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27Turn 魘夢の魔族 作:ジェム貯めナイト
遊無のクラスでは交流生である現との会話も弾み、ほとんど即興で進行したレクリエーションがいくつかの企画を終えたところで、机を端に寄せた教室内で、千夜と現は互いにD・フェースを構える。
「何とかスムーズに進めたねー」
クイズ問題の司会を担当したクラスの女子が、遊無の隣で壁にもたれつつ緊張したー。と大きく伸びをすると、審判を務める須浦の合図とともに、2人はカードを5枚引き現との交流試合が始まった。
『デュエル――』
千夜LP4000。 現LP4000。
「あたしから行くよーっ! 早速御伽噺の始まり始まり! 魔法カード《アル=ヌジューム・アル=キターブ》の発動だよ!」
「手札から“アル=ナジュム”1体を除外することで、レベルが2つ高い次の枠物語である“アル=ナジュム”1体をデッキから特殊召喚できる」
発動された効果を須浦が解説するとともに、千夜のデッキが自動でシャッフルされ、選び出されたカードがデッキトップに移動すると、そのカードを引いた千夜は口上を述べつつ液晶盤へと置く。
「あたしは《アル=ナジュム・ナラティブ アラァ・アディーン》を除外! 星々が巡り移ろうとも、その物語は未来永劫語り継がれる! 現れて――《アル=ナジュム・マリカ シェヘラザード》……!」
シェヘラザード攻撃力2400。
「麗しい語り手の妃と謁見できて、大変光栄だ」
「“伝記”の王妃様が魅せるのはこれから! 効果発動――カーナ ヤー マカーン……! 昔々あるところに、魔法のランプを手にした商人がいましたとさ!」
現れた王妃が右腕を伸ばし、左手を胸に当てたまま物語を語らうとともに、手のひらから発した雷が渦巻いて、ランプを手にした商人を形作る。
「このターンが明けるまで、除外状態のアラァ・アディーンを場に呼び出すよ!」
そしてカードを2枚伏せ、千夜がターンを終えるとともに現れた商人がランプを擦ると、ランプの注ぎ口から発した雷が消滅する商人と入れ替わり、雷の霊体をした魔神の姿となり現れた。
「ターン終了とともにアラァ・アディーンは再び除外されるけど、除外時の効果でデッキから同じ物語――レベル5の“アル=ナジュム”1体を呼び出せる」
「解説助かるよ須浦君! あたしが呼び出すのは《アル=ナジュム・ナラティブ イフリート》だよ!」
イフリート攻撃力1800。
「見事だよ笑原さん! 御伽噺が終わるとともに、新たな物語へと移り変わる。君はなんてデュエリストなんだ……!」
大げさに身振り手振りをしながらも、カードをドローした現は手札で顔を隠すとともに、周りに聞こえないくらいの小さな声で毒づいた。
「……てめぇがでしゃばらなければ、器のアマとやってたのに……」
再び顔を上げた現は、手札の1枚を千夜を含むギャラリーに見えるように掲げると、そのまま液晶盤に置くことで発動させる。
「僕はフィールド魔法《夢綜の都-邯鄲》を発動するよ。このカードの発動とともに、デッキからレベル4以下の夢を綜べる魔族1体を手札に加える」
「見た事のないカードだ……夢枕君は発動したフィールド魔法の効果で、デッキからモンスターを手札に加えました」
須浦が未知のカードに警戒を深めつつ解説する中、周囲にはうっすらと靄がかかり、所々に古跡が目立つ幻想的な古都へと様変わりする。
夢綜の都-邯鄲 フィールド魔法
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル4以下の
「夢綜」モンスター1体を手札に加える事ができる。
(2):お互いのプレイヤーは、フィールドの裏側表示モンスターの表示形式
を変更できず、自分のエンドフェイズに自分フィールドの裏側表示モンス
ターの数×300ダメージを受ける。
「そして手札に加えた《夢綜妖魔-サキュバス》を召喚――」
発生している靄の中から、コウモリに似た翼を持つ煽情的な衣装に身を包んだ妖魔が現れると、薄っすらと笑みを浮かべつつ八重歯を見せながら翼を羽ばたかせ、宙を漂う。
夢綜妖魔-サキュバス
効果モンスター
/闇/レベル3/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合、フィールドのモンスター1体
を対象に発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2):このカードが墓地に存在し、相手フィールドに裏側表示モンスターが
存在する場合、相手エンドフェイズに発動できる。このカードを特殊召喚
する。
『幻想魔族……!?』
「夢枕君、最新のカードである幻想魔族を使用してきました!」
解説も務める須浦も興奮のあまり、マイクを握る手に力が入る中、遊無は現の呼び出したモンスターから漂う微かな気配を察し、瞬きも忘れるほどに凝視する。
「千夜の御伽噺に対抗する――夢の世界の住人といったところか」
「あのカード――いえ、気のせいだといいけど……」
自らが呼び出したモンスターを凝視する遊無の姿を視界に捉えると、現は額に冷や汗を滲ませつつ、早くデュエルを終わらせようと、懐から中心の穴に糸を通した硬貨を取り出す。
「僕はシェヘラザードに対し、サキュバスの効果発動。寐々卒倒――」
「なんかヤバそう。今のうちに使っちゃお! シェヘラザードの効果――カーナ ヤー マカーン……!」
2人が同時に効果名を宣言すると、先に御伽噺の王妃が効果を適用し、再びランプを手にした商人が千夜の場に現れる。
そして現が持つ糸で吊るされた硬貨が独りでに揺れ出すと、夢を統べる妖魔の額で開いた眼が紫色の閃光を発するとともに、御伽噺の王妃は瞳を閉じて倒れ込んだ。
「シェヘラザードが……!?」
「これじゃまるで――眠り姫みたい……」
「僕の“夢綜”達が持つ能力――寐々卒倒により、君のモンスターは“アスリープ化”される」
「夢枕君のモンスターが発動した効果で、笑原のモンスターは裏側守備表示に変更されました」
D・フェースの表示に従い、千夜が御伽噺の王妃のカードを裏返し、横向きに液晶画面へと置き直すのを確認すると、夢を統べる妖魔は靄で覆われ消滅していく。
「更に僕はサキュバスをリリースすることにより、手札からこのカードを特殊召喚する。現れろ――《夢綜魔女-ネヴァン》……!」
そして現の場には黒いローブを身に纏い、肩に1羽のカラスを乗せた中年の魔女が現れると、宝玉のはめ込まれた杖を高々と掲げた。
ネヴァン攻撃力0。
「また攻撃力0……?」
「ダメージを受けない守備表示じゃないのか……?」
観戦する数名の生徒が口々にささやく中、現がバトルフェイズを宣言すると、夢を統べる魔女の持つ杖に瞼を閉じた眼の文様が浮かび上がった。
「僕はこのネヴァンでイフリートを攻撃――フィアーズ・オブセッション……!」
「何を狙ってるか知らないけど――イフリートの反撃! アズィーム・サーイカ……!」
攻撃を宣言したにもかかわらず、一向に動くそぶりを見せない夢を統べる魔女へと、ランプの魔神は攻撃を仕掛ける。
「かかった! 相手の場にアスリープ化したモンスターが存在する限り、ネヴァンが戦闘で破壊されることは無い」
魔神の指先から発した閃光が靄のかかった空に吸い込まれると、発生した雨雲から火を纏った落雷が夢を統べる魔女に迫るが、掲げた杖の宝玉に浮かんだ瞼がゆっくりと開くとともに、落雷は夢を統べる魔女をすり抜けて地面を焦がす。
夢綜魔女-ネヴァン
効果モンスター
/闇/レベル6/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできな
い。
(1):相手フィールドに裏側表示モンスターが存在する場合、このカードは
自分フィールドの表側表示の「夢綜」モンスター1体をリリースし、手札
から特殊召喚できる。
(2):相手フィールドに裏側表示モンスターが存在する場合、このカードは
