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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#41「傍に居てくれるから」

Report#41「傍に居てくれるから」 作:ランペル



穂香-LP:2400
手札   :8枚
モンスター:なし
魔法&罠 :なし

ーVSー [ターン3]

ワルトナー-LP:11000
手札   :1枚
モンスター:《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》[攻]《地縛戒隷 ジオグリフォン》[攻]《ダーク・ダイブ・ボンバー》[攻]
魔法&罠 :《地縛牢》



大きなダメージを受けてしまった穂香ちゃんは、苦しそうに咳き込みながらも逆転するべくデッキトップへと手を掛けた。

「ほのかの…ターン!」
手札:8枚→9枚

「(フィールドにカードは残っていないけど…《魔導書の神判》でサーチしたカードと合わせて手札は9枚もある。逆転も難しくはないはず…!)」

「ごほっ…ほのかは《ルドラの魔導書》を使うよ。今度は《魔導書廊エトワール》を墓地に送って…2枚ドロー…」
手札;9枚→9枚

デッキから新たに2枚のカードを手札にへと引き込むと、フィールドに鎮座する巨大な手…《地縛牢》を指差す。

「ほのか…それ好きじゃない。
《ゲーテの魔導書》使うからね。墓地の魔導書3枚を除外して…その手のやつを除外するよ…!」
手札:9枚→8枚

フィールドに現れた金色の魔導書のページがぱらぱらとめくられていくと、《地縛牢》が異次元にへと吸い込まれていく。

「これで安心。どんどん行くよ。
《アルマの魔導書》発動。
《アルマの魔導書》以外の除外されている魔導書1枚を手札に戻せるよ。ほのかは《ゲーテの魔導書》を手札に」
手札:8枚→8枚

穂香ちゃんの頭上からゆっくりと、金色の魔導書が降りてくる。穂香ちゃんがそれを手にすると、それは一瞬でカードにへと形を戻した。

「さらにもう一回!《セフェルの魔導書》発動だよ。
手札のこれ見てもらって……見た?」

手札から公開する《ネクロの魔導書》を視認した少女は静かにうなずいた。

「見てもらったから、墓地の《アルマの魔導書》をまねっこ。
今度は除外されてる《ルドラの魔導書》を手札に戻すよ」
手札:8枚→8枚

先程と同じく頭上から朱色に輝く魔導書が降りてきた。
穂香ちゃんはそれをカードとして受け取ると、咳き込みフィールドのモンスターを手に持った。

「準備出来た…。《魔導召喚士 テンペル》を墓地に送って…リリースだっけ?
とにかく、効果を発動!デッキから光属性か闇属性のレベル5以上の魔法使い族を特殊召喚できるの!
レベル9の《魔導天士 トールモンド》を特殊召喚…!」[攻2900]

フロア内に閃光が走り、緑の照明をかき消すように白く美しい翼を広げた天使の様な魔法使いがフィールドにへと降り立つ。その周囲は赤い斧、青い槍、黄色の弓、緑の剣が淡く光りながら漂っている。

「確か、魔法使い族の効果で特殊召喚された時に墓地の魔導書カード2枚を手札に持って来ることが出来るよ。
この効果で、《アルマの魔導書》と《魔導書院ラメイソン》を手札に戻す!」
手札:8枚→10枚

トールモンドの眼前へ2冊の魔導書が浮かび上がり、それは穂香ちゃんの手元まで届けられた。

「そして、手札の魔導書4枚をじゃらじゃらちゃんに見せるよ…。
見せるのはこれ!ちゃんと見てね」

そう言うと穂香ちゃんは手札の《アルマの魔導書》、《ルドラの魔導書》、《ネクロの魔導書》、《ゲーテの魔導書》を公開する。

「見た…」

「見て貰ったから…トールモンドの効果を使うよ!このカード以外のフィールドのカードを全て破壊しちゃうから!」

「…!」

「すべて破壊…!
(これで一気に形勢逆転だ!)」

トールモンドが周囲を漂う4つの武具を手中に収め魔力を込める。そして、両手を広げると共に、フィールドに魔力の衝撃波が放たれ、その衝撃波を喰らった相手の魔獣達は次々と破壊されていった。

