DRAW:３０ 戒めの斬波⑨-開闢-　作：人喰い

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ありがとう。

















さようなら。

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遊戯王 Ph.X DRAW３０
《戒めの斬波》⑨-開闢-












斬波 無双【LP 3000】
場:『神獣王 バルバロス』[攻 3000]
罠:『スキルドレイン』
伏せ:1枚/手札:3枚

斬波 戒【LP 4000】
場:『聖騎士モルドレッド』@『聖剣カリバーン』[攻 2200]
伏せ:なし/手札:4枚


◉TURN:０２◉



戒「ーーー俺は、『おろかな埋葬』を発動！ デッキの、『BF-精鋭のゼピュロス』を墓地へ送る！」

無双（…ゼピュロス、だと…？）

戒「そして墓地のゼピュロスのモンスター効果、発動！」


《BF-精鋭のゼピュロス》
効果モンスター
星４/闇属性/鳥獣族/攻1600/守1000
このカードが墓地に存在する場合、
自分フィールド上に表側表示で存在するカード１枚を手札に戻して発動できる。
このカードを墓地から特殊召喚し、自分は４００ポイントダメージを受ける。
「ＢＦ－精鋭のゼピュロス」の効果はデュエル中に１度しか使用できない。


戒「俺の場の『聖剣 カリバーン』を手札に戻し、墓地のゼピュロスを守備表示で特殊召喚！」

『BF-精鋭のゼピュロス』[守 1000]


無双「レベル４モンスターが２体………ふん…」


戒「ゼピュロスの効果で俺は４００ポイントのダメージを受ける…！」【LP 4500→4100】

ここはエクシーズ召喚をする絶好のチャンスだ。
だがスキルドレインが張られている以上、どんなモンスターを出したところで、３０００の攻撃力を持つバルバロスの壁を越えることはできない。ならばここは…このカードを使うしかないか……。


戒「俺は、魔法カード『受け継がれる魂』を発動！」


無双「…受け継がれる魂…」


《受け継がれる魂》



このカードの効果で、ゼピュロスを生贄に、モルドレッドの攻撃力を上げれば、バルバロスの攻撃力を上回る事ができる…！


戒「BF-精鋭のゼピュロスを生贄に、モルドレッドの攻撃力はターン終了時まで1600ポイントアップする！」


モルドレッド『こぉぉぉおおぉ……！！』[攻 3300]


無双「………」


問題は無双の場の伏せカード…。あのカードが、おそらく無双のデッキに3枚積みされているであろう『禁じられた聖杯』だった場合、このまま攻撃しても返り討ちだ。
ここはカリバーンをモルドレッドに付け直して攻撃しよう。
スキルドレインが張られている以上、手札に聖剣を温存していてもあまり意味はない。

戒「聖剣カリバーンをモルドレッドに装備！ そしてカリバーンの効果でライフを５００回復！」

モルドレッド[攻 3800]

戒【LP 4100→4600】

戒「これでアタックだ！ モルドレッドでバルバロスを攻撃！」


聖騎士 モルドレッド[攻 3800]
ーーーVSーーー
神獣王 バルバロス[攻 3000]



無双「ぬるいわぁっ！ リバースカードオープン！ 『炎舞-天璇』！！」

戒「炎舞……だと…？」


『炎舞-天璇』
永続罠
このカードの発動時に、自分フィールド上の獣戦士族モンスター１体を選択する。
選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで７００ポイントアップする。
また、このカードがフィールド上に存在する限り、
自分フィールド上の獣戦士族モンスターの攻撃力は３００ポイントアップする。


無双「これにより、バルバロスの攻撃力がターン終了時まで４０００となる！」


神獣王 バルバロス[攻 3000→4000]


戒「なにぃっ…！？ …ぐぁぁっっ！」【LP 4600→4400】


戒「……くっ…そぉ…っ！」


俺の場はガラ空き。おまけに手札はたったの２枚。
『炎舞-天璇』…。あのカード１枚で俺のカード３枚が失われた訳だが、相手の場のカードはそれでも減っていない。天璇は永続罠ゆえに、場に残りバルバロスを強化し続ける。
モンスター効果はスキルドレインによって封じられ、バルバロスを打点越えすることも難しいとなると、魔法罠による除去しか、俺に選択肢は無くなったと言ってもいいだろう。
もっとも無双が、その選択肢を考慮していないはずがない。
………。
…さてどうする。
ここは一つ、賭けに出てみるか。


