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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#16「勝機、笑気、正気?」

Report#16「勝機、笑気、正気?」 作:ランペル

「はぁ…はぁ……」

最低限、傷口を縫い合わせることが出来た。
軟膏を傷口へ塗り抗生物質を飲む。
再びお腹の傷口を中心に残っていた包帯を巻く。

「いっ……」

何とか指示のあった処置を終え、どっと疲れが来て倒れるようにその場で横になる。
真っ黒に塗りたくられた床はとても冷たく、非常に寝心地の悪いものだった。

「今は…体を休ませなきゃ…」

ゆっくりと目を閉じる。左腕と、腹部の傷がズキズキと痛む。
しっかりと治療できたかは分からないが、何となく楽になった気がしないでもない。
目が覚めた時にすごく体が痛くなってそうだが、今は少しでも体を休めて体力を回復させないといけない。

極度の疲労感で、意識はすぐに遠のいていく…

はずだった。


ピーガチャ


「………!?うそ…」

確かに扉の開閉音がした。この瀕死の状態を見られようものなら、間違いなく殺しに来られてしまう。
自分の空耳を信じて扉の方へ目を向けると、扉が開かれており人影が見えてしまった。

「ここで…あっとるかの?」

最悪だ…。こんな状態でもデュエルを強要されてしまうというのか?
しかし、デュエルをしなければ確実に殺される。このボロボロの体でダメージを受けようものなら、死なずとも体が動かなくなってしまう。

回らない頭で何とかこの状況を打開する術を探る。

「あのぉ」

男が声を掛けてきた。
短い白髪に長丸の眼鏡をかけた柔らかな目つきの初老のおじいさんだった。
シャツにニットのベストを着たおじいさんは私を見つけると歩いて近づいてくる。
柔らかな雰囲気とは似ても似つかないデュエルディスクをこの人も腕に着けていた。

「…!?お嬢さん?血が…」

おじいさんは床と私が血まみれな事に気が付くと、早歩きで近づいてくる。

「来ないで…ください……」

何とかおじいさんに届くように声を振り絞り、静止を呼びかける。
すると、足を止め心配そうな声色で声をかけてくる。

「見るからに大丈夫ではなさそうじゃが…大丈夫なのかい?」

生き残るにはデュエルに勝つしかない。ここはそういう場所なのだ。

「デュエル…ですよね…?」

気力だけで何とか、体を起こし立ち上がる。

「ん…?あぁ、確かにそういう風に聞いてここへ行けと言われたが…。
お嬢さんの様子を見るに遊んでいる場合じゃなさそうじゃが…?」

「そういうのは…大丈夫です…」

ズキズキと痛む左腕を無理やり上げ、デュエルディスクを構える。
初老の男性は眉を下げ、梨沙を見遣る。

「一体何があったというんじゃ…」

二人のデュエルディスクが特有の機械音を発する。


ザザッピー
「ただいまよりブラックフロアにてデュエルを開始します。
ルール:マスタールール
LP:8000
モード:ベーシック
リアルソリッドビジョン起動…。」


桃谷さんに騙された前例があるとは言え、この人がどんな人かも分かっていない。
話し合う余裕さえあれば、事情を話していただろう。
しかし、この人もまた桃谷さんの様に私を騙しに来ていたら?油断した隙にダメージを受けてしまったら?
今はこのおじいさんとは話し合う余裕はないのだ。
とにかく、ダメージを貰わずにデュエルに勝つことが必要になる。
この傷だらけの体で、どれほどのダメージを耐えられるか想像できない。

虚ろな目で梨沙はおじいさんを見つめる。

「よくは分からないんじゃが…お嬢さんが望むならそのデュエル受けましょう」


 「……デュエル」     LP:8000
 「よろしくお願いするぞ」 LP:8000



ピー
「先行は佐藤様、後攻は裏野様になります。」


 [ターン1]


「裏野さんというのかね?ワシは佐藤 博史(さとう ひろし)というんじゃ。
よろしくの~」

「………」

おじいさんは気さくに梨沙へと声を掛けるが、手札を確認している彼女は一瞥もしない。

「事情を聴いてあげたいが…それどころじゃなさそうじゃな…」

佐藤は、梨沙との会話を諦め自分の手札を確認する。

「お、悪くなさそうじゃな。ワシは手札から《強欲な壺》を発動するぞ」
手札:5枚→4枚

「え……?はい…?」

おじいさんの予想外の発言に、梨沙は彼の方を向く。

「ここが墓地であってるのか…?おー吸い込まれた。
そしたら、2枚ドローじゃな」
手札:4枚→6枚

自身の手元で慣れないデュエルディスクの操作に戸惑いながらもどこか楽しそうにカードを引いている。
いやそんなことを確認したいんじゃない。
彼が発動したのは《強欲な壺》…。
遊戯王を代表する禁止カードの1つのはず…。

「《強欲な壺》…使えるん…ですか…?」

「んー?そりゃカードなんじゃから使えるじゃろ」

いまいち話が嚙み合っていないが、少なくともデュエルディスクは問題なく動いているようだ。つまり、この場においては禁止カードでも問題なく使用が可能という事になる…。

「結構古いものじゃけど、紙には間違いないし機械が壊れはせんと思うがのぉ」

はっはっはと笑うおじいさんからは、どうも殺意を感じられない。
だが、気を緩めて万が一があってからでは手遅れになる。おじいさんは禁止カードを普通に使って来る前提で、デュエルをしないといけない。

「そしたら…今度は《強引な番兵》を発動じゃな」
手札:6枚→5枚

「ちょ…ちょっと…」

「相手の手札を見て、その中から1枚をデッキに戻させるぞ~。
もう目が遠くてな。そっちまで手札を見に行っても大丈夫かね?」

「……手元に…映って…ないですか?」

「お?おぉ!ほんとじゃ5枚映っとるの…。
う~ん?最近のカードはよく分からんな…これは押せばいいのかの」

おじいさんはそう言い、デュエルディスクの画面をぽちぽちと押す。
すると、こちらのディスクの画面におじいさんが選んだであろうカードが表示される。

「(《ゴーストリック・パニック》…)」
手札:5枚→4枚

「罠は危ないと相場が決まっとる。
ワシはモンスターとカードを1枚伏せてターンエンドじゃ」
手札:5枚→3枚



佐藤-LP:8000
手札:3枚


 [ターン2]


