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56Turn 定の竜 風生の虎 作:ジェム貯めナイト
ユーメイを倒し遊明の力を取り戻すため、遊陽と遊無は常盤家での強化合宿に参
加するべく、日吾が住む洛皇へと訪れた。
そしてデッキ強化のため、常盤兄妹とともに立ち寄ったカードショップで、2人
のデュエルを観戦している。
日吾LP4000。手札5 一嘉LP4000。手札5
Turn1 日吾手札5
「僕から始めるよ。フィールド魔法《修験の霊鷲山》を発動する!」
日吾が発動させたカードによって、辺りは雲海を見下ろす霊峰の山頂へと様変わ
りする。
「……このフィールド上やと、お兄はんが毎ターン1度だけ受ける戦闘ダメージ
が帳消しにならはるなぁ……」
「更に《梵定竜王(サマーディナーガ)ウパナンダ》を召喚。カード1枚を伏せ
てターン終了だ」
続けて日吾の場に、精神を統一した先の“定の境地”に住まう第2のコブラが現れると、伏せカードを出して一嘉へとターンを渡した。
ウパナンダ攻撃力800。
「お兄はんの“定の竜”――早速来はったけど――」
一嘉はとぐろを巻く日吾のコブラを一瞥すると、デッキに手を掛けカードをドロ
ーした。
Turn2 一嘉手札6
「うちも負けてられへん! まずうちは魔法カード《虎嘯風生》を発動や! こ
のカードでデッキから“於菟姫(おとひめ)”1体――《四禽於菟姫-白虎》を除
外!」
発動が通ったことで一嘉はすぐさまデッキを手に取り、その中から1体のモンス
ターを選び出し、D・フェースの除外ゾーンへと移し替えた。
虎嘯風生 通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分のデッキから「於菟姫」モンスター1体を除外する。その後除外した
モンスターとはカード名が異なる除外状態の「於菟姫」モンスター1体を手札に
加えることができる。
「そんでこれや! 竜が沸き起こした雲海も、“風生の虎”に従う風が吹き飛ばしたる! 《於菟姫-馬腹》を召喚!」
於菟姫-馬腹
効果モンスター
/風/レベル3/幻竜/攻撃力900。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。除外状態の「於菟姫
」モンスター1体を手札に加え、デッキからそのモンスターとはカード名の異な
る「於菟姫」モンスター1体を除外する。
「一嘉ちゃんも幻竜族使いか……!」
「一嘉の“於菟姫”は、僕の“梵定竜王”と双璧を成す」
「馬腹の召喚時に効果発動や! うちは除外状態の白虎を手札に加えて、デッキ
から“於菟姫”1体を除外するで……!」
場に現れた小型犬サイズのつむじ風を纏った虎が低く唸るとともに、その効果が
発動し、除外ゾーンからモンスターを手札に加えた一嘉は更なる虎をデッキから取
り出し収納した。
デッキから除外 於菟姫-傲很。
於菟姫-傲很
効果モンスター
/風/レベル4/幻竜/攻撃力1200。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。自分のデッキから「
於菟姫」モンスター1体を除外し、そのモンスターとはカード名の異なる除外状
態の「於菟姫」モンスター1体を手札に加える。
「そろそろいきまひょか。うちは“このカード”の効果で、場の馬腹と手札の《
於菟姫-酋耳》を除外! その一睨みに恐れおののけ! 現れて――日没る方角を
守護する聖獣!」
つむじ風が吹くとともに、場の幼虎と一嘉の手札から1体の虎が風に巻き上げら
れて除外された。
そして彼女の場には、全身が白い毛並みで覆われた威風堂々とした虎が現れ、勇
ましく咆哮を上げた。
「手札から特殊召喚や! 現れて――《四禽於菟姫-白虎》……!」
於菟姫-酋耳
効果モンスター
/風/レベル4/幻竜/攻撃力1200。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):除外状態のこのカードが「於菟姫」モンスターの効果で手札に加わった場
合に発動できる。このカードを特殊召喚する。その後、手札の「於菟姫」モンス
ター1体を除外し、カードを1枚ドローできる。
四禽於菟姫-白虎
効果モンスター
/風/レベル7/幻竜/攻撃力2100。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の手札・フィールド(表側表示)の中から「於菟姫」モンスター2体
を除外して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードが戦闘を行う攻撃宣言時に、除外状態の自分の「於菟姫」モン
スターを任意の数だけ対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。そのモ
ンスターを手札に加え、このカードの攻撃力を次の相手ターン終了時まで手札に
加えた枚数×500アップする。
「一嘉さんの攻勢が始まる……!」
「バトルや! うちは白虎でウパナンダを攻撃――そんで白虎の効果発動! う
ちの除外状態の“於菟姫”を手札に加えて、お兄はんのターンが終わるまで攻撃力
をその枚数×500アップ……!」
一嘉が除外ゾーンから3体の於菟姫を排出し、日吾に見せ手札に加えたことで、つむじ風を纏う白虎は力を増していく。
除外から手札(馬腹 傲很 酋耳) 白虎攻撃力2100→3600。
「除外した“於菟姫”を手札に加え、自身の強化に繋げる――」
「それがうちの“於菟姫”や! 攻撃続行――幻爪裂破(げんそうれつは)……
!」
一嘉が宣言するとともに、白虎は日吾が従えるコブラへと飛び掛かり、前足でコ
ブラの胴体を引っ掻いた。
「くっ――下級“梵定竜王”は1度だけ戦闘では破壊されず、修験の霊鷲山の効
果で僕が受けたダメージ分回復する……!」
日吾LP4000→1200→4000。
「そして戦闘後ウパナンダは除外され、同時に効果発動。カード1枚をドロー!
」
「ならうちも! 除外状態から手札に加わった酋耳を特殊召喚。その酋耳でお兄
はんを直接攻撃や……!」
一嘉は攻撃の手を緩めず、続けて手札に加わった幼虎を特殊召喚し、身を守るモ
ンスターを失った日吾へと直接攻撃する。
日吾LP4000→2800。
「ぐっ……だが、僕がダメージを受けたことで罠カード《梵定竜王捨(サマーディナーガ・ウペークシャー)》を発動! 僕が受けたダメージ以下の攻撃力の《梵定竜王(サマーディナーガ)サーガラ》をデッキから除外する!」
梵定竜王(サマーディナーガ)サーガラ
効果モンスター
/光/レベル3/幻竜/攻撃力1200。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されず、戦闘を行ったダメ
ージステップ終了時に除外される。
(2):自分フィールドのこのカードが除外された場合に発動できる。
デッキから「梵定竜王」モンスター1体を手札に加える。
「更にこの効果で除外したサーガラよりレベルが低いウパナンダを、再び場に呼
び戻す! 戻ってこいウパナンダ……!」
日吾もデッキから新たな梵定竜王を除外し、次の展開の布石としたところで、一
嘉はカード1枚を伏せターンを終えた。
「どうやお兄はん? うちかて昔より強うなったんや……!」
「成程ね……だけど一嘉、僕を超えたいならこの程度じゃ駄目だ」
ターン開始とともに日吾はカードを引き、手札に加えたカードを確認すると、早
速加えたばかりのカードを発動させた。
Turn3 日吾手札4
「僕のターン! 《梵定竜王(サマーディナーガ)ヴァスキ》を召喚。更に魔法
カード《梵定竜王伝承(サマーディナーガ・アーガマ)》を発動だ!」
「その魔法カードは、お兄はんのデッキから“梵定竜王”を手札に加える効果や
けど――」
「場に“梵定竜王”がいる場合、代わりにデッキから“梵定竜王”1体を除外できる!
