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OtP22 Lindwurm 作:Ales





---
若者の人間離れ
---






 高海遊大と名乗った少年と対峙すべく、遊貴はデュエルスペースへと向かう。

 「高海さん、一年生ですが既に校内でもトップクラスの実力を持っています。」

 という詩織の言葉を聞いた遊貴であるが、正直なところ勝つ気はさらさらない。ただ戦略だけで押し通した決勝戦から‘‘修正’’するだけでいい、とそう考えていた。

 (戦略に寄せすぎたから……構築の方でもバランス取らないと、遊希さんには勝てない……)

 遊貴の知る‘‘天都遊希’’は、それこそ全力を出し切ってようやく届くかどうかといった存在である。小細工を弄して勝てる相手ではない。

 (デッキは……久しぶりにこれ、使おうかな。)

 ひと組のデッキを決定してポーチから取り出すと、それをデュエルディスクにセットする。その作業が終わると、既に構えていた遊大と目が合った。

 「準備、できました。」
 「こっちも大丈夫だよ。宮戸さん、よろしく。」


 「「デュエル!」」


1st.Turn
 TP:遊大

遊大 LP:8000 D:35 H:5 G:0 Ex:15 V:0
 F:None

遊貴 LP:8000 D:35 H:5 G:0 Ex:15 V:0
 F:None


 「俺のターン、まずは《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ペンデュラムゾーンにセット。そして魔法カード《デュエリスト・アドベント》を発動。どちらかのペンデュラムゾーンにカードが存在する場合、デッキから「ペンデュラム」と名の付いたペンデュラムモンスターか「ペンデュラム」魔法・罠カード1枚を手札に加える。《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》を手札に加えてそのままペンデュラムゾーンにセット!」
 「【オッドアイズ】……?」

 手札と対戦相手の表情を交互に眺めていた遊貴が、不意に顔を上げて遊大を見据えた。赤い髪に赤と緑の眼は、まさしく彼がペンデュラムゾーンにセットした《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に酷似している。

 (まあ、だから何、って話だけど。)

 遊貴にとって問題となり得るのは、立て続けに高攻撃力モンスターを召喚されることである。展開の容易なペンデュラムモンスターであるという事、充実したサポートカードでサーチやリクルートが可能な事、戦闘補助もある程度はこなせるカードも揃っている事……とやりづらい相手である事は事実である。

 「そんなに変かな?俺としては、このデッキが一番しっくりくるんだけど。」
 「ん……やりにくいな、と思っただけ。《天空の虹彩》がなければどうとでもなるけど、まさか握ってません、って事はないよね。」

 まるで対戦相手同士とは思えない会話にのまれそうになる遊大だが、すぐに気を引き締めて返した。

 「それを聞いてくる、って事はそっちの手札には《タイフーン》はないみたいだね。」
 「むぅ……ごもっとも。」

 《天空の虹彩》は、特定のカテゴリのカードを効果の対象にさせない効果を持つフィールド魔法であり、「オッドアイズ」も対象に含まれる。この効果はモンスターゾーンのみならずペンデュラムゾーンも有効なため、もし「オッドアイズ」ペンデュラムモンスターをセットするなら、こちらを先に出すのが定石である。というのも、相手フィールド上に魔法・罠カードが2枚以上存在する場合《タイフーン》は手札から発動可能であり、2枚のカードをセットしたところでこのカードを発動されれば、展開に影響を及ぼす可能性があるのだ。

 「うん、じゃあ《天空の虹彩》を発動。貴重なご意見、ありがとうございます。」
 「何か苛立った。一発殴っていいかな……ズシンで。」
 「勿論。出せたら遠慮なくどうぞ……っと、君、自分もペースに乗せるの上手いね。」
 「それほどでもない……と謙虚な態度を取るのが人気の秘訣。」

 どこぞのナイトが使っていそうな台詞を吐いてみたものの、どうやら遊大には伝わっていないようである。頭に疑問符を浮かべ、数瞬の後にそれらを取り払った少年は、手札のカードをフィールドに置いた。

 「手札1枚を捨てて《ドラゴン・目覚めの旋律》を発動。デッキから攻撃力3000以上で守備力2500以下のドラゴン族モンスターを2体まで手札に加える。《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》と《ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン》の2体をサーチ。墓地の《覇王眷竜ダークヴルム》の効果、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを特殊召喚できる。」



