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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#45「夜更かし」

Report#45「夜更かし」 作:ランペル


ピンポンパンポーン


【ただいまより就寝時間となります。約9時間フリーエリアの各機能に制限が掛けられ、各フロアの扉がロックされます】


フリーエリアへとアナウンスが流れ、天井の照明が1つ置きに消されていく。

「おっと…もうそんな時間か」

いつもより薄暗くなったフリーエリアを一人の巨漢が当て所なく彷徨う。
鍛え上げられた筋肉の至る所には火傷の跡が残り、デュエルディスクを装着している左腕に至ってはまるで炭の様に真っ黒に染まっており、薬指が焼け落ちている。

「ひとまずシェルターを目指さないとなぁ…と言っても俺がどの辺に居るのかもよく分からねぇがな…ぐはは!」

一人笑い声をあげる手負いの山辺の目の前。十字路の右側の通路より人影が現れる。

「聞き覚えのある笑い声だと思って来てみれば…随分と手ひどくやられてるみたいじゃないか?坊や」

そう言ってひひひと笑うボブヘアーの中年女が首元に提げる真珠のネックレスが光る。

「婆さんか。俺が坊やって歳か?」

「そのデュエルバカな所は、純真な子供と何ら変わりないだろうさ。
にしても、あんたの場合は相当歪んでるがねぇ…」

「ぐはは!デュエルできりゃなんだっていい。
ひりつくぶつかり合えるならなお良しだ。
そう言う訳で婆さん、どうだ?」

やれやれと言ったようにため息を吐いた女が、真っ黒に染まった左腕に視線を飛ばす。

「バカと遊んでやる暇はないよ…。
それで?その腕は感覚残ってんのかい?」

「いいや?痛くもかゆくもなんともないってやつだな」

「あんたともあろうもんが、こんだけやられるとはねぇ…」

女は腕に着けたデュエルディスクを操作し、山辺の左腕に光を照射する。

「そりゃぁボス戦だったからな!
ありゃ、何度やられてもしつこく向かって来るタイプのボスだったな!」

「こんなになってまで何を嬉々として喋ってるんだか…」

笑い声をあげる山辺に対して、呆れたような眼を女が向ける。
スキャンが終わったデュエルディスクの画面を見た女の表情が歪んだ。

「ダメだね…完全に細胞が死んでる…。
火傷のレベルじゃないねぇこりゃ…誰とやったんだい?」

「死神って言や分かるか?レッドフロアのフロア主の藤永ってやつさ」

「はぁークラスⅢにもデュエル吹っ掛けたのかい?
それで返り討ちにあっちゃ目も当てられんだろうよ…」

少しむっとした山辺は動かせる右手を握りしめ、語り出す。

「言っとくが1勝1敗だぜ?
なんなら先に勝ったのは俺の方だ。確実に取ったと思ったんだが、死んでなくてよぉ…どんな手品か知らねぇが《ヴィクトリー・ドラゴン》のマッチキルに耐えやがったんだあいつ…」

悔しそうに歯を噛み締める山辺の表情は、左腕を破壊されたことではなく、ただただデュエルに負けた事への悔しさを感じている様に見える。
再び特大のため息を吐いた女は自分が今しがた来た方向を指差す。

「あんたと居ると頭がおかしくなりそうだよ…。
とにかくその腕はもう使いもんにならん…放っておきゃ感染症で死ぬのがオチさ。
シェルターはこっちだよ。さっさと戻ってその腕切り落としな」

