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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#86「終幕-道化な生き方」

Report#86「終幕-道化な生き方」 作:ランペル

「予想させないのがエンタメなんだよね……。だったら、これは予想してたかな!
相手モンスターの直接攻撃宣言時、手札の《アンクリボー》を捨てて効果発動!」
手札:6枚→5枚

「ほう……!」

 萩峯の《HSRチャンバライダー》のダイレクトアタックを受け、近久が手札から発動した《アンクリボー》の効果。生死を賭けた一手が、逆転を目指し打ち出される。


近久ーLP :4000
手札    :5枚
モンスター :なし
魔法&罠  :《モンスターBOX》[無効化]
適用中効果 :《花札衛-猪鹿蝶-》、《影のデッキ破壊ウイルス》、《アンクリボー》

ーVSー [ターン2]

萩峯ーLP :1000
手札    :《リミッター解除》
モンスター :《幻獣機アウローラドン》[攻2600]、《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》[攻4500]、《HSRチャンバライダー》[攻2500]、《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》[攻3000]、《幻獣機トークン》[守0]
魔法&罠:《機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-》
 

「《アンクリボー》の効果によって、ウチかあなたの墓地からモンスター1体をターンの終わりまで特殊召喚出来る。ウチは、墓地から《花札衛-柳に小野道風-》を特殊召喚!」[守1500]

 フィールドへ出現した花札板を、ペストマスクのレンズ越しに捉えた萩峯が今一度そのテキストへと目を落とす。

「見た所、戦闘耐性を持ち合わせている訳ではなさそうですね。たった1体の壁モンスターでわたくしの攻撃を防げるとでも?」

「そうだね。1体だけじゃ到底無理だよ。
でも、まだ小野道風の効果がある!
デッキから1枚ドローしてそれが花札衛なら、そのまま場に出すことが出来る!」

「くく……例え花札衛を引けたとしても所詮壁が2枚に増えるだけの事!わたくしの手に《リミッター解除》がある以上、モンスター全てが近久様の命を終わらせる力を持っている事をお忘れなのですか?」

「並ぶのが1体だけならね……」

 含みのある近久の言葉に、萩峯が浮かんだ疑問をそのままぶつける。

「どういう意味です?」

「ウチのデッキには、柳に小野道風の効果と全く同じ効果を持ったカードが複数入ってる!
この意味、あなたなら理解できるんじゃない?」

 自信満々に言い切る近久の姿を見た萩峯が数秒固まる。次に彼が動きを見せたのは、ペストマスク越しの苦笑と共にだった。

「くくく……それで必要なだけ壁モンスターを並べられるとでも?わたくしの攻撃可能モンスターは4体ですが、チャンバライダーは1度のバトルフェイズに2度攻撃する事が出来る効果を持っています。
つまり、防がなければならない攻撃は全部で5回!即ち、3度連続でドローと特殊召喚効果を持つ花札衛を引きつつ、最後の引きも花札衛でなくてはならないという事です。
先の展開を見ていた限り、それに該当するカードの枚数はそこまで多くないでしょう。近久様は、実に無謀な賭けがお好きな様ですね」

「それだけ難しい運ゲーだからこそ……盛り上がるんじゃない?」

 デッキトップへと指をかける近久の背後から、浴衣の裾が引かれた。振り返れば、穂香が不安そうな表情を浮かべている。

「穂香、ウチはやってみせるよ。穂香を置いて負けるような事……絶対にしないから!」

 緊張を滲ませた近久の表情。しかし、その口元には笑みも混ぜ込まれている。穂香はこくりと頷くと、近久に精一杯のエールを送った。

「……うん。お札のお姉ちゃん、頑張ってね」

 瞼を閉じ、にっと穂香に笑みを向けた後、萩峯の方へと向き直す近久。その勇ましさに小さな拍手を送る萩峯は、両腕を大きく広げると、ショーの見せ場を盛り上げるべく饒舌に前説を垂れていく。

「では、やっていただきましょう。見事5体のモンスターを並べられましたら拍手喝采!ですが、1度でも失敗すれば、近久様の命が終わりを迎えるのです……。
緊張と安堵の連鎖、その先に垣間見える驚きを!エンターテインメントを!わたくし達に魅せてくださいませ!」

「望む所!
まず1枚目、ドロー!」

 勢い良くデッキトップからカードを引き抜いた近久。鳴りやまぬ心臓の鼓動を静めるべく、引いたカードをゆっくりと表へ返す。

「…………良し!
ウチが引いたのは《花札衛-芒に月-》!よって、場に出せるよ!」[守1500]

 真っ黒の球体の描かれた花札板が、小野道風の板と連結するしながらフィールドへと現れる。

「くく……1枚目から外すなんて事があってはあまりに興ざめですからね。ですが、まだ3枚のカードを狙い通り引き込む必要があります」

 再びデッキトップへ指をかけながら、安堵の後に訪れた更なる緊張のままに萩峯へ言葉を返す近久。

「分かってるっての!芒に月も同様の効果を持ってる。
2枚目、ドロー!