 「……っ!?」


 フィールドに黒竜が現れたした瞬間、まるで真夏の陽光が雲間から射したかのような閃光が、部屋全体を覆った。

 「ん……?」

 何が起こったのか、当事者である遊大本人も把握できていない。普段から【オッドアイズ】デッキを使用していてダークヴルムを出す事はあったが、闇色ならばまだしも光に包まれる事はなかった。

 (というか、光源はあの子?いや、でも精霊とかそういう類いの力は全く感じなかった。となればただの太陽光?それにしては強すぎる気がする。それに……)

 今は冬である。寒気を入れさせぬとばかりにカーテンは締め切られており、雲間があろうがなかろうが、そもそも陽光が入りさえしないのだ。

 「発動、ない……続けて……」

 しかし、遊貴の態度は一瞬にして硬化していた。



 「うん。特殊召喚に成功したダークヴルムの効果、デッキから《覇王門零》を手札に加える。《天空の虹彩》の効果を発動、ペンデュラム・ドラゴンを破壊してデッキから《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》をサーチ。フィールドの「オッドアイズ」カードが破壊されたためアークペンデュラム・ドラゴンの効果を発動、デッキから2体目のペンデュラム・ドラゴンを特殊召喚。ミラージュ・ドラゴンを通常召喚してドラゴン族ペンデュラムモンスターを含む2体のモンスターをリリース、《ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を特殊召喚。」
 「……」

 フィールド上の魔法・罠カード1枚をコストに相手の魔法・罠カードを無効にする上、戦闘においては攻撃力6000まで上昇するゴッドアイズは、名前に「オッドアイズ」が付かないためカテゴリサポートは受けられないものの、制圧力は比肩するものはそう多くないと言えるほどに高い。

 「まだまだ。空いたペンデュラムゾーンにファンタズマ・ドラゴンをセット、これでレベル1から7のモンスターがペンデュラム召喚可能になったけど……ペンデュラム召喚、良いかな?」
 「どうぞ……」


 言葉を確認した遊大は、エクストラデッキのカード数枚を一気に引き抜く。


 ‘‘揺れろ魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク!’’


 「ペンデュラム召喚!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》2体、《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》!」

 弧動に応じて、3体の竜が戦場へと姿を現した。

 「レベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》2体をオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。」


 ‘‘二色の眼持つ竜よ、その魂を極限に晒し絶対零度の爪牙で敵を撃て!’’


 「エクシーズ召喚、ランク7。《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》!」

 「…………どうぞ。」

 遊大が快調に展開するのとは対称的に、遊貴は展開が進んでも同じ言葉を呟くのみであり、まるで心ここにあらず、といった体である。


 「じゃあもう1体。闇属性ペンデュラムモンスターの《覇王眷竜ダークヴルム》と《オッドアイズ・ミラージュ・ドラゴン》をリリースして融合召喚!」

 ‘‘その毒は全てを幻惑する。その魂は何物をも魅了する美しき花。紫毒の魔竜よ、あらゆるものを惑わし崩せ!’’

 「融合召喚、《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》!」
 「どうぞ…………」
 「んー……手札も使えないし、召喚権もペンデュラム召喚も使ったから、このままターンエンド、なんだけど。俺、何かしたかな?」
 「別に何も……」

 遊大からすれば、ダークヴルムをはじめ普通に展開しただけである。立て続けに展開されて苛立つ気持ちはわからないでもないが、そこでそれまでのトラッシュトークを崩していては、まるでデッキが機能不全に陥る、と言っているようなものである。

 (まあ、この年頃の女の子がそんなに器用なのも不自然なんだけどね……)

 表情を窺うと、若干瞳孔が開いて見えなくもない。遊貴の変化はその程度であった。




2nd.Turn
 TP:遊貴

遊大 LP:8000 D:28 H:1 G:2 Ex:14(+2) V:0
 F:覇王眷竜スターヴ・ヴェノム ATK:2800
  ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン ATK:3000
  オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(ORU:2) ATK:2500
 (Scale:0-8)
  オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン
  オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン
  天空の虹彩

