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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#30「潰えぬ希望」

Report#30「潰えぬ希望」 作:ランペル



梨沙-LP:2400
手札   :3枚
モンスター:なし
魔法&罠 :なし

ーVSー [ターン2]

有栖川-LP:8000
手札   :4枚
モンスター:《ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》[攻]
《ロード・オブ・ザ・レッド》[攻]
魔法&罠 :なし



眼前まで迫る《ロード・オブ・ザ・レッド》の攻撃。
体の痛みで床へと散らばった防御カードを発動しなければ、直接攻撃を喰らってしまう。
体の痛みを無視し、落ちたカードをなんとか拾い上げデュエルディスクへと叩きつける。

「っ…ぐぁぁあ!!!」
手札:3枚→2枚

デュエルディスクにカードが置かれたことで、戦士の目の前へとカボチャのお化けが突如現れ驚かす。急に目の前へモンスターが現れたことに驚いた《ロード・オブ・ザ・レッド》は引き下がり、アリスのフィールドへと戻る。

「くそがああああああああ!!!
手札からの防御カードか!?くそっ!くそっ!くそっぉ!!!」

アリスさんは頭を抱えて絶叫した後に、攻撃を止められたことに憤る。

「…うぅ…いっ!?」

何とか攻撃を防ぐことが出来た。しかし、地面へと倒れた体は痛みで起こす事が叶わない。

「お姉ちゃん…」

少しでも痛みから逃れようと体が縮こまり、動きが最小限になる。

「《ゴーストリック・ランタン》…の効果です…。
ぃ…攻撃を無効にして……特殊召喚…」[守0]

「くそ…殺せるはずだった…。くそくそくそくそくそ…。
だがモンスター効果だな。メイン2《三戦の号》発動。
あたしのターン中にお前がモンスター効果を使った事で、デッキから魔法カード《儀式の下準備》をセットできる。ただし、お前のフィールドにモンスターが居ることによって、代わりに手札へ加える」
手札:4枚→4枚

「(あれは…確か…)」

「そのまま発動《儀式の下準備》。デッキから儀式魔法1枚とそれにカード名の記された儀式1体を手札へ加える。《霊魂の降神》と《霊魂鳥神-彦孔雀》の2枚を手札に加える」
手札:4枚→5枚

デッキから2枚のカードが飛び出たのと同時に、《ロード・オブ・ザ・レッド》の右手に炎が宿る。

「チェーンして《ロード・オブ・ザ・レッド》の効果だ。自身以外の効果が発動した時フィールドのモンスター1体を破壊する。あたしは、お前のさっき特殊召喚したモンスターを破壊する」

右手に宿った炎をセットされたランタンにへと投げつける。セットカードは勢いよく燃え上り、破壊された。

「ターンエンドだ…。次こそ…次のターンこそ殺してやるよ…」

ターンエンドが宣言されたことで、アリスさんのフィールドの上空を水色のドレスが浮遊する。

「なんだ…?」

そのドレスがドラゴンたちの上をくるりと一周すると、フィールドからドラゴンが居なくなる。

「は!?」

「さっきリバースした人形の効果です…。全てを裏側に…して、裏側になった…モンスターは2体…。
デッキから…ぅ…レベル2の《ゴーストリックの猫娘》を裏側で特殊召喚…です…」[守900]

「さっき焼いたあいつか…!?くそ、ふざけやがって…。
そうやってそうやってあたしの事を…!ああああああああああ!!!?」

狂乱し大声をフロア中へ響かせる。
何とか火傷していない手のひらを地面へつけ、体を起こす。

「ぐ…(体中がひりひりする…。でも、死んではいない…)」



有栖川-LP:8000
手札:5枚


 [ターン3]


