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15Turn 供養と円寂の儀 作:ジェム貯めナイト
再試から数日後。学園へと登校した遊無は再試結果を確認し、返却された答案用紙を教室で千夜と八千代に見せつつ、これまでの頑張りを労われていた。
「遊無ちゃん! 再試合格おめでとーっ……!」
「お疲れ様。今までの頑張りから遊無さんは受かると、私は信じていたよ」
「千夜さん、八千代さん――ありがとうございます……!」
再試結果を聞き、自分の事のように安堵する千夜と八千代へと、遊無は嬉し混じりに答える。
「……落ちずに済んで良かったな。次からもその調子で挑むといい」
「むっ……何さ! 上から目線で感じ悪るーっ」
鉛筆を走らせ、デュエル情景を描きつつ呟いた須浦に千夜は嫌味ったらしく言い返すと、そうじゃない。と須浦は先日千夜とデュエルした時の場面を描いたスケッチブックを閉じて、席を立ち遊無へと向き直る。
「この短期間での成長――大したものだ。次もきっと大丈夫だろう」
「須浦君なりの誉め言葉なのだろう。素直に受け止めていいと思うよ?」
「そうなの? なんか釈然としないなぁ――ていうか須浦君、何だかんだ遊無ちゃんのこと気にかけて――ホントは遊無ちゃんの事も好きなんでしょー?」
千夜がにやにやと笑いつつ彼の元へと歩み寄り指摘すると、遊無と八千代もそうなのかと視線を向ける中、須浦は普段とは違い千夜の煽りに乗ることなく着席し、再びスケッチブックを開いて鉛筆を手に取った。
「……――」
「何そのダンマリ!? やっぱ遊無ちゃんの事好きなんだぁー!」
「笑原、静かにしろ」
「ただいまーッス……あっ、遊無ちゃん! 再試合格おめでとさーん!」
経香はすっかり通い詰めとなった遊陽の家へと、仕事での疲労を滲ませつつ空が夕日で真っ赤に染まる時間に到着すると、玄関に出てきた遊陽と遊無に歓迎される。
「こんばんは経香先生。おかげ様で全教科の再試に合格できました」
「聞いたよ。遊無ちゃんホントよく頑張ったね!」
「おかえり経姉。夕飯の時間だし、今日も食べて帰りなよ」
「それじゃ遠慮なく――おばさんの作る料理美味いんだよなー」
多忙な日々が続いたこともあってか経香は疲れ果てた様子で、フラフラと夕飯の香りが漂う食卓へと遊陽と遊無の2人と向かって行く。
「お帰り経香ちゃん! 丁度夕飯もできた事だし、一緒に食べていきなさいな」
「ありがとうございますおばさん。それじゃお言葉に甘えて――」
『頂きます……!』
3人は遊陽の母とともに食卓に座り、母とその手伝いをした遊無が作った夕飯へと手を付けていく。
「今日は疲労回復にいい生姜焼きよ! 経香ちゃん、お仕事お疲れ様」
「ありがとうございます。私の教科は全員合格点を取れて一安心ですよ」
「遊無も経姉もお疲れさん。……テスト期間も終わったし、経姉が来るのも今日で最後なのかな」
「むっ――遊陽、あたしと一緒は嫌かよ。この薄情者めっ!」
経香は不服そうな表情で隣に座る遊陽へと口を尖らせつつ、肘で彼の脇腹を小突こうとする。
「痛っ……!? 何すんだよ!」
「昔はよくあたしに甘えてきたくせに……最近遊陽が冷たくて、お姉ちゃん寂しいぞーっ?」
「いや……別に冷たくしてなんか――」
「経香ちゃんの言う通りよ遊陽! あんた学園で経香ちゃんを困らせていないでしょうね?」
「してないし! あーもうっ、食事できないだろ経姉!」
夕飯もそっちのけに、遊陽にべったりとくっ付こうとする経香の姿を見て、遊無も食事の手を止め本当の姉弟のように接する2人をジッと眺める。
「……あの、経香先生と遊陽さんは、昔から仲がよろしいのですか?」
「ああ……前にも言ったけど、経姉は祭りの委員でさ――」
「秋になるとみんなで集まって、祭りの練習するんだよ。教員免許取って帰ってきてからは、あたしも委員を務めてるってわけ」
一旦茶碗を置き、大学に進学する前の事をしみじみと思い出す経香は、隣に座る遊陽の腰の位置で手を水平にかざす。
「遊陽はな。あたしが中等部に上がる前、このぐらいの小っさい頃に祭り稽古にきてさ。そっからあたしのいる班で一緒に祭りに加わってたってわけ」
「経姉には太鼓に踊り、得意の笛まで一通り教わって、都会の大学に進学するまで一緒に祭りを“賑やか”せていたんだ」
「そうだったのですね。お二人はまるで本当の姉弟のように、お互いを信頼する関係――」
言いかけた言葉を首を横に振って飲み込み、黙々と食事を再開した遊無に遊陽と経香はどうしたのかとお互いに顔を見合わせるが、再び食事へと意識を向けた。
「……おばさん、ご馳走様。美味しかったです」
「ご馳走様でした……」
経香と遊無は同時に立ち上がり、食器を台所へと運ぼうとする。
「……ねえ遊無ちゃん、もし良かったらさ――食後の運動ってことであたしとデュエルしてみない?」
「経香先生とですか……?」
経香が食洗機に食器を入れる遊無へと持ちかけた思いがけない提案に、遊無は面食らって彼女へと聞き返す。
「遊陽とは祭りだけじゃなく、何度もデュエルを交わしてきたんだ。デュエルをすればみんな友達! ……ってね」
「友達……」
「忙しい時期も一段落したことだしさ。遊無ちゃんの事、もっと教えてよ」
経香が差し出した手を見ると、遊無は経香の誘いに対して、その手を掴みながら首を縦に振り了承する。
「勿論です! 先生とのデュエル――受けて立ちましょう!」
「よぉし! 遊陽の姉代わりとして、遊無ちゃんとも友好を深めなくっちゃね!」
