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HOME > 遊戯王SS一覧 > Report#65「格付け」

Report#65「格付け」 作:ランペル


ピー
「先行は裏野様、後攻は貫名様になります。」


 [ターン1]


デュエルディスクから5枚のカードを引き抜いた貫名が、真剣なまなざしで梨沙を見据える。

「さぁ裏野、お前の実力を見せてみろ」

「言われなくても…このデュエルで死ぬ訳にはいきませんからね。
私の先行、手札から《神碑の穂先》を発動します!
2つの効果から1つを選択。
私はデッキから神碑カード1枚を手札に加え、相手のデッキの上からカード1枚を除外する効果を選択します!」
手札:5枚→4枚

梨沙のデッキトップへと青いルーン文字が浮かび上がると、1枚のカードがデッキより飛び出す。

「私が手札に加えるのは《まどろみの神碑》!
そして、貫名さんのデッキの上からカードを1枚除外します!」
手札:4枚→5枚
貫名デッキ:34枚

貫名のデッキの一番上のカードが、虚空へと弾き飛ばされると異次元にへと吸い込まれて行ってしまった。

「デッキの除外…それにバトルフェイズのスキップ…。
お前のデッキはデッキ破壊が目的というわけか」

「さぁ、それはどうでしょう?
いたずら大好きな私のデッキが何を目指してるのか、当ててみてください!
手札に加えた《まどろみの神碑》を発動。今度は、EXデッキから、EXモンスターゾーンへ神碑モンスターを特殊召喚しますよ。

来て、レベル2《神碑の翼フギン》!」[守0]
手札:5枚→4枚

黒い翼をぱたぱたと羽ばたかせながら、手の平ほどに小さな金髪の少女がフィールドへと降り立った。

「フギンがEXデッキから特殊召喚した時に、手札の《ゴーストリック・スケルトン》を捨てることで、神碑フィールド魔法カード1枚を手札に加えることができます!
私はデッキから《神碑の泉》を手札へ加えますよ」
手札:4枚→4枚

デッキより飛び出した1枚のカードを貫名へとかざす。
そして、サーチしたカードを手札に収め、それとは別のカード2枚を手に取り、1枚をデュエルディスク上へと置く。

「モンスターをセットして、永続魔法《亜空間物質回送装置》を発動です!」
手札:4枚→2枚

梨沙の目の前へと、紫を基調とした三脚型の機械が出現する。まるで目のようにも見えるレンズが、フィールドを怪しく照らす。

「《亜空間物質回送装置》…?」

「モンスターに一瞬だけ亜空間旅行してもらうカードです!
私はその効果を発動して、先ほどセットしたモンスターを除外して、すぐにフィールドへと戻します!」

機械がセットされたモンスターにへとレンズを向ける。
すると、そこから怪しい光線が放たれセットモンスターが一瞬揺らいだ。

「…?
一時的に除外して、いったい何が目的だ?」

自身のデュエルディスクに表示される《亜空間物質回送装置》のテキストとフィールドの、光線を受けたセットモンスターとを見比べる貫名が疑問を口にする。

「フィールドを一時的に離れたことで、このセットモンスターはこのターンにセットしたという情報が失われました。
つまり、このモンスターは反転召喚ができるんです!
反転召喚、《ゴーストリックの猫娘》!」[攻400]

セットモンスターが表になると、黒髪に黒い耳を生やした《ゴーストリックの猫娘》が飛び出し、両手の肉球を掲げて、可愛らしく貫名を威嚇する。

「…ほう、そんな使い方ができるのか。
なかなかに厄介そうなカードだな」

「行きますよ!
レベル2の《神碑の翼フギン》とレベル2の《ゴーストリックの猫娘》の2体でオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!

来て、ランク2《ゴーストリック・サキュバス》!」[守1200]

くるんと梨沙を一目見ながら、フギンがエクシーズ召喚の渦へと巻きこまれる。
それへ続くように猫娘が飛び上がり、2体のモンスターが渦に飲まれると、大きな爆発が巻き起こった。

悪魔の翼がばさっと開かれ、綺麗な赤い髪が揺れる。
実に眠たげな目をこすりながら、《ゴーストリック・サキュバス》がフィールドへと降り立ち、手にしていた枕を放りそこで寝始める。

サキュバスが降り立ったのを確認した梨沙が、手札のカードをデュエルディスクへと発動した。

「フィールド魔法、《神碑の泉》を発動します」
手札:2枚→1枚

梨沙の背後へ、石像が中央に祀られた噴水のような泉が出現する。

「さらに、《黄金の雫の神碑》を発動です。
今度も、EXデッキから神碑モンスターを呼ぶ方を選択。

来て、レベル3《神碑の翼ムニン》!」[守2000]
手札:1枚→0枚

フギンと同じく黒い翼を羽ばたかせながら、今度は赤いズボンをはいた金髪の少年が現れた。
そして、ムニンが現れるのと同時に梨沙の後ろの石像の目が赤く光りはじめる。

「この瞬間、フィールド魔法《神碑の泉》の効果を発動します!
神碑速攻魔法を発動した場合に、墓地の神碑速攻魔法3枚までをデッキの下に戻す事で、戻した数だけデッキからカードをドローできちゃいます!」

墓地から該当するカード3枚が飛び出し、梨沙の手に握られる。

「3枚…つまり、一気に3枚のカードをドローするということか」

「そういうことです。
私は墓地の《神碑の穂先》《まどろみの神碑》《黄金の雫の神碑》の3枚をデッキの下に戻す事で、3枚をドローします!」
手札:0枚→3枚

デッキより一気に3枚ものカードを引いた梨沙が、それらを確認し口角をほんの少し上げる。

「まだまだ行きますよ!
永続魔法《ギャラクシー・ウェーブ》発動です!
私がエクシーズ召喚に成功する度に、貫名さんへ500のダメージを与えることができます」
手札:3枚→2枚

