OtP12　Sigmund　作：Ales

　「そうやって笑っていられるならまだ、あの頃に比べればマシなのかもしれないけど……っと、比べるものではないか。悪かったね。」
　「…………笑えているだけ、マシかもしれないかな。久しぶり。」

　二言目には既にいつもの調子に戻る遊貴であるが、目の前の人物に対しては彼女なりに色々と思うところがあるのである。

　「パパって呼んだ方がいい？」
　「他人行儀だったあの頃に比べれば随分変わったね。」
　「それはまあ、精神的な余裕はあの頃に比べれば……」

　良くも悪くも浮世離れしている性格の持ち主であり、つかみ所のない少女の言は、あっさりと否決される。

　「君の法定代理人はもう４年前に終了しているし、そもそもその期間中も一度もそうは呼ばなかっただろう？今まで通りで良いさ。」
　「ん、じゃあ校長先生、かな。とりあえず転校の手続きだよね？印鑑とボールペンは持ってるけど……」
　「今更言うことでもないと思うけれど、他人の前では……」
　「承知しております、校長先生。」

　無駄に洗練された無駄のない無駄なカーテシーを添えた遊貴に対し、校長は書類を手渡した。

　「保護者の署名と印鑑は貰ってあるから、後は君がここに署名と捺印するだけだよ。こっちの資料を読んだ上で、という形式上の言葉は伝えておくけれど。」
　「はい。」

　契約書や保証書の類を全く読まない人種は一定数存在する。遊貴はその対極、大体二度は目を通す側であり、形式上の言葉を忠実に実行する性分である。数分の後に軽く頷いて署名捺印を終えると、資料をくるりと反転させて軽く押し出した。

　「これで君も我が校いち生徒として、今日から活動することになる。ようこそ、デュエルアカデミアジャパン・北陸校へ。」

　続いて手渡されたのは、生徒手帳であった。

　「熟読の上、規律に則った学生生活を送ってくれるよう期待しているよ。」
　「承知致しました、校長先生。」
　「では、後私から言うこととしたら……幸運を祈るよ。」
　「…………では、失礼します。」

　30°と45°の中間のような、果たしてどの儀礼に則って行った所作か判別しかねるお辞儀をして、遊貴はその場を辞した。





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　幸運を祈った校長の思惑通り、遊貴の北陸校での学生生活はそれなりに良い滑り出しを見せた。授業中の態度は言わずもがな、懸念材料であったコミュニケーションも特別気にかける点は見当たらなかった。学年や性別を問わず挑まれたデュエルは全て受け、そして非常に良好な成績を残した。同室の緋色やエミリアとは毎日のように対戦し、毎度のように好勝負を展開するのは早くも校内のいち風景となっていたのである。


　その一方で、同室のふたりのみが知る実態は芳しいものではない。
　毎日のように悪夢にうなされ、内容を問うても「忘れた」の一点張りの少女は、時折何かに憑かれたかのように好戦的になるのだ。眼が真紅に色を変えた時の遊貴はどうも異常な状態である、という事はすぐにふたりも合点した。





　…………いい加減、顔も見飽きた。

　そう。でも、あなただけに未来があるのは理不尽じゃないかしら？―

　そんなこと知らない。先の事なんて見たことないし、ちょっとだけ上手くいった結果だから。

　そうね。ちょっとだけ上手くいった結果と、上手くいかなかった結果の差。それがあなたと私。あなたは理不尽に思うかもしれないけれど……―

　そう考えるなら、これでお別れして欲しいんだけど。

　人の話は最後まで聞くものよ？あなたは理不尽に思うかもしれないけれど、受け入れて貰うしかないわ―


1st.Turn
　TP：？？？

？？？　LP：8000　D：35　H：5　G：0　Ex：15　V：0

　□□□□□
□□□□□□
　　□　□
　□□□□□□
　□□□□□

遊貴　LP：8000　D：35　H：5　G：0　Ex：15　V：0


　私のターン、《フォトン・スラッシャー》を特殊召喚。更に手札の《銀河戦士》を捨てて《ライトレイ・グレファー》を特殊召喚。魔法カード《銀河遠征》を発動、デッキから《銀河戦士》を特殊召喚、効果で２枚目の《銀河騎士》をサーチ。スラッシャーとグレファーをリンクマーカーにセット。リンク召喚、《聖騎士の追想 イゾルデ》。イゾルデの効果で《最強の盾》、《リビング・フォッシル》、《月鏡の盾》の３枚をデッキから墓地に送り、レベル３の戦士族モンスター《■廟の魔■■士リ■■■》を特殊召喚―