経香とともに近所のデュエルに適した公園へと移動した遊無は、2人のデュエルを観戦する遊陽とヨリマシが見守る中、お互いにD・フェースを展開させ、デュエルの準備を整えた。
――きょーかおねーちゃんとゆーむちゃん、デュエルするんだ――。
「経姉は強いぞ遊無! 昔は全く勝てなかったからな」
「昔どころか今だって――あたしにコテンパンにやられるのがオチだろ。さあ遊無ちゃん、始めよっか……!」
デッキが自動でシャッフルされ、街灯でライトアップされた公園内で遊無と経香は互いに5枚のカードを引く。
引いた手札を確認した遊無はその時初めて、音もなく現れた玉藻前が見下ろす中、入れた覚えのない見慣れないカードに気付く。
「これは――新たな“幽鬼”のカード……」
――其奴らか? わらわが招き入れておいた――。
「玉藻さん! なぜそのようなことを……?」
――貴様に興味を示した鬼から聞け。戦いの中でな――。
「私に興味……?」
改めて手札を確認すると、遊無は何故自らの元に――と疑問を抱くが、その答えは玉藻前の言う通りデュエルの中で直接問い詰めるしかないと、再び経香へと向き直った。
――そっか。だからいやなけはいがしてたんだね――。
「遊陽みたいに霊と話してんのか……? 幽霊だったらあたしのデッキで供養して、弔ってやるよ!」
「試してみますか? 私の幽鬼を消し去れるかどうか――」
『デュエル――』
遊無LP4000。 経香LP4000。
「先行はあたしが頂くよ! あたしのターン!」
手札を一目見た経香は、早速故人を亡き後も護る刀の姿をしたモンスターを場に呼び出す。
「あたしは《葬GEAR-守刀》を手札から特殊召喚! このカードはあたしの場にモンスターがいなければ特殊召喚できる!」
葬GEAR-守刀
効果モンスター
/闇/レベル4/魔法使い/攻撃力1400。
このカード名の(1)の効果による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の
効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
手札のこのカードを特殊召喚する。
(2):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「葬GEAR」モンスター1体を
墓地に送る。この効果の発動後、相手はデッキからモンスター1体を選んで墓地
に送ることができる。
「経姉の“葬GEAR”が早速お出迎えか――」
「守刀の効果発動! あたしはデッキから「葬GEAR」を墓地に送り、遊無ちゃんも同じくモンスターをデッキから墓地に眠らせられる! あたしは《葬GEAR-枕茶碗》を墓地に供えるよ」
「私は《削幽鬼 鎌鼬》を墓地に送ります」
そして守刀が粒子となって消滅すると、僧衣を纏い両手を合わせた埴輪が、経香の手札から場に姿を現した。
「更にあたしは守刀をリリース、被葬者に安寧の眠りをもたらす守護者――《葬GEAR形象-供物埴輪》を“アドバンス召喚”!」
葬GEAR形象-供物埴輪
効果モンスター
/闇/レベル5/魔法使い/攻撃力2000。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の墓地の「葬GEAR」モンスターと相手の墓地のモンスターを1体ずつ対
象に発動できる。そのモンスターを除外する。
(2):手札の「葬GEAR」儀式モンスター1体を相手に見せて発動できる。
ターン終了時までこのカードのレベルはそのモンスターと同じになる。
「更に手札から、あの世に旅立つ魂を見送る斎場――永続魔法《斎場会館ーフューネラホール》を建築するよ!」
D・フェースが発動したカードを認識するとともに、白を基調とした荘厳な斎場が夜の闇の中で輝きつつ、地面を裂き地中からそびえ立つ。
斎場会館ーフューネラホール 永続魔法
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):「葬GEAR」カードの効果で自分・相手の墓地のモンスターが除外された場合
に発動できる。お互いのプレイヤーはデッキからレベル4以下のモンスターを墓
地に送る。その後このカードに葬儀カウンターを1つ置く。
(2):このカードがフィールドから離れた時に自分はこのカードに置かれてい
た葬儀カウンターの数×800ダメージを受ける。
「次は“魂を供養する斎場”ですか――」
「続けて供物埴輪の効果発動! 1ターンに1度、お互いの墓地からモンスターを1体ずつ弔い、その魂を成仏させる」
2人の墓地からモンスターの魂が白い人魂となって、場にそびえる斎場へと吸い込まれたのち、消滅する。
――きょーかおねーちゃんのとくいなじょれいコンボだね――。
「ああ。墓地に集い一気に湧き出る幽鬼にとって、相性は最悪だ」
「更に除外された枕茶碗の効果発動! デッキから「葬GEAR」1体を墓地に送り、《葬GEARの殯》1枚をデッキから手札に加える。そして魂が成仏したことでフューネラホールに次の故人が運び込まれ、実績が積まれるよ」
葬GEAR-枕茶碗
効果モンスター
/闇/レベル3/魔法使い/攻撃力600。
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
デッキから「葬GEAR」モンスター1体を墓地に送り、デッキから「葬GEAR
」儀式魔法1枚を手札に加える。
「フューネラホールにカウンターが置かれた。だがフューネラホールが廃館した時、経姉はその運用数に応じたダメージを受けるぜ」
「故人を偲ぶ場をそうそう潰させはしないよ。カードを1枚伏せてターン終了だ」