「私の…ターンです…。
っ…ドロー」
手札:2枚→3枚

デッキからカードを引く右腕がひりひりと痛む。他と比べて軽傷な右腕でさえ、痛みで震える。体の至る所から発せられる激痛は終わることがなく、頭がおかしくなりそうだ。

「(デュエルに集中…集中…。
いたくない…いたくない…)」

自分へ暗示をかけるように心の中で復唱しながら、ドローしたカードを確認する。

「《ゴーストリックの猫娘》を…反転、召喚」[攻400]

オレンジ色の着物とドレスが合わさったような服に身を包んだ猫耳の少女がフィールドへとぴょんと現れる。

「ゴーストリックが居るので、ゴーストリュクは表側で召喚できます…。
手札から《ゴーストリック・セイレーン》を…召喚」[攻800]
手札:3枚→2枚

猫娘の隣へ緑の髪を揺らすハーブを手にした人魚のモンスターがふわりと降り立った。

「召喚、リバース時の効果。デッキの上から、2枚を墓地に送り、その中にゴーストリックカードがあれ…ばデッキからゴーストリック魔法、罠1枚を手札に加えます」

セイレーンがハーブの音色を奏でるとデッキトップの《ゴーストリック・オア・トリート》と《魔サイの戦士》の2枚が飛び上がる。

「ゴーストリックカードがあったので、デッキから《ゴーストリック・ショット》を手札へ。さらに、《魔サイの戦士》が墓地へと送られたことで、デッキから悪魔族の《ゴーストリック・フロスト》を墓地に送ります」
手札:2枚→3枚

デッキから飛び出したカードを手札に加え、その後に再びデッキより飛び出した《ゴーストリック・フロスト》を墓地へと送る。

「やめろ…何もするな…あたしを殺す準備をするんじゃねぇぇええ!!!」

梨沙の一挙一動に怯え、体を震わせ、拒否感を声にして叫ぶ。

「……セイレーンは、1ターンに1度、自分で裏側守備表示になれます」

セイレーンがハーブを奏でるとフィールドからいなくなる。

「《ゴーストリック・ショット》発動。墓地の《ゴーストリックの人形》を特殊召喚して、セットされたセイレーンを攻撃表示に変更します」[守1200][攻800]
手札:3枚→2枚

赤と青、紫の3色の薔薇のブーケを持った人形がフィールドへ現れるとセイレーンが再びハーブの音色と共にフィールドへ姿を現わす。

「セイレーンの効果に…発動制限はありません。リバース時に再び効果を発動…。
デッキトップ2枚は《ゴーストリックの妖精》と《ゴーストリック・キョンシー》の2枚。よって、デッキから《ゴーストリック・リフォーム》を手札にへと加えます」
手札:2枚→3枚

痛みを何とか抑え込み、デッキから次々とカードを手札にへと加えていく。

「(いたい…いたいだけ…苦しくても…泣いても…。
アリスさんは助けられない…私を助けてくれる人は今いない…。
集中…集中するんだ…。こんな火傷の痛みなんか忘れるぐらいに…デュエルへ…)」

熱傷の痛みは、そう簡単に意識から外れるものではない。デュエルする為に動かす一つ一つの動きに痛みが走る。意識を無理やりにでもデュエルへと向ける。
痛みでデュエルにミスが起こってはいけないのだ。
それを見るアリスさんは不愉快そうに歯ぎしりをしている。

「何が目的だ…魔法、罠ばかり集めて何を…」

「憶えてませんか?…私の、ゴーストリック達を!
レベル2の猫娘と人形で…オーバーレイネットワークを構築。
エクシーズ召喚。

来て、ランク2《ゴーストリック・サキュバス》」[守1200]

赤い髪を揺らし、眠そうに目をこすりながらフィールドへ歩いてきたサキュバスは地面へコウモリのマークの入った枕を放るとそこへ顔をうずめて眠り始める。

「エクシーズ!?」

「そして、サキュバスに重ねてオーバーレイネットワークを再構築…です。
エクシーズチェンジ。

来て、ランク4《ゴーストリックの駄天使》」[守2500]ORU3

眠い目をこすりながら、サキュバスが目の前へと手をかざす。すると、そこへ桃色のふわふわとした空間が現れる。そこから、うさぎのストラップを付けた小さなシルクハットを被った駄天使がチラリとフィールドを覗く。サキュバスが駄天使へ手を伸ばすと、駄天使はその手を引っ張り、サキュバスを桃色の空間の中へと引き込み、入れ替わる様にフィールドへと降り立つ。

