DRAW:２３７ 枯れないゴールキーパー　作：人喰い

(237)



神星樹内部・峻厳の間と慈悲の間を繋ぐ通路───ここでも決闘が行われていた。

精霊の力により辺りには雪が降り積もり、極寒を極めるこの地で決闘を行なっているのは───


明日人「───はぁ…ッ…はァ…！」【LP 5100】

火群のクラスメイトであり、小学校からの付き合いである小太りの少年・『倉川 明日人(くらかわ あすと)』。
そして明日人と対峙するは、全身に氷を纏った決闘機兵───グングニール。

グングニール「───」【LP 8000】

機兵は右手を掲げ、


グングニール「終わらせろ。我が分身───グングニール」


そう言った───刹那。


明日人「───ッ」【LP 5100→2600】


腹部に襲いかかる、強烈な痛み───


グングニール「貴殿は何も───護れない」


白銀の世界に、鮮血が飛び散った。















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２３７───
《枯れないゴールキーパー》














時間は少し遡る───


◉TURN:０１◉


明日人「───『ローンファイア・ブロッサム』を召喚！！」[ATK 500]

《ローンファイア・ブロッサム/Lonefire Blossom》 †
効果モンスター
星３/炎属性/植物族/攻 500/守1400
(1)：１ターンに１度、自分フィールドの表側表示の植物族モンスター１体をリリースして発動できる。
デッキから植物族モンスター１体を特殊召喚する。

1ターン目の第一手、召喚されたのは、明日人のデッキを支え続けてきた展開の起点───『ローンファイア・ブロッサム』。

明日人「ローンファイアの効果！！自身をリリースし───デッキより現れろ！『光の王 マルデル』！！」[DEF 2400]

光
ひかり
の王
ジェネレイド
マルデル/Mardel, Generaider Boss of Light》 †
効果モンスター
星９/光属性/植物族/攻2400/守2400
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：「光の王 マルデル」は自分フィールドに１体しか表側表示で存在できない。
(2)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
「光の王 マルデル」以外の、「ジェネレイド」カード１枚または植物族モンスター１体をデッキから手札に加える。


明日人「特殊召喚された『光の王 マルデル』の効果！俺がデッキから手札に加えるのは───『薔薇恋人』！！」

新規カードを取り入れたデッキを動かす明日人の手に、迷いは無い。

明日人「更に！魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動！！」

《ワン・フォー・ワン/One for One》 †
通常魔法（制限カード）
(1)：手札からモンスター１体を墓地へ送って発動できる。
手札・デッキからレベル１モンスター１体を特殊召喚する。

明日人「手札の『薔薇恋人』を捨て───『コピー・プラント』をデッキから特殊召喚！！」

《コピー・プラント/Copy Plant》 †
チューナー（効果モンスター）
星１/風属性/植物族/攻 0/守 0
１ターンに１度、このカード以外のフィールド上の
植物族モンスター１体を選択して発動できる。
このカードのレベルはエンドフェイズ時まで、選択したモンスターと同じレベルになる。


明日人「続けて『コピー・プラント』の効果！！『コピー・プラント』のレベルを、俺の場の植物族モンスター───『光の王 マルデル』と同じ９にする！！」


『コピー・プラント』☆1→☆9


グングニール「レベル９のモンスターが2体…」

明日人「行くぜ…！！進化した俺のデッキの力───見せてやる！！
レベル９の『光の王 マルデル』と、レベル９となった『コピー・プラント』で、オーバーレイネットワークを構築！！」

明日人の場で二対の光が掛け合わされ、大地を揺るがす衝撃を放つ───


明日人「───エクシーズ召喚！！
吼えろ…ッ！神樹を護る勇猛なる獣ッ！！
『神樹獣ハイペリュトン』！！」[ATK 2600]


《神樹獣
しんじゅう
ハイペリュトン/Sacred Tree Beast, Hyperyton》 †
エクシーズ・効果モンスター
ランク９/地属性/植物族/攻2600/守1900
レベル９モンスター×２
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分ターンに、自分が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、
その効果と同じ種類（モンスター・魔法・罠）の自分の墓地のカード１枚を対象として発動できる。
対象のカードをこのカードの下に重ねてＸ素材とする。
(2)：相手ターンに、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その効果と同じ種類（モンスター・魔法・罠）となるＸ素材をこのカードから１つ取り除き、
その発動を無効にし破壊する。


