14　夜昼なれ、花の舞　作：Ales

　「うーむ……」

　予想が当たっているかどうかは判らない。外れているかどうかも検証できない。まるでシュレディンガーの猫だ。今相手の手札は《幽鬼うさぎ》であって《幽鬼うさぎ》でない。《ブラック・ホール》であって《ブラック・ホール》ではない。観測して初めて、その正誤が判るのだ。

　「メインフェイズ終了、バトルフェイズニ入ル。」
　「どうぞ。」
　「《エレキリン》ハ相手フィールド上ニモンスターガ存在シテモダイレクトアタックガ可能。《エレキリン》デダイレクトアタック。」
　「リバースカード発動。永続罠、《星光の防護壁》。自分フィールド上に「スターアイズ」モンスターが存在する場合に、効果を選択して発動できるわ。私は攻撃無効を選択。」


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《星光の防護壁（スターライト・シールド）/Star-eyes Light wall》
永続罠
（１）：自分フィールド上に「スターアイズ」モンスターが存在する場合、１ターンに１度、以下の効果から１つ選択して使用できる。
・相手フィールド上の魔法・罠カード１枚を破壊する。
・相手モンスターの攻撃を無効にする。
・相手の墓地のカード１枚をデッキの一番下に戻す。
・相手の手札のカード１枚を、このターン終了時まで裏向きで除外する。
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　龍と化したロロナの身体が輝き、相手の攻撃をはじき飛ばした。
　例えどれほどの低確率であっても、このアドバンテージを喪失するデメリットを考えれば安いコストだ。用心に超した事はない。

　「メインフェイズ２ニ移行。コノママターンエンド。」



5th.Turn
　TP：La+

La+　LP：8000　D：23　H：1　G：12
　F：《星眼の深淵龍》《スターマイン・ウォリアー》《ホルスの黒炎竜　ＬＶ８》
　　《レベル調整実験室》《星光の防護壁》《セットカード》

？？？　LP：8000　D：32　H：2　G：2
　F：《エレキリン》
　　《セットカード》



　「私のターン、ドロー……ふふっ。」

　ドローしたカードを確認した琉枝が、不敵な笑みを浮かべた。

　「メインフェイズ、まずは《星光の防護壁》の効果でそのセットカードを破壊するわ。」
　「……通ソウ。」

　ロロナの身体が輝き、カードをはじき飛ばしたのは同じだが、今回の輝きは赤だった。

　「んー？うっわあぶね。さっきのターンで召喚しなくて良かったわ。」

　墓地に送られたカードは《激流葬》だった。召喚をトリガーとし、フィールドのモンスターを全滅させる罠カード。一時期制限カードにまで指定されたこのカードは、恐ろしい事に現在無制限である。

　「《レベル調整実験室》の効果、墓地の《隠密暗黒物質　ＬＶ５》をデッキに戻して１枚ドロー。よし、準備完了ね。速攻魔法発動、《星眼龍顕現》！さ、ロロナ？きっちり酷使させてもらうわよ。」

　ロロナの身体が再び、光に包まれた。

　－労働の対価は？
　「んー？ふざけんなてめえ焼くぞ。」
　－やめて下さいお願いします。
　「ん？今何でもするって……」
　－言ってません！


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《星眼龍顕現（せいがんりゅうけんげん）/Star-eyes Synchro Change》
速攻魔法
「星眼龍顕現」の（１）（２）の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用出来ない。
（１）：「スターアイズ」モンスター１体を選択して発動する。選択したモンスターをエクストラデッキに戻し、同名モンスター以外でドラゴン族の「スターアイズ」Ｓモンスター１体をエクストラデッキからＳ召喚扱いで特殊召喚する。
（２）：墓地の速攻魔法カードを２枚除外する事で、このカードを手札に加える。この効果は自分メインフェイズにのみ使用できる。

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　－清澄なる光よ、眼前の悪を祓い清め給え。


　「シンクロチェンジ、《星眼の清氷龍》！」


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《星眼の清氷龍（スターアイズ・クリアアイス・ドラゴン）/Star-eyes Clearice Dragon》
シンクロ・効果モンスター
星１０/水属性/ドラゴン族/攻１９００/守３４００
「ＬＶ」チューナー+「星眼の魔術師」
このカードの（１）の効果発動時、相手は魔法・罠・モンスター効果を発動できない。
（１）：このカードのＳ召喚に成功した時に発動できる。相手の手札を２枚まで確認し、そのうち１枚を選択してデッキの一番下に戻す。
（２）：このカードが破壊され墓地に送られた場合に発動する。墓地の「星眼の魔術師」１体を特殊召喚し、このカードをエクストラデッキに戻す。

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　光の中から現れたロロナは、深淵龍の時とは違い少女の姿だった。しかし冷気を纏う鱗を纏い、澄んだ青白いティアラを頭に乗せている。


