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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#48「判断」

Report#48「判断」 作:ランペル


「もう一度かけてみましょう…」
「さっきから何回かけてるんだ?どうせまだ寝てるんだろうよ」
「かもしれないわね……」

青い照明で薄暗く照らされるフロア。
その一角から鳴り響くコール音。断続的に鳴らされていたコール音が突如止まる。

   *****
通話が正常に行われませんでした。
   *****

「やっぱりダメね…」
「そう心配することもないだろ?フロア内で気絶してる内は誰も入ってくることはないんだ」

デュエルディスクの画面にへと表示された通話失敗の画面を見て落ち込む黒髪の女性、アリス。
まるでそこで二人の人間が会話するように為される独り言。少し前のデュエルから、中に居るもう一人と肉体を切り替える事無く、会話をすることが出来るようになっていた。

「それはそうだけど…」
「気にするんならもう一人のガキの方だろ。
今頃グリーンフロアのフロア主に何されてるか分からねぇよ」
「うん…手は出さないとは言っていたけど…信用できるものでもないわ…」



 ~~~~~



梨沙達と別れたアリスがデュエルを終え、向かったのはグリーンフロア。
しかし、到着した時には全てが終わった後だった。フロアに踏み込み最初にアリスの目に映ったのは倒れ込む梨沙の姿。

「梨沙ちゃん!?大丈夫!?」

倒れ込む彼女を抱き起こし、呼吸を確認する。

「よかった…息はしてる…」

少し不規則ながらも無事呼吸していたことで、一安心する。

「その子の知り合いですか?」

男の声が聞こえ、咄嗟にデュエルディスクを構えながら声のする方へと目を向ける。
そこには、眼鏡をかけた黒髪の男が穂香を両手で抱きかかえ、そこに立っていた。

「穂香ちゃん!?あなた…誰ですか!?
穂香ちゃんに一体何を…!」

「その質問に答える必要はないでしょう。
質問は私がしていますよ。あなたはその子の知り合いですか?」

男の眼鏡のレンズ越しに見えるその目はどこか悲し気だが、冷たい目だ。
その男の放つ異質な気迫に押し負け答えを返す。

「そうです…。私の大切な友達です。
そして、あなたが抱えているその子も大事な人です!」

「大切…大事…。
まぁいいでしょう。では、その梨沙と名乗る子を連れてここを出て行ってもらいましょう」

男が提案するのは、梨沙を連れてフロアから出る事だった。
しかし、その文言の中には彼の抱える少女の話が含まれていない。

「二人に何をしたの!
私がここを出ていく時は二人と一緒です。その子も返してください!」

「それは出来ません。ですが、安心していい。
この子に危害を加えるような事はしないと約束しましょう」

「何を勝手に話を…

「うぅ……」

「…!梨沙ちゃん?」

手の中で意識を失っている梨沙が苦しそうな声を漏らす。
緑の照明で判別がしにくかったが、明らかに顔色が悪く物凄い量の汗をかいているのが分かる。

「ど、どうしたの…。梨沙ちゃん…!」

肩を優しく揺するも彼女は苦しそうなうめき声は漏らせど、意識が戻ることはない。

「正直、その子の処遇は決めきれないでいました。
私には判断が出来ない。判断しない。
今、その子を連れて出ていくというのならこれをお渡ししましょう」

男は抱えていた穂香をゆっくりと地面に寝かせると、ポケットから液体の入った試験管を取り出した。

「それは…?」

「解毒剤です。その子は毒に侵されている。
放っておけば次期に死ぬでしょう」

「毒…ですって!?」

手の中で震え苦しんでいる少女が毒に蝕まれている。そして、それの解毒剤を目の前の男が持っているという状況。
明らかに主導権はこの男が握っている。

「目的はなんですか…。
なんで穂香ちゃんを捕まえて、私と梨沙ちゃんは見逃すような事を」

「質問に答えても私にメリットは生まれません。
あなたが選ぶべきなのは、解毒剤を受け取りその子を連れてこのフロアを出ていくか否かだけですから」

向こう側は話に応じるつもりはないようだった。
要求を飲めば、《禁足地》と恐れられたグリーンフロアから梨沙と共に脱出が出来る。
しかし…

「穂香ちゃんを、置いていく訳にいかないわよね…」

結論を出したアリスは梨沙の頭を優しく撫でる。
その場で立ち上がりデュエルディスクを再び構えなおす。
それを見た男が首を傾げる。

「ふむ…。
その選択は、あなたの足元の子の命を捨てるも同然の選択ですが、理解しての行動ですか?」