明日人「まだだ！魔法カード『森羅の施し』！！」

《森羅
しんら
の施
ほどこ
し/Sylvan Charity》 †
通常魔法
デッキからカードを３枚ドローする。
その後、「森羅」と名のついたカード１枚を含む手札のカード２枚を相手に見せ、
好きな順番でデッキの上に戻す。
手札に「森羅」と名のついたカードが無い場合、
手札を全て相手に見せ、好きな順番でデッキの上に戻す。
「森羅の施し」は１ターンに１枚しか発動できない。

明日人「更にこの瞬間！！カードの効果が発動した事で、『神樹獣ハイペリュトン』の効果が発動！」

(1)：自分ターンに、自分が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、
その効果と同じ種類（モンスター・魔法・罠）の自分の墓地のカード１枚を対象として発動できる。
対象のカードをこのカードの下に重ねてＸ素材とする。


チェーン②『神樹獣ハイペリュトン』

チェーン①『森羅の施し』


明日人「墓地の『ワン・フォー・ワン』をハイペリュトンのオーバーレイユニットにし、森羅の施しの効果で3枚ドロー！！
そして手札から『森羅』カードを含む２枚のカードを公開し、デッキの上に戻す───」

『森羅の神芽 スプラウト』

『ギガプラント』

明日人「続けてフィールド魔法、『森羅の霊峰』を発動！」

《森羅
しんら
の霊峰
れいほう
/Mount Sylvania》 †
フィールド魔法
自分のメインフェイズ時に手札または自分フィールド上に表側表示で存在する、
植物族モンスター１体を墓地へ送って発動できる。
デッキから「森羅」と名のついたカード１枚を選んでデッキの一番上に置く。
「森羅の霊峰」のこの効果は１ターンに１度しか使用できない。
また、相手のエンドフェイズ時に１度だけ、
自分のデッキの一番上のカードをめくる事ができる。
めくったカードが植物族モンスターだった場合、そのカードを墓地へ送る。
違った場合、そのカードをデッキの一番上または一番下に戻す。


まだ止まらない。ワン・フォー・ワンのコストで捨てたカードが輝きを放つ───

明日人「こいつでダメ押しだ！墓地の『薔薇恋人』の効果！！」

《薔薇恋人
バラ・ラヴァー
/Rose Lover》 †
効果モンスター
星１/地属性/植物族/攻 800/守 800
このカード名の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：墓地のこのカードを除外して発動できる。
手札から植物族モンスター１体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、相手の罠カードの効果を受けない。


明日人「墓地の『薔薇恋人』を除外し───
その気取らない優美さで、あらゆるものを包み込め！手札より現れろ！『椿姫ティタニアル』！！」[DEF 2600]

《椿姫
つばき
ティタニアル/Tytannial, Princess of Camellias》 †
効果モンスター
星８/風属性/植物族/攻2800/守2600
(1)：フィールドのカードを対象とする魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、
自分フィールドの表側表示の植物族モンスター１体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

明日人「カードを１枚伏せ、ターンエンド！」[手札 0]


できることは全部やった。どう出る───！？


◉TURN:０１◉


迎えた機兵のターン。

グングニール「───ワタシのターン」

機兵は、静かに、カードを引く。

グングニール「……」[手札 6]

そして手札をしばし眺め、

グングニール「速攻魔法───」

1枚のカードに指をかけた。



グングニール「───『禁じられた一滴』」



───瞬間。


明日人「───ぁ…？」

背筋が───凍る。


グングニール「手札、フィールドから任意の枚数のカードをコストに───その数まで場のモンスターの効果を無効にし、攻撃力を半分にする───」


機兵が手札から墓地へ送ったのは、2枚のカード。

『氷結界』(罠カード)

『氷結界の伝道師』(モンスターカード)


明日人「…ッ…させる訳あるか！！『神樹獣ハイペリュトン』の更なる効果！！」

(2)：相手ターンに、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その効果と同じ種類（モンスター・魔法・罠）となるＸ素材をこのカードから１つ取り除き、
その発動を無効にし破壊する。

明日人「オーバーレイユニットとなっている魔法カード『ワン・フォー・ワン』を取り除く事で、魔法カードの発動を───！」

明日人はすかさず左手をかざし、ハイペリュトンの効果を起動させようとする───が。

グングニール「───無駄だ」

それを遮る───冷たい一声。

グングニール「この効果の発動に対し、コストとして墓地へ送ったカードと同じ種類のカード効果を相手は発動できない───」


《禁
きん
じられた一滴
ひとしずく
/Forbidden Droplet》 †
速攻魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：自分の手札・フィールドから、
このカード以外のカードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。
その数だけ相手フィールドの効果モンスターを選ぶ。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が半分になり、効果は無効化される。
このカードの発動に対して、相手はこのカードを発動するために墓地へ送ったカードと
元々の種類（モンスター・魔法・罠）が同じカードの効果を発動できない。


