外できる。


稲妻を纏い飛来した黒き雷龍の姿に、瑞希は引き気味に笑う。
その存在がどれほど強力なものなのか、理解しているからだ。

瑞希「…はは、おねーさん、いいね。
人の心とか無い感じだ」

超雷龍がメアリーの場にいる限り、瑞希はドロー以外の方法でデッキからカードを加えることができない。

メアリー「全く、失礼なお嬢ちゃんだこと。アナタと戦うこと、想定してないワケないでしょ」

瑞希の扱うデッキ【影霊衣】は、『ブリューナクの影霊衣』や『クラウソラスの影霊衣』を始めとした、デッキから手札に加える効果を多用するため、それらの起点を封じられたのは瑞希にとってかなりの痛手だった。

瑞希「…そうこなくっちゃ、面白くないよね」

しかし、影霊衣の儀式モンスターは、その多くがEXデッキから特殊召喚されたモンスターに対抗する能力を持っている。
場に出せてしまえば、戦況は大きく傾く事を瑞希は確信していた。

メアリー「───カードを2枚伏せて、ワタシはこれでターンエンド」[手札 1]

当然メアリーもそこまで想定済みだ。決して油断はしない。真剣な顔付きでターンを返す。


◉TURN:０２◉


瑞希「さて、わたしのターンか」

静かにカードを引き、そのカードを横目で確認した瑞希の口元が僅かに緩む。

瑞希「……あっっっっっぶな」

そして一言安堵の声を上げると、そのままメインフェイズに移行し、


瑞希「───魔法発動『影霊衣の万華鏡』」


間髪入れずに1枚のカードが発動される。

メアリー「……っ！」


《影霊衣の万華鏡/Nekroz Kaleidoscope》
儀式魔法
「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。
このカード名の(1)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスター１体をリリース、
またはリリースの代わりにＥＸデッキのモンスター１体を墓地へ送り、
手札から「影霊衣」儀式モンスターを任意の数だけ儀式召喚する。
(2)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合、
自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター１体を除外して発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法カード１枚を手札に加える。


メアリーにチェーン発動の意思がない事を確認すると瑞希は細く息を吐き、

瑞希「私はEXデッキから、レベル7の『ウィンドペガサス@イグニスター』を墓地へ送り───儀式召喚！！」

流れるような動作で手札のカード2枚を盤面へと降臨させる───

瑞希「来なさい！！『ユニコールの影霊衣』！！『クラウソラスの影霊衣』！！」

『ユニコールの影霊衣』[ATK 2000]☆4

『クラウソラスの影霊衣』[DEF 2300]☆3

メアリー「───！一度に2体の儀式モンスターを…！しかもよりによって一番面倒なのが2体…っ！」


《ユニコールの影霊衣/Nekroz of Unicore》
儀式・効果モンスター
星４/水属性/魔法使い族/攻2300/守1000
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
このカード名の(1)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードを手札から捨て、「ユニコールの影霊衣」以外の
自分の墓地の「影霊衣」カード１枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
ＥＸデッキから特殊召喚された表側表示モンスターの効果は無効化される。


《クラウソラスの影霊衣
ネクロス
/Nekroz of Clausolas》 †
儀式・効果モンスター
星３/水属性/戦士族/攻1200/守2300
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「クラウソラスの影霊衣」の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法・罠カード１枚を手札に加える。
(2)：エクストラデッキから特殊召喚された、
フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は０になり、効果は無効化される。
この効果は相手ターンでも発動できる。



瑞希「ユニコールが場にいる限り、EXデッキから特殊召喚された場のモンスター全ての効果は無効となる…！これで超雷竜の効果は無効よ…っ！！
ただ───」

瑞希の視線はメアリーの場に伏せられた2枚のカードへ向けられる。

瑞希「『霊獣の連契』……あのカードが鬱陶しい事この上ないったら」

『霊獣の連契』。
場の霊獣モンスターの数まで、相手モンスターを破壊できる、【霊獣】における守りの要───。

『精霊獣 アペライオ』[DEF 700]
『英霊獣使い セフィラムピリカ』[DEF 2000]