「私のターン…ドロー」
手札:4枚→5枚

禁止カードのすべてを知っている訳ではないが、中には1枚でデュエルそのもののゲーム性を崩壊させるものまで存在している…。
セットモンスターにセットカード1枚…。普通に考えれば警戒しすぎる事のない盤面だが、禁止カードが紛れ込んでいる事を考えるとそうも言っていられない。
とにかく、このデュエルは少しでもダメージを喰らわないようにしないといけない。

「フィールド魔法《ゴーストリック・パレード》を発動します」
手札:5枚→4枚

フィールド魔法が発動されると今まで同様、ゴーストリックのお屋敷が現れそこからたくさんのゴーストリック達が現れ風船が飛び交い始める。

「ほぉ、こりゃまたすごいな。楽し気な雰囲気じゃのぉ」

遠目におじいさんがにこやかに微笑んでいるのが見えた。

「モンスターを1体伏せて…ターンエンドです」
手札:4枚→3枚

「エンドサイクじゃ!」

「え…」

相手フィールドで《サイクロン》が発動されると、ゴーストリックのお屋敷が瞬く間に消え去った。

「(防御札を増やすすべがなくなった…。でも、ハンデスさえされなければきっと守り切れる…)」



梨沙-LP:8000
手札:3枚


 [ターン3]


「ワシのターンじゃな!ドロー」
手札:3枚→4枚

「ワシは《聖なる魔術師》を反転召喚。その効果で、墓地の魔法カード《強引な番兵》を手札に戻すぞ」
4枚→5枚

「(ぐっ…)」

聖なる魔術師がフィールドへと現れ、月の杖を翳す。そして、目の前へと光を帯びて浮かんでいるカードを左手で手に取ると、それをおじいさんへと手渡す。

「ほぉ、こりゃすごい。簡単なモンスターの効果でこんな演出が見れるとはな。年甲斐もなく興奮してしまうのぉ。
それじゃぁ、もう一度《強引な番兵》を発動じゃ」
手札:5枚→4枚

先程と同様、デュエルディスクの画面を確認し始める。

「今度はモンスターしか居らんのぉ…これにするか」

おじいさんがカードを選択すると、こちらのデュエルディスクへ《ゴーストリック・フロスト》が表示された。

「デッキに戻します…」
手札:3枚→2枚

「その感じじゃと、当たりじゃな。次は《抹殺の使徒》発動!
裏野さんの裏側守備モンスターを破壊して除外させる」
手札:4枚→3枚

「なっ…なんでそんなカードを…」

「そりゃ、セットモンスターは厄介じゃからな。破壊するぞ」

セットされている人形が姿を見せることなくフィールドからいなくなる。

「ワシは《聖なる魔術師》を生贄に、《デーモンの召喚》を生贄召喚するぞ!」
手札:3枚→2枚

召喚が宣言されると、その場へと雷が落ちる。

「きゃ…」

雷が止むとその場へは、筋肉と骨がむき出しとなった肉体に、禍々しい翼、そして頭に二本の角を生やした悪魔がフィールドへと舞い降りていた。

「おーこれがデーモン…この感じは実に期待通りじゃ!」

おじいさんは、フィールドへと現れたデーモンの召喚の周りをくるくると回りリアルソリッドビジョンを観察している。

そのあまりに無邪気な様からは、とても人を殺しに来た人の素振りとは思えない。

「あ、の…」

「ん?なにかな?」

対話を試みようと話しかけたが、その後に声が続いていかない。
最初の狂った男や、私を狙ってきていた男の人、桃谷さんの事が脳裏に過ってしまう。

「…え……と……いえ、なんでもないです…」

「ふむ…まぁまた何かあったら気軽に声をかけておくれ。
それじゃぁ、バトルフェイズに入るぞ。《デーモンの召喚》で攻撃じゃ
魔降雷!」

悪魔が右腕を天へと掲げる。すると、何もなかった上空を暗雲が覆い始める。

「(攻撃は喰らえない…)手札の《ゴーストリック・ランタン》の効果を使います。
相手モンスターの直接攻撃宣言時に、その攻撃を無効にしてこのカードを裏側守備表示で特殊召喚します」
手札:2枚→1枚

デーモンの召喚の目の前へ突然ランタンが現れ、驚かす。
右腕を下すと同時に、上空の暗雲も霧散した。

「そんなモンスターがまだ残っておったんじゃな…。
ならば、ワシはカードを1枚伏せてターンエンドじゃの」
手札:2枚→1枚


佐藤-LP:8000
手札:1枚


 [ターン4]


「私のターン…ドロー」
手札:1枚→2枚

「《闇の誘惑》を発動します。デッキから2枚ドローして、手札の闇属性を除外します…」

目の前へと現れた闇の中へとモンスターカードを放る。

「私は手札から《ゴーストリック・シュタイン》を除外します」
手札:2枚→2枚

「そりゃまた、演出がすごいのぉ…」

おじいさんは興味津々にフィールドを観察している。

「ランタンを反転召喚。ゴーストリックは自分フィールドにゴーストリックが居る場合のみ、表側で召喚できます。手札から《ゴーストリック・スペクター》を召喚」[攻600]

ランタンがふわふわとフィールドへと降り立った後、スペクターが浮かぶランタンの上に降って来る。

「下級モンスターをわざわざ召喚?」

「私はレベル1のランタンとスペクターでオーバーレイ。
エクシーズ召喚。

来て、ランク1《ゴーストリック・デュラハン》」[攻1200]

