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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#34「ボス戦」

Report#34「ボス戦」 作:ランペル

ピー
「先行は山辺様、後攻は藤永様になります。」


 [ターン1]


デュエルが始まると互いにデッキから5枚のカードを手札に引き込む。
藤永は引いたカードを次々と空中へと配置する。規則的に配置されたカードは淡い紫色のオーラを纏っており、空中から落ちる気配がない。

「なんだそりゃ!面白れぇ!」

「気にすることはないですよ咎人、山辺 俊勝。
俺たちは神から試練を与えられている…さぁ、お前のターンです!
意図せず重ねた罪を俺の前で吐きだしなさい!お前の苦しむ心をここで救って見せようじゃありませんか!」

「何言ってるか分かんねぇが、そのよく分かんない感じ…まさしくボス戦だな!血がたぎる…。行くぜ、俺の先行!
闇属性《深淵の獣バルドレイク》を墓地へ送り《混沌領域》発動!」
手札:5枚→3枚

手札の紫色のオーラに包まれたカードを宙へと放ると、そのカードは黄色いオーラに包まれ再び山辺の手札へと収まる。

「デッキからレベル4から8の通常召喚できない光属性…レベル4の《輝白竜 ワイバースター》を手札にへと加えさせてもらう!
手札:3枚→4枚

そのまま墓地から闇属性バルドレイクを除外し、《輝白竜 ワイバースター》を特殊召喚だ!」[守1800]
手札:4枚→3枚

青い体に白の装甲を備えたドラゴンが胸元から光を発しながらフィールドへと羽ばたいた。

「ワイバースターをリンクマーカーにセットぉ!
リンク召喚!

導け、LINK1《ストライカー・ドラゴン》!」[攻1000]

空中へと現れた紺色の正方形。八方向に向けられたマーカーの内、左向きのマーカーへとワイバースターが吸い込まれ、ゲートが発光する。
小さな爆発音に合わせて青い装甲に覆われたドラゴンがゲートを潜り、フィールドへと飛び込んで来る。

「リンク召喚に成功したストライカー、墓地へと送られたワイバースターの効果それぞれを発動!
デッキから《暗黒竜 コラプサーペント》《リボルブート・セクター》の2枚を手札へ加える!」
手札:3枚→5枚

デッキから飛び出た2枚のカードを手札にへと加え、その内の1枚を相手へと向ける。

「墓地の光属性ワイバースターを除外し、《暗黒竜 コラプサーペント》を特殊召喚だぁ!」[守1700]
手札:5枚→4枚

オレンジの体を覆う黒い鱗。胸元の開かれた箇所からブラック・ホールを思わせる真っ黒い球体が見えたドラゴンが体をうならせながらフィールドへ現れる。

「どんどん行くぜ!
《ストライカー・ドラゴン》、《暗黒竜 コラプサーペント》の2体をリンクマーカーにセット!
リンク召喚!

導け、LINK2《ドラグニティナイト-ロムルス》」[攻1200]

風と共にまるで槍の様に尖った頭部を持った白銀のドラゴンがフィールドへと舞い込んでくる。

「ロムルスのリンク召喚成功時の効果に加えて、墓地へと送られたコラプサーペントの効果が発動される。
デッキより《輝白竜 ワイバースター》と《竜の渓谷》を手札へ加える!」
手札:4枚→6枚

淡々と処理をこなす山辺。自動でデッキから飛び出すカードを手に取る彼は実に心地よさそうにデュエルを運んでいる。

「これだよなぁ…このサーチの時にデッキからカードが飛び出す感じ。
ソリッドビジョンもいい…モンスターと一緒に戦ってるって感じがすごいんだよ!」

興奮気味に語る山辺はデュエルディスクを操作すると、デュエルディスクの一部が稼働し追加でカードを置くゾーンが解放された。

「フィールド魔法《竜の渓谷》発動だ!」
手札:6枚→5枚

彼の背後に渓谷が出現し、遠方をドラゴンが飛行しているのが見える。

「効果発動。手札の《輪廻竜サンサーラ》をコストにデッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へと送る。俺はデッキから《アブソルーター・ドラゴン》を墓地へ送らせてもらう!」
手札:5枚→4枚

巨漢の男が楽しそうにデュエルするのを対面の男は静かに見守っている。

「墓地へ送られたアブソルーターの効果!デッキより《ヴァレット・トレーサー》を手札にへと加えそのまま召喚だ!」[攻1600]
手札:4枚→4枚

体を赤色の装甲で覆ったドラゴンが緑の光で作られた翼を広げフィールドへ顕現する。その頭部はまるで弾丸のような形状をしている。

「《ヴァレット・トレーサー》は、自分の表側カード1枚を破壊する事でデッキからヴァレット1体を呼び出す事が出来る。
俺は《竜の渓谷》を対象に破壊し、デッキから《ヴァレット・リチャージャー》を特殊召喚だ」[守2100]

トレーサーがフィールドへ表示されているカードの元へ弾丸の様に高速で突進する。移動する際に赤い軌跡を残しながら、《竜の渓谷》のカードが突き破られた。
トレーサーの残した軌跡をたどる様にフィールドへは、弾丸を模した新たなドラゴンが姿を見せる。

「後続が途絶えませんね。
さぁ、もっとです。己の全てを曝け出すのです!」

「いいぜ!俺の全身全霊をしかとその目に焼き付けろ!
《ヴァレット・トレーサー》と《ヴァレット・リチャージャー》それぞれでリンクマーカーをセット!
連続リンク召喚!