「バーンカードだと……」

デッキ破壊とは別の戦術のカードの登場で、考えを巡らせる貫名。
しかし、ダメージを与えるカードを使うことで、貫名が痛みを伴うことに意識の向いた梨沙が、そのことを付け加える。

「さっきも言いましたけど…貫名さんが先に仕掛けてきたデュエルです。
500のダメージぐらいは、耐えてくださいね」

「耐える?」

貫名は梨沙の言葉の意図がいまいち理解できなかった様だが、一拍おいてその意図を理解したのか不意に笑い始めた。

「…はは、話に聞いていた通りだ。
本当に相手を殺すのが嫌なのかお前。
殺さない決闘…いざ相手をしてみると不思議なもんだ」

「…そんなにおかしなことですか?
人を殺したくないって思うことが」

人を殺さないこと。
そんな当たり前の事がここでは、意図もたやすく当たり前から遠ざかってしまっている。

「さぁな。
おかしいだとか、おかしくないだとかなんてのはどうでもいいことだ。
その戦い方にお前が誇りを持ち、死が迫ったとしても貫き通せるものなのかということに価値が見いだされる」

貫名が重きを置いていることは、倫理的な問題ではなかった。
それは自らの生き様、生き方そのものを問うてくるような貫名の言葉に梨沙が思考を巡らせていく。

「誇り……」

人を殺さないデュエル。
自分に害を加えてくる相手だとしても、殺したくないと思ってしまうこと…。
これが人様に誇れる事なのかは分からない…。


だけど…人を殺す事を誇れるとも思えない。


「私は……人の命を軽んじるこの施設のことを許せません。
ここでのデュエルは、常に生き死にのかかった…楽しむ事なんて考えられないものになってしまっています……」

心の内で、渦巻くものを改めて整理する。
自分は、ここでのデュエルにどう向き合うべきなのかを。
貫名のまっすぐ向かってくる視線に、向き合い言葉を返す。

「誇り、持ってますよ。
私はあなたを殺さない。デュエルは争いの道具じゃないってこと、本当は楽しいものだったってことを思い出せるようなデュエルをする。

そんなデュエルを続ける限り…この実験に抗っていられると思うから!!!」

自分が前向きで諦めないこと、それこそが脱出のカギであり、この場所に負けないことに繋がるはずなのだ。
そんな前向きな気を発する梨沙を見た貫名が、品定め行う。

「…気構えは十分、強者のそれだ。
だが、強者か愚者かなんてのは決闘がすべてを物語る。
その結果だけが…お前と俺の格の違いを示すことに繋がる」

「結果は私がデュエルに勝ちます。
そして、貫名さんは死にません。
少しだけ痛いかもしれないですけど…そんなの気にならないぐらいデュエルに熱中させてあげますよ!」

そう告げた梨沙が、EXデッキより1枚のカードを取り出す。

「このカードは、ゴーストリックエクシーズモンスターに重ねてエクシーズ召喚ができます!
《ゴーストリック・サキュバス》でオーバーレイネットワークを再構築。
ランクアップ、エクシーズチェンジ!

来て、ランク4《ゴーストリックの駄天使》!」[守2500]

黒いドレスに身を包んだ桃色の髪を揺らす天使がゆっくりとフィールドへと降り立つと、にこにこしながら地面で眠る《ゴーストリック・サキュバス》をころころと転がしてどこかへやってしまう。
それと同時に、梨沙の頭上が光り輝き始めた。

「エクシーズ召喚に成功したことで、《ギャラクシー・ウェーブ》の効果が発動です。貫名さんに500のダメージを与えます!」

小さな星屑の石が、まるで雨のように貫名に降りかかる。
デュエルディスクで、顔を守る貫名だが、たくさんの小石が体を打ちつける。

「ち……」

貫名LP:4000→3500


「駄天使の効果を発動です!
オーバーレイネットワークを1つ使って、デッキからゴーストリック魔法か罠カード1枚を手札に加えますよ。
私は《ゴーストリック・ショット》を手札に加えます。
トリック・プレゼント!」
手札:2枚→3枚

駄天使が自身の周りを浮かぶ小さな継ぎはぎのハートを両手で捕まえる。
そして、その手を広げるとそれは1枚のカードに変化しており、それを梨沙へと放り渡す。

「駄天使、ありがとう。
続けて、手札に加えた《ゴーストリック・ショット》を発動します!
手札か墓地よりゴーストリックモンスターを特殊召喚。
私は、墓地から《ゴーストリック・サキュバス》を特殊召喚します」[守1200]
手札:3枚→2枚

駄天使に転がされて、どこかへ行ってしまったはずのサキュバスが今度は、転がりながらフィールドへ戻ってきて、涎を垂らしながら眠っていた。

「寝てるところごめんねサキュバス。
再び、サキュバス1体でオーバーレイネットワークを再構築です!
ランクアップ、エクシーズチェンジ。

来て、2体目の《ゴーストリックの駄天使》![守2500]

大きな継ぎはぎのハートに乗って、駄天使がフィールドへと降り立った。
足をつけてすぐに自分が乗っていたハートへと、駄天使が寝ているサキュバスを乗せる。
ハートとともにサキュバスが上の方へと運ばれていくのを、2体の駄天使が手を振って見送った。

「エクシーズ召喚に成功したので、再び《ギャラクシー・ウェーブ》の効果です!」

細かな星屑の雨が貫名を襲う。

「(8回のエクシーズ召喚で俺のライフは0になるか)……」

貫名LP:3500→3000


「2体目の駄天使の効果を発動。
オーバーレイユニットを1つ使って、デッキから今度は《ゴーストリック・オア・トリート》を手札に加えます」
手札:2枚→3枚

継ぎ接ぎのハートを指先で高速回転させた駄天使が、糸がほどかれカードに変わったそれを梨沙へと渡してくれる。

「ありがとう!
二人とも…準備はいい?」

2体の駄天使へ声をかけると、2体とも笑顔で頷いてくれる。

「私は2体の《ゴーストリックの駄天使》でオーバーレイネットワークを構築!」

駄天使が空中へ交差しながら飛び立つ。
そして、地面に現れたエクシーズ召喚の渦へと飛び込んだ。

「エクシーズ同士でのエクシーズか…」

「エクシーズ召喚!