よって僕は《梵定竜王(サマーディナーガ)ウパラガ》をデッキから除外!」
ヴァスキ攻撃力1600。
「更にウパナンダを対象として、速攻魔法《梵定竜王観(サマーディナーガ・ヴ
ィパッサナー)》を発動だ! 除外されたウパラガを僕の元に呼び寄せる……!」
魔法カードの発動とともに、第2のコブラは宙に生じた空間の裂け目へと吸い込
まれていく。
そして入れ替わりに、空間の裂け目から頭を覗かせた巨大な第8のコブラがする
りと抜け落ちると、とぐろを巻いて一嘉が従える虎を睨みつけた。
「そして対象のウパナンダは除外。除外されたウパナンダの効果で1枚ドロー。
更に《修験の霊鷲山》によって特殊召喚した“梵定竜王”の攻撃力は300アップ
し、ウパラガは除外状態の“梵定竜王”1体に付き、攻守を100アップさせる」
「除外状態の“梵定竜王”は、サーガラとウパナンダの2体――」
ウパラガ攻撃力3000→3300→3500。
「せやけど、うちの白虎の攻撃力3600には及ばへん!」
「このターンで一気に決める! 除外状態のサーガラとウパナンダを対象に、ウ
パラガの効果発動――回帰創生!」
ウパラガが宿す除外状態の梵定竜王をデッキに戻し発動する大技――この効果が
通れば一嘉の攻撃表示モンスターは全て除外されてしまう。
「これが通れば……そのまま2体の攻撃で日吾の勝ちだ!」
「通さへん……! うちの場に幻竜族がいはるこん時、カウンター罠《幻竜の宝
珠(ウォーム・オーブ)》! これでウパラガをしばいて効果は無効や……!」
第8の竜王が力を増そうと纏い始めた白い気は、水晶玉のように透明で内側に靄
がかかった宝珠に取り込まれて阻害された。
幻竜の宝珠(ウォーム・オーブ) カウンター罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに幻竜族モンスターが存在し、モンスターの効果が発動し
た場合に発動できる。その効果を無効にする。
「一嘉さんも防いでみせた……!」
「だがウパラガは健在だ。バトル! 僕はヴァスキで酋耳を攻撃……!」
バトル開始を宣言した日吾は、まずは従える第4のコブラで幼虎の方へと攻撃を
仕掛けた。
「うぅ……!?」
巻き付き締め上げることで幼虎は破壊され、一嘉のLPを削ることに成功した。
一嘉LP4000→3600。
「戦闘したヴァスキは除外されるが、場から除外されたため効果発動! デッキ
から《梵定竜王(サマーディナーガ)ムチャリンダ》を除外! そして除外状態の
“梵定竜王”が増えたため、攻守がアップ……!」
ウパラガ攻撃力3500→3700。
「ウパラガと白虎の攻撃力が逆転した……!」
「――そしてウパラガの攻撃! サマーディ・ディヤーナ……!」
日吾の宣言とともに、第8のコブラが鎌首をもたげると、宙に光の線が走って巨
大な曼荼羅を描きだす。
そして曼荼羅の中心から無数の光線を放ち、拡散した光線が白虎を撃ち抜き撃破
した。
「ううっ……!?」 一嘉LP3600→3500。
「一嘉……!? 僕はカード2枚を伏せターン終了――」
攻撃の余波で後ずさりし、膝を曲げて屈む一嘉の姿に、日吾は血相を変えて彼女
の元へと駆け寄ろうとする。
『一嘉ちゃん(さん)……!』
「――うちは……ほら、平気や」
だが一嘉は再び立ち上がり、ニッコリと微笑んで両手を広げてみせた。
「一嘉……まだ退院したばかりなんだから、無理はしない方がいい」
「大丈夫やて。お兄はんは過保護なんやから」
「……大切なんだ。だから“門外不出”の探知の精霊の力を売ってでも、一嘉を救いたかった――」
日吾は表情に影を落としながらも、妹を思う自らの心境を吐露する。
しかし同時に、大きな対価を支払ったことを示唆する言動を聞いて、遊陽と遊無は浮かべた疑問を彼へと問いただした。
「売る――ですか」
「確か前に、イーサ教会からの支援で治療費を集めたって……」
「……一嘉が最先端医療を受けられるよう、イーサ教会に高額な医療費を負担し
てもらった。探知の精霊の力の全てを明かして協力することと引き換えに――」
「うちやお兄はんが受け継いだ“探知の精霊の力”は、朝廷に仕えていた頃の常
盤家が国家の未来を占うため役立ててました。……今の時代やと、とっくに役目は
終えてはるんやけどね……」
妹のために、永らく外部の者には隠し続けていた精霊の力を明かしてしまった。
愛する妹と天秤にかけて、それでも妹を救う決断をした日吾だったが、常盤家へ
の不義理を働いたことに後悔の念を抱いていた。
「最初は寄付活動を支援して貰っただけだった。でも現実は、寄付だけじゃ高額
な治療費を集められなかった……」
「だから精霊の力を役立てたのか。イーサ教会の協力者として――」
サバスとともに彼が境階町へと訪れ、初めて対面した時のことを遊陽と遊無は思
い出す。
全ては日吾の決断から波及し、もう一人の遊無を精霊の力で探し当てたことで自
分達との繋がりが生まれたのだと、2人は常盤家とイーサ教会の者達と紡いだ“所
縁”を改めて実感した。
「父さんと母さんは許してくれたけど、ご先祖様達はご立腹だろうね。だから僕
は掟を破ってまで救った一嘉を守り、全ての責任を背負うつもりでいる」
「ちゃう……お兄はん……そないに自分を責めんといて――」
しかし一嘉は何も後ろめたくは無いと、頬に一筋の涙を伝わせながら、兄が抱く
罪の意識を払拭させるかのように、自らの思いを打ち明けた。
「確かに昔はな、病気でずっと入院しとった。お兄はんや家族に心配もかけとっ
た。けどな? お兄はんがうちのために決断してくれはったことで、うちは新たな
人生を歩み始めたんや!」
「そうだぜ日吾! お前の決断が俺と遊無――そしてサバスさん達イーサ教会の
“精霊の力を受け継いだ者達”が巡り会う嚆矢になったんだ……!」
一嘉に続き、遊陽もこの出会いをもたらしたのは日吾だと、改めて彼の行いを肯
定するとともに、遊無も同意し大きく頷いた。
「私の失われた過去に関する手掛かりだって、日吾さんがいなければ見つけられ
ませんでした……!」
「一嘉……遊陽君……遊無さん――」
「うちかて常盤を継ぐもんや。お兄はんに比べたら微力やけど、この力をみんな
のために役立てたい! うちを支えてくれたみんなに恩返しするんや!」
そして一嘉はデッキに手を掛け、カードをドローするとともに反撃を開始する。
「ドロー! もううちは守られるだけやない! か弱いうちとはさいならや!
うちが昔のままやと思わんといてな? お兄はん……!」
Turn4 一嘉手札5
「見せたるで――まずはフィールド魔法《虎寺院テンプル》発動や……!」
一嘉がD・フェースにカードを挿入することで、雲海に囲まれた山頂の地面が割
れ、対となる虎の石像が突き出てくるとともに、豪華な装飾を施された本殿がそび
え立った。
虎寺院テンプル フィールド魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキ・墓地から「融合」
1枚または「於菟姫」モンスター1体を手札に加える事ができる。
(2):手札から「融合」1枚を墓地に捨てて発動できる。自分の手札から「於菟
姫」モンスターを融合素材として除外し、幻竜族融合モンスター1体を融合召喚
する。この効果で融合召喚したモンスターの攻撃力は、除外したモンスターのレ
ベル合計×100アップする。
「発動時の効果で、墓地の白虎を手札に加える。続けて効果発動! うちが引き
当てたこの《融合》を墓地へほかすことで、手札の“於菟姫”3体を除外し融合さ
せる……!」
「来る! “於菟姫”の融合モンスター……!」
「うちは手札の馬腹、傲很、白虎を除外! 幻界に吹く新風交わりて、崑崙の守
護獣となる……!」
3体の虎を除外ゾーンへと送りこむことで、場にそびえる寺院は本殿の扉が開か
れた。
そして場にうっすらと現れた3体の虎がつむじ風を纏い、扉の中へと取り込まれ
ると、薄暗い扉の中で赤く血走った双眼が開かれ、日吾を睨みつけた。
「“融合召喚”や! 現れて――《虎嘯の於菟姫-開明陸吾》……!」
そして扉の中から竜の翼を背中から生やした巨大な虎が飛び出すと、一嘉の前で
着地し、日吾を威圧するように暴風のような低い唸り声を発した。
虎嘯の於菟姫-開明陸吾
融合、効果モンスター
/風/レベル8/幻竜/攻撃力2600。
カード名の異なる「於菟姫」モンスター×3
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが融合召喚に成功した場合、除外状態の自分の「於菟姫」モン
スターを任意の枚数対象に発動できる(同名カードは1枚まで)。そのモンスタ
ーを手札に加え、このカードの攻撃力を次の相手ターン終了時まで手札に加えた
枚数×500アップする。3体以上加えた場合、さらに加えた枚数まで相手フィ
ールドのモンスターを選んで破壊できる。
レベル合計14 開明陸吾攻撃力2600→4000。
「あれが一嘉さんの切り札……!」
「《虎寺院テンプル》で融合召喚した開明陸吾の攻撃力は、除外した“於菟姫”
のレベル合計×100アップや!」
そして一嘉が融合召喚した翼持つ虎の効果を発動させることで、竜の翼は大きく
広げられ、同時に除外ゾーンから彼女の手札へと3体の虎が再び加わった。
「開明陸吾が融合召喚したことで効果発動や! 除外状態の馬腹、傲很、白虎を
手札に加え、1体に付きお兄はんのターンが終わるまで攻撃力500アップ……!