戦闘では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージ
は代わりに相手が受ける。
「何が起きた……!?」
「……そして僕が受けるダメージは、君に押し付けられる」
再び夢を統べる魔女の輪郭がはっきりと現れると同時に、宝玉に映る完全に開かれた眼から火を纏った雷が迸り、千夜を貫くとともに雷鳴が轟いた。
「っ――ぁ……!」 千夜LP4000→2200。
「カードを2枚伏せターン終了。大丈夫ですか? 笑原さん……?」
その場で膝をついた千夜に現は口角を上げた口元を隠しつつ、心配の言葉を掛けるが、再び立ち上がった千夜は静かにデッキへと手を掛けた。
「……夢枕君のターンが終わったことで、アラァ・アディーンは除外されて、その効果で2体目のイフリートをデッキから呼び出すよ」
再び擦られたランプから、既に現れている魔神とは顔つきの異なる魔神が出現すると、千夜はターンを開始しデッキからカードをドローする。
「……中々に厄介だけど、それはシェヘラザードが裏側表示の時だけだよね? あたしはシェヘラザードを攻撃表示に――痛っ!?」
裏側表示のカードに触れようとした瞬間、カードから発せられた電流に思わず手を引っ込める千夜を見て、現はこれまでより生き生きとした口ぶりで説明する。
「無駄だよ笑原さん。邯鄲が発動している限り、アスリープ化したモンスターは決して目覚めることは無い――延々と悪夢に魘されるんだ……!」
「覚めない悪夢――それが夢枕の“夢綜”デッキの本懐という訳か……」
「千夜……」
眼を閉じたまま悪夢に魘される御伽噺の王妃の姿に、須浦は表情を引きつらせて親指の爪を噛み、八千代は戸惑う千夜を心配する。
「……てめぇ如きに使うのは勿体ねぇぐらいだ」
「……? 夢枕君、今何を……?」
「何でも――更に邯鄲はアスリープ化したモンスターのコントローラーに、自身のターンが終わる時アスリープ化したモンスター1体に付き、300ダメージを与えるよ」
裏側表示にした上、ダメージまで与える。千夜は引いたばかりのカードに視線を落とすと、目を瞑って明らかとなった夢枕の戦術を頭の中で反芻する。
「アスリープ化を解かないと、千夜に勝ち目はない……」
「……眠り姫は王子様のキスで目覚めるもの――さあさあ皆様! 御伽語りはこれからだよっ!」
再び目を開いた千夜がカードを指の間に挟んだまま大きく手を広げ、どこからかスポットライトが彼女に注がれるとともに数人の仲間から歓声が上がると、訝しげに千夜を眺める現を尻目に、千夜は2枚の手札の内、引いたばかりのカードを引き抜いた。
「始まった! 千夜の御伽語り……!」
「……ちっ、意味分かんねぇよこのアマガキ――」
「これよりあたし――笑原千夜がお見せするは、千夜に渡る御伽噺に聞き入る王様! あたしはイフリート1体と、アスリープ化したシェヘラザードをリリース!」
現れたばかりのランプの魔神と、眠ったままの王妃を砂塵が覆い隠すと、千夜が手札から掲げたモンスターを見て、須浦は納得したかのように頷く。
「確かに――“アドバンス召喚”で場から離せばアスリープ化は解ける」
「あたしの“もう一枚の切り札”をお披露目しちゃうよ! 現れて! 不義の者どもを断罪する砂丘の王! 《アル=ナジュム・マリク シャフリヤール》……!」
シャフリヤール攻撃力2600。
「笑原が持つ切り札の一枚――シャフリヤールがアドバンス召喚されました!」
「僕のアスリープロックの抜け穴を突くとはね。でもそんなことは想定済み! 罠カード《スリープ・パララサス》で、シャフリヤールは金縛りにするっ!」
現が伏せたカードのうち1枚の発動とともに、夢を統べる魔女の杖にはめ込まれた宝玉は再び眼を開き、御伽噺の王に向けて波紋のように広がる念力を発する。
スリープ・パララサス 通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに「夢綜」モンスターが存在する場合、相手フィール
ドの表側表示モンスター1体を対象に発動できる。このターンそのモンス
ターは攻撃できず、効果は無効化されエンドフェイズに裏側守備表示にな
る。
「やだぁ……そんなにマジマジ見つめられたら、千夜照れちゃーうっ――なんてね! カウンター罠《DRMバリア》!」
両手で頬を押さえ、照れ隠しするように首を左右に振っておどける千夜が ペロリと舌を出すと、御伽噺の王の前で無数の文字列が障壁へと変わり、錠前が絞められ強固となった障壁が到達した念力を弾く。
DRMバリア カウンター罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに「アル=ナジュム」モンスターが存在し、罠カード
が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、自分
の墓地の「アル=ヌジューム・アル=キターブ」1枚を手札に加えること
ができる。
「あたしの場に御伽噺の住人がいることで、発動したトラップの効果は無効! そして墓地に御伽噺の端末があれば手札に加えられるよ!」
「……防がれちゃったか」
「コピーは合法。所持は枉法。卸は通報YO! YO!」
左手を耳に当て、身体を左右に揺らしてリズムを取りつつ、口を尖らせ右手で現を指差していた千夜が拳を突き上げると、高らかにバトル開始を宣言する。
「バトル! アスリープ化したシェヘラザードがいなくなったから、今のネヴァンはただの攻撃力0のモンスター」
「くっ……」
「雷が――砂丘が――御伽噺が呼ぶ! 不貞を正せとあたしを呼ぶ! 聞けよ咎人達! “王朝の雷”が今、裁きを下す! マラキーヤ・ラアド……!」
御伽噺の王の足元から生じた雷が立ち昇り、枝分かれして広がっていくと、3階建てにしては異様に高い教室の天井まで達した雷は巨大な王城を形作り、塔の先端から発した電撃を夢を統べる魔女へと降り注がせていく。
「ぐあっ……!?」 現LP4000→1400。
「笑原の場には攻撃力1800のイフリートが残っているため、この攻撃を防げなければ夢枕君の敗北となる……!」
「この程度っ――“夢綜”モンスターが破壊されたため、罠発動――《リピート・ララバイ》! デッキからレベル4以下の《夢綜獣-ピンクエレファント》を場に呼び出す……!」
残る伏せカードを発動させた現の場には靄が発生し、やがて晴れるとそこには酒瓶を鼻で掴んだピンク色の象が現れ、眠たげに眼をショボつかせる。
リピート・ララバイ 通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの表側表示の「夢綜」モンスターが、戦闘で破壊され
た場合、または相手によって墓地へ送られた場合に発動できる。デッキか
らレベル4以下の「夢綜」モンスター1体を特殊召喚し、相手モンスター
1体を選んで裏側表示にする。
夢綜獣-ピンクエレファント
効果モンスター
/闇/レベル2/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「夢綜」モンスターの種類の数まで、相手フィール
ドの表側表示モンスターを対象に発動できる。そのモンスターを裏側守備
表示にする。
(2):このカードが墓地に存在する場合、相手モンスターの直接攻撃宣言時
に発動できる。このカードを特殊召喚し、そのモンスターを裏側守備表示
にする。
ピンクエレファント守備力0。
「そして《リピート・ララバイ》の効果で、イフリートをアスリープ化させる!」
「またぁーっ? カードを1枚伏せて、あたしはターン終了――」
「笑原さんのエンドフェイズに、墓地のサキュバスの効果発動! アスリープ化したモンスターがいるため墓地から蘇生し、シャフリヤールもアスリープ化させてもらうよ!」
靄の中から現れた夢を統べる妖魔が額の眼を開くと、再び現が吊り下げた硬貨がひとりでに揺れ出し、御伽噺の王が睡魔に襲われてその場に倒れこもうとする。
「ここで使わなくっちゃ! 罠カード《パイレーツ・オブ・クラックダウン》……! シャフリヤールを除外することで、墓地から王妃――シェヘラザードを蘇らせるよ!」
