10　勇者の地、戦士の郷里　作：Ales

　「んー……何て言うか、オーラがあるね。仮想空間とは思えないほど。」

　次に言葉を発したのは、HMDを装着し直していた『La+』だった。『Ka.Ta.』はというと、モンスターの情報をデュエルディスクで確認している。

　「《戦闘領域：司令基地》を墓地に送り、フィールド魔法をセット。墓地に送られた司令基地の効果、自分フィールド上のモンスターを全て破壊する！」
　「破壊……なっ、何だと！」
　「そうさ！この瞬間、《スタークエイク・ドラゴン》の効果を発動！カードを破壊する効果が発動した時、フィールド上の全てのカードをデッキに戻す！食らえ、『マグマプロ－ジョン』！」

　逆鱗から見える光が強くなり、その身体を突き破って解き放たれた。全てのものが砕け散る。

　「更にその後、攻撃力1000以下のモンスター１体をデッキから特殊召喚する。デッキから《ＸＤ－防弾武器庫》を特殊召喚！こいつは自分フィールド上のカードがこのカードのみの時にカードの効果を受けない！司令基地の破壊効果は、こいつには適用されない！」

　光の中から、縦長長方形の機械が現れた。戦車のような砲塔はないが、重厚な金属が鈍く輝きを放っている。やがて訪れた爆風に倒れる事なく、しかも正面から受けたのがその強度を物語っている。


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《ＸＤ－防弾武器庫/Gardner Weapontank of Unknown ’’X’’ Destroyer》
効果モンスター
星６/光属性/機械族/攻０/守０
このカードは墓地から特殊召喚できない。また、このカードは戦闘によって破壊されず、このカードの戦闘によって受ける戦闘ダメージは０になる。
（１）：自分フィールド上のカードこのカードのみの場合、このカードは他のカードの効果を受けない。
（２）：自分フィールド上のモンスターがこのカードのみの場合、このカードをリリースして発動する。以下の効果から１つを選択する。
・エクストラデッキの表側表示の「ＸＤ」Ｐモンスター２体を特殊召喚する。
・デッキから２枚ドローする。その中に「ＸＤ」または「戦闘領域」カードが存在しない場合、そのカードを全て捨てる。

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　「防弾武器庫の効果、自分フィールド上に他のモンスターが存在しない場合、こいつをリリースしてエクストラデッキの「ＸＤ」ペンデュラムモンスター２体を特殊召喚できる。来い、《ＸＤ－旋空のラノ》、《ＸＤ－機巧のネリー》！」
　「くっ……たった１体のモンスターで……」

　『星を揺るがす竜』は、ボードさえも揺るがしてしまった。様々なカードが絡み合って発生した結果とはいえ、その発端は、あの竜に相違ない。

　「バトルフェイズ、２体のモンスターでダイレクトアタックだ！いけ！」


《ＸＤ－旋空のラノ》　ATK:2200
《ＸＤ－機巧のネリー》　ATK:2300
　Ka.Ta.　LP：4800　→　300


　「ぐぅっ！これは……見直したぞ、少年……いや、『NSaver』よ！」
　「はっ、そりゃどーも、おっさん……じゃねーや、『Ka.Ta.』さんよ。メイン２、《ＸＤ－旋空のラノ》と《ＸＤ－機巧のネリー》でオーバーレイ、２体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚！機巧繰りし戦士、ここに参上！《νＸＤ－メカナイズド・メカニック》！
　メカニックの効果、エクシーズ召喚に成功した時、デッキまたはエクストラデッキから「ＸＤ」Ｐモンスター２体を特殊召喚できる。デッキから《ＸＤ－新兵のヴェニル》、エクストラデッキから《ＸＤ－狙墜のザクト》を特殊召喚！」

　一見普通に見える青年が現れた。彼の両腕と両足にはしかし、サポート用のパワースーツが装着されている。そのアームで大地を砕くと、そこから２枚のカードが現れた。そのカードから、更に２人の兵士が登場した。


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《νＸＤ（ニュー・アンノウン・デストロイヤー）－メカナイズド・メカニック/New unknown ’’X’’ Destroyer Mechanized Mechanic》
エクシーズ・効果モンスター
ランク５/闇属性/戦士族/攻５００/守５００
「ＸＤ」レベル５モンスター×２
（１）：このカードのＸ召喚に成功した時発動する。デッキまたはエクストラデッキから、「ＸＤ」Ｐモンスター２体を特殊召喚する。
（２）：Ｘ素材を持ったこのカードの攻撃力・守備力は、エクストラデッキに表側表示で存在する「ＸＤ」モンスターの種類×４００アップする。
（３）：１ターンに１度、このカードのＸ素材を１つ取り除いて発動する。墓地から「ＸＤ」モンスター１体を特殊召喚する。