為虎添翼!」
開明陸吾攻撃力4000→5500。
「この効果でうちは3体以上手札に加えた。開明陸吾の追加効果で、加えた数ま
でお兄はんのモンスターを破壊や……!」
翼持つ虎が背中の翼を大きく動かし、暴風を巻き起こしたことで、日吾が従える
第8のコブラは吹き飛ばされて消滅した。
「これで日吾の場からモンスターは消えた」
「やるな、一嘉――」
「更に手札に戻った馬腹と傲很を除外して白虎の効果発動! 再び特殊召喚や!
バトル! うちの新旧切り札でお兄はんを見返したる……!」
そしてバトルフェイズを宣言した一嘉は、日吾へと攻撃を仕掛ける。
「うちは開明陸吾でお兄はんを攻撃! 哮りの裂爪幻撃……!」
一嘉の攻撃宣言とともに、翼持つ虎は宙へと舞い上がり、空中から日吾をめがけ
急降下しながら太く逞しい前足で引っ掻こうとする。
「これで終わりや! お兄はん……!」
「――だが、まだまだだ。罠カード《梵定竜王量(サマーディナーガ・プラマー
ナ)》を発動! その攻撃を無効にする……!」
しかし日吾も、発動させた罠カードによって発生した濃霧に紛れて、翼持つ虎を
やり過ごした。
梵定竜王量(サマーディナーガ・プラマーナ) 通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。
その後、自分の除外状態の「梵定竜王」モンスター2体に付き1枚、カードをド
ローできる。
除外状態の梵定竜王(ウパナンダ サーガラ ヴァスキ ムチャリンダ)
『攻撃を防いだ……!』
「更に除外状態の“梵定竜王”2体に付き、1枚ドロー。どうした一嘉? 僕は
まだ、膝すら着いてないぞ……?」
翼持つ虎が一嘉の元に戻って来ると、霞の中から妹を煽るかのような笑みを浮か
べた日吾が再び現れるのを目にして、一嘉は意地が悪いと頬を赤くし膨らませた。
「なっ!? しょーもな……ほな白虎でお兄はんをしばいたる! 攻撃と同時に
除外状態の馬腹と傲很を手札に加えて、攻撃力アップ! 幻爪裂破……!」
だが一嘉も、残る白虎で今度こそ日吾を倒そうと攻撃を仕掛ける。
白虎攻撃力2100→3100。
「除外状態のヴァスキをデッキに戻すことで、速攻魔法《梵定竜王慈(サマーデ
ィナーガ・マイトリー)》を発動! ヴァスキの攻撃力分、1600LPを回復す
る」
残る伏せカード1枚を開いたことで、日吾のLPが回復し、2体の風生の虎が繰
り出す猛攻を凌ぎ切った。
梵定竜王慈(サマーディナーガ・マイトリー) 速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の除外状態の「梵定竜王」モンスター1体をデッキに戻して発動でき
る。自分はそのモンスターの攻撃力分LPを回復する。
日吾LP2800→4400→1300。
「バトルはしまいや。ほだら、手札の“於菟姫”2体を除外して魔法カード《幻
顕虎踞》発動……!」
幻顕虎踞 通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札の「於菟姫」モンスターを任意の枚数除外して発動できる。デッキか
らカードを1枚ドローし、相手に除外した枚数×300ダメージを与える。
「カード1枚をドローして、除外した枚数×300ダメージや!」
日吾LP1300→700。
「……それで?」
「むぅ……いけずやでお兄はん。ほなら駄目押しに魔法カード《フラッピング・
スラッシュ》発動! 幻竜族が除外されたターンやから、お兄はんが発動させてい
る《修験の霊鷲山》を除外……!」
一嘉が続けて魔法カードを発動させると、翼持つ虎が前足を振り上げ発生させた
衝撃波が日吾のLPを削るとともに、雲海が広がる山頂を消し飛ばした。
フラッピング・スラッシュ 通常魔法
(1):幻竜族モンスターが除外されたターンに発動できる。フィールドの魔法・
罠カード1枚を除外し、相手に500ダメージを与える。
「更に500のダメージや……!」
日吾LP700→200。
「これで日吾の場から、カードが全て消えてしまった」
「うちはターン終了。そないな余裕もハッタリや。次のターンお兄はんができる
ことなんて限られとる」
だが一嘉の指摘を受けてなお、日吾は先程引いた手札に握る2枚のカードに一瞬
だけ視線を移し、やがてデッキに手を掛けカードをドローしようとする。
「僕のターン! このドローで切り返してみせる……!」
そう言い放った日吾が目を閉じ、カードを引く右手に精霊の力を漲らせようとす
るのを察し取った一嘉は、不服そうに口を尖らせた。
「“使う”んか? ずっこいでお兄はん……」
「勝たなければ失うこともある。僕があの時、夢枕君と戦った時もそうだった」
そして日吾はカードをドローし、引き当てたカードを見ると、即座にそのカード
を発動させた。
Turn5 日吾手札3
「――見えた! 除外状態の“梵定竜王”が3体以上のため、魔法カード《梵定
竜王再(サマーディナーガ・プナーバヴァ)》を発動!」
「……ほらな。次引くカードを“探知”しよった」
梵定竜王再(サマーディナーガ・プナーバヴァ) 通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):除外状態の自分の「梵定竜王」モンスターが3体以上存在する場合に発動
できる。除外状態の「梵定竜王」モンスター1体を特殊召喚する。
「櫛風沐雨より世尊を守護せよ! 除外ゾーンより現れろ! 《梵定竜王(サマ
ーディナーガ)ムチャリンダ》……!」
ムチャリンダ攻撃力3000。
「そして効果発動! 定の境地より異類中行せよ! 四門出遊……! 除外状態
の“梵定竜王”――サーガラを帰還させ、僕の場から“梵定竜王”1体を除外する。
サーガラを除外」
「サーガラが場から除外されはったことで、デッキから“梵定竜王”1体を手札
に加えられる。……まさか!?」
一嘉が危惧した通りに、日吾はサーチしたモンスターともう1枚――儀式魔法も
公開し、発動することで場に8つの燭台が現れた。
「僕は儀式魔法《梵定竜王阿羅漢(サマーディナーガ・アルハット)》を発動!
レベルが8以上になるよう、場のムチャリンダをリリースの代わりに除外する」
それぞれの燭台に炎が灯るとともに、その中心部へと光が差し込み、衝撃で燭台
が吹き飛んだ。
そして光の中から日吾の場に降臨したのは、無数の頭を持ち、五色で彩られた胴
体を複数の腕釧で飾り立てたコブラだった。
「現れろ! ナーガローカより地上世界を支えし竜王! 儀式召喚。《梵定竜王
(サマーディナーガ)アナンタ》……!」
アナンタ攻撃力3000。
「来はったか……お兄はんのムチャリンダに次ぐ切り札……!」
「墓地のウパラガを対象にアナンタの効果発動――因機説法! 墓地よりウパラ
ガを蘇生し、そのまま除外する」
場を経由し、墓地から第8の竜王が除外されるとともに、日吾の宣言によって降
臨せし多頭のコブラはそれぞれの頭部を輝かせていく。
「僕は除外状態のムチャリンダをデッキに戻し、アナンタの効果発動! このタ
ーン攻撃力をムチャリンダの攻撃力分アップさせ、同じ効果を得る!」
アナンタ攻撃力3000→6000。
「……それだけやないんやろ……?」
「ああ――バトルだ! ムチャリンダの効果を得たアナンタが攻撃する際、除外
状態のウパラガをデッキに戻すことで、このターンその攻撃力分攻撃力をアップで
きる」
日吾がバトルフェイズを宣言するとともに、ウパラガのみをデッキに戻すことで
、多頭のコブラは更に攻撃力を上昇させていく。
アナンタ攻撃力6000→9000。
『開明陸吾の攻撃力5500を上回った……!?』
「アカン――アナンタの攻撃を凌ぎ切れへん……」
自らのLPを再確認した一嘉は、2体の戦闘で受けるダメージと自身のLPが等
しいことに気付き、まだまだ兄には敵わないことを悟った。
「一嘉――僕にここまで迫るとは、成長したな。だが僕は、行く手に誰が立ち塞
がろうと勝ち続けなければならない……!」
日吾は眉を下げて遊無の方を向き、口を真一文字に結ぶと、彼女と遊陽から伝え
られた絶望的な精霊世界での戦いを想像する。
「……友達が危機に陥っていたのに、僕はただ、遠く離れた洛皇でつゆ知らずの
ままだった。同じ精霊の力宿す者なのに……」
「それは違います! ……日吾さんに落ち度などありません。私が弱かったから
――」
後悔の念を口走る日吾に対し、遊無は彼が責任を負うことは無いと、敗北し力を
奪われた自身の力不足を痛感する。
「だからこそだよ。君を守れなかったことで事態は悪化した。……でも今度こそ
は、ユーメイを倒す戦いに僕も力添えしてみせる!」
日吾は竜の翼持つ虎を指差すことで攻撃対象を定め、多頭のコブラに攻撃を指示
する。
「僕はアナンタで開明陸吾を攻撃……! サマーディ・シャマタ……!」
無数の頭持つコブラが宙に巨大な曼荼羅を開いていくと、その中心から発した光
線が拡散し、無数に分裂するとそのまま竜の翼持つ虎の全身を貫いていった。
「うっ……きゃっ!?」
一嘉LP3500→0。