完全な眠りへと落ちる前に、御伽噺の王は雷の霊体となって霧散し、再び収束した雷は御伽噺の王妃へと再構成される。
「2体を入れ替えることで王様を対象とした効果をかわした――」
「いわゆるサクリファイス・エスケープを笑原は行ったわけだ」
八千代と須浦がそれぞれ千夜の行ったプレイングを解説するとともに、何人かの生徒が頷き感心する中、再び現へとターンは移ろうとする。
「イフリートがアスリープ化されたことで、邯鄲の効果で笑原さんに300ダメージを与えるよ」
靄の中にそびえる古跡群を名所とした古都から怪しげな光が発するとともに、眠りこけるランプの魔神は悪夢に魘され、千夜のLPを蝕むとともに現はカードをドローする。
千夜LP2200→1900。
「まずはその王妃を対象に、ピンクエレファントの効果発動! このカードも相手モンスターをアスリープ化させられる……!」
「だったらもう一度シェヘラザードの効果――カーナ ヤー マカーン! 今宵呼び出すは前妃の不義により、疑念に囚われた砂丘の王様! もう一度現れて! シャフリヤール……!」
酒瓶を鼻で掴んだピンクの象は、頭を上げて瓶の中身をラッパ飲みすると、閉じた眼を開眼し、語らいを終えた御伽噺の王妃を強制的に昏倒させる。
そして雷が渦巻くとともに、再び御伽噺の王は周囲に雷を迸らせつつ現れた。
「シャフリヤールが現れた事で、このカードはその本懐を発揮するよ! 墓地の《パイレーツ・オブ・クラックダウン》を除外することで効果が発動するっ……!」
「レベル7の“アル=ナジュム”が現れた時、そのレベルより低い場のモンスターはエンドフェイズまで除外される」
パイレーツ・オブ・クラックダウン 通常罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「アル=ナジュム」モンスター1体を除外して発動
できる。自分の墓地から「アル=ナジュム」モンスター1体を特殊召喚す
る。
(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにレベル7「アル=ナジ
ュム」モンスターが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。墓地のこのカ
ードを除外してフィールドのレベル6以下のモンスターをエンドフェイズ
まで除外する。
「海賊版は一斉摘発! サキュバスとピンクの象さんには消えてもらうよっ!」
「収監などさせない! 速攻魔法《まどろみの芳香》……!」
現が引いたばかりのカードを発動させると、辺りには入眠効果のある香りが漂い始め、現を除く全員がうつらうつらとする中、当の現は2枚の手札を見ると迷いを生じさせていた。
「……っ!?」
「どうしたんだ? 遊無さん――」
頭を押さえつつも現と一瞬視線を合わせた遊無は、彼から発する気配に身震いしていた。
「いえ――今夢枕さんから妙な気配が……」
「妙な気配……?」
八千代も現へと意識を向ける中、まずい――。と現は手札に視線を落としつつ、2体のモンスターのうち、レベルの高い方のモンスターへと意識を向ける。
「…………」
やがて彼は意を決して、D・フェースの液晶盤に置かれた夢を統べる妖魔とピンクの象を裏向きに置き直すとともに、手札のモンスター“1体のみ”を千夜へと見せた。
「……《まどろみの芳香》は、僕の場にいるモンスター2体をアスリープ化させることで、手札から“夢綜”モンスターを“2体まで”呼び出せる」
まどろみの芳香 速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの「夢綜」モンスター2体を対象に発動できる。その
モンスターを裏側表示にし、手札の「夢綜」モンスターを2体まで選んで
特殊召喚する。
「上手い。《パイレーツ・オブ・クラックダウン》はレベルを参照するから、裏側モンスターは対象外だ」
「よって僕は――“1体”のモンスターを特殊召喚する! ……破壊と殺戮をもたらす女王よ! 人々に終わりなき魘夢をもたらせ! 現れろ――《魘環の夢綜女王-モリガン》……!」
現の場に漂う芳香が一瞬で霧散し、戦乱と魘夢による苦痛の絶叫が響き渡ると、2頭の赤馬に引かれた戦車の上で、真っ赤なドレスの上に血塗れの鎧を身に付けた争いの女王が手にする槍を高々と掲げた。
魘環の夢綜女王-モリガン
効果モンスター
/闇/レベル7/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの攻撃力は、フィールドの裏側表示モンスターの数×10
00アップする。
(2):自分のフィールドゾーンに「夢綜の都-邯鄲」が存在する場合に発動
できる。フィールドの裏側表示モンスターの数×300ダメージを相手に
与え、その数値分このカードの攻撃力をアップする。
「これは――夢枕の切り札が登場か……」
「夢を統べる争いの女王は、アスリープ化したモンスター1体に付き攻撃力を1000アップさせる……!」
夢綜の女王が槍を掲げると、中心部へと複数はめ込まれた赤黒い球に瞳孔が浮かび上がり、発せられた邪悪なオーラが魘される4体のモンスターから力を吸収する。
モリガン攻撃力0→4000。
「攻撃力――4000!?」
「更にモリガンは、邯鄲が発動している場合にその力を最大限発揮できる! アスリープ化したモンスター1体に付き300ダメージを与え、攻撃力は与えた数値分上昇する……!」
槍にはめ込まれた赤黒い球――いや、戦災犠牲者からえぐり取られた眼球は槍から消滅すると、同じく戦災犠牲者の物である無数の目玉とともに宙に出現し、一斉に目玉から発した光線を魘され続けるモンスターへと降り注がせる。
「うぇぇ……気持ち悪っ!」
「禁術による終わりなき悪夢――フォビドゥン・ナイトメア……!」
モリガン攻撃力4000→5200。 千夜LP1900→700。
「攻撃力の上がったモリガンに攻撃されれば、笑原はひとたまりもない」
「陽を拝むことなく、常闇に臥せろ……! モリガンの攻撃――イビル・スローター!」
宙に浮いた目玉が消失すると、代わりに両目がなく武器を手にした無数の亡者が出現し、王の首を刎ねるべく一斉に襲い掛かる。
「千夜が負ける……!」
「大丈夫だよ八千代さん。千夜さんならきっと――」
クラス中の誰もが勝負あった。と肩を落とす中、遊無の視線は窮地に陥ろうとも、平然として場に伏せたカードに視線を向ける彼女の姿を捉えていた。
「まだ手はあるし! 手札の“御伽噺の端末”1枚を捨てることで、速攻魔法《リスニング・サマル》を発動だよっ!」
「モンスターをデッキから呼び出すだけのカードか。僕の勝ちは決まったな」
リスニング・サマル 速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札の「アル=ヌジューム・アル=キターブ」1枚を捨てて発動でき
る。デッキから「アル=ナジュム」モンスター1体を特殊召喚する。
「駄目だ……そのカードじゃ攻撃は防げない――」
「それはどうかな八千代ちゃん! あたしはデッキから最後のイフリートを特殊召喚! そしてこの特殊召喚があたしに勝利をもたらす一手となるよ……!」
3体目のランプの魔神が現れると、突如としてアスリープ化したモンスターも含め、場に存在するモンスター達の周りを発生した雷が一周する。
「馬鹿な――何が起きてやがる……!?」
「笑原……やはり“それ”が狙いだったか――」
「さっすが須浦君! あたしとよくデュエってるだけあって察しがいいね! シャフリヤールがいる状態で“御伽噺の住人”が現れた時、その効果が強制発動されるんだよ!」
アル=ナジュム・マリク シャフリヤール
効果モンスター
/地/レベル7/雷/攻撃力2600。
(1):このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、「アル=ナジ