来て、《FNo.0未来皇ホープ》!」[守0]

エクシーズ召喚の爆発の後、まばゆい光と共に赤い装甲の目立つ戦士がフィールドへと顕現する。力強く仁王立ちすると、背後の4つの白銀の翼を広げた。

「《ギャラクシー・ウェーブ》の効果で500のダメージです!」

貫名LP:3000→2500


「さらに!
《FNo.0未来皇ホープ》を素材にオーバーレイネットワークを再構築します。
エクシーズチェンジ!

未来を示そう、《FNo.0未来龍皇ホープ》!」[守2000]

未来皇ホープが新たに白銀の装甲を身に纏い、体に走っていたオレンジ色のラインが、翠色のラインへと移り変わっていく。
装甲によりまるで龍を思わせる巨大な白銀の翼を広げ、2本の剣を構えた。

「このエクシーズ召喚も当然《ギャラクシー・ウェーブ》の効果が発動します!」

未来龍王が登場と共に、周囲を漂っていた星屑が一斉に貫名の元にまっすぐ向かっていく。
顔をデュエルディスクで守っていたその隙間を、するどい小石が潜り抜け貫名の頬を切りつけた。

「……いい加減鬱陶しいな」

貫名LP:2500→2000


頬から流れた血を拭った貫名がそうぼやく。

「安心してください。
このターンはこれ以上はエクシーズ召喚できませんから。
《死者蘇生》を発動。
墓地から《ゴーストリックの猫娘》を特殊召喚!」[守900]
手札:3枚→2枚

黒い尻尾を揺らしながら、猫娘がフィールドへ転がり込んでくる。

「そして、《ゴーストリックの猫娘》1体でリンクマーカーをセット!
リンク召喚!

お祭りだよ、LINK1《ゴーストリック・フェスティバル》![攻0]

たくさんの白い幽霊が現れ、閉鎖された空間内をランタンや旗で飾り付けていく。猫娘もそれに混ざり、丸いかぼちゃを転がし始めた。

「私はカードを1枚セット!
そして、エンドフェイズに《神碑の翼ムニン》の効果が発動します!
私は1000ライフ回復できます」
手札:2枚→1枚

梨沙LP:4000→5000


ムニンが指先を頭上へ向けた。
すると、柔らかな光が梨沙の元へと降り注いでいく。

「相手にはダメージで、お前は回復…。
ライフ差が出来たな」

「ライフも重要な要素の1つですからね。
私はこれでターンエンドです!」



梨沙-LP:5000
手札:1枚


 [ターン2]


「俺のターン、ドロー」
手札:5枚→6枚

デッキからカードを引く貫名。
それを見た梨沙が残った手札の1枚を発動する。

「《神碑の泉》の効果で、私は相手ターンでも手札から神碑速攻魔法を発動できます!スタンバイフェイズに《神碑の穂先》を発動。
デッキから《凍てつく呪いの神碑》を手札に加えて、相手のデッキトップ1枚を除外します!」
手札:1枚→1枚
貫名デッキ:32枚

「(モンスターを無力化するカードか…。)
相手ターンでも構わず魔法を撃ってくる…面白い。
俺は《Into the VRAINS!》を発動。その効果により、手札から《魔弾の射手 ドクトル》を手札から特殊召喚だ」
手札:6枚→4枚

大きなライフル銃を携えた男性のモンスターがフィールドへと現れると、すぐさまその体が青い電子の粒子と化していく。

「そして、特殊召喚したドクトルを含む俺のフィールドのモンスターを素材にリンク召喚する。このリンク召喚は無効化されず、リンク召喚時にお前はカード効果を発動できない。
《魔弾の射手 ドクトル》1体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚!

撃ち抜け、LINK1《魔弾の射手 マックス》!」[攻1000]

フィールドへ現れたのは赤いスカーフを巻き、羽帽子を被った男。まるで悪魔のように変化してしまった左腕で、携える狙撃銃を構えた。

「マックスがリンク召喚成功時に効果を発動。
お前のフィールドの魔法、罠カードの数まで、デッキから魔弾モンスターを特殊召喚することが出来る」

「私の魔法と罠の数まで…!?」

梨沙のフィールドには《神碑の泉》、《ギャラクシー・ウェーブ》と1枚の伏せカード…合計で3枚のカードが存在していた。

「つまり、デッキから3体のモンスターを特殊召喚させてもらう。
舞台へ上がれ《魔弾の射手 カスパール》、《魔弾の射手 スター》、《魔弾の射手 ドクトル》!」[攻1200][攻1300][攻1400]

デッキから飛び出した3枚のカードを流れるようにデュエルディスクへと撃ち込む貫名。
独特な形状の銃を持った金髪の男性、踊り子のような風体の女性とドクトルを合わせた3人の射手が、一気にフィールドへと並び立つ。

「これで役者は揃った。
《時を裂く魔瞳》をスターの同列で発動。
その効果により、俺はドローフェイズで2枚のカードをドローできるようになり、通常召喚を1ターンに2回まで行るようになった。
代わりにデュエル中に手札からモンスター効果は使えなくなったがな」
手札:4枚→3枚