「勝った。……一嘉……!?」
決着が着くと、日吾はその場にへたり込んだ一嘉を心配し、彼女の元に駆け寄っ
た。
「――もう、うちかって子供のままやあらへんで?」
またしても兄には敵わなかったと、一嘉は悔しげな素振りを見せつつも、日吾が
差し出した手を握り、再び立ち上がった。
「2人とも! いいデュエルだったぜ」
「ありがとう。――っと、丁度2人も着いたみたいだよ」
腕のD・フェースが振動し、通知を見ようと画面を操作した日吾は、同じくD・
フェースを確認した遊陽と遊無の2人とともに、一行が洛皇に滞在する間お世話に
なる常盤家へと向かうことにする。
「そうですね。行きましょう――」
手配したイーサ教会の送迎車も到着する頃だと、遊陽達は再び待ち合わせ場所で
ある中央駅のロータリーへと向かった。
「おっ! 来たな……!」
「カズ! 塰里……!」
既に到着し、リムジンに乗り込んでいたカズと留音が窓を開けて手を振り、一同
を歓迎した。
「みんなで強化合宿だな! “賑やか”な夏休みにしようぜ!」
遊陽達がリムジンに近付くと、日吾も2人へと再会の挨拶をしつつ、イーサ教会
から派遣された運転手に対して行き先を提示する。
「待ってたよ。一斗君に塰里さん。――出発してください」
全員が乗り込むと、リムジンは常盤家を目指して発進した。
一行は名残惜しそうに洛皇の街並みを眺めつつも、それぞれ学園や精霊世界で体
験した出来事を思い浮かべる。
この強化合宿に参加した目的――この世界の破壊と再生を目論む秘号と渡り合う
力を身に付け、遊明の力を取り返すと、遊陽達は決意を新たにするのであった。
「遊陽と遊無――」
「そして僕、日吾と一嘉が送る――」
『ビナリウス回顧録!』
遊陽「定の竜と風生の虎……最強の幻竜決戦は、日吾の勝ちで決着となった」
遊無「まさに“龍虎相搏つ”デュエルでしたが、勝利した日吾さんだけでなく、一
嘉さんも見事な戦いぶりでした」
一嘉「そりゃおおきに~、うちの“於菟姫(おとひめ)”も幻竜族らしく、デッキ
を回すには除外が鍵なんどす」
日吾「僕の“梵定竜王(サマーディナーガ)”とは違い、一嘉の“於菟姫”は除外
ゾーンと手札の行き来を繰り返し、その枚数が多いほど切り札の攻撃力が増してい
くんだ」
一嘉「そやね……なあお兄はん、うちのために教会の人らに掛け合ってくれて、お
かげでうちはこの通り元気になったんやで?」
日吾「一嘉……」
一嘉「これからはお兄はんとも、面会時間なんて気にせず会えるんや! 改めてお
礼言わせておくれやす。おおきにな。大好きやで? お兄はん――」
日吾「――っ! ああ。僕も大好きだ……一嘉……!」
遊陽「……この兄妹がより絆を深められて、本当に良かった。遊無もそう思わない
か?」
遊無「――はい。では次回予告にしましょう。常盤家へと向かう道中、私達が精霊
世界に向かっていたのと時を同じくして、カズさんと留音さんも守るべきもののた
め、一足先にデュエルの特訓に勤しんでいました――」
『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -審判を下す司直の竜-』
遊陽「2人の口から、それぞれの師匠――アルベルトさんとモイラさんに認められ
た経緯が語られる。次回も激闘繰り広げられたデュエルに注目だ……!」
加するべく、日吾が住む洛皇へと訪れた。
そしてデッキ強化のため、常盤兄妹とともに立ち寄ったカードショップで、2人
のデュエルを観戦している。
日吾LP4000。手札5 一嘉LP4000。手札5
Turn1 日吾手札5
「僕から始めるよ。フィールド魔法《修験の霊鷲山》を発動する!」
日吾が発動させたカードによって、辺りは雲海を見下ろす霊峰の山頂へと様変わ
りする。
「……このフィールド上やと、お兄はんが毎ターン1度だけ受ける戦闘ダメージ
が帳消しにならはるなぁ……」
「更に《梵定竜王(サマーディナーガ)ウパナンダ》を召喚。カード1枚を伏せ
てターン終了だ」
続けて日吾の場に、精神を統一した先の“定の境地”に住まう第2のコブラが現れると、伏せカードを出して一嘉へとターンを渡した。
ウパナンダ攻撃力800。
「お兄はんの“定の竜”――早速来はったけど――」
一嘉はとぐろを巻く日吾のコブラを一瞥すると、デッキに手を掛けカードをドロ
ーした。
Turn2 一嘉手札6
「うちも負けてられへん! まずうちは魔法カード《虎嘯風生》を発動や! こ
のカードでデッキから“於菟姫(おとひめ)”1体――《四禽於菟姫-白虎》を除
外!」
発動が通ったことで一嘉はすぐさまデッキを手に取り、その中から1体のモンス
ターを選び出し、D・フェースの除外ゾーンへと移し替えた。
虎嘯風生 通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分のデッキから「於菟姫」モンスター1体を除外する。その後除外した
モンスターとはカード名が異なる除外状態の「於菟姫」モンスター1体を手札に
加えることができる。
「そんでこれや! 竜が沸き起こした雲海も、“風生の虎”に従う風が吹き飛ばしたる! 《於菟姫-馬腹》を召喚!」
於菟姫-馬腹
効果モンスター
/風/レベル3/幻竜/攻撃力900。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。除外状態の「於菟姫
」モンスター1体を手札に加え、デッキからそのモンスターとはカード名の異な
る「於菟姫」モンスター1体を除外する。
「一嘉ちゃんも幻竜族使いか……!」
「一嘉の“於菟姫”は、僕の“梵定竜王”と双璧を成す」
「馬腹の召喚時に効果発動や! うちは除外状態の白虎を手札に加えて、デッキ
から“於菟姫”1体を除外するで……!」
場に現れた小型犬サイズのつむじ風を纏った虎が低く唸るとともに、その効果が
発動し、除外ゾーンからモンスターを手札に加えた一嘉は更なる虎をデッキから取
り出し収納した。
デッキから除外 於菟姫-傲很。
於菟姫-傲很
効果モンスター
/風/レベル4/幻竜/攻撃力1200。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。自分のデッキから「
於菟姫」モンスター1体を除外し、そのモンスターとはカード名の異なる除外状
態の「於菟姫」モンスター1体を手札に加える。
「そろそろいきまひょか。うちは“このカード”の効果で、場の馬腹と手札の《
於菟姫-酋耳》を除外! その一睨みに恐れおののけ! 現れて――日没る方角を
守護する聖獣!」
つむじ風が吹くとともに、場の幼虎と一嘉の手札から1体の虎が風に巻き上げら
れて除外された。
そして彼女の場には、全身が白い毛並みで覆われた威風堂々とした虎が現れ、勇
ましく咆哮を上げた。
「手札から特殊召喚や! 現れて――《四禽於菟姫-白虎》……!」
於菟姫-酋耳
効果モンスター
/風/レベル4/幻竜/攻撃力1200。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):除外状態のこのカードが「於菟姫」モンスターの効果で手札に加わった場
合に発動できる。このカードを特殊召喚する。その後、手札の「於菟姫」モンス
ター1体を除外し、カードを1枚ドローできる。
四禽於菟姫-白虎
効果モンスター
/風/レベル7/幻竜/攻撃力2100。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の手札・フィールド(表側表示)の中から「於菟姫」モンスター2体
を除外して発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードが戦闘を行う攻撃宣言時に、除外状態の自分の「於菟姫」モン
スターを任意の数だけ対象として発動できる(同名カードは1枚まで)。そのモ
ンスターを手札に加え、このカードの攻撃力を次の相手ターン終了時まで手札に
加えた枚数×500アップする。
「一嘉さんの攻勢が始まる……!」
「バトルや! うちは白虎でウパナンダを攻撃――そんで白虎の効果発動! う
ちの除外状態の“於菟姫”を手札に加えて、お兄はんのターンが終わるまで攻撃力
をその枚数×500アップ……!」
一嘉が除外ゾーンから3体の於菟姫を排出し、日吾に見せ手札に加えたことで、つむじ風を纏う白虎は力を増していく。
除外から手札(馬腹 傲很 酋耳) 白虎攻撃力2100→3600。
「除外した“於菟姫”を手札に加え、自身の強化に繋げる――」
「それがうちの“於菟姫”や! 攻撃続行――幻爪裂破(げんそうれつは)……
!」
一嘉が宣言するとともに、白虎は日吾が従えるコブラへと飛び掛かり、前足でコ
ブラの胴体を引っ掻いた。
「くっ――下級“梵定竜王”は1度だけ戦闘では破壊されず、修験の霊鷲山の効
果で僕が受けたダメージ分回復する……!」
日吾LP4000→1200→4000。
「そして戦闘後ウパナンダは除外され、同時に効果発動。カード1枚をドロー!
