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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第一話「六道遊太、デュエルと出会う」

第一話「六道遊太、デュエルと出会う」 作:イクス

ここは、プラクサス小学校5年B組の教室。教室は、生徒達がごったがえしており、皆が皆何かをやっている、そんな教室である。
「はい皆さーん、席につきなさい」
先生が教室に入ってくると、生徒達が一斉に席に着く。そして、席についた皆を確認した後、先生が点呼をする。その後、先生はあることを皆に話す。
「えー、今日は皆さんにお知らせがあります。今日はこのクラスに転校生がやってきます」
その言葉に、クラス一同がざわめく。転校生など、一年に一回あるかないかという大イベントだからだ。
「じゃあ、入りなさい」
先生の言葉で、ドアをガラガラと開けて一人の少年が入ってくる。
「六道遊太君です、このプラクサス小学校に来るまでは、明星小学校にいました。皆さん、仲良くしてくださいね」
「はーい」
「じゃあ、遊太君の席は……知多君の隣が空いていましたね。そこに座ってください」
「はい」
遊太は、割と平然としていたものの、遅刻ギリギリだったため、内心は結構ドキドキであった。そのため、席についた時ホッとしたのであった。
すると、隣の知多という少年が肘で小突いてくる。
「おい、これからよろしくな、六道遊太。俺の名前は知多泉(ちたいずみ)」
「あ、うん。よろしくね」
一応挨拶はしたものの、遊太は遅刻のことだけではなく、心残りなことが一つあった。
(ポケットのアレ……どうしようかな?)
ポケットに入っている、『イクスロードナイト・アルファ』のカードを、どうするべきかと考えているであった。
ポケットに入っているそのカードのことが気になって、授業の内容とかは全く頭に入らなかった。

そして、放課後。
「さて、どうしよう……」
机にカードを起きながら、どうしようか悩む遊太。このカードは、事故とはいえ他人のカードを盗んだに近い。なんとかして持ち主に返さないといけないのだが、持ち主がわからない上に、このカードがどんなカードなのかもわからない。
一体どうすれば良いのか、わからないでいた。
すると。
「お? それ、デュエルモンスターズのカードじゃん?」
「え、デュエル、モンスターズ?」
隣の席から、そばかすが特徴の少年、知多泉(ちたいずみ)が話しかけてきた。
「え、遊太デュエルモンスターズ知らねえの? ここプラクサスシティじゃ、大人気のカードゲームなんだぜ!」
「どんなカードゲームなの?」
「モンスター・魔法・罠の3種類のカードを駆使して、相手のライフを0にする、本格的カードゲームなんだぜ! 俺も、このデュエルモンスターズをやってるんだぜ」
そう言って、知多は懐からカードを見せる。そのカードは、『ウィンドスター・ドラゴン』。『イクスロードナイト・アルファ』とよく似たカードであった。
「このカードのこと、知っているの?」
「もちろん! あったりまえじゃん! それにしても、お前のカード見た事のないカードだな……」
「うん、実は……今朝ある人とぶつかっちゃって、散らばったカードを拾い集めていたんだけど、どういう訳か、このカードが僕のポケットの中に入っていてね……」
「うわー、そりゃヤバいじゃん。きっとその人、そのカードを探して回ってるじゃんきっと」
「うん、でも……凄く綺麗なスーツケース持っていたから、きっと偉い人なんだろうなあ、僕じゃとても入れそうにない所の……」
「ほー、そうか……あっ、良いこと思いついたじゃん! 俺の知り合いに、デュエルモンスターズの総本山、ミナコ社に知り合いがいる人がいるんだ! その人なら、きっとカードを届けてもらえるじゃん!」
「そ、そうなの!? それなら、このカードも返すことができるかもしれないね」
「そうと決まれば、善は急げじゃん! レッツゴー! 俺達のゲームショップへ!」

そうして、知多に連れられて来た場所は、ゲームショップ烏間という場所であった。そこそこ大きいゲームショップであり、中々設備も整っているような場所だった。
「へー、ここが知多君が良く行くゲームショップ……」
「さ、中へ入ろうじゃん?」
中へ入ってみると、そこは色とりどりのゲームソフトで溢れており、カードもその中にあった。そして、知多がカウンターにいる人に話しかける。
「おーい、烏間さん。なんかこの子がカードを拾ったらしいから、それを見てくれだってよ」
「ふーん、そう? どれどれ見せてごらん?」
カウンターから出てきたのは、艶のある黒髪が特徴の綺麗な女性であった。思わずドキッとした遊太だが、すぐにちゃんと見る。
「あら、あなた初めて見る顔ね。ここは初めて?」
「はい、つい昨日引っ越して来たばかりで、その……」
「まあいいや、それで、カードは?」
「あ、はい、これなんですけど……」
ポケットから、『イクスロードナイト・アルファ』のカードを取り出して、烏間に見せる遊太。それを見て、烏間は遊太に詰め寄る。
「ねえ、このカード、どこで手に入れたの?」
「あの……言いにくいんですけど、今朝人とぶつかって、それで散らばったカードを拾ったら、何故か知らないけど、僕のポケットの中に入っていて……」
「で、その人の特徴とか覚えている?」
「眼鏡をかけていて、それでいて、優しそうな顔をしていました」
その言葉を聞いて、烏間は「ふぅ……」とため息をつく。そして、こう遊太に言う。
「全く……アイツ結構おっちょこちょいなのよね、ソイツは私の知り合いだから、今から行けば多分アイツに会えるかも」
「ほ、ホントですか!? よかったあ……これで泥棒にならずにすむや……」
「それじゃ、行きましょうか。ところで君、名前は?」
「あ、六道遊太です」
「私は烏間雛姫(からすまひなき)。じゃ、知多君はここで留守番していてくれる?」
「あ、はいわかりました! それじゃあ、いってらっしゃいじゃん!」
こうして、遊太は烏間に連れられて、ミナコ社へと向かって行った。