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　「レベル４の《ＸＤ－新兵のヴェニル》に、レベル３となった《ＸＤ－狙墜のザクト》をチューニング、シンクロ召喚、《ＸＤ－自律戦車イスク》！俺はこれでターンエンドだ。さあ、追い詰めたぜ！」



6th. Turn
　TP：Ka.Ta.

Ka.Ta.　LP：300　D：32　H：4　G：6
　F：none


NSaver　LP：5000　D：27　H：0　G：9
　F：《νＸＤ－メカナイズド・メカニック》《ＸＤ－自律戦車イスク》



「僕のターン、ドロー！」

　ライフ・ボード共に大きく被害を被った『Ka.Ta.』だが、幸いにして手札は多い。

　「くっ……」

　しかし、彼の表情は冴えない。

　「おい、まさかサレンダーするとか言わねぇよな。」
　「冗談にしても笑えんぞ？手札から《史士戦士　レギオン》を特殊召喚。更に手札の《史士戦士　ランツクネヒト》の効果、デッキから《史士戦士　インピ》を特殊召喚。」
　「なんだ、回ってんじゃねーか。」

　冴えない表情をしつつも、初手と同じ動きをしている。果たして、何が懸念事項だったのだろうか。

　「レベル４の《史士戦士　レギオン》にレベル４の《史士戦士　インピ》をチューニング。」
　「レベル８……？」
　「そうだ！僕の切り札を見せてやろう！蒸気の奔流、ここに集いて世界を変える！新世界に轟け！シンクロ召喚、《スチーム・ストリーム・ドラゴン》！」

　彼が置いたカードから、熱風が巻き上がった。やがて雲のように集まった風の流れが、赤い熱を纏って浮遊している。

　「これが、あんたの……はっ、上等だ！ぶっ倒してやるぜ！」


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《スチーム・ストリーム・ドラゴン/Steam Stream Dragon》
シンクロ・効果モンスター
星８/水属性/ドラゴン族/攻３０００/守２５００
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
「スチーム・ストリーム・ドラゴン」の（１）（２）の効果はそれぞれ、１ターンに１度しか使用できない。
（１）：フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。この効果を使用したターン、このカード以外のモンスターは攻撃宣言できない。
（２）：このカードがカードの効果によって破壊された場合、このカードを破壊したカードを選択して発動できる。このカードを特殊召喚する。その後選択したカードを破壊し、フィールド上のカードを２枚まで選択して手札に戻す。

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　－やはり彼も、持っていたのですね……
　「んー？なんか言った？」

　琉枝は既に分解を終えたサブPCの通電チェックをしている。もちろん、HMDを装着していないので状況は音頼みだ。


　「本当は使いたくなかったのだがね……ライフがライフだけに、仕方ないさ。さて、僕はまだ通常召喚していない……手札から、《史士砲火　ハワチャ》を召喚！ハワチャの効果、墓地の「史士」モンスターを特殊召喚し、そのカードにハワチャを装備する。《史士戦士　レギオン》を特殊召喚し、装備する！」


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《史士砲火（エンシェントフレア）　ハワチャ/Ancient Warcraft Hwacha》
効果モンスター
星４/炎属性/機械族/攻２０００/守０
（１）：このカードが召喚・特殊召喚に成功したとき、自分の墓地から「史士砲火　ハワチャ」以外の「史士」モンスター１体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚し、このカードを装備カード扱いとして特殊召喚したモンスターに装備する。
（２）：（１）の効果で装備カード扱いとなっている場合のみ、装備モンスターの攻撃力は２０００になり、このカード以外のカードの効果を受けない。
（３）：（１）の効果で装備カード扱いとなったこのカードを除外して発動する。除外された「史士」モンスター２体をデッキに戻し、フィールドのカード１枚を破壊する。

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　「攻撃力2000……と、破壊効果か…」
　「その通り、ハワチャを除外して効果発動、除外されたコンキスタドールとレギオンをデッキに戻し、《スチーム・ストリーム・ドラゴン》を破壊する！」

