DRAW:２２７ 魂のバトン　作：人喰い

(227)





「───聞いているのか！！おい！！
208番！209番！」

「……」

「……」

「明日、貴様ら２人の死刑が執行される。
最期にやり残した事があるなら、言え」

「…………」

「…………」


ヒソヒソ…ヒソヒソ…

「…おい…あの2人って先週入ってきた奴らだよなァ…？」

「死刑…って…、何やったんだ…？」

「なんでも、裏デュエル場開いて違法で闇のデュエルしてたんだと。おまけに対戦相手を何人も殺っちまってる」


……………



「………最後に……」

「…やり残したことか………」


「……デュエル…」

「…デュエルがしてェなァ……」




「──────」




「───ならばその望み、俺が叶えよう」




脱獄不可能と言われたこの監獄に、単身乗り込んできたその男の名は『マイン』。

煉獄の───魔王。















◉◉◉遊戯王 Ph.X◉◉◉
───DRAW:２２７───
　　 《魂のバトン》













【Side 結維】


《神星樹内部》
〜『王冠の間』←→『美の間』〜





【決闘ルール】
タッグデュエル:フィールド・ライフ共に共有

【TURN PLAYER】
銃機兵→結維→刃機兵→鈴華




刃機兵「……ワタシ達を……救う……？」

銃機兵「…救う価値のない存在だとしてもか？」

結維「………」

結維はその言葉の意味をしばし考え、

結維「───それでも」

ゆっくりと、口を開く。

結維「私は私の選択に、後悔はしない」


刃機兵＆銃機兵「「───！」」


鈴華「私も同じ気持ち……ですわ！！」



結維＆鈴華【LP 7500】
(モンスター)

(魔法)
『天空の聖域』(フィールド)
伏せ:0
墓地:アルメギド、球x2、ウラヌス、ジュラゲド、ヒュペリオン、ヴィーナス、緑光の宣告者
除外:トリアス、球
手札:(結維)1/(鈴華)5

銃機兵＆刃機兵【LP 7200】
(モンスター)
『デモニック・モーター・Ω』[ATK 4500]
(モーターバイオレンスによりATK1000↑)
@ガーディアンの力[魔力C:0]
7カード[ATK700↑]
『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』[ATK 2800]
『モーターバイオレンス』[ATK 2100]
(魔法)
『鋼鉄の襲撃者』(フィールド)
伏せ:1
墓地:トリケライナー、叢雲遠呂智
手札:(銃機兵)0/(刃機兵)1



鈴華「───私のターン！！」[手札6]

結維が決死の思いで繋いでくれた鈴華のターン。想いを指先に込め、カードを引く。

刃機兵「救済など……要らぬ！！先のターン耐え抜いたのは見事だが、我々の場には攻撃力4500のモーターΩに加え、バトルフェイズ中にモンスターを最大3体破壊できるデスペラードがいるのだ…！」

銃機兵「更にフィールド魔法、『鋼鉄の襲撃者』によって我々の闇属性機械族モンスターは1ターンに1度戦闘で破壊されず、その戦闘で受けたダメージ分攻撃力を上昇させる事ができる…」

刃機兵「それに加え、せっかく回収したマスターヒュペリオンというエースをコストとして捨ててしまったようでは、次の手は無いと言っているようなものだ…！！」

結維「ごちゃごちゃうるさいわね───言っとくけど、ヒュペリオンを捨てたのは、切羽詰まったからじゃないわ」

刃機兵「───ッ…？」

結維「───鈴華に託す為よ」



鈴華「───私は手札の闇属性モンスター『カオス・ウィッチ-混沌の魔女-』を除外して、『混沌核』の効果発動！」

《混沌核
コア・オブ・カオス
》 †
特殊召喚・チューナー・効果モンスター
星２/光属性/雷族/攻 0/守1600
このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分の手札・墓地から闇属性モンスター１体を除外して発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
このターン、自分は光・闇属性のＳモンスターしかＥＸデッキから特殊召喚できない。
(2)：このカードが特殊召喚に成功した場合、
除外されている自分の「混沌殻」１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
(3)：表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