戒「俺はカードを１枚伏せ、ターンエンドだ！」


斬波 戒【LP 4400】
場:なし
伏せ:１枚/手札:１枚

斬波 無双【LP 3000】
場:『神獣王 バルバロス』[攻 3300]
罠:『スキルドレイン』
『炎舞-天璇』
伏せ:なし/手札:３枚


◉TURN:０３◉


無双「私のターン、ドロー」【手札:4枚】


無双「…魔法カード、『強欲で謙虚な壺』を発動！ デッキの上からカードを３枚めくり、その中から１枚を手札に加え、残りのカードはデッキに加えてシャッフルする」


・『神獣王 バルバロス』

・『炎舞-天枢』

・『強欲で謙虚な壺』


無双「…ここはバルバロスを手札に加えておく」

戒「…くるか…っ？」



無双「………このままバトルだ！ バルバロスでダイレクトアタック！『獣王螺旋』！！」


『神獣王 バルバロス』[攻 3300]

戒【LP 4400】


戒「……くっ…！ がぁああぁああっっ！！」【LP 4400→1100】


無双「私がそんな浅はかな罠に引っかかると思ったか、戒」

戒「………っ！」

無双「その罠は攻撃誘発ではないようだから、恐らくは『激流葬』のような地雷だろう。今トドメを刺しにバルバロスを召喚していれば、このターン特殊召喚することのできない私は、ガラ空きの場でお前にターンを渡してしまう事になる。そうなってはたまらない」

戒「……」

無双「もしその罠が『次元幽閉』のような攻撃誘発であったとしても、私はメインフェイズ２でバルバロスを再び召喚し、次のターンに備える事ができた。何もこの場面で勝ち急ぐ必要はない…」


戒「……ふん。急に説明口調になったな」

無双「…覇者の余裕というやつだ。カードを２枚伏せ、ターンエンド」



斬波 無双【LP 3000】
場:『神獣王バルバロス』[攻 3300]
罠:『スキルドレイン』
『炎舞-天璇』
伏せ:２枚/手札:２枚


斬波 戒【LP 1100】
場:なし
伏せ:１枚/手札:１枚


◉TURN:０４◉


戒「俺の……ターン！ ドロー！」【手札:２枚】


戒「…やはり隙のないプレイングだ。しかし残念だが、無双。貴様の読みは外れている」

無双「……っ…？」

戒「…リバースカード、オープン！『無謀な欲張り』！！」


《無謀な欲張り》
通常罠
自分のデッキからカードを２枚ドローする。
その後、自分のドローフェイズを２回スキップする。



無双「…伏せカードはブラフか…！」

戒「この効果で俺はデッキから２枚のカードをドロー！！」【手札:４枚】


戒「無双……俺は、勝つ！ 絶対に！」


４枚の手札をしっかりと握り、俺は無双を見据える。

戒「もう俺は負けたりしない！ 貴様にも、俺にもだ！」

無双（……その勝利への執念…、やはりお前は私……いや、俺の息子だ…）


無双「………来い！ 我が息子よ、お前の今まで培ってきた全ての戦術を駆使し、お前にしかできないデュエルで、“俺”を満足させてみろぉぉぉおぉぉぉ！」


無双は雄叫びを上げる。
途轍もなく雄々しく、覇気を纏った雄叫びだった。
その鼓動が、波動が、俺にも伝わる。皮膚を通して、血管、筋肉、骨、そして神経にまで伝わってくる。

息子……か。
俺が、無双の…。

俺はこの時ようやく気付いた。
俺たちがしてきたことは、ただの意地の張り合いでしかなかったのだと。
そう。言うなればただの、親子ゲンカ。

俺は秘書に一度敗北し、『記憶抹消』をかけられはしたが、白河と出会い、結果的に俺は俺を取り戻すことができた。
そして再びこの場に立ち、俺は無双と決闘をしている。

『斬波』に決着を付ける為に。


無双は……いや、もうやめよう。
ーーー父様は、そんな俺の想いに全力でぶつかってくれるというのか。
それとも最初から俺を試していたというのか。

息子の想いに全力で答える。

それがーーー親ーー。



戒「うぉおおぉおおおぉおぉぉおおおっっっ！！！」




なら俺は、そんな父親の想いに全力で答える他ない……！



戒「……全力で行かせてもらいます、父様」




＊




無双「………ふん……フハッハハハ！ いいぞ！ いいぞぉぉぉおぉぉぉ！」


父様は笑う。高らかに。
思えば、俺はこの男が声を上げて笑うところを見たことがなかった。
故に、今俺の目の前に広がっている光景は、とても新鮮なものだった。


戒「…父様。俺が勝ったら、聞きたいことがあります」


無双「……ふん！ いいだろう…」


黒ずくめの男たちが言っていた、父様がカードの精霊を集めるために決闘者狩りをしていた事に関してだ。その真意を知らないことには、俺は父様を許せない。


戒「……俺は、速攻魔法『サイクロン』を発動！」

父様の場には２枚の伏せカードと、永続罠が２枚…。
２枚の伏せカードが気になるが、まずはあの忌々しい縛めを断ち斬る！

戒「…スキルドレインを破壊！」

無双「ぬぅぅ…！」


戒「そして『レスキューラビット』を攻撃表示で召喚！」

レスキューラビット[攻 300]