引いたのは……《花札衛-松に鶴-》!
よって、場に並べる!」[守1500]

 機械鶴の描かれる花札板が、さらに連結していく。流れを途切れさせない為、続け様に効果を発動しドローを重ねる。

「松に鶴の効果、ドローして花札衛なら特殊召喚だ。
3枚目、ドロー!

引いたのは、《花札衛-桐に鳳凰-》だよ!
これで……後1回!」[守1500]

 鳳凰の描かれた花札板の特殊召喚により、近久のフィールドへ4体の壁が連結する事となった。近久の背後で、息を呑む穂香。運に全てを委ねるか細い近久の戦略が、大詰めへと向かっている。

「次、成功したら……」

「実に素晴らしいですよ近久様!しかし、ここで外してしまえば、所詮無謀な賭けであったという結果しか残りません。
さぁ、近久様の最後の引き!命をも賭けた最期の引きに皆様、ご注目ください!!!」

 萩峯はどこか興奮気味にそう捲し立てる。その言葉は、ただただ煽っている様にも聞こえるが、近久には彼が本気で共演者の演目を引き立てようとしている風にも聞こえるのだ。

「ここまでお膳立てされておいて、引けませんでしたなんて……格好悪いよ!
最後、4枚目!ドロー!」

 勢い良くデッキトップを引き抜いた近久。その指先、引き込まれたカードへとその場の全員の視線が集まる。

「ウチが、引いたのは……」

 表へ返されるカード。それを確認した近久の口角が持ち上がっていく。

「《花札衛-桜に幕-》だ!
これで、役は5枚揃った!」[守1500]

 桜の散る絵柄にカーテンのような幕をかける手の描かれた花札衛の連結によって、近久の命を賭けたギャンブルは成功で収められる。なんの因果か、並び立ったのは花札における最高位に位置する役を司る5枚の光札だ。
 近久を守るように連結した5枚の花札板を前に、萩峯が手袋越しに拍手を送った。

「お見事、素直に感嘆する引きの強さでしたよ。では、美しく並べ立てられたその役を崩す事でわたくしのターンを締めくくるとしましょうか」

 指をパチンと鳴らした萩峯。それを合図に彼のフィールドの4体のモンスターの一斉攻撃が行われる。

「《HSRチャンバライダー》の2回攻撃に続きますわ、《キメラテック・フォートレス・ドラゴン》、《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》、《幻獣機アウローラドン》の3体!
計5回の攻撃にて、近久様のフィールドを再び更地に戻させて頂きましょう」

 連結した5枚の鮮やかな絵札を狙うは4種の機械モンスター。それは、まるで的当てゲームの様で、光線が花札を射抜く度に花札衛が後ろへと倒れ消えていくのだ。

「わたくしはカードを1枚セットして、ターンエンドでございます」
手札:1枚→0枚


萩峯ーLP:1000
手札:0枚


 [ターン3]


「ウチのターン」

 近久が掴み取った己のターンを宣言すると共に萩峯が、高らかに言葉を落とす。

「フィールドががら空きとは言え……手札が5枚残され、ダメージを受けていない状況を鑑みれば、近久様に分があると言えますでしょう。
しかし?あなた様は月花見の効果により、ドローフェイズを行えず、その5枚の内4枚のカードは既にわたくしの目に触れた上で、手札へと加わったカードなのです」

「確かに花札衛で見せてから手札に加わえたカードが多いとは思うけど……まさか、覚えてるの?」

 近久は手札の公開情報に言及する萩峯に対し、疑いの目を向ける。

「もちろんです。近久様の手札にありますわ、《花札衛-牡丹に蝶-》、《花札衛-萩に猪-》、《札再生》、《超勝負!》の4枚と未公開の1枚。公開されているカードの殆どがフィールドに他の花札衛を必要とするカード。
果たして、その様な手札でわたくしの盤面を突破する事は出来るのでしょうか?」

 そう言ってのけた萩峯に釣られるように、視線が自らの手札へ向かっていく近久。彼の告げた手札の内容は全て言い当てられており、近久の顔には驚きが浮かぶ。

「すごいね……。見せたと言っても全部一瞬だったはずなのに」

「観客や共演者の一挙一動まで気を配り、各々の傾向が分かれば、それに合った魅せ方を取る事も出来るのです!その為に必要な情報を見落とす、ましてや忘れるなどあってはならない事なのですよ」