遊貴 LP:8000 D:35 H:5 G:0 Ex:15 V:0
 F:None


 (違う……この人は、違う。)

 思わぬところで「覇王」モンスターを見た衝動から記憶がフラッシュバックし、咄嗟に迎撃態勢を取ってしまった遊貴は、どうやら容姿が変わった事には誰も気付いていないらしき事にひとまず安堵し、しかし次の瞬間にはまた警戒態勢に入っていた。



 (でももし、そうだとしたら私は……)

 そんな最悪の考えが、頭をよぎる。




 この人を、討たないといけない―


 高海遊大という少年が、天都遊希の恋人だという話は綾香たちから聞いて把握している。そして対峙してみて、ただならぬ雰囲気の持ち主である、と察していた。


 (そうか。そういえば、あの時……)

 不意に夏の記憶を思い起こした。親友・星崎美夏とその師匠・陽川千夏が行方不明になった時、天都遊希は‘‘力’’を行使した。精霊の竜となって京都の空を駆け、彼女らの所在を特定して救援に駆けつけたのだ。尤もその時は美夏の活躍により事なきを得たのだが、遊貴の中に遊貴という存在が明らかに異質であり、また異質であるからこそ妙な親近感を持ってしまうのは事実である。


 (となると、遊希さんが‘‘そっち側’’だと知って接触したか、それとも共犯か……後者は最悪。どうすれば良いかわからないから忘れよう。)

 何処までいっても、宮戸遊貴は人間である。人間にできる事以上の事は出来ないのだ。それを理解した上で、最良の結果を追求している。

 (でも、最悪の事態は避けないと。リリーゼ、モード……行くよ!)

 頭の中にふたりの少女を想い浮かべ、彼女らに声を掛ける。


 へぇ……随分久しぶりじゃないの―
 好きにしなさい……―



 顔を上げて、改めて目の前の少年と対峙する。

 「私のターン……」



---Chrono Diver -‘‘Lindwurm’’╲system -Chrono Chain╲...



 時間軸を強引にずらす。分岐し、選択されず霧散した世界の断片を、強引に結合して世界自体を強引に修正する。


 ---System -‘‘Rulemaker’’...

====Quantize Overlay

.
.

 ===Memories
Physical Response   00 Passed
Emotional Response   00 Passed
Distortion Control   00 Forced Pass
Conflict Control   00 Forced Pass

 ===Materials
Decks   ...╲Mechphantom_ƒ.deck Forced Pass
Extra Decks   ... ╲Mechphantom_ƒ.exd Forced Pass
 .
 .
 .

 ---System -‘‘Rulemaker’’
   Re:Loaded Done.

----Quantize End



 「ん……?」

 微細な違和感を感じたのか、眼前の少年が小さく声を上げる。以前のときとは違い、今回はデッキを書き換えただけである。後出しじゃんけんは勿論ルール違反であるが、生憎この宮戸遊貴は落としてはいけない戦いにルール遵守を持ち込むほど正々堂々としていない。

 「んー?っと、ドローまだだった。ドロー、メインフェイズ。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、《太陽風帆船》は攻撃力・守備力を半分にして特殊召喚できる。更に1000ライフポイント払って魔法カード《簡易融合》を発動。はい、チェーンどうぞ。」


遊貴 LP:8000 → 7000


 いつもの流れである。ここでチェーンを促したのは、この《簡易融合》を通した場合、強力な除去効果とパーミッション効果を持つ《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》まで一直線に道が通じているからである。融合召喚されるのは当然《重装機甲 パンツァードラゴン》であり、インフィニティの脅威を知っていれば確実に止める場面である。

 「そうだね。ゴッドアイズの効果発動、フィールドのファンタズマ・ドラゴンを墓地に送ってその効果を無効にする。」
 「ん、じゃあ手札の《海龍姫モード》を召喚。更に《炎龍姫リリーゼ》は、自分フィールド上に「海龍姫モード」または「レーヴァテイン」モンスターが存在する場合、手札または墓地から特殊召喚できる。レベル5の《太陽風帆船》にレベル3の《海龍姫モード》をチューニング。」


 ‘‘万象を侵略する無限の海龍、深淵より来たりて全てを崩壊せよ!’’


