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第百話「D1グランプリ、本戦開始!」 作:イクス

第百話「D1グランプリ、本戦開始!」


D1グランプリ本戦前、突如魂が抜かれた状態となってしまったロカクタウンの3人と、J4の二人。それにきな臭いものを感じたロベルトは、本戦出場できなくなったカリン、真薄、J4の明石と石山と共に大会の裏を探ることとなった。もちろん、後に烏間も参加することとなった。
そして、本戦前夜。アルファと遊太は……。
「みんな、どう思っているんだろう……」
「どう思っているとは?」
「今回のD1グランプリについてだよ。デュエリストの祭典が、裏で何者かがなにかをしようとしている。こんなので本当に、思いっきりデュエルを楽しめるのかって……」
「……愚問だな。おまえはどんな状況であろうとも、それに打ち勝ってきた。最終的には楽しかったと言えただろう? なら、今度も共に打ち破ってやろう。そうして……楽しかったと言えるように」
「……前のは最終的にはそうなったけれど、今度はどうなんだろう。もっと大変なことが起こりそうな気もするけど……」
そんなことを話しながら、眠りについていった。


翌日、D1グランプリ本戦の日。遊太は両親と共に朝ご飯を食べていた。
「いやはや、まさか自分の息子が世界大会に出るなんて……お父さん、感慨深すぎて涙が出ちゃうぞ……」
「お父さん、もう出てる。だばだば落ちてる」
「もう、お父さんったら……」
「一応、ユイも出ているんだけどね」
「ああ、そうだったな……いやあ、息子と娘二人が世界的に有名になるなんて……ううっ」
「お父さん、涙出過ぎ」
「ああ、すまない。ところで、そろそろ会場へ行ってもいい時刻じゃないかい?」
「そうだけど……僕はもう少しデッキを調整してから行こうと思う。いきなりデュエルもありえるしね。ユイ、先行っててくれる?」
「ア、ハイ。わかりマシた」
ご飯を食べ終えた後、遊太は自分の部屋へと戻り、ユイは開会式が行われる会場近く、大会参加者達が集まっている所へ来た。全員来ている。菊姫、知多、アキラの3人だ。
「みなサーン!」
「おー、来たか。……って、遊太はまだか?」
「遊太サンは、もう少しデッキを調整するらしいそうデス」
「ギリギリまで調整か……まあ良いだろ。待つか」
「それにシテも……皆サン良いお友達デスね」
「ん? なんの話だ?」
「知多サン、菊姫サン、アキラサン……ここにはいマセんが真薄サン、カリンサン、ロベルトサン、烏間サン……あの遊太サンにあんなに友達ができるなんて……」
「ん? それはどういうことじゃん?」
ユイは、昨日遊太が自分に話したことを懇切丁寧に語った。それを聞いて、三人は「えーっ!?」といった顔をした。
「おい、それってちょっとおかしくないかじゃん? 前お父さんが話した時は、遊太は明るくて友達が沢山いたって言ってたじゃん」
「今のアイツからは、想像できねえな。昔はそんなだって」
「でも、俺たちはアイツの昔を全然知らないじゃん? 遊太も全然語ってくれないし……」
「思い出したくない、ことなのかもな……」
知多とアキラがそう語る中、菊姫は一人黙ったまま。そしてつぶやく。
「ひょっとしたら、遊太のお父さんお母さんは全部わかってんじゃねーのかな」
「全部わかって……?」
「コレは想像だけど、ホントは遊太、前の所じゃ今みたいなヤツじゃなかったのかもしれない。けれど、両親の前じゃそんなこといえなくて、ウソをついてたのかもな……。でも、子どものウソなんて、親は見抜くだろ。でも、それじゃ遊太を傷つけるかもしれない。だから、わかった上でアタシ達にそう言ったんじゃねーかと……」
「……」
菊姫の言葉はあくまで想像だったが、すんなりと4人の納得を得た。
「アイツにも、アタシ達に言いたくないことの一つや二つ、あるんだろうよ。アイツが話したくなったら、ゆっくり聞いてやろうじゃねえか。この話は聞かなかったことにしよう」
「そうだな」
「じゃん!」
「しかし、なんでワタシには話シテくれたのデショウか……?」
「うーむ、なんでだろうな? まあ、それはおいおいわかるだろ。どうやら遊太が来たみたいだぞ」
遠目に見えた遊太に向き直り、迎える。その顔はいつもの笑顔だったが、それを見た4人はそれそれ違う感想を抱く。
ユイは言いたくないことを話してくれた遊太に好意を感じ。
アキラは後ろめたいことを隠したがるのは、前の俺と一緒だなと思い。
知多はそんな遊太は、デュエルや自分たちと出会えなかったらどうなっていたのだろうと考え。
菊姫は言いたくないなら言わなくて良い、その時までアタシ達は待つだけだと心の中で固めた。
「デッキ調整で遅くなった! さあ、みんな行こう!」
「ああ、行くか!」
D1グランプリ本戦の開会式会場、プラクサススタジアムへと一同は向かった。


