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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#24「吹き荒れる烈風」

Report#24「吹き荒れる烈風」 作:ランペル




梨沙-LP:3000
手札   :5枚
モンスター:《ゴーストリック・キョンシー》[裏]
魔法&罠 :なし

ーVSー [ターン2]

渚-LP:3500
手札   :2枚
モンスター:《神鳥シムルグ》《ダーク・シムルグ》《ダークネス・シムルグ》《王神鳥シムルグ》《招神鳥シムルグ》
魔法&罠 :《神鳥の霊峰エルブルズ》



「まずは反転召喚!《ゴーストリック・キョンシー》!」[攻400]

ぴょんと跳ねてキョンシーが曲がらない腕を真っすぐに伸ばしフィールドへと現れる。

「ふむ…なんとも可愛らしいモンスターを使うんだね」

「みんないたずらっ子なんです。キョンシーのリバース時の効果発動。
フィールドのゴーストリックの数以下のレベルのゴーストリックをデッキから手札に加えます。フィールドにゴーストリックは1体…よってレベル1の《ゴーストリック・フロスト》を手札に加えます」
手札:5枚→6枚

キョンシーが辺りを見回したのち、ぴょんと1度跳ねるとデッキからカードが1枚飛び出してくる。
梨沙が飛び出したカードを手札に加えると同時に、渚はデュエルディスクの画面部分を注視している。

「(《ゴーストリック・フロスト》…攻撃反応系のモンスターか…。)
やはり、リバーステーマみたいだね。けど《ダーク・シムルグ》がいる限り、梨沙君はカードをセットできない。
どうするつもりだい?」

「強硬突破です!
《ゴーストリック・マミー》を召喚。マミーの効果で通常召喚に加えてゴーストリックを召喚できます。追加で《ゴーストリック・グール》を召喚です!」[攻1500][攻1100]
手札:6枚→4枚

地面からミイラ男と腐敗した屍食鬼が這い出して来る。

「レベル3の《ゴーストリック・キョンシー》と《ゴーストリック・マミー》でオーバーレイネットワークを構築。
エクシーズ召喚!

来て、ランク3《ゴーストリック・アルカード》」[攻1800]

召喚の爆発と共に、地面が影で覆われコウモリ達と共に棺がせりあがって来る。


「さらに、アルカードでオーバーレイネットワークを再構築。
エクシーズチェンジ!

来て、ランク4《ゴーストリックの駄天使》」[攻2000]

召喚の爆発の後、上空からピンク髪の天使が白黒の翼をぱたぱたさせながらフィールドへと降り立つ。
その周囲を、小さなピンクと紫の継ぎ接ぎのハートが3つ周回している。


「かわいい…」

ドレスを着た少女はピンク髪の駄天使を見てそう呟く。
少女に気づいた駄天使はにこりと微笑み、彼女へ手を振る。

「わっ…!(反応した!)」

「ふふっ、駄天使の効果発動です。オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからゴーストリック魔法、罠1枚を手札に加えます。
私は《ゴーストリック・アウト》を手札に加えます!
トリック・プレゼント!」
手札:4枚→5枚

駄天使が周囲に漂っていた継ぎ接ぎのハートを手中に収めぎゅっと握る。
握った手を開くとどこに圧縮されていたのか1枚のカードが飛び出て、それを梨沙へと投げ渡す。

「ありがと。さらに、墓地へと送られた《ゴーストリック・アルカード》の効果で墓地からゴーストリックカード1枚を手札に回収できます。
私は墓地から《ゴーストリック・マリー》を回収です。
トリック・リバイバル!」
手札:5枚→6枚

梨沙の手元の何もない所が影に覆い尽くされ始め、それは1枚のカードを形成し手札へと加わった。

「サーチにサルベージ…手札が減らないねぇ」

「それでは、《ダーク・シムルグ》にはどいてもらいますよ!」

「《王神鳥シムルグ》の効果で《ダーク・シムルグ》は効果の対象にならない。
戦闘破壊するにしても、《ダーク・シムルグ》を戦闘破壊する攻撃力のモンスターは居ないけど、何をしてくるのかな…?」

「《ゴーストリック・グール》の効果です!自分のゴーストリック1体は、次のターン終了時まで、フィールドのゴーストリックすべての攻撃力を合計した数値になります。
私は駄天使を対象として、グールの攻撃力が1100、駄天使は2000、合わせて攻撃力を3100にします!」[攻3100]