 「シンクロ召喚、レベル8。《海龍リントヴルム》!」

 「えっ……?」


 遊貴のフィールドに降臨した海竜を見て、遊大は意せず声を上げた。それもそのはず、この《海龍リントヴルム》も、そのチューナーとなった《海龍姫モード》も、また共に召喚された《炎龍姫リリーゼ》も、遊大の記憶に存在しないカードである。当事者の遊貴も同じカードが2枚ある可能性は全くゼロであると言い切れるこのカード群は転じて、遊貴がこのデュエルに並々ならぬ覚悟を持って臨んでいる証左でもある。

 「《海龍リントヴルム》の効果、1ターンに1度、墓地のモンスター1体をこのカードに装備できる。墓地の《太陽風帆船》を装備。更にリントヴルムのもうひとつの効果、このカードに装備されたカード1枚をリリースして、フィールドの全てのカードの効果を無効にする。‘‘デコヒーレンス・ヴァニッシャー’’!」
 「全てのカードの効果を無効!?」

 海龍から発せられる波動に、全ての動きがまるで鈍化しているかのように緩慢になる。

 「これは……厳しいな。」

 リントヴルムの無効化は永続である。遊大のフィールドでは特に、効果耐性を付与する《天空の虹彩》と後続を展開できる《オッドアイズ・アークペンデュラム・ドラゴン》の2枚が戦線を支えている。これらを同時に無効にされるのは想定外であり、少々のやりづらさを感じるのは無理からぬ事である。もっとも、《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》の墓地での効果は有効なため、致命的な一撃を受ける事はないだろう、と考えるのもまた無理からぬ事であるが。

 「そう……それは好都合。手札の《調和の宝札》を発動、攻撃力1000以下のチューナー1体を捨てて2枚ドローする。《亡龍の戦慄-デストルドー》を捨てて2枚ドロー。墓地に送ったデスドルドーの効果を発動。ライフ半分を払って、フィールドのレベル6以下のモンスターを選択して特殊召喚する。《炎龍姫リリーゼ》を選択して特殊召喚、この効果で特殊召喚したデスドルドーのレベルは選択したモンスターの効果分下がる。」


遊貴 LP:7000 → 3500

亡龍の戦慄-デスドルドー 星 7→4

 「手札の《ドッペル・ウォリアー》の効果を発動、墓地からモンスターが特殊召喚された場合に、このカードを手札から特殊召喚できる。レベル2の《ドッペル・ウォリアー》にレベル4となった《亡龍の戦慄-デスドルドー》をチューニング。シンクロ召喚、レベル6。《瑚之龍》!シンクロ素材として墓地に送られた《ドッペル・ウォリアー》の効果、《ドッペル・トークン》2体を生成。更にレベル1の《ドッペル・ウォリアー》2体に、レベル6の《瑚之龍》をチューニング。シンクロ召喚、レベル7。《シューティング・ライザー・ドラゴン》!シンクロ召喚された《瑚之龍》が墓地に送られたため効果発動、デッキから1枚ドロー。更にシンクロ召喚に成功したライザーの効果、このカードよりレベルの低いモンスター1体をデッキから墓地に送り、このカードのレベルをその数だけ下げる。レベル1の《ジェット・シンクロン》を墓地に送って、レベルを1つ下げる。」

シューティング・ライザー・ドラゴン 星7 → 6

 「墓地の《ジェット・シンクロン》の効果、手札1枚を捨てて墓地から特殊召喚できる。手札の《幻獣機オライオン》を捨てて特殊召喚、墓地に送られたオライオンの効果を発動。《幻獣機トークン》を生成。レベル3の《幻獣機トークン》とレベル1の《ドッペルトークン》に、レベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング。シンクロ召喚、レベル5。《ジェット・ウォリアー》!シンクロ召喚に成功した《ジェット・ウォリアー》の効果、相手フィールド上のカード1枚を手札に戻す。《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を選択。」
 「はい。」

 全てのカードの効果が一様に無効化されている以上、召喚条件の込み入ったカードやフィールド以外で効果を発動するモンスターが選択されるのは至極当然の事である。長々と展開しながらも、遊貴は尚も展開を続けた。