現在、場の霊獣は2体。
超雷龍が無効となった今のうちにとデッキから手札に加える素振りを見せれば、それにチェーンする形で超雷龍を止めているユニコールを破壊され、サーチを封じられてしまう。

メアリー「……」

しかしそれを許さないのが、クラウソラスの存在だ。
仮に霊獣の連契を撃たれても、それにチェーンしてクラウソラスの効果を発動する事で超雷龍は最低限無力化できる構えが整っている。

更にはグングニールの影霊衣を持っていた場合、影霊衣一体に破壊耐性を付与できる事も考えると、瑞希の方が若干有利とも取れるこの状況。先に仕掛けたのは───

瑞希「───メインフェイズ終了したいんだけど、いい？」

メアリー「…！」

想定された中で最も嫌な一手にメアリーは眉をひそめる。

メアリー「…ええ、良いわよ」


◉バトルフェイズ◉


瑞希「行くわよ！！『ユニコールの影霊衣』！！『精霊獣 アペライオを攻撃！！」


『ユニコールの影霊衣』
[ATK 2000]
───VS───
[DEF 700]
『精霊獣 アペライオ』


攻撃の瞬間、メアリーは様々な可能性を考え思考する。が、

メアリー「…っ…。つっても…、ある程度の裏目は割り切るっきゃないよネ！！」

結局いつもの直感に任せ、メアリーはすぐさま伏せカードをオープンさせた。

彼女の直感は、いつだって道を示してくれる。
勝利への、道を。

メアリー「───トラップ発動！！『霊獣の連契』！！」


《霊獣
れいじゅう
の連契
れんけい
/Ritual Beast Steeds》 †
通常罠
(1)：自分フィールドに「霊獣」モンスターが存在する場合に発動できる。
自分フィールドの「霊獣」モンスターの数まで、
フィールドのモンスターを選んで破壊する。


瑞希「やっぱ撃つしか無いよね！！だったらわたしも、『クラウソラスの影霊衣』の効果発動ぉ！！」


《クラウソラスの影霊衣
ネクロス
/Nekroz of Clausolas》 †
儀式・効果モンスター
星３/水属性/戦士族/攻1200/守2300
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
「クラウソラスの影霊衣」の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法・罠カード１枚を手札に加える。
(2)：エクストラデッキから特殊召喚された、
フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力は０になり、効果は無効化される。
この効果は相手ターンでも発動できる。


瑞希「超雷龍の攻撃力を0にし、効果を無効化させる！！」

宣言と共に指を弾く瑞希。すると一瞬の内に超雷龍の周囲を竜巻が囲い、身動きを奪ってゆく───

『超雷龍-サンダー・ドラゴン』[ATK 2600→0]＊効果無効

しかし束の間、超雷龍の傍で構えていた霊獣達の連携攻撃が瑞希のモンスターへと襲いかかった。

メアリー「『霊獣の連契』の効果で、『ユニコールの影霊衣』『クラウソラスの影霊衣』を破壊する───」

瑞希「…っ！」

瑞希の場のモンスターは2体とも破壊され、場がガラ空きとなる。
だがそれも全て瑞希の計算の内だ。

直後、瑞希の墓地から一筋の光が漏れる。

瑞希「わたしの場のカードが相手の効果で破壊された事で、墓地に眠る『ウィンドペガサス@イグニスター』を除外してその効果を発動！！」


《ウィンドペガサス＠
アット
イグニスター/Wind Pegasus @Ignister》 †
シンクロ・効果モンスター
星７/風属性/サイバース族/攻2300/守1500
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分メインフェイズに発動できる。
自分フィールドの「＠イグニスター」モンスターの数まで、相手フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。
(2)：このカードがフィールド・墓地に存在する状態で、
このカード以外の自分フィールドのカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、
このカードを除外し、相手フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキに戻す。