鈴華「『混沌核』を手札から特殊召喚！」

『混沌核』[DEF 1600]☆2 チューナー

鈴華「続けて除外されたカオス・ウィッチの効果！」

《カオス・ウィッチ－混沌
こんとん
の魔女
まじょ
－》 †
効果モンスター
星４/闇属性/魔法使い族/攻1500/守1500
このカード名の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できず、
発動するターン、自分は光・闇属性のＳモンスターしかＥＸデッキから特殊召喚できない。
(1)：このカードをリリースして発動できる。
自分フィールドに「黒き獣トークン」（悪魔族・闇・星２・攻１０００／守５００）２体を特殊召喚する。
(2)：このカードが手札・墓地から除外された場合に発動できる。
自分フィールドに「白き獣トークン」（天使族・チューナー・光・星２・攻５００／守１０００）２体を特殊召喚する。


鈴華「私のフィールドに白き獣トークン2体を特殊召喚！！」

『白き獣トークン』[DEF 1000]☆2 チューナー
『白き獣トークン』[DEF 1000]☆2 チューナー

この神星樹へ突入するに当たって取り入れた鈴華の新たなカード達による怒涛の展開はまだ止まらない。

鈴華「更に！手札の『混沌殻』の効果を発動！！」

《混沌殻
シェル・オブ・カオス
》 †
特殊召喚・効果モンスター
星４/闇属性/機械族/攻1600/守 0
このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：自分の手札・墓地から光属性モンスター１体を除外して発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
このターン、自分は光・闇属性のＳモンスターしかＥＸデッキから特殊召喚できない。
(2)：このカードが特殊召喚に成功した場合、
除外されている自分の「混沌核」１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
(3)：表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。


鈴華「手札・墓地の光属性モンスターを除外してこのカードを特殊召喚！」

墓地には結維の残した大勢の光属性モンスターたち。

結維「───鈴華！！」

すかさず送られた結維の声がけに、

鈴華「───ええ！」

鈴華は高らかに応じる。

鈴華「私が除外するのは、墓地の『マスター・ヒュペリオン』！！」

『混沌殻』[ATK 1600]☆4

刃機兵「…！！」

銃機兵「……相方のエースモンスターを召喚コストにするとは…」

刃機兵「だが…、光属性は他にも大勢いる…ッ…なぜヒュペリオンを───」

鈴華「私はレベル4の混沌殻にレベル2の白き獣をチューニング！！」


◉◉◉☆4+☆2=☆6◉◉◉


白黒２色の粒子が渦を巻き、その中心から光の柱が立ち昇る。

鈴華「シンクロ召喚！！レベル6───『カオス・ビースト-混沌の魔獣-』！！」


《カオス・ビースト－混沌
こんとん
の魔獣
まじゅう
－》 †
シンクロ・効果モンスター
星６/闇属性/悪魔族/攻2000/守1800
光属性チューナー＋チューナー以外の闇属性モンスター１体以上
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このターンにカードが除外されている場合、このカードの攻撃力は１０００アップする。
(2)：除外されている自分の光・闇属性モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
(3)：このカード以外の光・闇属性モンスターを１体ずつ、自分の手札・墓地から除外して発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


鈴華「このターンにカードが除外されている場合、カオス・ビーストの攻撃力は1000アップしますわ！」

『カオス・ビースト-混沌の魔獣-』[ATK 2000→3000]