「エクシーズ召喚成功時に…フィールド魔法《ゼアル・フィールド》の効果を発動です。EXデッキより《ゴーストリック・デュラハン》を駄天使のオーバーレイユニットに追加します」ORU4

駄天使の目の前へと小さな光の玉が降りてくる。駄天使はそれを優しくつかみ、手の中でしゃかしゃか振り始める。振り終わり手を広げると、光の玉は継ぎ接ぎのハートとなり、駄天使の周囲を浮遊し始める。

「駄天使の効果です。オーバーレイユニットを1つ取り除いてデッキから《ゴーストリック・リフォーム》を手札に加え、さらに取り除いた《ゴーストリック・デュラハン》の効果で墓地から《ゴーストリック・ショット》を手札へ加えます」ORU3
手札:3枚→5枚

サーチとサルベージ。2枚のゴーストリックカードを手札にへと加えて、手札からこのターンドローしたカードを掴む。

「魔法カード《手札抹殺》。発動します…。
互いに…、手札を全て捨てて捨てた数だけカードをドローします」
手札:5枚→4枚

「抹殺…!?やっぱりだ!あたしを抹殺しに来たことを暗示してる訳だ!
そのつもりならはっきり言えよ!?あたしの手札を捨てさせて、かく乱するつもりだろうが、そうはいかない…!絶対引いたカードで殺す…殺してやるんだ…」
手札:5枚→5枚

「私は…手札4枚捨てて…4枚ドローします…」
手札:4枚→4枚

互いに手札のカードを全てを墓地にへと送り、同数のカードをドローする。
ドローしたカードを確認し、その内の1枚を駄天使へと投げ渡す。

「駄天使の効果です。手札のゴーストリックカード《ゴーストリック・スケルトン》を自身のオーバーレイユニットに補充します。
コレクト・パッチワーク」ORU4
手札:4枚→3枚

受け取ったカードを指先で高速回転させると、いつの間にかカードは継ぎ接ぎのハートへと早変わりした。

「墓地の《ゴーストリック・リフォーム》を除外して…効果発動。
ゴーストリックエクシーズに別のゴーストリックモンスターを重ねてエクシーズ召喚します。
駄天使を素材にオーバーレイネットワークを再構築…。
ゴーストリックチェンジ。

来て、ランク3《ゴーストリック・アルカード》」[攻1800]ORU5

水色の体毛に覆われた丸っこいモンスターが兎の模様が描かれた水色の布を駄天使に向けて広げながら放る。布ですっぽりと駄天使が覆われ、しばらくすると、掛けられた布の下の地面が真っ黒に染まりそこからコウモリが溢れかけられた布を持っていく。
布がどかされると、駄天使はいなくなっており、体をマントで隠したアルカードがフィールドへと佇んでいる。

「アルカードに重ねてさらにエクシーズチェンジ。

来て、ランク4《ゴーストリックの駄天使》」[守2500]ORU6

大きな継ぎ接ぎのハートとそれに乗った駄天使がフィールドへと再び現れた。

「駄天使の効果です。オーバーレイユニットを取り除いて、デッキから《ゴーストリック・ナイト》を手札へ加えます。
トリック・プレゼント」ORU5
手札:3枚→4枚

周囲を漂う小さな継ぎ接ぎハートを、駄天使はシルクハットで捕まえる。シルクハットを揺らし、中に手を入れ1枚のカードを取り出すと梨沙へと手渡す。

「ありがとう…さらに墓地へ行った《ゴーストリック・アルカード》の効果で墓地の《ゴーストリック・ランタン》を手札にへと加えます。
トリック・リバイバル」
手札:4枚→5枚