導け、ロムルスの右下へ2体目の《ストライカー・ドラゴン》!
左下へ《守護竜ピスティ》!」[攻1000][攻1000]

胸元が赤く輝くドラゴンと《ストライカー・ドラゴン》が、それぞれ地面に現れた正方形のゲートからフィールドへと浮かび上がってくる。

「ピスティは2体以上のリンクモンスターのリンク先へドラゴン族を特殊召喚する事が出来る。左向きのマーカーを持つ《ストライカー・ドラゴン》と、右向きのマーカーを持つ《守護竜ピスティ》の間のモンスターゾーンは空いている!
俺は除外されている《深淵の獣バルドレイク》をピスティのリンク先へと特殊召喚する!」[守2000]

ピスティが鳴き声を上げると、《ストライカー・ドラゴン》が共鳴する。2体のモンスターの間の空間が赤く輝き始めると、体を鎖と拘束具で覆われた漆黒の翼のドラゴンが姿を見せる。

「墓地から闇属性コラプサーペントを除外し、《深淵の獣マグナムート》を特殊召喚する。その効果により、俺はエンドフェイズにドラゴンを墓地かデッキから手札に加える事が出来る!」[攻2500]
手札:4枚→3枚

悪魔の様な翼を生やした赤いドラゴンが、石柱で封じられた両腕を振るい咆哮をあげる。

「《守護竜ピスティ》、《深淵の獣マグナムート》の2体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚!

導け、LINK2《デリンジャラス・ドラゴン》」[攻1200]

両腕が小型の2連銃口になっているドラゴンが発砲しながらフィールドへ降り立つ。

「墓地の《混沌領域》を除外し、除外されている《輝白竜 ワイバースター》をデッキの一番下へ戻す事で1枚ドローさせてもらう。
んじゃ、《ストライカー・ドラゴン》の効果の発動だ。
自分フィールドの《デリンジャラス・ドラゴン》と墓地の《ヴァレット・リチャージャー》を対象に効果発動だ!」
手札:3枚→4枚

《ストライカー・ドラゴン》が咆哮をあげると、《デリンジャラス・ドラゴン》の胸部の回転弾倉が回転しながら爆発する。それと同時にドラゴンの体から1枚のカードが弾丸の様に山辺の手元へと飛んでくる。

「対象のフィールドのモンスターを破壊し、対象の墓地のモンスターを手札へと加えさせてもらう。そして、リチャージャーの効果が連動して発動!
手札からこのカードを墓地へ送り、EXデッキから特殊召喚されたデリンジャラスが事で、破壊されたデリンジャラスとは別のドラゴン族、《ヴァレット・トレーサー》を墓地から特殊召喚させてもらうぜ!」[攻1600]
手札:4枚→4枚

フィールドの爆発の煙が晴れると、《ヴァレット・トレーサー》の姿があった。

「なるほど、破壊と回収が同時処理故の効果な訳ですか。
実にカードを研究しておられる。その謙虚で殊勝な取り組みは善行以外の何物でもありません!」

「ぐはは!俺は積み上げてきたんだ。デュエルに全てをな!
フィールドへヴァレットモンスターが特殊召喚されたことで、墓地の《デリンジャラス・ドラゴン》は特殊召喚する事が出来る!蘇れ!」[攻1600]

山辺は、はち切れんばかりの筋肉を誇示した右手を広げると、シリンダーを回転させながら《デリンジャラス・ドラゴン》がフィールドへと着地する。

「さて…そろそろ長い展開にも飽きただろ?俺の到達点をお前に教えてやるぜ!」

フィールドの3体のリンクモンスターが光輝き始める。

「俺はリンク1《ストライカー・ドラゴン》、リンク2の《デリンジャラス・ドラゴン》と《ドラグニティナイト-ロムルス》の3体をリンクマーカーへとセットぉ!」

空中へと現れた正方形のリンクゲート。8方向に向くマーカーの5つへモンスターが吸い込まれ赤く光り出す。

「リンク5のモンスターですか…!」

「閉ざされし世界を葬る勝利への豪風!
リンクしょうかぁぁんん!!!

導けぇ!LINK5《ヴァレルエンド・ドラゴン》!」[攻3500]

壮絶な爆発と爆撃音と共に、光輝く黄色と緑の翼を持ったドラゴンがゲートから解き放たれる。胸元へ回転式の弾倉を備えた赤を基調とした三つ首のドラゴンが勇ましくフィールドへと降り立つ。重厚なドラゴンは藤永を見遣ると、巨大な咆哮をあげた。

「ほほぉ、これが…これが山辺 俊勝の積み上げし力。
なんという威圧感でしょう…。素晴らしき力を見せて頂きました。
お前がここで生きた証、その存在は俺が語り継ぎましょう。勇敢な咎人が積み上げて来たものは、大変すばらしきものだったとな!」

藤永は巨大なドラゴンを前にしても、いつもと変わらず多弁に思いのままに言葉を並べる。

「ぐははは!そうだろう!ヴァレルエンドは俺の到達点にして、デュエルを終わらせる俺のエース!
戦闘、効果で破壊されず、モンスター効果の対象にもならないこの強固な耐性!俺を体現するかの如く、圧倒的力で相手をねじ伏せるのさ!
だが、まだだ!まだ終わらねぇ!
フィールド魔法、《リボルブート・セクター》発動!その効果により手札から2体までヴァレットモンスターを特殊召喚できる。俺は手札から《マグナヴァレット・ドラゴン》を特殊召喚!」[守1200]
手札:4枚→2枚

背後へ巨大な回転式の弾倉が現れると、それは回転を始めその1つから一発のドラゴンが射出される。緑色に発光する翼を備えたそれは青い装甲に覆われたドラゴン。その頭部には巨大な弾丸が備えられていた。

「俺はレベル4の《マグナヴァレット・ドラゴン》に同じくレベル4の《ヴァレット・トレーサー》をチューニング。
雄々しき竜よ。その獰猛なる牙を今、銃弾に変え撃ち抜き勝利をこの手に!
シンクロ召喚ん!