---
《■廟の魔■■士リ■■■》
チューナー・効果モンスター
星３/炎属性/戦士族/攻1600/守0
このカードは自分フィールド上に「？？？」が存在する場合、通常召喚および特殊召喚できない。
（１）：このカードの召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。墓地の装備魔法カード１枚を手札に加える。
（２）：このカードをＳ素材としてＳ召喚に成功した「？？？」モンスターは以下の効果を得る。
・１ターンに１度、手札のモンスター１体を捨てて発動する。そのモンスターの攻撃力と同じダメージを与え、デッキから１枚ドローする。この効果を使用したターン、このカード以外のモンスターは直接攻撃できない。
---


　特殊召喚に成功した《■廟の魔■■士リ■■■》の効果、墓地の《リビング・フォッシル》を手札に戻す。レベル５の《銀河戦士》にレベル３の《■廟の魔■■士リ■■■》をチューニング……―


　‘‘生命の輪廻よ巡れ、亡き暴龍に再び命の炎を灯せ’’―


　シンクロ召喚、《霊■■炎龍レ■■ァテ■■》―


---
《霊■■炎龍レ■■ァテ■■》
星８/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
「？？？」チューナー＋チューナー以外のモンスター１体以上
このカード名の（１）（２）の効果はそれぞれ、１ターンに１度しか発動できない。
（１）：このカードのＳ召喚に成功した場合に発動する。墓地のモンスター１体を除外し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える。
（２）：？？？
（３）：？？？
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　《霊■■炎龍レ■■ァテ■■》の効果、Ｓ召喚に成功した時に墓地のモンスター１体を除外して、その攻撃力分のダメージを与える。《銀河戦士》を除外し、2000ダメージを与える。‘‘リベリオン・ヘルファイア’’！―


　遊貴　LP：8000　→　6000


　更に《■廟の魔■■士リ■■■》を素材としている為、この効果も発動。手札の《銀河騎士》を除外して、攻撃力分のダメージを与えてデッキから１枚ドロー。


　遊貴　LP：6000　→　3200


　あっ……ぐうっ……！

　カードを１枚セットしてターンエンド。あなたの選んだ選択が正しければ、この程度なんでもないでしょう？―


2nd.Turn
　TP：遊貴

？？？　LP：8000　D：32　H：2　G：3　Ex：13　V：2
　Ａ：セットカード
　Ｂ：霊■■炎龍レ■■ァテ■■　ATK：2800
　Ｃ：聖騎士の追想 イゾルデ　ATK：1600

　□Ａ□□□
□□□Ｂ□□
　　Ｃ　□
　□□□□□□
　□□□□□

遊貴　LP：3200　D：35　H：5　G：0　Ex：15　V：0


　私のターン、ドロー。魔法カード《おろかな埋葬》を発動、デッキから《ジェット・シンクロン》を墓地に送る。墓地のジェットの効果、手札の《幻獣機オライオン》を捨てて特殊召喚。墓地に送られたオライオンの効果、《幻獣機トークン》１体を生成。ジェットとトークンをリンクマーカーにセット、リンク召喚。リンク２、《水晶機巧―ハリファイバー》。ハリファイバーの効果、デッキからレベル３以下のチューナーを特殊召喚できる。２体目のオライオンを特殊召喚、更に墓地のオライオンを除外して《幻獣機ブルーインパラス》を召喚。手札のレベル４の《幻獣機ライテン》に、レベル３のブルーインパラスとレベル２のオライオンをダブルチューニング……シンクロ召喚、《水晶機巧―グリオンガンド》。グリオンガンドの効果、シンクロ素材としたモンスターの数まで相手フィールド・墓地のモンスターを除外できる。フィールドのイゾルデと炎龍、それから墓地の魔導剣士を除外する……！―

　リバースカード、《ブレイクスルー・スキル》を発動。その効果を無効にするわ―

　むぅ、《サイバー・ドラゴン・コア》を召喚して効果を発動、デッキから《サイバー・レヴシステム》をサーチ。更に《サイバー・ドラゴン》として扱うコア、EXモンスターゾーンのイゾルデ、ハリファイバーの３体をリリースして《キメラテック・メガフリート・ドラゴン》をエクストラデッキから特殊召喚。メガフリートの攻撃力は、自身の融合素材×1200になる。バトルフェイズ、《水晶機巧―グリオンガンド》で《霊■■炎龍レ■■ァテ■■》を攻撃！―


水晶機巧―グリオンガンド　ATK：3000　　ATK：2800　霊■■炎龍レ■■ァテ■■
　？？？　LP：8000　→　7800


　へぇ……ダメージ、痛いものなのね―

　次、《キメラテック・メガフリート・ドラゴン》でダイレクトアタック……！


キメラテック・メガフリート・ドラゴン　ATK：3600
　？？？　LP：7800　→　4200


　メイン２、レヴシステムで墓地のコアを蘇生、メガフリートとコアをリンクマーカーにセット。リンク召喚、リンク２。《サイバー・ドラゴン・ズィーガー》。カードを１枚セットしてターンエンド。


