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OtP21 Expedition 作:Ales






 「私のターン、ドロー。メインフェイズ、魔法カード《テラ・フォーミング》を発動。デッキから《チキンレース》をサーチ、そのまま発動して効果を起動。1000ライフ払ってデッキから1枚ドロー。」

遊貴 LP:8000 → 7000

 (《チキンレース》……サイドチェンジで換えきれずに残ったのでしょうか。)

 サイドデッキは15枚までというルール上、サイドチェンジ可能なカードも必然的に15枚までと決まっている。そうなれば汎用性の高い《チキンレース》や《やぶ蛇》等は、デッキに残っていても不自然ではない。

 「んー、《チキンレース》を墓地に送って、《霞の谷の神風》を発動。」


 「……え?」

 数秒間呆けていた花鈴が、間の抜けた声を上げた。

 「《霞の谷の神風》、だよ……?ないと思うけどチェーンは?」
 「え、ええ……ありません。」





 「何でまた神風なんて入れてるのかしら、あの猫は……」

 意図が全くわからない、といった様子で千夏が呟いた。無理もない。一本目の遊貴のデュエルを見るに、【セルフ・バウンス】は確かに《テュアラティン》と相性が良い。だが裏を返せば、対策の容易なコンボをこの二戦目でも使用しているという証左なのである。

 「奇策といえばそうデスガ、対策が簡単すぎマス!私が【影霊衣】を使っても普通に勝てそうデスヨ!」

 同じく声を上げるエヴァは、基本的な動きは知っていても【影霊衣】の動きを手に覚え込ませているほど使ってはいない。あくまで自身のデッキに対する対策として知っているに過ぎない彼女であるが、それでも2度同じ手は食わない。

 「籐篠さんの見立てでは、このサイドチェンジも想定内なのかしら。二度目の奇策を通す見立てがある、ということ?」

 同じくプロの場で戦ってきた遊希にもわからない。知識もさることながら経験が多くモノをいう世界に身を投じてきたが、それでも遊貴のような奇策を用いるデュエリストは記憶にない。

 (何を考えているかわからない……いや、私と対戦した時もあの子はずっと無表情だった。あの時はさほど難しい策を講じる必要はなかったけれど、今回は戦略だけで勝つというの……?)

 聴衆の中に、宮戸遊貴と対戦を行った者はそう多くいない。その数少ない一人が遊希であるが、その時のデュエルではデッキパワーは互角、あるいはやや遊貴に有利といったものであった。しかし【霞の谷】と【影霊衣】では実績の観点から見て戦力に差がある。相手がわかっていながら敢えてサイドチェンジで選択したということは、差を埋めてあまりある戦略があるということだろう。





 「んー。カードを4枚セット、モンスターをセットしてターンエンド。」

 しかし、ここでも遊貴は動かなかった。

 (9枚のカードがありながら……動かない?そんなにシビアなコンボデッキなの?いや、《霞の谷の神風》を出しておいてそれはないはず。)

 《霞の谷の神風》は現在制限カードであり、除去されれば再度発動することは困難である。となれば、《グングニールの影霊衣》を除去した後で発動するのが理想的な展開であるし、そもそも発動だけして何もしないという選択肢自体が不自然なのだ。


3rd.Turn
 TP:花鈴

遊貴 LP:7000 D:29 H:3 G:2 Ex:15 V:0
 F:セットモンスター
  霞の谷の神風
  セットカード×4

花鈴 LP:8000 D:29 H:1 G:5 Ex:14 V:2
 F:クラウソラスの影霊衣 DEF:2300
  ユニコールの影霊衣 ATK:2300
  グングニールの影霊衣 ATK:2500
  次元の裂け目


「私のターン、ドロー。メインフェイズ、魔法カード《儀式の準備》を発動します。デッキから《ブリューナクの影霊衣》をサーチして墓地の《影霊衣の降魔鏡》をサルベージ。手札のブリューナクを捨てて効果発動、シュリットをサーチ。降魔鏡を発動、手札のシュリットをリリースして《ヴァルキュルスの影霊衣》を儀式召喚します。」
 「じゃあ……リバースカード。《激流葬》。」
 「なっ……!」