 「レベル5の《ジェット・ウォリアー》にレベル3の《炎龍姫リリーゼ》をチューニング。シンクロ召喚、レベル8。《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》!」
 「え?うっわー……」

 遊大の口から、少々間の抜けた声が漏れた。高レベルモンスターに対しては無敵と言っても過言でないこのモンスターは、上級モンスター主体となる「オッドアイズ」にはこの上なく刺さるのだ。

 「あとは……魔法カード《貪欲な壺》を発動。《シューティング・ライザー・ドラゴン》《瑚之龍》《ジェット・ウォリアー》《太陽風帆船》《海龍姫モード》の5枚をデッキに戻してシャッフル、2枚ドロー。《ワン・フォー・ワン》を発動。手札の《水晶機巧-ローズニクス》を捨ててデッキから《幻獣機ウォーブラン》を特殊召喚。墓地に送ったローズニクスの効果、自身を除外して《水晶機巧トークン》1体を生成。レベル1の《水晶機巧トークン》に、レベル1の《幻獣機ウォーブラン》をチューニング。シンクロ召喚、レベル2。《天輪の双星道士》。双星道士の効果、チューナー以外のレベル2のモンスターを手札・墓地から4体まで特殊召喚できる。」
 「その代わり、効果は無効、このターンのエクストラデッキからの特殊召喚はシンクロモンスターに限定される、だったよね。それ、デメリットなのかな?」

 簡単に大型モンスターを展開し、尚も続くソリティアにやや呆れ気味の遊大が後を継ぎつつ漏らした。

 「知らない……墓地の《ドッペル・ウォリアー》を特殊召喚、レベル2の《ドッペル・ウォリアー》にレベル2の《天輪の双星道士》をチューニング。シンクロ召喚、レベル4。《水晶機巧-クオンダム》!」

 言葉通り知った事ではないとばかりに、何度目になるかわからないシンクロチューナーが登場した。

 「ドッペルの効果で《ドッペル・トークン》2体を再び生成、レベル1の《ドッペル・トークン》にレベル4の《水晶機巧-クオンダム》をチューニング。シンクロ召喚、レベル5。《源竜星-ボウテンコウ》!ボウテンコウの効果、デッキから《光竜星-リフン》をサーチ。レベル1の《ドッペルトークン》に、レベル5の《源竜星-ボウテンコウ》をチューニング。シンクロ召喚、レベル6。《瑚之龍》。フィールドを離れたボウテンコウの効果、デッキから《地竜星-ヘイカン》を特殊召喚。《瑚之龍》の効果、手札1枚を捨ててフィールドのカード1枚を破壊する。《ゴッドアイズ・ファントム・ドラゴン》を選択。」
 「流石、‘‘最強’’だけはあるね……」

 遊大にしても、自信がなかった訳ではない。万全とも言えるフィールドを先攻初手で強いたつもりであった。だが、そんな雄大を待っていたのはそれを上回る展開と壊滅した盤面であった。


 「私より強い人なんて、いくらでもいるから。レベル3の《地竜星-ヘイカン》に、レベル6の《瑚之龍》をチューニング。シンクロ召喚、レベル9。《灼銀の機竜》!機竜の効果、墓地の《光竜星-リフン》を除外して残った……《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》を破壊!」


 紫独の竜が炎熱に焼かれる姿を妙に深刻な面持ちで見ていた遊貴は、ソリッドビジョン上から姿が完全に消滅したのを見て、軽く息を吐いて続けた。


 「メインフェイズは終了だけど……私の勝ち、で良いかな?」

 遊貴の最終的なフィールドは《海龍リントヴルム》、《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》、《灼眼の機龍》の3体であるが、その攻撃力の合計は8200である。シンクロモンスターを続々と展開し、余すところなく効果を使い切った遊貴のデッキは、入学当初使用していたエクシーズ召喚やトークンを利用した《始祖竜ワイアーム》の融合召喚など、様々な召喚法を複合した【カラクリ幻獣機】からほとんどの要素を排除し、シンクロ召喚にのみ特化し、更には竜星や水晶機巧をタッチした、全く新たな【幻獣機】えと姿を変えていたのである。

 「グッドゲーム、で良いのかな?次があったら負けないよ。」
 「ん……バトルフェイズ、全モンスターでダイレクトアタック!」


海龍リントヴルム ATK:2500
灼眼の機龍 ATK:2700
クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン ATK:3000


