DRAW:２０７命を燃やせ！-爆炎同調-　作：人喰い

(207)



〜YAGAMI本社ビル・司令室〜


シルバ「ーーーーッッ…！」

人工衛星の映像が手元のモニターに表示され、シルバは思わず息を飲む。

爽香「…うわっ！ なんですかこれっ！？」

鈴音「神星樹の周りに……無数のーーーー穴……？」

横から顔を覗かせる爽香と鈴音も驚き眉を上げる。
『穴』と、簡単に鈴音が呼んだそれは、火群達のいる神星樹の周囲にいくつも空いており、ブラックホールのように外のものを吸い込んでいるようだった。


シルバ「……一方通行の次元の歪みができているというのか……っ…？」

爽香「…！！ じゃあ、そこから終焉の焔の奴らは中へ……！？」

鈴音「………可能性は高いわね」

原因を探るため、即座にシルバは上空を旋回するヘリコプターの乗組員に通信を繋いだ。

シルバ「……俺だ」


『……シルバさん！ ちょうど良かった、こちらからも今連絡しようとしてたところでーーーー』

シルバ「状況はどうなっている」

『ーーこちら側からは、どこからともなく現れ続ける黒ローブを纏った人間数名と、10体以上の決闘機兵が穴の中に入っていくのを確認してます！！ 恐らく、終焉の焔の人間かと！！
我々ではこれ以上近づくことができません！！』

シルバ「……了解した。引き続きヘリからの監視を頼む」

この様な“穴”を空けられるのはマインしかいない。しかし力の消耗も激しいはずだとシルバは考える。
リスクを犯してでも部下の助けが必要なのは明らかで、それだけマインも慎重に迎え撃つつもりという訳だ。
更には侵入を邪魔されない様に黒焔で姿を眩ましていてはこちらからも手を出し辛いーーーー

シルバは眉を寄せ、次はYAGAMI本社ビルから数10メートル離れたビルの屋上で待機している決闘者の一人に通信を繋ぐ。

シルバ「…俺だ。状況を確認したい」


『ーーーーこちら、ロシア代表「イヴァン=クドリャフカ」。
軍師シルバ、状況を報告します』


シルバを『軍師』と呼ぶ青年は、シルバとはかつての上司と部下の関係に当たるロシアの若き決闘兵ーーー『イヴァン=クドリャフカ』。16歳。

『…ビルの周囲に大量の黒焔が出現、街へと向かっています。あらかじめ指示があった通りに、決闘者達は周囲を囲うように配備しました。現在、数人が既に黒焔と戦闘中』

シルバ「……わかった。
イヴァン、お前のすべき事はただ一つだ。
ーーーーー発砲を許可する」

その一言を受けイヴァンは１秒目を瞑り、答えた。


『ダー！(了解)』


言い切る頃には、スナイパーライフル型の決闘盤を神星樹に向けて構え、スコープを覗くイヴァン。
YAGAMIビルより3階層分低いビルの屋上から、そのYAGAMIビルの屋上にそびえ立つ神星樹までの距離はおよそ300メートル。
神星樹の周囲には黒き焔が霧の様に視界を遮る。


イヴァン「俺に発砲を許可するとはなーーーーーできた軍師だ」


シルバへの尊敬の念を込めた独り言の直後、スコープ越しの彼の視界に一瞬映った機兵の脚部ーーーーー戦場で培われたその眼はそれを見逃さなかった。


イヴァン「目標捕捉ーーーーーShoot‼︎‼︎」


掛け声と共に決闘盤の銃口から放たれた１枚のカードは、精霊の力を纏う事で物理法則を無視し空を切る。
0.5秒後には黒焔を突き抜け、神星樹に空いた穴へと向かう決闘機兵の脚部を撃ち抜いた。


イヴァン「ーーーHIT.
人型決闘機兵の脚部を破壊、墜落を確認」

無線をオンにし、状況を報告。シルバはそれを受け、

シルバ『ーーーーよくやった。流石ロシアの決闘軍が誇る若き天才スナイパーといったところか。
墜落した決闘機兵は待機中の決闘者に回収に行かせ、ビル内のラボで解析をする』