梨沙の手元に影が集約していき、1枚のカードを形成したかと思うと《ゴーストリック・ランタン》のカードとなった。

「墓地の《ゴーストリック・ショット》…除外して、墓地の《ゴーストリック・デュラハン》を駄天使のオーバーレイユニットに追加…します」ORU6

「なんだ…何をしている…素材ばかり増やして…何が目的だぁ!!?」

梨沙の行動を理解できない魔女は、頭を掻きむしりながら叫び散らす。

「すぐ…分かります…。
セイレーンを素材にリンクマーカーをセット。
リンク召喚。

LINK1《ゴーストリック・フェスティバル》」[攻0]

地面へと浮かび上がった8方向のリンクマーカーの下向きのマーカーへとセイレーンが吸い込まれる。そこからはたくさんの白いお化けが現れ、フロア中を飛び交い始める。飛び交うお化け達は手に持つカボチャや様々な装飾でフロアを飾り付けていく。

「なんだそれは…モンスターなのか…?訳が分からない…。
くそ…そうやってあたしの理解できない事ばかりして、あたしを惑わしてるんだな!?騙されるか、お前が何をしてきても必ずお前は殺す。
殺さなきゃいけないんだよぉ!!!」

耳をつんざく絶叫がフロア内にこだまする。彼女の憑りつかれた恐怖心は相当なものの様で、被害妄想が止むことがない。

「大丈夫…です…。殺したりなんか…しません…。恩人を殺すなんて…出来る訳ないじゃないですか…」

体に与え続けられる耐えがたい火傷の痛み。それを何とか抑え込み、優しく静かに…恐怖に支配された彼女へ微笑みかける。

「なんだ…何がおかしい…なんで笑ってる…。そんなに体を焼け焦がして…痛くないのか?痛く無い訳ない…。気持ち悪い…怖い…。
あぁあああ!!?もうあたしを殺す算段が付いてるのか!?あり得ない!人を殺すのに何でそんな笑顔になれるんだぁ!?この狂人め、殺してやる…殺さないと…はやく…はやくはやくはやく…!!!」

焦燥感に駆られる彼女は、当て所なくフロアの至る所へ視線を動かし、歯をカチカチと鳴らす。

「私は…カードを3枚セットして、ターンエンドです。
アリスさんの…ターン、ですよ」
手札:5枚→2枚



梨沙-LP:2400
手札:2枚


 [ターン4]


「取り込まれる…飲み込まれる…急がないと…。
ドローぉ!!」
手札:5枚→6枚

「このスタンバイフェイズに…永続罠《ゴーストリック・ナイト》を発動します」

「何を…!?」

「このカードと、フィールドにゴーストリックモンスターがいる限り…アリスさんはモンスターの反転召喚が出来なくなります。そして…このカードが破壊されて墓地へ行けば、このターンアリスさんは攻撃宣言が出来なくなります…」

「ちっ…そうやって縛り付けようって!?舐めるな!
反転召喚できなくてもお前を殺す手段はいくらでもある!
メイン1開始時《強欲で金満な壺》発動。EXから6枚除外し2枚ドローだ!」
手札:6枚→7枚

「(またさっきのドローカード…手札が増えてる…)」

「お前がさっき発動した《手札抹殺》のお陰で、手札が潤った。これなら殺せる…殺せるよな?
《儀式の準備》発動。デッキより《魔神儀-カリスライム》、墓地から《機械天使の儀式》を手札へと加える。
手札:7枚→8枚

《魔神儀-キャンドール》の効果、自身と回収した《機械天使の儀式》をお前に見せる事で、このカードとデッキの《魔神儀-ブックストーン》を特殊召喚する」[守0][守0]
手札:8枚→7枚