「へへー…げほっ…これでじゃらじゃらちゃんのモンスターいなくなっちゃったよ!」

「相手によって…破壊された…《地縛戒隷 ジオグリフォン》…の効果。
相手によって…フィールドを…離れた…《地縛戒隷 ジオグラシャ=ラボラス》…の効果を…それぞれ発動…」

「…へ?」

自信気な表情を見せていた穂香ちゃんが、破壊されたモンスター達の効果の発動にきょとんとした顔になる。

「ジオグラシャ=ラボラス…EXデッキから…《地縛戒隷 ジオクラーケン》…特殊召喚…」[守1200]

地面が割れ、そこから紫の文様が走る巨大な触手が現れたかと思うと、巨大なイカのような巨獣が姿を現わした。

「さらに…ジオグリフォン…《魔導天士 トールモンド》…破壊」

破壊されたジオグリフォンが霊体となって、トールモンドにへと飛び込む。
ジオグリフォンがその体を突き抜けると同時にトールモンドはその身を爆発させた。

「トールモンドが…」

「その後…自分の…フィールドと…墓地の…地縛モンスターの…種類…×300…のダメージを…アナタに…与える」

「バーン効果…!?あの子のフィールドと墓地にモンスターは…

「フィールドに…1体…墓地に5種類…合わせて…1800ダメージ…」

穂香ちゃんの足元の地面が紫色に光りはじめる。そしてそれと同時に、地縛モンスターに刻まれていたような赤い文様が穂香ちゃんの体に走り始める。

「穂香ちゃん!?」

「な、なにこれ…?いっ!?
いぁああああああああ!!!?」

穂香ちゃんの体を巡った赤い文様が光りはじめた途端に目を見開いた彼女は、悲鳴を上げ倒れてしまう。

「痛い!?いたい!!いたい!!
お姉ちゃぁぁん!たすけて…助けてぇぇぇ!!?
これ…これ終わんない!ぃやぇえあぁぁああ!?」

穂香LP:2400→600


倒れ込んだ穂香ちゃんはそのまま地面を痛みでのたうち回りながら、自分へ助けを求める。
辛いことがあってもぐっと耐え、先程の大きなダメージを受けた時でさえ、自分は大丈夫だと健気に気丈な姿を見せていたこの子が、初めて助けてと口に出して自分へ縋っている。
それは…彼女が感じとる痛みが、今までにない程に耐えがたいものだという事。

「ほ、穂香ちゃん…!」

自分が駆けつけても何も出来やしない。でも、痛みでのたうつこの子を眺めて居る事も出来る訳がない。
近くへ駆け寄り、ぎゅっと抱きしめる。

「耐えて…きっともう少し…」

「いたいぃ…いたい…!…助けてぇぇええ!!!」

胸の中で痛みと戦う少女の目からは大量の涙が流れ落ちていく。その涙に洗い流されるかのように、体に走った赤い文様が地面にへとすっと引いていくのが見えた。

「うぅ……おねえちゃぁん……」

「痛かったね…もうきっと大丈夫…」

爆風で焼け荒れた黄緑の髪をゆっくりと掻き分け、頭を優しく撫でる。

「(赤くなってた所を見ても、傷は残っていないように見える…)」

穂香ちゃんの体に外傷が残っていないことから、恐らく痛みを強制的に知覚させるタイプのダメージを受けたのだろう…。
痛みに耐えられずに助けを求めた彼女が受けた痛みが、どれほどのものだったのかは想像が出来ない…。

「少し…足りなかった…」

これだけの悲鳴とその光景を見ても何も感じていないかのようにデュエルディスクを構える少女は与えたダメージ量の感想を述べているだけだ。

「(この子も…やっぱりパープルやレッドと同じフロア主…。
人を傷つけても、もう何も感じられなくなっているんだ…)」

「お姉ちゃん…」

小さな手が自分の手を手繰り寄せぎゅっと握り込んでくるのが分かった。

「穂香ちゃん…大丈夫?
痛かったよね…」

代われるものなら変わってあげたい。小さい子が苦しむ姿など見たくない。

「ううん、ごめんなさい。
もう、大丈夫…ありがとう…」

そう言う彼女の手は震えたままだ。
恐怖と懸命に戦い、大丈夫と言える…。そんな9歳の少女が一体どれだけいるだろうか?
しかし、その小さな子が見せる強さも既に限界が近づいている。