フィールドに現れた透き通った紫色の宝石が、周囲に魔力の渦を生み出す。
そして、その魔力がスターの手元へと集まるとそれが1発の弾丸にへと変質した。

「強力な効果ですね…。
でも、何故スターの手元に弾丸が……」

口頭で告げられた効果と、ソリッドビジョンの演出の相違に違和感を感じた梨沙。
デュエルディスクで、相手の盤面のカードを確認する前に、貫名がその違和感に答えた。

「《時を裂く魔瞳》の発動により、スターの効果の発動条件が満たされたからだ。
魔弾の射手は同じ縦列で魔法か罠が発動されることで、その効果を発動できる。
スターの効果を発動。デッキから新たな魔弾モンスター1体を特殊召喚する」

スターが衣服の中に隠していた小型の銃を取り出すと、魔力の宿った弾丸が装填された。

「それ以上展開はさせません!
手札から速攻魔法《凍てつく呪いの神碑》をスターを対象に発動します!
対象モンスターの効果をターン終了時まで無効にして、相手のデッキの上から3枚を除外します」
手札:1枚→0枚
貫名デッキ:26枚

梨沙が手をかざすとルーン文字が浮かび上がった。
瞬間、スターの体が凍りつき、動きを止めてしまう。

「さらに、《神碑の泉》の効果も発動です。
墓地から《神碑の穂先》、《凍てつく呪いの神碑》をデッキへ戻して2枚をドロー!」
手札:0枚→2枚

即座に使った手札のリソースを回復させた梨沙。
それを受け、貫名は自らの手札から罠カードを公開し始める。

「お前が魔法を撃ってくるなら、こちらは罠だ。
魔弾モンスターが存在することで、手札から罠発動《魔弾-デスペラード》!
《ゴーストリック・フェスティバル》を対象に破壊させてもらう」
手札:3枚→2枚

「手札から罠を…!?
「なら、こっちも罠です!
《ゴーストリック・オア・トリート》をカスパールを対象に発動です」

カスパールの眼前へと、まがまがしく眼を赤く光らせた狼男が涎を垂らしながら現れた。

「ゴーストリックリンクモンスターがいることで発動できます。
カスパールは効果が無効になり、攻撃が出来ず、エンドフェイズに裏側になります!」

「カスパールも無力化されたか…」

「ですけど、貫名さんが2000ライフを払えば、この効果はこのカード自体を再セットさせる効果に変更が出来ます!」

梨沙がわざわざ説明してきた無力化を回避する術。
だが、貫名のライフはすでに2000であり、それを支払ってしまえば貫名の敗北が決定する。

「ライフを自ら支払うことで、ライフを失う行為は、現実にダメージが発生しません。
つまり、貫名さんがここで残りライフと同じ2000ライフを払えば、これ以上痛い思いをせずに、デュエルを安全に終えることが出来ます!」

「……俺を殺さない…か」

梨沙は自らライフを支払うことで、安全にデュエルを終える選択を貫名へと課したのだ。
その選択を課された貫名は、まっすぐに梨沙を見つめ、自らの選択を示した。

「当然、俺はライフを払わない…。
だが、お前が決闘に持ち込む思いの強さは伝わった。
無力化されたのは、カスパールの効果だけだ。《魔弾-デスペラード》の効果は有効…フェスティバルを破壊する」

現れた狼男は、カスパールの持っていた銃を手で弾き飛ばしてしまう。
その瞬間に、カスパールの背後より、巨大な弾頭が放たれた。
それが梨沙のモンスターの前へと着弾すると、大きな爆発を起こし、空間を飾り付けていたフェスティバルの装飾が焼け落ちてしまう。

「まぁ、これを受け入れてくれる人でしたら、そもそもデュエル仕掛けてきたりなんかしませんよね」

「そういうことだ。
《魔弾の射手 ドクトル》で《FNo.0未来龍皇ホープ》を攻撃だ」[攻1400]

想定内と言わんばかりにふっと笑みを見せた梨沙に対して、貫名がバトルへと移った。
攻撃力の劣るドクトルがライフルをまっすぐに未来龍皇にへと構える。

「ダメージ計算前に《魔弾-クロス・ドミネーター》をホープを狙い発動。
効果を無効にし、その攻撃力と守備力を0にする」
手札:2枚→1枚

「やはり、無力化するカードを持ってましたね…!
(しかも、ダメージ計算前に使われたから《亜空間物質回送装置》でホープを逃がすこともできない…)」

迎撃しようとするホープに向かって、ライフルから魔弾が放たれた。
まっすぐに眼前まで飛んできた弾丸を弾くべくホープが剣を振るう。
しかし、弾丸はあり得ない軌道でそれを避け、あろうことかホープの背後に回り込み背中から打ち抜いてしまう。

「ホープ…」

ホープが破壊され、破片が飛び散る様を見ながら貫名が手札からさらなる追撃をかける。

「《魔弾-ネバ―・エンドルフィン》をスターを対象に発動。スターはこのターン攻守が倍となった。
そして、同列で発動したことでドクトルの効果も発動。
墓地から《魔弾-クロス・ドミネーター》を回収させてもらう」[攻2600]
手札:1枚→1枚

どこからかスターに薬が撃ち込まれる。
それによりスターの体は熱を帯び、氷が溶けていった。

「モンスターを残してくれる気はないみたいですね…」

「《魔弾の射手 スター》で、《神碑の翼ムニン》を攻撃」[攻2600]

衣装に隠していた無数の小型の銃で、スターが踊りながら発砲する。
小さな体で飛び回り、何とか躱そうとしていたムニンだったが、無数の銃弾に逃げ道を塞がれ、撃ち抜かれてしまった。

「《魔弾の射手 マックス》でダイレクトアタック」[攻1000]