「でも…梨沙ちゃんなら…」

アリスは奥歯を噛み締める。
そして、苦しそうに呻く梨沙の顔を見て、決意が揺らぐ。

「私の話が伝わっていなかったのですかね?
既に毒に侵されてから時間が経過しています。
私がわざわざこの解毒剤を提示しているのは、今ここでこれを摂取しなければその子は死ぬからです」

「ぐ…」

男は試験管を揺らしながら、ゆっくりと続ける。

「あなたが私とデュエルし、勝ち、殺せたとしましょう。
そうすると、穂香という少女は助けられますが、そちらで苦しむ梨沙と言う少女はもう手遅れです」

「………」

男の語る内容にアリスは黙るしかなかった。
この男に大切な二人の命が握りこまれているのだから。

「私の提案を呑めば、少なくともその子は助かる。
そして、こちらの少女も死が確定する訳ではない」

「その子を…どうするつもりなんですか…」

「あなたに質問権は存在しない。
この解毒剤を受け取るか否か。それだけを聞いています」

梨沙の連れていた幼い少女。純粋な少女の一挙一動は周囲に癒しを振りまく。
そんな子のピンチとなれば、梨沙は間違いなく助けに入っただろう。
現に、毒に体を蝕まれていることからも、穂香に危険が差し迫っていたことが容易に想像できる。
見捨てるようなことになれば、梨沙はどれだけ悲しむか…。
男に穂香を預けても身の安全は保障されていない。グリーンフロアそのものが未知数であり、死んでしまう可能性の方が高いだろう。

優先するのは…。

「分かりました…。
この子を連れて出ていきます…。だから、解毒剤を」

「賢明な判断ですね。
では」

男がデュエルディスクへ1枚のカードを置く。すると、赤外線ゴーグルを装着した蜘蛛のモンスターがフィールドへと召喚される。
それの背の箱へ試験管を乗せると、蜘蛛がアリスの方向へと走り出す。

「解毒剤はフロアの外に置いておきます。経口摂取すれば、彼女の体の中の毒が分解される。
では、早く連れてここを出て行きなさい」

蜘蛛はアリスの横を通り過ぎると、フロアの出入り口まで走って行った。

「梨沙ちゃん…もう少しの辛抱だよ…」

苦しそうに表情を歪める梨沙から返事は返ってこない。
アリスもまたデッキからカードを取り出し、デュエルディスクにへと召喚する。

「手だけ貸してちょうだい」

すると、アリスの体から無数の手が現れたかと思うと梨沙の体を抱き抱える。
横目に穂香の方を見るが、床に寝かされた彼女の顔を見る事は叶わなかった。

そのままフロアの外へと出ると、出入り口の緑色の扉が閉じられる。
そして、蜘蛛のモンスターの背の箱にある解毒剤を手にした。それとほぼ同時に、役目を終えたモンスターが姿を消す。

「梨沙ちゃん…。口開けれるかな?」

手にした解毒剤を即座に梨沙の口元へと運び、飲ませる。
苦そうな顔をした梨沙は解毒剤を飲み終わると、咳き込んだ。

「梨沙ちゃん…」

デュエルディスクを操作し、デュエルディスクから光が梨沙の体に向けて照射され始める。
《人体スキャン》により映し出された梨沙の身体状況。

「意識なし…衰弱…。
毒素は…既に解毒処置済み……よし…」

《人体スキャン》で確認できる項目からも、先程の解毒剤の効果が出ているのが分かりほっと胸を撫でおろす。

「どうするつもり?」

不意に心の奥よりもう一人の自分がアリスにへと声を掛けてくる。

「起きたの?」
「ガキの方は放っといていいの?」

グリーンフロアへと置いてきた穂香の事だ。
アリスは決して穂香を見捨てる選択をした訳ではない。

「そんな訳ないでしょ。梨沙ちゃんを安全な場所に連れて行って…。
取り戻すわよ」
「欲張らない方がいいとは思うけどね。
あたしらが来るより前からいたフロア主。こいつが毒でやられてることからも何してくるか分からないんだぞ?」

もう一人の自分が言う事も正しいだろう。しかし、大切な人の大事な人を危険に晒すままなどできる訳がない。

「私はもう決めたの。大切な友達の梨沙ちゃんが喜ぶことをしたいって。
その為なら……人だって殺せる…」
「そういやぁ、あの女が初めてか…。
気分は?」

ゆっくりと息を吸い込む。
体が既に殺 人に手を染めていたとしても、自分と言う存在が人を殺したことはなかった。しかし、つい先ほどもう一人の自分に投げ出す事もなく、確固たる己の意思で人を殺したのだ。
気分など………

「さいこう…よ…」
「はっ、虚勢張るだけの余力がありゃ十分だな。さっきの奴とやる時になったら出てくる。お前が願う事にあたしは寄り添うだけだ」
「うん、ありがとう…」

やりたいことは山積みだ。
まずは、梨沙を安全な所に送り届ける事。
そして、穂香を救うべくここへ戻って来ることだ。