「危ないから…離れてて…。
ほのか…頑張る…から…」

震える小さな手が、自分の手をゆっくりと放そうとする。
その手を引き戻し、握り返す。

「え…?」

「もう離れたりなんかしない。私も、穂香ちゃんと一緒に戦うから一緒に居るよ」

「お姉ちゃん……」

「まだ、負けてない。穂香ちゃんが辛い思いしながら頑張ってくれてるんだから。
私も傍に…居させて?」

はっとしたような顔をした穂香ちゃんは目に溜めた涙を拭うと、再び強く立ち上がる。

「お姉ちゃんが…一緒なら元気いっぱいだよ…!」

「うん!手札もまだある。
巻き返そう!」

共に決意を新たにフロア主の少女にへと向き直った。
少女は黙ってこちらを見ていたかと思うと、デュエルディスクを新たに操作し始める。

「《地縛戒隷 ジオクラーケン》…特殊召喚時…デッキから…フィールド魔法《幻夢境》…手札に」
手札:1枚→2枚

「じゃぁほのかは、《ネクロの魔導書》を…

穂香ちゃんがデュエルディスクに魔法カードを発動しようとすると、デュエルディスクにエラーが表示された。

「あ、あれ?なんで使えないの…?」

「(エラー…?発動が出来ないって事?
《ネクロの魔導書》は魔法使い族の蘇生カード…それが使えないってことは…)
あ、穂香ちゃん…。きっとトールモンドの制約だよ」

「トールモンド…?」

穂香ちゃんが墓地に送られたカードのテキストをゆっくりと読み、その表情を青くしていった。

「大変だよ…効果を発動したら他のモンスターを特殊召喚できないって書いてる…!?」

「ジオグリフォンの破壊効果が予想以上に痛手だったね…」

残りライフが600しかない状態で、、フィールドへモンスターを残せないのは非常に危険だ。
しかし、《魔導天士 トールモンド》の制約で特殊召喚が出来ない以上、何とか次のターンを凌ぐしか手は残されていない。

「でも…どうしようもないよね…。
なら、《グリモの魔導書》を使うよ。デッキから《ネクロの魔導書》を持ってきて…カードを4枚セットして、ターンエンドだよ…!」
手札:9枚→9枚→5枚



本導-LP:600
手札:5枚


 [ターン4]


「ワタシの…ターン」
手札:2枚→3枚

デッキからカードを引いた少女は、そのドローしたカードを少しの間見つめ、別の手札を発動してくる。

「《ダーク・バースト》…発動。
墓地の…攻撃力…1500以下の…闇属性…《地縛囚人 グランド・キーパー》…手札に…。
そして、そのまま召喚」[攻300]
手札:3枚→3枚→2枚

紫色の文様を走らせた石柱に封じられたモンスターがうめき声と共に現れる。

「グランド・キーパー…デッキか墓地…から…レベル5以下の…《地縛囚人 ライン・ウォーカー》…特殊召喚」[守1100]