イヴァン「……了解。自分は直ちに移動し、ポイントFにて再び狙撃に移ります」

シルバ『よろしく頼む』

シルバはイヴァンとの通信を切り、座席へと腰掛ける。


爽香「………」

イヴァンの狙撃を映像で見て、いつになく真剣な表情の爽香。しかし程なくして、

爽香「…凄い人もいるもんですねぇ……」

と、呆気にとられた様子で肩をすくめる。

鈴音「…これで中にいるみんなの負担はかなり減りそうね」

爽香「……けど、あのイヴァンってロシア人の子一人だけじゃ、流石に撃ち落とせる決闘機兵の数も限られてきますよね」

爽香は心配げにシルバに目線をやるが、シルバの表情は至って冷静。それもそのはず、

シルバ「……心配は無用だ。
ビルの右側はイヴァン一人で充分カバーできる。そしてビルの左側には、旧友が助っ人を寄越してくれた」

鈴音・爽香「「……旧友…？」」

声を重ねて首を傾げる二人に、シルバは引き出しから取り出した一通の手紙をひらつかせる。





差出人の名はーーーーー跡部 慎之介。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２０７ーーー
《命を燃やせ！-爆炎同調-》















【Side 火群】


〜生命の樹 内部・『基礎の間』〜


火群【LP 8000】
(モンスター)
『炎王獣 ヴィシュヌ』[ATK 2400]☆5 チューナー
『炎王獣 ガネーシャ』[DEF 200]☆4
伏せ:0
手札:4
墓地:クリシュナx1 幼炎王獣ガルドニクスx1


真和【LP 8000】
(場)
なし
伏せ:0
手札:6
墓地:0


◉TURN ０２◉


真和がスタンバイフェイズに入ると同時に、火群のフィールドに炎の帯が駆け巡る。

真和「……何をするつもりだ…？」

火群「ーーーーこの瞬間、『炎王獣 ヴィシュヌ』の効果発動！！」


②:相手ターンに発動できる。このカードを含む、自分フィールドのチューナーとチューナー以外のモンスター1体以上を破壊し、破壊したモンスターの元々のレベルの合計と同じレベルを持つ炎属性のＳモンスター１体を、エクストラデッキからＳ召喚扱いで特殊召喚する。


火群「シンクロチューナーであるヴィシュヌを含む場のモンスターを破壊しーーーーシンクロ召喚を行う！！！」


真和「……！！ 僕のターンにシンクロ召喚だと……ッ…！？」

フィールドを舞う炎の帯はいくつかの輪となって、炎纏う星となったヴィシュヌとガネーシャがそれぞれ連なるーーーーー


火群「ーーーー白炎の魂、その身に灯しーーー」

ニクス「ーーーー“生命の焔”よ全てを包めッ！！」


星の合計は９。
紅蓮の炎はやがて白く輝き、真紅の翼へと宿ってゆく。

そして火群とニクス、二人は重ねた拳を高く突き上げ、


火群「俺たちは、止まらない」

ニクス「止まるわけにはいかないのだ」


逆巻く白炎の中で力強く叫んだ。




火群・ニクス「ーーーーー〝バーニング・シンクロ〟ォォォオォォオォォッッッ！！！！」




白炎纏いし不死鳥は舞い上がり、翼を広げ光り輝くーーーーー


火群「ーーーー現れろ！！
『炎王神獣 アニマ・フェニックス』！！！」


『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[DEF 2700]


《炎王神獣 アニマ・フェニックス》＊Ph.X Original Cards
シンクロ・効果モンスター
星９/炎属性/鳥獣族/攻 1700/守 2700
炎属性チューナー+チューナー以外の炎属性モンスター１体以上
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。このカード以外の自分の手札・フィールドの炎属性モンスター1体を選んで破壊し、自分はそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。その後、自分の墓地の「炎王獣」モンスター1体を選んで特殊召喚できる。
②:このカードの①の効果または相手の効果で自分がダメージを受けた時、自分のライフが6000以下の場合に発動する。相手は1000LPを失い、自分は1000LP回復し、このカードの攻撃力は自分が受けたダメージの数値分アップする。
③:S召喚したこのカードが効果で破壊された場合に発動できる。自分フィールドのモンスターを全て破壊し、自分の墓地の「ガルドニクス」モンスター1体を選んで特殊召喚する。


真和「……終焉の焔の兵3人を1ターンで焼き払ったという、白き炎の不死鳥か…」

真和がその姿をじっくりと観察する間も無く、不死鳥は翼に宿した炎を激しく燃え上がらせる。


火群「S召喚したアニマ・フェニックスの効果！！
そして破壊されたヴィシュヌとガネーシャの効果発動！！」

ガネーシャ
(2)：このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
「炎王獣 ガネーシャ」以外の自分の墓地の炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。


ヴィシュヌ
③:このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合、自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは以下の効果を得る。