グングニールがコストとして墓地へ送ったのは、罠カードとモンスターカード。
よって、この発動に対し、明日人は罠・モンスターの効果を発動できないということ───

明日人「───…なん……だと…！？」

どこからともなく現れた杯より一滴の雫が落とされ、波紋が広がった。

『神樹獣ハイペリュトン』[ATK 2600→1300]＊効果無効

『椿姫 ティタニアル』[ATK 2800→1400]＊効果無効

グングニール「これで貴殿のモンスター達は無力と化した───攻めさせて貰うぞ…ッ！！」

明日人「───！」

気迫が冷気となって放出される。

グングニール「───墓地の『氷結界』を除外し、効果発動！！」

(2)：墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキからレベル５以上の水属性モンスター１体を墓地へ送る。
その後、自分の墓地から水属性モンスター１体を選んで手札に加える事ができる。
この効果の発動後、次の自分ターンの終了時まで自分は水属性モンスターしか特殊召喚できない。

グングニール「デッキから『氷結界の虎将 ウェイン』を墓地へ送り、墓地のウェインをそのまま手札に！！」[手札 4]

更に、と、機兵は続ける。

グングニール「ワタシは、手札の『氷結界の虎将 ウェイン』『氷結界の虎将 ライホウ』『氷結界の照魔師』、3体の異なる氷結界を公開し───『氷結界の三方陣』を発動する！！」

《氷結界
ひょうけっかい
の三方陣
さんほうじん
/Magic Triangle of the Ice Barrier》 †
通常魔法
(1)：カード名が異なる手札の「氷結界」モンスター３体を相手に見せ、
相手フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
その相手のカードを破壊し、手札から「氷結界」モンスター１体を特殊召喚する。

グングニール「この効果により、貴殿の伏せカードを破壊し───手札の『氷結界の照魔師』を特殊召喚！！」[ATK 1700]

明日人「───ッ」

破壊された伏せカードは、永続罠『森羅の滝滑り』。
相手の直接攻撃宣言時にデッキトップをめくり植物族を墓地へ送る効果を持つカードだ。

グングニール「…これで貴殿の希望は全て潰えた───ゆくぞッ！！」

妨害札が完全に無くなった事を確認した機兵は、流れるような動作でカードを切ってゆく───

グングニール「───『氷結界の照魔師の効果！！手札を1枚捨て、デッキより現れよ！『氷結界の霜精』！」[ATK 400]

手札→墓地
『氷結界の虎将 ライホウ』

グングニール「『氷結界の霜精』は、デッキからレベル3以下の氷結界を墓地へ送る事で、そのレベルをコピーできる───ワタシは『氷結界の守護陣』を墓地へ送り、『氷結界の霜精』のレベルを３にする！」

『氷結界の霜精』☆1→☆3

グングニール「───レベル４『氷結界の照魔師』に、レベル３となった『氷結界の霜精』をチューニング！！」


◉◉◉☆４+☆３=☆７◉◉◉


勢いを増す吹雪が明日人の視界を奪う───

明日人「……ッ…！」

しかし目を細めながらも、目線は逸らさない。
白銀の視界に僅かに見えたのは───巨大な龍の影───


グングニール「現れよ───我が分身！！
レベル７！！『氷結界の龍 グングニール』！！」


『グルァアアァアアァァァアアア！！！』[ATK 2500]


氷結界の龍は咆哮する。
同時に、辺りの気温は下がり続ける───

明日人「…なんて寒さだ…ッ…！クソッ…！」

グングニール「グングニールの効果発動！！」


《氷結界
ひょうけっかい
の龍
りゅう
グングニール/Gungnir, Dragon of the Ice Barrier》 †
シンクロ・効果モンスター
星７/水属性/ドラゴン族/攻2500/守1700
チューナー＋チューナー以外の水属性モンスター１体以上
(1)：１ターンに１度、手札を２枚まで墓地へ捨て、
捨てた数だけ相手フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