刃機兵「…レベル6にして攻撃力3000……。
だが、その程度の攻撃力では、我々の布陣を突破するにはまだ遠い！」

鈴華「───カオス・ビーストの効果発動！！」

鈴華は叫び、右手を掲げた。

鈴華「除外されている光・闇属性のモンスター1体を、手札に加えますわ！！」

すると掲げた右手に温かな光が宿り、辺りを照らしてゆく───

刃機兵「…！」

事前に打ち合わせをした訳でも無い。
決闘中に2人で作戦を練った訳でも無い。

銃機兵「……まさか…ッ…！」

結維に至っては鈴華の新しいカードの効果など知る由も無く。

鈴華「私が手札に加えるのは───」

それなのに。結維は信じ、託した。


結維「───出番よ」


それが、偶然、噛み合ったのだ。




鈴華「───『マスター・ヒュペリオン』！！！」



鈴華の右手に太陽神のカードが舞い戻り、辺りを照らす光はより輝きを増してゆく。

刃機兵「…ッ…！この為にヒュペリオンを……ッ…！」

結維から渡された魂のバトン、それは鈴華にとってこの逆境を覆し、決着をつける最強の一手───

鈴華「私は墓地の『創造の代行者ヴィーナス』を除外───！！」

足元から漏れ出る光。墓地に眠る金星が淡い輝きを放ち、弾ける。

結維「その燃え盛る翼を掲げ───」

鈴華「───天より舞い降り“強さ”を示せっ！」


鈴華＆結維「「来て！！
───恒星を束ねし太陽神！！
『マスター・ヒュペリオン』！！」」


《マスター・ヒュペリオン/Master Hyperion》 †
効果モンスター
星８/光属性/天使族/攻2700/守2100
(1)：このカードは自分の手札・フィールド・墓地の「代行者」モンスター１体を除外し、手札から特殊召喚できる。
(2)：１ターンに１度、自分の墓地から天使族・光属性モンスター１体を除外し、
フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
フィールドに「天空の聖域」が存在する場合、この効果は１ターンに２度まで使用できる。



『マスター・ヒュペリオン』[ATK 2700]

天より舞い降りた太陽神を見上げ、2体の機兵は思わず後ずさる。その恐るべき効果を知っているからだ。

鈴華「マスター・ヒュペリオンの効果！！
墓地の神聖なる球体を除外して、フィールド魔法『鋼鉄の襲撃者』を破壊しますわ！！」

地を破り現れた神聖なる球体を太陽神は自在に操り、機兵の場へと放たれる───

鈴華「まだ…ですわ！この効果は場に天空の聖域がある場合、1ターンに2度まで使用できる！！
もう1枚、墓地の神聖なる球体を除外して、デモニック・モーター・Ωに装備されたガーディアンの力を破壊！！」

結維「……私たち2人分の力───受けなさい！！」

続く2発目も放たれ、鋼鉄の襲撃者、ガーディアンの力の2枚が破壊され、爆風が立ち込める。

銃機兵「…ッ…！」

刃機兵「…カカカカ！！土壇場で血迷ったか！ガーディアンの力に既に魔力カウンターは無かった…！モーターΩを直接破壊できたものを！！」

鈴華「……」

しかし晴れゆく煙の奥から覗く鈴華の表情は、至って冷静。既に次の展開へと手は動き出していた。

鈴華「───レベル6のカオス・ビーストに、レベル2の白き獣をチューニング！！」




◉◉◉☆6+☆2=☆8◉◉◉



鈴華「───理想も現実も、全て受け入れて……混沌とした世界に終幕を───っ！！」


光と闇が入り混じり、フィールドの中央に現れたのは、禍々しく巨大な渦。

やがてその渦の中から、ゆっくり、ゆっくりと、“それ”は、姿を現す。



鈴華「シンクロ召喚！！レベル8───
『カオス・デーモン-混沌の魔神-』！！」[ATK 2500]



白き鎧を纏い、黒きマントを靡かせ、白黒２色の翼で舞い上がる魔神。
巨大な槍を構え、魔神は機兵をただ見下ろす。

刃機兵「…ッ……！」

銃機兵「……！！」

鈴華「…これがママから貰った……私の新たな力───新たな希望っ！！」

銃機兵「…連続シンクロ召喚……見事だが───」

鈴華「…攻撃力は大した事ない……とでも言いたげですわね？」

銃機兵「…ッ」

鈴華「…この程度じゃありませんわよ！
このターンにカードが除外されている場合、カオス・デーモンの攻撃力は2000ポイントアップしますわ！！」

『カオス・デーモン-混沌の魔神』[ATK 2500→4500]

銃機兵「…攻撃力4500…！？」

刃機兵「…ッ…だが！それでもデモニック・モーター・Ωと同じ…！良くて相打ちが限度───」

鈴華「…行きますわよ！バトルフェイズ！！」

間髪入れずバトルフェイズへ移行する鈴華。
しかし機兵も黙って攻撃を通しはしない。

銃機兵「何を企んでいるか知らぬが…ッ…させるものか…！！この瞬間！！デスペラードの効果発動！！」

(2)：１ターンに１度、自分・相手のバトルフェイズに発動できる。
コイントスを３回行う。
表が出た数までフィールドの表側表示モンスターを選んで破壊する。
３回とも表だった場合、さらに自分はデッキから１枚ドローする。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。


