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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#46「緊急回避」

Report#46「緊急回避」 作:ランペル

ピー
「先行は落合様、後攻は千秋様になります。」


 [ターン1]


「僕の先行だ!
手札から《トリオンの蟲惑魔》召喚!」[攻1600]
手札:5枚→4枚

地面に突如穴が開いたかと思うとそこには蟻地獄の様な流砂が発生する。
その中央部からオレンジ色の体表の巨大な昆虫が顔を覗かせ口をぱくぱくと動かす。

「召喚時効果でデッキから落とし穴罠カード、《ホールティアの蟲惑魔》を手札に加える!」
手札:4枚→5枚

流砂の底で待ち構える昆虫が突如飛び上がったかと思うと、昆虫はその姿が可愛らしい少女の姿へと変貌する。

「《トリオンの蟲惑魔》を素材にリンクマーカーをセット!
リンク召喚!

堕とせ、LINK1《セラの蟲惑魔》!」[攻800]

赤を基調とした衣装に身を包んだ少女が地面に出現したリンク召喚のゲートにへと飛び込む。
召喚が宣言されると共にゲートから現われるのは一枚の葉をつけた植物。その葉からは無数に伸びる毛の先端は粘液性の球体が付着している。
その植物がフィールドへと芽生えると、先程の《トリオンの蟲惑魔》の様にその姿をあどけない少女の姿へと変貌させる。

「坊やの割に、何とも可愛らしいモンスターを使うじゃないか。
見るにただの女の子って訳じゃなさそうだがね」

「大人の男は特にだけど、可愛い女の子ってだけで釣られるんだ。
デュエルのルールを知らない大人はちょっと手を引かれるだけで蟲惑魔に付いてきちゃう。ほんとにバカだよね?」

不意に寂しげな顔を見せた女は、少年の言葉に深く同意する。

「あぁそうだねぇ…。
男ってのは本当にバカな生き物さ」

「でも罠にかかったおばさんもバカだけどね!
自分より小さいからって舐めてかかると食べられちゃうんだからさ!」

「ひひ…坊や、大口叩くのはせめてあたしを追い詰めてからにした方がいいさ…。
万が一、坊やが逆に追い詰められるようなことになったら恰好がつかないからねぇ!」

少年の罵倒を女は煽りで返す。
それを意に介さない少年は、デュエルディスクへとカードをセットする。

「逃げようとしてた癖によく言うよ。
カードを1枚セット。そして、セットしたこのカードは手札の罠カード《狂惑の落とし穴》を捨てる事でセットしたターンにでも発動が出来る!
罠発動《ホールティアの蟲惑魔》!このカードをモンスターカード扱いで特殊召喚だ!」[守2400]
手札:5枚→4枚→3枚

フィールドへ新たな少女が現れる。その髪と体は植物と一部同化しており、黒茶色の鋭い爪のように尖った莢が見え隠れする。

「罠カードが発動したことで、《セラの蟲惑魔》効果発動!
デッキから《トリオンの蟲惑魔》を特殊召喚!」[守1200]

《セラの蟲惑魔》を中心に地面に広がる水たまり。そこから、バシャッという水音と共に《トリオンの蟲惑魔》がフィールドにへと姿を現わした。
飛び出した《トリオンの蟲惑魔》は、フィールドへ立つと即座に女へ向けて手のひらをかざす。
その瞬間、女性の眼前のフィールドの一部に穴が開きそこが蟻地獄を思わせる流砂が発生する。

「なんだい…?」

「特殊召喚した《トリオンの蟲惑魔》の強制効果。
相手の魔法、罠カード1枚を対象に破壊だ!」

「あたしのフィールドには魔法も罠も存在しない。
空打ちになるだけだがねぇ…」

そう言い終えた所で、少年のフィールドの黄緑髪の少女…《セラの蟲惑魔》が動きを見せたのが分かった。

「この瞬間に《セラの蟲惑魔》の効果を発動だ!
自分以外の蟲惑魔モンスターが効果を発動した場合に、デッキから落とし穴かホール罠カードをセットする。
デッキから《墓穴ホール》をセット!」