グングニール「ワタシは手札を1枚捨てる代わりに、墓地の『氷結界の照魔師』を除外し───『椿姫 ティタニアル』を破壊する！！」

明日人「───！」

突如天井に発生した巨大な氷柱が、明日人の盤面を襲い、ティタニアルは破壊されてしまう。

明日人「…クッソ…！ティタニアルの効果が無効にされてなければ───！」

これで明日人の場に残ったのは、効果を無効化され攻撃力も半減したハイペリュトン1体のみ───

グングニール「まだ絶望は終わらない！『氷結界の虎将ウェイン』を自身の効果により手札から特殊召喚！！」[ATK 2100]

《氷結界
ひょうけっかい
の虎将
こしょう
ウェイン/General Wayne of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星５/水属性/戦士族/攻2100/守 400
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：相手フィールドにモンスターが存在し、
自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「氷結界」魔法・罠カード１枚を手札に加える。
(3)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
フィールドから相手の墓地へ送られる魔法・罠カードは墓地へは行かず除外される。

グングニール「ウェインの効果はそれだけではない！特殊召喚成功時、デッキより『氷結界の晶壁』を手札に加え、発動！」

《氷結界
ひょうけっかい
の晶壁
しょうへき
/Freezing Chains of the Ice Barrier》 †
永続魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できない。
(1)：このカードの発動時に、自分の墓地のレベル４以下の「氷結界」モンスター１体を対象にできる。
その場合、そのモンスターを特殊召喚する。
(2)：このカードが魔法＆罠ゾーンに存在し、自分フィールドに「氷結界」モンスターが３体以上存在する限り、
自分フィールドの「氷結界」モンスターはＥＸデッキから特殊召喚された相手モンスターが発動した効果を受けない。

グングニール「墓地の『氷結界の伝道師』を特殊召喚！！」

《氷結界
ひょうけっかい
の伝道師
でんどうし
/Prior of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星２/水属性/水族/攻1000/守 400
(1)：自分フィールドに「氷結界」モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚するターン、自分はレベル５以上のモンスターを特殊召喚できない。
(2)：このカードをリリースし、
「氷結界の伝道師」以外の自分の墓地の「氷結界」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。


グングニール「更にその効果により自身を贄に墓地より『氷結界の虎将 ライホウ』を復活させる！！」

『氷結界の虎将 ライホウ』[ATK 2100]

明日人「……ッ…！」

グングニール「───ゆくぞバトルだ」


◉バトルフェイズ◉

機兵の場には3体の氷結界モンスター。


『氷結界の虎将 ウェイン』[ATK 2100]

『氷結界の虎将 ライホウ』[ATK 2100]

『氷結界の龍 グングニール』[ATK 2500]


対する明日人の場には禁じられた一滴により攻撃力を半減させられたハイペリュトンのみ───

『神樹獣ハイペリュトン』[ATK 1300]


グングニール「───やれェ！ライホウよ！！ハイペリュトンへ攻撃！！」

『氷結界の虎将 ライホウ』
[ATK 2100]
───VS───
[ATK 1300]
『神樹獣ハイペリュトン』


明日人「があぁあッ！！」【LP 8000→7200】


怯むな、次が来る。


グングニール「続いてウェインよ！プレイヤーへダイレクトアタック！！」


『氷結界の虎将 ウェイン』
[ATK 2100]
───ATTACK───
【LP 7200】
『倉川 明日人』


明日人「……ッあああがああぁあ！！」【LP 7200→5100】

耐えろ、耐えろ、耐えろ。


グングニール「───終わらせろ。我が分身───グングニール」


『氷結界の龍 グングニール』
[ATK 2500]
───ATTACK───
【LP 5100】
『倉川 明日人』


宣言の直後、腹部に襲いかかる───強烈な痛み。


明日人「───ッ」【LP 5100→2600】


これぐらいがなんだ。

ライフはまだ残ってる。

諦めんな。

諦めんな。

諦めんな！！！


グングニール「───ワタシのターンはこれで終了だ」

◉エンドフェイズ◉

明日人「───このエンドフェイズ…ッ『森羅の霊峰』の効果発動！！」

《森羅
しんら
の霊峰
れいほう
/Mount Sylvania》 †
フィールド魔法
自分のメインフェイズ時に手札または自分フィールド上に表側表示で存在する、
植物族モンスター１体を墓地へ送って発動できる。
デッキから「森羅」と名のついたカード１枚を選んでデッキの一番上に置く。
「森羅の霊峰」のこの効果は１ターンに１度しか使用できない。
また、相手のエンドフェイズ時に１度だけ、
自分のデッキの一番上のカードをめくる事ができる。
めくったカードが植物族モンスターだった場合、そのカードを墓地へ送る。
違った場合、そのカードをデッキの一番上または一番下に戻す。

