DRAW:１１１ 食材トレジャー！　作：人喰い

(111)



明日人「ーーー火群。俺たちが目を洗いに行ってる間に何があった…」

火群「…巨大イカを倒したら子供のイカが顔を出したと言うか…」

パラソルに腕ごと縛られ正座をしながら応える。

明日人「…いや、意味わかんねーよ…」

呆れ果てるクラースをよそに、栗須は海の方を眺めていた。

栗須「…あれ、なんかデカい影がこっちに近づいて来てないか？」

火群「…！？」

明日人「…え？ マジで子供イカ…？」


和泉「ーーーあ、倉川くんに古宮くん。戻って来てたんだ。……って、みんなどーしたの？」

脇から和泉たち女子陣も集まって来た。

火群「……あれを見てくれ！ デカい影がこっちに…！！」

結維「……！」



ｻﾞﾊﾞｱｧｧｧｯ‼︎



イカ「ーーーッッッ！！！」


水面から姿を現したのは、またしても巨大イカだった。


火群「…さっき俺が倒したのよりもデカいぞ！！？」

明日人「…なにっ！？」

火群「…よし…！ もう一度俺がぶっ飛ばして…！ぅぐ！」

だが固く縛られた身体では立ち上がることもできず、つんのめる。

明日人「…まぁまぁ、おめーはそこでゆっくり見学してなって。ここは俺がやるぜ」

栗須「…なぁにカッコつけてんだテメェ！ ここは俺に任せな！！」

明日人「あ！？ なんでだよ！ お前が行ったところでアバンで瞬殺ってオチが目に見えてんだよ駄メガネ！」

栗須「うっるせぇやって見なきゃわかんねーだろ！」

結維「…待って二人とも！ イカの様子がおかしい…！ 離れて！」

明日人・栗須「……！？」


よく見てみると、イカの動きが鈍い…？

火群「！！」

それだけじゃない、イカの中央に、線が……！？


ｽﾞｽﾞｽﾞ…


イカの身体はその線を境にして上下にズレていき……大きく二等分され、再びその姿を海中に潜めた。

ｻﾞﾊﾞｧｧ‼︎

火群「……！」

明日人「イカが……ッ！」

栗須「真っ二つに…！！」



そして立ち昇る水飛沫の後ろから、冷淡な声。
“それ”は決闘盤とカードを構え、海中から飛び上がっていたのだ。







戒「ーーー歯応えの無いイカだ。
干しスルメになって出直してこい」
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１１１ーーー
《食材トレジャー！》
