導けぇ!レベル8《ヴァレルロード・S・ドラゴン》!」[攻3000]

フィールドへ淡く光るシリンダーが形成される。そして、それを起点に白を基調とした巨大なドラゴンが、緑色に発光する翼と共に姿を現わし咆哮をあげる。

「リンクだけでなくシンクロまで扱うとは…!何とも手が広い…」

「絡め業だぁ!サベージ・ドラゴンがシンクロ召喚成功時、墓地のリンクモンスターを自身へと装備する!」

「リンクモンスターの装備…?」

「墓地のリンク2《ドラグニティナイト-ロムルス》を装備。そして、ロムルスのリンクマーカーの数…つまり2発の弾丸!2つのヴァレルカウンターを自身にへと乗せる!
装填!」

サベージ・ドラゴンの胸部のシリンダーへ2発の光の玉が装填される。

「サベージは相手の効果の発動をヴァルカウンターを1つ取り除くことで、無効にできる!さらに、自身の攻撃力は装備しているリンクモンスターの打点の半分上昇!」[攻3600]

「自己強化に加えて、妨害効果まで…。
ヴァレルエンドと共に山辺 俊勝。お前がどんな人間かというのが良く表れていますね」

「おうよ!このままゲームエンドまっしぐらだ!
エンドフェイズ、《深淵の獣マグナムート》の発動されていた効果により、デッキから《深淵の獣ドルイドヴルム》を手札にへと加えてターンエンドだ!
ボス戦ってんで俺は楽しみにしてんだ。熱いデュエルを期待してるぜ!?」
手札:2枚→3枚



山辺-LP:4000
手札:3枚


 [ターン2]


「神より与えられし試練!
そして、俺が与える試練!
神が微笑むのはどちらになるのでしょうね?
俺のターン、ドロー!」
手札:5枚→6枚

藤永はデッキからカードをドローすると、他の手札と同様空中へと貼り付ける。

「地獄で与えられる試練を執行するのは地獄の住人です。
召喚《インフェルノイド・デカトロン》!」[攻500]
手札:6枚→5枚

「インフェルノイドだぁ!?」

空中に貼り付けられた手札1枚を上向きにスライドすると、そのカードは自動的にデュエルディスクの元へと到達し、モンスターの召喚が行われる。
何かの生物と思わしき機械質な頭部がフィールドへと現れる。その体には9つの色に光る真空管が刺さっており、それとは別に頭部には虹色に光る真空管が刺さっているのが分かる。

「《インフェルノイド・デカトロン》は召喚、特殊召喚の成功時にデッキより1体のインフェルノイドを墓地へ送ります。そして、そのカード名と効果を自身のものとすることが出来るのです!」

体に刺さっている真空管の内、紫色の物がより強く発光し始める。

「リリスをコピーして無効持ちを場に用意するつもりだろうが、そうはさせねぇ。
チェーンして《ヴァレルエンド・ドラゴン》の効果を発動!対象はお前のデカトロンと、俺の墓地の《マグナヴァレット・ドラゴン》!」

「ほぉ…そのドラゴンで一体何をしようと?」

「力でねじ伏せんだよ!
対象のデカトロンの効果を無効にし、対象のマグナヴァレットを墓地から特殊召喚だ!そして、この効果の発動に対してお前はカード効果を発動できない!」[守1200]

ヴァレルエンドの左の頭部から1発の弾丸が放たれる。注射器にも似たその弾頭がデカトロンにへと刺さると小さな爆発を起こす。爆発の中から山辺のフィールドへ《マグナヴァレット・ドラゴン》が飛び帰って来た。

「無効に加えて、蘇生…加えてチェーンを許さない…。
ふふ…素晴らしい…その気概です。試練を重ねる事で俺達の善行が積みあがっていく!
次はこれです。永続魔法《煉獄の虚夢》!」
手札:5枚→4枚

「ちっ…」

「このカードがフィールドにある限り、俺のレベル2以上のインフェルノイドのレベルは1となり、相手への戦闘ダメージが半減します」

「本命は2つ目の効果だろ。《ヴァレルロード・S・ドラゴン》効果発動!
ヴァレルカウンターを1つ取り除き、《煉獄の虚夢》の発動を無効にさせてもらう。
永続魔法の発動が無効にされたことで、カードは墓地へと送られる」

サベージ・ドラゴンが口を開き発砲する。胸部のシリンダーが動き、発動された《煉獄の虚夢》のカードに穴が開く。

「あぁ!?神よ!かの者はなんと、俺のデッキを把握しているようではありませんか!これが俺へと与えられた試練!
いいでしょう。乗り越え、必ずや山辺 俊勝を楽園へと誘って見せましょう!」

藤永は天を仰ぎながら、手札の1枚をスライドする。

「通常魔法《隣の芝刈り》!」
手札:4枚→3枚

「ぐはは!やっぱり握り込んでやがったか!」

「お前の2体のドラゴンはその効果を使い終わった。
さぁ、この試練を撃ち破れますか?」

「簡単な話だ。死角からの一撃!
手札から《灰流うらら》を捨てて、デッキからカードを墓地へ送る効果を含む《隣の芝刈り》の効果を無効だぁ!」
手札:3枚→2枚

山辺は笑顔と共に手札のカード1枚を墓地へと送り込む。
その瞬間、発動された《隣の芝刈り》の周囲を桜の花びらが舞い、カードの効果が無力化されてしまう。

「まさに死角からの一撃!俺の手を読み、手札を温存していたという訳ですか!」

「一番発動されちゃいけないカードだからな。
妨害を超えて発動してくると踏んだわけだ」

「その知略…そして駆け引き…実に素晴らしい。
何と優秀な咎人か!これは一層楽園への道を示して差し上げなければ!」

「インフェルノイドを相手にするんなら常識だ!まだ墓地肥やしカードが残ってやがんのか?」

藤永は静かに口元を緩ませる。そして、残った3枚の真ん中のカードを上方向にスライドする。すると、フィールドへ青と橙色の渦が巻き起こり始める。

「…!?そのカードは?」

「通常魔法《融合》!」
手札:3枚→2枚

「インフェルノイドに融合?なんだ…何が狙いだ?」

山辺の想定するインフェルノイドに投入されていないカードが発動され、彼の頭の中であらゆる可能性の模索が始まる。

「俺は《インフェルノイド・アスタロス》と《インフェルノイド・アシュメダイ》の2体を融合。無感動の悪魔よ、残酷なる悪魔と一つとなり、地獄の咎人へ救いを!
融合召喚!