　巨大な木箱から轟音が響き、無数の矢が放たれた。矢は竜に突き刺さり、竜は咆吼と共に姿を消した。

　「自分のモンスターに、ってことは、何かあるんだろ？」
　「その通り。《スチーム・ストリーム・ドラゴン》は、効果によって破壊された時に特殊召喚できる。舞い戻れ！」

　熱風の嵐が、再び巻き起こる。

　「更にこの効果で特殊召喚に成功した場合、このモンスターを破壊したカードを破壊し、フィールドのカードを２枚まで手札に戻す。君のフィールドの２体には帰って貰うよ。」
　「ちっ……」

　大きく広がった風が、２枚のカードを弾き飛ばす。


　「バトルフェイズ、《スチーム・ストリーム・ドラゴン》でダイレクトアタック！行け、『ブルーミング・スチーム』！」


《スチーム・ストリーム・ドラゴン》ATK：3000
NSaver　LP：5000　→　2000


　「ぐうっ……まだ、まだ大丈夫だ！」
　「ああ、この程度で諦めるなどデュエリスト失格！メインフェイズ２、私はカードを１枚セットしてターンエンド。」



7th. Turn
　TP：NSaver

NSaver　LP：2000　D：27　H：0　G：11
　F：none

Ka.Ta.　LP：300　D：31　H：1　G：8
　F：《スチーム・ストリーム・ドラゴン》《史士戦士　レギオン》
　　《セットカード》



　「俺のターン、ドロー……俺はこのままターン終了だ。」

　ドローに失敗したのか、『NSaver』は目を閉じてターン終了を告げた。



8th. Turn
　TP：Ka.Ta.

Ka.Ta.　LP：300　D：31　H：1　G：8
　F：《スチーム・ストリーム・ドラゴン》《史士戦士　レギオン》
　　《セットカード》

NSaver　LP：2000　D：26　H：1　G：11
　F：none



　「ついに観念したか……僕のターン、ドロー！そのままバトルフェイズに移行。《スチーム・ストリーム・ドラゴン》でダイレクトアタック！」
　「まだだ！墓地の《戦闘領域：司令基地》の効果発動！こいつを除外して、バトルフェイズを終了する。」
　「くっ……メイン２、《史士軍艦　ドロモン》を召喚。レベル４の《史士戦士　レギオン》にレベル２の《史士軍艦　ドロモン》をチューニング、シンクロ召喚、《史士騎兵　スィパーヒー》！」


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《史士軍艦（エンシェントシップ）　ドロモン/Ancient Warship Dromon》
チューナー・効果モンスター
星２/水属性/機械族/攻１３００/守０
（１）：手札のこのカードを墓地に送り、相手フィールド上のカード１枚を選択して発動する。そのカードの効果を、ターン終了時まで無効にする。
（２）：このカードが召喚に成功した時、自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合発動できる。墓地の「史士」モンスター１体を特殊召喚する。


《史士騎兵（エンシェントナイツ）　スィパーヒー/Ancient Knight Sipahi》
シンクロ・効果モンスター
星６/闇属性/戦士族/攻２３００/守１９００
「史士」チューナー＋チューナー以外の「史士」モンスター１体以上
（１）：このカードは１ターンに１度、戦闘またはカードの効果で破壊されない。この効果が適用されたターンのエンドフェイズ、デッキから「史士」モンスター１体を除外することができる。
（２）：１ターンに１度、墓地の「史士」モンスター１体を除外して発動する。このモンスターの攻撃力は、除外したモンスターの攻撃力分アップする。
（３）：このカードがフィールドを離れたとき、除外されたレベル４以下の「史士」モンスター２体を特殊召喚する。

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　「破壊耐性……厄介な。」
　「相手の嫌がる事をするのがデュエリスト、だろう？さあ、打ち破って見せよ！」



9th. Turn
　TP：NSaver

NSaver　LP：2000　D：26　H：1　G：11
　F：none

Ka.Ta.　LP：300　D：30　H：1　G：10
　F：《スチーム・ストリーム・ドラゴン》《史士騎兵　スィパーヒー》
　　《セットカード》



　（一度あった事は、二度と起らない。だが、二度あることは三度ある、か。また奇跡に頼らないといけねーのか……）

　今度こそ、絶体絶命である。『Ka.Ta.』のフィールド上の２体は勿論のこと、下級のアタッカーにダイレクトアタックを食らっただけでもライフは０になる。

　（何でだろうな……ここまで追い詰められても、負ける気がしねぇ。）

　「俺のターン、ドロー！よしきた！スケール３の《ＸＤ－突撃のアリブ》とスケール６の《ＸＤ－旋空のラノ》をセッティング！来い、アベンジャー！ペンデュラム召喚、《ＸＤ－新兵のヴェニル》、《ＸＤ－破砕のルクシィ》、《ＸＤ－斥候のルタ》！」
　「この状況で！？」