「パンプアップか。にしてもギリギリだね」

「はい!危なかったです。さっきグールを引けてなかったら私は負けてましたね!」

そう言う梨沙は笑顔を振りまく。
その笑顔を見た渚は、表情を強張らせ一筋の冷や汗を流す。

「(底が知れないな…。)
だが、《ダーク・シムルグ》を突破したとしても、ボクが有利な状況に変わりはないよ」

「それはやってみないと分かりません。
バトルです!
《ゴーストリックの駄天使》で《ダーク・シムルグ》を攻撃。
ミスチーフ・ボム!」

駄天使は両手を叩く。
すると、ぽんっと大きめの継ぎ接ぎのハートが《ダーク・シムルグ》の眼前へと出現する。駄天使がウィンクと共に指を鳴らすと、神鳥の前へと現れた継ぎ接ぎのハートは可愛らしくドクロマークに爆発する。

渚LP3500→3400


「爆発系か…(直撃が怖いな…)」

渚は《ダーク・シムルグ》を破壊した緩やかな爆風を少し浴びる。

「これでセットを封じられることはなくなりましたね。
メインフェイズ2に入って、グールの効果発動。
1ターンに1度、自分自身を裏側守備表示に変更できます」
《ゴーストリック・グール》:表→裏

グールはその場に横になると、その場から消える。

「さらに、カードを3枚セットしてターンエンドです!」
手札:6枚→3枚

「伏せが3枚…怖いね。
エンドフェイズに《神鳥シムルグ》の効果で、魔法、罠を1枚しかコントロールしていないボクは500のダメージを受けるよ。

緑の神鳥が巻き起こした旋風は渚の体を突き抜ける。

「っ……」

渚LP3400→2900


「さらに、《王神鳥シムルグ》の効果も発動だ。
互いの使用していない魔法&罠ゾーンの数以下のレベルの鳥獣族を特殊召喚。
空いているゾーンは7か所、レベル3の《死神鳥シムルグ》特殊召喚」[守200]

王神鳥が再び風を巻き起こすとその風に乗って、深緑色の翼を持ったシムルグがフィールドへと降り立ち、羽を閉じる。



梨沙-LP:3000
手札:3枚


 [ターン3]


「ボクのターン、ドロー。
手札:2枚→3枚

早速だけど、伏せを剝がさせてもらう。
手札の《護神鳥シムルグ》をコストに、《神鳥の排撃》発動。
相手の魔法、罠ゾーンのカードすべてを持ち主の手札にへと戻す!」
手札:3枚→1枚

《神鳥シムルグ》が巨大な翼を振るうと、暴風が梨沙の元へと届く。

「罠発動《つり天井》!
フィールドにモンスターが4体以上いる時、表側のモンスターを全て破壊します」

「全体除去か。だけど、《ダークネス・シムルグ》の効果発動!
《招神鳥シムルグ》をリリースして、魔法、罠の効果の発動を無効にして破壊させてもらう!」

《ダークネス・シムルグ》が翼を大きく広げる。

「チェーンして罠発動《もの忘れ》!
相手の攻撃表示モンスターが効果を発動した時、その発動を無効にしそのモンスターを守備表示に変更します!」

「対象を取らない効果…!?
(指名者を警戒したのが仇になったか…)」

罠から放たれた青色の光が《ダークネス・シムルグ》に到達する。
すると、翼を広げたまま硬直し、首を傾げたかと思えば、翼を仕舞いこんでしまう。

「おまけです、罠発動《ゴーストリック・アウト》。
手札の《ゴーストリック・マリー》を相手に見せる事で、このターン私のゴーストリックカード及び裏側守備表示モンスターは効果対象にならず、カード効果で破壊されなくなります」

「これで、《つり天井》の効果で駄天使が破壊されなくなった訳か…」

「そういうことです!」

「…やってくれるじゃないか!」

駄天使が頭にかぶっていたシルクハットを宙へ放ると、それは巨大化し駄天使をすっぽりと覆い隠してしまう。
針が無数に生えた天井が出現し、それはフィールドへと重力のままに落ちてきた。
衝撃と粉塵の後には、駄天使が出現させたシルクハット以外にモンスターは残っていなかった。
駄天使が大きくなったシルクハットから出てきて左右をきょろきょろと確認する。