明日人「デッキの一番上をめくり…ッ…それが植物族モンスターなら、そいつを墓地へ送る…！！」

明日人のデッキの上は、森羅の施しにより固定されている───

明日人「───俺のデッキトップは……『森羅の神芽 スプラウト』！！こいつを墓地へ送り、その効果を発動！！」

《森羅
しんら
の神芽
しんめ
スプラウト/Sylvan Cherubsprout》 †
効果モンスター
星１/光属性/植物族/攻 100/守 100
このカードが特殊召喚に成功した時、
自分のデッキの上からカードを２枚までめくる事ができる。
めくったカードの中に植物族モンスターがあった場合、
それらのモンスターを全て墓地へ送る。
残りのカードは好きな順番でデッキの一番下に戻す。
また、デッキのこのカードがカードの効果によってめくられて墓地へ送られた場合、
デッキから植物族・レベル１モンスター１体を特殊召喚できる。
「森羅の神芽 スプラウト」のこの効果は１ターンに１度しか使用できない。


どれだけ打ちのめされようと、大地に根を張り、

明日人「デッキから、植物族レベル1モンスター───2体目の『森羅の神芽 スプラウト』を特殊召喚…ッ！！」[DEF 100]

決して枯れない、決して折れない、

明日人「そして特殊召喚されたスプラウトの効果で───」

それが───


グングニール「───無駄だ」


明日人「───！？」

見ると、効果を発動しようとしたスプラウトの身体が、みるみる凍りついてゆく───

明日人「…なんで…だよ…！？」

グングニール「『氷結界の虎将 ライホウ』の効果───」

《氷結界
ひょうけっかい
の虎将
こしょう
ライホウ/General Raiho of the Ice Barrier》 †
効果モンスター
星６/水属性/戦士族/攻2100/守2300
(1)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
フィールドで発動した相手モンスターの効果処理時に、
相手は手札を１枚捨てる事ができる。
捨てなかった場合、その効果は無効化される。

グングニール「その氷を溶かし効果を発動する為には、貴殿は手札を1枚捨てなければならない───最も、貴殿の手札はもう───」


明日人「───」[手札 0]


グングニール「そのまま雪に埋もれ、沈むが良い……名も無き人間よ───」


明日人「───ぁ」

諦めんな。

諦めんな。

諦めんな。

諦め───


明日人「───」


グングニール「やはりな……その程度の生命力では、植物など厳しき冬の寒さに耐えられるハズがない───」


明日人「───」


意識が、遠のく───


明日人「───」


───俺は、なんで、ここにいるんだっけ。


終焉の焔と闘うため？
マインを止めるため？
桜庭さんを助けるため？

どれも大切な理由だ。



『おい！！しっかりしろよ！！お前がキーパーだろ！！』


誰だろう。

頭の中に、響く声。

いつかの記憶が───蘇る。



〜〜〜〜〜



「お前がシュート止めねェと俺らがいくら頑張っても意味ねェじゃんかよ！！」

「おめーデブなんだからよぉ、その腹でちゃんと止めてくれよ！！」

「ぎゃはははははは！！」

クラスメイトたちの笑い声が響く中、一人だけ。

「───」

ゴールを見据えて立ち尽くす男がいた。

「───大丈夫」

彼の背丈は明日人よりも小さく、小柄で、みんなを引っ張っていくようなタイプでもない。

「───取られた分は、取り返せばいい」

おとなしさと裏腹に、炎の様な闘志を宿したそいつが、俺は少し苦手だった。

その時の俺は、誰かが手を差し伸べてくれるのを待っていたから。

そいつなら。
俺のことをからかってくる周りの奴らとは違う、そいつなら。
手を差し伸べてくれるとでも、思ったのかもしれない。


だから、俺はそいつが───市瀬火群が、苦手だったんだ。


これは、一方的に、自分勝手に、突き放されたと勘違いしていた、弱かった日の記憶───




〜〜〜〜〜〜




明日人「───」


こんな時に、なに思い出してんだ。

明日人「───ぁ」

あいつなら───勝てんのかな。

明日人「───…ぁ…」

全身を覆う氷───あいつなら、溶かせんだろうな。

明日人「───ぁ…ぁ…」

どれだけ点を入れられても───あいつならシュートを決められるんだろうな。

明日人「───ぁ……ぁ…ぁ…ッ……」


違う。

違う。

違う。

そうじゃないだろ。

そういう事が言いたいんじゃない。

それじゃあの頃と同じだ。

劣等感に縛られんのは、もうやめただろ。



『お前が“攻め”を極めるなら───俺は“守備”を極めてやる！！』



それがなんだ、このザマは？

なあ───

お前は今の俺の姿を見て、なんて言うんだ───？



『大丈夫』


『───取られたら、取り返せばいい』



はは、そうかよ。

そうだよな。

お前はそういう奴だったよ。

だから俺は───



◉TURN:０３◉



明日人「俺の……ッ…ターン───」

不格好でも、不細工でも、それでも。

明日人「───ドロー…ッ…！」[手札 1]