少年がデュエルディスクの画面をタッチすると、デッキから1枚のカードが飛び出す。

「《ホールティアの蟲惑魔》はレベル4モンスターとして特殊召喚されてる。
レベル4の《ホールティアの蟲惑魔》と《トリオンの蟲惑魔》の2体でオーバーレイネットワークを構築。
エクシーズ召喚!

堕とせ、ランク4《シトリスの蟲惑魔》!」[攻2500]

フィールドへと菫によく似た淡い藤色の花が咲き乱れる。その内の一つが揺れたかと思うと、それは露出度の高い白い衣装を身に纏った妖美な少女にへと姿を変えた。

「オーバーレイユニットを1つ使って、効果発動!
デッキから《キノの蟲惑魔》を手札に加えるよ!」
手札:3枚→4枚

少女が小さく笑うと少年の前へ新たな藤色の花が開花する。
その中に収められていた1枚のカードを少年は自身の手札にへと加えた。

「よーし、後はカードを3枚セットしてと。
これでオッケー!後はおばさんがバカみたいに慌てる所を見てから、この子たちにおばさんを食べてもらうことにするから!」
手札:4枚→1枚

少年は実に楽しそうな笑顔を女へと向ける。さも当たり前の様に、デュエルでの勝利、そして敗者への粛清を楽しみにする言動。
女は、少年が自分を下に見ていることが分かった。どんな育ち故にそのような思考回路に至ったのかは分かるはずもない。
だが、その少年の知見が余りに局所的で、浅はかなものなのは明白だった。



落合-LP:4000
手札:1枚


 [ターン2]


「典型的な世間知らずだね坊や。親の顔が見てみたいものさ」

「僕はもう分かってるんだ。大人も結局自分都合でしか動かないってこと。
周りからいい人だったり、尊敬されてるって思われてる大人だって、結局自分のやりたい事が他の人に受け入れられてるだけ。たまたまなんだよね。
運が良かっただけの癖に、自分が正しいって子供に言い聞かせてくる。
これが自分都合じゃなくて何なのって話だよ」

女は憐みの目を少年へと向ける。
そして怪しく笑い、少年の境遇をあざ笑う。

「ひひ…要するに坊やの周りにはその運がいい大人が居なかったって訳だ…。
まぁ、そんな坊やこそ運がなかったってことさね」

「うるさいなぁ…。おばさんがさっき自分で言ってたんだよ?
大口叩くのは追い詰めてからにしろってさ!デュエルは先行絶対有利!
魔法、罠を破壊しようとしても無駄だからね!」

「それもそうだねぇ…。
それじゃぁ、大人らしく行動で示してあげようじゃないか。
あたしのターン、ドローだよ」
手札:5枚→6枚

ゆっくりとデッキトップからカードを引き込んだ女は、引いたカード越しに少年へと目を向ける。
少年は自信満々に胸を張っている。それを見て再び口角が緩む。

「(子供相手でもあたしゃ変わらないねぇ…)
《十種神鏡陣》を発動だよ。合計レベルが10になる様に、手札とフィールドからモンスターを墓地へと送り2枚ドローする。
あたしゃ、手札のレベル10《ネムレリアの夢喰い-レヴェイユ》を墓地へと送って2枚をドローだよ」
手札:6枚→6枚

