DRAW:６７ 思いを乗せた拳　作：人喰い

(67)



〜2年前・黒髭中学 体育館〜


竜貴(中3)「ーーーはぁぁっ！！ せいッ！！ ぜぇぃりゃぁあッッ！！！」




男子生徒A「…東雲先輩張り切ってるなぁ…っ」

男子生徒B「空手部最後の大会、来週だもんな」




竜貴「ーーーせいっゃぁああっっ！！」



女子生徒「…そろそろ休憩したら？ リューキ」

竜貴「…キョーコ、来てたのか」

彼女は『柳瀬 響子(やなせ きょうこ)』。空手部のマネージャーだ。
背丈はちっこくて、肩口まで伸ばした茶髪がいつも外側にくりんと跳ねている。

竜貴「寝癖くらい直してこいって」

響子「…うっさいわアホぉ！癖っ毛なんだってば！」

口を開けばいつも口喧嘩。でもこうやって言い合える人がいるってのは、なんだか悪くない。

響子「もう知らん！ せっかく飲み物持って来たりとかマネージャーらしさMAX発揮してるってのにぃ…っ」

竜貴「…えっ！？ あぁ悪りぃ！ 飲み物貰ってもいいか…？」

響子「…ったく……はい、どーぞ」

竜貴「サンキュー、キョーコ」

ゴクッゴクッ

響子「………いよいよ、来週だね。大会」

竜貴「…ん？ ああ」

響子「……これで、最後なんだよね…」

竜貴「中学では、な。でも県外の高校に推薦貰ってっし、高校でも空手は続けるつもりだぜ？」

響子「…っちがうわょ……私が言ってるのは…そういう事じゃなくて……」

竜貴「…？ そういや、響子は卒業したらどうすんだっけか」

響子「……私は、遠くの高校に行く事が決まってるの」

竜貴「遠くの、って…随分ざっくりとしてんなぁ」

響子「…親が勝手に決めただけだし、私も詳しく知らないのよ…。なんでも絶海の孤島にある学校だとか…」

竜貴「なんだよそりゃぁ！ ほんとに学校かぁ！？ それ…」

響子「まぁ確かに驚くのも無理ないよね〜…」

竜貴「……」

響子「……」

竜貴「…お前とこんな風に話してられるのも、あと少しだけなんだよな」

響子「……そーだね」

竜貴「…あのさ」

響子「…な、なによ」


竜貴「…この大会が終わったらーーー」


響子「…っ！ わ、わーーっ！ そ、そそういうのは、ちょっと！」


竜貴「…なんてな！ 顔真っ赤だぜ？ キョーコ」

響子「…くぉんのぉおお…っっ！！」ｺﾞｺﾞｺﾞ…


竜貴「…えっ…ちょ…！」


響子「………リューキのバーーッカ！！」


ﾒｷｨ!!


竜貴「いっでぇ！！」













ーーー“魂(ソウル)”が宿ってないよ。あんたの拳。





竜貴（中1の頃、喧嘩ばっかに明け暮れてた俺に、その頃から空手部マネージャーだったキョーコはそう言ったんだ）



竜貴（俺は、キョーコが示してくれた空手の道を、これからもずっと歩み続けていくんだと、この時は思っていたーーー)


















遊戯王 Ph.X DRAW:６７
《魂を乗せた拳》



















〜セントラルホール前〜明日人side





放浪【LP 8000】
場:『戦神ー不知火』[ATK 3000]☆8
魔:『アンデットワールド』(フィールド)
伏せ:0
手札:3


竜貴【LP 1000】
場:0
伏せ:0
手札:2



◉TURN:０４◉


竜貴（…こんなとこで……倒れるわけにはいかねえよなぁ…！！ キョーコ……！！）


竜貴「俺のターン…！ ドローッ！」[手札:3]


竜貴「…俺は『ドラグニティードゥクス』を召喚！」[ATK1500]



《ドラグニティ－ドゥクス/Dragunity Dux》 †
効果モンスター
星４/風属性/鳥獣族/攻1500/守1000
このカードの攻撃力は、自分フィールド上の
「ドラグニティ」と名のついたカードの数×２００ポイントアップする。
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル３以下の
「ドラグニティ」と名のついたドラゴン族モンスター１体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。

ドゥクス[ATK 1500→1700]