 この対戦中幾度目だろうか、花鈴が絶句した。【アーティファクト】における基本戦術は自分から破壊しないことであるが、それを2戦目に持ち越してしまえば当然、遊貴からすれば使いづらい罠カードを容易に通してしまえるのである。しかも尚悪いことに、花鈴のフィールドには自ら発動した《次元の裂け目》がある。モンスターは全て除外されるため、「影霊衣」儀式魔法の墓地効果も阻害する結果となってしまったのだ。

 「一応シュリットの効果にチェーンする形になるけど……グングニールは?どうする?」
 「くっ……!《グングニールの影霊衣》の効果、手札を1枚捨てて《次元の裂け目》を破壊します!」
 「ん。こっちはチェーンなし。」


Chain3:グングニールの影霊衣 → 次元の裂け目
Chain2:激流葬
Chain1:影霊衣の術師 シュリット


 「《次元の裂け目》を破壊したことで《激流葬》による破壊では墓地送り、シュリットの効果で《クラウソラスの影霊衣》をサーチ。墓地の《影霊衣の万華鏡》の効果を発動、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードと「影霊衣」モンスターを除外してデッキから「影霊衣」魔法カード1枚をサーチします。クラウソラスと共に除外して《影霊衣の万華鏡》をサーチ。そしてそのまま万華鏡を発動、エクストラデッキの《霞鳥クラウソラス》を墓地に送って《クラウソラスの影霊衣》を儀式召喚します。これでターンエンドです。」

 ブリューナクの効果を使い、ユニコールも墓地に行ってしまったためか花鈴の手が止まった。クラウソラスは攻撃力が低くそのままではまともに戦闘はできない。そう判断してか、花鈴は一旦守勢に回ることを選択した。

 「ん、じゃあエンドフェイズにリバースカード。《アーティファクトの神智》。デッキから《アーティファクト-モラルタ》を特殊召喚して効果発動。クラウソラスを破壊する。」
 「なっ……!どうして!?」
 「んー……?サイドチェンジで処理しきれなかったから?」

 花鈴の悲痛に近い言葉に、遊貴はやや的外れな言葉を返した。

 「そうじゃないわ!【霞の谷】と【アーティファクト】の混成なんて……なんでそんな訳のわからないデッキを……!」
 「あー、そっちかー。」

 ようやく得心した、といった体の遊貴は少々の間を置いて、呟くように返した。



 「1ターンを取りに行くため、かな。」
 「1ターンを……取りに行く?」

 オウム返しに、花鈴が吐き出した。


 「そそ。【影霊衣】って攻める時は強いし、守るにしてもエクストラデッキ対策は最強といって過言ではないと思う。でもさ、一度崩れた戦線を立て直すカードが反魂術だけなんだよね……」

 儀式召喚という手札消費の激しい手段を、サーチによって賄う【影霊衣】の欠点。それは、展開の多くをサーチによって解決してしまう事である。「影霊衣」モンスターで不特定のドロー効果を持つカードは《ヴァルキュルスの影霊衣》のみであり、どうしても守りの薄い側面は不安要素として残ってしまう。「影霊衣」儀式魔法の墓地効果も強力なものであるが、手札に《影霊衣の術師 シュリット》を握った状態で《影霊衣の反魂術》をサーチしてようやく返せる、といった程度である。

 「じゃあ、どうして【霞の谷】を……?」
 「んー?さっきも言ったように、【影霊衣】は立て直し難しいから。下級モンスターがまともに戦力にならないから《霞の谷の巨神鳥》と《霞の谷の雷鳥》でほぼ完封できるし、《霞の谷の雷神鬼》は《テュアラティン》の再利用にも使えるから。」

 相性自体は悪くない、と言いたいのであろうが、いくら何でも詰め込みすぎである。ギミックをいくつも搭載したデッキがまともに回らないのは花鈴も重々承知である。だからこそ花鈴も、この決勝での対策は《次元の裂け目》と《マクロコスモス》からなる除外軸に留めたのである。
 しかしながら、【アーティファクト】は単体で出張パーツになる程度には機能するし、なにより必須とも言えるカードの絶対数が少ない。今回のように【影霊衣】に対策するだけなら《アーティファクト-デュランダル》は不要であるし、魔法・罠除去を《アーティファクト・ムーブメント》に置き換えられる事を加味すれば充分に採用圏内である。