裁け、《インフェルノイド・イヴィル》」[守1100]
手札:2枚→0枚

青と赤の真空管が混ざり合うと、青い炎と共にフィールドへ悪魔が姿を見せた。

「(なんだこいつは…?初めて見る…。
いつの間に新規カードが出たんだ?)」

「おや、その表情…この悪魔の姿を見たのは初めてとお見受け致します。
では、その裁きの力をとくと味わうといい。
融合召喚成功時、墓地のインフェルノイド1体を除外し、そのレベルの数だけ種類の異なるインフェルノイドをデッキから墓地へ送ります!」

「な…!?
(着地効果ならバルドレイクで除外しても止められない…!)」

「俺は墓地のレベル5《インフェルノイド・アシュメダイ》を除外し、5体のインフェルノイドを墓地へと送る」

イヴィルの背後の青い炎から赤い真空管が飛び出る。その真空管を嚙み砕き唸り声をあげた悪魔の背後の青い炎から、5色の真空管が地面へと落下し高音を響かせながら周囲へ散らばる。

「一気に5体の墓地肥やし…。
(しかもレベルの数って事は、最大10体まで墓地肥やしが出来るって事か…)。
ぐははは!面白い!やはりボス戦だ!デュエルもイカれてないとなぁ!」

俄然やる気を見せる山辺は藤永のフィールドへと注視する。

「自分フィールドの効果モンスターのレベル・ランクの合計値が8以下の場合に、墓地から《インフェルノイド・アスタロス》を除外し、墓地の《インフェルノイド・ベルゼブル》を特殊召喚します」[守2000]

地面へばら撒かれた真空管の内、青色の真空管が破裂すると同時に灰色の真空管の周囲を靄が漂い始める。しばらくすると、そこには灰色の二つの真空管を体に繋いだ3対の手足を持った悪魔が姿を現わす。

「ベルゼブルの効果を発動。1ターンに1度、相手の表側カード1枚を手札へ戻せます。俺は、《ヴァレルロード・S・ドラゴン》を手札へと戻します」

「サベージの無効効果は1ターンに1度…EXデッキへ戻るぜ…」

灰色の真空管が発光すると共に、サベージ・ドラゴンがフィールドから弾き飛ばされる。そして、今度は白色の真空管が破裂する。

「墓地の《インフェルノイド・シャイターン》を除外し、《インフェルノイド・ルキフグス》を特殊召喚です」[攻1600]

黒い真空管の周囲を靄が漂い、三つの黒い真空管を背中に繋いだ悪魔が赤い目を光らせてフィールドへと現れる。

「ルキフグスの効果。1ターンに1度、自身の攻撃権を放棄する事で相手モンスター1体を破壊します。《深淵の獣バルドレイク》を破壊」

黒い真空管が発光すると、バルドレイクの体がはじけ飛ぶ。

「ぽんぽんと除去してくれるじゃないか…。
(だが、インフェルノイドだけでヴァレルエンドを突破できるやつはいないはずだ…。いや、俺の知らないインフェルノイドが居た以上確証はない…か…?)」

「山辺 俊勝。お前への試練はまだ終わらない。
デカトロン、ベルゼブル、ルキフグス、イヴィルの4体のインフェルノイドでリンクマーカーをセット」

「な、4体でリンク!?」

「神の怒り…今、火の洪水をもたらさん…リンク召喚。

裁け、LINK4《インフェルノイド・フラッド》!」[攻3000]

青い炎がまるで洪水の様にうねりフィールドへと流れ込んでくる。密閉された空間内の気温が急激に上昇する。
その炎の中から時計の様な文様が浮かぶ半透明の翼を広げる悪魔が出現する。ところどころに金色が目立つその様相はどこか神々しく、しかしどこか不安を感じさせるそんな不気味な姿をしている。

「墓地へと送られた《インフェルノイド・イヴィル》の効果が発動。デッキから《煉獄の決界》を手札へ加える」
手札:0枚→1枚

「(これで墓地にインフェルノイドが4体増えた…。レベルのないリンクならインフェルノイドの召喚制限は関係ない…リリスかネヘモスが出てくる前に…。いや、このリンクモンスターの効果がまだ分からねぇ…)」

山辺は額から一筋の汗を流し、手札の《深淵の獣ドルイドヴルム》を呼び出すタイミングを計る。

「墓地の《インフェルノイド・デカトロン》を除外し、《インフェルノイド・ルキフグス》を再び特殊召喚」[攻1600]

青い炎で満たされた藤永のフィールドから何かの破裂音がしたかと思うと、ルキフグスが姿を露わにした。
その瞬間、炎が再びうねり始める。

「なんだ?」

「墓地からカードが除外されたことで、《インフェルノイド・フラッド》の効果が発動されます!フィールドのカード1枚を除外、裁きの矛先は《ヴァレルエンド・ドラゴン》です!
ファイア・フラッド!」

まるで洪水の様に集約された炎がヴァレルエンドを飲み込むと、ヴァレルエンドがその身を爆散させた。

「対象を取らない除外だと…!?
ここしかない、俺の墓地から闇属性《ストライカー・ドラゴン》を除外し、《深淵の獣ドルイドヴルム》を守備表示で特殊召喚させてもらう」[守2000]

体を鎖で縛りつけられた4足のドラゴンが地響きと共にフィールドへ降り立つ。

「新たなるドラゴン…救いは拒まずともいずれ訪れるのですよ。
拒むその姿もまた善行になるのですかね?
俺は墓地から《インフェルノイド・ベルゼブル》《インフェルノイド・イヴィル》《インフェルノイド・ネヘモス》の3体を除外。
煉獄より生まれし不安定なる悪魔よ!かの者に救済の道を!