ターンは遊無に移り変わり、遊無はカードをドローすると、即座に手札からモンスターを呼び出す。
「私のターン! まずは《袂幽鬼 夜雀》を召喚です。夜雀の効果により、このターンが終わる時に相手モンスター1体を喰らいます。そして行き着く先は、延々と続く苦行の石場――」
周囲に不吉な気配が漂い始めると同時に景色は変わり、どこまでも続く大河の手前――大小様々な大きさの石が積み上げられた川辺へと変化する。
『ここは……!?』
「永続魔法《未完の石鬼塔》――更に魔法カード《施餓鬼供与》の発動です! お互いに手札のモンスターを捨てて、カードを2枚ドローするかの選択を迫ります」
施餓鬼供与 通常魔法
(1):お互いのプレイヤーは、それぞれ手札のモンスター1体を墓地に送ることが
できる。
この効果で墓地に送ったプレイヤーはカードを2枚までドローする。
墓地に送らなかった場合、そのプレイヤーは相手がドローした枚数×1000LP
を回復する。
「手札交換か。ならあたしは2枚目の供物埴輪を捨てて、カードをドローさせて貰うよ」
「お供えに感謝します。私はこの効果で相手がドローしたため、引いた枚数1枚に付き1000LPを回復します」
経香がカードを引くと同時に、遊無の手元に沢山の果実が詰まった籠が現れると、瑞々しい果物から発せられる神力で遊無に施しが与えられる。
遊無LP4000→6000。
「そして三途の川に訪れた者は、鬼によって石を積むのです。カードを2枚伏せ、ターンを終了とともに供物埴輪は破壊され、更に石が積まれます」
遊無がターンを終えるとともに、黒い雀の導きによって現れた巨大な鬼の顔面が埴輪を一口で飲み込み、砕かれた埴輪の破片がポロポロと鬼の口からこぼれ落ちる。
未完の石鬼塔 永続魔法
このカードの(2)の効果はデュエル中1度しか発動できず、このカードの(1)の
効果はフィールドに「幽鬼」モンスターが存在する場合のみ適用される。
(1):自分・相手の墓地にモンスターが送られた場合、このカードに積石カウンタ
ーを1つ置く。(6つまで)
(2):このカードに6つ目の積石カウンターが置かれた場合、このカードを破壊
し、お互いのフィールド・墓地のカードを全てデッキに戻す。
(3):自分の墓地に「幽鬼」モンスターが送られた場合、このカードの積石カウン
ターを全て取り除く。
「成程な。だがあたしの「葬GEAR」が破壊されたことで、罠カード《葬GEAR装飾 遺影》を発動! この効果であたしはデッキから3体目の供物埴輪を場に呼び出し、更に相手は墓地からモンスターを除外しないといけない」
葬GEAR装飾 遺影 通常罠
(1):自分フィールドの「葬GEAR」モンスターが破壊され墓地に送られた場合に発
動できる。
そのモンスターの同名モンスター1体を手札・デッキから特殊召喚する。
その後相手は墓地のモンスター1体を選んで除外する。
「では私は《境幽鬼 雲外鏡》を除外します。そして除外された雲外鏡の効果によって、お互いに除外されているモンスターを1体ずつ、場に呼び寄せます!」
宙に浮かんだ鬼の潜む鏡の中から鈍く光る鎌を携えた妖と、故人の枕元に添えられる茶碗が場へと舞い戻った。
「だが墓地からモンスターが除外されたことで、フューネラホールの効果でお互いにデッキのモンスター1体を弔わなければならない」
先程と同じように、斎場を通過して三途の石場へと、落ち着いた色合いの花束と使い古した傘の妖怪が送り込まれて来た。
すると傘の妖怪は先程積まれたばかりの石へと飛び掛かり、積み上げられた石を崩すと、川の中から伸びてきた腕が更にその破片を粉々に砕く。
「……未完の石鬼塔は私の墓地に「幽鬼」が送られた場合、折角積み上げた石
の塔を無理やり崩してしまうのです」
「成程な――さしずめ“賽の河原”ってわけか。あたしのターン!」
引いたカードを見ると、経香は小さく頷き勝ち誇ったように遊無を指差して宣言する。
「必要なカードは揃ったし、遅くなる前にこのデュエル――ケリをつけるよ! まずは供物埴輪の効果発動! 枕団子と唐傘小僧を成仏させる……!」
更に除外された枕団子の効果により、経香はデッキから3枚目の落ち着いた色合いをした花束を墓地に送ると、笑みを浮かべつつ1枚の青い枠をしたカードを2人に見せつけるように手札へと加えた。
葬GEAR-枕団子
効果モンスター
/闇/レベル4/魔法使い/攻撃力800。
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
デッキから「葬GEAR」モンスター1体を墓地に送り、デッキから「葬GEAR」儀
式モンスター1体を手札に加える。
「そのモンスターは!? 経姉の切り札……!」
「見たことのない枠のカード――そのカードは一体……?」
経香の見せたカードに2人はそれぞれ反応を示して、経香が繰り出す次の展開に備えて身構える。
「墓地からモンスターが除外されたから、フューネラホールの効果であたしは2体目の枕茶碗を墓地に送るよ」
「私は天邪鬼を墓地に送ります」
2体のモンスターの魂は斎場へと吸い込まれ、積まれたばかりの二段の石の塔は天邪鬼によって再び崩される。
「そしてあたしは供物埴輪のもう一つの効果を発動! 手札の“このカード”を
見せることで、供物埴輪のレベルは見せたモンスターと同じになる!」
「経姉の見せたカード……降臨させるモンスターのレベル以上になるようモンスターを捧げ、契約により現れる――」