 そう口にする萩峯に対して、近久の驚きの感情が憂いへと変化していく。

「ねぇ。あなたのショーに一区切りがついたんだし、聞かせてよ。
どうしてあなたのエンタメに人を殺す事を織り交ぜないといけなかったの?」

「くく……何度お伝えしても近久様には理解が出来ない話でしょう?それでいいのです。それこそが、エンターテインメントの真髄!理解を超えた刹那の瞬間にこそ、人々は魅了されるのだから……!」

 近久が望む回答を萩峯は返してくれない。ペストマスクで隠される彼の感情は、陽気で楽し気な声からしか判断が出来ない。小さくため息を漏らすと、自らを引き締めるべく大きく息を吸い込む近久。
 
「なら……ウチが感じたエンタメに対する感想を言うよ。
殺しを織り交ぜているせいで、あなたのエンタメの価値は下がってると思う」

「……価値が、下がっている?」

 気に障ったのか、萩峯の陽気な声色に疑惑が染み込んでいく。

「エンタメって、誰かを喜ばせる為にあるものだとウチは思ってる。せっかく引き込まれる話し方や、見てる人を惹きつける技術を持ってるのに、あなたが人を殺そうとするせいで、楽しめるものじゃなくなってる」

「くく……近久様も大概に物分りがよろしくないですね。エンターテインメントの真髄は驚愕!驚きなのです!」

「だから!そこから間違ってるんだよ!!エンタメにおける驚きは、喜びに直結した驚きのはずだ!決して、自分の死を自覚する瞬間に感じる負の感情なんかじゃない!
あなたの殺意で、エンタメという舞台を汚さないで!」

 近久の感情の乗った荒ぶる声を受け、萩峯の声から陽気さが途絶える。

「は?」

「ウチは、あなたの様な人に笑顔を届ける職業には疎い完全な素人だよ……。でも、だからこそあなたのショーを観客の立場で話せる。
あなたがウチや穂香を殺そうとしてるって状況なのに、あなたの魅せた技術にウチは素直に凄いって思っちゃったんだ。細かいマジックとか、あなたの語り口はとても素敵な技術のはずだよ。しかも、それをデュエルにまで上手く組み込んでる。あなたがショーに向ける熱意は本物だよ。誰かを驚かせたい、その為に努力を怠らない努力家に見えるんだ。
だからこそ、あなたがどうしてこんな風になってしまったのかが分からないんだ。本当の意味で人を笑顔に出来る、嬉しい驚きを人に与えるショーがあなたになら出来るはずなのに……。
ねぇ、何があったの?どうしてあなたの素敵なショーを自分から汚すような事をしてしまってるの?あなたの素敵なエンタメショーは、どうしてこんなにも落ちぶれてしまっているの?」

「く……はは、ハハハハハッ!!!」

 近久の言葉に返されたのは、感情の失われた乾ききった笑い声。その声に合わさって、表情を覆い隠す萩峯の姿からは、不気味さが醸し出されている。その笑いに驚いている近久に、苦笑を交えながら萩峯が言葉を落としていく。

「近久様。あなた様は、一体何をお望みなのです?わたくしの事が気に入らないのであれば、それをデュエルにて示せばいい。この場はそれを可能とする場所なのですから」

「ウチは、あなたを殺したくない。そして、あなたが人を殺すのをやめて欲しいと思ってる……。
あなたのエンタメに、殺しなんて本当は必要ないのよ。あなたは真っ直ぐに誰かを驚かせたいだけ。その最初の一歩をきっと踏み外してるだけなの。犯した罪は消えなくても、誰にでもやり直すチャンスはある。
ウチは、それをあなたに伝えたいの……」

「チャンス?」

「そうよ。決して許されない事でも、償う機会は誰にでもあるの。ウチも道を間違えてしまった。でも、もう間違わない!真っすぐに正しい事を追い続ける!
あなたが最初に目指したエンタメだって、誰かを笑顔にするような……決して人の死の上で成り立つものじゃなかったはずだよ!」

「………」

 笑いの混じった反応を示していた萩峯は、近久の力強い言葉の前に口を閉ざしてしまう。

「今からでも遅くないわ。あなたが最初に目指したはずのエンタメ。それを実現する為に、心を入れ替えてやり直すのよ……!」

 己に救いの手を差し伸べてくれた梨沙。決して許されない罪を抱えた自分へ、やり直す機会を与えてくれた事。それにどれほど自分が救われただろうか。彼女が己の感情を捨て去ってまで残した施しに報いる方法は、自分の様に苦しんでいる人をより多く助ける事のはずだ。それが、巡り巡ってより多くの人を助ける事となり、梨沙の助けになるはずだから。

「薄っぺらい」

「…………え?」

 強い想いを乗せた近久に返されたのは、実に呆気なく空虚な一言だった。その一言が、まるで冷たい刃のように近久の胸を抉る。何か言い返さなければならない……そう思いながらも、近久は瞬時に言葉が出て来なかった。