チェーン③『炎王獣 ガネーシャ』
・墓地のクリシュナを蘇生

チェーン②『炎王獣 ヴィシュヌ』
・アニマ・フェニックスに効果を与える

チェーン①『炎王神獣 アニマ・フェニックス』
・自身以外の手札、フィールドの炎属性を破壊し、自分はその攻撃力分ダメージを受ける。その後、墓地の炎王獣1体蘇生。


火群「ガネーシャの効果で、墓地のクリシュナの効果を無効にして特殊召喚！」[DEF 200]

火群「…続けてヴィシュヌの効果によりアニマ・フェニックスに効果を与え、アニマ・フェニックスの効果で手札の『炎王獣バロン』を破壊する！！」

火群の手札に炎が灯り、バロンは墓地へと送られる。直後、その炎は火群の身体を包み込んだ。

火群「……そして俺は、破壊されたバロンの元々の攻撃力分ーーーー1800のダメージを受ける…！
……ぐ…っ…！」【LP 8000→6200】

真和「……この僕を前にして自らのライフを削ってくるか……」

火群「…更に！ 墓地のガネーシャを再び特殊召喚！！」[DEF 200]

ここまでの効果処理を経て、真和は眼鏡に指を当て、ここからのゲームプランをしばし考える。


真和「……」

眼鏡が光り、その奥の瞳が火群を射抜くーーーー

火群「……っ…！」

僅かに気圧される火群を更に追い込むように、真和はカードをプレイし始めた。

真和「ーーーーペンデュラムゾーンに『ブンボーグ００５』、『ブンボーグ００６』をセッティング…！！」

魔法・罠ゾーンの両端に、ペンデュラムカードがそれぞれセットされる。

『ブンボーグ００５』
[♦︎10]
9
〜
2
[♦︎1]
『ブンボーグ００６』


火群「…ペンデュラム……八神社長の【クリフォート】と同じーーーーー」

ペンデュラムを扱うデッキと直接戦うのは初めてだったが、八神本社ビルーーーー神託の間にて行われた終焉の焔の首領・マインと、そのマインを生み出した父・八神 コウとの決闘を目の当たりにしたことで、その強さは火群の胸にしっかりと刻み込まれていた。

真和「…これで僕はレベル２から９のモンスターが同時に召喚可能となったーーーーーペンデュラム召喚！！」

宣言と共に、光の弧を描き振り子は揺れる。

そして上空に開いた空間の中から、２体のモンスターが現れる。

手札→メインゾーン
『ブンボーグ００２』[ATK 500]
『ブンボーグ００６』[ATK 500]




真和「ーーーー特殊召喚成功時、『ブンボーグ００２』、『ブンボーグ００６』それぞれの効果発動！！」


《ブンボーグ００２
ゼロゼロツー
/Deskbot 002》 †
効果モンスター
星２/地属性/機械族/攻 500/守 500
(1)：このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「ブンボーグ」カード１枚を手札に加える。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
このカード以外の自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は５００アップする。


《ブンボーグ００６
ゼロゼロシックス
/Deskbot 006》 †
ペンデュラム・効果モンスター
星６/地属性/機械族/攻 500/守 500
【Ｐスケール：青１/赤１】
(1)：自分は「ブンボーグ」モンスターしかＰ召喚できない。
この効果は無効化されない。
【モンスター効果】
「ブンボーグ００６」の(3)のモンスター効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、
フィールドのモンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの表示形式を変更する。
(2)：このカードの攻撃力は、
自分のエクストラデッキの表側表示の「ブンボーグ」モンスターの数×５００アップする。
(3)：このカードがＰゾーンで破壊された場合、
自分の墓地の「ブンボーグ」カード１枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。


チェーン②『ブンボーグ００６』
・アニマの表示形式を変更。

チェーン①『ブンボーグ００２』
・デッキから「ブンボーグ」カード１枚を手札に加える。



火群「…っ………」

モンスター効果は場のガネーシャの効果で無効にできるが、止められるのはチェーン２で組まれた００６の効果だけだ。

火群「……ここでガネーシャの効果は使わない」

召喚権も残っている以上、００２でサーチしてくるのは恐らく、召喚時にデッキから『ブンボーグ』モンスターを特殊召喚する効果を持つ『ブンボーグ００３』だろうという読みで、火群はその００３を止めるためにガネーシャの無効効果を温存する選択を取った。

火群（……スッキー先生や剛田たちからは、『００３』と『機械複製術』があのデッキの展開の要となるキーカードだって言われたからな…）

仮に００３を無効にされる事を嫌って、ガネーシャを戦闘破壊してから展開するようなら、このターンのライフは守れる。
それに加え火群の場には、ヴィシュヌの炎を受け継いだアニマ・フェニックスーーーーー