山辺は少し残念そうな目で、だらんと下された自分の左腕に目を向けた。

「やっぱダメか…。
ま、こんだけ真っ黒にされちゃ仕方ねぇわな。
んで?婆さんは《夜襲》かける予定か?」

「じゃなきゃ外に出てこないよあたしゃ。
生命線であり生きがいさ。あんたは人の事より自分の心配をしな。
腕失っちゃデュエルもし辛くなるだろうからねぇ…」

「ぐはは!そこは心配いらねぇ。もうすでにデュエルディスクの形状は考えてある。
ついに夢のデュエルコートを着る時が来たってことだ!」

冷めた目で男を見遣る女は、何度目かのため息を吐いた。

「あぁそうかい…。
あんた相手に気にする方が無駄ってことだね」

「そういや、あれから誰か仕留めたやつはいるのか?」

「これから数増やすんだよ。
また《情報屋》に売ろうって腹かい?」

「人が死 ねばそいつへの対策を考えなくて済むらしいからな!
有効活用させてもらってるぜ」

「はん、裏表ないだけ嫌いじゃないがねぇ…。
あたしゃあの《情報屋》はどうにも信用ならん…」

そっぽを向き悪態を吐く女に山辺はその真意を探る。

「そうか?
新鮮な情報に関しては割と信憑性あると思うがな」

「ブンヤなんてのは、あれこれ好き放題言えるんだよ。
それが本当だろうが嘘だろうがね…。
あたしらの情報もどう扱われてるか分かったもんじゃないさ」

「まぁ、仕方ないだろう。
婆さんの生命線が《夜襲》なら、《情報屋》の生命線が情報なんだからな」

「価値がないとは思わんよ。ただ、無暗に情報を渡さずに、貰う情報の精査はこちらでするべきだってことを言いたいのさ」

右手で顎を触りながら考え込む山辺が再び口を開いた。

「んじゃ精査と言う意味も込めて…ブラックフロアの新人の情報を流しとく。
エクシーズ使いの女で、何やらここに人を探しに来た?らしいぜ」

「人探しぃ?」

「《情報屋》もこの情報自体の信憑性はまだ薄いって言ってたがな。
人捜してるからフロアの外に出てることが多いらしい」

女は嫌らしくほんの少し口角をあげる。

「となりゃ、フロアの外でねんねこしてる可能性もあるって事だねぇ…。
なら、今日はブラックフロア近辺に行ってみるのも手かね」

「その笑みは情報を鵜呑みにしてるようにしか見えないが…?」

「新しく入ったやつのことに関しては、《情報屋》だとしてもそこまで掴めてないだろう。
そんな中であんたに渡す情報だ。真実を発する方が今後の情報収集が捗りやすいはずだからねぇ…多少は信憑性あると思うさ」

「おぉ…ちゃんと精査してる感じがするな」

感心し腕組みをしようとして、左腕が動かないことを思い出した山辺は肩をすくめた。

「まぁあんたはバカだからね。
大人しく受け渡ししとけばいいだろうさね」

「ぐはは!
単純な方が俺の性には合ってるってことだな!」

己への罵倒を好意的に受け止めた山辺に、呆れた笑いを漏らしながら女は背を向けて歩き出す。

「あんたと話してると疲れる。
もう行くよ」

「おう、また会った時に仕留めた奴の情報流してくれりゃ《情報屋》から話引っ張っとくぜ。
それとデュエルディスクを一新した新たな俺とのデュエルも検討しといてくれ」

「あんたの四肢が飛んで、カードすら引けなくなったら考えてやるさ。
ひひひ…」

「そうなったら口でカードを引かないといけなくなるな!」

「あぁー!分かった!
もういいからどっかいけ!」

満面の笑みで右手の親指を立てる山辺。
それを心底めんどくさそうにしっしと手で払いのけるような動作をして、女はその場を立ち去った。



 -----



「今日はグリーンからホワイトまでを巡回するルートで行くかね…」

点灯している照明と、消灯している照明とが交互に入れ替わり続ける無機質な廊下。
静寂の中で響くのは女の足音のみだ。
《夜襲》のターゲットを探しながら歩く女は周囲を警戒しながら曲がり角を左に曲がる。
そして、それはそこに居た。

眼前の廊下にギザギザの黒髪を逆立てた少年が目を瞑り寝息を立てている。その左手首の黒い腕輪からは鎖が伸び、その先端にデュエルディスクらしきものが連結している。
異様なのは、少年の背後にたくさんの丸い水滴の様なものを付けた大きな植物がある事だ。

「(デュエルディスクのデザインはどうでもいい…だがあれはなんだい…?
花は咲いていない…葉っぱか…?)」

遠巻きにそれを観察するも特に植物に動きは見られない。よく観察するとその水滴は植物から伸びる毛の1つ1つの先端に球体で付着しており、滴る水滴の動きから粘液性の液体だという事が分かる。
そして、少年の方は特に手傷を負っている様子も見られない。

「手傷なしならすぐ起きるかもしれないねぇ…。
なら…」

女はデッキからモンスターを手に取るとゆっくりとデュエルディスクへ召喚する。
それにより、目の前へ体からチョコレートを滴らせる狼男の様なモンスターが姿を現す。

「オレイエ…あの子供にゆっくりと近づいてほっぺでもつついておいで」

指示を受けたチョコレートの獣は、のそりのそりとチョコの足跡を残しながら少年の元へとゆっくりと近づいていく。
1歩2歩と歩みを進めていく獣の影が少年の体を覆っていく。しかし、獣が近づいても少年は気持ちよさそうに寝息を立てている。
あと少しで、爪が少年にへと触れようかという瞬間…。

ズボッ

チョコレートの獣が突如落下し、女の眼前から姿を消す。

「なに…!?」

オレイエが姿を消すと同時に、少年の背後の植物がうねうねと蠢き始める。
うねうねと揺れ動く植物とは別に現れた変化。植物の茎の部分から人の手の様な形をしたものが突出し、少年の肩を揺すりだすのだ。