「ボクは、《絶神鳥シムルグ》を召喚」[攻2100]
手札:1枚→0枚

フィールドへ黒い翼のシムルグが舞い降りる。

「召喚時デッキから《烈風の覇者シムルグ》を墓地へと送り、《神鳥の烈戦》を手札へと加える。
手札:0枚→1枚

さらに、梨沙君の魔法、罠がなくなったことで、墓地の《死神鳥シムルグ》《護神鳥シムルグ》は特殊召喚できる。蘇れ!」[守200][守1000]

深緑の翼と、アメジストのように美しい紫の翼を広げた2体のシムルグが梨沙の眼前のフィールドをなぞる様に左右から滑空し、渚のフィールドへと降り立つ。

「全部破壊したのに、もう3体も…」

「破壊されてもまた呼び出せばいいだけだよ。
ボクは《死神鳥シムルグ》《護神鳥シムルグ》《絶神鳥シムルグ》の3体をリンクマーカーにセット。
リンク召喚!

来たれ、LINK3《王神鳥シムルグ》」[攻2700]

再び神鳥が金色の装飾を纏い金の王冠を被りフィールドへ、金色のつむじ風と共に舞い降りる。

「バトルに入るよ。《王神鳥シムルグ》でセットモンスターを攻撃」

シムルグが翼を羽ばたかせ、セットモンスターの元へ竜巻が巻き起こり破壊する。

「グールが…」

「攻撃力を集約させるモンスターは居なくなった。
メイン2にカードを1枚セット。
手札:1枚→0枚

エンドフェイズに《王神鳥シムルグ》の効果で、使用されていないモンスターゾーンの数は9か所。
レベル7の《ダーク・シムルグ》をデッキから特殊召喚!」[攻3000]

黒い風が吹き始め、赤い装飾の入った王冠を揺らしながら黒い神鳥がフィールドへ推参する。

「うぐ…またそのモンスター…」

「やっぱりセットは封じ得だったからね。これで、梨沙君はまたカードのセットが出来なくなった。打点強化のグールもいない」



渚-LP:2900
手札:0枚


 [ターン4]


「いなかったら蘇らせるまでです。
私のターン、ドロー!
手札:3枚→4枚

駄天使の効果発動です。オーバーレイユニットを1つ使って、デッキから《ゴーストリック・リフォーム》を手札に」
手札:4枚→5枚

継ぎ接ぎのハートを元の大きさに戻ったシルクハットの中へと放り込み、シルクハットを横に振るう。そして、その中へ手を突っ込み1枚のカードを取り出す。

「うん、ありがとね。
《魔界発現世行デスガイド》を召喚します」[攻1000]
手札:5枚→4枚

黒いバスがフィールドへやって来る。プシューっと扉の開閉音をさせながら、赤髪ツインテールのバスガイドがバスから降りてくる。

「デスガイドの召喚時、手札かデッキからレベル3の悪魔族1体を効果を無効にして特殊召喚できます。
《魔サイの戦士》を特殊召喚!」[守900]

赤髪のガイドが笛を吹くと、バスから槍を持ったサイの魔人が降車してくる。

「レベル3のデスガイドと《魔サイの戦士》2体でオーバーレイ!
エクシーズ召喚。

来て、《ゴーストリック・アルカード》!」[攻1800]

地面から黒い靄が溢れ、そこで赤い目が光ったかと思うと、真っ白な顔に牙を生やしたアルカードがコウモリと共にフィールドへと顕現した。

「アルカードの効果発動です。オーバーレイユニットを1つ使い、渚さんのセットカードを対象にそのセットカードを破壊します!
シャドウ・プランク!」

アルカードが周囲を飛ぶコウモリに指示を出すと、コウモリはセットカードへ向かい、触れると同時にカードは真っ黒な影に覆われる。

「その効果で破壊できるのは、セットカードだけ。
永続罠オープン《神鳥の烈戦》。
梨沙君はボクのフィールドで一番攻撃力の高い鳥獣族しか攻撃と効果の対象に選べなくなる」

「表側になったことで、破壊効果は不発です。
ですが、墓地へと送られた《魔サイの戦士》の効果でデッキから悪魔族《ゴーストリック・スペクター》を墓地へ送ります」

ディスクの画面からスペクターを選択し、デッキから飛び出したカードを墓地へと送る。

「アルカードに重ねて再度オーバーレイ!
エクシーズチェンジ。

来て、2体目の《ゴーストリックの駄天使》!」[守2500]