重なって団子状態となっていた、ランタンとスペクターは分裂し交錯しながらエクシーズ召喚の渦へと飲み込まれる。
そして、爆発と共にデュラハンがフィールドへと現れ剣を振るう。

「な、なんじゃそれは!?」

「デュラハンの効果です、オーバーレイユニットを1つ使って、《デーモンの召喚》の攻撃力をターン終了時まで半分にします」[攻1250]

デュラハンの乗る馬がいななくと、悪魔の周りに青いオーラが現れ攻撃力が半減される。

「攻撃力半減…!?レベル1モンスター2体でなんでそんなモンスターに…?」

何やら困惑がすごいらしいおじいさんは、目を細めてこちらのデュラハンを凝視している。

「…。デュラハンを素材に、オーバーレイ。
エクシーズチェンジ。

来て、《ゴーストリックの駄天使》」[攻2000]

今度はデュラハンが渦へと飛び込むと、爆発が巻き起こる。
そして、フィールドへとピンクの髪を揺らすゴーストリックの駄天使がふわりと現れた。

「さ、さっきから何をしておるんじゃ…?」

「駄天使は他のゴーストリックの上に重ねてエクシーズ召喚できます」

「エクシーズ召喚…?」

「駄天使の効果です。オーバーレイユニットを使って、デッキからゴーストリック魔法・罠カードを手札に加えます。
私は《ゴーストリック・ハウス》を手札に」
手札:1枚→2枚

駄天使が周りを回っている継ぎ接ぎのハートを捕まえて、ぎゅっと握り込み、ぱっと手を広げると、カードになっていた。

「ほぉ、マジシャンなモンスターなんじゃな」

「(そういう訳ではないけど…)駄天使ありがと。
さらに、墓地へと送られた《ゴーストリック・デュラハン》の効果で、墓地のゴーストリックカード1枚を手札に加える事が出来ます。
私は墓地の《ゴーストリック・ランタン》を手札に加えます」
手札:2枚→3枚

「さっきの攻撃を防いだカボチャくんじゃな」

「フィールド魔法《ゴーストリック・ハウス》発動です」

再びゴーストリックのお屋敷が梨沙の背後へと現れる。

「またそのフィールド魔法かの…今度は誰も出て来んのじゃな」

「バトルフェイズです。《ゴーストリックの駄天使》で攻撃力が半分になった《デーモンの召喚》を攻撃します」

「させんぞ!罠発動!《魔法の筒》!」

「っ…!」

駄天使が継ぎ接ぎのハートを悪魔の方へと飛ばすが、二つの筒が相手フィールドに現れる。
ハートは筒の一つに吸い込まれてしまい、もう一つの筒がこちらへと向けられ、そこから継ぎ接ぎのハートが梨沙へと向けて放たれた。

「相手の攻撃の時に発動じゃ。その攻撃してくるモンスターの攻撃力分のダメージを裏野さんに与えるぞ」

「(これを防ぐ術はない…ハウスで半減するけれど…耐えられるか…)」

こちらへと飛んでくるハートに対して身構える。

「ぐ、あぁぁ…」

梨沙LP8000→7000


梨沙に触れたハートは小さく爆発する。熱さや痛みは大した事なかったが、衝撃で梨沙は後ろへと弾き飛ばされ地面へと倒れる。

「うぐっ…!?………いぃ…いたい……」

着地した時に左腕を下に倒れてしまったことで、傷口に衝撃が響き渡り、ズキズキと痛みが走る。

「お、おいおい…大丈夫かい…?」

心配そうに聞こえる声色でおじいさんはこちらへと声を掛けてくる。

「傷に障ったかい…?さっき血を流しておったのに、まさか吹き飛んでしまうとは…」

心配している素振りがとても上手だ。何も知らない振りをして。

「なんの…つもりですか…」

痛みに耐えながらおじいさんの行動の意図を問いただす。

「ど、どういう意味じゃ…?」

「そうやって…私を心配する振りをして、何が、したいんですか?
私を効率よく殺す何かがあるんですか…?
優しくすれば、私を思い通りに出来ると思ってるんですか…?」

「な…ワシは…」

「もう………騙されるのは懲り懲りです…。
おじいさんがどういう意図でここに来ていたとしても…私はあなたが私を殺しに来ていると判断しています…」

「こ、ころしに…?ど、どういうことなんじゃ!?ワシはただ」

「聞きたくないです。そんな余裕ありません…。
何がなんでも勝ちます…。付け入られる隙は与えません…」

口からは拒否の言葉が次々と出てくる。
今喋っているのは私と言うよりは、恐怖心だろう。本当はこのおじいさんがどんな人なのかを聞いてみたいとも思う。少なくとも今の所悪い印象は受けていない。
だが、印象なんてものは数秒でひっくり返る。少しでも心を許せば、付け込まれ利用される。生き残るには、隙を見せてはいけない…。

ズキズキと痛む左腕を抑え、震える足で何とか立ち上がる。

「《ゴーストリック・ハウス》の効果で…互いの受ける効果ダメージ及び、ゴーストリック以外の戦闘ダメージは半分になります…。そして、私がダメージを受けた事で手札の《ゴーストリック・マリー》の効果発動です。
手札から捨てて、デッキから《ゴーストリックの人形》を裏側守備表示で特殊召喚します…」
手札2枚→1枚

「………」

顔をゆっくりと上げると、おじいさんはじっとこちらを見ていた。

「私は…ターンエンドです…。あなたのターンですよ…」

「…何か…辛いことがあったんじゃな…」

「………!」

「裏野さんは…何か聞かれるより、デュエルに集中される方がいいんじゃな?」

「話を…する気は………

言葉が詰まる。ここで拒否を示せば、和解の道を自ら捨てることになる。
優しそうな人だ。きっと、話せば理解を示してくれる。一緒にここを出る方法だって考えてくれる。
だが、ここで和解の道をこの人と探るほどのエネルギーが心身共に残っていない。
デュエルに負けなければ死にはしない…。
相手の話を聞かなければ、丸め込まれることもない…。