オレンジの文様の走るモンスターが尾で紫の炎を揺らめかせながら現れる。

「あの2体…どっちもチューナーモンスター…?」

「チューナー?」

「シンクロ召喚って呼ばれてた召喚に必要なモンスターの事だよ。
でも、チューナー2体…あっちのイカとシンクロするつもり…?」

「ライン・フォーカー…特殊召喚時…デッキから…《地縛牢》…手札に…」
手札:2枚→3枚

「あ、ほのかが好きじゃないやつ…」

穂香ちゃんは嫌そうに眼を細める。

「《地縛牢》発動…。
その効果…地縛モンスター…召喚…出来る」
手札:3枚→2枚

「さらに召喚…」

フィールドを眺めて居ると、先程呼び出された2体のモンスターの足元から鎖が飛び出し、既に縛られている2体のモンスターを更に縛り付ける。

「まだ捕まるの?じゃらじゃらちゃんは、じゃらじゃらが好きだね…」

「…。
グランド・キーパーとライン・ウォーカーをリリース」

縛られた2体の囚人が地面にへと鎖で引きずり込まれていく。

「アドバンス召喚。

現れろ…レベル10…《地縛神 Uru》」[攻3000]
手札:2枚→1枚

「ここでアドバンス召喚…!?」

モンスターが召喚されると、フロアの両端辺りに4本ずつ他のモンスターにも刻まれていたのと同じ赤い文様が走った柱が出現した。そして、それとほぼ同じタイミングでフロア内の緑色の照明に陰りが出てくる。

「お姉ちゃんなんか出てきたよ…」

「柱…?上から……

突如出現した柱を目で追い、視線が上にへと向く。
そこで見た、頭上に広がる光景に言葉を失ってしまった。

「く…も…?」

頭上にはフロア中を覆い隠さんとするほどに巨大な蜘蛛のモンスターが出現していた。
黒い体に赤い文様の走ったそれは、ゆっくりと頭部を動かすとたくさんの目で自分と穂香ちゃんを見遣った…。

「ひっ…おおきい…ね…」

「《地縛神 Uru》…攻撃対象にならない…相手にモンスター…いても…直接攻撃…出来る」

「攻撃力3000のダイレクトアタッカー…」

「これで…壁モンスター…呼んでも…終わる。
《地縛戒隷 ジオクラーケン》…攻撃表示に変更。
バトル…。
《地縛神 Uru》…ダイレクト…アタック…」[攻3000]

左右に位置する柱に見えていた巨大な蜘蛛の脚部が振動と共に動き始めた。

「あんな大きいのに攻撃されたら死んじゃう!
《ゲーテの魔導書》を使う。墓地の魔導書3枚を除外して、そのおっきい蜘蛛を除外だ!」

「そう…いえば…」

穂香ちゃんの目の前へ金色の魔導書が現れ、ぱわぱら捲られると今までと同様巨大な蜘蛛がゆっくり異次元にへと吸い込まれていき、その姿が段々と消えていく。

「でも…それ…もうない…。
《地縛戒隷 ジオクラーケン》で…ダイレクト…アタック…」[攻2800]

ジオクラーケンが巨大な触腕を持ち上げ、そこから紫色の光線を放つ。

「これ……使える……よね!
相手の攻撃の時に《魔法の筒》発動だよ!」

デュエルディスク上で発動可能なカードが発光し、それを確認した穂香ちゃんが罠カードを発動した。

「…!」

「相手モンスターの攻撃宣言時に、攻撃モンスターのジオクラーケンを対象に発動」

「その大きなイカさんの攻撃を無効にして…攻撃力分のダメージをじゃらじゃらちゃんに与えちゃうから!」

目の前へハテナマークの付いた筒が2つ現れ、ジオクラーケンの放った光線をその内の1つが吸収し、もう1つの筒から対面の少女にへと反射された。

「ぐ…」

ワルトナーLP:11000→8200


ダメージを受けた少女は膝をつき、体を震わせる。

「た、助かった?」

「だと…いいけど…」

「……ワタシ…ターンエンド…」

少女は一拍呼吸を置き、立ち上がると自身のターンの終わりを宣言した。



ワルトナー-LP:8200
手札:1枚


 [ターン5]