メアリー「ーーーお、終わったみたいね♪」

栗須「随分と長いトイレでしたね」

秒でヘッドロックを決められる栗須。

栗須「ーーー！！！」

白目を剥いてるがどこか幸せそうだ

結維「…というかそのセリフ……。巨大イカの出現を知っていたかのようですが…」

メアリー「あっははは…っ、実はねーーー」



〜〜〜



火群「ーーー町長に巨大イカの討伐を依頼されていた！？」

鈴華「……！！（…町長…っ……！)」

メアリー「…YES！ 最近急に現れたらしくて、毎日あの時間になると浅瀬の方まで出てくるのよ」

火群「先に言ってくださいよっ！」

メアリー「それでもよかったんだけど……普通にやるんじゃ面白くないから、サプライズでみんなの状況対応力を測る形にしたってわけ！」

結維「…なんだか腑に落ちないわね」

メアリー「……で、なんで不死鳥クンは縛られてるわけ？」

和泉「自業自得です」

火群「不可抗力です！」

メアリー「自業自得ならしょうがないか」

どうやら電波が悪いみたいだ。


火群「…そういえば、戒。なんでお前海から出てきたんだよ」

戒「…決まっている。ヤツと海中で決闘していたからだ」

火群「簡単に言うなよ！」

戒「精霊の力をコントロールし、顔と決闘盤、そしてカードに薄い防壁を張れば、水中でもカードは濡れず呼吸も10分は持つ」

火群「…！ そんなことまでできんのか…！」

戒「…そういった“力”のコントロールが少しずつできるようにならないと、ここから先の戦いは厳しいだろう。これはシルバさんの言葉だ」

火群「………！」

メアリー「……（“断罪の剣”……この子、やっぱりかなりの逸材ね…♪）」


雫「………あ、あの。鈴華さん」

鈴華「どうしたの。雫」

雫「…私たち、なんだか場違いな感じじゃないですかね……」

鈴華「……ぅ…、わ、私たちは私たちなりに努力して強くなればいいのですわ」

結維「珍しくまともなこと言うわね、鈴華」

鈴華「…『珍しく』は余計ですわっ！」

和泉「あははは…。
ーーーところでみんな、そろそろお腹空いて来ない？」

和泉のその言葉を聞いて、ふと時間を見てみると、現在時刻は12時を過ぎていた。

火群「…確かに、たくさん動いたしお腹は空いてきたかも…」


メアリー「あ、そういえば斬波くんには言ってなかったけど、ビーチバレーで男子チームが負けたから今日の食事当番は男子全員ってことになってるから！ よろしくぅ♪」

戒「！？」

火群「…わ、わるいな、戒」

明日人「食材とかってどうすれば…」

メアリー「もちろん現地調達だけど…」

戒「！？」

メアリー「あはははっ！ 冗談よ♪ 基本の野菜とか調味料系はワタシの別荘にあるから、それ使って頂戴っ！」

栗須「肉は！？ 魚は！？」

戒「…食いたきゃ自分で取ってこいって事だろう」

メアリー「ワタシ魚介が食べたいなーっ？」

和泉「…わ、私もーっ」

雫「なんだかワクワクしますね…っ！ こういうのっ」

鈴華「私は庶民的なものじゃなければ別に結構ですわ」

結維「その注文は無理があるんじゃない…？」

千愛「私もせっかくだし海の味覚を感じたいわね」

ニクス「私も概ね賛成だ」


火群「…ぐ…っ！ 好き勝手言って……っ！ だから女性は苦手なんだ…！」

明日人「…そんな設定初耳だぞ…」

栗須「…と、とにかく！ うまい飯のための食材探しだ！ 行くぜぇぇええ！！」

栗須はダッシュで砂浜を駆けて行ってしまう。

明日人「…俺も探さなきゃいけない感じだよなぁ…こりゃ」

クラースも頭を掻きながら歩いて行った。

メアリー「別荘の場所はさっき教えた通りだからねーっ！！ 早めに戻ってきなさいよーっ！」


………


メアリー「…それじゃ、ワタシたちは着替えたらそのまま別荘に行っちゃうね♪ 不死鳥クンと斬波クンも頑張ってねーっ」

そして女性陣も行ってしまった…。
ってか二人とも、食材を手に入れんのにそんな遠くに行く必要もねーだろ…。


火群「……なぁ、戒」

戒「……俺も同意見だ」

火群「まだ何も言ってないけど！？」

戒「…この場に留まっている時点で、お前の考えている事などお見通しだ。…どうしてもというなら力を貸してやる」

火群「…なんで上からなんだよ！」

ニクス『…そう言うな、火群。私も手伝う」

火群「……！ なら少し、試してみたい事があるんだけどーーー」

戒「…？」

火群「…あ、けどその前に……この拘束解いてくんね…？」






＊＊＊





ーーー30分後。


〜別荘〜

メアリー「…いやぁ〜、みんなどんな料理を作ってくれるのか楽しみだね！」

結維「…まさか、この食材探しすらも訓練の一環とか…？」

メアリー「…あっははは…？ どうかなー…？」

結維「…はぁ…。一時の油断もできないわ…」


ｽﾞﾝ…ｯ! ｽﾞﾝ…ｯ!


結維「…！？ 何……？ この音ーーー？」

和泉「…何か…近づいてくる…！？」

メアリー「ーーーみんな、外出るわよ！」


ﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯｯ‼︎


結維「……！！！」

千愛「…待って…！ あれって…！？」


ゆっくりと、ゆっくりと、別荘に近づいて来たのはーーー巨大イカの、半身だった。


和泉「…ぎやぁああぁああゾンビぃぃぃっっ！！」

雫「ｱｸﾘｮｳﾀｲｻﾝｱｸﾘｮｳﾀｲｻﾝ」

鈴華「ﾄﾞ-ﾏﾝｾ-ﾏﾝﾄﾞ-ﾏﾝｾ-ﾏﾝ」

結維「…あんたたち落ち着きなさいっ！ よく見て！」

和泉「……ほぇ？」



ｽﾞﾝ…ｯ! ｽﾞﾝ…ｯ!