裁け、レベル9《インフェルノイド・リリス》!」[攻2900]

3回の破裂音の後、雷鳴と共に蛇の様な姿をした巨大な悪魔が翼を広げ顕現する。その頭部の至る所へ紫に光る真空管が突き刺さっている。

「出やがったな。リアルソリッドビジョンだと何とも迫力があるもんだ…」

「リリスの特殊召喚成功時、フィールドの煉獄カード以外の魔法、罠をすべて破壊します!」

首周りに備えられた紫の真空管が発光すると、山辺の背後の《リボルブート・セクター》が破壊される。

「さらにルキフグスの効果を発動。今度は、先程特殊召喚された《深淵の獣ドルイドヴルム》を対象に破壊させてもらいます」

背中に背負った黒い真空管が発光すると共に、ドルイドヴルムの体がはじけ飛ぶ。しかし、その弾けた体を拘束していた鎖が《インフェルノイド・リリス》の首へと巻き付き地面にへと引きずり込もうとする。

「ドルイドヴルムがフィールドから墓地へ送られた場合、特殊召喚された《インフェルノイド・リリス》を対象に墓地へと送る」

「当然させる訳がありません。《インフェルノイド・リリス》の効果によりモンスター効果を《インフェルノイド・ルキフグス》をリリースする事で無効にし除外します!」

リリスが唸り声をあげ、ルキフグスの背にある黒い真空管がはじけると同時にルキフグスは露と消えた。そして、リリスの体を縛っていた鎖も消失する。

「まぁ、そう来るわな。次は何をしてくる?」

「永続魔法《煉獄の決界》」
手札:1枚→0枚

フラッドの足元で燃え盛る青い煉獄の炎が、フィールド全体を覆い始める。互いの背後は炎で覆われ、近づくだけで火傷しそうな熱気が大気を包み込む。

「ただでさえ暑いってのによぉ…燃えるが本当に燃えちまいそうだなぁ!?
ぐはは!」

「煉獄の炎、神より与えられし試練なのですよ。
《煉獄の決界》の効果により、俺のインフェルノイドの攻撃力は除外されているインフェルノイドの数×100上昇します。
これにより2体の攻撃力は700アップ!」

《インフェルノイド・フラッド》[攻3700]
《インフェルノイド・リリス》[攻3600]

「末恐ろしいってもんだな…。
だが、俺のライフは燃え尽きねぇ!」

「そう、まだ山辺 俊勝…お前のライフを削りきるには及ばない。
ですが、その身が持ちますかね?」

山辺の顔を見遣り不敵な笑みと共に嫌らしく問いを投げかける。
現実に発生するダメージを受け止め切れるのかという問いだ。だが、山辺はこの質問に対して真っすぐ突き返す。

「俺の全てはデュエルだ。ライフが残る限り、この闘志は燃え尽きねぇんだよ。
オラ!さっさと攻撃して来いよ!」

鍛え抜かれた筋肉を広げ、藤永を挑発する。
藤永は堪えきれず、淀んだ瞳を輝かせ満面の笑顔を見せる。

「なんと潔い…!なかなか相まみえる事のない逸材です!
あぁ…お前の罪が浄化されていくのを感じます…。神の裁きを前にしても、恐れを抱かぬとは…。素晴らしい…!賞賛せざるを得ない!
では、最期まで見せてください!神への贖罪を…!!
バトルフェイズ。
《インフェルノイド・リリス》で《マグナヴァレット・ドラゴン》を攻撃!」

リリスの口から煉獄の炎がマグナヴァレットに向けて放たれる。瞬間、黒炭と化したマグナヴァレットは爆発した。

「《マグナヴァレット・ドラゴン》が破壊されたことで効果を発動!
エンドフェイズに、別のヴァレットモンスターを特殊召喚するぜ!」

「よろしい、では受け止めてください。これがお前がここで重ねた罪の断片。
《インフェルノイド・フラッド》でダイレクトアタック!」

煉獄の炎をその身に纏い、悪魔が山辺を指さす。
足元の炎が集約し、火の洪水となり男の体を飲み込む。

「うぉぉぉぁああああ!!!」

山辺LP4000→300


山辺は自ら向かって来る炎の元へと走り飛び込む。洪水となり襲い掛かった炎を走り抜けいち早く抜け出すと、タンクトップを脱ぎ去り、腕力に任せるまま体に燃え移った炎を叩き消す。

「うぉらぁああああ!!!」

残されていた前髪が焼ききれ、ズボンの様々な箇所が焼け焦げ落ちている。そして、強靭な肉体の所々にも火傷の跡が残される。
山辺は最後に右腕で燃える青い炎を左手で払いのけ消化を完了させる。

「あちぃしいてぇじゃねぇか!!ちくしょう!」

体中の火傷の箇所を確認しながら体を振るう。己の体から焼け焦げた嫌な臭いが漂う。
その様を対角で見遣る男は唖然としている。

「なんと…自ら攻撃へと向かい、ダメージを最小限にしてくるとは…。
生への執着…もしや…お前が俺を救ってくれるのか?
山辺 俊勝!!お前なのか!?お前が俺を裁きに来たのか!?神からの遣いなのか!?」

藤永は先程までの饒舌な口調とは打って変わった必死な様相で男へと意図の分からぬ質問を投げかける。

「訳分かんねぇこと言ってんじゃねぇよ…。
こちとら、身も心もあったまって来たんだ…。ヒリつくぜ…この程度で俺のデュエルマッスルを打ち破れると思うなよなぁ!
勝つのはなぁ…この俺だ!」

火傷で負傷したことを感じさせない程にパワフルな動きで体制を立て直す山辺。その巨大な右腕を振るい、藤永を指さし己の勝利を宣言する。

「あぁ…神よ…。
いえ…まだ。最期の瞬間まで断罪者としての善行を…」

藤永は一瞬淀みない瞳の輝きを見せていたが、すぐに首を振るい両腕を広げ、淀んだ瞳を取り戻す。

「山辺 俊勝…お前は実に素晴らしい咎人だ。だが、どうする?
攻撃を耐え抜いても、俺のフィールドの悪魔達はその威光を発し続ける。
お前の成さんとすべきことを潰えさせる為に!
断罪する側なのはどちらか…見極めさせていただきますよ!
メインフェイズ2へ移行。《煉獄の決界》の効果を発動。
除外されている《インフェルノイド・デカトロン》を手札にへと回収。これにより除外されているインフェルノイドの数が減少し、俺のフィールドのインフェルノイドの攻撃力は100ダウンします」
手札:0枚→1枚