デュエルにさえ集中すれば………


「あなたと何かを話す気は…ありません…」

恐怖が相手との対話を拒絶させた。

「そうか…分かった。
ならワシは、このデュエルを楽しむことにする。
お嬢さんもそうするといいじゃろう」

おじいさんは目を瞑り、デッキトップに手を掛ける。


梨沙-LP:7000
手札:1枚


 [ターン5]


「ワシのターンじゃったな?
ドローするぞ」
手札:1枚→2枚

おじいさんは目を開きデッキからカードを引く。

「《手札抹殺》を発動じゃ。互いの手札を捨てて、捨てた数だけデッキからカードを引くぞ」
手札:1枚→1枚

「(ランタンが墓地に…)」
手札:1枚→1枚

「さて、ワシはモンスターをセットしてバトルフェイズに入るぞ!
手札:1枚→0枚

《デーモンの召喚》で、ピンク髪のモンスターを攻撃じゃ!
魔降雷!」

悪魔が再び空へと手を翳せば、暗雲が現れる。
そして、悪魔が手をこちらへと振り下げると同時に暗雲から雷が駄天使へと降り注ぎ、駄天使が破壊される。

そして、攻撃力を超えたダメージが梨沙へと向かう。

「ぐ…うぐ…」

梨沙LP7000→6750


《ゴーストリック・ハウス》の効果でダメージが半減していることもあって、ダメージは少しの衝撃で済んだ。

「ワシはこれでターンエンドじゃな」


佐藤-LP:8000
手札:0枚


 [ターン6]


「私のターン…ドロー」
手札:1枚→2枚

「(よし…。)
手札から《金華猫》召喚」
手札:2枚→1枚

フィールドへと小さな白い猫が現れる。

「《金華猫》の召喚時に墓地からレベル1モンスターを特殊召喚します。私は墓地からレベル1の《ゴーストリック・スペクター》を特殊召喚」

白い猫の背後から黒い化け猫が現れ、その化け猫は体をぐにゃりと歪ませたかと思うと、スペクターの姿となった。

「2体のモンスターでオーバーレイ。
エクシーズ召喚。

来て、ランク1《ゴーストリック・デュラハン》」

「ふむ…またそのモンスターということは…」

「デュラハンの効果で、オーバーレイユニットを1つ使って、《デーモンの召喚》の攻撃力を半分にします。
さらに、デュラハンを素材にオーバーレイ。
エクシーズチェンジ。

2体目の《ゴーストリックの駄天使》」[攻2000]

先程と同様の流れで、デュラハンを素材にした駄天使が白と黒の翼を羽ばたかせながらフィールドへと降り立つ。

「さっきも見た流れじゃのぉ」

「駄天使の効果です。デッキから罠カード《ゴーストリック・パニック》を手札に加えます。
墓地へ送られたデュラハンの効果で、墓地の《ゴーストリック・ランタン》を手札に」
手札:1枚→2枚→3枚

「よく分らんが、モンスターの効果ですぐ手札が増えていくのぉ…」

「反転召喚。《ゴーストリックの人形》」

水色のドレスを着た人形がフィールドへと現れる。

「リバース効果です。このターンの終わりにフィールドのモンスターを全て裏側にして、裏側にしたモンスターの数以下のレベルのゴーストリックをデッキから特殊召喚できるようになります」

人形が手に持つブーケを掲げる。

「説明が長くてよく分からんのぉ…。
まぁ、そっちが分かってるなら支障はあるまい」

「…バトルに入ります。
《ゴーストリックの駄天使》で《デーモンの召喚》を攻撃します」[攻2000]

駄天使が指を上に向けると、大きめの継ぎ接ぎハートが指先で回り始める。
指をデーモンの召喚へと向けると、継ぎ接ぎのハートがまっすぐにそちらへと向かい、デーモンの召喚に触れると爆発した。

「うぉ…!?」


佐藤LP8000→7250


「な、なんじゃ…衝撃が…」

ダメージで衝撃が発生したことに驚いている様子で、おじいさんは自分の体のあちこちを触っている。

「フィールド魔法《ゴーストリック・ハウス》の効果で、相手モンスターが全て裏側の場合、モンスターの攻撃は直接攻撃になります。
《ゴーストリックの人形》でダイレクトアタックです」[攻300]

人形が手に持つブーケを掲げると、そこから青色の火の玉が出てきて、その火の玉はおじいさんへとまっすぐ向かって行った。

「あつ…!?」


佐藤LP7250→6950


「あつかった…が…別に火傷してはないのぉ…。
なかなか面白い演出じゃな」

火の玉がぶつかった場所を見て、手でぱっぱっとはたいている。

「私はカードを1枚伏せて、エンドフェイズに《ゴーストリックの人形》の効果が適用されます。私の場のモンスターは全て裏側になり、その数は2。
よって、レベル2の《ゴーストリックの猫娘》を裏側守備表示で特殊召喚」
手札:3枚→2枚

エンドフェイズになると、上空へ人形の着ていた水色のドレスだけが浮かび上がり、そのドレスがフィールドをふわりと一周する。
すると、モンスター全てが裏側になったことでフィールドからモンスターが居なくなる。

「ターンエンドです」


梨沙-LP:6750
手札:2枚


 [ターン7]