火群（……さぁ……ッ…かかってきやがれ……！！）

真和「……ならば、００６の効果でアニマ・フェニックスを攻撃表示に。
そして００２の効果でデッキより『ブンボーグ００３』を手札に加える」[手札 3]

『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[ATK 1700]


真和「００２が場に存在する限り、他の機械族モンスターの攻撃力は５００上昇する」

『ブンボーグ００６』[ATK 500→1000]

真和「……そして僕はまだこのターン、通常召喚を行なっていないーーーーー『ブンボーグ００３』を召喚！！」[ATK 500→1000]


《ブンボーグ００３
ゼロゼロスリー
/Deskbot 003》 †
効果モンスター
星３/地属性/機械族/攻 500/守 500
(1)：このカードが召喚に成功した時に発動できる。
デッキから「ブンボーグ００３」以外の「ブンボーグ」モンスター１体を特殊召喚する。
(2)：１ターンに１度、自分フィールドの「ブンボーグ」モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、
自分フィールドの「ブンボーグ」カードの数×５００アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。


真和「……００３が召喚に成功した時、効果発動！
デッキから同名以外の『ブンボーグ』１体を特殊召喚する！！」

非常に強力な展開効果、これで再び００２を特殊召喚されては、またサーチ効果を使われ更なるアドバンテージを稼がれてしまう。
それは流石に見逃せるはずもなく、ガネーシャの炎が熱く燃え上がる。

火群「ガネーシャの効果発動！！ １ターンに１度、モンスター効果の発動を無効にする！！」

紫色の炎が００３を囲い、効果を無効にした。

火群「その後、場のクリシュナを破壊する！」

場のクリシュナが破壊された事で、火群の墓地に炎が灯る。

火群「この瞬間、破壊されたクリシュナの効果発動！！」


《炎王獣 クリシュナ》＊Ph.X Original Cards
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻 1200/守 200
このカード名の②③の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分フィールドに表側表示で存在する「炎王」モンスターが効果で破壊された場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから炎属性チューナー1体を特殊召喚する。この効果の発動後、自分は炎属性モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
③:このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地の「炎王獣 クリシュナ」以外の「炎王」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


火群「墓地の『幼炎王獣 ガルドニクス』を手札に！！」[手札 4]

真和は想定通りと言わんばかりにその様子を見つめ、

真和「………このままバトルフェイズに移行する」

火群「…！」

真和「００3！
ガネーシャを攻撃しろ！」


『ブンボーグ００３』
[ATK 1000]
ーーーVSーーー
[DEF 200]
『炎王獣 ガネーシャ』


００３の攻撃によりガネーシャは破壊され、火群の場に残るはアニマ・フェニックスのみとなる。

火群「……くっ……！」

真和「…ワンターンキルを恐れ、低い守備力を晒した事が仇となったようだな」

真和は皮肉げに呟き、

真和「…続けて、００６でアニマ・フェニックスを攻撃！！」

不死鳥への攻撃を宣言した。


『ブンボーグ００６』
[ATK 1000]
ーーーVSーーー
[ATK 1700]
『炎王神獣 アニマ・フェニックス』


火群「……！！」

００３のもう一つの効果を事前に聞いていた火群は身構える。

真和「ーーーーこのダメージ計算前、００３の効果発動ッ！
００６の攻撃力・守備力を、ターン終了時まで場の『ブンボーグ』カードの数×５００上昇させる！」

場のブンボーグは、

メインゾーン
００２
００３
００６

Pゾーン
００５
００６

計５枚。よって上昇値は2500。


しかしその瞬間。


真和「……ッ！！」


００６と対峙するアニマ・フェニックスの纏うヴィシュヌの炎が、フィールドを包み込む。


火群「ーーーーーヴィシュヌから与えられたアニマ・フェニックスの効果発動ッッ！！」


⚫︎1ターンに1度、相手がカードの効果を発動した時に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。その効果は、「お互いに500ダメージを受ける」となる。


火群「…ブンボーグ００３……そいつの効果を書き換えさせて貰うぜ！！」

００３は白き炎に覆われ、身動きを封じられてしまう。やがてその炎は周囲にまで広がり、火群と真和、両者に襲いかかる。


火群「……ぐっ…！」【LP 6200→5700】

真和「……！ この程度……ッ」【LP 8000→7500】


火群「ーーーまだ終わりじゃない！！ 俺が効果ダメージを受けた事で、アニマ・フェニックスの強制効果が発動！！」


②:このカードの①の効果または相手の効果で自分がダメージを受けた時、自分のライフが6000以下の場合に発動する。相手は1000LPを失い、自分は1000LP回復し、このカードの攻撃力は自分が受けたダメージの数値分アップする。