放浪「…だが、お前の墓地のモンスターは全てアンデットと化している。お得意の装備効果は使えないッ」


竜貴「んなこたわかってらァ…！ だが俺のデッキからはまだちゃんと声が聞こえるッ！
俺は手札から、装備魔法『ドラグニティの神槍』を発動し、ドゥクスに装備！」

装備魔法
「ドラグニティ」モンスターにのみ装備可能。
「ドラグニティの神槍」の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：装備モンスターは、攻撃力が装備モンスターのレベル×１００アップし、
罠カードの効果を受けない。
(2)：自分メインフェイズにこの効果を発動できる。
デッキからドラゴン族の「ドラグニティ」チューナー１体を選び、
このカードの装備モンスターに装備カード扱いとして装備する。

ドゥクス[ATK 1700→2300]


竜貴「ドラグニティの神槍の効果発動！！ デッキより来れ…『ドラグニティーファランクス』ッ！ “竜装一体”！！」

ドゥクス[ATK 2300→2500]


放浪「………ッ！」


《ドラグニティ－ファランクス/Dragunity Phalanx》 †
チューナー・効果モンスター
星２/風属性/ドラゴン族/攻 500/守1100
(1)：１ターンに１度、このカードが装備カード扱いとして
装備されている場合に発動できる。
装備されているこのカードを特殊召喚する。


竜貴「そして俺は、墓地の『BFー精鋭のゼピュロス』の効果を発動！！」


《ＢＦ
ブラックフェザー
－精鋭
せいえい
のゼピュロス/Blackwing - Zephyros the Elite》 †
効果モンスター
星４/闇属性/鳥獣族/攻1600/守1000
「ＢＦ－精鋭のゼピュロス」の効果はデュエル中に１度しか使用できない。
(1)：このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールドの表側表示のカード１枚を持ち主の手札に戻して発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚し、自分は４００ダメージを受ける。


竜貴「ドラグニティの神槍を手札に戻し、ゼピュロスを特殊召喚！」

ゼピュロス[DEF 1000]


竜貴「その後、俺は400ポイントのダメージを受ける。
……ぅぐ…ッ！」[LP 1000→600]


放浪「……ッ（ファランクスを分離してのシンクロ召喚が狙いか…？ だが素材に縛りのあるドラグニティシンクロモンスターはアンデットワールドがある限り出せないはず…、だとすれば……)」


竜貴「ーーー行くぜ…！ 俺たちの“魂”はまだ折れてねぇってところ……見せてやるッ！！」


放浪「ーーーっ！」


竜貴「このカードは、自分の場の『ドラグニティ』を装備したモンスター1体を除外し、手札または墓地から特殊召喚できる…！
ーーー疾風纏いし竜騎士！ 今ここに舞い降り、全ての敵を薙ぎ払えッ！！
現れろ！『ドラグニティアームズーレヴァテイン』！！」


レヴァテイン『ガァアアァアアアァアアッ！！！』[ATK 2600]



《ドラグニティアームズ－レヴァテイン/Dragunity Arma Leyvaten》 †
効果モンスター
星８/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター１体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ－レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター１体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター１体を特殊召喚する事ができる。


放浪「…ッ！！ カードの…精霊！！」

明日人「…精霊…？ これが…っ！」

竜貴「…更に俺は手札から、ゼピュロスの効果で戻したドラグニティの神槍を発動！ レヴァテインに装備！！
これによりレヴァテインの攻撃力はレベルx100……800ポイント上昇し、罠カードの効果を受けなくなる！！」


レヴァテイン[ATK 2600→3400]