 ~~~~~



まるで海の底にでもいるかのような感覚に陥る程に薄暗い青い照明。それらが照らされる空間の中でアリス達が口を開く。

「タイミングがわりぃ。就寝時間と重なってグリーンフロアに行けなくなるなんてな…。あれから時間が空いてる。最悪ガキは死んでてもおかしくないよ」
「これ以上は待てないわね…。梨沙ちゃんも心配だけど、私達だけでもう一度グリーンフロアに向かいましょう」

穂香の危機を救うべく、アリスは立ち上がる。
左腕に着けたデュエルディスクだけでなく、右腕にもデュエルディスクを装着する。

「急ぎましょう。道中誰にも出会わない事を願うばかりよ」
「だが状況が状況だ。まず間違いなく絡まれるだろうな」

ブルーフロアの扉がゆっくりと開かれ、青い光に包まれた空間へ外の無機質な光が差し込む。

「その時は倒すしかないわ。それにしても…」

白い廊下にへと飛び出したアリス達を待っていたのは、随所のシャッターが閉められて様変わりしたフリーエリアの姿だった。


   *****
 -実験イベント開催-
既定の時間内、フリーエリアにて獲得するDPが3倍になります。
イベント実施の為、各所のシャッターが不規則に閉鎖されます。
   *****


「こんな時間がない時に、イベントが実施されるなんてね…」
「愚痴ってても仕方ない。普段は引きこもってる連中も金目当てに出てきてるだろう。
行くぞ」
「ええ…」

封鎖されていない廊下の方へと向かう。
フリーエリア内に、誰の物とも分からない悲鳴と衝撃音が断続的に響き渡っているのが分かる。

「こっち…も閉鎖されてるわね…」
「こんな時にどこかを目指すってのは無謀だったな…」

行く先々がシャッターにより封鎖されており、どうしても歩みが遅くなる。

「でも行くしかないのよ!穂香ちゃんがいつ死んでもおかしくない状況なんだから…」
「お前が行くなら止めやしない。方向感覚だけは失わないように気をつけな。
景色がほとんど変わらないフリーエリアで迷ったら、フロアに戻る事も難しくなる」
「分かってるわ…。
今度はあっちに行ってみましょう」