火群「……俺のライフは6000以下…！
よって、生命の焔が先生のライフを吸収し、受けた痛みの分だけ……アニマ・フェニックスの攻撃力はアップする！！
〝ホワイト・チャージング・フレア〟！！」


真和「……ッッ」【LP 7500→6500】

火群「……これでライフは並んだ…！」【LP 5700→6700】


『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[ATK 1700→2200]


火群「ーーーーそして、一度ダメージステップに入ってしまった以上、攻撃は止まらない！！
…迎え撃てッッ！！ ニクス！！！
ﾊﾞ-ﾆﾝｸﾞ・ﾗｲﾌﾊﾞ-ｽﾄ
〝生命の白焔翼〟！！」


大きく広げた翼から放たれる無数の熱線。
攻撃力上昇効果を受けられなかったブンボーグ００６にはとても受けられるはずもなく、炎の中へと消えていった。


真和「……がッッ……！ ふァ…ッ…！！」【LP 6500→5300]

胸を押さえその場に膝をつく真和。火群はそれを哀れむような目で見下ろしながら、

火群「……先生……やっぱりーーーー」

小さくそう、呟いた。

真和「…どういう、意味だ？」

虚勢を張っていても、なんとなくだが火群にはわかる。

火群「……スッキー先生との決闘での傷が、まだ癒えてないんじゃ……っ…」

真和「ーーーーっ……！」


黒髭中学での、教師同士の決闘。
その決着は、“守る為に戦う”好の勝利で終わったのだが、双方共にまともに動けなる程のダメージを負ったはずだった。
それからまだ日もそれほど経っておらず、精霊の力を使い治療を受けたものの、完全回復とまではいかなかったのである。

真和「……だったらどうした」

火群「…俺……わかんないよ…。
なんで先生がそこまでしてマインのために戦うのか……」

火群の口をついて出たのは、純粋な疑問。

真和「………」

その疑問に真和が答えることはなく、眼鏡に手を当て口を結ぶだけだ。

火群「……それだけじゃない……。精霊のカードが眠る黒髭中学に、終焉の焔の宮本先生と……柏木先輩が居たことも偶然じゃないんだろ……っ…！？」

真和「……」

火群「……教えてくれよ…ッッ…！ 先生には、まだ聞きたい事が山ほどあるんだ…ッッ！！」


真和「………ならば」

そこでようやく、真和は紡いでいた口を開く。

真和「…僕を決闘で殺してみせろ。市瀬火群」

言いながらゆらゆらと立ち上がり、決闘盤を再び構える。

火群「……殺…す……っ…？」

そこで火群は息を飲み、その言葉の意味を咀嚼し、考える。

真和「……恐らくこの闇のゲームに敗北すれば、僕の命はそう長くも保たないだろう……」

火群「……！！」

真和「…だから万が一にでも、市瀬が僕との決闘で１００点満点を取れるというのなら……。
……正義を貫くためにその手を汚す覚悟があるというのならーーーーーどんな質問にでも答えてやるさ」

火群「…っ……！」

火群の手には、僅かな震え。

真和「………今更“できない”などと言うのも構わない……が」

考える度に火群の中に不安や恐怖が捻れ渦巻き離れない。

火群（…殺す……なんて……っ）


真和「……その場合、お前は仲間たち全ての期待を裏切り、ここでその使命を終える事となる」


火群「ーーーーっっ…」


真和「………僕のターンはこれで終了だ」[手札2]


◉TURN ０３◉


火群（……みんなの期待をーーーーー）

俯く火群の手を、ニクスは両手で優しく包み、笑いかける。

ニクス『………ホムラ』

その表情は、ニクスとしてのそれではなく、凛々しくも可憐なーーーー火群の姉『市瀬 炎花』のものだった。


火群「……姉さん」

ニクス『…また迷っているな。ホムラ』

火群「………ごめん…」

ニクス『…謝る事じゃないさ。
何度も壁にぶちあたって、その度にそれを乗り越える。
ーーーーそれでいい。それがいい」

火群「…！」

ニクス『……今までもそうしてきたように、これからもそうすればいいだけの話だ』

火群「……はは…、そう……だったよなーーー」

ニクス『……次に私が言う事はわかるな？
ホムラーーーー』



火群「ーーーーっ……！
ああーーーーー」




成すべきことをーーーー成せ。



火群「……俺のーーーーターン！！！」





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２０８ “エクストラ・マジック”






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