　「清氷龍の効果、相手の手札を２枚まで確認して、そのうち１枚をデッキの下に戻す。じゃ、その２枚ご開帳……っておいぃ！」


　公開された相手の手札は、《エレキングコブラ》と《エレキジ》だった。

　－『La+』さん？あの、この効果正直負担がかかるので早く決定して頂けると助かるのですが……
　「選ぶわよ！《エレキジ》！」

　パンドラの箱から得たものは、読みが外れたという結果と、ブラフに踊らされていたという現実である。読みの鋭さが災いした結果となった。

　「《隠密暗黒物質　ＬＶ１》を召喚、レベル５の《スターマイン・ウォリアー》にレベル１の《隠密暗黒物質　ＬＶ１》をチューニング！シンクロ召喚、《流星闘士ツングースカ》！」


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《流星闘士ツングースカ/Shooting star knight Tunguska》
シンクロ・効果モンスター
星６/炎属性/戦士族/攻２６００/守０
「ＬＶ」チューナー+チューナー以外の「ＬＶ」モンスター１体以上
（１）：このカードのＳ召喚に成功した時に発動できる。このカード以外のフィールド上のモンスターをすべて破壊する。この効果を使用したターン、このカードは攻撃できない。
（２）：このカードが破壊され墓地に送られた場合、フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する。

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　「効果の発動はなし、バトルフェイズに入るわ。全モンスターでダイレクトアタック！人をコケにした報いを受けなさい！」

　勝手に予想して、勝手に警戒して、そして勝手に怒り出すのだから、相手にしてみればたまったものではない。しかし自分は策に嵌めるクセに策に嵌められると不機嫌になるのが宮都琉枝という女だった。


《星眼の清氷龍》　ATK：1900
《流星闘士ツングースカ》　ATK：2600
《ホルスの黒炎竜　ＬＶ８》　ATK：3000

？？？　LP：8000　→　500


　「グウオォ……」

　闇があげた呻き声はしかし、琉枝の耳には届いていない。

　「リバースカードオープン、速攻魔法発動、《彗星襲来》！自分フィールド上のシンクロモンスター同じレベルの「ＬＶ」モンスターをデッキから墓地に送り、レベルの低い同名モンスターをデッキまたは墓地から特殊召喚する。ツングースカを選択して《冥界棲竜　ＬＶ６》を墓地に送る。そしてデッキから《冥界棲竜　ＬＶ４》を特殊召喚！そのままダイレクトアタックよ！」


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《彗星襲来/Crazy Comet》
速攻魔法
「彗星襲来」は１ターンに１枚しか発動できない。
（１）：自分フィールド上のＳモンスター１体を選択して発動する。デッキからそのモンスターと同じレベルの「ＬＶ」モンスター１体を墓地に送り、そのモンスターのカード名が含まれる「ＬＶ」の低いモンスター１体をデッキ・墓地から特殊召喚する。
（２）：墓地のこのカードと「ＬＶ」モンスター１体を除外して発動する。「ＬＶ」モンスターをＳ素材としてＳ召喚したＳモンスターはこのターン、この効果で除外したモンスターと同じレベルになる。

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《冥界棲竜　ＬＶ４》　ATK：1900
？？？　LP：500　→　0


Win：『La+Tawi』



　「ふっ……またつまらぬものをやってしまった……」

　断末魔をあげて消滅する闇に背を向け、『La+』は髪をかき上げながら呟いた。

　－あの、そろそろ戻っていいですか？

　目だけで振り返ると、ロロナは清氷龍の竜鱗を身に纏ったまま立っていた。

　「…………ふむ。」
　－あの、『La+』さん？

　しかしその後の反応はなく、琉枝はHMDを付けたままむむむと唸り、考え込んでしまった。



　「って、あー！忘れてた！」

　十数分の後に、突如『La+』が叫んだ。

　－どうしたのですか、後そろそろ戻って……
　「何がって、ダメージよ！実際にダメージを受けるのかどうか検証しなきゃいけなかったのに！」
　－はぁ。あの、そろそろ……
　「何よ、その気のない返事……って、これはこれは……」
　－え、なんですかその目は。
　「いやいや、これは中々……扇情的ね。」
　－も、もう戻りますっ！

　その後冷静になって検討したところ、相手の動きを完封してしまったためダメージの検証が出来なかったのだが、相手からダメージをもらうという事はつまり《エレキリン》の攻撃を許す事であり、そうなると魔法カードを発動される恐れがあると仮定したのは自分だ。結局ブラフだった訳だが、それに踊らされた間抜けにはミッションの完遂など夢のまた夢だろう。結局得られた情報は、遊貴のように疑似空間に干渉した、という事だけだった。




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《？次回予告？》

×
遊貴　「またずれた……」
征　「俺たちの会話、だいぶ引き延ばされてんな。」

○
遊貴　「確認したい事……ですか。」
征　「俺……私は、別に……」


？？？　「デュエル、しませんか？」
遊貴　「いいけど……」


次回、「Conquest the Heaven.」
新たな局面へ。