《インフェルノイド・フラッド》[攻3600]
《インフェルノイド・リリス》[攻3500]

フィールドに燃え盛る青い炎がまるで生きているかのように蠢き、藤永の手へとやって来る。それは1枚のカードを形成し、手札に加わったそれを藤永は空中にへと貼り付けた。

「俺はこれでターンを終了です」

「なら、エンドフェイズ。このターン破壊された《マグナヴァレット・ドラゴン》の効果により《ヴァレット・トレーサー》を特殊召喚だ…」[守1000]

「勝利を見据えているのですね。
全身全霊で臨もうではないですか。山辺 俊勝!」

少し息を荒くさせながら、山辺はにやりと微笑む。

「ピンチだとか、逆境だとかをドロー1つで逆転する…これがデュエルってもんだろうが。
俺の勝利が揺るがないことをお前に見せてやるよ!」



藤永-LP:4000
手札:1枚


 [ターン3]


「俺のぉ…タァァァン!!!」
手札:1枚→2枚

勢いよくデッキトップからカードを引き抜き、そのカードを確認する。

「はは…己のデッキを信じてこそのデュエリストだ…。
墓地の闇属性《深淵の獣ドルイドヴルム》を除外して《輝白竜 ワイバースター》を特殊召喚だ」[守1800]
手札:2枚→1枚

胸元から閃光が迸るドラゴンがフィールドにへと降り立つ。

「せっかく戻してもらったんだ。有効活用しねぇとな!
レベル4の《輝白竜 ワイバースター》に同じくレベル4の《ヴァレット・トレーサー》をチューニング。
再び現れ、勝利を示せ!
シンクロ召喚!

導け!レベル8《ヴァレルロード・S・ドラゴン》!」[攻3000]

ドラゴンの咆哮と共にサベージ・ドラゴンの姿が形成されていき、その白き銃身を構える。

「(チェーンを組まれるとワイバースターを挟まれ、サベージの打点強化を止められない…)。
相手がモンスターを特殊召喚する際に、《インフェルノイド・フラッド》の効果を発動!自身をリリースしその特殊召喚を無効にし除外します!」

フラッドが青い炎に溶け込み、火の洪水が姿を形成途中のサベージ・ドラゴンを飲み込んで消し去る。

「なら、墓地へ送られたワイバースターの効果でデッキから《暗黒竜 コラプサーペント》を…

「それも通しません。《インフェルノイド・リリス》の効果を発動。自身をリリースし、相手のモンスター効果の発動を無効にし除外します」

リリスが不気味な鳴き声を上げると共に、リリスの頭部に刺さっている紫色に光る9つの真空管が破裂する。破裂した後リリスの体が崩壊を始める。
そして、山辺のデュエルディスクの墓地から紫色の光が発せられた。

「これで…お前のフィールドはがら空きだ」

「ですが、山辺 俊勝。お前のフィールドにも何も残ってはいません」

「ここから俺の勝利への道が開かれんだよ!
メインフェイズ中に相手モンスターの効果が発動されたことで、このカードを発動できる!《三戦の才》!」
手札:1枚→0枚

「っ…!」

にやりと笑顔を覗かせた山辺は、デッキトップへと手を掛ける。

「デッキから2枚ドローする効果を選択するぜ。ドロォー!」
手札:0枚→2枚

「こちらの妨害を逆手に取る…いいえ、この状況を利用できる1枚を引き込む運命力…期待…してもいいんですよね?
山辺 俊勝!!!」

「ぐははは!俺は俺の勝利をただ追い求めるのみだ!
《ヴァレット・シンクロン》召喚!」
手札:2枚→1枚

表面へ緑色の文様が流れる新たなヴァレットモンスターがフィールドへ緑の翼を広げふわりと降り立つ。

「召喚時、墓地からレベル5以上のドラゴン族の闇属性を効果を無効にして蘇生させることが出来る。俺は墓地より《アブソルーター・ドラゴン》を特殊召喚するぜ。
蘇れ!」[守2800]

体の隙間から多様な配線が見え隠れするドラゴンが、まるでアンテナの様に6方向へと伸びた黒い翼を広げフィールドへと降り立った。

「速攻魔法《クイック・リボルブ》発動。デッキより攻撃不可の状態で《ヴァレット・トレーサー》を特殊召喚だ!」[守1000]

フィールドへ赤い線で軌道を残しながら《ヴァレット・トレーサー》がフィールドへと装填される。

「最初のターンのやり直しだ!《ヴァレット・トレーサー》、《アブソルーター・ドラゴン》の2体をリンクマーカーにセット!
リンク召喚!

導け、LINK2《ドラグニティナイト-ロムルス》」[攻1200]

白銀の槍が地面にへと突き刺さる。吹き始める風により、青い翼を広げたドラゴンが鳴き声を発すると、辺りを包み込む結界の炎が揺らめく。
それに反応して、デッキより2枚のカードが飛び出す。

「墓地へ送られたアブソルーターの効果により、デッキから《ヴァレット・キャリバー》を、
リンク召喚に成功したロムルスの効果により、《竜の渓谷》をそれぞれ手札に加えさせてもらう」
手札:0枚→2枚

「手札1枚の状況から良くここまで…」

心から感心する様に藤永は驚嘆の声を漏らす。

「そら、まだ展開は終わらねぇぞ!
《ヴァレット・シンクロン》を素材に、ロムルスの右下のリンク先へ3体目の《ストライカー・ドラゴン》をリンク召喚!
そのリンク召喚時の効果で《リボルブート・セクター》サーチだ!」[攻1000]
手札:2枚→3枚

手慣れた動きで、連続リンク召喚を行いフィールドへ現れた《ストライカー・ドラゴン》を横目にデッキから飛び出たカードを手札にへと加える。

「手札の《ヴァレット・キャリバー》は闇属性リンクのリンク先、《ストライカー・ドラゴン》のリンク先へと特殊召喚して、そのままリンク召喚!