大きめの継ぎ接ぎのハートがフィールドへ現れると、その上へ2体目の駄天使が降ってきてぽよんと1度跳ね、浮かぶハートの上へと座る。

「駄天使の効果発動。手札のゴーストリックカード1枚を自身のオーバーレイユニットにすることが出来ます。私は手札の《ゴーストリック・リフォーム》をオーバーレイユニットに。
コレクト・パッチワーク!」
手札:4枚→3枚

梨沙が駄天使へカードを放ると駄天使はそれを受け取り、自身が座っているハートの中へと突っ込む。
なんの違和感もなく、まるで水に物が溶け込むかのようにハートの中へと吸い込まれたカードは、駄天使が取り出すと辺りを漂うものと同じ小さな継ぎ接ぎのハートとなっていた。

「さらに、駄天使の効果発動。オーバーレイユニットを1つ使って、デッキから《ゴーストリック・ブレイク》を手札に加えます!」
手札:3枚→4枚

先程ハートになったばかりのそれを、駄天使は指先でくるくると回し始める。
縫い合わされた継ぎ接ぎが解かれ、中から1枚のカードが現れる。

「ありがとう!
さぁ、行きますよ。《死者蘇生》発動!」
手札:4枚→3枚

「…!ストレートに解決してきたね…。
(さっきよりモンスターの総数が増えてるから…)」

「私は墓地から《ゴーストリック・グール》を蘇生させますよ」[守1200]

地面から緑の腐敗した腕が突き出てきて、土埃と共にグールがフィールドへと這い出てくる。

「グールの効果発動です。フィールドのゴーストリックの攻撃力を、攻撃表示の駄天使に集約させます。攻撃力の合計は5100です!」[攻5100]

緑色のオーラを纏った駄天使は大きく背伸びをする。

「行きますよ。2000ちょっとなので、結構痛いとは思いますが…。
いやでもかなり痛いかも…死にはしませんよね!?」

梨沙は少しあたふたと焦りながら、ダメージによる死の可能性を問う。
渚は、自分の死を回避しようとするような発言に、改めて呆気に取られる。

「対戦相手にそれを聞くのはどうなんだい?」

「で、ですよね…。私の経験上死ななかった気がしたので…」

「まぁ、当たり所にも寄るだろうけど…。
明確に死が線引きされているのは3000以上のダメージによるライフが0になる事だ。
3000以下の戦闘ダメージなら、肉体が弱ってなければ死の可能性は低いだろうね」

梨沙の問いに至って真面目に回答する渚。

「それを言っちゃうと鳥のお姉ちゃん攻撃されちゃうけどいいの?」

自ら攻撃を是正しているようにも見えた渚の発言に穂香が疑問を抱く。

「梨沙君もリスクは承知の上で、ボクへのダメージを気にしてるんだ。知らないことに答えるのもやぶさかじゃないだろ?
それに、ボクだって梨沙君を殺すつもりなんだ。手傷を負っても仕方ないさ」

ほんの少しの微笑みを見せた渚はすぐに梨沙の方へと向き直る。

「変なの…」

「痛くないようにするのは、まだ難しいので許してくださいね渚さん。
バトルです。
《ゴーストリックの駄天使》で《ダーク・シムルグ》を攻撃です。
ミスチーフ・ボム!」

駄天使が両手を頭上に掲げ、エネルギーを溜める。頭上で継ぎ接ぎのハートが作り出され、それはだんだんと膨張し膨らんでいく。
大きくなった継ぎ接ぎのハートを、《ダーク・シムルグ》の方へと放る。

「「穂香ちゃん(君)、離れてて」」

爆弾とは思えないふんわりとした挙動は見た目にたがわずそれに触れた黒い神鳥をふんわりと包み込む。
その瞬間、閃光が迸り、ピンクと紫の爆炎を巻き上げ巨大な爆発が巻き起こった。

「ぐ…うわああぁぁ!!!」

渚LP2900→800


爆風で、渚の体は後方へと吹き飛ばされる。背後のシャッターまで届くことはなく、放り投げられた体は地面へと叩きつけられた。

「ぐ…げほっごほっ……っ…!?」

衝撃と煙で咳き込むと、叩きつけられた背中に痛みが走る。

「渚さん!大丈夫ですか!?」

自らがした攻撃宣言で、ダメージを受けた相手の事を本気で心配しているようだ。
どこか歪なその気遣い。記憶を失った彼女をこうさせたのは、言うまでもなくこの実験場だろう。