「ほのかのターンだね…。
ドロー」
手札:5枚→6枚

「何とか助かったけど…まだあの子のライフは8000以上ある…」

「お姉ちゃん!ほのかライフはもう少ないけど、手札はいっぱいあるよ!
頑張るから…見ててね!」

元気そうな声を絞り出す穂香ちゃんは体のあちこちが震えている。
精神的にも肉体的にも限界なのを、からげんきで悟らせないようにしているのだ。

「…うん。
私が傍に居るからね」

「デッキから《魔導法士 ジュノン》を墓地に送って、《マジシャンズ・ソウルズ》を特殊召喚するよ!」[守0]
手札:6枚→5枚

フィールドへ浮かび上がった魔法陣の中央へ男女二人組の魔法使いの魂が形どられる。

「やっと、ほのかのエースモンスターを呼べるよお姉ちゃん!」

彼女のエースモンスターがようやくフィールドにお披露目となる。危険な状態は続いているが、今はそのお披露目の喜びを共に分かち合う。

「初デュエルなのに、お披露目が遅くなっちゃったね。
でも、ここから逆転ってエースモンスターって感じがしてすごくかっこいいかも!」

「いくよー!
手札の魔導書3枚、《アルマの魔導書》、《ヒュグロの魔導書》、《ルドラの魔導書》をじゃらじゃらちゃんに見せて、このカードは特殊召喚できるよ!
しょーかん!レベル7《魔導法士 ジュノン》!」[攻2500]
手札:5枚→4枚

フィールドへ緑色に淡く光る魔導書が浮かび上がる。それを手に取り、ゆっくりと白い魔法着に身を包んだ、桃色髪の女性が現れる。

「わぁ!やっとデュエルで会えたねジュノン!」

魔法陣を描き、それを椅子にし腰かけたジュノンは魔導書を膝に置くと、穂香ちゃんを見てにっこりと微笑んだ。

「おぉ…こっち見た。すごい!
ジュノンも来たし、ほのかもっと頑張るよ!」

穂香ちゃんはデュエルディスクにセットされたカードを取り出し、発動した。

「セットしていた《ネクロの魔導書》を使うよ。えっと…墓地の魔法使い族モンスター1体を除外し、手札の魔導書魔法カード1枚を相手に見せて発動できる…から墓地の《魔導書士 バテル》を除外して、手札の《アルマの魔導書》を見せるよ。
見せて…墓地の魔法使い族だったよね…。
うん、2体目の《魔導法士 ジュノン》を特殊召喚して、このカードを…装備?装備するよ!」[攻2500]

テキストと読み比べながら、カードの発動が完成する。
ジュノンが舞い降りた紫色の魔導書を手に取り、ぱらぱらと捲りながら詠唱すると、フィールドへともう1体のジュノンが大きな白い帽子を揺らしながら現れる。

「あと…なんか除外したモンスターのレベルだけ、ジュノンのレベルが上がるらしいけど…まぁそこは関係ないね!」
《魔導法士 ジュノン》:☆7→☆9

「一気に2体もエースモンスターが…。
(攻撃力は足りてないけど、この手札とジュノンの効果があれば…!)」

絶体絶命な状況だったが、ようやく勝利の兆しが見えてくる。

「《アルマの魔導書》使って、除外されてる《ゲーテの魔導書》を手札に持ってきて…。
手札:4枚→4枚

《ルドラの魔導書》を使って、手札のもう1枚の《ネクロの魔導書》を墓地に送って2枚ドローして…。
手札:4枚→4枚

《ヒュグロの魔導書》を最初に召喚した《魔導法士 ジュノン》に使うよ!
ジュノンの攻撃力が1000アップ!」[攻3500]
手札:4枚→3枚

たんたんと魔導書を発動していき、最後にジュノンの元に降って来た赤い魔導書。
それを捲り詠唱するとジュノンの体を赤いオーラが包み込んだ。

「そして!ジュノンの効果を発動するよ!
1ターンに1度、自分の手札か墓地から、魔導書魔法カード1枚を除外し、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
っていう効果だから!墓地の《アルマの魔導書》を除外して、じゃらじゃらちゃんのフィールドの大きなイカさんを対象に破壊するよ!」

「破壊…」

ジュノンが魔導書を開き、立ち上がり魔法を詠唱する。
魔法陣が形成され、そこから白い魔法攻撃が放たれる。魔法がジオクラーケンにへと触れるとジオクラーケンが風船が破裂するようにはじけ飛び破壊される。

「2体の合計攻撃力は6500…。
勝つにはまだ少し足りなかったか…」

相手にダメージを与えて勝つという事は、相手の少女を傷つけ最悪殺してしまうことになる。
だが、デュエルに勝たなければ相手に勝つチャンスが与えられ、ライフ600しかない穂香ちゃんが死にかねない…。