「近久様の言葉は、自分自身が理想とする正しい在り方の上辺をなぞっているに過ぎませんね。そもそも、過ちを犯している自覚ある方が平然とやり直す機会を宣うのは如何なものでしょう?ひどく身勝手で独善的な思考をされているではありませんか」

「な……!?そ、そんなの分かってるわよ……。
でも……だからって罪を重ねても誰も救われないじゃない!!」

 声を荒げる近久に対し、萩峯の声に邪悪さが滲んでいく。

「あぁ滑稽ですね。それでいて憐れだ。
人生の分岐点、その分岐を違えた人生もまた己の人生なのですよ。近久様の人生に納得がいかないからと言って、他者の人生を自らの都合で捻じ曲げようとされている訳ですか」

「そんな訳の分かんない事しようとしてるんじゃない!ウチはただ……ウチがしてもらったように、誰かを助けられるんじゃないかって……」

「なるほど?自分が救われたから、他の人も自分がされたようにすれば助けられるだろうと?」

「……そうだよ、ウチは本当に心から救われたんだ。だから、その方法なら誰かを助けられると思って」

「くく……本当に可笑しな事をぺらぺらと喋られますね。近久様は共演者として、舞台を盛り上げてくださいました。ですので、あまりこの様な事を申し上げたくはありませんが……。
いくらか独善的すぎますのでね?」

「な、何を……」

 萩峯はゆっくりと首を傾け、ペストマスク越しの視線を近久に向けた。一瞬の静寂が二人の間を満たし、空気が張り詰めていく。その沈黙の中で、萩峯の次の言葉が鋭く、重く響いた。

「近久様のその要求……いえ、押しつけがましい施しは自己愛でしかないのですよ」

「は……はぁ……?なんでそうなるのよ……」

「あなた様はわたくしに殺しをやめさせる事で、自分を助けてくれた人にこんな報告をしたいのです。
あなたが私を助けてくれたから、他の人を助けられたよ……とね?」

「……!」

 萩峯の言葉は、近久の胸の中に止まらない低音を鳴り響かせ、返したい言葉は音にすらならず、喉の奥でかすれて消えた。刹那の間訪れる静寂。それは、舞台の終幕を迎える直前の張り詰めた空気を、否応なく近久に予感させるのだ。

「救いとは主に共感の果てに感じる物なのです。さらに、他人へ干渉するのならば、それ相応の覚悟が必要となるのですよ。残念ながら近久様からは、そのどちらも感じられません。
上辺では、わたくしのショーを褒めている様であって完全に別物。わたくしの全てを否定し、己の都合の良いようにわたくしを操ろうとしているに過ぎないではありませんか」

「ち!?違う!ウチはそんなつもりなんか……!」
 
「何も違いません。そもそも、あなた様はわたくしの事を何1つとして理解しようとされないのに、わたくしに過去の自分を重ね合わせて補完し、喋りたいことを喋っているだけなのですよ。
人を殺すことがおかしな事?そんな事は当然承知の上です。それでも、わたくしの追い求める物がそこにある。例え、常軌を逸していようとも、人々に驚きを与えられるのであれば、人生を道化として終えようとも構わない!
近久様が救われたと感じた事も、近久様が心の奥で望んでいた事を、その方が施してくださったからなのではないのですか?」

「……」

 言葉を並べる萩峯には、ショーを披露している時の陽気な声色こそ戻って来ていたものの、その言葉の節々で近久の共感力の欠如した言動を指摘している。萩峯が価値を見出したのが、死のエンターテインメント。狂った人殺しとして生きていく事になろうとも、彼はこの道を選択した。その生き様を否定しながらも、手を差し伸べようとして来る近久の行動は、萩峯からしてみれば救いになるはずがないのだ。

「それでも……あなたのしている事は許せない事なんだよ。ウチの身勝手であなたを傷つけるような事になっても、それが結果としてウチの贖罪に結びつくとしても!止めなきゃいけない事なんだ!!!」

 近久は、萩峯の言葉に正面から返す事は出来なかった。己の無力さを感じながらも、自分は進むしかない。とにかく真っすぐ、正しさを求める事しか自分には出来ないのだから。

「くく……わたくしは自らの意思で選んだ道化ではありますが、近久様は望まずして道化を演じられている訳ですか……。あぁ滑稽なり、滑稽なりですよ!口を開けば開く程に、近久様本来の浅さが透けてくるではありませんか!運が良いだけでは、人生を切り開くことはできません。あなた様は運を味方につけている様に見せかけて、ただ流されているだけなのですから!」

 挑発的な言動を取る萩峯に、近久は苛立ちを感じると共にその芯を捉える言葉に動揺せざるを得なかった。複雑な感情を宿しつつも、近久は前に進むべく手札のカードを掴み取る。