「あぁ…死んではないよ…ごほっ…」

「デュエルが終わったら、傷とか見せてくださいね…」

「大丈夫だよ梨沙君、傷は自分で治せる…。
それに君に診てもらう事は叶わない…。
鳥獣族が戦闘破壊された時、墓地の《烈風の覇者シムルグ》の効果だ。
このカードを手札に加える」
手札:1枚→0枚

「私は《ゴーストリック・グール》の効果で、自身を裏側守備表示に変更。
カードを1枚伏せてターンエンドです」
手札:1枚→0枚

「エンドフェイズ。《王神鳥シムルグ》効果だよ。
説明はいらないよね?使用されていないゾーンは9か所。
レベル3の《死神鳥シムルグ》を守備表示で特殊召喚」[守200]

銀色の王冠を揺らし赤い目を光らせた鳥獣がフィールドへと降り立ち、翼を畳む。



梨沙-LP:3000
手札:2枚


 [ターン5]


「ボクのターン…ドロー」
手札:1枚→2枚

背筋に痛みがある様で渚はデッキからゆっくりとカードを引く。
そして、引いたカードを確認する事もなく左目を瞑り瞑想する。
静寂の中聞こえるのは、フィールドを駆け巡る風の音だけだ。

「渚さん…?」

「あぁ…大丈夫だ。
覚悟は決めた…」

目を開いた渚はドローしたカードを確認し、確認した物とは別の1枚を梨沙へと公開する。

「《神鳥の霊峰エルブルズ》の効果で、手札の《烈風の覇者シムルグ》を見せて、鳥獣族の召喚に必要なリリースを1体減らす。
《死神鳥シムルグ》をリリース。
アドバンス召喚!

来たれ、《烈風の覇者シムルグ》!」[攻3200]
手札:2枚→1枚

フィールドに流れる風の勢いが激しくなる。
そして、吹き荒れる風がピタリと止んだかと思えば、背後に金色の円を複数浮かべた緑の神鳥がその巨体を露わにする。

「また別のシムルグですか…!」

「風属性のアドバンス召喚に成功したことで、墓地の《ダークネス・シムルグ》を特殊召喚だ」[攻3200]

閑静な空間に再び風が吹き始め、黒風と共に《ダークネス・シムルグ》が翼を広げ飛び立つ。

「さらに、600ライフをコストに《翼の恩返し》発動。
デッキから2枚ドローする。
渚LP800→200
手札:1枚→2枚

(行けるか…?)
墓地から《風の精霊 ガルーダ》を除外し《風の精霊 ガルーダ》を特殊召喚!」[攻1600]
手札:2枚→1枚

茶色の翼を羽ばたかせ、顔が鳥になった鳥人がフィールドへ着地する。

「貼り替え発動、フィールド魔法《神鳥の霊峰エルブルズ》」
手札:1枚→0枚

「そのフィールド魔法には発動時の効果はないはず…?」

「《烈風の覇者シムルグ》の効果発動。魔法か罠の効果が発動した時《風の精霊 ガルーダ》をリリースして、攻撃表示の《ゴーストリックの駄天使》を対象にデッキへと戻させてもらう!」

「デッキバウンス効果!?」

神鳥が声をあげると、《風の精霊 ガルーダ》が羽を散らしフィールドからいなくなる。
巨大な翼を羽ばたかせ、先ほどまで止んでいた風が吹き荒びはじめ、駄天使を吹き飛ばす。

「駄天使…!」

「梨沙君のライフは3000だ…。
決めさせてもらうよ。バトル。
《王神鳥シムルグ》でセットモンスターを攻撃」

セットされたグールの元へ王神鳥が飛び立ち己が巨体で押し潰す。

「罠発動《ゴーストリック・ブレイク》!
ゴーストリック1体が戦闘か相手の効果で破壊された時、墓地から2体のゴーストリックを裏側で蘇生させます」

「無駄だ。《ダークネス・シムルグ》の効果を発動。
《王神鳥シムルグ》をリリースし、魔法か罠の効果の発動を無効にして破壊する!」

「ぐ…」

黒い神鳥が突風を巻き起こすと、その突風は王神鳥と共に罠カードを吹き飛ばしてしまう。

「《ダークネス・シムルグ》、守備表示の《ゴーストリックの駄天使》を攻撃だ」

黒い神鳥は、黒い旋風を駄天使の元へと巻き起こし駄天使の乗っていた継ぎ接ぎのハートを吹き飛ばし、暴風は駄天使の体を切り刻みそのまま破壊する。

「…!(駄天使ごめんね…)
墓地へ送られた《ゴーストリック・アルカード》の効果発動。墓地から《ゴーストリック・マミー》を手札に加えます」
手札:2枚→3枚

「これで、フィールドのカードはゼロ。回収したモンスターの効果も召喚権の追加だ。
梨沙君これで終わりだ。悪く思わないでくれよ…。
《烈風の覇者シムルグ》でダイレクトアタックだ!」[攻3200]