「さあ、ついたわよ」
「こ、ここがミナコ社……?」
天高くそびえたつそのビルは、まさに圧巻の一言であった。このビルに務めている人物の凄さが、十分伺い知れるぐらいには。
「さ、あの人呼びに行こうか」
「だ、大丈夫なの? こんなすごく立派なビルに務めている人を、いきなり呼び出したりなんかして……」
「大丈夫よ、烏間雛姫がきましたって言えば、あの人すぐに来るから。それじゃあ、まずは受付の人に話を通してから――」
その時、ドアがいきなりウィーンと開き、中から人が出てきた。その人は、黒ぶち眼鏡にラフな服装を身に着けた人で……。
「あっ……雛姫じゃあないか。どうしたんだい? 僕に会いにでも来たのかい?」
「あなたこそ、何処へ行こうとしていたのよ?」
「いや、実はね……今朝ごろ、とある子供とぶつかってカードを落としてしまってね……これから、探しに行こうとしていたんだ」
「それなら、もう心配はないわ。だって、あなたがぶつかった子供って、この子のことでしょ?」
そう言われて、遊太は男の前に出る。そして、ポケットからあのカードを出す。
「ごめんなさい。あの時カードを拾い集めていた時、どういう訳か僕のポケットに入ってて……」
申し訳なさそうに言う遊太だったが、そんなこと意に介さず、男はにっこりと微笑む。
「良いんだよ。ちゃんとこうして届けてくれたんだから、むしろお礼を言わなくちゃね。そうだな……これから時間ある? なんだったら、僕の部屋においでよ。ちょうど渡したい物もあるしね」
「えっ、良いんですか?」
「もちろんさ。雛姫も一緒に……ね?」
「ええ、別に良いわよね? 遊太君」
「う、うん。今日は別に何も予定はないし、それに、デュエルモンスターズにもなんか興味がわいて来ちゃったから」
「決まりだね、それじゃあ行こうか。えーっと……君、名前は?」
「六道遊太です」
「遊太君か、僕の名前はロベルト・フランシス。さ、行こうか」

ビルの中を通され、エレベーターで51階まで登った所に、ロベルト・フランシスの部屋はあった。その部屋は、とてもすっきりとした過ごしやすいところで、まるでマンションの一室のようであった。壁やショーケースの中には、デュエルモンスターズのカードであろうカードたちが、所狭しと並べられている。
ロベルトは遊太ににお茶を出し、ソファでくつろいでいてくれと言った後、部屋の奥に行った。遊太はそれを見て、壁などに飾られているカードをじっくりと見ることにしていた。そして、雛姫は遊太を様子をじっくりと観察する。
「凄い……カードだけでこんなにも……」
「ま、まだまだこんなもんじゃないわよ。デュエルモンスターズのカードの種類は、この部屋にあるだけの数十倍……いや、数百倍はあるわよ」
「そんなに!?」
「ま、これからももっと増えるとは思うけどね」
「ほえ~……」
そう感心しながらお茶に口をつけると、奥からロベルトが現れた、手には、デュエルモンスターズのカードがまとめられた、束を持っているようだった。
「さて……と、これは私からのプレゼントだよ、遊太君」
 そう言って、カードの束を渡された遊太。それは、先程遊太がロベルトに渡された、『イクスロードナイト・アルファ』を含めた、デュエルモンスターズのカードであった。
「えっ、これって……あの時僕がぶつかってぶちまけた……!?」
「これも何かの縁さ。このカード達は、カードデザイナーの僕が一から作った特別製のカードでね……未だ世間には出回っていない代物なんだ」
一からの手作り、特別製、世間に出回っていない代物。そんなワードを並べられて、遊太は驚かずにはいられない。
「えっ、ええ~っ!? そんな大事な物を、なんで僕に!?」
「これは元々、誰かにプレゼントしようと思っていた代物でね。それが君だったと言う訳なんだ。安心してくれていいよ、ちゃんと公式大会でも使えるから」
遊太は一瞬困惑の表情を浮かべたが、これはきっと、何かちゃんとした意図によるものだと考え、それを懐にしまった。
「あ、ありがとうロベルトさん。素晴らしいプレゼントだよ!」
「そうかい、それは良かった」
「……」
遊太の満面の笑みに、微笑みで答えるロベルト。それを横から眺めていた雛姫は、何やら遊太のカードを凝視しているが……。
「なるほど……ね」
と一人合点した後、お茶に手をつけた。その後、ロベルトは真剣な表情となる。
「さて遊太君、そのプレゼントと同時に、とてもいいことを教えよう」
「良いこと?」
「君にこのカードを渡した後、とても素晴らしいことが起こるだろう。そして、デュエルは人と人をつなげていくことを、理解することになるだろう……」
「……?」
何故そんなことを真剣な表情で言ったのか、いまいち遊太には理解できなかった。