「ワシのターンじゃな。ドロー」
手札:0枚→1枚

ドローしたカードを確認することなく、おじいさんはこちらを向く。

「何やらいろいろとモンスターがフィールドに並んでおるようじゃし…。
一旦リセットと行こうじゃないか!」

「リセット…?」

「反転召喚じゃ、《ファイバーポッド》!」

「ファイバー…ポッド…?」

「このカードが裏から表になった時、ワシとお嬢さんのフィールド・手札・墓地のカードを全てデッキに戻して、互いに5枚ドローするという効果じゃ」

「な…!?そんな無茶苦茶な効果…

巨大な植物に覆われた壺のような砲台のような何かがフィールドへと現れると同時に、閃光がフロア内を覆う。

「うぁ…まぶし……」

閃光が収まり、フィールドを見遣るとそこにはもう何も残っていなかった。

「はっは!いつ使ってもこのカードはイカレとるのぉ」
手札:0枚→5枚

おじいさんは楽しそうに笑いながら、デッキからカードを5枚引く。

「(まずい…。防御カードを引けないと…)
ドローします…」
手札:0枚→5枚

デッキからカードを引き、手札を確認する。

「(よかった…フロストが引けた…。きっと出てくるとしてもモンスター1体ぐらいのはず…このターンは凌げる…)」

「ワシは1000のライフをコストに《いたずら好きな双子悪魔》を発動じゃ!」
手札:5枚→4枚
佐藤:LP6950→5950

「また、ハンデスカード…!?」

「お嬢さんの手札からランダムに1枚捨てさせ、さらに、もう1枚お嬢さんが選んで捨てる効果じゃ」

ディスクに《ゴーストリック・ハウス》が映し出された。

「(危ない…フロストは選ばれなかった…)」
手札:5枚→3枚

選ばれた《ゴーストリック・ハウス》と《ゴーストリック・スケルトン》を墓地へ送る。

「次に《手札抹殺》を発動じゃ」

「な…」

「さっきも使ったのぉ。互いの手札を全て捨てて、その数だけドローする」
手札4枚→3枚

「ぐ…」
手札:3枚→3枚

「その感じは防御カードが手札にあったかの?
なら安心して攻撃が出来そうじゃ。
墓地から《聖なる魔術師》《ヴァンパイア・ロード》を除外。
光と闇を生贄に降臨せよ、《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》!」[攻3000]
手札:3枚→2枚

青と金を基調とした鎧を身にまとった戦士が歪んだ剣を振るう。

「攻撃力3000…!」

「さらに、《お注射天使リリー》を召喚じゃ」[攻400]
手札:2枚→1枚

大きな注射器を抱えたナース姿の天使がフィールドに現れる。

「バトルじゃ。《お注射天使リリー》で攻撃」

「攻撃力400…(先にカオス・ソルジャーで攻撃されてたら危なかった…。でも、なんで400のモンスターで攻撃…?)」

「ダメージ計算時に《お注射天使リリー》の効果発動じゃ。
2000ライフ払って、リリーの攻撃力はそのダメージ計算時のみ3000アップする!」
佐藤:LP5950→3950

「なっ3400…!?
や、やめて…。いやだ!」

巨大な注射器がさらに巨大化し、天使が重そうに持ちながらこちらへと向かって来る。
咄嗟に背を向け、逃げようとするが、疲弊しきった体は咄嗟の動きに対応できず、倒れこんでしまう。

「いった……が!?!??」

無防備になった背中へと巨大な注射針が突き刺さる。

「あ……ぐ……ぁぁ……」

ごぽごぽと音を立てながら、注射器の薬液が体内に放出されている。

「い…あ………」

梨沙LP6750→3350


背中にほとばしる痛み。体の中へと何かが入って来る異物感。
疲弊しきった肉体。衝撃で疼く傷跡。
苦しみも言葉にならず、口からは延々とうめき声をあげている。
体中を駆け巡るその外的刺激は、梨沙の脳内をショートさせるには十分すぎた。

「(くる…しい…。頭がおかしく…)」

脳内をかき回されるような感覚に襲われ、意識が朦朧としだす。

「(しぬ…しんじゃう…ちから…ぬけて………)」

頭がふわふわして、何も考えられなくなった………。


突然、体から痛みが消えた。

「…!?」

己の体の違和感に反応し体がばっと起き上がる。
動くはずのない体が俊敏に動いたのだ。

「あ、れ………?」

疲労感も、苦しかったものも消えた。
立ち上がり体を動かしてみるが、どこも動かし辛いなどない。

「あ…あー」

声も問題なく出る。
フィールドへ向きなおせば先ほどより視界がクリアになっている気がする。

心の奥底から謎の感情が沸きあがる。

「ふふ…ふふふ…あははははははは!!!」

一時の静寂の後、梨沙の高らかな笑い声がフロア内に響き渡った。

「お嬢さん…大丈夫かね…?」

勝ちたい。

梨沙に沸きあがってきているのは、勝利への渇望。

「私が戦闘・効果でダメージを受けた時に手札の《ゴーストリック・マリー》の効果を発動します!」

体が思うように動く。
高らかに効果発動を宣言し、手札のマリーをおじいさんへと見せる。

「このカードを手札から捨てて、デッキからゴーストリック1体を裏側表示で特殊召喚しちゃいます!」
手札:3枚→2枚

「リリーが攻撃してから急に元気になっとるようじゃが…大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ!元気いっぱいです!」

あぁ、何故だろうか?とても楽しい。
デュエルが今すごく楽しい気分でいっぱいになっているのだ。
こんなに気分がいいのだ。せっかくなら楽しまなければ。

「そ、そうかい…?まぁ、大丈夫ならいいかの。
モンスターを出しても無意味じゃ!カオス・ソルジャーは戦闘でモンスターを破壊した場合にもう1度攻撃できる効果を持っておる!」

「関係ないですよー!デッキから《ゴーストリックの雪女》を特殊召喚です!」

「すごい楽しそうじゃのぉ…さっきと雰囲気が違いすぎるが…?」

「ほらほら、そんなことより!攻撃はするんですか!
それともしないんですか~?」

「そ、そうじゃな。攻撃するぞ。
《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》で、その伏せられたモンスターを攻撃じゃ!」

カオス・ソルジャーが剣を構え、雪女の元へ素早く移動してくる。

「あはは!セットされている雪女の効果です!このカードを戦闘破壊したモンスターは、裏側守備表示になり、自力では表示形式を変更できなくなります!」

「なに!」

カオス・ソルジャーが剣を振るうと、セットされていた雪女が破壊されるが、破壊した瞬間剣から徐々にカオス・ソルジャーが凍っていく。
そして、そのままフィールドから消えていく。