」
「ならうちも! 除外状態から手札に加わった酋耳を特殊召喚。その酋耳でお兄
はんを直接攻撃や……!」
一嘉は攻撃の手を緩めず、続けて手札に加わった幼虎を特殊召喚し、身を守るモ
ンスターを失った日吾へと直接攻撃する。
日吾LP4000→2800。
「ぐっ……だが、僕がダメージを受けたことで罠カード《梵定竜王捨(サマーディナーガ・ウペークシャー)》を発動! 僕が受けたダメージ以下の攻撃力の《梵定竜王(サマーディナーガ)サーガラ》をデッキから除外する!」
梵定竜王(サマーディナーガ)サーガラ
効果モンスター
/光/レベル3/幻竜/攻撃力1200。
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されず、戦闘を行ったダメ
ージステップ終了時に除外される。
(2):自分フィールドのこのカードが除外された場合に発動できる。
デッキから「梵定竜王」モンスター1体を手札に加える。
「更にこの効果で除外したサーガラよりレベルが低いウパナンダを、再び場に呼
び戻す! 戻ってこいウパナンダ……!」
日吾もデッキから新たな梵定竜王を除外し、次の展開の布石としたところで、一
嘉はカード1枚を伏せターンを終えた。
「どうやお兄はん? うちかて昔より強うなったんや……!」
「成程ね……だけど一嘉、僕を超えたいならこの程度じゃ駄目だ」
ターン開始とともに日吾はカードを引き、手札に加えたカードを確認すると、早
速加えたばかりのカードを発動させた。
Turn3 日吾手札4
「僕のターン! 《梵定竜王(サマーディナーガ)ヴァスキ》を召喚。更に魔法
カード《梵定竜王伝承(サマーディナーガ・アーガマ)》を発動だ!」
「その魔法カードは、お兄はんのデッキから“梵定竜王”を手札に加える効果や
けど――」
「場に“梵定竜王”がいる場合、代わりにデッキから“梵定竜王”1体を除外できる!
よって僕は《梵定竜王(サマーディナーガ)ウパラガ》をデッキから除外!」
ヴァスキ攻撃力1600。
「更にウパナンダを対象として、速攻魔法《梵定竜王観(サマーディナーガ・ヴ
ィパッサナー)》を発動だ! 除外されたウパラガを僕の元に呼び寄せる……!」
魔法カードの発動とともに、第2のコブラは宙に生じた空間の裂け目へと吸い込
まれていく。
そして入れ替わりに、空間の裂け目から頭を覗かせた巨大な第8のコブラがする
りと抜け落ちると、とぐろを巻いて一嘉が従える虎を睨みつけた。
「そして対象のウパナンダは除外。除外されたウパナンダの効果で1枚ドロー。
更に《修験の霊鷲山》によって特殊召喚した“梵定竜王”の攻撃力は300アップ
し、ウパラガは除外状態の“梵定竜王”1体に付き、攻守を100アップさせる」
「除外状態の“梵定竜王”は、サーガラとウパナンダの2体――」
ウパラガ攻撃力3000→3300→3500。
「せやけど、うちの白虎の攻撃力3600には及ばへん!」
「このターンで一気に決める! 除外状態のサーガラとウパナンダを対象に、ウ
パラガの効果発動――回帰創生!」
ウパラガが宿す除外状態の梵定竜王をデッキに戻し発動する大技――この効果が
通れば一嘉の攻撃表示モンスターは全て除外されてしまう。
「これが通れば……そのまま2体の攻撃で日吾の勝ちだ!」
「通さへん……! うちの場に幻竜族がいはるこん時、カウンター罠《幻竜の宝
珠(ウォーム・オーブ)》! これでウパラガをしばいて効果は無効や……!」
第8の竜王が力を増そうと纏い始めた白い気は、水晶玉のように透明で内側に靄
がかかった宝珠に取り込まれて阻害された。
幻竜の宝珠(ウォーム・オーブ) カウンター罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに幻竜族モンスターが存在し、モンスターの効果が発動し
た場合に発動できる。その効果を無効にする。
「一嘉さんも防いでみせた……!」
「だがウパラガは健在だ。バトル! 僕はヴァスキで酋耳を攻撃……!」
バトル開始を宣言した日吾は、まずは従える第4のコブラで幼虎の方へと攻撃を
仕掛けた。
「うぅ……!?」
巻き付き締め上げることで幼虎は破壊され、一嘉のLPを削ることに成功した。
一嘉LP4000→3600。
「戦闘したヴァスキは除外されるが、場から除外されたため効果発動! デッキ
から《梵定竜王(サマーディナーガ)ムチャリンダ》を除外! そして除外状態の
“梵定竜王”が増えたため、攻守がアップ……!」
ウパラガ攻撃力3500→3700。
「ウパラガと白虎の攻撃力が逆転した……!」
「――そしてウパラガの攻撃! サマーディ・ディヤーナ……!」
日吾の宣言とともに、第8のコブラが鎌首をもたげると、宙に光の線が走って巨
大な曼荼羅を描きだす。
そして曼荼羅の中心から無数の光線を放ち、拡散した光線が白虎を撃ち抜き撃破
した。
「ううっ……!?」 一嘉LP3600→3500。
「一嘉……!? 僕はカード2枚を伏せターン終了――」
攻撃の余波で後ずさりし、膝を曲げて屈む一嘉の姿に、日吾は血相を変えて彼女
の元へと駆け寄ろうとする。
『一嘉ちゃん(さん)……!』
「――うちは……ほら、平気や」
だが一嘉は再び立ち上がり、ニッコリと微笑んで両手を広げてみせた。
「一嘉……まだ退院したばかりなんだから、無理はしない方がいい」
「大丈夫やて。お兄はんは過保護なんやから」
「……大切なんだ。だから“門外不出”の探知の精霊の力を売ってでも、一嘉を救いたかった――」
日吾は表情に影を落としながらも、妹を思う自らの心境を吐露する。
しかし同時に、大きな対価を支払ったことを示唆する言動を聞いて、遊陽と遊無は浮かべた疑問を彼へと問いただした。
「売る――ですか」
「確か前に、イーサ教会からの支援で治療費を集めたって……」
「……一嘉が最先端医療を受けられるよう、イーサ教会に高額な医療費を負担し
てもらった。探知の精霊の力の全てを明かして協力することと引き換えに――」
「うちやお兄はんが受け継いだ“探知の精霊の力”は、朝廷に仕えていた頃の常
盤家が国家の未来を占うため役立ててました。……今の時代やと、とっくに役目は
終えてはるんやけどね……」
妹のために、永らく外部の者には隠し続けていた精霊の力を明かしてしまった。
愛する妹と天秤にかけて、それでも妹を救う決断をした日吾だったが、常盤家へ
の不義理を働いたことに後悔の念を抱いていた。
「最初は寄付活動を支援して貰っただけだった。でも現実は、寄付だけじゃ高額
な治療費を集められなかった……」
「だから精霊の力を役立てたのか。イーサ教会の協力者として――」
サバスとともに彼が境階町へと訪れ、初めて対面した時のことを遊陽と遊無は思
い出す。
全ては日吾の決断から波及し、もう一人の遊無を精霊の力で探し当てたことで自
分達との繋がりが生まれたのだと、2人は常盤家とイーサ教会の者達と紡いだ“所
縁”を改めて実感した。
「父さんと母さんは許してくれたけど、ご先祖様達はご立腹だろうね。だから僕
は掟を破ってまで救った一嘉を守り、全ての責任を背負うつもりでいる」
「ちゃう……お兄はん……そないに自分を責めんといて――」
しかし一嘉は何も後ろめたくは無いと、頬に一筋の涙を伝わせながら、兄が抱く
罪の意識を払拭させるかのように、自らの思いを打ち明けた。
「確かに昔はな、病気でずっと入院しとった。お兄はんや家族に心配もかけとっ
た。けどな? お兄はんがうちのために決断してくれはったことで、うちは新たな
人生を歩み始めたんや!」
「そうだぜ日吾! お前の決断が俺と遊無――そしてサバスさん達イーサ教会の
“精霊の力を受け継いだ者達”が巡り会う嚆矢になったんだ……!」
一嘉に続き、遊陽もこの出会いをもたらしたのは日吾だと、改めて彼の行いを肯
定するとともに、遊無も同意し大きく頷いた。
「私の失われた過去に関する手掛かりだって、日吾さんがいなければ見つけられ
ませんでした……!」
「一嘉……遊陽君……遊無さん――」
「うちかて常盤を継ぐもんや。お兄はんに比べたら微力やけど、この力をみんな
のために役立てたい! うちを支えてくれたみんなに恩返しするんや!」
そして一嘉はデッキに手を掛け、カードをドローするとともに反撃を開始する。
「ドロー! もううちは守られるだけやない! か弱いうちとはさいならや!