手札交換を手早く済ませると、手札から1枚のカードをデュエルディスクへとセッティングする。

「スケール8《夢見るネムレリア》をPスケールにセッティングさ!」
手札:6枚→5枚

ふわふわとパジャマ姿の少女が、Pスケールの8の数字と共にフィールドへと浮かび上がる。

「P効果を発動!デッキ、墓地より永続魔法《ネムレリアの寝姫楼》をフィールドへと置く。そして、このカードをEXデッキへ表側で加える」

寝返りを打った少女がPスケールから落下する。
それを支えるかのように、地面からパンケーキで出来たタワーが突出する。クリームとフルーツ入り混じる15層にも及ぶパンケーキタワーの頂上へ眠る少女を据え、それは甘い匂いをフィールドへと漂わせる。

「パンケーキ…?」

「まるで夢の様だろう?こんな量あったって食べられやしない。
食べきれない程に食べたいという夢の世界!
坊やもすぐに夢の世界に連れて行ってやるさね…ひひひ…」

デュエルディスクの画面を確認した少年は、墓地から1枚のカードを取り出した。

「(2枚のサーチ効果持ちか…耐性付与も面倒だね)
僕は夢は見ないことにしてる。墓地から罠発動《ホールティアの蟲惑魔》!
墓地のこのカードを除外して、墓地の蟲惑魔モンスター、《トリオンの蟲惑魔》を特殊召喚する!」[守1200]

少年のフィールドに蟻地獄が生成される。その中から《トリオンの蟲惑魔》が飛び出し、フィールドへ着地する。そして蟻地獄の流砂へ片足を突っ込んだかと思うと、それを蹴るような動きを見せた。
まるでボールが蹴られるかのように地面に発生した蟻地獄が平行移動する。
パンケーキの根本まで移動した蟻地獄は、どんどんとパンケーキのタワーを飲み込んで行ってしまう。

「特殊召喚した《トリオンの蟲惑魔》の強制効果で《ネムレリアの寝姫楼》を破壊だ!
さらに、この時蟲惑魔の効果が発動したから《セラの蟲惑魔》の効果も発動。
デッキから2枚目の《ホールティアの蟲惑魔》をセットしとく」

水面に1枚のカードが伏せられた状態で浮かび上がる。

「まぁ構やしないさ。
《寝姫の甘い夢》発動。デッキよりネムレリアモンスターを手札に加える。この際、EXデッキに《夢見るネムレリア》が既に存在していた場合、このターンあたしのネムレリアモンスターの召喚か特殊召喚の時に坊やはカード効果を発動できなくなる」
手札:5枚→4枚

「召喚時に効果が使えない…!?」

「落とし穴はたいていが召喚反応のカードさね。
坊やの伏せカードで使えるカードは何枚残ってるかねぇ?」

「なにそれ…ずるじゃん!」

少年は不機嫌に悪態を吐く。
女が反するようににやにやと不気味な笑いを漏らす。

「ひひひ…あたしは《ネムレリアの夢守り-オレイエ》を手札にへと加える。そしてこいつはEXデッキに表側のPモンスターが居る時に、手札から特殊召喚が出来る!」[攻2500]
手札:4枚→5枚→4枚

上空から巨大な何かがべちゃりと音を立てて地面へと落ちてくる。
落ちてきたのはチョコレートの塊。それは、ゆっくりと起き上がる動作をするとまるで狼男の様な姿を形どる。

「オレイエの効果も発動だよ。
EXデッキの裏側のカード1枚を除外し、このカードの攻撃力をターン終了まで坊やのモンスターの数×500アップ。よって、攻撃力が1000アップさ!」

「させないよ!罠発動《蟲惑の落とし穴》!
このターン特殊召喚されたモンスターが効果を発動した時、その効果を無効にして破壊だよ!」

「なるほどねぇ…召喚時以外の落とし穴もあった訳かい」

唸り声をあげたチョコレートの狼男。その口を塞ぐように地面から蜘蛛の糸が現れ狼男の口を縛り上げる。
叫びを封じた蜘蛛の糸はそのまま狼男の体を縛り付け、地面にへと引きずり込んでしまった。