「裏側にされては攻撃が出来なくなるのぉ…」

「さぁさぁ!どうしますか?これでターンエンドですかね!」

「いや、永続魔法《悪夢の蜃気楼》を発動してからターンエンドじゃな」
手札:1枚→0枚


佐藤-LP:3950
手札:0枚


 [ターン8]


「わったしのターン!ドロー!」
手札:2枚→3枚

「このスタンバイフェイズに、《悪夢の蜃気楼》の効果を発動じゃ。
自身の手札が4枚になるようにドローする。そして、次の自分スタンバイフェイズにこの効果でドローした枚数分手札を捨てるぞ」
手札:0枚→4枚

「あはは!すごいドローですね!
私はモンスターとカードを1枚伏せてターンエンドですよ!」
手札:3枚→1枚


梨沙-LP:3350
手札:1枚


 [ターン9]


「ワシのターン、ドローじゃ」
手札:4枚→5枚

「確か、ドローした枚数分カードを捨てるんですよね!一気に4枚の墓地肥やし!
強いですね!」

「と見せかけて、速攻魔法《サイクロン》を発動じゃ。お嬢さんのセットカードを破壊させてもらうぞ」
手札:5枚→4枚

「セット除去に大切な1枚使ってもいいんですか~?
私はチェーンはないですよ♪」

「なら、速攻魔法《非常食》を発動する。ワシのフィールドの魔法・罠を好きなだけ墓地へと送り、墓地へ送った数だけ1000ライフ回復できるカードじゃ」
手札:4枚→3枚

「2000の回復?少しでも、手札消費を減らそうって感じですかね…。
いや、《悪夢の蜃気楼》は永続魔法…もしかして?」

「お察しの通りじゃ。《悪夢の蜃気楼》がフィールドからなくなれば、ワシは手札を捨てる効果を適用せんでも良くなる。発動中の《サイクロン》と《悪夢の蜃気楼》を墓地へと送り、2000のライフを回復するぞ!」
佐藤:LP3950→5950

「それで、残った手札は3枚ということですね。手札0から一気に手札が増えましたね。《サイクロン》の効果対象は《ゴーストリック・パニック》破壊されます」

「いいや、4枚じゃ。まだスタンバイフェイズじゃからな。
墓地の《キラー・スネーク》の効果で、このカードを手札に加える」
手札:3枚→4枚

「いつの間に…あー《手札抹殺》の時ですかね」

「その通りじゃ、メインフェイズに《天使の施し》を発動。
デッキから3枚引き、手札2枚を捨てる」
手札:3枚→6枚→4枚

「あはは!禁止カードのオンパレードですね!」

「禁止…?そうか、今はもう使えんカードになっとるのか」

「でも、ここなら使えるみたいですし、いいんじゃないですか~?
とんでもない効果が見れて楽しいですよ!」

「はっは、確かにとんでもないカードも何枚かあるのぉ。
次じゃ、《押収》発動じゃ。1000のライフをコストに相手の手札を確認して、墓地へ送る。お嬢さんの手札は残り1枚じゃからな。それを墓地へ送ってもらおうかの」
佐藤:LP5950→4950

「手札にあったのは罠カード《ゴーストリック・リフォーム》でした~」

「防御モンスターではなかったか。まぁ良い。
確か、カオス・ソルジャーは表に出来ないんじゃったな」

「はい!雪女の効果で、かちこちに凍っちゃってますから!」

「なら、カオス・ソルジャーを生贄に、《人造人間-サイコ・ショッカー》を召喚じゃ!」[攻2400]
手札:3枚→2枚

顔にガスマスクを装着した人型のモンスターがフィールドへと現れる。

「サイコ・ショッカーがフィールドに居る限り、すべての罠カードの効果は無効化され、罠カードは発動が出来なくなるんじゃ」

「罠カードが使えない!?あはは!
それはなかなか厳しいですね!」

「バトルじゃ。《人造人間-サイコ・ショッカー》で伏せモンスターに攻撃する。
電脳エナジーショック!」[攻2400]

サイコ・ショッカーが両手を掲げると紫色のオーラのようなものが丸型に形成され、それがセットされているモンスターの元へと飛ばされる。

「あはは!セットモンスターは《ゴーストリック・キョンシー》!
リバース効果発動です。リバース時に自分フィールドのゴーストリックの数以下のレベルのゴーストリックをデッキから手札に加えます!
私のフィールドにゴーストリックはキョンシーのみ!よって、レベル1の《ゴーストリック・ランタン》を手札に!」
手札:0枚→1枚

「そのカボチャは防御カード…!《お注射天使リリー》で攻撃だ!」

「当然手札の《ゴーストリック・ランタン》の効果を発動しますよ。
攻撃を無効にして、この子を裏側守備表示で特殊召喚します!」
手札:1枚→0枚

「ワシはカードを1枚伏せて、ターンエンドじゃ」
手札:2枚→1枚


佐藤-LP:4950
手札:0枚


 [ターン10]


「何か引かないと負けちゃいますね!
ドロー!」
手札:0枚→1枚

とても楽しい。負けそうなこのタイミングでの逆転できるかどうかのこの一枚。
あぁ、デュエルしてるって感じがしている。

「あははは!私がドローしたのは《死者蘇生》です!
即発動して、おじいさんの墓地からレベル1の《キラー・スネーク》を特殊召喚します!」
手札:1枚→0枚

「ワシの墓地から?」

「また手札の総数増やされても嫌ですからね!
さぁ、行きますよ!
反転召喚《ゴーストリック・ランタン》!」

フィールドへとふわりとランタンが降り立つ。

「レベル1のランタンとキラー・スネークの2体でオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!

駆け抜けろ!ランク1!《ゴーストリック・デュラハン》!」

エクシーズ召喚の爆発と共に、デュラハンがフィールドへと現れ、剣を振るう。

「何回も呼びましたから、効果憶えてますかね?
オーバーレイユニットを1つ使って、サイコ・ショッカーの攻撃力を半分にしますよ!
カース・プランク!」

デュラハンが自らの甲頭部を掲げると、ヘルムの中から青紫の目が映り、サイコ・ショッカーの周りを青いオーラが漂う。

「そして、デュラハンを素材にオーバーレイネットワークを再構築!
ランクアップ、エクシーズチェンジ!