フィールドにろうそくとそれに灯る炎の両方に顔のついたモンスターが現れ、その隣へブックストーンが閉じられた状態で落ちてくる。

「ブックストーンがデッキから特殊召喚に成功したことで、墓地の儀式魔法《魔神儀の祝誕》を手札に回収できる」
手札:7枚→8枚

ブックストーンは自らの体をぺらぺらとめくっていき、水色の微笑む石が掛けられたページで止まると、間にしおりのように挟まれていたカードを手に取り、アリスさんへと渡す。

「回収した《魔神儀の祝誕》発動。レベル5ブックストーンに手札のレベル3ペンシルベルを生贄に降臨しろ。
儀式召喚。

来な、レベル8《輝神鳥ヴェーヌ》」[攻2800]

「この、モンスターは…!」

フィールドへと神々しい光と共に、黄金に輝かせた翼を広げた神鳥が姿を現わす。
彼女の使うエースモンスターがフィールドへと現れたのだ。

「墓地の《魔神儀の祝誕》効果、手札から《魔神儀-タリスマンドラ》を墓地へ送り、デッキからタリスマンドラを特殊召喚後、このカードを手札に回収」
手札:5枚→5枚

先程現れたマンドラゴラが耳を塞ぎながらフィールドへ走り込んできた。

「リクルート時効果発動。デッキから《イビリチュア・ガストクラーケ》を手札へ」
手札:5枚→6枚

胸に下げたお守りが奇声を発する。それに反応し、アリスさんのデッキから1枚のカードが飛び出す。

「《機械天使の儀式》発動。裏側のレベル8《ロード・オブ・ザ・レッド》を生贄に降臨しろ。
儀式召喚。

来な、《サイバー・エンジェル-荼吉尼-》」[攻2700]
手札:6枚→4枚

円陣から錫杖と2本の剣を持った4つ腕の女性のモンスターがフィールドへと現れる。このモンスターもまた、彼女との最初のデュエルで使われていたモンスターだった。

「儀式召喚時、ヴェーヌの効果を発動、墓地の《魔神儀-カリスライム》を手札に加える。さらに、荼吉尼の効果によりお前は自分のモンスター1体を選んで墓地へと送らなければならない」

「(今回は駄天使以外にモンスターがいる…)
私は《ゴーストリック・フェスティバル》を墓地へと送ります…」

フロア内を彩った装飾やお化け達が消える。

「ヴェーヌの処理でカリスライムを手札へ加える」
手札:4枚→5枚

地面から光り輝く1枚のカードが現れ、それはアリスさんの手札へと収まった。

「手札の《魔神儀-カリスライム》をお前に見せて効果発動。手札から《イビリチュア・ガストクラーケ》を捨て、デッキから《魔神儀-ペンシルベル》を特殊召喚」[守0]
手札:5枚→4枚

特殊召喚されたペンシルベルは、地面へ彦孔雀を描く。

「ペンシルベル効果で、墓地から《霊魂鳥神-彦孔雀》を手札に加える」
手札:4枚→5枚

地面に描かれた彦孔雀が実体化し、手札へと戻っていく。
そして、手札へと加えた彦孔雀のカードをそのままこちらへと公開する。

「《輝神鳥ヴェーヌ》の効果だ。手札のレベル8《霊魂鳥神-彦孔雀》をお前に見せ、フィールドの《魔神儀-ペンシルベル》のレベルを見せたモンスターと同じに出来る」
《魔神儀-ペンシルベル》:☆3→☆8

「1体で、儀式召喚が出来るってことですね…」

「さぁ発動だ。儀式魔法《魔神儀の祝誕》を発動。
ペンシルベルを生贄に彦孔雀を儀式召喚だ…」
手札:5枚→4枚

「速攻魔法《エクシーズ・インポート》を駄天使とペンシルベルを対象に発動です…!」

「なに!?」

「駄天使より…攻撃力の低いペンシルベルを、駄天使のオーバーレイユニットとして吸収します。これで、ペンシルベルを素材に儀式召喚は出来ません…」ORU7

駄天使が被っているシルクハットをペンシルベルに向けて投げる。投げられたシルクハットは、ブーメランのようにペンシルベルを攫いながら駄天使の手元へと戻って来る。駄天使に捕まったペンシルベルは指先でくるくると回され始める。
ペンシルベルが目を回している内に、ペンシルベルの周りを光が包みこみ始め、気づくとペンシルベルは継ぎ接ぎのハートになっていた。