ュム」モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動する。フィールドの
モンスターをエンドフェイズまで除外する。その後この効果で除外したモ
ンスターの数×200ダメージを相手に与える。
「その効果でシャフリヤールを含む全てのモンスターをこのターンが明けるまで除外し、更に除外されたモンスター1体に付き200ダメージを夢枕君に与えるよ!」
「1体に付き200って――」
「そうか! 呼び出したモンスターも含めて、千夜と夢枕君の場には計7体のモンスター!」
「夢枕のLPは1400のため、7体目を呼び出したことで丁度LPを削り切れるということだ」
やがて閃光が迸ると雷の輪を潜り抜けた全てのモンスターが消滅し、一斉に雷の輪が現を取り囲むと、輪の中心から発生した電撃が現へと襲い掛かる。
「王様の“繊細な心”は、裏切りを絶対に許さないんだ! これにておしまいっ! ハッサース・カルブ……!」
現が口を開け、ありえない。と言わんばかりにわなわなと身震いする中、発せられた無数の電撃が轟音を立てて現を貫き、彼のLPは尽きる。
「が……はっ……」 現LP1400→0。
「……俺だ。初日は感づかれずに過ごせたぜ」
デュエルが終わるとともに、男子トイレの個室へと避難した現は、D・フェースで彼を送り出した張本人――ゴルイニチと通話していた。
『……それは上々』
「良くねぇよ。……あのアマガキめっ! 俺が“こいつ”を出してさえいれば……!」
ドン――。と現が個室の壁を拳で殴り、壁を陥没させると取り出した“真の切り札”であるカードを眺めつつ、苛立ち交じりで自らの名を呼ぶゴルイニチに応答する。
『怒りに流されるな。お前が医学会の者どもに行う復讐は、まだ序の段階だ』
「分かってるよ。父さんから“あの療法”の論文を奪い取った――医学会の奴らをブチのめすまでは……!」
通話を切り、現は再び抜け出したレクリエーションへと戻って行く。
何事も無く戻った現は、遊無達に再び取り繕った笑顔を向けつつ、後ろ手で隠した拳を震わせる。
復讐はまだこれからだと平静を装いながら、現は勝利の喜びで浮かれる千夜に賛辞を送りつつも、このアマガキには必ず自らが真の実力を分からせると、心の中で固く誓ったのであった。
「あたし! 千夜と――」
「僕、藤次の――」
『ビナリウス回顧録!』
千夜「てゆーか須浦君の下の名前、久しぶりに聞いた気がするんだけど?」
須浦「笑原――僕達中等部で知り合ったそれなりの付き合いだろ……」
千夜「そだったねー。じゃあ気が向いたら呼んであげよっか……?」
須浦「……好きにしろ。今回のデュエルだが、夢枕は幻想魔族のテーマ“夢綜”で、アスリープ化を狙う戦術を使ってきた」
千夜「裏側守備表示にしたところを、キーカードのフィールド魔法、邯鄲で目覚めを阻害しつつ、効果ダメージでこっちのLPを削るロックバーンってとこかな」
須浦「基本はそうみたいだが、笑原には悪いけど、彼はまだ“本気”を出していなかったようにも思える」
千夜「えぇーっ、何でさ! デュエルはお互い全力で楽しんで、最後には笑顔で称え合うもんだよ?」
須浦「ということで、次回は商本先輩と、由緒ある家柄“常盤”を名乗る転入生のデュエルが繰り広げられる。ほら、タイトルコールをするよ」
『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -羅漢の竜王-』
千夜「トンボの飛行機と幻竜達の激戦――見どころはこれからだよっ!」
「何とかスムーズに進めたねー」
クイズ問題の司会を担当したクラスの女子が、遊無の隣で壁にもたれつつ緊張したー。と大きく伸びをすると、審判を務める須浦の合図とともに、2人はカードを5枚引き現との交流試合が始まった。
『デュエル――』
千夜LP4000。 現LP4000。
「あたしから行くよーっ! 早速御伽噺の始まり始まり! 魔法カード《アル=ヌジューム・アル=キターブ》の発動だよ!」
「手札から“アル=ナジュム”1体を除外することで、レベルが2つ高い次の枠物語である“アル=ナジュム”1体をデッキから特殊召喚できる」
発動された効果を須浦が解説するとともに、千夜のデッキが自動でシャッフルされ、選び出されたカードがデッキトップに移動すると、そのカードを引いた千夜は口上を述べつつ液晶盤へと置く。
「あたしは《アル=ナジュム・ナラティブ アラァ・アディーン》を除外! 星々が巡り移ろうとも、その物語は未来永劫語り継がれる! 現れて――《アル=ナジュム・マリカ シェヘラザード》……!」
シェヘラザード攻撃力2400。
「麗しい語り手の妃と謁見できて、大変光栄だ」
「“伝記”の王妃様が魅せるのはこれから! 効果発動――カーナ ヤー マカーン……! 昔々あるところに、魔法のランプを手にした商人がいましたとさ!」
現れた王妃が右腕を伸ばし、左手を胸に当てたまま物語を語らうとともに、手のひらから発した雷が渦巻いて、ランプを手にした商人を形作る。
「このターンが明けるまで、除外状態のアラァ・アディーンを場に呼び出すよ!」
そしてカードを2枚伏せ、千夜がターンを終えるとともに現れた商人がランプを擦ると、ランプの注ぎ口から発した雷が消滅する商人と入れ替わり、雷の霊体をした魔神の姿となり現れた。
「ターン終了とともにアラァ・アディーンは再び除外されるけど、除外時の効果でデッキから同じ物語――レベル5の“アル=ナジュム”1体を呼び出せる」
「解説助かるよ須浦君! あたしが呼び出すのは《アル=ナジュム・ナラティブ イフリート》だよ!」
イフリート攻撃力1800。
「見事だよ笑原さん! 御伽噺が終わるとともに、新たな物語へと移り変わる。君はなんてデュエリストなんだ……!」
大げさに身振り手振りをしながらも、カードをドローした現は手札で顔を隠すとともに、周りに聞こえないくらいの小さな声で毒づいた。
「……てめぇがでしゃばらなければ、器のアマとやってたのに……」
再び顔を上げた現は、手札の1枚を千夜を含むギャラリーに見えるように掲げると、そのまま液晶盤に置くことで発動させる。
「僕はフィールド魔法《夢綜の都-邯鄲》を発動するよ。このカードの発動とともに、デッキからレベル4以下の夢を綜べる魔族1体を手札に加える」
「見た事のないカードだ……夢枕君は発動したフィールド魔法の効果で、デッキからモンスターを手札に加えました」
須浦が未知のカードに警戒を深めつつ解説する中、周囲にはうっすらと靄がかかり、所々に古跡が目立つ幻想的な古都へと様変わりする。
夢綜の都-邯鄲 フィールド魔法
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル4以下の
「夢綜」モンスター1体を手札に加える事ができる。
(2):お互いのプレイヤーは、フィールドの裏側表示モンスターの表示形式
を変更できず、自分のエンドフェイズに自分フィールドの裏側表示モンス
ターの数×300ダメージを受ける。
「そして手札に加えた《夢綜妖魔-サキュバス》を召喚――」
発生している靄の中から、コウモリに似た翼を持つ煽情的な衣装に身を包んだ妖魔が現れると、薄っすらと笑みを浮かべつつ八重歯を見せながら翼を羽ばたかせ、宙を漂う。
夢綜妖魔-サキュバス
効果モンスター
/闇/レベル3/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合、フィールドのモンスター1体
を対象に発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2):このカードが墓地に存在し、相手フィールドに裏側表示モンスターが
存在する場合、相手エンドフェイズに発動できる。このカードを特殊召喚
する。
『幻想魔族……!?』
「夢枕君、最新のカードである幻想魔族を使用してきました!」
解説も務める須浦も興奮のあまり、マイクを握る手に力が入る中、遊無は現の呼び出したモンスターから漂う微かな気配を察し、瞬きも忘れるほどに凝視する。