結維「…鈴華！！」

すかさず結維は声をかける。
そう、鈴華たちの場にはまだ結維の残したカードが残っている。

鈴華「ええ！永続罠『失われた聖域』の効果を発動！」

(3)：自分の墓地から天使族モンスター１体を除外し、
相手フィールドの効果モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

鈴華「墓地の緑光の宣告者を除外し、デスペラードの効果を無効にしますわ！！」

銃機兵「…くッ…またしても…！」

鈴華「いきますわよ！！
カオス・デーモンで、モータートークンを攻撃！！
〝デス・クランチ・ヘル・グレイヴ〟！！

『カオス・デーモン-混沌の魔神-』
[ATK 4500]
───VS───
[ATK 200]
『モータートークン』


刃機兵「…ダメージを狙ってきたか…だが…！その程度、想定していない訳が無い！！
ワタシは手札の『アルカナフォースＸＩＶ－ＴＥＭＰＥＲＡＮＣＥ』を捨て、効果発動！」


《アルカナフォースＸＩＶ
フォーティーン
－ＴＥＭＰＥＲＡＮＣＥ
テンパランス
/Arcana Force XIV - Temperance》 †
効果モンスター
星６/光属性/天使族/攻2400/守2400
戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動できる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは０になる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時　
コイントスを１回行い、その裏表によって以下の効果を得る。
●表：このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。
●裏：このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手が受ける戦闘ダメージは半分になる。

刃機兵「この戦闘で受けるダメージは0となる！！」

鈴華「…！そんな効果が…！けど───」

刃機兵「貴様の決死の一撃も、我々には届かない！！」【LP 7200→7200】

鈴華「───それは、どうかしら」


刃機兵「…！？」

鈴華の発言の直後、機兵は異変を感じ、カタカタと音を立て魔神を指差す。

銃機兵「…な……なぜ…ッ…」

それもそのはず、攻撃を終えたはずの混沌の魔神が、再び槍を構え攻撃の態勢を取っていたのだ。

銃機兵「なぜ…ッ…！！
貴様のモンスターはまた槍を構えて───」

鈴華「カオス・デーモンは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃が可能───！
……ごめんなさい、この子は少し気性が荒くて……相手を殲滅するまで止まる気は無いみたい！」

刃機兵「…ッ！！」

鈴華「続けてデスペラードを攻撃！！」


『カオス・デーモン-混沌の魔神-』
[ATK 4500]
───VS───
[ATK 2800]
『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』