「運に流されてる……か。
あなたの言う事は否定出来ないと思うよ。でも、その流された運で誰かを助けられるかもしれないんだ!!
スタンバイフェイズに《モンスターBOX》の維持コスト500ライフを支払って、メインフェイズに《札再生》発動。墓地から《花札衛-松-》を手札に回収させてもらう」
近久LP4000→3500
手札:5枚→4枚

「当然、通す訳にはいきません。《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》のオーバーレイユニットを1つ使い、その発動を無効にして破壊させて頂きます」[攻2800]

 黒鉄のサイバー・ドラゴンの放ったレーザーが、近久の発動した魔法を撃ち抜き消し炭へと変える。

「さぁ、残された1枚。果たして、近久様を逆転へ導く1枚なのでしょうか?」

 嫌らしく首を曲げながら、そう謳う萩峯。近久はその期待に応えるように、手札から1枚のカードを掴み取る。

「ウチが持ってるのは……このカードだ!
《死者蘇生》発動!」
手札:4枚→3枚

「ほう!」

 桜の花びらが近久のフィールドを舞い、美しい着物を揺らす芸者が軽やかに降り立った。

「ウチの墓地から《花札衛-月花見-》を呼び戻す。そのまま月花見の効果発動。デッキから1枚ドローして、花札衛なら特殊召喚できる。
ドロー、ウチが引いたのは罠カード《無差別崩壊》」
手札:3枚→4枚

 公開したカードを手中に収めた近久。どこか憂いを帯びた表情の彼女は、今一度萩峯の価値観へと己の想いを投げかける。

「人は……こんな風に蘇ったりなんか絶対にしない。たった1つの命……失われたらそれまでなんだよ……?」

「だからこそ、その最期の瞬間に魅せる驚愕こそが価値を持つのではありませんか!」
 
 懸命に伝えているつもりの近久の言葉は、全く以て萩峯に届かない。奥歯を噛み締める近久が、手札のカードと引き込んだカードを持ち換え、そのカードを発動する。

「……月花見を対象にEXデッキへ戻すことで、《超勝負!》を発動。
ウチの墓地から《花札衛-五光-》、2体の《花札衛-雨四光-》に《花札衛-月花見-》の合計4体を復活させる。
そして、デッキから1枚ドローして、それが花札衛ならば場に出せる。
ドロー。

ウチが引いたのは《花札衛-芒-》だった。そのまま、場に出させてもらう」[守0]
手札:4枚→3枚

 何も存在しなかった近久のフィールドへと並び立つ和服に身を包む4体のモンスター達。そこへ、植物のモンスターの描かれた花札板が横並びとなるのだ。

「月花見の効果発動。引いたのは、《超こいこい》」
手札:3枚→4枚

 月花見の効果を使用し、さらに手札を増やした近久がディスク上から3体のモンスターを掴み取る。

「月花見の効果で、シンクロする時にモンスター全てのレベルを2として扱える。
ウチは、レベル2扱いの《花札衛-芒-》と《花札衛-雨四光-》に《花札衛-月花見-》の3体でチューニング。
シンクロ召喚。

《花札衛-猪鹿蝶-》」[攻1500]

 眩い光の中より……猪を模した鎧に身を包み、鹿の角を彷彿とさせる槍を振るい、蝶を形どる軍配を左腕に備えし武将がフィールドへと降り立つ。

「猪鹿蝶の効果発動。墓地から《花札衛-桐に鳳凰-》を除外し、次のターン終了時まであなたの墓地効果の発動と蘇生を封じる」

 猪鹿蝶が掲げた軍配から薄紫の光が放たれ、その光がフィールド全体を包み込む。それは、死者が蘇るなどという自然界の理を曲げさせない絶対的な力だ。

「くく……人は生き返らない。近久様の主張を己のデュエルにさえ織り込む手腕はお見事です!」

「猪鹿蝶は花札衛に守備モンスターを攻撃する時に貫通能力を与える効果がある。あなたの《幻獣機トークン》の守備力は0。つまり、あなたを生かすも殺すも……ウチが攻撃するモンスター次第って事になる……」

 近久のフィールドに並び立つのは、クロックワーク・ナイトの影響により攻撃力が500減少しているが、攻撃力4500の《花札衛-五光-》が存在している。このまま攻撃すれば、まず間違いなく萩峯の命を奪う事が可能なのだ。逆に、攻撃力1500に下がった《花札衛-猪鹿蝶-》であれば、萩峯を殺さずにデュエルを終える事が出来る。