「これで儀式を防いだつもりか!?
防げやしない!お前は死ぬんだここで!!
ペンシルベルの代わりに手札のレベル7《魔神儀-カリスライム》2体を生贄に降臨しろ。
儀式召喚。

来な、《霊魂鳥神-彦孔雀》」[攻3000]
手札:4枚→1枚

円陣から巨大な鳥が羽ばたき上空へと消える。かと思えば、上空から大量に散らばった青い羽と共に、着物を着た彦星が舞い降りた。

「儀式召喚成功時に、相手モンスター3体までを選んで手札へと戻す!」

「なっ…バウンス効果…!?」

「随分と一生懸命エクシーズ素材を貯めてたようだが、フィールドからいなくなっちまえば貯めた物も意味がない!あたしを殺すために営々と集めてたんだろ!?忌まわしい…綿密にあたしを殺すための準備をしてたって訳だ!今壊してやる。そして、殺してやる…!
対象を取らないバウンス効果だ!どうやって防ぐんだよ!?なぁぁああああ!!!」

彦孔雀が手に持つ刀を鞘から抜刀し、虚空を一閃する。その瞬間、突風が吹き荒れ、《ゴーストリックの駄天使》がフィールドから飛ばされてしまう。

「ぐっ…墓地へ送られた《ゴーストリック・デュラハン》の効果で、墓地から《ゴーストリック・フロスト》を手札に加えます…」
手札:2枚→3枚

「これでお前の計画していた事は全て頓挫した!ねちねちと人を殺そうとするお前みたいな狂人は必ずここで殺しておかないと…そうだろ!?そうなんだよ!殺さなきゃ、また殺しに来られるんだ…殺す殺す殺す………」

心の底から疎ましく思っているその殺意のこもった眼で女性は梨沙を睨みつける。ガリガリと頭皮や頬を掻き続けながら、梨沙の死を叫び続けている。

「何度だって…言いますよ。
私は…アリスさんを殺したりなんかしない…。そして、殺されるつもりもありません…。
アリスさんを、その苦しみから助けたいんです…!」

震える右手を地面へと掲げる。地面から青白い鬼火が現れ、梨沙の右手へ触れると《ゴーストリック・フロスト》のカードとなった。

「気持ち悪い…気持ち悪い…。そんなにまでなって、何故笑顔が出てくる?おかしいのか?おかしいんだよ!?殺したりしない?殺されるつもりもない?
助けるだぁ!!?ふざけるなよ!?そうやってそうやって…最後の最後まであたしを騙すんだ!?あたしの何が分かる!?何も知らない癖に、分かったような口を聞く…どいつもこいつもそうだ。全て見透かしたかのように関わって来る癖に結局あたしを利用する事しか考えていない。ふざけるんじゃない!!!
なんでそんなことするんだ…。頼むよ…頼むから怯えてくれ…。お前は死ぬんだぞ?素材たくさん集めてたじゃないか…なんでまだ負けるムードじゃないんだよ…狙ってたことが失敗したはずだろ!?死ぬのに怯えないってことは、何か企んでるって事じゃないか…。何笑ってんだよ…いい加減死 ねよ…」

陰鬱とした救いの声。しかし、今の彼女の救いとなるのは自分達が死ぬことでしか果たされない。そんな歪な救いの声。誰も彼もが信じられなくなっている彼女に、救いの手を差し伸べられるのは…彼女に助けてもらった自分しかいないんだと…。

「フィールドからゴーストリックが居なくなったことで、あたしは反転召喚が行える。
反転召喚、《ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン》!!!」[攻4000]

