DRAW:０２ バーニングドロー！　作：人喰い

火群「剛田！ 俺とデュエルしろ！ そして俺が勝ったら、お前は今までのような横暴は一切しないと誓えぇ！」

俺が宣言すると、クラス中が静寂に包まれる。
あれ？ 俺ってこんなキャラだったか？
ってゆーか、つい勢いでデュエル申し込んじゃったけど……どうしよう。俺、今デッキ持ってねぇぞ。

剛田「何ぃ？ デュエルだと？ お前もデュエルやってたのかよ？」

火群「いいや、俺はデュエルはしたことないぜ。 もっとも、クラスメイトのほとんどがやってるから、ルール位は分かるけどな」

俺はあえて嘘を憑き、初心者ぶって剛田を油断させることにした。
この学校に、二年前の事件以前の俺を知るやつはクラース以外にはいない。多分クラースなら俺の嘘に合わせてくれるだろう。

明日人(火群……？ 嘘なんか憑いて、どういうつもりだ？)

剛田「へっ、そうかよ。じゃあ、デッキはどうするんだよ」

火群「それはだな……」

キーンコーンカーンコーン

俺の言葉を遮るように、チャイムが鳴り響いた。
チャイムGJ。

火群「チッ。HRが始まっちまうな。 デュエルは明日だ！ それまでにデッキは用意してきてやる！」

この調子だと、俺がまるでかませみたいに見えるが、きっと気のせいだ。


日直「起立───気をつけ。礼」

みんな「お早うございまーす！」

日直「着席」

ガタガタっ…ガタッ！

席に着くと、隣の席のクラースが何やら小声で話しかけてきた。

明日人「おい火群……さっき嘘憑いたのは油断を誘うためなのか？」

火群「流石に感がいいな。説明する手間が省けたぜ。 っていうかお前も、明らかにデュエル初心者の手付きじゃなかったけどな……いつからやってた？」

明日人「な、何の事かな〜」

火群「………まあ、無理に話さなくていいけどさ。別に」


その後俺たちは、いつも通りの授業をいつも通りに受け、今日の授業は全て終わった。

キーンコーンカーンコーン

火群「あぁ〜〜終わった終わった〜」

明日人「今日の数学の小テストは難問ばかりだったな……」

火群「へ？ 数学？ 小テスト？ 何それ美味しいの？」

明日人「何でだよ！ お前バリバリ集中してただろ！？」

火群「作戦練ってたんだよ。明日のデュエルの」

明日人「お前な……」

火群「でも、俺やっぱり思うんだけど……例えばさ、あの紙に正解を書けたとして、一年先十年先変わるのかな…？」

明日人「何を言ってるんだお前は……」

そんな感じでいつものようにダベりながら、俺たちはそれぞれの家に帰った。


＊
ー自宅ー

火群「ただいま〜……って、誰もいないのか」


ー火群の部屋ー
火群「……んしょ……っと。お、あったあった。……俺の、デッキだ」

手にするのは実に二年ぶりだ。

火群「………ッ！ くぅっ、はぁ……はぁ……」

デッキを手にした途端、あの時の恐怖が涙となって俺の頬を伝う。
辛い。苦しい。デュエルなんか申し込まなければ良かった。
でも───

火群「逃げてばっかってのは……卑怯だよな……」

俺は無意識の内に、デッキをシャッフルしていた。
そして、勢いよく。

過去を、断ち切り。

カードを、引いた。

火群「ドロォーーーッ！！！」

俺はもう、逃げたくない。
あの時の事件からも、俺自身に眠る謎の力の正体からも。
涙も一瞬にして、乾く。

火群「…………！？」

俺は引いたカードを見て、驚く。
俺が引いたカードは、今朝、夢の中で出会った青年に貰い受けたカードだった。

火群「夢じゃ……なかったのか……？」

そしてそのカードを見ながら、俺は言う。


火群「───ダンディ……ライオン」


＊
〜翌日〜
ー黒髭中学ー

俺と明日人が２－１の教室に入ると、中央の座席の前で剛田が腕組みをして待ち構えていた。

剛田「火群ぁ！ この俺様から逃げずにやってきたことは褒めてやるぜぇ」

火群「そいつはこっちのセリフだぜ」

剛田「ところで、デッキは用意できたんだろうなぁ」

火群「勿論だ」