「何を躊躇う事があるのでしょうか?ショーの勝敗は既に決しています。後は、フィナーレを迎えるだけではないですか」

 あっけらかんと言ってのける萩峯に、近久は動揺と苛立ちの混ざった乱雑な言葉を投げつける。

「分かってるの!?ウチが五光で攻撃したら……あなたは……」

「くくく……何度も何度だってわたくしは口にしているはずです。死とはエンターテインメント!人の死こそが、至上の驚き!ならば、わたくしの死もまた、近久様達へのエンターテインメントショーの一環となるではありませんか!」

 萩峯の口ぶりに、近久は開いた口が塞がらなかった。他者を殺す事をエンタメと称していた彼は、今度は自らの死さえもエンタメと称し始めるのだ。それでも、彼に言葉を投げ続けるしかないのだ。正しさなど、誰も証明する事が出来やしない。ならば、後は問答の果てに答えを見つけるしかない。
 苦悶の表情を浮かべる近久が、問いかける様に萩峯へ言葉を投げる。

「本気、なの……?本気で、自分が死ぬ事でエンタメになるって思ってるの……?」

「当然でしょう。わたくしが魅せてきた刹那の表情こそが真の驚愕。それは、驚く当人はもちろんそれを観る方にも多大な驚きを与えるのです!」

「そんなの……おかしいよ……。あなたが死んだら、あなたがいろんな人に見せたいって言ってるエンタメそのものが終わっちゃうのよ……?」
 
「くく……本当に滑稽ですね。果てさて、近久様に覚悟というものをお教えするにはどうするのがよろしいでしょうか……!
そうですねぇ……必要なのは、わたくしが生かされた場合のリスクでしょう!であるならば、後ろで控えて居られるお嬢さんの安全を脅かせば、近久様は覚悟を決めてくださるのでしょうか?」

「……!」

 萩峯のペストマスク越しに捉えられたのは、近久の背後でこのショーを見ていた唯一の観客である穂香だ。近久の拳が強く強く握り込まれていく。そんな事を言われてしまえば、取るべき選択は1つしかなくなる。近久はギリリと歯を噛み締め、自分の無力さを嘆くしかなかった。

「ダメ、なんだね…………分かったよ。
だったら、もう終わらせる……!」

 萩峯は、このショーの終幕が曖昧になる事を許さない。彼を生かせば、絶対的に正しい事である穂香を守るという使命が脅かされる。それは、近久にとって何よりも防がなければならない事なのだ。
 近久の決意が宿った表情を確認した萩峯は、自らの顔を覆い隠していたペストマスクへ手をかけ、それをゆっくりと引き剥がす。

「さぁ!最高のフィナーレを!驚愕を!エンターテインメントを!
皆様に、わたくしの刹那的最期の瞬間をご堪能頂きましょう!!」

 マスクを外した彼の顔はとても綺麗な顔立ちをしていた。声色からしか判断できなかった彼の感情は、顔を見れば一目瞭然だ。これから自分が死ぬというのに、彼の顔には一抹の曇りも存在しない。満面の笑みが、萩峯の整った顔を一層引き立てる。気になると言えば、その歪み切ってなお不気味な程に光を宿すエメラルドグリーンの瞳だろうか。

「……。
ウチなんかじゃ……あなたを救えない。でも、これ以上人を傷つけさせる訳にはいかないの……。
《花札衛-五光-》で、《幻獣機トークン》を攻撃……」[攻4500]

 煌びやかな表情をする青年の人生を終わらせる選択。背後に控える少女の安全、そして彼がこれから対峙し殺す事となる人達の安全の為。自らへ言い聞かせるように、聞こえの良い言い訳を頭の中で反復しながら、その選択を口にした。
 その言葉が殺意となり、使役するモンスターへと乗せられる。抜刀した《花札衛-五光-》が飛び上がり、一直線に虹色に揺らめく小型の幻獣機へと向かう。

「来ます……来ますよ!
さぁ近久様!とくとご堪能ください!!わたくしの、人生を捧げた最高のエンターテインメントを!!!」

 驚嘆の声を洩らす萩峯の眼前で、トークンが瞬く間に五光に斬られ破壊される。そのまま、刀の切っ先は萩峯に向けられ死が迫っていく。
 視界がぼやけ、過去の記憶が次々と浮かび上がる萩峯。師匠の驚愕の表情、初めて感じた高揚感、そして自分が選んだ道の果て……全てが一瞬の内に脳裏を駆け巡っていく。