メアリー「！！」

墓地からの予想外の一打。目を見開くメアリーの一歩手前から竜巻が出現し、残り一枚の伏せカードが舞い上がる。

瑞希「…その伏せカードにはデッキに戻って貰うよ。これでもうわたしを止めるものは何も無い！！」


◉メインフェイズ２◉


そう言ってメイン2へと移行した瑞希の手は再び墓地へと伸びていた。
その手は勝ちへと動く、迷いのない手だ。

瑞希「わたしは墓地の『影霊衣の万華鏡』の効果発動！！」

(2)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合、
自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター１体を除外して発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法カード１枚を手札に加える。


瑞希「墓地の万華鏡とクラウソラスを除外して、デッキから『影霊衣の反魂術』を手札に！！」[手札 4]

ユニコールとクラウソラスを失いはしたものの超雷龍の効果が失われた今、瑞希は嬉々としてサーチからの再展開へと動き出す。

瑞希「この効果はわたしの場にモンスターが残ってたら使えなかった───おねーさんには感謝してるよ！わたしの場をガラ空きにしてくれたこと！」

皮肉げに笑う瑞希。

メアリー「……」

しかしメアリーは表情ひとつ変えない。

瑞希「続けてわたしは手札の───」

───そこで、異変。

瑞希「───ぁ？」

ふと目線がデッキの方へ向く。
それはなぜか？

瑞希「───はぁ？」

鍵が、かかっているのだ。デッキに。

瑞希「───はぁああ？？？」

鎖が何重にも巻かれ、南京錠の鍵穴がこちらを覗いている。

瑞希「───」

瑞希はすぐさまメアリーの手元へと目線を移す。

メアリー「！」

目線に気づいたメアリーは、可愛らしく舌を出し、両手をひらひらと振って見せた。

それは、先程まで握っていた唯一の手札が既に無い事を示していた。

瑞希「血管切れそう」

瑞希はそう呟き、初めて分かりやすく表情を歪ませる。


メアリー「気づいたみたいネ。そう……ワタシが発動したのは───『ドロール＆ロックバード』」


《ドロール＆
アンド
ロックバード/Droll & Lock Bird》 †
効果モンスター
星１/風属性/魔法使い族/攻 0/守 0
(1)：相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合、
このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
このターン、お互いにデッキからカードを手札に加える事はできない。
この効果は相手ターンでも発動できる。


メアリー「…このターン、お互いにデッキからカードを手札に加えることはできないわ───」

瑞希「………超雷ドロバとか……いくらなんでもイカれてる…。いやむしろ手札事故でしょそれ…」

メアリー「はははっ。だよね。これでワタシの手札も0…後続が無い事もバレちゃった」

瑞希「…半分ダウト。盤面に精霊獣と霊獣使いが残ってる限り、おねーさんは手札0からでも動き出せる」

メアリー「……ワオ。まさか残しておいてくれるの？」

瑞希「───ッなわけ！！」

言って瑞希は手札から1枚のカードを抜き出す。
そう、まだ瑞希には召喚権が残っている───

瑞希「来て───『宣告者の神巫』！！」


《宣告者の神巫
デクレアラー・ディヴァイナー
/Diviner of the Herald》 †
チューナー・効果モンスター
星２/光属性/天使族/攻 500/守 300
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキ・ＥＸデッキから天使族モンスター１体を墓地へ送る。
このカードのレベルはターン終了時まで、そのモンスターのレベル分だけ上がる。
(2)：このカードがリリースされた場合に発動できる。
手札・デッキから「宣告者の神巫」以外のレベル２以下の天使族モンスター１体を特殊召喚する。


メアリー「……！」

瑞希「希望は残さない───全部、断つ！！
『宣告者の神巫』の効果発動！！」

召喚・特殊召喚成功時にデッキ、EXデッキから天使族モンスターを墓地へ送る効果。
本来ならこの効果で、墓地へ送られた場合にデッキから儀式魔法か儀式モンスターを手札に加える効果を持つ『虹光の宣告者』を落としデッキを回転させたいところだったが、ドロール＆ロックバード適用下ではそうもいかない。ここで瑞希が選択したのは───