「千夜の御伽噺に対抗する――夢の世界の住人といったところか」
「あのカード――いえ、気のせいだといいけど……」
自らが呼び出したモンスターを凝視する遊無の姿を視界に捉えると、現は額に冷や汗を滲ませつつ、早くデュエルを終わらせようと、懐から中心の穴に糸を通した硬貨を取り出す。
「僕はシェヘラザードに対し、サキュバスの効果発動。寐々卒倒――」
「なんかヤバそう。今のうちに使っちゃお! シェヘラザードの効果――カーナ ヤー マカーン……!」
2人が同時に効果名を宣言すると、先に御伽噺の王妃が効果を適用し、再びランプを手にした商人が千夜の場に現れる。
そして現が持つ糸で吊るされた硬貨が独りでに揺れ出すと、夢を統べる妖魔の額で開いた眼が紫色の閃光を発するとともに、御伽噺の王妃は瞳を閉じて倒れ込んだ。
「シェヘラザードが……!?」
「これじゃまるで――眠り姫みたい……」
「僕の“夢綜”達が持つ能力――寐々卒倒により、君のモンスターは“アスリープ化”される」
「夢枕君のモンスターが発動した効果で、笑原のモンスターは裏側守備表示に変更されました」
D・フェースの表示に従い、千夜が御伽噺の王妃のカードを裏返し、横向きに液晶画面へと置き直すのを確認すると、夢を統べる妖魔は靄で覆われ消滅していく。
「更に僕はサキュバスをリリースすることにより、手札からこのカードを特殊召喚する。現れろ――《夢綜魔女-ネヴァン》……!」
そして現の場には黒いローブを身に纏い、肩に1羽のカラスを乗せた中年の魔女が現れると、宝玉のはめ込まれた杖を高々と掲げた。
ネヴァン攻撃力0。
「また攻撃力0……?」
「ダメージを受けない守備表示じゃないのか……?」
観戦する数名の生徒が口々にささやく中、現がバトルフェイズを宣言すると、夢を統べる魔女の持つ杖に瞼を閉じた眼の文様が浮かび上がった。
「僕はこのネヴァンでイフリートを攻撃――フィアーズ・オブセッション……!」
「何を狙ってるか知らないけど――イフリートの反撃! アズィーム・サーイカ……!」
攻撃を宣言したにもかかわらず、一向に動くそぶりを見せない夢を統べる魔女へと、ランプの魔神は攻撃を仕掛ける。
「かかった! 相手の場にアスリープ化したモンスターが存在する限り、ネヴァンが戦闘で破壊されることは無い」
魔神の指先から発した閃光が靄のかかった空に吸い込まれると、発生した雨雲から火を纏った落雷が夢を統べる魔女に迫るが、掲げた杖の宝玉に浮かんだ瞼がゆっくりと開くとともに、落雷は夢を統べる魔女をすり抜けて地面を焦がす。
夢綜魔女-ネヴァン
効果モンスター
/闇/レベル6/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできな
い。
(1):相手フィールドに裏側表示モンスターが存在する場合、このカードは
自分フィールドの表側表示の「夢綜」モンスター1体をリリースし、手札
から特殊召喚できる。
(2):相手フィールドに裏側表示モンスターが存在する場合、このカードは
戦闘では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージ
は代わりに相手が受ける。
「何が起きた……!?」
「……そして僕が受けるダメージは、君に押し付けられる」
再び夢を統べる魔女の輪郭がはっきりと現れると同時に、宝玉に映る完全に開かれた眼から火を纏った雷が迸り、千夜を貫くとともに雷鳴が轟いた。
「っ――ぁ……!」 千夜LP4000→2200。
「カードを2枚伏せターン終了。大丈夫ですか? 笑原さん……?」
その場で膝をついた千夜に現は口角を上げた口元を隠しつつ、心配の言葉を掛けるが、再び立ち上がった千夜は静かにデッキへと手を掛けた。
「……夢枕君のターンが終わったことで、アラァ・アディーンは除外されて、その効果で2体目のイフリートをデッキから呼び出すよ」
再び擦られたランプから、既に現れている魔神とは顔つきの異なる魔神が出現すると、千夜はターンを開始しデッキからカードをドローする。
「……中々に厄介だけど、それはシェヘラザードが裏側表示の時だけだよね? あたしはシェヘラザードを攻撃表示に――痛っ!?」
裏側表示のカードに触れようとした瞬間、カードから発せられた電流に思わず手を引っ込める千夜を見て、現はこれまでより生き生きとした口ぶりで説明する。
「無駄だよ笑原さん。邯鄲が発動している限り、アスリープ化したモンスターは決して目覚めることは無い――延々と悪夢に魘されるんだ……!」
「覚めない悪夢――それが夢枕の“夢綜”デッキの本懐という訳か……」
「千夜……」
眼を閉じたまま悪夢に魘される御伽噺の王妃の姿に、須浦は表情を引きつらせて親指の爪を噛み、八千代は戸惑う千夜を心配する。
「……てめぇ如きに使うのは勿体ねぇぐらいだ」
「……? 夢枕君、今何を……?」
「何でも――更に邯鄲はアスリープ化したモンスターのコントローラーに、自身のターンが終わる時アスリープ化したモンスター1体に付き、300ダメージを与えるよ」
裏側表示にした上、ダメージまで与える。千夜は引いたばかりのカードに視線を落とすと、目を瞑って明らかとなった夢枕の戦術を頭の中で反芻する。
「アスリープ化を解かないと、千夜に勝ち目はない……」
「……眠り姫は王子様のキスで目覚めるもの――さあさあ皆様! 御伽語りはこれからだよっ!」
再び目を開いた千夜がカードを指の間に挟んだまま大きく手を広げ、どこからかスポットライトが彼女に注がれるとともに数人の仲間から歓声が上がると、訝しげに千夜を眺める現を尻目に、千夜は2枚の手札の内、引いたばかりのカードを引き抜いた。
「始まった! 千夜の御伽語り……!」
「……ちっ、意味分かんねぇよこのアマガキ――」
「これよりあたし――笑原千夜がお見せするは、千夜に渡る御伽噺に聞き入る王様! あたしはイフリート1体と、アスリープ化したシェヘラザードをリリース!」
現れたばかりのランプの魔神と、眠ったままの王妃を砂塵が覆い隠すと、千夜が手札から掲げたモンスターを見て、須浦は納得したかのように頷く。
「確かに――“アドバンス召喚”で場から離せばアスリープ化は解ける」
「あたしの“もう一枚の切り札”をお披露目しちゃうよ! 現れて! 不義の者どもを断罪する砂丘の王! 《アル=ナジュム・マリク シャフリヤール》……!」
シャフリヤール攻撃力2600。
「笑原が持つ切り札の一枚――シャフリヤールがアドバンス召喚されました!」
「僕のアスリープロックの抜け穴を突くとはね。でもそんなことは想定済み! 罠カード《スリープ・パララサス》で、シャフリヤールは金縛りにするっ!」
現が伏せたカードのうち1枚の発動とともに、夢を統べる魔女の杖にはめ込まれた宝玉は再び眼を開き、御伽噺の王に向けて波紋のように広がる念力を発する。
スリープ・パララサス 通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに「夢綜」モンスターが存在する場合、相手フィール
ドの表側表示モンスター1体を対象に発動できる。このターンそのモンス
ターは攻撃できず、効果は無効化されエンドフェイズに裏側守備表示にな
る。
「やだぁ……そんなにマジマジ見つめられたら、千夜照れちゃーうっ――なんてね! カウンター罠《DRMバリア》!」
両手で頬を押さえ、照れ隠しするように首を左右に振っておどける千夜が ペロリと舌を出すと、御伽噺の王の前で無数の文字列が障壁へと変わり、錠前が絞められ強固となった障壁が到達した念力を弾く。
DRMバリア カウンター罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに「アル=ナジュム」モンスターが存在し、罠カード
が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、自分
の墓地の「アル=ヌジューム・アル=キターブ」1枚を手札に加えること