メアリー「…！ ワオっ！ 誰かがイカを……！」

和泉「引きずって来てるっっ！！？」



ｽﾞﾝ…ｯ! ｽﾞﾝ…ｯ!


戒「ーーーこの程度の距離で…ッ、もうへばったか…ッ？」

火群「ーーーんなわきゃ…っ…！ ねぇだろ…！！
……あれ…っ…？ みんな…、お揃いで…？」




〜〜〜



明日人「……これは……どう言う事だ…？」

火群「……よし…、こっちはしばらく手が空くけど、なんか手伝える事あるか？」

戒「…お前にできることは無い。その辺で遊んでいろ」

火群「それ酷くねーか！？」


明日人「……戻ってきたら戒と火群がなんか庭で作業始めてて、イカの残骸みたいなのも転がってるしよぉ…。
ってかお前ら……っ！ まさかあのイカ運んできたのか！？」

火群「ああ！ 戒に精霊の力のコントロールを少し教えてもらってさ。ニクスの力を借りて身体強化すれば二人で運べない重さじゃなかったぜ」

明日人「…そんな使い方もできるのか…っ！
って、素直に感心してる場合じゃねぇか…！
俺が山まで行って採ってきたこのキノコも使ってくr……」

栗須「どいたどいたどいたぁあぁああっっ！！」

ﾄﾞｺﾞｫ‼︎

突如走って現れた栗須が、明日人に突進し、直撃する。

明日人「おわっっ！？」


ﾄﾞﾝｶﾞﾗｶﾞｯｼｬ-ﾝ‼︎


火群「！！」

戒「！？」

俺たちは作業を止め駆け寄るがーーー

ｸﾞﾆｯ

二人して何かを踏んずけた。
それにより足を滑らせ、全く同じタイミングですっ転ぶ。
どうやらさっきのクラースと栗須の衝突で何かが散らばっていたようだ。

火群「痛…っっつつ〜…！」

戒「……ッ…！ 何を踏んだ…っ…！？」

明日人「おい駄メガネ……ッ！ てめぇふざけんじゃ……」

３人はそれぞれ散らばった“何か”を手にする。

火群「……」

それは黒く、ブヨブヨしていて…。

戒「……」

直径は5センチほどで、長さは20センチあるかないかくらいだろうか。

明日人「……」


ーーーナマコだった。


３人「！！？？」

栗須「……つつ…っ。…ああ！ それ海辺に結構転がっててよ！ 食えんのかわかんねーけど取ってきた！！」

栗須以外の３人は、そんなこと聞いてる余裕などなく、１つ考えられる危機を察知する。が、時すでに遅し。
図らずも“その瞬間”はやってきた。


ーーーﾋﾞﾋﾞｭｩｳｯｯ‼︎ ﾋﾞｭﾙﾙﾙﾋﾞｭｩｩｯ‼︎


ナマコの肛門から、“それ”は放出された。
白くネバネバした、糸状の器官が俺たちに降り注ぐ。




ﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀ…
ｶﾞﾗﾗｯ‼︎


和泉「ーーー凄い物音したけど…！？ だいじょうb………」



‪ーーーそこには、四人の男がいた。‬

全員水着姿で、なぜか皆汗だくで、どういうことか辺りに散乱した大量のキノコとナマコ。
そしてどうしてだろう、その四人の身体中にかかったーーー白濁した粘着物。


和泉「てん、てん、てん、」

その光景を目の前にして、少女は目を丸くして三点リーダーを口にする。


和泉「……えっと…、私は何も見てない。何も見てないよ…？」


ｶﾞﾗﾗｯ‼︎
ﾋﾟｼｬﾝｯ‼︎


引き戸が閉まる音と共に扉の向こうで聞こえた、

「何にもなかったよーっ！ 火群くんが転んだだけみたーい！」

という声が、俺たちの虚しさをさらに加速させた。




火群「………なぁ」

戒「……俺も同意見だ」

明日人「…皆考えることは同じか…」

栗須「……っ…？」


火群・戒・明日人「駄メガネ……とりあえず表でろ」

栗須「ーーーもうすでに外だけど！！？？」






ニクス（……こんな調子で大丈夫なのだろうか……）






To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１１２ 食事、そして訓練




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