　初手から彼を支えた、必殺の弾丸が放たれた。輸送機が現れ、空を裂いて降下した部隊が展開される。

　「ルタの効果、こいつをリリースしてデッキから《ＸＤ－狙墜のザクト》を特殊召喚。いくぜ、レベル４の《ＸＤ－新兵のヴェニル》にレベル３となった《ＸＤ－狙墜のザクト》をチューニング。唸れ榴弾、響け爆音！必殺の武器は勝利の証、シンクロ召喚！《ＸＤ－閃弾のラナト》！」

　またもや現れた輸送機から降下してきたのは、黒いベストの青年だった。右手に持ったアサルトライフルにはグレネードランチャーが取り付けられている。

　「ラナトの効果、シンクロ召喚に成功した時、このカード以外の「ＸＤ」モンスターを全て破壊する。そして攻撃力を、破壊したモンスターの数×1000ポイント上げる！今フィールドにいるのは１体だけだが……これで充分だ！」


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《ＸＤ（アンノウン・デストロイヤー）－閃弾（せんだん）のラナト/Ranat, the Grenadier of Unknown ’’X’’ Destroyer》
シンクロ・効果モンスター
星７/光属性/戦士族/攻２３００/守８００
「ＸＤ」チューナー＋チューナー以外のモンスター１体
「ＸＤ－閃弾のラナト」はフィールド上に１枚しか存在できない。
（１）：このカードのＳ召喚に成功した時に発動できる。このカード以外の自分フィールド上の「ＸＤ」モンスターを全て破壊する。このカードの攻撃力は、この効果で破壊したカードの数×1000ポイントアップする。
（２）：このカードがカードの効果によって墓地に送られた場合、フィールド上のモンスターを全て破壊する。

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　「攻撃力3300……だと！」
　「これで終わりだ！バトル、《ＸＤ－閃弾のラナト》で《スチーム・ストリーム・ドラゴン》を攻撃！『鏑弾射出（グレネード・アウト）』！」
　「くっ……負け、かっ！」


《ＸＤ－閃弾のラナト》　ATK：3300　ATK：3000　《スチーム・ストリーム・ドラゴン》
Ka.Ta.　LP：300　→　0


Win：NSaver




　「いい勝負だった……また、お手合わせ願おう。『NSaver』。」
　「ああ、こっちこそまたよろしく頼むぜ。『Ka.Ta.』。」

　負けてなお清々しい表情の『Ka.Ta.』と、勝って兜の緒を締めるが如くに謙虚な『NSaver』。戦士たちの消えたフィールドに、暫し視線を交わしたまま立っていた。


　－いい勝負でした……って、『La+』さん、終わりましたよ？
　「んあ？終わった？あーふたりとも、お疲れ様。それで、件のお姫様なんだけど……」

　元を正せば、ふたりがデュエルを始めた要因は『Snow』の存在が絡んでいた。しかし、彼女の姿はどこにも見えない。

　「あれ？あいつどこ行った？」
　「何！？僕の護衛は必要ないと……？」

　ふたりともデュエルに熱中するあまり、遊貴がログアウトした事に気付いていなかったようだ。

　「あの子なら今、ゲームセンターに遊びに行っているわよ。アップデート来たって言っていたから、気が削がれるまで帰ってこないと思うわ。」
　「おいおい……」
　「ゲーム……センター……？」
　－……なるほど、姉妹揃ってマイペースなのですね……

　『ロロナ』の声は、やや呆れ気味だった。





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《？次回予告？》


美夏　「ちょ、おま、殺す気か！？」
遊貴　「大丈夫だよ…絶対、大丈夫だよ……」
美夏　「（キャラが）違うめう！っておいぃ！」


？？？　「大丈夫だって！」
美夏　「あ、ごめんなさーい。」


次回、「Holiday of ’’Runaway bride’’」
闇の中に輝け、一筋の光。