「えっと、8200引く6500…8から6引いて……22…17!
何かないかな…」

穂香ちゃんは改めて自身の手札とフィールド…そして、墓地のカードを確認する。

「あ!勝った!」

「え?」

穂香ちゃんはデュエルディスクの墓地から3枚の魔導書カードを取り出した。

「ほのかも覚えてなかったんだけどね。
墓地から魔導書3枚を除外!
しょーかん!レベル6《魔導鬼士 ディアール》を墓地から特殊召喚だよ!」[攻2500]

地面の一部が真っ黒に染まるとそこから、刀身がオレンジ色に輝く剣を持った悪魔がフィールドにへと姿を見せた。

「あれ…穂香ちゃんこんな悪魔みたいなモンスター居たっけ?」

彼女のデッキを一通り見ていた時に見覚えのないモンスターがフィールドにへと召喚されていた。

「うん、見せた時にデュエルディスクに隠れて残ってたの。
怖いから《マジシャンズ・ソウルズ》呼ぶときには最初に墓地に送っとこうって決めてた」

「でも…これで」

フィールドには2体の《魔導法士 ジュノン》と《魔導鬼士 ディアール》が並んだ。
強化も含めてその合計攻撃力はフロア主の少女の残りライフを超えた。

「………」

「ほのか…じゃらじゃらちゃんにひどいことしたいとは思わないけど…。
ほのかが死んじゃって、お姉ちゃんが辛そうにするのは嫌だ!
バトルフェイズだよ!
《魔導鬼士 ディアール》でダイレクトアタック…!」[攻2500]

ディアールが不気味な笑い声を漏らすと、悪魔の翼を羽ばたかせ対面の少女の眼前まで迫りその手に持つ剣を振り下ろした。

「ぐ…!」

少女は攻撃に対して何かを発動してくるそぶりは見せず、咄嗟にデュエルディスクで悪魔の剣技を防ぐ。
しかし、その衝撃全てを防ぎきる事は出来なかったようで、デュエルディスクをズラされ左肩が大きく斬り裂かれてしまう。

ワルトナーLP:8200→5700


「う…」

自らが指示を出したモンスターの攻撃により目の前の少女が傷つき、血を流す。
穂香ちゃんも当然ショックがある様で、攻撃の瞬間には目をつむっていた。

「(穂香ちゃん…)」

相手を傷つける事の怖さは自分も理解している。たとえ、自分を殺そうとして来た相手だとしても、傷ついていく相手を見ているだけで胸が締め付けられる。
穂香ちゃんはデュエルディスクをつけた左手で自分の手を握って来る。

「お姉ちゃん…ほのか…負けて…。
お姉ちゃんに悲しい思いしてほしくない……」

「うん……。私も穂香ちゃんに死んで欲しくない…」

「だから…ほのかやるよ…」

自分の手を握る小さな手に力が入る。
相手が小さい子なのもあり、余計に心苦しい。死に直結する3000以上のダメージによるライフ0を回避したとしても、少女の受けるダメージは最低でも2500…。
成人した大人が3000で死ぬ可能性が大幅に上がるのだ。成熟しきっていない幼子にとって2500でさえも、死にかねないダメージだろう。

「(でも…せめて…。)
穂香ちゃん、攻撃するなら攻撃力が高いジュノンから先にしよう。
その方が…あの子が生き残れるかもしれない…」

穂香ちゃんが自分の表情を伺う。一度目を閉じた彼女は、ゆっくりと目を開け眼前の少女にへと攻撃宣言を行った。

「うん、分かった。
攻撃力がアップした《魔導法士 ジュノン》でダイレクトアタック…!」[攻3500]

赤いオーラを纏ったジュノンが魔導書を広げ、呪文を詠唱する。詠唱が終わり、握り込んだ右手を少女に向けて開くと同時に魔法陣から魔法が放たれる。
赤く色づいた魔法は左肩を抑える少女の体を包み込み、その体を痛みで蝕む。