ができる。
「あたしの場に御伽噺の住人がいることで、発動したトラップの効果は無効! そして墓地に御伽噺の端末があれば手札に加えられるよ!」
「……防がれちゃったか」
「コピーは合法。所持は枉法。卸は通報YO! YO!」
左手を耳に当て、身体を左右に揺らしてリズムを取りつつ、口を尖らせ右手で現を指差していた千夜が拳を突き上げると、高らかにバトル開始を宣言する。
「バトル! アスリープ化したシェヘラザードがいなくなったから、今のネヴァンはただの攻撃力0のモンスター」
「くっ……」
「雷が――砂丘が――御伽噺が呼ぶ! 不貞を正せとあたしを呼ぶ! 聞けよ咎人達! “王朝の雷”が今、裁きを下す! マラキーヤ・ラアド……!」
御伽噺の王の足元から生じた雷が立ち昇り、枝分かれして広がっていくと、3階建てにしては異様に高い教室の天井まで達した雷は巨大な王城を形作り、塔の先端から発した電撃を夢を統べる魔女へと降り注がせていく。
「ぐあっ……!?」 現LP4000→1400。
「笑原の場には攻撃力1800のイフリートが残っているため、この攻撃を防げなければ夢枕君の敗北となる……!」
「この程度っ――“夢綜”モンスターが破壊されたため、罠発動――《リピート・ララバイ》! デッキからレベル4以下の《夢綜獣-ピンクエレファント》を場に呼び出す……!」
残る伏せカードを発動させた現の場には靄が発生し、やがて晴れるとそこには酒瓶を鼻で掴んだピンク色の象が現れ、眠たげに眼をショボつかせる。
リピート・ララバイ 通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの表側表示の「夢綜」モンスターが、戦闘で破壊され
た場合、または相手によって墓地へ送られた場合に発動できる。デッキか
らレベル4以下の「夢綜」モンスター1体を特殊召喚し、相手モンスター
1体を選んで裏側表示にする。
夢綜獣-ピンクエレファント
効果モンスター
/闇/レベル2/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「夢綜」モンスターの種類の数まで、相手フィール
ドの表側表示モンスターを対象に発動できる。そのモンスターを裏側守備
表示にする。
(2):このカードが墓地に存在する場合、相手モンスターの直接攻撃宣言時
に発動できる。このカードを特殊召喚し、そのモンスターを裏側守備表示
にする。
ピンクエレファント守備力0。
「そして《リピート・ララバイ》の効果で、イフリートをアスリープ化させる!」
「またぁーっ? カードを1枚伏せて、あたしはターン終了――」
「笑原さんのエンドフェイズに、墓地のサキュバスの効果発動! アスリープ化したモンスターがいるため墓地から蘇生し、シャフリヤールもアスリープ化させてもらうよ!」
靄の中から現れた夢を統べる妖魔が額の眼を開くと、再び現が吊り下げた硬貨がひとりでに揺れ出し、御伽噺の王が睡魔に襲われてその場に倒れこもうとする。
「ここで使わなくっちゃ! 罠カード《パイレーツ・オブ・クラックダウン》……! シャフリヤールを除外することで、墓地から王妃――シェヘラザードを蘇らせるよ!」
完全な眠りへと落ちる前に、御伽噺の王は雷の霊体となって霧散し、再び収束した雷は御伽噺の王妃へと再構成される。
「2体を入れ替えることで王様を対象とした効果をかわした――」
「いわゆるサクリファイス・エスケープを笑原は行ったわけだ」
八千代と須浦がそれぞれ千夜の行ったプレイングを解説するとともに、何人かの生徒が頷き感心する中、再び現へとターンは移ろうとする。
「イフリートがアスリープ化されたことで、邯鄲の効果で笑原さんに300ダメージを与えるよ」
靄の中にそびえる古跡群を名所とした古都から怪しげな光が発するとともに、眠りこけるランプの魔神は悪夢に魘され、千夜のLPを蝕むとともに現はカードをドローする。
千夜LP2200→1900。
「まずはその王妃を対象に、ピンクエレファントの効果発動! このカードも相手モンスターをアスリープ化させられる……!」
「だったらもう一度シェヘラザードの効果――カーナ ヤー マカーン! 今宵呼び出すは前妃の不義により、疑念に囚われた砂丘の王様! もう一度現れて! シャフリヤール……!」
酒瓶を鼻で掴んだピンクの象は、頭を上げて瓶の中身をラッパ飲みすると、閉じた眼を開眼し、語らいを終えた御伽噺の王妃を強制的に昏倒させる。
そして雷が渦巻くとともに、再び御伽噺の王は周囲に雷を迸らせつつ現れた。
「シャフリヤールが現れた事で、このカードはその本懐を発揮するよ! 墓地の《パイレーツ・オブ・クラックダウン》を除外することで効果が発動するっ……!」
「レベル7の“アル=ナジュム”が現れた時、そのレベルより低い場のモンスターはエンドフェイズまで除外される」
パイレーツ・オブ・クラックダウン 通常罠
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「アル=ナジュム」モンスター1体を除外して発動
できる。自分の墓地から「アル=ナジュム」モンスター1体を特殊召喚す
る。
(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにレベル7「アル=ナジ
ュム」モンスターが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。墓地のこのカ
ードを除外してフィールドのレベル6以下のモンスターをエンドフェイズ
まで除外する。
「海賊版は一斉摘発! サキュバスとピンクの象さんには消えてもらうよっ!」
「収監などさせない! 速攻魔法《まどろみの芳香》……!」
現が引いたばかりのカードを発動させると、辺りには入眠効果のある香りが漂い始め、現を除く全員がうつらうつらとする中、当の現は2枚の手札を見ると迷いを生じさせていた。
「……っ!?」
「どうしたんだ? 遊無さん――」
頭を押さえつつも現と一瞬視線を合わせた遊無は、彼から発する気配に身震いしていた。
「いえ――今夢枕さんから妙な気配が……」
「妙な気配……?」
八千代も現へと意識を向ける中、まずい――。と現は手札に視線を落としつつ、2体のモンスターのうち、レベルの高い方のモンスターへと意識を向ける。
「…………」
やがて彼は意を決して、D・フェースの液晶盤に置かれた夢を統べる妖魔とピンクの象を裏向きに置き直すとともに、手札のモンスター“1体のみ”を千夜へと見せた。
「……《まどろみの芳香》は、僕の場にいるモンスター2体をアスリープ化させることで、手札から“夢綜”モンスターを“2体まで”呼び出せる」
まどろみの芳香 速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの「夢綜」モンスター2体を対象に発動できる。その
モンスターを裏側表示にし、手札の「夢綜」モンスターを2体まで選んで
特殊召喚する。
「上手い。《パイレーツ・オブ・クラックダウン》はレベルを参照するから、裏側モンスターは対象外だ」
「よって僕は――“1体”のモンスターを特殊召喚する! ……破壊と殺戮をもたらす女王よ! 人々に終わりなき魘夢をもたらせ! 現れろ――《魘環の夢綜女王-モリガン》……!」
現の場に漂う芳香が一瞬で霧散し、戦乱と魘夢による苦痛の絶叫が響き渡ると、2頭の赤馬に引かれた戦車の上で、真っ赤なドレスの上に血塗れの鎧を身に付けた争いの女王が手にする槍を高々と掲げた。
魘環の夢綜女王-モリガン
効果モンスター
/闇/レベル7/幻想魔/攻撃力0。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの攻撃力は、フィールドの裏側表示モンスターの数×10
00アップする。
(2):自分のフィールドゾーンに「夢綜の都-邯鄲」が存在する場合に発動
できる。フィールドの裏側表示モンスターの数×300ダメージを相手に