懸命に、足掻く。

グングニール「……何…ッ…あれだけのダメージを受け、この寒さの中で、まだ闘うと言うのか…？」


◉スタンバイフェイズ◉


明日人「……ここを…乗り越え…っ…ねぇと…、なァ……」


◉メインフェイズ◉


明日人「…お前と……、並び立てねェんだよ───ッ」



なあ───



明日人「───『セリオンズ“リリー”ボレア』の効果───」



そうだろ─────火群ッッ！！！







＊＊＊








───一方、人間界。YAGAMI本社ビル。



爽香「───わっわわわ！？なんスかあの氷の決闘機兵！？露骨にこっち狙ってません！？」

鈴音「……あれは恐らく、伍召焔の一人…ネロが作り出した最強の決闘機兵───トリシューラ…！！」

シルバ「今は東雲竜貴が交戦中だが…、奴らの狙いはこのビル……いや、恐らく人間界で指揮を取る俺との連絡手段を断つ事だ」

爽香「そんなぁ！流れ弾流星群じゃないスか！そんなの！」

シルバ「───だからお前達は外に避難しろ。時枝小次郎は既に避難のために動いている」

爽香「…！でも…っ！」

鈴音「……行きましょう。明石さん」

爽香「………っ、…はい！
シルバさん…！ご無事で…っ！」



………



シルバ「……行ったか…」

シルバは爽香たちが司令室から出たのを確認し、一人の人物と無線を繋ぐ。


シルバ「どうやら無線は直った様だな…。いいかよく聞け、ここが正念場だ。
復活早々悪いが、頼むぞ───市瀬」






〜神星樹内部・基礎の間←→美の間〜





ニクス「ようやく起きたか、ねぼすけ」

マンティス「おせーんだよ、タコ。決闘機兵が寝込み襲いに来てたんで処理しといたぜ、感謝しろよ」


火群「───だぁぁぁもう！気持ちよくおはようの挨拶もできねぇのかよお前らは！」


回復カプセルから出て早々、辛口な二人の対応に若干苛立ちながらも、それ以上は取り合わず、深呼吸。

火群「すぅ───はぁ───よしっ！」

ニクス「気分はどうだ？火群」

火群「すこぶる快調！！行くぞニクス！！」

マンティス「…たく…調子のいいヤツだぜ……おっと」

マンティスは何かに気づき、出口に向かいかけてた足を止めた。

機兵「───ガ、ガガ……ハカイ…、ハカイ…！！」

マンティス「…どうやら取りこぼしがいたみてーだな。任せるぜ、病み上がり」

マンティスはそう言って火群の肩を叩く。

火群「───任せやがれ」

火群は笑いながらそう言い、決闘盤にデッキをセットする。

火群「不思議だな……身体が治ってから、感じるんだ……、俺のデッキから、新しい力を。新しい可能性を」

ニクス「…私もだ。火群を通して、私の中に強大な力が流れ込んでくるのを感じる───」

マンティス「…ケッ、だったらそいつを見せてもらおうじゃねぇか…！」



市瀬火群【LP 8000】

決闘機兵【LP 8000】


「「───決闘！！！」」



火群「───見せてやるぜ…！！俺たちの新たな力を！！」


カプセルの中で眠っている間、声が聞こえたんだ。

火群「『炎王の孤島』の効果発動───手札から現れろッ！！」

みんなが俺を、呼ぶ声が。

火群「───聖域より来たるは天空の覇者！！」

絶対に助ける。絶対に護る。

火群「炎環より出でよ───！！」

その為に俺は、俺にできる最大限を───！



火群「───『聖炎王ガルドニクス』ッ！！！」



───瞬間。
弾けた焔は神星樹内部を瞬く間に駆け抜け、光を灯した。
何が起きようと決して尽きることの無い───生命の光を。





To Be Continued…