グリーンフロアを目指して別の道を探すアリス。
そんな彼女たちが走っていると突如、閉じられていたシャッター開かれた。

「え…?」

「お、よっしゃ、3人目の金づるだなぁ!
げへへ、しかも上玉じゃねぇか」

そこには醜く肥えた男が立っており、アリスを見つけた男は嫌らしい目で品定めして来る。

「方向的にはこっちを通れれば近いな」
「なら、やる事は一つよ」


ザザッピー
「ただいまよりフリーエリアにてデュエルを開始します。
ルール:マスタールール
LP:4000
モード:バトルロイヤル
リアルソリッドビジョン起動…。」


アリスが両腕のデュエルディスクを構えると、アリスと男の背後にシャッターが降りる。
右手で左のデュエルディスクから、左手で右のデュエルディスクから5枚のカードを引き込む。

「やる気なのは結構…だ、が…
あ?あぁ?
なんでバトルロイヤルが始まってんだぁ?」

男も意気揚々とデュエルディスクを構える。
しかし、アナウンスで流れた情報に違和感を憶える。

「ごめんなさいね。
私達急いでるの。すぐ終わらせるわよ」
「気色わりぃ目で見てくんじゃねぇよゴミが。
速攻で殺してやるよ」

確かに同じ人物が発する言葉。しかし、そこに宿る感情は全く異なっている。

「何言って…あ、あぁ!?
お前《背反の魔女》か!?くそ!!
行動してないんじゃなかったのか!?
くそが!!」

醜い男は突如として狼狽え始めるが、デュエル開始のゴングは既に鳴らされた後だ。


 「「デュエル!」     LP:4000 LP:4000
 「くそ、デュエェ!」   LP:4000





 -----





「でーーーきた!」

薄暗いブラックフロアの中で散らばったカードの中から、黒いドレスを着た少女がデッキを手にして跳ねる。

「私の新生ゴーストリック爆誕だよ!
誰にお披露目しよっかな~。アリスさん?穂香ちゃん?
お父さんに見てもらったら、褒められちゃうかもしれないな~!?」

期待を胸に抱きながらはしゃぐ少女の左手からは鮮血が飛び散り続けている。
それを認識した少女は、立ち止まり傷をゆっくりと見つめる。

「カードが汚れちゃうなぁ…。
そうだ!」

何かを思い至った少女はデュエルディスクを操作すると、壁から包帯が出てくる。
嬉々としてをそれを掴み取った少女は、ぐるぐると左腕と右腕に巻き始めた。

「これでアリスさんとおそろいコーデになったじゃん!
私天才かもしれない。あー!全身に巻いたらマミーになれる!
そうじゃん!マミー呼んで一緒に写真取ろう!」

床に散らばるカードの中から、《ゴーストリック・マミー》を拾い上げた少女はそれを召喚する。
すると、ミイラ男がのそりと地面から這い出して召喚された。

「ヤッホーマミー!今日もしっかりミイラだね!
ねね。包帯どうやったらそんなに綺麗に巻けるの!?
私にも教えてよぉ」

無邪気な子供のようにせがむ少女を前に、《ゴーストリック・マミー》が困惑したような表情をしながら、腕の包帯を巻いてくれる。

「みんなどこに行ったのかな。もう死んじゃったかな?
よーし、お披露目もしたいし、探しに行こ―っと。
見つからなかったら~、誰かにリベンジするのもいいかもね!」

マミーが包帯を巻く途中で立ち上がった少女が、ブラックフロアの出入り口の方へと向かい歩き出す。
そこで扉は少女の訪問を待つまでもなく、突如開かれた。


ピーガチャ


「ん~?」

薄暗いフロアの中へ外の明かりが入り込む。
背後から光で照らされながらフロアへと入って来たのは、銀色の髪に白いパーカーを着た少年だった。
少年が少女に気づくと、声を掛けてくる。