導け、ロムルスの左下のリンク先へ《守護竜ピスティ》!」[攻1000]

黄金の装飾がまるで文様の様に体と翼へ刻まれたドラゴンが胸部の核を赤く光らせながらロムルスの左背後へと顕現した。

「この配置…随分と慣れた物ですね。さぁ、一体何を呼び出すのですか!」

「よく覚えてるじゃねぇか。ピスティの効果でリンク先へ墓地の《深淵の獣マグナムート》を特殊召喚!」[攻2500]

両腕を石柱で封じられた赤いドラゴンが地面へと空いた墓地空間から飛び上がり、着地すると威圧感を発する。

「特殊召喚時効果により、俺はエンドフェイズにドラゴン族を手札に加えるぜ。
まぁ…このターンで俺が勝つから関係ねぇがな!
フィールド魔法《竜の渓谷》発動!その効果により、手札1枚をコストにデッキからドラゴン族1体を墓地へ送る効果を使用する…」
手札:2枚→0枚

山辺はデッキから飛び出たカードを手に持ち俯く。

「これが…俺を勝利へと導く最強の1枚。切り札だ。
お前との熱いデュエルを締めくくるのはこいつだ!
《ヴィクトリー・ドラゴン》!」

山辺の手に握られたのは、黄金の翼が輝くドラゴンのモンスターだった。それを速やかに墓地へと送る。

「《ヴィクトリー・ドラゴン》…?」

「使用者へと勝利をもたらすドラゴン。俺の名を体現するのがこのカードだ!
お前を倒し損なう、勝利を逃すなんてこと…こいつを前にしてはあり得ねぇ!
マッチキルの圧倒的な力の前にひれ伏せ!
墓地の《輪廻竜サンサーラ》を除外し、効果を発動だぁ!墓地のレベル5以上のドラゴン、《ヴィクトリー・ドラゴン》を手札にへと加え、そのままアドバンス召喚を行う!
《ドラグニティナイト-ロムルス》《守護竜ピスティ》《ストライカー・ドラゴン》の3体を生贄に捧げる…。
勝利の名を欲しいままに!絶対無敵!最強たる力の根源を今ここに示せ!
アドバンス召喚!!!

導け!レベル8《ヴィクトリー・ドラゴン》!!!」[攻2400]

3体のドラゴンが光の玉となり、回転しながら天へと昇る。閃光が走ったかと思えば、上空から金色の鋭い鱗を備えた巨大なドラゴンが燃え盛る大地にへと降り立った。
翼を広げ巻き起こる強風の風圧、巨大な体が地面へと着地することにより響き渡る地響き。圧倒的な存在感と威圧感を発するドラゴンは、巨大な咆哮をあげる。

「いよいよ…いよいよ…!
神の裁きが下る!地獄からの解放!楽園への道はもう開かれているのですね!
あぁぁぁああああ!!!!ようやく!ようやく俺も!!!」

ドラゴンを視界にへと捉えた藤永は、目を輝かせ興奮を隠さずに、狂気を感じさせる笑顔を漏らし、両腕を天へと掲げる。

「ぐははは!そうだ!熱いデュエルだったぜ!
ボス戦に相応しい最高のデュエルだったよ!
それを今俺の圧倒的な勝利、《ヴィクトリー》で幕引きにするぜ!
バトルフェイズに入る!
《深淵の獣マグナムート》でお前にダイレクトアタックだ!」[攻2500]

マグナムートが地を蹴り、藤永の元へと急接近する。

「さぁ!!裁きをこの身へ!!」

恍惚とした表情の藤永の頭頂部へ、マグナムートの右腕の石柱が容赦なく振り落とされる。

「ぐっがぁ…!」

藤永LP4000→1500


恐ろしき腕力の前に藤永は立ち続ける事が出来ず、勢いのままに地面へと頭を叩きつけられる。藤永の頭部が叩きつけられた地面にはヒビが入り込む。

「これでとどめだ…《ヴィクトリー・ドラゴン》!
眼前の敵を打ち滅ぼし、俺へと勝利を献上しろ!
《ヴィクトリー・ドラゴン》でダイレクトアタック!
ヴィクトリー・デストラクション!!!」[攻2400]

翼を広げ、獰猛の爪を振るい金色の鱗に包まれた《ヴィクトリー・ドラゴン》が倒れ込む藤永の元へと飛び立つ。
瞬間、藤永は震える手を地面にへとつけ、顔を起こし立ち上がる。殴られたことで頭部から大量の血を流し、顔を赤く濡らしながら。

「楽園が…!すぐ…!そこまでぇ…!!!!!」

敗北する人間とは思えない程に幸福に満ち溢れた男の胸部へと《ヴィクトリー・ドラゴン》の狂暴な爪が突き刺さる。

「《ヴィクトリー・ドラゴン》の攻撃により相手のライフが0になる時、俺はマッチに勝利する!!!」

「…!?」

山辺の言葉に表情を歪ませた藤永だが、金色のドラゴンの攻撃は止まることなく、凶悪な力のままに藤永の体は後方にへと吹き飛ばされた。

「ぐがぁ…ぁぁあぁあああ!!」

藤永LP1500→0


青い炎の結界を超え、シャッターにぶつかる壮絶な衝撃音と共にデュエルの終了を告げるアナウンスが流れる。



ピーーー



「藤永様のライフが0になりマッチキルが成立しました。勝者は山辺様です。」



「はぁ…はぁ…やって…やったぜ…」


肩で息をしながら、山辺は背後に倒れ込む。激闘の末、レッドフロアのフロア主をデュエルで倒すことが出来たのだ。


「ぐ、ははは、ぐははは!
いいデュエルだったぞ!!!本当にな!」

勝利の感触を確かめ、拳を握り込む。愉悦に浸り笑いの止まない山辺。
その体に残る火傷の痛みは、勝利したことで強敵との戦いの証、勲章となり得たのだ。

「こりゃ《情報屋》にいい報告が出来るってもんだ!
ボスとして君臨してるだけの事はあるぜまったく!ぐはははは!!!」

「山辺様、藤永様へデュエルボーナスが送られます。ご確認ください。」

「…あぁ!?」

悦に浸っていた感情が一転。山辺は火傷の痛みと疲労で悲鳴を上げる体を飛び上がらせた。
自身の耳を疑った…。確実に殺したはずの相手へとデュエルボーナスが入っているアナウンスが流れたのだ。