 遊大 LP:8000 → 5500 → 2800 → 0

Win:遊貴




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光芒
うわ遊貴つよい(白目)。
そう言えば遊貴にとって【覇王】は色々と因縁のあるカードでしたね。もちろん遊大にはそこまでの邪気はないので安心と言えば安心ですが……ただそんな覇王をも圧倒する遊貴のデュエル、恐れ入りました。ただこのデッキはもはや【幻獣機】と言っていいのか……(オライオン? あれはもう【グッドスタッフ】の一員ですよね?)。

そして予告通りワンキルされた遊大ですが、文中でも触れられている通り、確かに【オッドアイズ】はクリスタルウィングが苦手なんですよね。Xモンスターがいるなら話は別ですが、素の攻撃力で超えているXモンスターがそうそういないわけで。二部以降ではそこも乗り越えられるようにしてあげたいですね。あと覇王スターヴの召喚口上がきっちり再現されていて嬉しかったです。 (2019-03-20 10:47)
Ales(from PC)
光芒さん
やってる事はただのソリティアですが、いざ文章にしてみると強く見える不思議。最終的にフィールドに残っているのが3体だけなのに。

>そう言えば遊貴にとって【覇王】は色々と因縁のあるカードでしたね。もちろん遊大にはそこまでの邪気はないので安心と言えば安心ですが……
盛大な勘違いなんですけどね。この要素を盛り込みたいが為に虹彩竜組もコラボ申請した側面もありますから、後々まで尾を引いてくれないと困ります(殴

>ただこのデッキはもはや【幻獣機】と言っていいのか……(オライオン? あれはもう【グッドスタッフ】の一員ですよね?)
遊貴 「多分作者の人そこまで(ry」
この辺も少し拾う予定ですが、幻獣機さんって便利ですよね。レベル勝手に上がってくれて。

>そして予告通りワンキルされた遊大ですが、文中でも触れられている通り、確かに【オッドアイズ】はクリスタルウィングが苦手なんですよね
「覇王」モンスターを出す、という事を大前提に展開しましたが、ゴッドアイズでモンスター効果を防げないのはかなり痛いですよね。今回はワンキルしてもらいたかったのでクリスタルウィングでしたが、《クリムゾン・ブレーダー》で詰むんじゃね?と思ってしまったのは内緒です。

>二部以降ではそこも乗り越えられるようにしてあげたいですね
楽しみにお待ちしております(にっこり)

>あと覇王スターヴの召喚口上がきっちり再現されていて嬉しかったです
結構探しましたが、コラボしたものとして可能な限り再現したいですからこの辺りは譲れませんです。 (2019-03-21 14:51)