赤いスカーフを靡かせながら、マックスがスコープで梨沙を捉える。
銃口を向けられ、息をのんだ瞬間……梨沙の左肩を掠めながら魔弾が静かに通り抜けた。

「うぐ……!」

梨沙LP:5000→4000


咄嗟に撃たれた肩を右手で抑える。
すると、じんわりと右手が濡れていく…。

しかし、どれだけ待てどもそこに痛みが訪れることはない。


「………」


ゆっくりと右手を肩から離す。
掌は、予想通り真っ赤に濡れていた。撃たれていたことは間違いない。

「(治ったと思ってたけど…まだダメだったか…)」

父親が自らを拒絶したショックで痛覚を失ってしまっていた梨沙。
そこから立ち直ったはずだが、体がまだそれに追いつけてはいなかった。

「その痛みを以てしても、お前の覚悟は変わらないのか?」

苦い顔をしながら自分の身に起こっていることをゆっくり認識している梨沙を、撃たれた痛みで呆然としていると受け取った貫名がそう聞いてきた。

「…こんなのへっちゃらですよ。
びっくりはしましたけど、腕は動きますからデュエルに支障ありません!」

自分の体がまるで自分のものではないかのような…気持ち悪さを感じながらも、何とかそれを払拭し、デュエルに意識を向ける梨沙

「(ケガしてるのに痛くない……慣れないな……。
でも、痛くないからデュエルには集中しやすい。
そうだ、いい所を考えなきゃ…!
でないと…またおかしくなっちゃう…)」

「撃たれても揺らがぬ決意か…。
素晴らしい…。間違いなくお前は、俺の価値を高める存在に値する。
俺はお前に勝てるのか?それともまだ及ぼないのか?
ぜひ、確かめさせてくれ!」

梨沙の症状を知り得るはずもない貫名は、そう呟き静かに目を輝かせ始める。

「俺はこれでターンエンドだ」

「では、このエンドフェイズに《ゴーストリック・オア・トリート》の効果で、貫名さんの《魔弾の射手 カスパール》は裏側になります」

狼男が足元から突如現れ、カスパールをひっくり返すとフィールドから姿が消えてしまう。



貫名-LP:2000
手札:1枚


 [ターン3]


「私のターン、ドロー!」
手札:3枚→2枚

つい先ほど、肩を撃ち抜かれた人間とは思えないほどに明るくデッキからカードを引き抜いた梨沙。

「速攻魔法《輝く炎の神碑》を発動です!
特殊召喚された《魔弾の射手 ドクトル》を対象に破壊して、相手のデッキを上から2枚除外します」
手札:3枚→2枚
貫名デッキ:24枚

ルーン文字が梨沙の手元で浮かび上がると、そこから眩く輝いた炎が放たれドクトルの体を燃やし破壊してしまう。

「《神碑の泉》の効果で、先ほど使った《輝く炎の神碑》を回収して、1枚ドロー!」
手札:2枚→3枚

「早々に使ったということは、他にルーンカードはなかったようだな」

「その代わりにいいカードが引けました。
モンスターをセットして、《ゴーストリック・ショット》発動です!
墓地から《ゴーストリック・フェスティバル》を特殊召喚して、セットしたモンスターを攻撃表示に変更しますよ」[攻0]
手札:3枚→1枚

魔法の発動と共に、再び閉鎖空間内を白いお化けが巡遊し、お祭りの装飾で彩っていく。

「セットしていたモンスターは《ゴーストリックの妖精》!
妖精のリバース時の効果も発動。墓地の《ゴーストリック・オア・トリート》を再セットして、貫名さんの《魔弾の射手 スター》を裏側にしちゃいます!」[攻900]

薄黄色の羽をぱたぱたさせながら、妖精がキャンディケインの杖を振るう。
するとスターの背後より1枚のカードが現れ、生き物かのようにスターを弾き飛ばしながら、梨沙のフィールドへとセットされた。

「さらに、妖精は1ターンに1度自分で裏側になれます。
裏側になった妖精を対象に、《亜空間物質回送装置》の効果を発動です。
妖精を一瞬だけ亜空間旅行させたことで、反転召喚が出来るようになりました。
《ゴーストリックの妖精》を反転召喚!」[攻900]

マントに身を包み姿を消した妖精、何も存在しないはずの虚空へと機械の怪しい光が照射され、空間が一瞬揺らぐ。
その揺らぎと共に、再び妖精が紫の髪を揺らしながら可愛らしくフィールドへと登場した。

「ターン制限のないリバース効果持ちのモンスター…。
まさか1ターンに2回もリバースしてくるとはな…!」

「この子達のいたずら心は、誰にも止められません!
リバースした妖精の効果を再び発動。今度は、墓地から《ゴーストリック・スケルトン》をセットです」

妖精がキャンディケインをくるくると虚空へと振るう。
すると、黒い靄と共に死神の格好をした骸骨がカタカタと舞い降りてきて、地面へと溶け込んでいくようにセットされ姿を消した。

「裏側になれるタン1の効果も、《亜空間物質回送装置》のおかげでリセットされています。妖精の効果を発動して、もう一度自分で裏側守備表示になります!」

可愛らしくウィンクした妖精の周囲に小さな蝶が無数に集まる。
妖精の姿が見えなくなると、蝶は霧散し、それと共に妖精も姿を消してしまう。

「最後にカードを1枚セットして、バトルフェイズに入ります。
神碑カードの制約で、バトルフェイズがスキップされますよ。
私はこれでターンエンドです!」
手札:1枚→0枚



梨沙-LP:4000
手札:0枚


 [ターン4]


「(フェスティバルを蘇生させ、オア・トリートを再セットした…。最低でも、モンスター1体は無力化されるか…。)
俺のターン、《時を裂く魔瞳》の効果により、通常のドローが2枚となる。
ドロー」
手札:1枚→3枚

デッキから2枚のカードを引き抜く貫名。その2枚目に引いたカードはほんの少しの間だけ鮮やかな紫色に光っていた。

「《魔弾の射手 スター》を反転召喚。
反転召喚時になにもなければ、スター1体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚!