「さらにー!
罠が発動したから《セラの蟲惑魔》の効果。そして、相手モンスターが効果で墓地へ送られるか除外された時に《シトリスの蟲惑魔》の効果も発動!
さっき破壊したモンスターを自身のオーバーレイユニットとして吸収するよ!」

《シトリスの蟲惑魔》が指を動かすと、地面より淡い藤色の花が咲く。そしてそこに収められたのは先程破壊したオレイエの頭部、星柄の装飾がされた目とチョコレートが滴り甘いに匂いが漂う。
《シトリスの蟲惑魔》がそれを手に取る。瞬間、チョコレートの頭部は溶け出し少女の体にへと吸収されていき、ほんの少し残ったチョコを舌で舐めとった。

「《セラの蟲惑魔》の効果で、デッキから《ティオの蟲惑魔》を特殊召喚!」[守1100]

地面に薄く張った水たまりより、まるで口のようにギザギザとした葉っぱが複数生えてくる。ハエトリソウと呼ばれる植物が芽生え、その中の一つが口を閉じた状態でフィールドへと芽吹く。
それの口が開かれると、葉の中で水色の粘液性のスライムに体を預けた少女が気だるげそうにしている。

「《ティオの蟲惑魔》が特殊召喚成功時、墓地の落とし穴罠カードである《蟲惑の落とし穴》をフィールドにセットできる!」

気だるげな少女が口の中に入っている頭蓋骨を、水面にへと捨てる。
すると、頭蓋骨はどんどんと沈んでいき、代わりに1枚の伏せカードが水面へと浮上してきた。

「これで、次のターンの準備も万端って事。
おばさんもこのチョコレートみたいに溶けてなくなっちゃうかもね?」

楽しそうな高い笑い声が響く。

「さて、残る伏せカードは3枚だねぇ?
あと何枚使えるカードが残ってるんだい?
EXにPモンスターが居る事で、《ネムレリアの夢守り-クエット》を特殊召喚」[攻2000]
手札:4枚→3枚

女の背後よりクリームの塊がフィールドへと飛び込んで来る。
それは徐々に動物の様な形となっていき、エクレアの角と飴の牙が生えた羊の様なモンスターとなる。

「EXから3枚を裏側除外し、墓地の《ネムレリアの夢喰い-レヴェイユ》の効果を発動さ。
こいつを墓地から特殊召喚する」

「ダメだね!罠発動《墓穴ホール》!
相手の手札か墓地か、除外されてるモンスターの効果が発動した時、その効果を無効にしておばさんに2000のダメージを与える!」

「2000ダメージだって…!?」

地面からアイスクリームのコーンの先端が出現する。しかし、そこへ大量の土が覆いかぶさり埋められてしまう。
少年の目の前へと現れた緑色の体表の小さな生物が歪んだスコップで、地面を掘る。力いっぱいスコップを地上へと振り上げると、埋まっていた壊れた墓石が宙を舞い、女性の方へと飛んでいく。

「ば、ばか…」

咄嗟にデュエルディスクで頭部を守る。しかし、壊れているとはいえ巨大な石の塊の重量を支えることなど叶う訳もなく、直撃は避けたにせよ墓石が女のおでこの肉を抉りながら地面へと落下した。

千秋LP:4000→2000


「いっ…たい…じゃないか…」

頭より血がだらだらと流れる女を見て、少年はけたけたと笑い声をあげる。

「はは!これでおばさんも分かった?自業自得ってこう言う事だと思うんだよ。
おばさんがバカみたいに展開を広げるから、余計に痛い目を見るんだよ?
可哀そうだから教えといてあげると~このカードに1ターンの発動制限はかかってないから、もしもう1枚《墓穴ホール》が伏せられてたら、おばさんのライフは0になっちゃうね!」