フィールドへ再び、青白く光る巨大なドラゴンが咆哮と共に現れた。

「負けません…。あなたに助けてもらった恩を、今…ここで返して見せますよ…」

「そんなにあたしを助けたいって本気で思ってるんなら、今ここで死んでくれよ!!!
バトルだぁああ!《輝神鳥ヴェーヌ》でダイレクトアタックする!死 ねぇぇ!」

「直接攻撃宣言時に…手札の《ゴーストリック・フロスト》の効果です…」
手札:3枚→2枚

ヴェーヌが翼を広げ、黄金の風を吹かせる。しかし、ヴェーヌの頭上から巨大な雪玉が現れ、ヴェーヌを覆い尽くしてしまう。

「ぐっ…!なんでだよ…!」

「攻撃モンスターを裏側守備にして、このカードを裏側守備表示で特殊召喚です…」[守100]

「だが、守備表示ならカオス・MAXがいるんだよ…!」

「効果処理後、罠発動…《ゴーストリック・パニック》…!フロストを対象に表側守備にします。そして、ゴーストリックだった場合、相手モンスターを選んで裏側守備表示に出来ます」

「カオス・MAXが…!」

「いいえ、私が裏側にするのは《サイバー・エンジェル-荼吉尼-》です」

「なに…!?」

フロストが地面からくるんと回転しながら地面へと着地する。それと同時に、荼吉尼が後ろへとひっくり返ってフィールドから姿を消す。

「ならカオス・MAXで殺せる…!カオス・MAXでフロストを攻撃だ!!!」

翼を広げたカオス・MAXが青白く発光を始める。

「ゴーストリックが、攻撃される時に…手札の《ゴーストリック・ランタン》の効果です。攻撃を無効にして、このカードを裏側で特殊召喚…します…」[守0]
手札:2枚→1枚

ランタンがカオス・MAXの目の前に突如現れて脅かすと、カオス・MAXはエネルギーを溜めるのを止めた。

「あぁぁぁぁああああああああああああ!!!
何枚あるんだよぉぉおおおおおおおおお!!!!!」

攻撃を防がれたことで、地面へと顔を向け怒号を放つ。

「なんで耐える!?なんで生きる!?なんで死んでくれないの!?
あたしを助けたいなら死んでくれって言っただろ!!!結局、あたしの意思をガン無視するんだろ!お願いなんかしない。お前はもう築き上げた勝つ術を失ってるはずだ…。あたしが攻め続ければどっちにしろお前は死ぬんだ。大丈夫…大丈夫…殺せるから…ちゃんと…殺せるから……」

悲痛の混ざった罵詈雑言とうわ言の様に呟かれる殺意。

「荼吉尼が裏側なので、儀式モンスターに貫通効果は付与されません…」

「くそっくそっ…なんで知ってる…なんでだよ…」

「アリスさんが使ってたカードで…覚えてたものは、ここに来る前に確認しておきました。儀式モンスター全てに貫通効果を与える効果…。それを使われると私は…ここで負けてましたからね…」

「どこで知ったんだよ…なんで知ってんだよ…おかしいだろ何もかも…!訳の分かんない事ばっかりぃぃぃ……!!!」

右手で髪の毛を鷲掴みにすると、その手を思いきり引き抜く。

「あぁあああああああああああああ!!!!!」

「アリスさん……」

絶叫と錯乱、自傷に走り続ける彼女の姿はあまりに痛々しかった…。

「彦孔雀でさっきの雪だるまを攻撃しておく…」

彦孔雀が刀をセットされたフロストに向けて振るう。遠くにいたにも関わらず、セットされたフロストが真っ二つになり破壊された。

「《ハーピィの羽箒》発動。お前の魔法、罠全部破壊。攻撃終わったんならもうその罠の攻撃制限も意味ない…」
手札:1枚→0枚

《ゼアル・フィールド》と《ゴーストリック・ナイト》が破壊される。フィールド魔法がなくなったことで、明るく照らされていたフロア内は再び青い照明で照らされるのみとなった。