瑞希「───私はEXデッキから、『旧神ヌトス』を墓地へ！！そして『宣告者の神巫』のレベルは4つ上がる！」

『宣告者の神巫』☆2→☆6

メアリー「…『旧神ヌトス』…。あのカード、確かマインも使っていたわね───」

マインは反帝アリーナでの闘いで、『インフェルノイド・ティエラ』の効果によってこのカードをEXデッキから墓地へ送っていた。そしてその効果は───

瑞希「…墓地へ送られた『旧神ヌトス』の効果！！」


《旧神
キュウシン
ヌトス/Elder Entity N'tss》 †
融合・効果モンスター
星４/光属性/天使族/攻2500/守1200
Ｓモンスター＋Ｘモンスター
自分フィールドの上記カードを墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
自分は「旧神ヌトス」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：１ターンに１度、自分メインフェイズに発動できる。
手札からレベル４モンスター１体を特殊召喚する。
(2)：このカードが墓地へ送られた場合、フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


瑞希「私が破壊するのは───『英霊獣使い セフィラムピリカ』！！」

突如発生した眩い光によってセフィラムピリカは破壊され、EXデッキへと送られてしまう。

メアリー「…っ…！」

セフィラムピリカが破壊された事でメアリーの場のモンスターは残り2体。

『精霊獣アペライオ』[DEF 700]

『超雷龍-サンダー・ドラゴン』[ATK 0]＊効果無効

メアリー（超雷龍の効果無効はエンドフェイズまで……ここで処理しなかったって事は───）


瑞希「───儀式魔法発動、『影霊衣の反魂術』」


《影霊衣
ネクロス
の反魂術
はんごんじゅつ
/Nekroz Cycle》 †
儀式魔法
「影霊衣」儀式モンスターの降臨に必要。
「影霊衣の反魂術」の(1)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、
自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、
自分の手札・墓地から「影霊衣」儀式モンスター１体を儀式召喚する。
(2)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合、
自分の墓地からこのカードと「影霊衣」モンスター１体を除外して発動できる。
デッキから「影霊衣」魔法カード１枚を手札に加える。


瑞希「…リソース温存とか、そんな甘えた考えで勝てる相手じゃ無いってのが、よ〜〜〜く分かったよ」

いつものように軽い調子の瑞希。周りにはうっすらと氷気が漂い始めていた───


瑞希「───全力で行くよ」


そし一言、そう言った瑞希のその時の表情が、メアリーにはどこか懐かしく思え、不思議な感覚にメアリーは思わず息を漏らす。

メアリー（…この子…、やっぱりおかしい…）


メアリーがそう思ったのは、瑞希から狂気的なものを感じ取ったからでも、背後に渦巻く邪悪な心に触れたからでも無い。

本当になんて事は無い。

たった今見せた瑞希の表情が。


本気でデュエルを楽しんでいるように見えたからだ。




瑞希「私はレベル6となった『宣告者の神巫』をリリースし───儀式召喚！！」

瑞希の周囲の氷気が更に濃度を増し、辺り一体を白銀の世界へと染め上げてゆく───


瑞希「─── 霊衣を纏いし術士よ…！ 霊龍の魂を掌握し………唯一無二なる氷魔の力…ッ、今こそ解き放てっ！！
レベル６───『ブリューナクの影霊衣』！！」[ATK 2300]


現れたのは氷結界の龍の鎧を纏いし影霊衣、その効果はメアリーもよく知っている。

瑞希「…リリースされた『宣告者の神巫』の効果で、私はデッキから『異次元の精霊』を特殊召喚！！」

『異次元の精霊』[DEF 100]☆1 チューナー

瑞希「───更に！！『ブリューナクの影霊衣』の効果発動！！」


《ブリューナクの影霊衣
ネクロス
/Nekroz of Brionac》 †
儀式・効果モンスター
星６/水属性/戦士族/攻2300/守1400
「影霊衣」儀式魔法カードにより降臨。
「ブリューナクの影霊衣」以外のモンスターのみを使用した儀式召喚でしか特殊召喚できない。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから「ブリューナクの影霊衣」以外の「影霊衣」モンスター１体を手札に加える。
(2)：ＥＸデッキから特殊召喚されたフィールドのモンスターを２体まで対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主のデッキに戻す。