うちが昔のままやと思わんといてな? お兄はん……!」
Turn4 一嘉手札5
「見せたるで――まずはフィールド魔法《虎寺院テンプル》発動や……!」
一嘉がD・フェースにカードを挿入することで、雲海に囲まれた山頂の地面が割
れ、対となる虎の石像が突き出てくるとともに、豪華な装飾を施された本殿がそび
え立った。
虎寺院テンプル フィールド魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキ・墓地から「融合」
1枚または「於菟姫」モンスター1体を手札に加える事ができる。
(2):手札から「融合」1枚を墓地に捨てて発動できる。自分の手札から「於菟
姫」モンスターを融合素材として除外し、幻竜族融合モンスター1体を融合召喚
する。この効果で融合召喚したモンスターの攻撃力は、除外したモンスターのレ
ベル合計×100アップする。
「発動時の効果で、墓地の白虎を手札に加える。続けて効果発動! うちが引き
当てたこの《融合》を墓地へほかすことで、手札の“於菟姫”3体を除外し融合さ
せる……!」
「来る! “於菟姫”の融合モンスター……!」
「うちは手札の馬腹、傲很、白虎を除外! 幻界に吹く新風交わりて、崑崙の守
護獣となる……!」
3体の虎を除外ゾーンへと送りこむことで、場にそびえる寺院は本殿の扉が開か
れた。
そして場にうっすらと現れた3体の虎がつむじ風を纏い、扉の中へと取り込まれ
ると、薄暗い扉の中で赤く血走った双眼が開かれ、日吾を睨みつけた。
「“融合召喚”や! 現れて――《虎嘯の於菟姫-開明陸吾》……!」
そして扉の中から竜の翼を背中から生やした巨大な虎が飛び出すと、一嘉の前で
着地し、日吾を威圧するように暴風のような低い唸り声を発した。
虎嘯の於菟姫-開明陸吾
融合、効果モンスター
/風/レベル8/幻竜/攻撃力2600。
カード名の異なる「於菟姫」モンスター×3
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが融合召喚に成功した場合、除外状態の自分の「於菟姫」モン
スターを任意の枚数対象に発動できる(同名カードは1枚まで)。そのモンスタ
ーを手札に加え、このカードの攻撃力を次の相手ターン終了時まで手札に加えた
枚数×500アップする。3体以上加えた場合、さらに加えた枚数まで相手フィ
ールドのモンスターを選んで破壊できる。
レベル合計14 開明陸吾攻撃力2600→4000。
「あれが一嘉さんの切り札……!」
「《虎寺院テンプル》で融合召喚した開明陸吾の攻撃力は、除外した“於菟姫”
のレベル合計×100アップや!」
そして一嘉が融合召喚した翼持つ虎の効果を発動させることで、竜の翼は大きく
広げられ、同時に除外ゾーンから彼女の手札へと3体の虎が再び加わった。
「開明陸吾が融合召喚したことで効果発動や! 除外状態の馬腹、傲很、白虎を
手札に加え、1体に付きお兄はんのターンが終わるまで攻撃力500アップ……!
為虎添翼!」
開明陸吾攻撃力4000→5500。
「この効果でうちは3体以上手札に加えた。開明陸吾の追加効果で、加えた数ま
でお兄はんのモンスターを破壊や……!」
翼持つ虎が背中の翼を大きく動かし、暴風を巻き起こしたことで、日吾が従える
第8のコブラは吹き飛ばされて消滅した。
「これで日吾の場からモンスターは消えた」
「やるな、一嘉――」
「更に手札に戻った馬腹と傲很を除外して白虎の効果発動! 再び特殊召喚や!
バトル! うちの新旧切り札でお兄はんを見返したる……!」
そしてバトルフェイズを宣言した一嘉は、日吾へと攻撃を仕掛ける。
「うちは開明陸吾でお兄はんを攻撃! 哮りの裂爪幻撃……!」
一嘉の攻撃宣言とともに、翼持つ虎は宙へと舞い上がり、空中から日吾をめがけ
急降下しながら太く逞しい前足で引っ掻こうとする。
「これで終わりや! お兄はん……!」
「――だが、まだまだだ。罠カード《梵定竜王量(サマーディナーガ・プラマー
ナ)》を発動! その攻撃を無効にする……!」
しかし日吾も、発動させた罠カードによって発生した濃霧に紛れて、翼持つ虎を
やり過ごした。
梵定竜王量(サマーディナーガ・プラマーナ) 通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にする。
その後、自分の除外状態の「梵定竜王」モンスター2体に付き1枚、カードをド
ローできる。
除外状態の梵定竜王(ウパナンダ サーガラ ヴァスキ ムチャリンダ)
『攻撃を防いだ……!』
「更に除外状態の“梵定竜王”2体に付き、1枚ドロー。どうした一嘉? 僕は
まだ、膝すら着いてないぞ……?」
翼持つ虎が一嘉の元に戻って来ると、霞の中から妹を煽るかのような笑みを浮か
べた日吾が再び現れるのを目にして、一嘉は意地が悪いと頬を赤くし膨らませた。
「なっ!? しょーもな……ほな白虎でお兄はんをしばいたる! 攻撃と同時に
除外状態の馬腹と傲很を手札に加えて、攻撃力アップ! 幻爪裂破……!」
だが一嘉も、残る白虎で今度こそ日吾を倒そうと攻撃を仕掛ける。
白虎攻撃力2100→3100。
「除外状態のヴァスキをデッキに戻すことで、速攻魔法《梵定竜王慈(サマーデ
ィナーガ・マイトリー)》を発動! ヴァスキの攻撃力分、1600LPを回復す
る」
残る伏せカード1枚を開いたことで、日吾のLPが回復し、2体の風生の虎が繰
り出す猛攻を凌ぎ切った。
梵定竜王慈(サマーディナーガ・マイトリー) 速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の除外状態の「梵定竜王」モンスター1体をデッキに戻して発動でき
る。自分はそのモンスターの攻撃力分LPを回復する。
日吾LP2800→4400→1300。
「バトルはしまいや。ほだら、手札の“於菟姫”2体を除外して魔法カード《幻
顕虎踞》発動……!」
幻顕虎踞 通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札の「於菟姫」モンスターを任意の枚数除外して発動できる。デッキか
らカードを1枚ドローし、相手に除外した枚数×300ダメージを与える。
「カード1枚をドローして、除外した枚数×300ダメージや!」
日吾LP1300→700。
「……それで?」
「むぅ……いけずやでお兄はん。ほなら駄目押しに魔法カード《フラッピング・
スラッシュ》発動! 幻竜族が除外されたターンやから、お兄はんが発動させてい
る《修験の霊鷲山》を除外……!」
一嘉が続けて魔法カードを発動させると、翼持つ虎が前足を振り上げ発生させた
衝撃波が日吾のLPを削るとともに、雲海が広がる山頂を消し飛ばした。
フラッピング・スラッシュ 通常魔法
(1):幻竜族モンスターが除外されたターンに発動できる。フィールドの魔法・
罠カード1枚を除外し、相手に500ダメージを与える。
「更に500のダメージや……!」
日吾LP700→200。
「これで日吾の場から、カードが全て消えてしまった」
「うちはターン終了。そないな余裕もハッタリや。次のターンお兄はんができる
ことなんて限られとる」
だが一嘉の指摘を受けてなお、日吾は先程引いた手札に握る2枚のカードに一瞬
だけ視線を移し、やがてデッキに手を掛けカードをドローしようとする。
「僕のターン! このドローで切り返してみせる……!」
そう言い放った日吾が目を閉じ、カードを引く右手に精霊の力を漲らせようとす
るのを察し取った一嘉は、不服そうに口を尖らせた。
「“使う”んか? ずっこいでお兄はん……」
「勝たなければ失うこともある。僕があの時、夢枕君と戦った時もそうだった」
そして日吾はカードをドローし、引き当てたカードを見ると、即座にそのカード
を発動させた。
Turn5 日吾手札3
「――見えた! 除外状態の“梵定竜王”が3体以上のため、魔法カード《梵定
竜王再(サマーディナーガ・プナーバヴァ)》を発動!」
「……ほらな。次引くカードを“探知”しよった」
梵定竜王再(サマーディナーガ・プナーバヴァ) 通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):除外状態の自分の「梵定竜王」モンスターが3体以上存在する場合に発動
できる。除外状態の「梵定竜王」モンスター1体を特殊召喚する。
「櫛風沐雨より世尊を守護せよ! 除外ゾーンより現れろ! 《梵定竜王(サマ
ーディナーガ)ムチャリンダ》……!」
ムチャリンダ攻撃力3000。
「そして効果発動! 定の境地より異類中行せよ! 四門出遊……! 除外状態
の“梵定竜王”――サーガラを帰還させ、僕の場から“梵定竜王”1体を除外する。
サーガラを除外」
「サーガラが場から除外されはったことで、デッキから“梵定竜王”1体を手札
に加えられる。……まさか!?」
一嘉が危惧した通りに、日吾はサーチしたモンスターともう1枚――儀式魔法も
公開し、発動することで場に8つの燭台が現れた。
「僕は儀式魔法《梵定竜王阿羅漢(サマーディナーガ・アルハット)》を発動!