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80 閑話休題 ゆきみかりんのパーフェクトry 1328 2 2016-05-11 -
121 50 In the Zone・3 1076 4 2016-05-13 -
84 51 星の扉 part3 1199 4 2016-05-15 -
113 52 星の扉 part4 1307 5 2016-05-17 -
120 53 さよならトリップ part.2 1239 3 2016-05-19 -
94 閑話休題2:座談会 1224 2 2016-05-21 -
121 第2部予告・キャラ紹介 1424 0 2016-05-23 -
119 54 開幕前の旋風 1287 2 2016-05-26 -
125 55 コピーとオリジナルとコピー 前編 1233 2 2016-05-29 -
68 56 コピーとオリジナルとコピー 中編 1129 2 2016-06-01 -
106 57 コピーとオリジナルとコピー 後編 1148 2 2016-06-04 -
84 58 螢火の幽霊娘 1194 2 2016-06-07 -
131 59 Brave Sword 1257 4 2016-06-10 -
127 60 Braver’s Soul 1215 2 2016-06-13 -
128 幕間 久実のだらだラジオ01 1226 0 2016-06-14 -
96 61 紙一重の差で 1269 2 2016-06-16 -
90 62 Beyond the fate 1137 2 2016-06-19 -
122 63 一点突破! 1193 2 2016-06-22 -
104 64 交わされた約束 1053 2 2016-06-25 -
128 65 狂イ咲ケ焔ノ華 1247 2 2016-06-28 -
116 66 光と焔 1217 2 2016-07-01 -
120 67 Rifling fate 1164 2 2016-07-04 -
67 68 Gunslinger in... 1120 2 2016-07-07 -
129 幕間 久実のだらだラジオ02 1120 2 2016-07-10 -
53 69 Extra-Zero 8 1101 2 2016-07-13 -
135 70 軍靴の鳴動 1053 2 2016-07-16 -
146 71 休憩の過ごしかた 1143 2 2016-07-19 -
132 72 激戦の予感 1331 2 2016-07-22 -
111 10000閲覧感謝特番(特番とはry) 1132 2 2016-07-25 -
129 73 幻竜と隼 1143 2 2016-07-28 -
108 74 薄氷 1079 2 2016-08-01 -
134 【告知】一万閲覧感謝祭について【重点】 1281 7 2016-08-02 -
111 74 バード・ストライク 1047 2 2016-08-04 -
116 75 革命と終端 1092 2 2016-08-07 -
125 76 Soldier’s Ballad 1019 4 2016-08-10 -
119 77 Full Boost! 1034 2 2016-08-13 -
131 78 Dead heat 1149 2 2016-08-16 -
131 79 フューチャー・リビジョン 1090 2 2016-08-19 -
120 幕間 久実のだらだラジオ03 1121 2 2016-08-22 -
131 80 それぞれの「加速度」 975 2 2016-08-25 -
60 81 EDEN 1062 4 2016-09-01 -
66 82 闇夜の錦 1040 2 2016-09-05 -
129 83 月影 1257 2 2016-09-09 -
95 84 宵待桜と日照の龍 1083 2 2016-09-13 -
118 85 Sakura Sunrise 1207 2 2016-09-18 -
88 閑話休題:お詫びとおまけ 1098 2 2016-09-22 -
56 86 宵闇に舞え、幽玄の桜 1063 4 2016-09-26 -
89 87 ‘‘fascination’’ 1020 4 2016-10-05 -
58 88 曙光の歌 893 2 2016-10-13 -
94 89 夜露に濡れた朝陽 1155 2 2016-10-18 -
170 90 9.A.M. 1240 2 2016-10-26 -
131 幕間 久実のだらだラジオ04 1169 2 2016-11-01 -
117 91 Gwin to run 1007 2 2016-11-09 -
122 92 ライトニング・マイル 998 4 2016-11-15 -
142 93 双振 1063 2 2016-11-20 -
51 94 鉛と金と 960 2 2016-11-25 -
111 95 剣と牙 1046 2 2016-11-29 -
115 96 剣戟連閃 *ミス有・未修正 1123 4 2016-12-04 -
121 97 Follow Tomorrow 1113 6 2016-12-06 -
72 幕間 久実のだらだラジオ05 1015 3 2016-12-07 -
70 番外編1-1 plan 8 to B 1035 3 2016-12-11 -
120 番外編1-2 †渚の大魔王† 1073 5 2016-12-15 -
158 番外編1-3 灼熱<(ヮ)> 1108 4 2016-12-18 -
120 番外編2-1 籐篠塾・開講? 986 5 2016-12-21 -
100 番外編2-2 実践?籐篠塾 1115 3 2016-12-23 -
120 そぴあちゃんのくり(ry 1211 3 2016-12-25 -
130 番外編2-3 対面する者たち 1107 3 2016-12-30 -
77 番外編2-4 集結と収束 962 7 2017-01-03 -
107 番外編2-5 勝負の鍵は右端に・1 1040 3 2017-01-05 -
136 【番外編の】閑・話・休・題【番外編】 1162 2 2017-01-10 -