「ぐ…あ…!」

ワルトナーLP:5700→2200


「これで…最後…。
2体目の《魔導法士 ジュノン》で、じゃらじゃらちゃんにダイレクトアタックだよ…!」[攻2500]

もう1体のジュノンが、手に白く発光するボールの様なものを作り上げ、それをそっと手から離す。それはゆっくりと少女の元まで届けられる。
体を巡る痛みに耐えた少女が、近づいてくる高音に気づき視線をフィールドにへと向ける。
その瞬間、少女の眼前にまで迫ったそれは眩く光り輝き破裂した。

キィィィン

破裂時に生じた高音と衝撃の後、少女の姿はその場にはなかった。
しばらくして、何かが地面にへと落ちるような音と、鎖がぶつかり合うじゃらじゃらとした音が響くと、その後には静寂が訪れるのみだった…。

ワルトナーLP:2200→0



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コングの施し
ほのかちゃん、とにかく勝利できてよかった!
これでデュエルノルマもクリア…!とよろこんでいいのでしょうか。
デュエルののちに姿を消した囚人姿の少女、フローレンス。鎖に縛られた彼女のデッキは文字通りの地縛デッキでしたね。口数も少なくあまり大きな情報も落としていない彼女は一体…?

しかしほのかちゃんのデュエル、微笑ましさもありながら、やはり幼い命がリアルダメージによって削られゆくのはなかなか来るものがありますな。普通のアニメや他の作品ならば新しいキャラのデュエルを手放しに楽しみにできるわけですが、そのダメージのおかげでもれなく苦しい姿とスリルもセット付き。ハラハラ感もありつつ、こちらの胸も痛くなるような描写には感服です。

これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます! (2023-12-08 12:07)
ランペル
コングの施しさん閲覧及びコメントありがとうございます!

なんとかノルマ達成までこぎつけた穂香。負ける事もなく勝ちまで持っていけたのには梨沙も驚きな結果となりました。対戦したデッキから見た目までまるで囚人の少女の正体とは…?
デュエルから微笑ましい部分も感じ取ってもらえたようで何よりでございます。危険なデュエルの中でも、リアルなソリッドビジョンでモンスターと一緒に戦うのはやはりテンションが上がってしまうものなのでしょう。穂香に関しては初めてのデュエルなのもあってなおさらでした。
そんなデュエルの全てに命の危険が隣合わせなのが本実験の醍醐味(悪辣。デュエリストが思いやりの心を持てば持つ程に傷つく仕様に自然となってしまいますね。

次回以降も刺さる人にはメンタルに刺さりそうな展開となっておりますので、ぜひお楽しみにです! (2023-12-09 23:13)

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15 Report#36「ノルマ達成目指して」 165 2 2023-11-10 -
15 Report#37「分断」 196 2 2023-11-15 -
29 Report#38「旅立ち」 236 0 2023-11-20 -
17 Report#39「幼き力」 191 2 2023-11-25 -
10 Report#40「囚われし者」 150 0 2023-11-30 -
16 Report#41「傍に居てくれるから」 213 2 2023-12-05 -
21 Report#42「どうして?」 227 1 2023-12-10 -
13 Report#43「拒絶」 142 0 2023-12-15 -
19 Report#44「不信」 182 2 2023-12-25 -
13 Report#45「夜更かし」 155 2 2024-01-05 -
10 Report#46「緊急回避」 147 0 2024-01-10 -
22 Report#47「狂気」 174 2 2024-01-20 -
12 Report#48「判断」 94 2 2024-01-30 -
25 Report#49「白化」 144 0 2024-02-10 -
23 Report#50「諦め切れない」 162 2 2024-02-20 -
16 Report#51「錯綜」 125 2 2024-03-01 -
17 Report#52「計画」 146 2 2024-03-05 -
19 Report#53「決意」 125 2 2024-03-10 -
14 Report#54「抜け道」 123 2 2024-03-15 -
17 Report#55「死の栄誉」 157 2 2024-03-25 -
23 Report#56「灼熱の断頭」 171 2 2024-03-30 -
21 Report#57「憧れの主人公」 129 0 2024-04-05 -
18 Report#58「記憶にいない娘」 101 2 2024-04-20 -
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