イタズラはいくらでも!ランク4!《ゴーストリックの駄天使》!」[攻2000]

ピンクの髪をさらさらと靡かせながら、フィールドへと降り立つ駄天使。

「駄天使!今日も可愛いね!
少し忙しいけど頑張ろうね!」

駄天使へと声を掛けると、駄天使はにっこりとこちらを振り返り、手でオッケーのポーズをとる。

「駄天使の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除いて、デッキからゴーストリック魔法・罠カード、《ゴーストリック・ロールシフト》を手札に加えます。
トリック・プレゼント!」
手札:0枚→1枚

駄天使が辺りを浮遊する継ぎ接ぎのハートを手元へ引き寄せ、指先でくるくると回すと、継ぎ接ぎがほどかれ中からカードが現れる。
駄天使は出てきたカードを梨沙へと渡す。

「ありがとうね!さらーに!墓地に送られた《ゴーストリック・デュラハン》の効果。
墓地からゴーストリックカード、《ゴーストリック・マミー》を手札に加えます!
トリック・リバイバル!」
手札:1枚→2枚

小さな青白い人魂がフィールドへと現れ、私の手元へ来ると1枚のカードへと変わった。

「まだ行きますよ!墓地から罠発動《ゴーストリックリフォーム》!」

「な、墓地から罠じゃと!?」

「時代は進んでいるのです!
サイコ・ショッカーも墓地の罠カードの効果までは防げません。
墓地から除外する事で、自分フィールドのゴーストリックエクシーズ1体があら不思議!別のゴーストリックへ早変わり!」

ランタンとスペクターが白と水色な大きな布を上空へと持って来る。駄天使がおじいさんに向けて手を振ると、大きな布が駄天使を覆う。

「ゴーストリックチェンジ!

主様の登場!ランク3、《ゴーストリック・アルカード》!」[攻1800]

大きな布がもごもごと動くと、そこからたくさんのコウモリが出てきて、そのまま布を持って行ってしまう。
するとそこには、コウモリを従えたアルカードが立っていた。

「アルカードの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使って、相手フィールドのセットカード1枚を対象に破壊します。私はおじいさんのセットカードを破壊しますよ。
シャドウ・プランク!」

アルカードが指をパチンと鳴らすと、コウモリが対象のカードの元へと向かい影となってカードを真っ黒に覆うと破壊した。

「セットカードは《リビングデッドの呼び声》じゃ。
しかし、次から次へとモンスターが出てくるのぉ…ワシにはついていけんよ」

はははとおじいさんは笑っている。

「まだまだ頑張っちゃいますよ!アルカードに重ねてもう一度オーバーレイネットワークを再構築!

エクシーズチェンジ!
何度だって、ランク4《ゴーストリックの駄天使》!」[攻2000]

再び駄天使がフィールドへと降り立った。

「駄天使の効果です。デッキから《ゴーストリック・ブレイク》を手札に加えます。
さらに、墓地へ送られたアルカードの効果で、墓地から《ゴーストリック・スケルトン》を手札に加えます」
手札:2枚→3枚→4枚

駄天使が被っているシルクハットを外し、その中へ継ぎ接ぎのハートを入れてシャカシャカするとそこからカードが出てきて渡してくれる。
さらに、小さなコウモリが手元へ黒いカードを持ってきてくれ、受け取るとそれは《ゴーストリック・スケルトン》へと変わった。

「みんなありがとう!
さっき手札に加えた《ゴーストリック・マミー》を召喚!」
手札:4枚→3枚

地面からマミーがのそりとフィールドへと這い上がって来る。

「そして、マミーの効果で私は通常召喚に加えてゴーストリックの召喚が出来ます!
手札から《ゴーストリック・スケルトン》を召喚!」
手札:3枚→2枚

地面に闇が現れそこから、カタカタと音を立てながらスケルトンが浮かび上がってくる。

「2体のレベル3モンスターでオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!

来て、ランク3《ゴーストリック・アルカード》![攻1800]

さらに、そのままランクアップエクシーズチェンジ!

3体目の、《ゴーストリックの駄天使》!」[守2500]

浮かぶ巨大な継ぎ接ぎハートに座って、もう一体の駄天使が現れた。

「駄天使の効果です!オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから《ゴーストリック・アウト》を手札に。
墓地へ送られた、アルカードの効果で墓地から《ゴーストリック・ランタン》を手札に加えます!
手札:2枚→4枚

さぁ、バトルに入りますよ!
《ゴーストリックの駄天使》で、《人造人間-サイコ・ショッカー》を攻撃します!
ミスチーフ・ボム!」

駄天使がドレスから紫と桃色の継ぎ接ぎのハートを取り出し、サイコ・ショッカーの方へと放り投げる。
投げられたハートは途中で巨大化し、サイコ・ショッカーに触れると爆発し、ピンクや紫の煙をあたりに振り撒いた。

佐藤LP4950→4150


「おっとと…爆発で倒れそうじゃったわ…」

「デュエルはまだまだこれからですよね!?
私はカードをさ~んまいセットして!ターンエンドです!」
手札:4枚→1枚


梨沙-LP:3350
手札:0枚


 [ターン11]


「最初の面影が見えん程に元気いっぱいじゃな…。
ワシのターン、ドロー」
手札:1枚→2枚

「《サンダー・ボルト》発動じゃ!
相手モンスターを全て破壊するんじゃ」
手札:2枚→1枚

「ダメですよ!罠発動《ゴーストリック・アウト》!
手札の《ゴーストリック・ランタン》を相手に見せる事で、このターン自分のゴーストリックカード及び裏側守備モンスターは相手の効果で破壊されず、効果の対象になりません!」