「あたしは儀式魔法《葬GEARの殯》を発動だ! 場の供物埴輪は魂の供養を遺族に提供する送り人へと受け継がれる! これが“儀式召喚”だ! 降臨せよ! 《送葬GEAR-フューネラル・プランナー》!」
葬GEARの殯 儀式魔法
「葬GEAR」儀式モンスターの降臨に必要。
(1):レベルの合計が7以上になるように、自分の手札・フィールドのモンス
ターをリリースして、手札から「葬GEAR」儀式モンスター1体を儀式召喚す
る。
(2):自分フィールドの「葬GEAR」儀式モンスターが戦闘・効果で破壊される
場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
送葬GEAR-フューネラル・プランナー
儀式、効果モンスター
/闇/レベル7/魔法使い/攻撃力2500。
「葬GEARの殯」により降臨。
(1):1ターンに1度、自分の墓地の「葬GEAR」モンスター1体を対象に発動でき
る。そのモンスターの同名モンスターを手札・墓地から2体まで特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで除外されてい
る相手モンスターの数×300アップする。
(2):自分フィールドの「葬GEAR」モンスターが戦闘を行ったダメージ計算後に発
動する。その戦闘を行った相手モンスターを除外する。
「儀式召喚……!? このような召喚方があるなんて――」
経香が降臨させた喪服を着用し、腕に数本の数珠をかけた葬儀を取り仕切る老紳士へと、遊無は驚きを隠せずにいた。
「この町ではあまり見かけないけど、大学のあった都会の方ではそこそこ見かけたモンスターだよ。専用の魔法カードと捧げるモンスターが必要な代わりに、その効果はお墨付きってわけさ」
自らの切り札の登場に自信を覗かせる経香に対して、遊無は警戒を抱く。
特殊な手順を踏み降臨する儀式モンスター。その力は今まさに、遊無を倒そうと発揮されるのであった。
「遊陽と――」
「遊無の――」
『二人はビナリウス!』
遊陽「新たな「幽鬼」達を手にした遊無と経姉のデュエル――経姉の相手の墓地からカードを除外する戦術は遊無にとって、かなり不利だな」
遊無「私も対抗手段を講じましたが、経香先生に次々とモンスターを除外させてしまいました」
遊陽「今回紹介するのは墓地からモンスターを除外するのを得意とする、経姉の“葬GEAR”だ。故人を偲ぶ葬儀道具(ギア)に、葬儀屋もかかっているぜ」
遊無「そして供物として捧げられる埴輪を捧げ、契約による“儀式召喚”によって
現れる“儀式モンスター”が先生の切り札です。通常の召喚とは異なる特殊な召喚方の片割れが満を持しての登場ですね」
遊陽「もう片方の特殊な召喚方も、いずれ登場するぜ。次回は遂に現れた経姉の“儀式モンスター”による猛攻で、幽鬼は次々に除外され遊無は追い詰められていく」
遊無「ですが私も新たに手に入れた“禍津幽行”2体目の鬼とともに戦い、そして
積み上がった石の塔は秘められた力を解放します!」
『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -石の塔が崩れる時- お楽しみに!』
「遊無ちゃん! 再試合格おめでとーっ……!」
「お疲れ様。今までの頑張りから遊無さんは受かると、私は信じていたよ」
「千夜さん、八千代さん――ありがとうございます……!」
再試結果を聞き、自分の事のように安堵する千夜と八千代へと、遊無は嬉し混じりに答える。
「……落ちずに済んで良かったな。次からもその調子で挑むといい」
「むっ……何さ! 上から目線で感じ悪るーっ」
鉛筆を走らせ、デュエル情景を描きつつ呟いた須浦に千夜は嫌味ったらしく言い返すと、そうじゃない。と須浦は先日千夜とデュエルした時の場面を描いたスケッチブックを閉じて、席を立ち遊無へと向き直る。
「この短期間での成長――大したものだ。次もきっと大丈夫だろう」
「須浦君なりの誉め言葉なのだろう。素直に受け止めていいと思うよ?」
「そうなの? なんか釈然としないなぁ――ていうか須浦君、何だかんだ遊無ちゃんのこと気にかけて――ホントは遊無ちゃんの事も好きなんでしょー?」
千夜がにやにやと笑いつつ彼の元へと歩み寄り指摘すると、遊無と八千代もそうなのかと視線を向ける中、須浦は普段とは違い千夜の煽りに乗ることなく着席し、再びスケッチブックを開いて鉛筆を手に取った。
「……――」
「何そのダンマリ!? やっぱ遊無ちゃんの事好きなんだぁー!」
「笑原、静かにしろ」
「ただいまーッス……あっ、遊無ちゃん! 再試合格おめでとさーん!」
経香はすっかり通い詰めとなった遊陽の家へと、仕事での疲労を滲ませつつ空が夕日で真っ赤に染まる時間に到着すると、玄関に出てきた遊陽と遊無に歓迎される。
「こんばんは経香先生。おかげ様で全教科の再試に合格できました」
「聞いたよ。遊無ちゃんホントよく頑張ったね!」
「おかえり経姉。夕飯の時間だし、今日も食べて帰りなよ」
「それじゃ遠慮なく――おばさんの作る料理美味いんだよなー」
多忙な日々が続いたこともあってか経香は疲れ果てた様子で、フラフラと夕飯の香りが漂う食卓へと遊陽と遊無の2人と向かって行く。
「お帰り経香ちゃん! 丁度夕飯もできた事だし、一緒に食べていきなさいな」
「ありがとうございますおばさん。それじゃお言葉に甘えて――」
『頂きます……!』
3人は遊陽の母とともに食卓に座り、母とその手伝いをした遊無が作った夕飯へと手を付けていく。
「今日は疲労回復にいい生姜焼きよ! 経香ちゃん、お仕事お疲れ様」
「ありがとうございます。私の教科は全員合格点を取れて一安心ですよ」