「やぁ裏野さん…だったよね。
…服のせいかもしれないけど、雰囲気変わった?」

静かに少女の調子を伺う。
それに対して見覚えのあった少女は、実に陽気に返事を返す。

「白神さんじゃないですか!
どうしたんですか~?私とデュエルしに来たんですか?
今度は負けないですよ!」

「え?
あぁ…そうだね。まぁ…それで合ってるけど…」

想定していた返答と異なったのか、白神は口ごもり薄暗いフロアの中に居る少女の顔を改めて見つめる。

「白神さんともリベンジマッチしたかったんですよ!
でもまさか新生ゴーストリックのお披露目が白神さんになるとは思いませんでした!
さぁ、デュエルしますよ!この前の様には行きませんからね!」

デュエルディスクを構えながら実に楽し気に喋る少女。ゲームに負け、もう一度勝負を挑むという何気ないそれは、日常の1ページに収まっていたとしてもなんの違和感もないだろう。
しかし、少女と一度デュエルを交えた少年は、その言動と表情…そして血の滲んだ包帯を左腕に巻く姿に多大な異質さを感じ取る。

「裏野さん…そうか…」

何かを察した少年はため息を漏らす。
そして、少女の方へと向き直ると右腕のデュエルディスクを構えた。


ザザッピー
「ただいまよりブラックフロアにてデュエルを開始します。
ルール:マスタールール
LP:8000
モード:ブラックフロアカスタム
リアルソリッドビジョン起動…。」


「残念だよ裏野さん。
潰れてしまったんだね。最後にキミと楽しくデュエルしておこうと思ったけど…それは叶いそうにないかな」

「なんでですか~?
しましょうよ!楽しい楽しいデュエルを!
楽しんで楽しんで、嫌な事なんて全部忘れちゃうような!
そんな楽しいデュエルにしましょうね、白神さん!」

満面の笑顔を見せる少女。とても優し気で可愛らしいその笑顔。こんな笑みを向けられた同世代の男子なら、ついドキッとしてしまう事だろう。

だが、少女の前に立ちふさがる少年は少女が楽しそうな笑顔を見せる程に冷めていく。
ここで培った経験。
彼女が”そう”なってしまったのは明白だった。
何かに期待をしていた少年は、がっかりしたように言葉を零す。

「ここでキミを殺した方が優しさになるのかな?
ま、本人から聞けない以上僕の匙加減か…」

「もう怖いものなしです!
白神さんとの楽しいデュエル、楽しみにしてますから!」

会話に見せかけた独り言を二人が終える。
一瞬訪れた静寂を破る様に、二人の口から始まりの合図が発せられた。


 「デュエル!」 LP:8000
 「デュエル!」 LP:8000


ピー
「先行は裏野様、後攻は白神様になります。」


 [ターン1]


「私の先行ですね!まずは5枚をドロー!」
手札:5枚

ピー
「カスタム《カスタムチェック》により裏野様の設定しているフロアカスタムの内容が白神様に公開されます。」

「ほぇ?
なんですかそれは!」

アナウンスにより公開されたブラックフロアのカスタムが白神のデュエルディスク上へ表示され、それに黙って目を通す。

「(《マリガン》と《被ダメージ軽減》……か。
ひとまずカスタムでデュエルに大きな影響はなさそうだな)」

「んー教えてくれてもいいのに…。
でも、たぶんこれがバレたってことですよね!なら遠慮なく使います!」

少女がデュエルディスクの画面をタッチすると、再び短いアナウンスが流れる。

ピー
「カスタム《マリガン》により裏野様の初期手札5枚を引き直します。」

「よーし、今度こそぉ…ドロー!」
手札:5枚→5枚

デッキにへと戻した手札が、シャッフルの後再び手札にへと戻って来る。

「よし!さっきよりは全然いい感じ!
行きますよ、魔法カード《大熱波》を発動!
次の私のドローフェイズまでお互いに効果モンスターの召喚と特殊召喚が出来なくなっちゃいます!」
手札:5枚→4枚