与え、その数値分このカードの攻撃力をアップする。
「これは――夢枕の切り札が登場か……」
「夢を統べる争いの女王は、アスリープ化したモンスター1体に付き攻撃力を1000アップさせる……!」
夢綜の女王が槍を掲げると、中心部へと複数はめ込まれた赤黒い球に瞳孔が浮かび上がり、発せられた邪悪なオーラが魘される4体のモンスターから力を吸収する。
モリガン攻撃力0→4000。
「攻撃力――4000!?」
「更にモリガンは、邯鄲が発動している場合にその力を最大限発揮できる! アスリープ化したモンスター1体に付き300ダメージを与え、攻撃力は与えた数値分上昇する……!」
槍にはめ込まれた赤黒い球――いや、戦災犠牲者からえぐり取られた眼球は槍から消滅すると、同じく戦災犠牲者の物である無数の目玉とともに宙に出現し、一斉に目玉から発した光線を魘され続けるモンスターへと降り注がせる。
「うぇぇ……気持ち悪っ!」
「禁術による終わりなき悪夢――フォビドゥン・ナイトメア……!」
モリガン攻撃力4000→5200。 千夜LP1900→700。
「攻撃力の上がったモリガンに攻撃されれば、笑原はひとたまりもない」
「陽を拝むことなく、常闇に臥せろ……! モリガンの攻撃――イビル・スローター!」
宙に浮いた目玉が消失すると、代わりに両目がなく武器を手にした無数の亡者が出現し、王の首を刎ねるべく一斉に襲い掛かる。
「千夜が負ける……!」
「大丈夫だよ八千代さん。千夜さんならきっと――」
クラス中の誰もが勝負あった。と肩を落とす中、遊無の視線は窮地に陥ろうとも、平然として場に伏せたカードに視線を向ける彼女の姿を捉えていた。
「まだ手はあるし! 手札の“御伽噺の端末”1枚を捨てることで、速攻魔法《リスニング・サマル》を発動だよっ!」
「モンスターをデッキから呼び出すだけのカードか。僕の勝ちは決まったな」
リスニング・サマル 速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札の「アル=ヌジューム・アル=キターブ」1枚を捨てて発動でき
る。デッキから「アル=ナジュム」モンスター1体を特殊召喚する。
「駄目だ……そのカードじゃ攻撃は防げない――」
「それはどうかな八千代ちゃん! あたしはデッキから最後のイフリートを特殊召喚! そしてこの特殊召喚があたしに勝利をもたらす一手となるよ……!」
3体目のランプの魔神が現れると、突如としてアスリープ化したモンスターも含め、場に存在するモンスター達の周りを発生した雷が一周する。
「馬鹿な――何が起きてやがる……!?」
「笑原……やはり“それ”が狙いだったか――」
「さっすが須浦君! あたしとよくデュエってるだけあって察しがいいね! シャフリヤールがいる状態で“御伽噺の住人”が現れた時、その効果が強制発動されるんだよ!」
アル=ナジュム・マリク シャフリヤール
効果モンスター
/地/レベル7/雷/攻撃力2600。
(1):このカードが既にモンスターゾーンに存在する状態で、「アル=ナジ
ュム」モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動する。フィールドの
モンスターをエンドフェイズまで除外する。その後この効果で除外したモ
ンスターの数×200ダメージを相手に与える。
「その効果でシャフリヤールを含む全てのモンスターをこのターンが明けるまで除外し、更に除外されたモンスター1体に付き200ダメージを夢枕君に与えるよ!」
「1体に付き200って――」
「そうか! 呼び出したモンスターも含めて、千夜と夢枕君の場には計7体のモンスター!」
「夢枕のLPは1400のため、7体目を呼び出したことで丁度LPを削り切れるということだ」
やがて閃光が迸ると雷の輪を潜り抜けた全てのモンスターが消滅し、一斉に雷の輪が現を取り囲むと、輪の中心から発生した電撃が現へと襲い掛かる。
「王様の“繊細な心”は、裏切りを絶対に許さないんだ! これにておしまいっ! ハッサース・カルブ……!」
現が口を開け、ありえない。と言わんばかりにわなわなと身震いする中、発せられた無数の電撃が轟音を立てて現を貫き、彼のLPは尽きる。
「が……はっ……」 現LP1400→0。
「……俺だ。初日は感づかれずに過ごせたぜ」
デュエルが終わるとともに、男子トイレの個室へと避難した現は、D・フェースで彼を送り出した張本人――ゴルイニチと通話していた。
『……それは上々』
「良くねぇよ。……あのアマガキめっ! 俺が“こいつ”を出してさえいれば……!」
ドン――。と現が個室の壁を拳で殴り、壁を陥没させると取り出した“真の切り札”であるカードを眺めつつ、苛立ち交じりで自らの名を呼ぶゴルイニチに応答する。
『怒りに流されるな。お前が医学会の者どもに行う復讐は、まだ序の段階だ』
「分かってるよ。父さんから“あの療法”の論文を奪い取った――医学会の奴らをブチのめすまでは……!」
通話を切り、現は再び抜け出したレクリエーションへと戻って行く。
何事も無く戻った現は、遊無達に再び取り繕った笑顔を向けつつ、後ろ手で隠した拳を震わせる。
復讐はまだこれからだと平静を装いながら、現は勝利の喜びで浮かれる千夜に賛辞を送りつつも、このアマガキには必ず自らが真の実力を分からせると、心の中で固く誓ったのであった。
「あたし! 千夜と――」
「僕、藤次の――」
『ビナリウス回顧録!』
千夜「てゆーか須浦君の下の名前、久しぶりに聞いた気がするんだけど?」
須浦「笑原――僕達中等部で知り合ったそれなりの付き合いだろ……」
千夜「そだったねー。じゃあ気が向いたら呼んであげよっか……?」
須浦「……好きにしろ。今回のデュエルだが、夢枕は幻想魔族のテーマ“夢綜”で、アスリープ化を狙う戦術を使ってきた」
千夜「裏側守備表示にしたところを、キーカードのフィールド魔法、邯鄲で目覚めを阻害しつつ、効果ダメージでこっちのLPを削るロックバーンってとこかな」
須浦「基本はそうみたいだが、笑原には悪いけど、彼はまだ“本気”を出していなかったようにも思える」
千夜「えぇーっ、何でさ! デュエルはお互い全力で楽しんで、最後には笑顔で称え合うもんだよ?」
須浦「ということで、次回は商本先輩と、由緒ある家柄“常盤”を名乗る転入生のデュエルが繰り広げられる。ほら、タイトルコールをするよ」
『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -羅漢の竜王-』
千夜「トンボの飛行機と幻竜達の激戦――見どころはこれからだよっ!」
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50 | 15Turn 供養と円寂の儀 | 461 | 0 | 2023-01-14 | - | |
69 | 16Turn 石の塔が崩れる時 | 352 | 0 | 2023-01-27 | - | |
52 | 17Turn 盤上のアーティスト | 484 | 0 | 2023-02-12 | - | |
45 | 18Turn 夜空に咲く“賑やか”なる華 | 434 | 0 | 2023-02-21 | - | |
54 | 19Turn タッグデュエル大会 開幕! | 522 | 0 | 2023-03-09 | - | |
39 | 20Turn ウフトカビラ&サギラ | 424 | 1 | 2023-03-15 | - | |
49 | 21Turn 岡と浪花 花よりたい焼き | 356 | 0 | 2023-03-21 | - | |
60 | 22Turn 徹頭徹尾の覚悟 | 450 | 1 | 2023-03-24 | - | |
45 | 23Turn ビナリウス対バウンティフル | 384 | 0 | 2023-04-12 | - | |
43 | 24Turn 決着と新たな予兆 | 364 | 1 | 2023-04-13 | - | |