漆黒の巨槍が銃機竜を貫き、爆散。爆風が機兵へと襲いかかる。

刃機兵「…グ…ァ…ッ！！」【LP 7200→5500】

刃機兵「……まだだ！墓地へ送られたデスペラードの効果で、もう1枚のテンパランスを───」

そこで、

刃機兵「───ッ…」

更なる異変に気づき、機兵はサーチを行う為にデッキに伸ばした右手をゆっくり下ろした。

鈴華「…残念、でしたわね。カオス・デーモンが破壊した魂は墓地へは行かず、ゲームから除外される───」

刃機兵「…カカ……カカカ…！」

鈴華「カオス・デーモン！次はモーターバイオレンスを攻撃！」


『カオス・デーモン-混沌の魔神-』
[ATK 4500]
───VS───
[ATK 2100]
『モーターバイオレンス』


魔神の猛攻は止まらない。三度振るわれた巨槍は機兵のモンスターを軽々しく薙ぎ払う。

刃機兵「グァァアァ！！」【LP 5500→3100】

鈴華「……次で最後ですわ！デモニック・モーター・Ωを攻撃！！」


『カオス・デーモン-混沌の魔神-』
[ATK 4500]
───VS───
[ATK 4500]
『デモニック・モーター・Ω』


混沌の魔神最後の一撃。攻撃力は互角。
天井に大穴を空ける程の激しい衝突の末、両者共に破壊され、辺りを眩い光が照らす。


刃機兵「…まだ…だ…。盤面は失ったが…続くヒュペリオンの攻撃力2700では、残る我々のライフ3100を削り取る事はできない……！」

やがて光が晴れゆき───

刃機兵「───は…？」

目の前の光景に、機兵は思わず声を漏らす。

鈴華の場に、今の今まで存在しなかったモンスターが出現していたのだ。

銃機兵「───ッ」

白く美しい巻き髪に、黒を基調とした艶やかなドレスを纏い、白銀の杖を悠然と構え立ち尽くすその姿は、一言で言い表わすなら、“女神”───

───“混沌の女神”。




『カオス・ゴッデス-混沌の女神-』[ATK 2500]




刃機兵「…カオス…ゴッデスだと…！？なぜここに───」

鈴華「カオス・デーモンが相手によって場を離れた場合、EXデッキの『カオス』シンクロモンスターを特殊召喚できますの───」

刃機兵「…ッ！！ここまで考えて、ヒュペリオンの効果で、ガーディアンの力を───ッ」

鈴華「さあ！カオス・ゴッデス！！プレイヤーへダイレクトアタック！！
〝ディヴァイン・リターニア〟！！」


『カオス・ゴッデス-混沌の女神-』
[ATK 2500]
───VS───
【LP 3100】
『刃機兵＆銃機兵』



女神が白銀の杖を振りかざすと、背後から白き獣と黒き獣が現れ、2体の機兵へとそれぞれ襲いかかった。

刃機兵「グァぁあああァッッ！！」【LP 3100→600】

精霊の力が宿ったその一撃を受け、機兵の中に、熱い何かが、流れ込む。

刃機兵「…なんだ……これは…ッ…」

銃機兵「……これ……は…ッ…、ワタシ達…の……」

刃機兵＆銃機兵「「記憶───ッ…？」」


それは、かつてデュエルが大好きだった頃の、兄弟の記憶。
そしていつの日か勝利に執着し悪に染まっていくまでの過程、その鮮明な記憶。


銃機兵「まだ……終わって…、たまるか…！！せっかく……せっかく地上に上がり……意思を…自由を得たというのに！！！」

思い起こされる鮮明な記憶に奮い立たされ、

刃機兵「…その…通りだ…！！！まだ…！！終わるわけにはいかない！！ワタシは……！いや───」

続く太陽神の攻撃が迫る中、機兵は吠える。

刃機兵「───俺は！！墓地の『機巧蛇－叢雲遠呂智』の効果を発動！！」



《機巧蛇
きこうじゃ
－叢雲遠呂智
ムラクモノオロチ
/Gizmek Orochi, the Serpentron Sky Slasher》 †
効果モンスター
星８/闇属性/機械族/攻2450/守2450
このカード名の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：このカードが手札・墓地に存在する場合、
自分のデッキの上からカード８枚を裏側表示で除外して発動できる。
このカードを特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2)：ＥＸデッキからカード３枚を裏側表示で除外し、
フィールドの表側表示モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。


鈴華「…！」

刃機兵「デッキの上から8枚のカードを除外し───このカードを墓地から特殊召喚する！！」[DEF 2450]

最後の攻撃の最中、太陽神の前に機械を纏いし大蛇が立ち塞がる。
しかし───

結維「……」

鈴華「……」

刃機兵「…！？なぜ……何故だ…！？叢雲遠呂智が光に包まれ───」

大蛇の出現と同時に発動された───1枚の罠。
それは、失われた聖域の発動時の効果で結維から託された、最後の切り札。

鈴華「罠カード『裁きの光』───」


《裁
さば
きの光
ひかり
/Light of Judgment》 †
通常罠
(1)：フィールドに「天空の聖域」が存在する場合に手札から光属性モンスター１体を墓地へ捨てて発動できる。
以下の効果から１つを選んで適用する。
●相手の手札を確認し、その中からカード１枚を選んで墓地へ送る。
●相手フィールドのカード１枚を選んで墓地へ送る。