「遊無も経姉もお疲れさん。……テスト期間も終わったし、経姉が来るのも今日で最後なのかな」
「むっ――遊陽、あたしと一緒は嫌かよ。この薄情者めっ!」
経香は不服そうな表情で隣に座る遊陽へと口を尖らせつつ、肘で彼の脇腹を小突こうとする。
「痛っ……!? 何すんだよ!」
「昔はよくあたしに甘えてきたくせに……最近遊陽が冷たくて、お姉ちゃん寂しいぞーっ?」
「いや……別に冷たくしてなんか――」
「経香ちゃんの言う通りよ遊陽! あんた学園で経香ちゃんを困らせていないでしょうね?」
「してないし! あーもうっ、食事できないだろ経姉!」
夕飯もそっちのけに、遊陽にべったりとくっ付こうとする経香の姿を見て、遊無も食事の手を止め本当の姉弟のように接する2人をジッと眺める。
「……あの、経香先生と遊陽さんは、昔から仲がよろしいのですか?」
「ああ……前にも言ったけど、経姉は祭りの委員でさ――」
「秋になるとみんなで集まって、祭りの練習するんだよ。教員免許取って帰ってきてからは、あたしも委員を務めてるってわけ」
一旦茶碗を置き、大学に進学する前の事をしみじみと思い出す経香は、隣に座る遊陽の腰の位置で手を水平にかざす。
「遊陽はな。あたしが中等部に上がる前、このぐらいの小っさい頃に祭り稽古にきてさ。そっからあたしのいる班で一緒に祭りに加わってたってわけ」
「経姉には太鼓に踊り、得意の笛まで一通り教わって、都会の大学に進学するまで一緒に祭りを“賑やか”せていたんだ」
「そうだったのですね。お二人はまるで本当の姉弟のように、お互いを信頼する関係――」
言いかけた言葉を首を横に振って飲み込み、黙々と食事を再開した遊無に遊陽と経香はどうしたのかとお互いに顔を見合わせるが、再び食事へと意識を向けた。
「……おばさん、ご馳走様。美味しかったです」
「ご馳走様でした……」
経香と遊無は同時に立ち上がり、食器を台所へと運ぼうとする。
「……ねえ遊無ちゃん、もし良かったらさ――食後の運動ってことであたしとデュエルしてみない?」
「経香先生とですか……?」
経香が食洗機に食器を入れる遊無へと持ちかけた思いがけない提案に、遊無は面食らって彼女へと聞き返す。
「遊陽とは祭りだけじゃなく、何度もデュエルを交わしてきたんだ。デュエルをすればみんな友達! ……ってね」
「友達……」
「忙しい時期も一段落したことだしさ。遊無ちゃんの事、もっと教えてよ」
経香が差し出した手を見ると、遊無は経香の誘いに対して、その手を掴みながら首を縦に振り了承する。
「勿論です! 先生とのデュエル――受けて立ちましょう!」
「よぉし! 遊陽の姉代わりとして、遊無ちゃんとも友好を深めなくっちゃね!」
経香とともに近所のデュエルに適した公園へと移動した遊無は、2人のデュエルを観戦する遊陽とヨリマシが見守る中、お互いにD・フェースを展開させ、デュエルの準備を整えた。
――きょーかおねーちゃんとゆーむちゃん、デュエルするんだ――。
「経姉は強いぞ遊無! 昔は全く勝てなかったからな」
「昔どころか今だって――あたしにコテンパンにやられるのがオチだろ。さあ遊無ちゃん、始めよっか……!」
デッキが自動でシャッフルされ、街灯でライトアップされた公園内で遊無と経香は互いに5枚のカードを引く。
引いた手札を確認した遊無はその時初めて、音もなく現れた玉藻前が見下ろす中、入れた覚えのない見慣れないカードに気付く。
「これは――新たな“幽鬼”のカード……」
――其奴らか? わらわが招き入れておいた――。
「玉藻さん! なぜそのようなことを……?」
――貴様に興味を示した鬼から聞け。戦いの中でな――。
「私に興味……?」
改めて手札を確認すると、遊無は何故自らの元に――と疑問を抱くが、その答えは玉藻前の言う通りデュエルの中で直接問い詰めるしかないと、再び経香へと向き直った。
――そっか。だからいやなけはいがしてたんだね――。
「遊陽みたいに霊と話してんのか……? 幽霊だったらあたしのデッキで供養して、弔ってやるよ!」
「試してみますか? 私の幽鬼を消し去れるかどうか――」
『デュエル――』
遊無LP4000。 経香LP4000。
「先行はあたしが頂くよ! あたしのターン!」
手札を一目見た経香は、早速故人を亡き後も護る刀の姿をしたモンスターを場に呼び出す。
「あたしは《葬GEAR-守刀》を手札から特殊召喚! このカードはあたしの場にモンスターがいなければ特殊召喚できる!」
葬GEAR-守刀
効果モンスター
/闇/レベル4/魔法使い/攻撃力1400。
このカード名の(1)の効果による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の
効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
手札のこのカードを特殊召喚する。
(2):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「葬GEAR」モンスター1体を
墓地に送る。この効果の発動後、相手はデッキからモンスター1体を選んで墓地
に送ることができる。
「経姉の“葬GEAR”が早速お出迎えか――」
「守刀の効果発動! あたしはデッキから「葬GEAR」を墓地に送り、遊無ちゃんも同じくモンスターをデッキから墓地に眠らせられる! あたしは《葬GEAR-枕茶碗》を墓地に供えるよ」
「私は《削幽鬼 鎌鼬》を墓地に送ります」
そして守刀が粒子となって消滅すると、僧衣を纏い両手を合わせた埴輪が、経香の手札から場に姿を現した。