「また来てくれよ、六道遊太君!」
「うん、また来ます!」
玄関まで送ってもらった遊太と雛姫。そして、懐からカードを取り出した遊太は。
「デュエルモンスターズ、この際だから始めちゃおうかな! 丁度カードもあるし!」
それを聞いた途端、雛姫の表情が変わった。
「それ、本気で言っているの?」
「うん、思い切って始めることにしたんだ! カードゲームはまだ手をつけてないし!」
その言葉に、雛姫の表情がぱぁっと明るくなる。それはもう、太陽のように。
「凄く良いわよ遊太君! 遊太君もデュエリストになるのね!」
「デュエリスト? 何それ?」
「デュエルを行う人の総称よ。さ、店へ戻りましょう。これからデュエルのあれやこれを、じっくりみっちり教えてあげるから」
「お、お手柔らかにお願いします~……」

そうして、ゲームショップ烏間に戻って来た遊太はみっちりしごかれた。それこそ、一緒にいた知多が引き気味になるくらいには。
「ハァ……ハァ……」
「うひ~……遠目から眺めていたけど、こりゃ酷く教え込まれたみたいだなあ遊太」
「うん……かなりきつかったけど……デュエルモンスターズって、凄いよ……! 一枚一枚が、それぞれの役割を果たし、更には無限大のコンボ攻撃……凄く良いよ! 凄く……凄く良いっ! まるで、カードが生きているかのように!」
「やるって言った時は、そりゃあ俺も嬉しかったけどよ……よりにもよって、ここまでする必要あったのかじゃん?」
「何言っているの、デュエルモンスターズはこれぐらいやらないと、ルールを覚えられないからね」
「さて……ルールをあらかた覚えたことだし、デュエルをしてみたら?」
「はい、やってみたいと思います。あれだけ熱心に教えてもらったら、今すぐデュエルをしたいと思ってます! もう、デュエルがしたくてたまらない!」
「ええ、じゃあ知多君、デュエルがしたい遊太君の相手になってもらえるかしら?」
「うーん……そうしたいのは山々だけど、悪いけど俺はちょっと……」
「……そう、残念だわ。だったら、デュエルスペースのデュエルデスクには、結構人がいるからそこの人達に声をかけてみたら? きっと、生きたデュエルが楽しめるわよ」
「わかった、行ってくる!」



デュエルスペースへとやって来た遊太。が、皆デュエルに忙しいようで、遊太が声をかけても全くきづかなかった。
「どうしよう……デュエルをしたいのに、デュエルができない……」
おろおろとそこらじゅうを歩き回る遊太。その様子を、伺う人が一人いた。
「アネゴ、本当にやるッスかあ?」
「当たり前だ、折角の新人なんだ。始める時に、ガツンとやってやんなきゃあね! 半端な気持ちで入ってくるなよ、デュエルの世界になぁって!」
「それって、ただの初心者狩り……」
「うるせーなっ! とにかく、やると言ったらやるんだよ! アタシは!」
二人の男に囲まれた少女が、懐からデッキを取り出し、遊太の方へとさっさか歩いて行った。
「ねぇ君」
「うん? 君誰? 僕とデュエルしたいの?」
「そうなんだよ! アタシの名前は一条寺菊姫(いちじょうじきくひめ)アタシ、今凄くデュエルがしたくってさあ! 相手がいなくて困っていたんだよぉ~」
「僕で良かったら、相手になるけど。あっ、僕は六道遊太って言うんだ」
「よし、決まりぃ! 早速デュエルしよう!」
 二人は、デュエルデスクを挟んで向かい合う。
「ルールはわかるね?」
「うん、わかっているよ。マスタールール3でしょ?」
「じゃあ、行くぜ!」

「「ルールはマスタールール3! ライフポイントは8000!」」
「「デュエル!」」

かくして、デュエルは始まった! 
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ター坊
デッキを丸ごと!?ロベルト兄さん、太っ腹!それにしても不思議な力でカードが産み出される遊戯王なのに人工(?)とは珍しい。
さて、初心者狩りの菊姫のアネゴ…少女?遊太と同い年なのか年上なのか。年上ならこれまた珍しいおねショタということに…。 (2018-01-29 10:24)

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