再び撃ち抜け、LINK1《魔弾の射手 マックス》!」[攻1000]

前方に出現した正方形のゲートへと飛び込んだスター。
通り抜けた先へに現れるのはスターではない。赤いスカーフを靡かせた2体目のマックスが飛び出した。

「効果はさっき説明したな?
再び魔弾の展開効果を選択だ。お前のフィールドには全部で4枚の魔法、罠がある。空いているモンスターゾーンの最大数3体のモンスターを特殊召喚させてもらうぞ」

「させません!
罠発動、《ゴーストリック・オア・トリート》!対象はもちろん効果を発動している《魔弾の射手 マックス》です。
2000ライフ支払わなければ、効果は無効化され攻撃が出来なくなりますよ」

マックスの眼前へと赤い目の狼男が出現し、唸り声をあげる。
しかし、突如弾丸の連射音が発せられ、狼男が蜂の巣にされてしまう。

「な、なにが…?」

「手札からカウンター罠《魔弾-デッドマンズ・バースト》を発動させてもらった。
魔弾モンスターが存在する時に、相手の魔法か罠の発動を無効にし破壊するカードだ」
手札:3枚→2枚

撃ち抜かれてしまった狼男はそのまま塵となって消えていく。
それにより、マックスが上空に向けて銃撃を行った。

「まさか手札からカウンター罠を使われるなんて…」

「破壊したが、特殊召喚数に変化はない。
デッキより《魔弾の射手 ドクトル》、《魔弾の射手 キッド》、《魔弾の射手 ザミエル》の3体を特殊召喚だ!」[攻1400][攻1600][攻2500]

ドクトルに加え、カウボーイハットを被った男性、さらに朱色に染まった翼を広げ2丁の銃を構えた悪魔がフィールドにへと立ち並んだ。

「新しいモンスターが二体…」

新たな射手に気を取られている内に、既存の射手が再び舞台へ上がる。

「《魔弾の射手 カスパール》を反転召喚」

「ここしかない!
罠発動《ゴーストリック・パニック》!
私のフィールドのセットモンスター2体を対象に発動。それらを表側守備表示にし、ゴーストリックなら相手モンスターをその数まで裏側守備表示へと変更できます!」

「なに…」

梨沙のフィールドへと伏せられた2体のカードが勢い良く回転すると、そこから妖精とスケルトンがフィールドへと現れる。
2体がキャンディケインと鎌のそれぞれを振るうと、貫名のフィールドのカスパールとドクトルがその場に倒れ、フィールドから姿を消す。

「当然2体ともゴーストリックです。
私はカスパールとドクトルを裏側にして、リバースした妖精とスケルトンの効果もそれぞれ発動します!
スケルトンの効果で、貫名さんのデッキトップから2枚のカードを裏側で除外。
妖精の効果で、墓地から《ゴーストリック・ショット》をセットして、《魔弾の悪魔 ザミエル》を裏側に変更!」[守1000][守1100]
貫名デッキ:17枚

スケルトンが貫名の元までゆらりと近づくと鎌を振るう。
それで刈り取られたのはデッキトップの2枚のカード。そして、その後ろでキャンディケインを振るった妖精の元より、黄色い星の雨が悪魔の元へと向かって放たれる。
悪魔はそれらを見て、即座に背後へ飛び退いたかと思うとそのまま舞台から姿を消してしまった。

「ちっ…執拗に裏側を狙ってくる…(伏せに位置を合わせていたドクトルもろとも裏側にされてしまったな…)。
なら、《魔弾-ダンシング・ニードル》をお前の墓地の《ゴーストリックの駄天使》2体と《ゴーストリック・サキュバス》を対象に発動。
それら3体を除外させてもらう!」
手札:2枚→1枚

「うぐ…駄天使を除外ですか…」

不意に放たれた3つの銃声。
梨沙の墓地から3枚のカードが飛び出し、それらには風穴が開けられていた。

「絶妙に痛い所を狙われましたね…」

「こちらも同じ状況だ。
《魔弾の射手 キッド》の同列で罠が発動されたことにより効果を発動。
手札の《魔弾-クロス・ドミネーター》を捨て、デッキからカードを2枚ドローする」
手札:1枚→2枚

手札の妨害札を捨て、手札交換を行った貫名。
ドローした2枚のカードを確認した彼は、フィールドの2体のリンクモンスターを手に取った。

「俺は《魔弾の射手 マックス》2体でリンクマーカーをセット。
リンク召喚!

撃ち抜け、LINK2《照耀の光霊使いライナ》!」[攻1850]

2体の猟師が、リンクのゲートへと飛び込む。
輝かしい光と共に白髪の少女が、魔法の杖を振るいながらフィールドへと顕現した。

「《死を謳う魔瞳》を発動。これにより、モンスター同士の戦闘でお前に発生するダメージは倍となり、俺のモンスターは全員2回までモンスターに攻撃することが可能になった」

「な、全員が2回攻撃…!?」

フィールドの中心へ出現した深紅の宝石が、周囲に魔力の渦を生み出す事で、貫名のフィールドのキッドとライナは赤いオーラを帯び始める。

「そのデッキで場にモンスターを残せないのは痛手だろうからな。
バトルフェイズ、《魔弾の射手 キッド》で《ゴーストリックの妖精》を攻撃」[攻1600]

「その攻撃宣言時に《ゴーストリック・フェスティバル》をリリースして効果を発動します!
デッキから《ゴーストリック・キョンシー》を裏側守備表で特殊召喚です」[守1800]