「更にあたしは守刀をリリース、被葬者に安寧の眠りをもたらす守護者――《葬GEAR形象-供物埴輪》を“アドバンス召喚”!」
葬GEAR形象-供物埴輪
効果モンスター
/闇/レベル5/魔法使い/攻撃力2000。
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の墓地の「葬GEAR」モンスターと相手の墓地のモンスターを1体ずつ対
象に発動できる。そのモンスターを除外する。
(2):手札の「葬GEAR」儀式モンスター1体を相手に見せて発動できる。
ターン終了時までこのカードのレベルはそのモンスターと同じになる。
「更に手札から、あの世に旅立つ魂を見送る斎場――永続魔法《斎場会館ーフューネラホール》を建築するよ!」
D・フェースが発動したカードを認識するとともに、白を基調とした荘厳な斎場が夜の闇の中で輝きつつ、地面を裂き地中からそびえ立つ。
斎場会館ーフューネラホール 永続魔法
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):「葬GEAR」カードの効果で自分・相手の墓地のモンスターが除外された場合
に発動できる。お互いのプレイヤーはデッキからレベル4以下のモンスターを墓
地に送る。その後このカードに葬儀カウンターを1つ置く。
(2):このカードがフィールドから離れた時に自分はこのカードに置かれてい
た葬儀カウンターの数×800ダメージを受ける。
「次は“魂を供養する斎場”ですか――」
「続けて供物埴輪の効果発動! 1ターンに1度、お互いの墓地からモンスターを1体ずつ弔い、その魂を成仏させる」
2人の墓地からモンスターの魂が白い人魂となって、場にそびえる斎場へと吸い込まれたのち、消滅する。
――きょーかおねーちゃんのとくいなじょれいコンボだね――。
「ああ。墓地に集い一気に湧き出る幽鬼にとって、相性は最悪だ」
「更に除外された枕茶碗の効果発動! デッキから「葬GEAR」1体を墓地に送り、《葬GEARの殯》1枚をデッキから手札に加える。そして魂が成仏したことでフューネラホールに次の故人が運び込まれ、実績が積まれるよ」
葬GEAR-枕茶碗
効果モンスター
/闇/レベル3/魔法使い/攻撃力600。
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
デッキから「葬GEAR」モンスター1体を墓地に送り、デッキから「葬GEAR
」儀式魔法1枚を手札に加える。
「フューネラホールにカウンターが置かれた。だがフューネラホールが廃館した時、経姉はその運用数に応じたダメージを受けるぜ」
「故人を偲ぶ場をそうそう潰させはしないよ。カードを1枚伏せてターン終了だ」
ターンは遊無に移り変わり、遊無はカードをドローすると、即座に手札からモンスターを呼び出す。
「私のターン! まずは《袂幽鬼 夜雀》を召喚です。夜雀の効果により、このターンが終わる時に相手モンスター1体を喰らいます。そして行き着く先は、延々と続く苦行の石場――」
周囲に不吉な気配が漂い始めると同時に景色は変わり、どこまでも続く大河の手前――大小様々な大きさの石が積み上げられた川辺へと変化する。
『ここは……!?』
「永続魔法《未完の石鬼塔》――更に魔法カード《施餓鬼供与》の発動です! お互いに手札のモンスターを捨てて、カードを2枚ドローするかの選択を迫ります」
施餓鬼供与 通常魔法
(1):お互いのプレイヤーは、それぞれ手札のモンスター1体を墓地に送ることが
できる。
この効果で墓地に送ったプレイヤーはカードを2枚までドローする。
墓地に送らなかった場合、そのプレイヤーは相手がドローした枚数×1000LP
を回復する。
「手札交換か。ならあたしは2枚目の供物埴輪を捨てて、カードをドローさせて貰うよ」
「お供えに感謝します。私はこの効果で相手がドローしたため、引いた枚数1枚に付き1000LPを回復します」
経香がカードを引くと同時に、遊無の手元に沢山の果実が詰まった籠が現れると、瑞々しい果物から発せられる神力で遊無に施しが与えられる。
遊無LP4000→6000。
「そして三途の川に訪れた者は、鬼によって石を積むのです。カードを2枚伏せ、ターンを終了とともに供物埴輪は破壊され、更に石が積まれます」
遊無がターンを終えるとともに、黒い雀の導きによって現れた巨大な鬼の顔面が埴輪を一口で飲み込み、砕かれた埴輪の破片がポロポロと鬼の口からこぼれ落ちる。
未完の石鬼塔 永続魔法
このカードの(2)の効果はデュエル中1度しか発動できず、このカードの(1)の
効果はフィールドに「幽鬼」モンスターが存在する場合のみ適用される。
(1):自分・相手の墓地にモンスターが送られた場合、このカードに積石カウンタ
ーを1つ置く。(6つまで)
(2):このカードに6つ目の積石カウンターが置かれた場合、このカードを破壊
し、お互いのフィールド・墓地のカードを全てデッキに戻す。
(3):自分の墓地に「幽鬼」モンスターが送られた場合、このカードの積石カウン
ターを全て取り除く。
「成程な。だがあたしの「葬GEAR」が破壊されたことで、罠カード《葬GEAR装飾 遺影》を発動! この効果であたしはデッキから3体目の供物埴輪を場に呼び出し、更に相手は墓地からモンスターを除外しないといけない」
葬GEAR装飾 遺影 通常罠
(1):自分フィールドの「葬GEAR」モンスターが破壊され墓地に送られた場合に発
動できる。