無双「………！！」

戒「その効果により自身をゲームから除外し、デッキから２体の『聖騎士 アルトリウス』を特殊召喚する！」


無双「……くぅっ！ 止むを得ないか！ レスキューラビットの効果に対し、『神の警告』を発動！！ 2000のライフを支払い、レスキューラビットの効果を無効にする！」

無双「ぬぅぅううう……！！」【LP 3000→1000】



戒「くっ…！ まだだ！ 魔法発動！『死者蘇生』！」

無双「…！ まだ斬れるカードが残っていたか…！」


戒「墓地のモルドレッドを特殊召喚！」

モルドレッド[攻 1700]


戒「更にこのカードは、場に光属性の通常モンスターが存在する場合、手札から守備表示で特殊召喚できる！『聖騎士 ガウェイン』を特殊召喚！」


無双「…またレベル４が２体だと…！」


チャンスは……ここしかない！


戒「２体のモンスターで“オーバーレイ”！！」


俺が宣言をすると、モルドレッドとガウェインの身体が重なり合い、室内をまばゆい光が包む。やがて光の粒子が二つの輪っかを作り、俺の目の前で交わった。



戒「ーーー重なるは光！ 導くは星天！… 朽ちること無き永久の『劔』を以て敵を討てッ！！
エクシーズ召喚！ 光り輝けッ！ 『輝光子 パラディオス』！！」



『輝光子 パラディオス』[攻 2000]



戒「パラディオスのモンスター効果！ エクシーズ素材を２つ取り除き、相手フィールドの効果モンスター１体の効果を無効にし、攻撃力を永続的に０にする！『シャイニング・リ・ライト』！！」


『神獣王 バルバロス』[攻 3300→300]


無双「……く…！」


戒「…ここで終わらせる！ パラディオスで、攻撃力が３００となったバルバロスを攻撃！〝フォトン・セイヴァー〟ッッ！！」


無双「…まだ血闘は終わらせん！ リバースカードオープン！ 『攻撃の無力化』！ パラディオスの攻撃を無効にしてバトルフェイズを終了させる！」

戒「……くっ…ターンエンド」


斬波 戒【LP 1100】
場:『輝光子 パラディオス』[攻 2000]
伏せ:なし/手札:なし


斬波 無双【LP 1000】
場:『神獣王 バルバロス』[攻 300]
罠:『炎舞-天璇』
伏せ:なし/手札:２枚


◉TURN:０５◉


無双「…俺のターン！ ドロォォオオ！！」【手札:３枚】

無双の手札にはバルバロスが控えている……もし、今のドローカードが『禁じられた聖杯』の様にモンスター効果を無効にできるだった場合、俺の負けだ……。


無双「………ふん。手札のバルバロスを生贄無しで通常召喚！」

バルバロス[攻 2200]


くるか…？

無双「……フ…ハアハハハ！ 行くぞ戒！」


無双は俺にそう宣言し、左手を前に突き出す。


無双「……覇気よ震えよ…ッ！ 覇王の名の下に、力と力を掛け合わせ、新たな存在となるのだッ！」


戒「くぅ……！ なんだ！？」


先ほどの父様の雄叫びとは比べものにならないほどの、何かが渦巻く。
何となく感じる事しかできないが、これはきっとーーー波動。


父の覇動だ。




無双「……オーバーレイネットワークを構築できるのは、お前だけじゃあないぞ、戒」




戒「………ッ！ エクシーズ召喚か！」




無双「２体のバルバロスでオーバーレイッッ！」




父様のデュエルディスクを中心に、光の粒が舞い始めた。
同時に俺は、秘書の知らなかったエクシーズ召喚を、父様が知り、使用していることに違和感を覚えていた。
父様は今までこのエクシーズ召喚を秘書にまで隠していたのか…。



無双「……目覚めの剣に神竜を宿し、全てを無に来せ覇たる者よッ！ エクシーズ召喚！ 剛来せよ、『神竜騎士 フェルグラント』ッ！！」



父様が召喚を宣言すると、父様の背後に巨大な竜の影が現れ、その影の中から、金銀に光る鎧の竜騎士が姿を現す。

フェルグラント『ォォオオォォオオ！！』[攻 2800]