瑞希「…EXデッキから特殊召喚された場のモンスター……『超雷龍-サンダー・ドラゴン』にはデッキに帰って貰おっかな！！」

言って手を振り払うと、それに呼応してブリューナクは剣を振り払った。
それにより発生した衝撃波は竜巻に囚われた超雷龍を一閃し、両断された超雷龍は霧となって消えてしまう。

メアリー「…くっ…！」

瑞希「…まだ終わりじゃない！
言ったでしょ！！希望は残さないって！！」

叫び、手を掲げる。

場には、チューナーとチューナー以外のモンスターが1体。


瑞希「───私はレベル6の『ブリューナクの影霊衣』に、レベル1の『異次元の精霊』をチューニング！！」


◉◉◉☆６+☆１=☆７◉◉◉


すると突然、辺りの冷気がより一層強まり、メアリーの体温までをも奪っていく。

メアリー「……う〜〜〜〜〜さっっっっっぶっ！！…これもアナタのチカラなの…っ！？」

瑞希「…半分あたり」

メアリー「…もう半分は…？」

瑞希「…ウチの子たちが、いずみんと精霊の統合をジャマしてる子たちを見つけた合図、かな」

メアリー「…！！」


瑞希「行くよシンクロ召喚！！レベル７───『氷結界の龍 グングニール』！！！」[ATK 2500]


《氷結界
ひょうけっかい
の龍
りゅう
グングニール/Gungnir, Dragon of the Ice Barrier》 †
シンクロ・効果モンスター
星７/水属性/ドラゴン族/攻2500/守1700
チューナー＋チューナー以外の水属性モンスター１体以上
(1)：１ターンに１度、手札を２枚まで墓地へ捨て、
捨てた数だけ相手フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


氷結界の名を冠する龍の出現に、メアリーは息を呑む。
儀式召喚だけで無く、シンクロ召喚まで扱い瑞希の実力の底知れなさに感服すらしていた。

瑞希「邪魔してるのは2人、ここを落とせば、私たちの勝ちだ……ッ！」

それにしても、２人の居場所がバレたのはメアリーの想定よりだいぶ早い。
それだけ瑞希も本気だという事が伺える。ただ、瑞希にひとつだけ誤算があったとすれば───


瑞希「…ッ…！！」

そこで、機兵から送られてきた映像を見て、瑞希は再び表情を歪ませる。
しかし先程見せた苛立ち混じりのそれとは異なる、驚きや哀しみが混ざったような、複雑な表情だった。

メアリー「───どうしたの？顔が真っ青よ。…まぁ確かに、こんだけ寒けりゃねぇ」

茶化すメアリー。しかし瑞希は着ている特注ボディスーツのお陰でほとんど寒さを感じない。問題はそこでは無かった。

メアリー「それとも───何か不都合でもあったのカナ…？」

含みのある言い方で追い立てるメアリーには一切目もくれず、瑞希は唇を噛み、拳を握る。

視線はただ一点、機兵からの視覚情報、その先にいるひとりの少女───


瑞希「やっぱり───来ちゃったかぁー……」









───同時刻。基礎の間から美の間へと繋がる通路。

巨大な樹の幹を中心として果てなく伸びる螺旋階段のちょうど中腹あたりにて、氷を纏う1体の決闘機兵と対峙するひとりの少女。


「…ねぇ、……見てるんでしょ？」


少女は問う。

機兵を通してこちらを見ているであろう、瑞希に。

「───」

当然返事は無い。

しかし、それでも、少女は声をかけ続ける。

鼻先にかかるくらい伸びた前髪。真ん中だけ残し左右に分けヘアピンで止めた前髪の間からは、愛らしいまん丸の瞳が覗かせている。
真っ白なワンピースはところどころ血で汚れており、ここまでの戦いの壮絶さを物語っていた。


機兵を見上げ、少女は言った。






「───会いに来たよ。お姉ちゃん」





話しを、しよう。





柏木 雫(かしわぎ しずく)は、そう言った。







To Be Continued…