 己の見出したエンターテインメント。小手先で華のない自分のマジックでは驚くどころか、表情にすら変化を見せなかった師匠でさえ、死の間際となれば驚きもした。そして、恐怖もする。己のミスで死にかける師匠を見た時、初めて自分の技術を認められた気がした。それが、死にそうになっているだけで自分が驚かせた訳ではないと分かっていたとしても、間接的に師匠を驚かしたのは自分だ。自分が師匠を驚かしたのだ。初めて、自分に見せた事のない表情をしてくれている。嬉しくて仕方がなかった。どうしても……その顔が、あの厳格で表情変化に乏しいモノになど戻って欲しくなかったのだ。許されないと分かっていても歯止めなど効くはずがない。己が成した初めての成果だ。人に驚いて貰える事は、こんなにも気分がいいのだから。
 師匠はそのまま死んだ。その瞬間、自分は彼の弟子を卒業し、1人の人間へと成熟したと言える。頭がおかしいと揶揄されるだろう。気が狂っていると糾弾されるに違いない。だが、師匠の死は間違いなく自分の心を満たした。彼は己の命を使って、死の娯楽的価値を説いてくれたのだ。その尊い命を使ってまで説いてくれた教えに、何故贖罪する意味が生まれる?それは、師匠への侮辱に他ならない。彼女はその事を何にも分かっていない。人生に過ちがあると認めるのは、自らの人生に関与した人間達を軽んじている事と同義だろう。本当に救いようのない道化だ。下手に勝負に強い才能を持っているが故に、彼女は自分が他者に何かが出来る人間だと勘違いしてしまったではないか。実に哀れで滑稽だ。そうだ、彼女には人生を捧げる意思も、何かを背負い込むという覚悟もまるで足りていない。死の間際に魅せるあの表情を彼女は知らないのだ。知ってさえいれば彼女の意見は180度ひっくり返るはず。己の人生が充実している者ならば、必ず生へと執着する。執着すればするほどに、死という絶対的な終わりを拒絶する。その際に魅せる表情。これが、驚きでなくて何だというのだ。エンターテインメントでなくて何だというのか。己の人生をかけた最高の娯楽。その刹那の時にしか見られず見せられない魅惑の表情。
 大切な人間の死を知れば、悲しみ惜しむ。嫌な人間が死 ねば、喜ばしく感嘆する。哀れな人間が死 ねば、同情し心を痛める。理不尽な死を突きつけられれば、憤慨し発狂する。死という概念だけで、これほどまでに千差万別の感情を揺らすことが出来るのだ。くだらない演目で届けられるのは、せいぜい1つや2つの感情でしかない。だが、死であればその死の価値によって、無限に広がる驚きをセットで届ける事が出来る。死はエンターテインメントなのだ。喜怒哀楽様々な感情を想起させ、それにはすべて驚きも混ぜ込まれている。自分が見つけた唯一無二のエンターテインメント。それが、今この瞬間に終わりを迎える。終わってしまう。その儚さ、尊さ、虚しさ。そんな掛け替えのない一世一代のエンターテインメント。
 死ぬ。死んでしまう。道化として死ぬ。それを望んだのだ。だから、後悔など微塵も存在しない。この沸き上がる感情こそが、自分の見出したエンターテインメントに他ならない。いや、無いと言えば嘘になる。裏野……彼女のエンターテインメントを超える為にデュエルそのものにも磨きをかけた。デュエルそのもので魅了する事で、より死の瞬間……刹那の駆け引きの価値が高まるのだ。自分のエンターテインメントが、デュエルだけのエンターテインメントを上回ったのだと、裏野へ直接伝えられないのは惜しいだろう。しかし、目の前の彼女達は裏野の知り合いだ。ならば、悔いさえも残らない。彼女は、この驚きをまだ理解していないのだ。だったら、自分がこの命を課して教えてあげればいい。彼女に自分の命をもって、死の素晴らしさを説くのだ。そうだ。そうすれば、回り回って裏野にも死の娯楽的価値が伝わるはずなのだから。
 自分が死 ねば彼女も理解する。死 ねば、死んだら、死にさえすれば…………


 死ぬ………………?

 何故、こんなところで死なないといけない?


「あ……あぁ……!!!」

 五光の剣先が眼前に迫る。突如として全身を巡る寒気と震え、そして滝の様に流れ出す大量の汗。その瞬間、萩峯の顔に浮かんでいたのは、これまで彼が追い求めてきた驚愕そのものだった。目を見開き、口を開けたその表情は、彼自身が最も魅力に感じていた“死”を初めて体感した証であった。

「ち、違う!!?これじゃない!!こんなのはぁぁあああ!!!??」

 死の間際の絶叫が轟く。
 その声に、近久が反応するよりも前に五光の鋭い刀剣が萩峯の胸部にへと突き刺される。

「ぐぉ”ごぉ……!?」

 痛みと軽率に表現していいものではない。それは、力強く鼓動する心の蔵を確実に止める為に放たれた一撃だ。異物が体へと無理やり刺し込まれる不快感、拒絶感。内臓が悲鳴を上げる様に、傷つけられた臓器が血の流れを歪め、外の世界へと排出されていく。