剛田「へっ！(どうせ詰め合わせのデッキだろ。 俺様が昨日組んだーー《禁止カードデッキ》の足元にも及ばないぜ……)」

明日人「火群、頼むぞ……！」

周りを見渡すと、やたらと観客が多い。 他クラスのやつも結構いるみたいだが、何やらざわついている。

観客「ざわ…ざわ…」

火群「よし、デュエルスタンバイ！」

タッ
タッ

とは言っても、デュエルディスクがあるわけではないので、デッキを机の上に置くだけだ。

火群「互いのデッキをシャッフル！ 初手札は５枚！」

『デュエル！！」

火群 LP:4000
剛田 LP:4000

剛田「先に攻撃できた方が有利だからな！ 先行はお前にやるよ！」

火群「ありがたく受け取っておくぜ！ 俺のターン！」

二年のブランクなんて、俺には関係ない！ もう逃げないって、決めたんだ！

火群「ドロー！！」

カードを引いた指先から、かすかに火花が散る。

火群「俺は、『炎王獣 クベーラ』を、攻撃表示で召喚！」

『炎王獣 クベーラ』
☆3/炎属性/獣戦士族/攻 1600/守 200 効果モンスター
自分フィールド上の「炎王」と名の付いたモンスターが、カードの効果で破壊された時、このカードは手札から特殊召喚できる。
このカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを１枚ドローする。

火群「一ターン目はアタックできない。カードを二枚伏せ、ターンエンドだ！」

市瀬 火群 LP:4000
場:炎王獣 クベーラ/攻 1600
伏せ:2枚/手札:3枚

剛田 武 LP:4000
場:なし
伏せ:なし/手札:5枚

剛田「俺様のターン！ ドロー！」

剛田はカードを引いた瞬間、ニヤリと笑った。
何だ……一体何を引いた……？

剛田「俺様の引いたカードはこれだ！『ハーピィの羽箒』！」

火群「なん……だと……？」

『ハーピィの羽箒』通常魔法
相手フィールド上の魔法罠カードを全て破壊する。

明日人「おい！ そのカードは禁止カードのはずだろ！ このデュエルは中止だ！」

剛田「おいおい、勘違いすんなよ……禁止カードが禁止されているのは、あくまで公式デュエルの中だけだぜ！」

明日人「何……！？」

火群「……大丈夫だ。問題ない。それ位のハンデは別に構わないぜ」

剛田「……因みに言い忘れてたが、俺様が勝ったら、お前は一年間俺様の犬だ！！」

火群「ハァ！？ふっざけんな！！」

剛田「おっと、俺様のターンだったな。 俺様は、ジャイアントオークを攻撃表示で召喚！ 火群の雑魚モンスターに攻撃！！」

火群「くっ……」

市瀬 火群 LP:3400

火群「雑魚モンスターなんて言うんじゃねぇ……俺の、仲間を。 クベーラが破壊されたことにより、デッキからカードを１枚ドローする」

剛田「けっ、くだらねぇ。ジャイアントオークは効果で守備表示に。俺のターンはこれで終わりだ」

市瀬 火群 LP:3400
場:なし
伏せ:なし/手札:3枚

剛田 武 LP:4000
場:ジャイアントオーク/守 0
伏せ:なし/手札:4枚

火群「俺の……ターン」

ドクン、ドクン、ドクン！
来る……俺の中の、あの力が……！！

明日人「火群……？ なんか様子がおかしいぞ……」

火群「ドローッ！」

ゴオォッ！

俺がカードを引いた瞬間、一瞬、本当に一瞬だが、俺の右手が真っ赤に燃えた。

俺は引いたカードを目で確認するまでもなく、発動する。
見なくても、わかる。
長年使い続けてきた、俺のデッキのキーカード。


火群「魔法発動───『炎王の急襲』！！！」



To Be Continued…



〜おまけ〜

☆《今日の注目カード》☆
な〜にっかな〜、な〜にかな〜♫
本日は、これっ！ テレンっ♫
〜ー〜ー〜ー〜ー☆ー〜ー〜ー〜ー〜ー
*ﾟ▽ﾟ)/☆《ハーピィの羽箒》☆ヽ(´o｀;
〜ー〜ー〜ー〜ー☆ー〜ー〜ー〜ー〜ー
*ﾟ▽ﾟ)「相手フィールド上の魔法罠カードを全て破壊するよ！ 凶悪な効果だね！ 剛田くんは今日こそ真面目にデュエルしてくれると思ったのに……残念だよ！」
(´o｀;「ホントに剛田はゲス野郎だな」