装飾がたくさんのお化けたちによって片づけられている間に、こっそりぴょんぴょん跳ねながら《ゴーストリック・キョンシー》がフィールドで裏側になった。

「狙いは変わらない。
キッドの攻撃を続行だ」

キッドが左手で構えた銃で発砲する。
複雑な軌道を描いた魔弾が、妖精の羽を貫通し、それに慌てる妖精の体を撃ち抜き破壊していく。

「2回目の攻撃だ。キッドで《ゴーストリック・スケルトン》を攻撃」[攻1600]

カタカタと震えるスケルトンの脳天へ、右手で構えられた魔弾の銃撃が襲い掛かり破壊していく。

「《照耀の光霊使いライナ》で、先ほど呼び出されたセットモンスターを攻撃する」[攻1850]

ライナが杖を振るうと、セットモンスターの元へと眩い光が照射される。

「50足りませんでしたね…。
でも、リバースした《ゴーストリック・キョンシー》の効果で、フィールドのゴーストリックの数以下のレベルのゴーストリック…レベル1の《ゴーストリック・スペクター》を手札へ加えることができます!」
手札:0枚→1枚

光に耐えきれずにぴょんと飛び出したキョンシーだったが、照らされた光がビームに変化しその体を爆散させた。

「自分のゴーストリックが破壊されたことで、手札の《ゴーストリック・スペクター》の効果を使います!
このカードを裏側守備表示で特殊召喚して、デッキから1枚ドロー!」[守0]
手札:1枚→1枚

光が差し込みキョンシーを破壊した場所へと、ふわふわと布を被ったお化けが降り立つ。ぺたんと着地したスペクターは、眩しそうに目をばってんにしたかと思うと、その場で破壊されてしまう。

「場にモンスターは残さない。
ライナで2回目の攻撃だ、特殊召喚された《ゴーストリック・スペクター》を攻撃する」

「一掃…されちゃいましたね…」

「手札は1枚増えたようだが、お前の動きを見る限り1枚から大量展開ができるタイプのデッキではない。残された手札と次のドローで、いったい何ができる?
何かができるとしても…当然、俺もそれを黙って見届けるつもりもない…。
ターンエンドだ」



貫名-LP:2000
手札:1枚


 [ターン5]


「確かに私のデッキは、1枚のカードでたくさんモンスターを並べるような事は苦手です…。でも、だからって諦めるつもりはありません。
デュエルは何が起こるか分かりません。ドローしたカード次第で、私達の未来が決まるんです!
私のターン、ドロー!」
手札:1枚→2枚

逆転の1手をかけ、勢いよくデッキからカードを引き抜いた梨沙。
それを確認するとにっと笑みを見せると、それを即座に発動する。

「いい引きです!
速攻魔法《神碑の穂先》を発動!デッキから神碑カード1枚を手札に加え、貫名さんのデッキを上から1枚除外します!」
手札:2枚→1枚

「黙って見届けるつもりはないと言ったはずだ」

梨沙の手元へとルーン文字が浮かび上がる。
しかし、その発動に対し貫名が手札の1枚を切った。

「手札からカウンター罠《魔弾-デッドマンズ・バースト》発動!
お前の《神碑の穂先》の発動を無効に破壊する。発動を無効にしたことで、《神碑の泉》でのドローもさせはしない」
手札:1枚→0枚

「くっ…」

手元に浮かび上がった文字が、貫名の側から放たれたガトリングガンによって、かき消されてしまう。

「裏野、よく戦ったが、残されたカードで次のターンの俺の攻撃を防ぎきることは出来ないはずだ。
お前の決闘への想い…それは信念に基づいた立派なものだ。お前と戦えたことを俺は誇りに思う…」

梨沙が最後にドローしたカードを無力化したことで、自らの勝利を確信した貫名。
そんな彼は梨沙が、強敵であったことを認め、賞賛の言葉を送っている。

「きっと褒めてくれてるんですよね。
素直に喜んでいいのかは分かりませんが、確かにこのまま貫名さんにターンが渡ったら、そのまま負けてしまうと思います。

…でも、これで貫名さんが私の展開を止める術もなくなったはずです!!」

「…なに?」

梨沙はデュエルディスクの画面に指で触れる。
それにより、伏せられていたカードが表になった。

「本命はこっちです。
伏せていた《ゴーストリック・ショット》を発動します!」

「妖精で伏せていた蘇生カードか……。
だが、蘇生候補の駄天使とサキュバスは既に除外している。下級モンスターを蘇生したところでいったい何になる」

「下級モンスターでも、私のデッキならそれを生かせます。
墓地からレベル1《ゴーストリック・スペクター》を特殊召喚です!」[守0]

地面から床をすり抜けて、スペクターがふわりとフィールドへと現れた。

「さらに、《ゴーストリック・フロスト》を召喚!」[攻800]
手札:1枚→0枚

スペクターの隣へ、大きな雪玉が降ってきた。
しばらくすると、その中から水色の服にカラフルなマフラーを巻いた、小さな雪だるまのモンスター《ゴーストリック・フロスト》が姿を現す。

「レベル1が2体…エクシーズか…」

「正解です!
レベル1の《ゴーストリック・スペクター》と《ゴーストリック・フロスト》の2体でオーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!

来て、ランク1《ゴーストリック・デュラハン》!」[攻1200]

フィールドへ駈け込んできたのは、馬に跨った首なしの騎士。
周囲を2つの青白い人魂を漂わせながら、剣を掲げた。

「この瞬間に、《ギャラクシー・ウェーブ》の効果です!
貫名さんに500ダメージ!」

「ぐ…」

貫名LP:2000→1500


デュラハンが掲げた剣を貫名へと向けると、周囲から小さな星屑が貫名の元へと勢いよく放たれる。

「だが…3体目の駄天使が居たとしても、お前がエクシーズ召喚できるのは精々あと1回。それでは、俺のライフを削り取るには至らないはずだ…!」

手札が既に尽き、伏せカードも残っていない梨沙。
ライフを削りきることは出来ないとそう言い切る貫名に向けて、梨沙はにこりとほほ笑んだ。

「それはどうでしょう?」

「バカな…エクシーズモンスター1体で後3回もエクシーズ召喚をするつもりなのか…?」

「まずは、貫名さんの予想通りの3体目です!
《ゴーストリック・デュラハン》1体で、オーバーレイネットワークを再構築!
エクシーズ・チェンジ!