「まだですよ!
相手モンスターの直接攻撃宣言時に手札の《ゴーストリック・フロスト》の効果を発動です」

「っ…!最初のターンで手札に加えていたカードか!?」

「攻撃モンスターを裏側守備表示に変更して、自身を裏側守備表示で特殊召喚!」[守100]
手札:3枚→2枚
《烈風の覇者シムルグ》:表→裏

梨沙の後ろから巨大な雪玉が転がって来て、神鳥を飲み込んでしまう。
その雪の塊を見て満足そうにフロストがその場へとぺたーっと座り込み居なくなる。

「雪だるま」

「最初にサーチしてからずっと持っていたのか…頭から抜けていたよ…」

「発動する機会がなかったのもありましたけどね!」

「ボクはターンエンドだよ…。
(王神鳥をリリースしてしまったな…妨害は《ダークネス・シムルグ》だけ…。
《神鳥の烈戦》も使えない………)」



渚-LP:200
手札:0枚


 [ターン6]


「私のターンですね。ドロー」
手札:2枚→3枚

「(グールはどけてある…《ダークネス・シムルグ》の打点さえ越えられなければ…)」

現在の盤面を突破されない事を願いながら、渚は体を強張らせる。

「大丈夫ですよ。
最初に言った通り!渚さんを殺したりなんかしませんから!
《ゴーストリック・フロスト》を反転召喚です」[攻800]

水色の帽子と冬服に身を包んだ雪だるまのモンスターがのそりとフィールドで立ち上がる。

「《ゴーストリック・マリー》を召喚!」[攻100]

鏡台と共にヒビの入った丸い鏡がフィールドへ現れ、鏡には青いドレスに身を包んだ白髪の少女が映っている。

「フロストとマリーの2体でオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!

来て、ランク1《ゴーストリック・デュラハン》」[攻1200]

青い人魂を周囲に浮かべた、首なしの騎士が青白い肌の馬に乗って駆けてくる。

「新しいエクシーズ…」

「デュラハンの効果発動です。オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスター1体を対象にその攻撃力をターン終了時まで半分に出来ます!」

「打点半減効果か…」

「私が対象に取るのは当然《ダークネス・シムルグ》です。
カース・プランク!」[攻1600]

デュラハンが持っている剣を《ダークネス・シムルグ》へと向けると、周囲を浮遊していた人魂が《ダークネス・シムルグ》の元へと向かいその翼を青い炎で焼き始める。

「デュラハンを素材にオーバーレイネットワークを再構築!
エクシーズチェンジ!

来て、ランク4《ゴーストリックの駄天使》!」[攻2000]

ふわりと上空から現れた駄天使は綺麗な緑の瞳で、ウィンクをする。

「よし、400!
バトルフェイズです!
《ゴーストリックの駄天使》で《ダークネス・シムルグ》を攻撃します!
ミスチーフ・ボム!」

駄天使が指をパチンと鳴らすと、継ぎ接ぎのハートが降って来る。地面にぶつかりぽよんと跳ねたそのハートを駄天使が《ダークネス・シムルグ》の元まで蹴り飛ばす。

「ダメージは400…確かに、死ぬことはないだろうね…」

「無傷とはいかないかもですが、渚さんが生きてることはちゃんと保証できましたよね!」

無垢な笑顔を渚に見せる。
その笑顔を見た渚も一拍置いて微笑みを漏らす。

「はは、そうだね。
梨沙君が変わり者だってよく分かったよ」

ハートが《ダークネス・シムルグ》にへと触れると同時に弾けた。
中からはたくさんの小さなシーツを被ったような可愛らしいお化けたちが辺りを飛び交いだす。
たくさんのお化けは渚の元へと向かい体を突き抜ける。突き抜けるとすぐにお化け達は薄くなって消えていった。

「な、あ…さ…さむ………」

渚は突如膝から崩れ落ちる。両手で自身の肩を掴み、体を震わせ始める。

渚LP200→0


ピーーー
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