「希望潰えてるだろ!?なぁ!!!
素材貯めてこんでたモンスターは消えた、手札も1枚、ドローしても2枚だ。リバース効果メインのそいつらが、手札2枚でどうやってあたしに勝つんだよ!?殺さないでくれよ…頼むから死んでくれ…。死にたくない…殺されたくないから…なぁああああああ!!!
お先真っ暗で絶望した顔を見せて安心させてよ…!なんで、なんでなんでなんで…。
なんでまだ笑顔が見せられるんだよぉ!!?」

青い照明の元、あまりよく見えない梨沙の口元は確かに笑っていた。

「あはは…いえ…もしアリスさんと和解出来たら、また楽しく喋ったりしたいなって…」

「は、はぁぁ…?何を言ってる…」

予想していない返答に困惑する魔女。
それに対して、梨沙はほんの少し頬を膨らませながら想いを打ち明ける。

「だって!私…こんなに火傷だらけで体中痛くて!恩人から殺す殺すって連呼されて!
少しくらい…いろいろとうまくいった時の事想像したって…いいじゃない…ですか…!」

「し、知らない…悠長に何を考えてるんだお前!?
そんな余計な事考えるぐらい余裕があるって事か!?
あたしを殺す算段が崩れてない!?バカな…どうやって、どうやってだよ。やめろって言ってるだろ!!」

「勝たないとダメですから…それの為の…モチベーションアップです…!」

「モチベ…い、イカれてる…なんだお前…本当に…意味が分からない…」

理解の出来ない言動にアリスは自然と後退る。

「私の中で…アリスさんを殺すとか…。
アリスさんに殺されるっていう選択肢が…そもそも存在しないってことです…!」

「きしょくわるい…なん、なんなん、なんでそうなる!?
も、もういい…頭おかしい奴につきあってられるか…。
エンドフェイズに特殊召喚した彦孔雀は手札に戻って《霊魂鳥トークン》2体を守備表示で特殊召喚する…」[守1500][守1500]
手札:0枚→1枚

刀を鞘に納めると青い羽を舞わせながら彦孔雀がフィールドから消える。そして、フィールドへ鳥の羽を模した文様の描かれた魂が2体残された。

「(アリスさんの言うように…駄天使の特殊勝利を再び狙うのは少し厳しい…。まだ狙えなくもないけど、アリスさんの手札に対象を取らないバウンス効果持ちの彦孔雀がいる限りまたエクシーズ素材を貯めてもすぐ除去されるだけ…。でも…)
私は…まだアリスさんを傷つけずに勝つ…その希望が残ってますから…!」

彼女との和解。それを目指し、己を鼓舞しデッキトップからカードを引き抜く。

「私のターン…ドロー!」

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コングの施し
希望は潰えない…。
少しずつ、前の彼女が使っていた光の儀式モンスターが垣間見えるようになりましたね。梨沙さんもアリスさんを怯えさせたり刺激させないように立ち回っている模様。
いやしかし、カオスMAXの一撃を考えるとミスせずに不殺に徹してるのがすごい…。自分を捨てず、励まして戦い続ける面でも彼女の成長がうかがえます。もうおじいさんの時のような失敗はできませんからね…

EXWINはできるのか、はたまた少ないダメージでケリをつけるか、今後の展開が楽しみです! (2023-10-12 21:58)
ランペル
コングの施しさん閲覧及びコメントありがとうございます!
デッキにはかつての彼女の面影が見え隠れする感じに。自らも体験したからこそ、少しでも怯える要素を排除しながらのデュエルになります。
おじいさんとのデュエルの結果が、梨沙のここでのデュエルの在り方を決めたと言っても過言ではないですねぇ。体が受けた痛みに耐える為にも今はデュエルへとのめり込み、そしてアリスを助ける事だけを考えます…。

いったいどうやってアリスに勝つのか…次回以降も楽しみにしていただけますと幸いです!(返信が荒らし対策の時に消えちゃった?みたいなので再び返信させていただきました) (2023-10-15 22:26)

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