レベルが8以上になるよう、場のムチャリンダをリリースの代わりに除外する」
それぞれの燭台に炎が灯るとともに、その中心部へと光が差し込み、衝撃で燭台
が吹き飛んだ。
そして光の中から日吾の場に降臨したのは、無数の頭を持ち、五色で彩られた胴
体を複数の腕釧で飾り立てたコブラだった。
「現れろ! ナーガローカより地上世界を支えし竜王! 儀式召喚。《梵定竜王
(サマーディナーガ)アナンタ》……!」
アナンタ攻撃力3000。
「来はったか……お兄はんのムチャリンダに次ぐ切り札……!」
「墓地のウパラガを対象にアナンタの効果発動――因機説法! 墓地よりウパラ
ガを蘇生し、そのまま除外する」
場を経由し、墓地から第8の竜王が除外されるとともに、日吾の宣言によって降
臨せし多頭のコブラはそれぞれの頭部を輝かせていく。
「僕は除外状態のムチャリンダをデッキに戻し、アナンタの効果発動! このタ
ーン攻撃力をムチャリンダの攻撃力分アップさせ、同じ効果を得る!」
アナンタ攻撃力3000→6000。
「……それだけやないんやろ……?」
「ああ――バトルだ! ムチャリンダの効果を得たアナンタが攻撃する際、除外
状態のウパラガをデッキに戻すことで、このターンその攻撃力分攻撃力をアップで
きる」
日吾がバトルフェイズを宣言するとともに、ウパラガのみをデッキに戻すことで
、多頭のコブラは更に攻撃力を上昇させていく。
アナンタ攻撃力6000→9000。
『開明陸吾の攻撃力5500を上回った……!?』
「アカン――アナンタの攻撃を凌ぎ切れへん……」
自らのLPを再確認した一嘉は、2体の戦闘で受けるダメージと自身のLPが等
しいことに気付き、まだまだ兄には敵わないことを悟った。
「一嘉――僕にここまで迫るとは、成長したな。だが僕は、行く手に誰が立ち塞
がろうと勝ち続けなければならない……!」
日吾は眉を下げて遊無の方を向き、口を真一文字に結ぶと、彼女と遊陽から伝え
られた絶望的な精霊世界での戦いを想像する。
「……友達が危機に陥っていたのに、僕はただ、遠く離れた洛皇でつゆ知らずの
ままだった。同じ精霊の力宿す者なのに……」
「それは違います! ……日吾さんに落ち度などありません。私が弱かったから
――」
後悔の念を口走る日吾に対し、遊無は彼が責任を負うことは無いと、敗北し力を
奪われた自身の力不足を痛感する。
「だからこそだよ。君を守れなかったことで事態は悪化した。……でも今度こそ
は、ユーメイを倒す戦いに僕も力添えしてみせる!」
日吾は竜の翼持つ虎を指差すことで攻撃対象を定め、多頭のコブラに攻撃を指示
する。
「僕はアナンタで開明陸吾を攻撃……! サマーディ・シャマタ……!」
無数の頭持つコブラが宙に巨大な曼荼羅を開いていくと、その中心から発した光
線が拡散し、無数に分裂するとそのまま竜の翼持つ虎の全身を貫いていった。
「うっ……きゃっ!?」
一嘉LP3500→0。
「勝った。……一嘉……!?」
決着が着くと、日吾はその場にへたり込んだ一嘉を心配し、彼女の元に駆け寄っ
た。
「――もう、うちかって子供のままやあらへんで?」
またしても兄には敵わなかったと、一嘉は悔しげな素振りを見せつつも、日吾が
差し出した手を握り、再び立ち上がった。
「2人とも! いいデュエルだったぜ」
「ありがとう。――っと、丁度2人も着いたみたいだよ」
腕のD・フェースが振動し、通知を見ようと画面を操作した日吾は、同じくD・
フェースを確認した遊陽と遊無の2人とともに、一行が洛皇に滞在する間お世話に
なる常盤家へと向かうことにする。
「そうですね。行きましょう――」
手配したイーサ教会の送迎車も到着する頃だと、遊陽達は再び待ち合わせ場所で
ある中央駅のロータリーへと向かった。
「おっ! 来たな……!」
「カズ! 塰里……!」
既に到着し、リムジンに乗り込んでいたカズと留音が窓を開けて手を振り、一同
を歓迎した。
「みんなで強化合宿だな! “賑やか”な夏休みにしようぜ!」
遊陽達がリムジンに近付くと、日吾も2人へと再会の挨拶をしつつ、イーサ教会
から派遣された運転手に対して行き先を提示する。
「待ってたよ。一斗君に塰里さん。――出発してください」
全員が乗り込むと、リムジンは常盤家を目指して発進した。
一行は名残惜しそうに洛皇の街並みを眺めつつも、それぞれ学園や精霊世界で体
験した出来事を思い浮かべる。
この強化合宿に参加した目的――この世界の破壊と再生を目論む秘号と渡り合う
力を身に付け、遊明の力を取り返すと、遊陽達は決意を新たにするのであった。
「遊陽と遊無――」
「そして僕、日吾と一嘉が送る――」
『ビナリウス回顧録!』
遊陽「定の竜と風生の虎……最強の幻竜決戦は、日吾の勝ちで決着となった」
遊無「まさに“龍虎相搏つ”デュエルでしたが、勝利した日吾さんだけでなく、一
嘉さんも見事な戦いぶりでした」
一嘉「そりゃおおきに~、うちの“於菟姫(おとひめ)”も幻竜族らしく、デッキ
を回すには除外が鍵なんどす」
日吾「僕の“梵定竜王(サマーディナーガ)”とは違い、一嘉の“於菟姫”は除外
ゾーンと手札の行き来を繰り返し、その枚数が多いほど切り札の攻撃力が増してい
くんだ」
一嘉「そやね……なあお兄はん、うちのために教会の人らに掛け合ってくれて、お
かげでうちはこの通り元気になったんやで?」
日吾「一嘉……」
一嘉「これからはお兄はんとも、面会時間なんて気にせず会えるんや! 改めてお
礼言わせておくれやす。おおきにな。大好きやで? お兄はん――」
日吾「――っ! ああ。僕も大好きだ……一嘉……!」
遊陽「……この兄妹がより絆を深められて、本当に良かった。遊無もそう思わない
か?」
遊無「――はい。では次回予告にしましょう。常盤家へと向かう道中、私達が精霊
世界に向かっていたのと時を同じくして、カズさんと留音さんも守るべきもののた
め、一足先にデュエルの特訓に勤しんでいました――」
『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -審判を下す司直の竜-』
遊陽「2人の口から、それぞれの師匠――アルベルトさんとモイラさんに認められ
た経緯が語られる。次回も激闘繰り広げられたデュエルに注目だ……!」
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同シリーズ作品
イイネ | タイトル | 閲覧数 | コメ数 | 投稿日 | 操作 | |
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63 | 1Turn 幽明を賑わす者 | 680 | 0 | 2022-11-11 | - | |
60 | 2Turn 掛け声響く祭りの竜 | 592 | 2 | 2022-11-12 | - | |
59 | 幕間 亡国の斜狐 | 510 | 0 | 2022-11-13 | - | |
62 | 3Turn 幽“零”少女 | 532 | 0 | 2022-11-18 | - | |
58 | 4Turn 複翅キ テイクオフ! | 418 | 0 | 2022-11-19 | - | |
49 | 5Turn 竜舞う花伝 | 366 | 0 | 2022-11-20 | - | |
53 | 6Turn 還流の海人 | 479 | 0 | 2022-11-25 | - | |
51 | 7Turn 繋がる異界 | 536 | 1 | 2022-11-26 | - | |
60 | 幕間 遊楽の休日 | 520 | 0 | 2022-11-27 | - | |
59 | 8Turn 境階の学び舎 | 466 | 0 | 2022-12-01 | - | |
55 | 第一章 キャラクター紹介 | 432 | 0 | 2022-12-02 | - | |
55 | 9Turn 開幕! 影鬼劇場! | 436 | 0 | 2022-12-03 | - | |
68 | 10Turn 花形役者と斜国の悪狐 | 491 | 0 | 2022-12-04 | - | |
45 | 11Turn 陶酔へと誘う酒処 | 388 | 0 | 2022-12-09 | - | |
58 | 12Turn 特別への自覚 | 393 | 0 | 2022-12-10 | - | |
46 | 13Turn 波間に揺らめく波止場 | 401 | 0 | 2022-12-16 | - | |
45 | 14Turn 命育む赤き血汐 | 465 | 0 | 2022-12-17 | - | |
62 | 幕間 遊無 落第の瀬戸際 | 443 | 1 | 2022-12-24 | - | |
53 | 15Turn 供養と円寂の儀 | 473 | 0 | 2023-01-14 | - | |
71 | 16Turn 石の塔が崩れる時 | 361 | 0 | 2023-01-27 | - | |