58 | 今までの話が丸分かり! 第一章のあらすじ | 425 | 0 | 2023-04-14 | - | |
42 | 25Turn 異国からの訪問者 | 363 | 0 | 2023-05-26 | - | |
33 | 26Turn 天上の採火 | 252 | 0 | 2023-06-02 | - | |
45 | 幕間 3人の交流生 | 338 | 0 | 2023-06-04 | - | |
72 | 27Turn 魘夢の魔族 | 325 | 0 | 2023-06-10 | - | |
40 | 28Turn 羅漢の竜王 | 281 | 0 | 2023-06-21 | - | |
43 | 29Turn 聖夜のマノン | 354 | 0 | 2023-06-25 | - | |
37 | 幕間 もう一人の遊無 | 296 | 2 | 2023-06-28 | - | |
39 | 第二章 キャラクター紹介 | 324 | 1 | 2023-07-01 | - | |
67 | 幕間 闘諍の予兆 | 361 | 0 | 2023-07-06 | - | |
36 | 30Turn 狂課金(ミダース) | 282 | 0 | 2023-07-10 | - | |
64 | 31Turn 舞い上がる不死鳥の輪舞 | 418 | 0 | 2023-07-14 | - | |
51 | 32Turn 巻き上げる関捩 | 339 | 1 | 2023-07-17 | - | |
45 | 33Turn 夢に堕ちる仲間 | 394 | 0 | 2023-07-22 | - | |
37 | 34Turn 友を取り戻せ! | 294 | 0 | 2023-07-30 | - | |
33 | 35Turn 堕ちた雷と涙雨の天河 | 321 | 0 | 2023-08-03 | - | |
34 | 36Turn 伝えたい言葉 | 308 | 1 | 2023-08-11 | - | |
31 | 37Turn 夢を喰らう獏 | 255 | 0 | 2023-08-26 | - | |
31 | 38Turn 深淵のトモカヅキ | 244 | 0 | 2023-09-03 | - | |
84 | 39Turn 最遠のパズズ | 332 | 0 | 2023-09-11 | - | |
27 | 40Turn 所縁が結ぶ絆 | 235 | 0 | 2023-09-18 | - | |
26 | 41Turn 活火激発の鍛人(かぬち) | 244 | 0 | 2023-09-22 | - | |
27 | 42Turn 巣林一枝のブルーバード | 189 | 0 | 2023-09-23 | - | |
32 | 今までの話が丸分かり! 第二章のあらすじ | 291 | 1 | 2023-09-24 | - | |
27 | 43Turn 次の関係(ステップ)へ | 256 | 0 | 2023-10-20 | - | |
33 | 44Turn 竜の駒 大洋を統べる | 322 | 0 | 2023-10-22 | - | |
38 | 45Turn マグナ ヌメンへの往訪 | 233 | 0 | 2023-10-26 | - | |
31 | 46Turn 跳躍-精霊世界へ | 241 | 0 | 2023-10-29 | - | |
45 | 幕間 強化訓練と異界の住人 | 290 | 0 | 2023-11-02 | - | |
39 | 47Turn 精霊世界 マースの森で | 230 | 0 | 2023-11-05 | - | |
35 | 祝一周年! 今後の展望など | 298 | 0 | 2023-11-11 | - | |
29 | 48Turn 精霊長アラウン | 188 | 0 | 2023-11-15 | - | |
31 | 第三章 キャラクター紹介 | 242 | 1 | 2023-11-16 | - | |
43 | 49Turn 下される審判 | 278 | 0 | 2023-11-20 | - | |
23 | 50Turn 猟犬従えし灰の王 | 241 | 0 | 2023-11-28 | - | |
30 | 幕間 精霊世界の平生 | 298 | 0 | 2023-12-07 | - | |
24 | 51Turn 最善の選択 | 208 | 0 | 2023-12-18 | - | |
28 | 52Turn 立ちはだかる使者達 | 244 | 0 | 2023-12-28 | - | |
27 | 53Turn 怨嗟積り秘号と成す | 218 | 0 | 2023-12-30 | - | |
28 | 54Turn 遊明の力 | 228 | 0 | 2024-01-02 | - | |
27 | 今までの話が丸分かり! 第三章のあらすじ | 278 | 0 | 2024-01-03 | - | |
13 | お久しぶりです。 | 74 | 0 | 2024-11-10 | - | |
3 | お知らせ。 | 36 | 0 | 2024-11-20 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/10/25 新商品 SUPREME DARKNESS カードリスト追加。
- 11/21 18:56 SS 79話 天道虫 その②
- 11/21 18:49 一言 リンクペンデュラムのオリカを作りたいんですがやっぱり不可能ですかね…
- 11/21 17:23 評価 8点 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》「 『混沌を制す者』シリ…
- 11/21 16:45 評価 6点 《混沌帝龍 -終焉の使者-》「 嘗ての遊戯王を文字通り"混沌" と…
- 11/21 16:09 評価 8点 《超魔導剣士-ブラック・パラディン》「 3DSの最強カードバト…
- 11/21 15:56 評価 4点 《混沌の黒魔術師》「 エラッタ前に戻しても何とかなりそうな気も…
- 11/21 15:21 評価 5点 《素早いモモンガ》「かなり後にカテゴリ化される《素早い》のルー…
- 11/21 14:54 評価 4点 《アサルト・ガンドッグ》「総合評価:送りつけて戦闘破壊しリクル…
- 11/21 14:40 デッキ ディフォーマー
- 11/21 14:25 デッキ ドローテスト【怪盗コンビEvil★Twin】2024/11
- 11/21 14:23 評価 8点 《半魔導帯域》「メインフェイズ1の間、互いの場のモンスターに「…
- 11/21 13:58 評価 7点 《ティスティナの猟犬》「直接攻撃と聞くと弱そうな気がするが、実…
- 11/21 12:33 評価 6点 《ゲート・ブロッカー》「総合評価:岩石族サポートありきで使うメ…
- 11/21 11:48 評価 5点 《青眼の光龍》「すいませーん、進化前の《青眼の究極竜》より素の…
- 11/21 11:35 評価 6点 《F・G・D》「攻撃力5000という高さから《ドラグマ・パニッシュ…
- 11/21 11:31 評価 10点 《マドルチェ・プティンセスール》「マドルチェを真に強くしたカ…
- 11/21 11:23 評価 5点 《聖騎士ジャンヌ》「突撃した際に何故か打点が下がり、やられてよ…
- 11/21 11:21 評価 3点 《アクア・マドール》「 何気にイラストの画質が良好な一枚。あと…
- 11/21 11:15 評価 2点 《女剣士カナン》「 何故かは分からないが、希少性が高いカードら…
- 11/21 11:13 評価 4点 《ヴァイロン・ヴァンガード》「破壊にしか対応していないくせに戦…
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