DRAW:０１ 夢の欠片 友への思い　作：人喰い

俺は今日も夢を見た。
過去の、忘れたいトラウマと、砂漠のような場所に迷い込む夢。
一体あれは何だったんだ。

俺「……なんだかな〜」

俺はため息混じりににそう呟き、身体を起こす。
俺の名前は『市瀬 火群(いちせ ほむら)』。黒髭町に住む、ごく普通の男子中学生だ。学校では友達は少なく、比較的浮いているが、これといったいじめを受けている訳ではない。
かつて、デュエルに明け暮れる毎日を過ごしていた時期もあったが、二年前のとある事件が原因で、俺はデュエルをする事に恐怖を覚えるようになってしまった。
ーーー遊戯王 デュエルモンスターズ。
それは、黒髭町で今最も流行っているカードゲームだ。
俺の通う黒髭中学でも、やっている人は多い。

火群「だけど俺はもう……デュエルは二度としない……」

そして俺は今日も、学校へ向かう。

ー黒髭中学ー
２ー１の教室に入ると、誰かがデュエルをしていた。

火群「……(あれは、３組の剛田と……クラースか……？ クラースもデュエルやってたのか)」

クラースというのは、俺の幼馴染にして唯一の理解者。本名は『倉川 明日人(くらかわ あすと)』通称クラース。俺と同じクラスだ。
剛田というのは、いつも威張っている二学年のボス的存在だ。デュエルはそんなに強くなく、負けそうになると暴力で解決しようとする最低なヤツだ。フルネームは『剛田 武(ごうだ たけし)』通称はジャイアンではない。
俺は少し足を進め、なんとなくデュエルの進行状況を確認する。

《倉川 明日人》LP 900
場:ギガプラント(二重済) 攻 2400
伏せ:3枚/手札2枚

《剛田 武》LP 1300
場:なし
伏せ:なし/手札:3枚

火群 (……いまんとこ盤面的に、このデュエルはクラースの優勢って感じかな……まぁ、デュエルは最後の最後まで勝敗はわかんねぇ)

剛田「くそォ！！始めたばっかのクセにぃぃ！！ 俺様のターン！ ドロー！！」

剛田が叫ぶ。

火群 (クラースはやっぱりデュエル始めたばっかりだったのか……てか今時、『俺様』って…)

剛田「俺様のカードはこいつだぁ！！ ゴブリン突撃部隊！ ☆4つにして攻撃力2300の超パワーカードだぜ！」

明日人「……何…！？俺のギガプラントの攻撃力は2400、ゴブリンの攻撃力じゃあ届かない…！」

剛田「そんなことは知ってるぜ！ 俺様は手札から、装備魔法『デーモンの斧』をゴブリン突撃部隊に装備する！ これにより攻撃力1000アップ！」

《ゴブリン突撃部隊》攻撃力3300

明日人「…ッ」

剛田「ギガプラントに攻撃だぁー！！」

火群 (このまま攻撃を食らうとクラースのライフは超過ダメージで0になってしまう。伏せカードは3枚もあるが……)

明日人「リバースカードオープン！ 棘の壁！！ この効果により、相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する！」

剛田「くぅぅ……くそうっ！！」

ガッ！
剛田は明日人の胸ぐらを掴んで、叫ぶ。

剛田「倉川ぁ！ お前、デッキ仕組んでんだろ！ 畜生！」

明日人「仕組んでなんかねぇよ。それに最後はお前がちゃんとシャッフルしただろ」

剛田「うるせぇぇ！！」

ひゅんっ
ガッ！
剛田は強く握った拳を大きく振りかぶり、その拳を明日人の顔面に叩きつけた。
明日人「がぁあ！！ くっ……」

剛田は未だ明日人の胸ぐらを掴んだままだ。

火群「………剛田！！ てめえ！！」

俺はその時、俺の中の燃えたぎる感情を抑える事ができなかった。
俺はもう、自分の目の前で友達が傷つくのを見るのは嫌だった。
『自分以外の誰かを護る』そのためだったら、自分の命さえも投げだせる覚悟だ。
それが、“あの娘”への償いになるとは、思わないが。

剛田「んあ！？ 何だぁ？ 陰キャラの火群ちゃんじゃねえか」

明日人「ほ……むら………」

火群「おい、剛田！」

俺は力の限り、叫ぶ。

火群「俺と……デュエルしろッ！！」

そう言う俺の声は、心なしか震えていた。


To Be Continued…