明日人「…戦神の攻撃力を上回った…っ！」

放浪「…チィ…ッ！！」

竜貴「これが俺がデュエルにかけた“拳”だッッ！！！ 受けてみろ！！」







〜〜〜



「ーーー東雲くん、停学ですって」

「なんでも、柳瀬さんに手出そうとした他校の生徒達に大怪我させたらしいよ」

「大会も当然出られないだろうし、残念ね」

「おまけに右手骨折しちゃったらしいよー、かわいそー」

「空手、続けるのかなぁ、東雲くん」



〜〜〜


響子「ごめんね、私のせいで。私がいなければ、リューキは夢を諦めることなんてなかったんだよね。本当にごめん。じゃあね、リューキ」



〜〜〜



竜貴（あの事件を境に、俺は誰に対しても拳を振るう事をやめた。空手部を退部してからキョーコとも疎遠になって、中学を卒業してからは一度もあっていない）


竜貴（だけど、高校に入ってから、俺はいつもテレビで見ていた。
ーーー決闘者養成学校『デュエルアカデミア』の生徒として試合をする、決闘者としての柳瀬響子の活躍を）



竜貴「……その“拳”に届くまでーーー負けられねーんだ…ッ！」

放浪「ーーー！」

竜貴「バトル！ レヴァテイン！！ 戦神ー不知火に攻撃！
ーーー打ち貫け！〝害ヲ成ス焼滅のレーヴァテイン〟！！」



『ドラグニティアームズーレヴァテイン』
[ATK 3400]
ーーーVSーーー
[ATK 3000]
『戦神ー不知火』



神槍を掲げたレヴァテインは疾風を纏い戦神へと突進し、目にも留まらぬ速さで貫いた。


放浪「……ッ…！！」【LP 8000→7600】

明日人「やった…！」


放浪「…だが、戦神ー不知火が破壊された場合、除外されている守備力0のアンデット族モンスターを墓地へ戻す事ができる。
俺は『刀神ー不知火』を墓地へ戻す…」

竜貴「…はぁ…はぁ…っ！ ターンエンドだ…ッ！」



竜貴【LP 600】
場:『ドラグニティアームズーレヴァテイン』[ATK 3400]@『ドラグニティの神槍』
『BFー精鋭のゼピュロス』[DEF 1000]
伏せ:0
手札:0

放浪【LP 7600】
場:0
伏せ:0
手札:3


◉TURN:０５◉


放浪「…俺に傷をつけるとは大した奴だ……」

竜貴「…へっ…そりゃどうも」


放浪「が、悪あがきもここで終いだ」

竜貴「…何…っ！？」

放浪「俺のターン！ ドローッ！」[手札 4]


放浪「俺は墓地の『妖刀ー不知火』の効果を発動！！」

竜貴「…墓地シンクロか…！！」


放浪「レベル8『戦神ー不知火』に、レベル2『妖刀ー不知火』をチューニング！！」


竜貴「レベル10だと…！？」


放浪「はァアアア…ッ！ 行くぞ！！
ーーー不滅の魂、炎となりて……立ち塞がる者全てを穿つ！！
シンクロ召喚！！ レベル10！
『炎神ー不知火』！！」[ATK 3500]


《炎神
ほむらがみ
－不知火
しらぬい
/Shiranui Sunsaga》 †
シンクロ・効果モンスター
星１０/炎属性/アンデット族/攻3500/守 0
アンデット族チューナー＋チューナー以外のアンデット族モンスター１体以上
自分は「炎神－不知火」を１ターンに１度しか特殊召喚できない。
(1)：このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。
自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、
アンデット族Ｓモンスターを任意の数だけ選んでエクストラデッキに戻す。
その後、戻した数だけ相手フィールドのカードを選んで破壊できる。
(2)：自分フィールドのアンデット族モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分の墓地の「不知火」モンスター１体を除外できる。



竜貴「……！！」


放浪「炎神の効果発動ォ！ 除外されている戦神ー不知火、そして墓地の刀神ー不知火をエクストラデッキに戻し、ゼピュロスとドラグニティアームズーレヴァテインを破壊する！！
〝不知火流 炎月斬〟！！」


炎神が炎を纏った刀を一振りすると、ゼピュロス、そしてレヴァテインの身体が灼熱の炎に包まれる。

レヴァテイン『…ッ！？ 貴様ァァァ…ッッ！！』

竜貴「……ッ」

明日人「先輩！」

放浪「…終わりだ……炎神ー不知火の攻撃！！
〝不知火流奥義・紅蓮爆砕刃〟！！」



竜貴「ーーーッッッ！！！」


竜貴（…キョーコ……すまねぇな……俺の“魂”は…もうーーー）




竜貴【LP 600→0】










竜貴「…」



明日人「……うそ…だろ…」


放浪「次はお前だ、植物園のガキ。
ーーーと言いたいところだが、お前みたいな雑魚と戦う意味は無い。とっとと失せるんだなーーーー」


明日人「…んで…だよ…ッ！！」


ダメだ…！ 声が、かすれて…！！
なんでだよ…ッッ！
恐怖でか！？ 絶望でか！？ それとも俺がこんなにも無力だからか！！？


明日人「……くっ……そ…！！！」










＊




時は少し巻き戻り…


〜森林エリア〜結維side








To Be Continued…




《次回予告》


何かを得るには、常にリスクが付きまとう。


次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:６８ 左腕の代償


『代償』を負わなければ、欲を満たすことなどできないんだ。