プラクサススタジアム。プラクサスシティに建てられた、6万人の観客を収容できるドーム球場。スタジアムの周りには、観客達だけではなく、出店や出場者の応援団、テレビカメラやカメラマン達などなど、多くの人々が集っていた。
遊太達は、出場者の印である大会専用デュエルディスクを手に、裏口から控え室へと入っていく。
そこには、多種多様な出場者達がいた。性別も年齢も人種も全く違う、多くの人々がいた。
もちろん、あの時本戦出場を賭けて戦っていたデュエリスト達もいる。
「あ、剣太郎君」
「遊太君……ですか」
「大丈夫? 本戦はきっと激しいデュエルが予測されるよ、あんなことがあったばかりで、精神的にキツイものがあるんじゃないかと思ったけど……」
「うん、僕は大丈夫。大会に出ることができなかったみんなのためにも、僕は戦うよ。そんなことより……他人の心配よりも自分のことを心配しなよ。僕たちはこれから、優勝を狙うライバル同士なんだから、他の人を気にしていると一瞬で出し抜かれちゃうよ?」
「ああ、うん。そうだね」
(よかった。この調子なら大丈夫そうだな)
遊太は安心し、周りを見渡す。見るからに強そうな人達が沢山いる。剣太郎の言葉は、あながち間違いではないと遊太は思う。
控え室の外からは、リトルバードの歌声が聞こえる。開会式が始まるまでに、何かやっているのだろう。
ここまで勝ち残ってきたデュエリスト達は、それぞれ瞑想したり集中したり、自撮りをしたりとそれぞれ思い思いのやり方で戦いへの準備をしていた。
遊太達も、それぞれ離れて戦いへの準備を備える。
そして、アナウンスが流れる。
「デュエリストの皆さん、開会式が始まります。それぞれ控え室からコートに出てください」
「……行くか」
遊太達やデュエリストは、控え室を出る。暗い通路を出て、光が満ちる。コートに出ると、大勢の観客達の歓声がズシンと響き渡る。まるで、地鳴りでも起きているかのように空気が震え、これ以上大きくなったら地割れでも起きるのではないかと思う程に。
そして、遊太以外にもデュエリスト出てくる。そのデュエリスト達の数は、ざっと5000人程か。
コートの真ん中に設営された、白いステージ。その上に立つのは、世界チャンピオンオグマ・ナロク。その両隣には、リトルバードのアオイとヒカリが立っていた。
そして、デュエリスト達がステージの前に全員集合したのを見計らって、オグマは手を上げると観客達は一斉に押し黙り、それを見計らってマイクを手に取る。
「あー、お集まりの皆さん。本日はお日柄も良く、本戦を開催するのにとても良い日ですね。皆様、本戦出場おめでとうございます」
「そして、ここから始まるのは今までとは違う戦いのロードです。弱者は淘汰され、強者のみが勝ち上がる決闘の舞台……勝ち上がるのは少数。そして……栄冠を勝ち取るのは1人だけです」
その言葉に、デュエリストだけではなく観客もゴクリとつばを飲む。これから行われるのは、予選なんかとは比べものにならないほどの戦いが行われるのだと、嫌でも予想された。
「その栄冠を勝ち取った者が、私と戦う権利を得ます。デュエリストなら、だれもが望むことです。それを目指して、励んでください。デュエリストのプライドを持って……!」
静かに語るオグマに、デュエリスト達はうなずく。
「それでは、本戦のルールを説明します。本戦のルールは、この町、プラクサスシティ全体を舞台としたバトルシティです。この町全域を歩き回り、出会ったデュエリストは問答無用でデュエルです。そして、勝ち残ったデュエリストはそのまま生き残り、負けた者はそのまま失格となります。そしてそれを繰り返し、残った40名がプラクサススタジアムに戻ることができます。そして、その40名でトーナメントを行い、残った者を優勝とします」
つまり、この全員と戦い、40名となるまでデュエルを続けなければならない。それがエンドレスとなるというサバイバルデュエル。これが本戦の内容。
「そして、参加者は1日1回はデュエルしないといけません。これはデュエルをしないデュエリストが本戦出場するのを防ぐためです。そして、本戦出場までに好成績を残したデュエリストはシード権を得ます。シード権を得た人間は、1回戦を免除されます。参加人数は、全世界から集まって5500人程……これが40名になるまで、シティ全域のデュエルを行います」
ざわ、ざわと会場が盛り上がりの予兆を立てる。
「えー、それでは後1時間後に……D1グランプリ本戦の開催を宣言します。以上!」
その言葉が終わると同時に、観客達が一斉に沸き立つ。ワーワーと盛り上がる観客達を尻目に、デュエリスト達は闘志をたぎらせる。
(本戦は、プラクサスシティを全土に行うサバイバルデュエル……トーナメントに出るには、1回も負けちゃダメなんだ……)
その思いは友達みんなにも伝わっていたのか。
「遊太」
「アキラ君」
「トーナメントで会おうぜ」
アキラはその言葉を残して去り、菊姫も。
「だよな、アタシ達がデュエルするのはトーナメントだよな。んじゃ、トーナメントで!」
「俺も、トーナメントじゃん!」
知多も目の前から去って行った。剣太郎は既に行っていたようだ。
「そうだよな。みんなはトーナメントに行く気満々なんだ……僕も! 絶対に生き残ってトーナメントへ行くぞー!」
デュエリストがスタジアムからちりぢりになる。遊太もプラクサスのどこかへと行く。
そして、1時間後……。
「3……2……1……本戦、スタートだ!」
かくして、D1グランプリ本戦は始まった!


第百話。終わり。
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