3rd.Turn
　TP：？？？

？？？　LP：4200　D：32　H：2　G：5　Ex：13　V：2
　Ａ：セットカード

　□Ａ□□□
□□□□□□
　　□　Ｉ
　□□Ⅱ◇□□
　□□□□□

　Ｉ：サイバー・ドラゴン・ズィーガー　ATK：2100
　Ⅱ：水晶機巧―グリオンガンド　ATK：3000
遊貴　LP：3200　D：32　H：2　G：5　Ex：12　V：2


　私のターン、ドロー。装備魔法《リビング・フォッシル》を発動、墓地の《■廟の魔■■士リ■■■》の攻守を1000ダウンし、効果を無効にして特殊召喚。更に永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動、墓地のグレファーを蘇生。手札の《トーチ・ゴーレム》の効果、自身を相手フィールド上に特殊召喚し、自分のフィールドに《トーチトークン》２体を生成。《トーチトークン》１体と《■廟の魔■■士リ■■■》をリンクマーカーにセット。リンク召喚、リンク２。《水晶機巧―ハリファイバー》。ハリファイバーの効果、デッキから《炎龍姫リ■ー■》を特殊召喚、レベル５のグレファーにレベル３のリ■ー■をチューニング。

　この、カード……っ！―

　そう、忘れたとは言わせないわ。命を蹂躙し尽くす暴虐の炎龍を！―


シンクロ召喚、《炎龍レーヴァテイン》！―





---
《炎龍姫リ■ー■》
チューナー・効果モンスター
星３/炎属性/魔法使い族/攻0/守0
このカード名の（１）の効果は１ターンに１度しか発動できない。
（１）：自分フィールド上に「？？？」または「レーヴァテイン」モンスターが存在する場合、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる。
（２）：このカードをＳ素材としてＳ召喚した「レーヴァテイン」モンスターは以下の効果を得る。
・１ターンに１度、自分の手札・フィールドからモンスターを１体ずつ選択して発動する。その２体を破壊し、このカードの攻撃力は、破壊したモンスターの攻撃力の合計分アップする。
（３）：？？？

《炎龍レーヴァテイン》
シンクロ・効果モンスター
星８/炎属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
チューナー＋チューナー以外のモンスター１体
（１）：このカードのＳ召喚に成功した場合に発動する。このカードはこのターン、３回まで攻撃できる。この効果は相手フィールド上にモンスターが３体以上存在する場合に発動と処理ができる。
（２）：？？？
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　シンクロ召喚に成功したレーヴァテインの効果、このターン３回まで攻撃できる。更に素材となった《炎龍姫リ■ー■》の効果、手札の《銀河騎士》とフィールドの《水晶機巧―ハリファイバー》を破壊してその合計分攻撃力を上げる―


炎龍レーヴァテイン　ATK：2500　→　6800


　ぅ……ぁ……―

　バトルフェイズ、《炎龍レーヴァテイン》で《トーチ・ゴーレム》を攻撃！‘侵掠する深淵なる灼火（ヴァイオレート・アビス・ブレイズ）’’！


炎龍レーヴァテイン　ATK：6800　　ATK：3000　トーチ・ゴーレム
　遊貴　LP：3200　→　0





　っ！が、はぁっ……！

　この程度？あなた、相当奇妙な‘‘未来’’を引き込んだみたいね―

　この会話、前もした……っ！痛っ！


　そうね。でも、私は何度でも聞き続けるわ―




　あなたの‘‘終幕’’は、どちらが正解だったのかしら？―



　私、の‘‘終幕’’……は……っ！―





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　「ゆっき、今日は一段と酷い表情デスね。」

　いつものように夜半に起き、心配した緋色に抱かれて眠っていた遊貴に、装声を掛けたのはエミリアだった。

　「そう見えますか……？」
　「ハイ、Very Badデス。いや、Terriblyデス！もしかしてHomesicknessですか？」
　「ホーム……いや、そんなことは無いと思うけど。」

　言いながら、果たしてどうかと思い悩む。

　「Subconsciousではどうかわかりませんよ？とりあえず、Hometownの誰かに電話でもしてみてはいかがデス？あ、欠席届は出しておきマスね！」

　言いたいことだけ言って、エミリアは部屋を辞した。緋色は用事があるとのことで先に出ているため、部屋は遊貴ひとりとなった。

　「サブ……何だって？」

　会話の流れからなんとなく察した遊貴は、スマートフォンの通話アプリを開いてはて誰に電話したものかと再び悩んだ。

　「琉枝は起きてるかな？いや、あんまり迷惑かけたくないし……真剣な話をしない相手だとすると……うん、あっ。」


　そう多くないフレンドリストを眺め、得たりと意気込んで人差し指で通話ボタンをタップした。




　『もしもし？』

　４コールで対象から声が掛かった。

　「もしもし……久しぶり。」




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あとがき
　明けましておめでとうございます。旧年は格別のご愛顧を賜り、厚くお礼申し上げます。本年もどうぞ、変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。ってなんだこれ、AT○Kさん万能だなぁ。とにかくねこですよろしくお願いします。