「なに…」

発動されたカードより赤い熱波が放たれ、フロア内が淡い熱の膜で包み込まれた。

「ですが、モンスターのセットは効果の範囲外。
モンスターとカードを2枚セット!」
手札:4枚→1枚

「(ゴーストリックならば、制約を相手に押し付けつつ時間が稼げるって事ね)」

「ターンエンドぉ…と見せかけてぇ!
もう1枚はっつどう!《命削りの宝札!》」
手札:1枚→0枚

残された1枚のカードを発動し、デュエルディスクを着けた左腕を水平に伸ばす。
すると、デッキが位置する箇所に小型のギロチン台が出現し、刃がデッキにへと落下を始めた。ギロチンが執行された瞬間、デッキから飛び出した3枚のカードを少女が華麗に掴み取る。

「私の手札が3枚になる様にカードをドローします。
代わりにこのターンの特殊召喚が出来ず、白神さんが受けるすべてのダメージが0に!
さらにさらにエンドフェイズには手札が全て墓地へと送られてしまいます!」
手札:0枚→3枚

どこか上機嫌に効果を説明する少女の様を、白神は静かに見つめている。

「勿体ないので、全部使います!
フィールド魔法《ゴーストリック・ハウス》発動です」
手札:3枚→2枚

薄暗いフロアの背後よりゴーストリックのお屋敷がゆっくりと姿を現す。

「カードを2枚セット!
これで引いたカードを全部使えました!私はこれでターンエンドです!」
手札:2枚→0枚



梨沙-LP:8000
手札:0枚


 [ターン2]


「(《大熱波》の効果でこのターンはまず動けない…。
彼女のデッキタイプ的に次のターンにワンキルされる可能性は低い…。
でも、無抵抗でターンを渡すのは危険だ…)」

白神はターンが渡されるも、《大熱波》への回答を自身の手札と見比べながら思案する。

「(考えても仕方ない…まずはドローしてからだね。)
僕のターン、ドロー」

ドローしたカードを確認すると、ほんの少し満足げな表情を白神は見せた。

「白神さんも楽しそうですね!
何かいいカードでも引けましたか~?」

再会した時から全く変わらない声色に陽気なテンション。
それに釣られることもなく、嫌悪するでもなく返事を返す。

「別に。
僕がやることはデュエルで勝つことだけ。
ごめんだけど、キミを助けるつもりはないからね…」

静かに言い切った少年は、デュエルで勝つべく戦術を組み立て始める。
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コングの施し
助けてくれたのはアリスさんでしたか。そして父上殿も、娘を名乗る梨沙さんを殺める気にはなれなかった模様。なんだか目を逸らしている気さえしてきます。

そして壊れてしまった梨沙さん…いつぶりでしょうか、白神さんとのデュエルになりますが、言動も行動も今までとは大きく異なりますね。前回の不気味な笑みからなんだか察してはいましたが、やっぱり心が壊れてしまうとハイな方向へ行ってしまうのか。いつもであれば主人公を応援したいところ、ではありますが、この状況に限っては白神さんの身も案じてしまいます…。

始まってしまったデュエルに、グリーンフロアへ向かうアリスさんなど気になる点がいっぱいですね。次回も更新頑張ってください! (2024-02-01 22:55)
ランペル
コングの施しさん閲覧及びコメントありがとうございます!

デュエルで殺す気が感じられなかったからか、父親も梨沙の処遇を決めかねていた様子。
限界が来てしまった梨沙ですが、壊れる方向性は結構ハイになっていく感じですね。今までの楽しい日々を思い出したいのでしょうか?
そんな彼女の元へ訪れた白神の目的と、そのデュエルの行方は…!

今後もゆっくりにはなりますが頑張っていきますので、お楽しみにでございます! (2024-02-10 15:14)

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