そのモンスターの同名モンスター1体を手札・デッキから特殊召喚する。
その後相手は墓地のモンスター1体を選んで除外する。
「では私は《境幽鬼 雲外鏡》を除外します。そして除外された雲外鏡の効果によって、お互いに除外されているモンスターを1体ずつ、場に呼び寄せます!」
宙に浮かんだ鬼の潜む鏡の中から鈍く光る鎌を携えた妖と、故人の枕元に添えられる茶碗が場へと舞い戻った。
「だが墓地からモンスターが除外されたことで、フューネラホールの効果でお互いにデッキのモンスター1体を弔わなければならない」
先程と同じように、斎場を通過して三途の石場へと、落ち着いた色合いの花束と使い古した傘の妖怪が送り込まれて来た。
すると傘の妖怪は先程積まれたばかりの石へと飛び掛かり、積み上げられた石を崩すと、川の中から伸びてきた腕が更にその破片を粉々に砕く。
「……未完の石鬼塔は私の墓地に「幽鬼」が送られた場合、折角積み上げた石
の塔を無理やり崩してしまうのです」
「成程な――さしずめ“賽の河原”ってわけか。あたしのターン!」
引いたカードを見ると、経香は小さく頷き勝ち誇ったように遊無を指差して宣言する。
「必要なカードは揃ったし、遅くなる前にこのデュエル――ケリをつけるよ! まずは供物埴輪の効果発動! 枕団子と唐傘小僧を成仏させる……!」
更に除外された枕団子の効果により、経香はデッキから3枚目の落ち着いた色合いをした花束を墓地に送ると、笑みを浮かべつつ1枚の青い枠をしたカードを2人に見せつけるように手札へと加えた。
葬GEAR-枕団子
効果モンスター
/闇/レベル4/魔法使い/攻撃力800。
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが墓地から除外された場合に発動できる。
デッキから「葬GEAR」モンスター1体を墓地に送り、デッキから「葬GEAR」儀
式モンスター1体を手札に加える。
「そのモンスターは!? 経姉の切り札……!」
「見たことのない枠のカード――そのカードは一体……?」
経香の見せたカードに2人はそれぞれ反応を示して、経香が繰り出す次の展開に備えて身構える。
「墓地からモンスターが除外されたから、フューネラホールの効果であたしは2体目の枕茶碗を墓地に送るよ」
「私は天邪鬼を墓地に送ります」
2体のモンスターの魂は斎場へと吸い込まれ、積まれたばかりの二段の石の塔は天邪鬼によって再び崩される。
「そしてあたしは供物埴輪のもう一つの効果を発動! 手札の“このカード”を
見せることで、供物埴輪のレベルは見せたモンスターと同じになる!」
「経姉の見せたカード……降臨させるモンスターのレベル以上になるようモンスターを捧げ、契約により現れる――」
「あたしは儀式魔法《葬GEARの殯》を発動だ! 場の供物埴輪は魂の供養を遺族に提供する送り人へと受け継がれる! これが“儀式召喚”だ! 降臨せよ! 《送葬GEAR-フューネラル・プランナー》!」
葬GEARの殯 儀式魔法
「葬GEAR」儀式モンスターの降臨に必要。
(1):レベルの合計が7以上になるように、自分の手札・フィールドのモンス
ターをリリースして、手札から「葬GEAR」儀式モンスター1体を儀式召喚す
る。
(2):自分フィールドの「葬GEAR」儀式モンスターが戦闘・効果で破壊される
場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
送葬GEAR-フューネラル・プランナー
儀式、効果モンスター
/闇/レベル7/魔法使い/攻撃力2500。
「葬GEARの殯」により降臨。
(1):1ターンに1度、自分の墓地の「葬GEAR」モンスター1体を対象に発動でき
る。そのモンスターの同名モンスターを手札・墓地から2体まで特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、ターン終了時まで除外されてい
る相手モンスターの数×300アップする。
(2):自分フィールドの「葬GEAR」モンスターが戦闘を行ったダメージ計算後に発
動する。その戦闘を行った相手モンスターを除外する。
「儀式召喚……!? このような召喚方があるなんて――」
経香が降臨させた喪服を着用し、腕に数本の数珠をかけた葬儀を取り仕切る老紳士へと、遊無は驚きを隠せずにいた。
「この町ではあまり見かけないけど、大学のあった都会の方ではそこそこ見かけたモンスターだよ。専用の魔法カードと捧げるモンスターが必要な代わりに、その効果はお墨付きってわけさ」
自らの切り札の登場に自信を覗かせる経香に対して、遊無は警戒を抱く。
特殊な手順を踏み降臨する儀式モンスター。その力は今まさに、遊無を倒そうと発揮されるのであった。
「遊陽と――」
「遊無の――」
『二人はビナリウス!』
遊陽「新たな「幽鬼」達を手にした遊無と経姉のデュエル――経姉の相手の墓地からカードを除外する戦術は遊無にとって、かなり不利だな」
遊無「私も対抗手段を講じましたが、経香先生に次々とモンスターを除外させてしまいました」
遊陽「今回紹介するのは墓地からモンスターを除外するのを得意とする、経姉の“葬GEAR”だ。故人を偲ぶ葬儀道具(ギア)に、葬儀屋もかかっているぜ」
遊無「そして供物として捧げられる埴輪を捧げ、契約による“儀式召喚”によって
現れる“儀式モンスター”が先生の切り札です。通常の召喚とは異なる特殊な召喚方の片割れが満を持しての登場ですね」