54 | 17Turn 盤上のアーティスト | 506 | 0 | 2023-02-12 | - | |
48 | 18Turn 夜空に咲く“賑やか”なる華 | 450 | 0 | 2023-02-21 | - | |
57 | 19Turn タッグデュエル大会 開幕! | 541 | 0 | 2023-03-09 | - | |
46 | 20Turn ウフトカビラ&サギラ | 450 | 1 | 2023-03-15 | - | |
55 | 21Turn 岡と浪花 花よりたい焼き | 386 | 0 | 2023-03-21 | - | |
65 | 22Turn 徹頭徹尾の覚悟 | 489 | 1 | 2023-03-24 | - | |
50 | 23Turn ビナリウス対バウンティフル | 405 | 0 | 2023-04-12 | - | |
47 | 24Turn 決着と新たな予兆 | 390 | 1 | 2023-04-13 | - | |
64 | 今までの話が丸分かり! 第一章のあらすじ | 455 | 0 | 2023-04-14 | - | |
46 | 25Turn 異国からの訪問者 | 385 | 0 | 2023-05-26 | - | |
40 | 26Turn 天上の採火 | 288 | 0 | 2023-06-02 | - | |
52 | 幕間 3人の交流生 | 360 | 0 | 2023-06-04 | - | |
74 | 27Turn 魘夢の魔族 | 340 | 0 | 2023-06-10 | - | |
42 | 28Turn 羅漢の竜王 | 294 | 0 | 2023-06-21 | - | |
47 | 29Turn 聖夜のマノン | 376 | 0 | 2023-06-25 | - | |
43 | 幕間 もう一人の遊無 | 319 | 2 | 2023-06-28 | - | |
43 | 第二章 キャラクター紹介 | 350 | 1 | 2023-07-01 | - | |
73 | 幕間 闘諍の予兆 | 383 | 0 | 2023-07-06 | - | |
48 | 30Turn 狂課金(ミダース) | 322 | 0 | 2023-07-10 | - | |
70 | 31Turn 舞い上がる不死鳥の輪舞 | 436 | 0 | 2023-07-14 | - | |
56 | 32Turn 巻き上げる関捩 | 357 | 1 | 2023-07-17 | - | |
48 | 33Turn 夢に堕ちる仲間 | 409 | 0 | 2023-07-22 | - | |
39 | 34Turn 友を取り戻せ! | 306 | 0 | 2023-07-30 | - | |
39 | 35Turn 堕ちた雷と涙雨の天河 | 345 | 0 | 2023-08-03 | - | |
38 | 36Turn 伝えたい言葉 | 324 | 1 | 2023-08-11 | - | |
37 | 37Turn 夢を喰らう獏 | 298 | 0 | 2023-08-26 | - | |
36 | 38Turn 深淵のトモカヅキ | 264 | 0 | 2023-09-03 | - | |
90 | 39Turn 最遠のパズズ | 356 | 0 | 2023-09-11 | - | |
32 | 40Turn 所縁が結ぶ絆 | 253 | 0 | 2023-09-18 | - | |
32 | 41Turn 活火激発の鍛人(かぬち) | 270 | 0 | 2023-09-22 | - | |
35 | 42Turn 巣林一枝のブルーバード | 213 | 0 | 2023-09-23 | - | |
35 | 今までの話が丸分かり! 第二章のあらすじ | 310 | 1 | 2023-09-24 | - | |
34 | 43Turn 次の関係(ステップ)へ | 282 | 0 | 2023-10-20 | - | |
41 | 44Turn 竜の駒 大洋を統べる | 359 | 0 | 2023-10-22 | - | |
40 | 45Turn マグナ ヌメンへの往訪 | 247 | 0 | 2023-10-26 | - | |
37 | 46Turn 跳躍-精霊世界へ | 269 | 0 | 2023-10-29 | - | |
49 | 幕間 強化訓練と異界の住人 | 307 | 0 | 2023-11-02 | - | |
48 | 47Turn 精霊世界 マースの森で | 263 | 0 | 2023-11-05 | - | |
40 | 祝一周年! 今後の展望など | 330 | 0 | 2023-11-11 | - | |
37 | 48Turn 精霊長アラウン | 212 | 0 | 2023-11-15 | - | |
38 | 第三章 キャラクター紹介 | 270 | 1 | 2023-11-16 | - | |
46 | 49Turn 下される審判 | 290 | 0 | 2023-11-20 | - | |
27 | 50Turn 猟犬従えし灰の王 | 262 | 0 | 2023-11-28 | - | |
35 | 幕間 精霊世界の平生 | 320 | 0 | 2023-12-07 | - | |
32 | 51Turn 最善の選択 | 233 | 0 | 2023-12-18 | - | |
35 | 52Turn 立ちはだかる使者達 | 271 | 0 | 2023-12-28 | - | |
31 | 53Turn 怨嗟積り秘号と成す | 238 | 0 | 2023-12-30 | - | |
34 | 54Turn 遊明の力 | 258 | 0 | 2024-01-02 | - | |
32 | 今までの話が丸分かり! 第三章のあらすじ | 301 | 0 | 2024-01-03 | - | |
27 | お久しぶりです。 | 120 | 0 | 2024-11-10 | - | |
18 | お知らせ。 | 141 | 0 | 2024-11-20 | - | |
22 | 55Turn 史都洛皇 霊祖常盤家 | 78 | 0 | 2024-12-20 | - | |
1 | 56Turn 定の竜 風生の虎 | 10 | 0 | 2025-01-11 | - |
更新情報 - NEW -
- 2024/12/21 新商品 PREMIUM PACK 2025 カードリスト追加。
- 01/11 18:15 デッキ 【25年1月】罪宝白き森聖徒(代用カード入)
- 01/11 18:03 評価 3点 《No.78 ナンバーズ・アーカイブ》「???「…待たせたな」 …
- 01/11 18:00 評価 7点 《魔妖仙獣 大刃禍是》「総合評価:Pゾーンに置いての補助も使いや…
- 01/11 17:59 デッキ ドラゴンメイドのお色直し(新規ドラメ採用型ドラゴンメイド)
- 01/11 17:52 評価 8点 《妖仙獣 鎌壱太刀》「自身の効果で仲間を展開してバウンスで除去…
- 01/11 17:46 評価 7点 《妖仙獣 鎌弐太刀》「総合評価:《妖仙獣 鎌参太刀》のトリガーと…
- 01/11 17:33 評価 8点 《妖仙獣 鎌参太刀》「総合評価:サーチで相手の動きに備えられるカ…
- 01/11 17:18 評価 10点 《キングレムリン》「爬虫類デッキを作る時にまず考える専用サー…
- 01/11 17:05 掲示板 オリカコンテスト投票所
- 01/11 17:01 SS 56Turn 定の竜 風生の虎
- 01/11 16:25 掲示板 オリカコンテスト投票所
- 01/11 16:00 評価 8点 《妖仙獣 左鎌神柱》「総合評価:身代わり目的でもP召喚目的でも使…
- 01/11 15:25 評価 10点 《オルフェゴール・ディヴェル》「オルフェゴール最強の墓地効果…
- 01/11 14:57 評価 5点 《妖仙獣 右鎌神柱》「総合評価:《妖仙獣の神颪》でリクルートする…
- 01/11 14:50 評価 8点 《妖仙獣 辻斬風》「総合評価:手札からもフィールドからも戦闘補助…
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- 01/11 13:28 デッキ ギャラクシー
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- 01/11 12:57 評価 9点 《妖仙獣の秘技》「総合評価:サーチ可能な万能カウンター故に重要…
- 01/11 12:44 掲示板 オリカコンテスト投票所
Amazonのアソシエイトとして、管理人は適格販売により収入を得ています。