「ひひ…だからこれ以上展開するなって言いたいのかい?」

右手で血の流れる頭を押さえながら女は口を開く。

「好きにすればいいよ~?
でも、おばさんが何かしたせいで負けちゃうのは可哀そうかな~ってさ」

「あら坊や…優しいじゃないさね…。
なら、《墓穴ホール》に引っかからない最低限動いてから終わりにしようかね」

女は血まみれの右手で1枚のカードを手に取る。

「そうそう!僕が嘘ついてるかもしれないけど、もしかしたら本当に伏せられてるかもしれないからね~?怖くて動けないよね?
あはは!ダメージを怖がりながら早くターンエンドしてよ。
まぁ、ターンエンドしたら今度こそおばさん負けちゃうけどね!」

「ひひひ…残りの伏せは2枚。
その口ぶりから本当に《墓穴ホール》が1枚は伏せてあるんだろう?
そして、《寝姫の甘い夢》の効果の召喚時のチェーン不可効果を説明してやった時、坊やは動揺していたね?
つまり、残りの1枚は召喚反応の落とし穴な可能性が高い訳だ」

女が少年の見せた言動、仕草から状況を分析する。
それをまだ察知出来てない少年は不気味に笑みを見せる女へ困惑の眼差しを向けている。

「なんの話してるの?」

「かしこいかしこい坊やは、バカな大人に嘘なんか吐く必要ないだろう?
坊やは、坊やのやりたい事をやって勝ってきたんだからねぇ?」

「だから!なんの話だよ!」

不敵に笑いながら喋る女。それを不愉快に思ったのか少年は声を荒げ、女の語る意図を問いただす。
そして、その苛立ちを笑い飛ばすかのように女は手に持ったカードを発動した。

「ひひひ!こういうことさ!
《エアーズロック・サンライズ》発動!
墓地の獣族である《ネムレリアの夢喰い-レヴェイユ》を特殊召喚!」[攻2500]
手札:3枚→2枚

じりりりりと巨大なベルの音が静かなフリーエリア内へと響き渡る。
現れたのは巨大なアイスクリームの怪物。アイスクリームとアイスコーンで体を形成し肩に巨大なベルを備えたそれは、コーンの牙をじゃりじゃりと嚙み合わせる。

「攻撃しても僕のライフは0にならないよ。
どっちにしろおばさんは次のターン僕に負けるんだ!」

「坊やは次のターンが来ると思っているみたいだけど…。
ひひ…それは叶う事がないのよぉ?」

「何言ってるんだよおばさん。まだ何か召喚するつもり?」

「いいやぁ?使うのはこれで最後さ。
レヴェイユを対象に《野生解放》発動!
これにより、レヴェイユの攻撃力は守備力分アップし、攻撃力は5000になる!」[攻5000]

アイスの怪物の周囲を赤いオーラが纏い始め、ベルの轟音と怪物の咆哮が再び響く。

「なぁ!?攻撃力5000!?
ふざけんな!!!」

「その反応から…攻撃を防ぐ術は持ってなさそうねぇ?」

「は、はぁ?そう思うなら攻撃してみればいいだろ?
えっと…《串刺しの落とし穴》!
攻撃してきたら使って、元の攻撃力の半分のダメージだ!
ほら!攻撃できるもんなら攻撃して来てみろよ!!」

女は笑い声を漏らす。あまりに滑稽で、そして必死な様に笑いをこらえる事が出来なかったのだ。

「なにがおかしいんだよ…」

「坊や。最高だよ。
こんなにも分かりやすい嘘なら可愛いもんさぁ」

「う、嘘だと思うなら…

「バトルフェイズ、《ネムレリアの夢喰い-レヴェイユ》で《セラの蟲惑魔》を攻撃。攻撃宣言時…何かあるかしら?
坊や~?」[攻5000]

無慈悲に放たれた攻撃力5000の攻撃宣言。
少年が先ほどまで発動をほのめかしていたカードの発動を促す様に少年へと女は問いを投げかける。
血を流す女のしわくちゃの笑みは、若い少年の心に恐怖という感情を植え付ける。