「ぉ……ぉが……」

 整った顔立ちの萩峯の顔は、自らの返り血でべっとりと濡れ、ほとんど白目を向いた瞳では、何が起こったか理解できない様に瞳孔が揺れている。全身から力の抜けた萩峯の体がその場に倒れないのは、突き立てられた刀によってバランスを保っているに過ぎない。

「な……ぁ……ん……」

 ぽろぽろと言葉にならない文字だけを吐き出す萩峯。五光は、突き刺した刀を萩峯の体内でぐるりと回転させると、それを勢いよく彼の頭部に向けて振り上げる。


萩峯LP1000→0


 到底人間の力ではなし得ない力業。体の機械化した五光の攻撃は、今までの素早く美しい太刀筋とは大きく異なっていた。
 胸部から上に向かって真っ二つに体を寸断された萩峯の体が、支えを失った事で前のめりで倒れる。地面へと倒れた彼の内部から大量の血しぶきと、肉の塊が見え隠れしている。それに遅れて、綺麗に半分に切られたシルクハットが、地面へと辿り着いた。


ピーーー


「萩峯様のライフが0になりました。勝者は近久様です。」

 無機質なアナウンスが、デュエルの勝者を告げると共に、先程まで開く気配を見せなかったブルーフロアの扉が開かれた。

「…………」

「……お姉ちゃん?」

 近久は、覆い被さるように穂香を抱きしめていた。萩峯の顔を見た瞬間、無意識の内に穂香にその惨状を見せまいと身体が動いたのだ。
 穂香が声をかけた事で我を取り戻した近久は、自分の後ろの光景が穂香に見えないようにゆっくりと穂香を解放する。

「向こう……見ない様にしてね。穂香……」

「うん……」

 穂香を怖がらせる事がないようにと、近久が穂香の手を握る。しかし、その指先は震え、表情からは生気が抜けていた。
 そんな近久を見た穂香は、近久の震える手をゆっくりと握り返す。そして、少ない語彙の中で懸命に近久へもう1度声を掛ける。

「ほのかは、お姉ちゃんが悪いなんて思わないよ……。
お姉ちゃんは、すごく頑張ったんだもん……」

「ほ、のか…………」
 
 小さな手を握っている自らの手に雫がぽつぽつと落ちてくる事に気付いた事で、近久は己に憤ると共に無力さを再認識させられる。
 穂香を不安にさせまいと彼女の手を握ったのは事実だ。しかし、心の内では苦しみをほんの少しでも和らげて貰おうと、救って貰おうとしていたのだ。そんな無意識下に行われていた自己保身的行動。萩峯に指摘された自己愛という言葉が脳裏で蘇り、否定出来ないどころか、それを肯定する様な行動をしてしまっている自分が許せなかった。そして、運しか持ち得ず、躍起になればなる程に事が悪い方向に向かっていくような……。そんな自分の惨めさが、悔しくて堪らなかった。

「梨沙……なら、上手くできたのかな……」

 溢れた言葉は、募る己の無力さの根幹。自分を救ってくれた彼女の様に誰かを助けたい。己の罪への贖罪と共に成そうとしたその行動の結果、新たに人を殺す事となった。仕方ないと納得する事も出来なくはない。言い訳のしようは幾らでもある。だが、先の2人をそんな自己保身的言い訳の果てに殺して来たのだ。そんな自分が嫌で、正しい道を進もうと決めたはずなのに……。

「青いドア……開いたよお姉ちゃん……」

「……そう……だね。ここに居て、また誰かに襲われたらたまったもんじゃない……」

 穂香に諭され、近久は声を震わしながらも、ゆっくりと穂香の手を引き立ち上がる。そして、穂香の視界に入らないように背後を振り向く。
 ブルーフロアの入り口は開かれ、中から薄っすらと青い光が漏れ出す。その少し先に……彼が倒れている。

「……っ」

 3人目となる殺しへのショック。それを今一度突きつけられ、吐き気が込み上げる。瞬きの度にチラつく萩峯の魅せた死の恐怖と驚きの詰まった表情。残響として耳に残る死を拒む絶叫。それらが脳裏に焼き付いて離れない。忘れようと思っても忘れられない先の2人の死の瞬間。しかし、今回はそのどちらとも似ても似つかない。これほど恐怖に引きつった顔も、救いを求める絶叫も彼女達は見せていなかったのだ。
 死にたくないという誰しもが持っていて当たり前の感情。命が消えゆく瞬間。理不尽な死に対する……言わば正常な反応を、近久は初めて目の当たりにしてしまったのだ。

「これが…………エンタメ……?
ふざけないでよ…………」

 頬を流れ落ちていく雫。弱々しく、口元だけを緩ませ吐き出すのはせめてもの抵抗。その涙と笑みは、正しく在ろうとも、正しい道を歩めない自分自身への自嘲に他ならない。
 近久の心には、正しさを求めても届かない現実が重くのしかかっていた。
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