エクシーズ・効果モンスター
ランク８/光属性/戦士族/攻2800/守1800
レベル８モンスター×２
１ターンに１度、このカードのエクシーズ素材を１つ取り除き、
フィールド上に表側表示で存在するモンスター１体を選択して発動できる。
このターン、選択したモンスターの効果は無効になり、
このカード以外のカードの効果を受けない。
この効果は相手ターンでも発動できる。



戒「……っ…！」


無双「バトルだ！ フェルグラントで、パラディオスを攻撃！〝竜騎絶断刃〟ッッ！！」


『神竜騎士 フェルグラント』[攻 2800]
ーーーVSーーー
『輝光子 パラディオス』[2000]


ガキィィィン！


パラディオスとフェルグラント。
２者の剣が音を立ててぶつかり合うが、フェルグラントの隙を付いた斬撃によって、パラディオスは崩れ散ってしまう。



戒「…ッぐぁああっ！！」【LP 1100→300】


戒「………パラディオスが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、俺はデッキからカードを１枚ドローする…」


カードをドローしようとデッキの上に手を置くも、俺の手は震えていた。無謀な欲張りを発動したことによって、２回のドローフェイズをスキップしなければならない俺にとっては、これがおそらく最後のドローになるからだ。


戒「………はぁ…はぁ…」


無双「…最後のドローだ。カードを引け、戒」



なんだ…この感覚は。
カードの上に手を置いた時から僅かにかんじていた、俺の中の“何か”と“何か”が混じり合うようなこの感覚は…？
俺の右手は、まだ震えたままだ。



戒「…うぉおぉおおおぉおおお…！！
ーーーファイナルドロォォオオォオッッ！！」【手札:１枚】



戒「………！！」


ーーーこの…カードは…！！


無双「…(一体何を引いた……？)…ターンエンドだ」



斬波 無双【LP 1000】
場:『神竜騎士 フェルグラント』[攻 2800]
罠:『炎舞-天璇』
伏せ:なし/手札:２枚


斬波 戒【LP 300】
場:なし
伏せ:なし/手札:１枚


◉TURN:０６◉



戒「…俺のターン！！」



戒「ーーーこのカードは、墓地の光属性モンスターと、闇属性モンスターを１体ずつゲームから除外することで、手札から特殊召喚できる…！ 俺は墓地のパラディオスとゼピュロスを除外！」


無双「ーーーッッ！！！」



戒「ーーー輝くは光！ 煌めくは闇！ 重なり交わりて、未知なる世界を斬り開くッ！！ 」



デュエルディスクから発せられる立体映像により、天が割れ、地が開く。



戒「父様………俺は俺の世界を斬り開く。俺自身の力で。俺自身の剣で。それが俺のーーー」



俺は最後の手札を、最後の剣を、デュエルディスクのモンスターカードゾーンにゆっくりと置いて、言った。





戒「戒めだ」





無双「………！」



戒「天地の狭間より現れろッッ！
『カオスソルジャー-開闢の使者-』
！！！」



開闢「………」[攻 3000]

効果モンスター（制限カード）
星８/光属性/戦士族/攻3000/守2500
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを１体ずつ
ゲームから除外した場合に特殊召喚できる。
１ターンに１度、以下の効果から１つを選択して発動できる。
●フィールド上のモンスター１体を選択してゲームから除外する。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
●このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した場合、
もう１度だけ続けて攻撃できる。



無双「………開…闢…！！！」



戒「……うぉおおぉおおおぉおお！！」















……….……….……….……….……….……….………

……….……….……….……….……….……….………












そこからも俺と父様との血闘は続いた。のだろう。
俺にはよく思い出せない。

デュエルの決着がついた後。


本当に、突然の出来事だった。


ーーー飛び交う銃声。


ーーー飛び散る鮮血。


ーーー鳴り響く絶叫。


ーーー泣き叫ぶ雷鳥。



どうやら俺の開拓した世界には、絶望しかないらしい。














遊戯王 Ph.X
DRAW:EX 戒めの斬波《終》


ーーーComing Soonーーー










「…人は死ぬ時は死ぬんだ。
どれだけ『俺は死なない』、『あの人は死なない』なんて理想を掲げても、『死』って瞬間は必ず訪れる。
想っても、信じても、愛しても、死ぬ時は死ぬ。
それ程に人は脆くて弱い。
だからこそーーー」










ーーー-ーーー-ーーー-ーーー-ーーーTo Be Continued…





………そして舞台は移り再び黒髭町へーーー




《次回予告》


「ーーー市瀬、アンタは間違いなく弱い。WDCSで勝ち抜く事なんて絶対にできない」



次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:３１ 強くなるために



「あたしが美味しく、調理してやるよ」