「な…あ……」

「ないなら、バトルは続行!
レヴェイユ、坊やを喰い散らかしな!」

けたたましく鳴るベルの轟音。それと同時に向かって来る巨大なアイスの怪物。
怪物はまず黄緑髪の少女《セラの蟲惑魔》へと狙いを定め、そのコーンで出来た爪で少女を切り裂く。アイスコーンで出来た爪は脆そうに見えたが、少女の体を容易に半分に切り裂き破壊する。
使用した腕を振るうと粘液の付着したコーンの爪がはじき出され、新たにコーンの爪が生え変わる。

「くそっ!ずるいんだよ!
だから大人は嫌いだ!」

「ひっひっひ!そうやって、自分の失敗からいつまでも逃げてりゃいいさねぇ。
まぁ、坊やが成功する事はもう二度とないけどねぇ!!」

アイスの怪物は次の標的を決めた。
巨大な体からは想像できない素早さで、少年の元へと駆け出す。

「憶えてろよおばさん!今度は絶対に負けないからな!?」

「次なんてないって言っただろう!
…?」

高らかに少年の負けを突き付ける。しかし、少年が妙な動きをしているのが見えた。
手札や墓地、デッキでもなく、ズボンの後ろのポケットから1枚のカードを取り出したのだ。

「(なんだ…?いやそれより…)
クエット!坊やに妙な事をさせるんじゃないよ!」

指示を受けたクリームの獣が滑らかに動き、少年の元まで突っ込む。
少年はデュエルディスクの裏面にあるガラスの蓋を開ける。そこはカード1枚分を収納できるカードケースになっているようだった。

「レヴェイユ、クエット!!
早く坊やを殺せ!」

クエットが少年の足にクリームで絡みつき、そのまま体を飲み込み動きを封じようとする。

しかし、一歩遅かった。


「《緊急テレポート》発動」


ケースの蓋が閉められると同時に少年がカードの発動を宣言する。
その瞬間、少年から淡い光が漏れ出したかと思うと少年はその姿を消した。

「な…!?
レヴェイユ、クエット!!」

攻撃宣言をしたモンスターと、拘束を命じたモンスター双方の名を呼ぶ。
少年がどこへ行ったのかという意味だ。
しかし、2体のモンスターは指示を受けた対象が消えた事で、完全に動きを止めた。

「冗談だろう!?
逃げた?カードを使ってか?なんだいそりゃ!?
あのガキ…どっちがずるしてるんだい!?
ぐ……」

苛立ちのままに大声をあげる女の頭がズキズキと痛む。
血がまだ滲む頭部の傷に響き、女は膝をついた。
そして、デュエルディスクの画面を確認する。

   *****
デュエル勝利おめでとうございます。
以下獲得ボーナスになります。

勝利ボーナス      :10000DP
           計:10000DP
   *****

「一応勝利扱いではあるけど…くそっ…キルボーナスが入っていない…。
だから寝てない奴は何してくるか分かりゃしないから嫌なんだよ…!!」

こみ上げる怒りの向け所が分からず、地面に握った拳を叩きつける。

「いったい…くそ…」

一度呼吸を整えた女は、現在の状態を確認するべく頭を働かせる。

「(一体どこへ行った?《緊急テレポート》…恐らくは《盤外発動》だろうね…。
だが、いつでもデュエルから離脱できる効果があっていいのか?
いや、今はそれよりこれだけ騒いだんだ。誰か来てもいけないね…)」

女は立ち上がり、額の傷口を手で押さえながら元来た道をゆっくりと戻り始める。

「1万なんて…薬代だけで飛びかねないよ…。
(…まぁ、面白い情報は手に入れたとも言えるさね。
代わりに《情報屋》からカモの情報でも引き込めれば…いいか……)」

静寂な夜に巻き起こった《夜襲》のデュエルが幕を閉じる。
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