遊陽「もう片方の特殊な召喚方も、いずれ登場するぜ。次回は遂に現れた経姉の“儀式モンスター”による猛攻で、幽鬼は次々に除外され遊無は追い詰められていく」
遊無「ですが私も新たに手に入れた“禍津幽行”2体目の鬼とともに戦い、そして
積み上がった石の塔は秘められた力を解放します!」
『次回! 遊戯王Binarius(ビナリウス) -石の塔が崩れる時- お楽しみに!』
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43 | 24Turn 決着と新たな予兆 | 364 | 1 | 2023-04-13 | - | |
58 | 今までの話が丸分かり! 第一章のあらすじ | 425 | 0 | 2023-04-14 | - | |
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33 | 26Turn 天上の採火 | 252 | 0 | 2023-06-02 | - | |
45 | 幕間 3人の交流生 | 338 | 0 | 2023-06-04 | - | |
72 | 27Turn 魘夢の魔族 | 325 | 0 | 2023-06-10 | - | |
40 | 28Turn 羅漢の竜王 | 281 | 0 | 2023-06-21 | - | |
43 | 29Turn 聖夜のマノン | 354 | 0 | 2023-06-25 | - | |
37 | 幕間 もう一人の遊無 | 296 | 2 | 2023-06-28 | - | |
39 | 第二章 キャラクター紹介 | 324 | 1 | 2023-07-01 | - | |
67 | 幕間 闘諍の予兆 | 361 | 0 | 2023-07-06 | - | |
36 | 30Turn 狂課金(ミダース) | 282 | 0 | 2023-07-10 | - | |
64 | 31Turn 舞い上がる不死鳥の輪舞 | 418 | 0 | 2023-07-14 | - | |
51 | 32Turn 巻き上げる関捩 | 338 | 1 | 2023-07-17 | - | |
45 | 33Turn 夢に堕ちる仲間 | 393 | 0 | 2023-07-22 | - | |
37 | 34Turn 友を取り戻せ! | 294 | 0 | 2023-07-30 | - | |
33 | 35Turn 堕ちた雷と涙雨の天河 | 321 | 0 | 2023-08-03 | - | |
34 | 36Turn 伝えたい言葉 | 308 | 1 | 2023-08-11 | - | |
31 | 37Turn 夢を喰らう獏 | 255 | 0 | 2023-08-26 | - | |
31 | 38Turn 深淵のトモカヅキ | 244 | 0 | 2023-09-03 | - | |
84 | 39Turn 最遠のパズズ | 332 | 0 | 2023-09-11 | - | |
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32 | 今までの話が丸分かり! 第二章のあらすじ | 291 | 1 | 2023-09-24 | - | |
27 | 43Turn 次の関係(ステップ)へ | 256 | 0 | 2023-10-20 | - | |
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31 | 46Turn 跳躍-精霊世界へ | 241 | 0 | 2023-10-29 | - | |
45 | 幕間 強化訓練と異界の住人 | 289 | 0 | 2023-11-02 | - | |
39 | 47Turn 精霊世界 マースの森で | 230 | 0 | 2023-11-05 | - | |
35 | 祝一周年! 今後の展望など | 298 | 0 | 2023-11-11 | - | |
29 | 48Turn 精霊長アラウン | 187 | 0 | 2023-11-15 | - | |
31 | 第三章 キャラクター紹介 | 242 | 1 | 2023-11-16 | - | |
43 | 49Turn 下される審判 | 278 | 0 | 2023-11-20 | - | |
23 | 50Turn 猟犬従えし灰の王 | 241 | 0 | 2023-11-28 | - | |
30 | 幕間 精霊世界の平生 | 298 | 0 | 2023-12-07 | - | |
24 | 51Turn 最善の選択 | 208 | 0 | 2023-12-18 | - | |
28 | 52Turn 立ちはだかる使者達 | 244 | 0 | 2023-12-28 | - | |
27 | 53Turn 怨嗟積り秘号と成す | 218 | 0 | 2023-12-30 | - | |
28 | 54Turn 遊明の力 | 228 | 0 | 2024-01-02 | - | |
27 | 今までの話が丸分かり! 第三章のあらすじ | 278 | 0 | 2024-01-03 | - | |
13 | お久しぶりです。 | 74 | 0 | 2024-11-10 | - | |
3 | お知らせ。 | 36 | 0 | 2024-11-20 | - |
更新情報 - NEW -
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