来て、ランク4《ゴーストリックの駄天使》!」[守2500]

貫名の想定通り3体目の駄天使が、エクシーズ召喚された。
大きなピンクと紫の継ぎ接ぎハートがクッションとなり、落下してきた駄天使を受け止める。
その瞬間、クッションのハートは風船のように弾け、中に入っていた無数の星屑が貫名へと襲い掛かっていく。

「(虚勢でなければバーンはここまでのはずだ…)」

貫名LP:1500→1000


「駄天使の効果を発動。
オーバーレイユニットを1つ使い、デッキから《ゴーストリック・リフォーム》を手札へ加えます。
トリック・プレゼント!」
手札:0枚→1枚

いつもの流れで駄天使が周囲を漂う継ぎ接ぎのハートを指先で、くるくると回転させ紡がれた糸を解いていく。
駄天使が回転させる内にカードとなったそれを宙へと放り、梨沙がキャッチする。

「ありがと駄天使!
この瞬間、先ほどオーバーレイユニットとして取り除かれたデュラハンの効果を発動です!墓地のゴーストリックカード、《ゴーストリック・ショット》を手札へ加えます。
トリック・リバイバル!」
手札:1枚→2枚

青白い人魂が地面より出でだすと、それは梨沙の手札へ1枚のカードとなった収められた。
貫名は即座に回収されたカードのテキストを自身のデュエルディスク上でチェックする。

「(同名の発動制限はある…)
回収しても、このターンには使えない。悪あがきだ」

「駄天使が居たらそっちを回収してたんですけど、除外されちゃったのでこっちです。
まだまだ終わりませんよ!駄天使のさらなる効果を発動。手札の《ゴーストリック・リフォーム》を自身のオーバーレイユニットにすることが出来ます。
駄天使、お願いね!
コレクト・パッチワーク!」
手札:2枚→1枚

手札を投げ渡すと、両手でパンッとカードを挟み込んだ駄天使。
カードを挟んだ手をそっと開くと、そこから継ぎ接ぎのハートがぽんっと現れ、宙へ浮かびだす。

「(特殊勝利には素材が10必要なはずだ…)
なんだ?何をしようとしている…」

梨沙の展開の終着点が理解しきれない貫名。
そんな彼を置いて、梨沙はさらにカードを使っていく。

「《亜空間物質回送装置》の効果です。
駄天使には一瞬亜空間旅行を楽しんでもらいます!」

機械が怪しい光を駄天使に照射すると、少し驚いた顔になった駄天使が揺らぐ。

「これで、駄天使のオーバーレイユニットはすべて墓地へ送られました。
墓地から罠発動、《ゴーストリック・リフォーム》!
駄天使を素材にゴーストリックエクシーズモンスターをエクシーズ召喚できます!」

「やはり、狙いは《ギャラクシー・ウェーブ》でのバーンか!?」

「500ダメージなら、死んだりしないはずですから!
駄天使1体でオーバーレイネットワークを再構築!
ゴーストリック・チェンジ!

来て、ランク3《ゴーストリック・アルカード》!」[攻1800]

エクシーズ召喚の爆発と共に、白い顔の吸血鬼のモンスターがフィールドへと華麗に降り立つ。彼がマントをバサッと広げると、中に潜んでいた1匹の蝙蝠が貫名の顔面目掛けて突進していく。

「ぐ…!」

貫名LP:1000→500


その衝突で表情を強張らせた貫名。
本当にライフを削りきられてしまうかもしれない状況に、焦っている。

「(駄天使を除外していなければ、回収されてライフは0にされていた…。
だが、あいつのあの表情……)」

貫名が見遣る梨沙の表情は、勝利を確信しているそれでしかなかった。
得意げな表情の彼女は、実に楽し気にデュエルへと興じている。
ダメージが現実のものとなり、命のかかったデュエルであることなど感じさせないほどに。

「(これが…格上か…)」

「フィナーレです!
貫名さんが先ほどのターンに、2体以上EXデッキからモンスターを特殊召喚していることにより、私はこのカードをアルカードに重ねて呼び出すことが出来ます…!」

そう告げ、梨沙は開かれたEXデッキより最後を飾るモンスターを手に取った。

「《ゴーストリック・アルカード》でオーバーレイネットワークを再構築!
エクシーズ・チェンジ!

降りそそぐ厄災、ランク12《厄災の星ティ・フォン》!」[攻2900]

フィールドへ降り立ったのは機械質な体を持った巨大な人型の存在。
黒と紫を基調とした体には、不気味に怪しく光る肩の赤い部分がまるで目のようにも見える異質な姿をしており、背中から紫色にうごめく蛇のような物体が無数に見え隠れし始めている。

「この瞬間、《ギャラクシー・ウェーブ》の効果です!
エクシーズ召喚に成功したことで、貫名さんへ500のダメージを与えます!」

貫名は両腕をだらんと下ろすと、静かに梨沙を見つめ呟いた。

「生かされ、負けるとはな………。
お前と決闘出来たことは、俺にとってとても大きな価値を生んだ。
礼を言っておく」

ティ・フォンが右腕を高く掲げると、その周囲へ怪しいオーラをまとった星屑が集まる。掲げた腕が振り下ろされると同時に、無数の星屑が貫名の元へ雨のように降り注がれ、彼の体に小さくも確かな痛みが連続して伝えられた。

貫名LP:500→0


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