98 番外編2-6 勝利の鍵は右端に・2 1057 5 2017-01-13 -
142 番外編2-7 因縁と銃弾と一瞬の隙・1 1079 2 2017-01-15 -
114 番外編2-8 因縁と銃弾と一瞬の隙・2 969 4 2017-01-18 -
133 番外編2-9 因縁と銃弾と一瞬の隙・3 1049 4 2017-01-22 -
123 番外編 2-10 山場と御山と一撃必中1 1178 9 2017-01-27 -
69 番外編 2-11 山場と御山と一撃必中2 1142 8 2017-01-31 -
124 番外編2-12 服と感性と(pt.1) 979 4 2017-02-04 -
118 番外編2 前半終了の幕間 1080 9 2017-02-06 -
135 番外編2-13 服と感性と(pt.2) 936 2 2017-02-10 -
138 幕間 論争、宇宙まで 997 2 2017-02-14 -
125 番外編2-14 服と感性と(pt.3) 994 2 2017-02-16 -
124 【緊急?更新】今後の方策について 1069 2 2017-02-18 -
110 番外編2-15 服と感性と(pt.4) 1053 10 2017-02-21 -
127 番外編2-16 漁火と陣風と(pt.1) 1174 2 2017-02-26 -
139 番外編2-17 漁火と陣風と(pt.2) 1025 2 2017-03-03 -
103 番外編2-18 Symphonic…1 1130 2 2017-03-14 -
116 【こいついつも】閑話☆休題【休んでんな】 1012 2 2017-03-20 -
118 番外編2-19 Symphonic…2 829 3 2017-03-27 -
92 番外編2-20 新乱気流…pt.1 908 2 2017-04-05 -
147 番外編2-21 新乱気流…pt.2 950 2 2017-04-16 -
133 番外編2-22 新乱気流…pt.3 963 2 2017-04-21 -
103 番外編2-23 Waltzic...p1 944 2 2017-04-26 -
128 番外編2-24 Waltzic...p2 1024 2 2017-05-02 -
110 番外編2-25 Waltzic...p3 1096 6 2017-06-03 -
88 番外編2-26 Waltzic...p4 858 3 2017-06-11 -
113 番外編2-26 Waltzic...p5 976 4 2017-06-24 -
157 98 Drawback 1110 2 2017-07-10 -
138 99 Silhouette 942 2 2017-09-22 -
131 Where is my No.100!? 1085 4 2017-11-19 -
96 番外編File-X 静かな夜に? 1030 2 2017-12-25 -
110 Over the Period -御品書 952 2 2018-06-14 -
66 OtP0 Boat 822 2 2018-07-07 -
88 OtP02 Serenade 858 0 2018-07-14 -
77 OtP03 Dirge 829 0 2018-09-01 -
86 OtP04 Requiem 831 2 2018-09-17 -
102 OtP05 Period 852 2 2018-09-24 -
61 幕間りたーんず01 新・メタフィジカ 765 0 2018-09-28 -
129 OtP06 Anthem 871 2 2018-10-14 -
110 OtP07 Perfectly 972 2 2018-10-19 -
66 OtP08 Possession 738 2 2018-11-02 -
57 OtP09 Bloomin’ 882 2 2018-11-22 -
94 OtP10 Danger! 853 2 2018-12-09 -
116 OtP11 Vidofnir 987 2 2018-12-22 -
91 OtP12 Sigmund 790 2 2019-01-01 -
61 OtP13 Quantum 862 2 2019-01-11 -
105 OtP14 Vicious 871 2 2019-01-25 -
96 OtP15 Quantize 815 3 2019-01-29 -
89 OtP16 Fragments 914 2 2019-02-04 -
77 OtP17 Nornir 747 2 2019-02-15 -
88 OtP18 Beyond the End 759 2 2019-02-20 -
75 OtP第三幕 コラボ企画おしながき 714 2 2019-02-24 -
104 OtP19 Deflect 798 2 2019-03-01 -
62 OtP20 Jokulhaups 723 2 2019-03-11 -
64 OtP21 Expedition 791 2 2019-03-15 -
61 OtP22 Lindwurm 809 2 2019-03-19 -
54 OtP23 Swords 721 2 2019-03-24 -
70 【OtP】決戦前特番嘘ですごめんなさい 773 2 2019-04-01 -
127 OtP24 Charge 792 2 2019-04-08 -
120 OtP25 Manque 765 2 2019-04-21 -
72 OtP26 Lightning 689 2 2019-05-03 -
73 OtP27 Blaze 798 2 2019-05-22 -
72 OtP28 Prelude 916 2 2019-09-29 -
92 OtP29 Phantom 759 0 2021-01-02 -
59 OtP30 mare-Nectaris 605 2 2023-01-22 -
48 OtP31 Enclosure 416 1 2023-11-06 -

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