鈴華「手札の光属性モンスター『混沌核』をコストに、叢雲遠呂智を墓地へ送る───」

抵抗虚しく崩れ落ちる大蛇を前に、機兵は構えていた腕を落とす。

刃機兵「……」

それは完全に打つ手が途絶えた事を意味していた。


鈴華「これで…フィニッシュ！！ですわ！！」



鈴華＆結維「「『マスター・ヒュペリオン』の攻撃───！！」」


『マスター・ヒュペリオン』
[ATK 2700]
───VS───
【LP 600】
『刃機兵＆銃機兵』


鈴華＆結維「「〝サンバースト・ディザスター〟！！！」」






刃機兵＆銃機兵「─────ッ」【LP600→0】





◉winner◉
桜庭 結維＆西蓮寺 鈴華





結維「……ハァ…っ、はァ…っ…！」

鈴華「…ぜぇ…はぁ…っ…」


2人は息を切らしながらも目線で勝利を分かち合い、機兵の元へと足を運ぶ。


刃機兵「……」

銃機兵「……」

2機共に、最後の攻撃による衝撃で頭部の装甲が割れ、その奥の人間の顔が顕になっていた。

刃機兵「…酷い顔だろ」

結維「…ええ。ひっどい顔ね」

鈴華「ちょっと結維さん！」

結維「酒、女、暴力、って顔」

鈴華「言い過ぎですわよ！」

銃機兵「……。
…俺たち兄弟は、これまでデュエルで多くの人間を陥れ、殺めてきた……」

結維「……」

鈴華「…っ…」

刃機兵「死刑執行寸前、終焉の焔に命を救われた俺たちは…、機械の身体を与えられた…。俺たち兄弟のデュエルの実力を、兵器として利用するために」

銃機兵「そっからの記憶は朧げだ。“意思”の導くままに、デュエルで暴れまくった。
それは…マインの意思だけじゃない…俺たちの意思でもあったんだよ」

結維「……」

刃機兵「だから……無事地上に戻れたとしても、俺たちに居場所は無い。脱獄扱いの俺たちには、すぐに死刑が再執行されるだろう」

銃機兵「最初から救う意味なんてなかったんだよ！嬢ちゃん達とんでもないバカだぜ。大バカだ」

結維「……」

鈴華「……っ」

結維「ほんっっっと…、大バカね」

刃機兵「カカ…！カカカ！」

結維「知らなかったとは言え、大罪人を助けちゃうなんてね」

鈴華「……」

結維「………けど、知ってたとしても、きっと同じ事をしたと思うわ。ね、鈴華」

鈴華「……！
───ええ。そう…ですわね」

結維「アンタたちがしてきた事は、絶対に許されない。だからこそ、自分達がしてきた事をしっかりと悔いながら、然るべき場で、然るべき罰を受けなさい」

刃機兵「…カカ…！」

結維「それが私たちからアンタたちへの───救済よ」

銃機兵「…その甘さがいつか命取りにならんといいな…」

結維「……そん時はそん時よ」

刃機兵「…カカ……。最後に…、良いデュエルができて良かったぜ…嬢ちゃんたち…」

鈴華「……っ…」

結維「…こちらこそ。
そんじゃ、急いでるから───」


言って2人が踵を返し歩き出した───刹那。




がちゃこん。




背後から。
鈍い、音がした。




びちゃり。


続けて。
何かが、飛び散る音。



鈴華「───」

結維「───？」




振り返ると、2体の機兵の頭が潰れていた。


結維「───ぁ？」


否───機兵ではない。
数秒前まで話していた2人の人間の頭が、潰されていた。

鈴華「───ッ」



異変はもう一つ。




「─────」


その横では、少女がひとり、満面の笑みでこちらを見つめているのだ。


鈴華「───ぁ…ぁ…───っ…ぁ……ッ…───」


カラフルな星があしらわれた黒ローブを身に纏い、肩に届くくらいの金髪を二つ結びにした幼い少女。





「───きゃは☆」




少女は笑う。けたけたと。






「───また会えたねっっ☆☆☆
“くるくる頭のおねーさん”っっ！！☆☆」





───少女の名は常盤 星奈(ときわ せな)。
終焉の焔・伍召焔のエクシーズ担当。

【テラナイト】使い───
《星火燎原-ｽﾀ-ﾗｲﾄ☆ﾋﾞｯｸﾞﾊﾞﾝ-》
『常盤 星奈』







To Be Continued…