「バカな…。マッチキルは…追加で一度の敗北分現実へのダメージが加算される…エンカウントとは言え、4000の無条件加算ダメージを喰らって生きてられるはずが……」

異常事態に疲弊しきった頭をフル回転させるが、そこへ追い打ちをかけるように異常事態が引きおこる。

「あぁ…山辺 俊勝…。
俺は悲しみに明け暮れていますよ…」

殺したはずの者の声が前方から聞こえてきた。

「バカな!?何故!?」

異常事態の根幹が目の前へと現れる。頭から血を流し、胸元に爪で抉られたような傷跡を残しながら、先程までデュエルしていた相手…藤永 伊織がこちらを見下ろしていたのだ。

「どうやら神は…まだ俺たちに試練を課す様だ…。
善行が足りていなかったんだよ…」

藤永は胸元から赤いお守りを取り出す。
ぼろぼろになったお守りを地面にへと放ると、お守りから1枚のカードが抜け落ち地面へと落ちる。
山辺の視界に入り、地面にへと落ちたそのカードはお守りと共に前触れなく真っ黒になり塵となって消えてしまう。

「《呪詛返しのヒトガタ》……?
何を…いったいどうやって《ヴィクトリー・ドラゴン》の攻撃を防いだってんだ…!?」

「山辺 俊勝。根本から間違っています。攻撃を防げてはいない。
俺はお前に敗北した。だが、俺が救済されることはなかった…。
これはお前が神の遣いではない事を示し、俺がまだ救済の側にいる事を意味している」


ザザッピー
「ただいまよりフリーエリアにてデュエルを開始します。
ルール:マスタールール
LP:4000
モード:エンカウント
リアルソリッドビジョン起動…。」


「訳が分からねぇ…さっきのお守りが攻撃を防いだとでも?
バカな…!あり得ねぇ!《ヴィクトリー・ドラゴン》の攻撃を防ごうとした奴がいたが、そいつらの防御に使ったものは木っ端みじんに粉砕して、命を奪った…!!
あんな小さなお守り如き…躱せるはずが……」

理解が及ばずデュエル開始のアナウンスすら耳に入っていない山辺を前に藤永が口を開く。

「言うなら…経験の差。積み上げて来た善行の差とでも言いましょうか?」

「(くそっ…さすがにこの体で連戦はきちぃ…だがそれは奴も同じはずだ…。
死んではいないにしろ…喰らった肉体への傷は相当なはず…)」

相手の状況を探るべく顔を藤永の方へと向けた。
山辺はこの時、初めて人間に対して恐怖の感情が沸きあがった。
男は血だらけの顔で笑っている。自分と死闘を繰り広げ、満身創痍のはずの男が淀んだ瞳で、歪な笑顔を顔に貼り付け…デュエルディスクを構えているのだ。

「さぁ、悔やんでばかりもいられません!立場がはっきりした今、今度こそ山辺 俊勝!お前を楽園にへと誘って差し上げなければなりません!
この地獄からお前を開放して見せます!」

火傷でひりつく体を何とか起こし立ち上がる。そして、眼前の敵を排除すべくデュエルディスクを構える。

「くそっ死神が……いいぜ…。
そんなに殺され足りねぇんなら…何度だって殺してやるよ!!!」


 「デュエル」   LP:4000
 「デュエル!!」 LP:4000

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コングの施し
クラスⅢの藤永と筋肉山辺さんのデュエル!!
2人とも身震いするほどデッキとカードパワーがガチですね…。ドラゴンリンクにインフェルノイドとは!そして藤永さん…そいつら未だ発売されていない未来のカードじゃないですか!!

そしてマッチキルの要素…なるほど4000の無条件加算ダメージとは。この世界じゃ絶対に生き残れないであろう量のダメージでねじ伏せてきたわけですね。しかしそれを防いだ藤永。もしかして、負けてもまた挑んで相手を倒しているがゆえにそのクラスⅢの立場を保っているとか…?そう考えると情報屋の渚さんが戦う選択を放棄したこともなんとなく納得がいきますね。彼は一体何者なんだ…。

不穏な空気漂うマッチアップ…今後の展開も気になりますね!
(2023-10-30 21:55)
ランペル
コングの施しさん閲覧及びコメントありがとうございます!

二人とも中々にがちがち仕様なデッキとなっておりますwどんなカードもここでは手に入れられる…金があればね!
使うデッキはインフェルノイドで決まってたんですが、デュエルシーンを書く前に新規情報が発表されたので使うしかないなとwそれこそ結構イカレた性能してるので、イカレてる彼にはぴったりと言う…。

マッチキルは《ヴィクトリー・ドラゴン》が禁止なのもあり、実験内で周知されている情報ではありません。それでなおさら、藤永が生き残ったことに山辺は困惑してる訳ですね。
意識を失うなりしない限り、どれだけ手傷を負わせてもデュエルを挑んでくるその精神性が彼をクラスⅢたらしめているのかもしれません。

次回はまとめ的な回になる予定ですので、引き続き楽しんでいただければ幸いです! (2023-10-30 22:47)
ランペル
-お詫び-
本デュエルにおいて藤永の扱うインフェルノイドですが、下級インフェルノイドの手札からのみ展開できる効果を、上級同様墓地からも蘇生出来る効果と勘違いしておりました。
その為、藤永が《インフェルノイド・ベルゼブル》などの下級を、墓地コスト1体で墓地蘇生している展開が多数見られます><

こじつけ設定的にはデュエルシステムのバグです。
藤永は何気なくリリスの蘇生効果を使おうとしますが、下級インフェルノイドもデュエルディスクの画面に表示されたので、押してみたら蘇生が出来ちゃった感じです。
藤永は頭がおかしいので気にしてないですし、山辺は見たことないインフェルノイド新規の登場も合わさってイカれたデュエル展開だったので、気づいてますが気にしていません。
システムは既に修正されてるので、気にしたら負けです(気をつけます!) (2024-03-15 20:52)

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