「(なにか妙だね…。
こういう手合いには関わらないに限る…)」

リスクなく襲撃できる相手ではないと判断した女は、デュエルディスクからモンスターを外し、少年から踵を返して元来た道を戻ろうとする。

「あーーー!!!」

背後から高らかな少年の声が静かな廊下へと響き渡る。

「(まずい…。
起きてる奴を相手してもうまみがないよ…)」

背後で寝ていた少年が目を覚ましてしまう。
女は急いで、少年の視線から外れるように十字路の廊下を曲がり、即座に次の曲がり角へと向かうべく足を速める。
しかし、数歩足を前に出した段階で女は歩みを止めた。
正確には、止めざるを得なかったのだ…。

先程までは何もなかったはずの廊下の先は、巨大な蜘蛛の巣が張られてしまっている。
網の隙間は非常に狭く、子供ならともかく大人のサイズでは隙間を通り抜ける事が出来ないだろう。

「なんだい…これは…」

一瞬蜘蛛の巣へ意識を奪われてしまったが、即座に別の逃げ道を確保するべく女は逃げてきた道へと戻る。

「ちっ……」

「罠にかかったのはおばさんだったのか!」

十字路の中央まで戻って来た時には既に先程の少年が立ち上がりこちらを見上げていた。
先程は分離していた腕輪とデュエルディスクが連結して、左腕に装着されている。

「なんだい坊や?
罠って事は寝たふりでもしてたってことかい?」

少年へと声を掛けてる間に目線だけを他の廊下の道の先へと向ける。
片方は地面へ巨大な砂の流砂が生成されており、残された廊下も袋の様な巨大な植物が地面へと出現し、まるで口を開けて獲物が来るのを待っているかのように植物の蓋が開かれている。

「ちゃんと寝てたよ!
でも、寝てる所を狙って来る奴がいるかもしれないから仕掛けてたら引っかかったんだ!」

「そうかい…ならあたしがまんまと坊やの罠に嵌ったってことだね…。
(1度に3方向の道を塞ぐなんてね…いったい何を使った…?)」

「そう!
悪い大人はこうやって閉じ込めるんだ!」

少年は両腕を高く振り上げ高らかに叫ぶ。その背後では、先程の植物が先ほどまでと同じようにうねうねと揺れ動いている。

「(あの植物が、オレイエが罠にかかった事を坊やに知らせていた…。
あの坊やは手に揺すられて初めて目を覚ました…)」

不気味に揺れ動く植物は先程の知性を感じられるような動きを全く見せず、ただ静かに揺れ動いているだけだった。

「坊やはあたしを逃がしてくれる気はあるのかい?」

「なんで?
悪い大人を逃がす理由なんかある訳ないじゃん!」

少年がデュエルディスクを構えると、互いのデュエルディスクが静かに起動し、それぞれの画面へデュエル開始の告知が表示される。

   *****

デュエルモードON
ルール:マスタールール
LP:4000
モード:エンカウント
リアルソリッドビジョン起動開始

   *****

「罠にかかったあたしにも落ち度はあるわね…。
言っとくけど、手加減なんてのは期待しない事だね」

「こっちのセリフだよおばさん!
泣いて謝っても許してあげないからね!」

実に明るくはつらつと少年は自身が勝つことを前提に話しを進める。

「ひひ…別に坊やに謝ることは何一つないからねぇ。
まともにデュエルするのは久々さぁ!生意気な坊やに世の中の怖さを教えてあげるわ!」


 「デュエル!」  LP:4000
 「デュエル!」  LP:4000
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コングの施し
場面は一転して久々に登場!筋肉ドラゴンリンク!レッドエリアの藤永と戦って無事だったんですね…無事ではないか。

そして夜襲をしかけるおばさま!使用デッキはネムレリアかな?と思ったら何やらそれを待っていたような少年の罠。現代でも十分に通用するデッキパワーであろう2人。そんなデュエルになるか楽しみですな! (2024-01-07 13:23)
ランペル
コングの施しさん閲覧及びコメントありがとうございます!

再戦を挑まれた筋肉ですが、惜しくも左腕と共に敗れてしまった様子。しかし、当人は依然としてやる気に満ち溢れているという壊れ仕様でございます。

夜襲のターゲットに選ばれたのはすやすやと眠る子供。しかし、逆に逃げ道を塞がれデュエルにへと発展してしまいました。普段夜襲ばかり仕掛けているおばさまの実力の程は…?

次回で決着まで行きますので、ぜひお楽しみに! (2024-01-10 19:01)

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