「破壊されないじゃと!?
順番を間違えたかのぉ」

梨沙のフィールドの上空から雷撃が落ちるも、黒い靄がそれを受け止めてしまい、雷撃は一瞬で消え去った。

「《死者蘇生》を発動じゃ。ワシの墓地から《人造人間-サイコ・ショッカー》を呼び戻すぞ」
手札:1枚→0枚

再びフィールドへガスマスクをしたモンスターが現れる。

「バトルじゃ。サイコ・ショッカーで駄天使?を攻撃じゃ」[攻2400]

「ダメですダメです!手札の《ゴーストリック・ランタン》の効果です。
サイコ・ショッカーの攻撃を無効にして、このカードを裏側守備表示で特殊召喚!」
手札:1枚→0枚

「そういえば、手札に回収しておったの…。
なら、《お注射天使リリー》でその伏せモンスターを攻撃じゃ」

リリーが注射器をセットモンスターへと突き刺すと、セットされたランタンは破壊された。

「これでワシはターンエンドじゃ」


佐藤-LP:4150
手札:0枚


 [ターン11]


「サイコ・ショッカーで罠が使えないですからね!
何かいいカードが引けるでしょうか?私のターン、ドロー!」
手札:0枚→1枚

ドローしたカードを確認し、自然と笑顔が溢れる。

「引けました!いいカード!」

「ほぉ…何を引いてきたのかの」

「見せてあげましょう!手札から《ゴーストリックの魔女》を召喚です!」
手札:1枚→0枚

黒い帽子をかぶった小さな魔女が箒に乗ってフィールドへとやって来た。

「魔女の効果発動です!1ターンに1度、相手モンスター1体を裏側守備表示に変更します!
私が対象にするのはもちろん、《人造人間-サイコ・ショッカー》!」

魔女が箒をくるくると回し、サイコ・ショッカーの方へと箒を向けると小さな星がたくさんサイコ・ショッカーの周りを回り出し、サイコ・ショッカーはフィールドからパッと消えた。

「これで、罠カードの発動は無効化できんのぉ…。
じゃが、《お注射天使リリー》の実質攻撃力3400は突破出来んじゃろう」

「突破しなくても問題ないです!
《ゴーストリックの魔女》は、1ターンに1度、自身も裏側表示になれます。

魔女が箒に乗り、くるんと一回転するとフィールドからいなくなる。

「駄天使2体の効果を使います。デッキから《ゴーストリック・ミュージアム》と《ゴーストリック・パニック》を手札に加えます。
手札:0枚→2枚

そして、フィールド魔法《ゴーストリック・ミュージアム》発動です!」
手札:2枚→1枚

フィールド魔法を発動すると、背後にゴーストリックの美術館がそびえたつ。

「このフィールド魔法の効果で、相手フィールドに裏側モンスターしかいない場合、モンスターの攻撃は直接攻撃になり、相手に戦闘ダメージを与えたモンスターは裏側守備表示になります!」

「ダメージを与えると裏側になる…?」

「守備表示の駄天使を攻撃表示にして、バトルに入りますよ。
そして、永続罠《ゴーストリック・ロールシフト》発動です!私のセットモンスター《ゴーストリックの魔女》を対象に効果を使います。
そのモンスターを表側攻撃表示に、それがゴーストリックモンスターだった場合相手の表側モンスターを裏側守備表示に出来ます!」

「と、ということは…?」

「セットモンスターは当然ゴーストリックなので、おじいさんの《お注射天使リリー》を裏側守備表示にします!」

「確かフィールド魔法でワシは直接攻撃をされるんじゃったか…?」

「そうです!全モンスターで攻撃すればおじいさんのライフは0になります!」

「はっはっは、こりゃやられたのぉ。何とも面白いモンスター達じゃな」

「ありがとうございます!さぁ、覚悟してくださいよ?
バトルです!
《ゴーストリックの駄天使》でダイレクトアタック!
ミスチーフ・ボム!」[攻2000]

駄天使が継ぎ接ぎのハートをおじいさんに向けて放る。
おじいさんに触れたそれは大きな爆発音をあげた。

「ば………」

おじいさんの眼鏡が吹き飛ばされ、おじいさんは地面へとうつ伏せに倒れた。

佐藤LP4150→2150


「あはは!ダメージを与えた事で、駄天使は裏側守備表示になります!
続いていきますよ!
2体目の駄天使でダイレクトアタック!
ミスチーフ・ボム2回目!」

駄天使が自身の乗っていた継ぎ接ぎのハートを蹴って、おじいさんの元へと飛ばす。
再びおじいさんに触れたそれは爆発した。

「………

おじいさんの付近からは煙が上がっている。

佐藤LP2150→150


「ダメージを与えた事で、2体目の駄天使も裏側になります!
これで、最後です!
《ゴーストリックの魔女》でダイレクトアタック!!!」

魔女が魔法を唱えると、大きな星が落ちてきた。
魔女はその星をゴルフボールの様に箒でおじいさんの元へと飛ばす。
打たれた星は瞬間砕け、小さな星の雨がおじいさんの元へと降り注いだ。

佐藤LP150→0


「あはははははははは!!!
勝ちました!私の勝ちですよ!
勝てた!勝てたぁ!勝っちゃいましたぁ!」

心の奥底から嬉しさがこみあげてくる。
禁止カードが積まれたおじいさんのデッキを相手に勝利を納めた。
楽しい楽しいデュエルをおじいさんと繰り広げる事が出来た。
一時危ない場面も見られたが、何とかこのデュエルも生き残れたのだ。

生き残れた………?

そう無事だったんだ。瀕死の状態でデュエルをして、命からがら何とか勝てた。
楽しむ余裕なんてものはないはずなのに、デュエルが終わったにも関わらず止まぬ心の弾み。
目の前には、さっきまで楽しそうに喋っていたおじいさんが物一つ言わず、うつ伏せになっている。
あぁ、楽しい。幸せだ………



なにが…そんなにたのしいの?



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