 「だから言ってるでしょ、1ターン取りに行く、って。成功すればほぼ確実に勝てるし、失敗しても【影霊衣】のワンショットキルパターンを考えれば、チャンスは割とあるものだよ?まあ今回は偶々初手に《増殖するG》がきて3枚ドローできたから最初から攻勢に出られたけど。」
 「そこまで計算して、対策していたということ?」
 「準決勝まで【HAT】だったでしょ?【影霊衣】なら《フレシアの蠱惑魔》は簡単に対策できるし、あとは「ハンド」と「アーティファクト」だけど、墓地送りが条件だから除外軸はなんとなーく予想できる。でも本当は《激流葬》で全部除外するつもりだったんだけど、流石花鈴。そこまで読んでのグングニールだったとは。」



 「読んでないわよっ!ターンエンド!」

 不憫といえばそれまでだが、こと宮戸遊貴との対戦において、浜部花鈴が憂き目に遭わなかった事がない。




4th.Turn
 TP:遊貴

遊貴 LP:7000 D:29 H:3 G:5 Ex:15 V:0
 F:アーティファクト-モラルタ ATK:2100
  霞の谷の神風
  セットカード×2

花鈴 LP:8000 D:23 H:0 G:15 Ex:13 V:4
 F:None


 「私のターン、ドロー。メインフェイズ、1000ライフ払って《簡易融合》を発動。エクストラデッキから《重装機甲 パンツァードラゴン》を融合召喚。」

遊貴 LP:7000 → 6000

 「レベル5の《アーティファクト-モラルタ》と《重装機甲 パンツァードラゴン》をオーバーレイ、2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚、ランク5。《シャーク・フォートレス》。更に手札の《霞の谷の雷鳥》を召喚、手札の《A・ジェネクス・バードマン》の効果を発動。雷鳥を手札に戻して特殊召喚、《霞の谷の神風》の効果に雷鳥の効果をチェーン、雷鳥自身を特殊召喚してデッキから《霞の谷の祈祷師》を特殊召喚。フィールド魔法《疑似空間》を発動して効果を使用、墓地の神風を除外して効果をコピー。祈祷師の効果、雷鳥を手札に戻して攻撃力を500アップする。」

霞の谷の祈祷師 ATK:1200 → 1700

 「神風をコピーした《疑似空間》の効果と雷鳥の効果、雷鳥と2体目の祈祷師を特殊召喚。こっちの効果も発動……しなくていっか。レベル3の《霞の谷の雷鳥》に、レベル3の《霞の谷の祈祷師》2体をチューニング。シンクロ召喚、レベル9。《水晶機巧-グリオンガンド》。グリオンガンドの効果、シンクロ素材としたモンスターの数まで相手フィールドまたは墓地のモンスターを除外できる。墓地のシュリットと……ユニコール、あとヴァルキュルスかな。《シャーク・フォートレス》の効果、エクシーズ素材1つを消費してモンスターに2回攻撃を付与。対象はグリオンガンド。バトルフェイズ、2体でダイレクトアタック。」

シャーク・フォートレス ATK:2400
水晶機巧-グリオンガルド ATK:3000×2
 花鈴 LP:8000 → 0

2nd. Game Win:遊貴


 Match Win:遊貴





 「……まさか、決勝まであんなギミックを残しておくなんて。」

 遊貴のターン中終始無無言であった花鈴が、放心したように呟いた。

 「んー……それだけ警戒してる、って事。どうせ次は対策してくるんでしょ?」
 「当たり前です。あんな無茶苦茶、二度は通しません!」
 「それでこそ花鈴。夏は譲るけど、冬は負けないから。」
 「夏も譲らないで欲しいのだけれど?」
 「暑いのやらぁ。」
 「変な声出さないで。全く、優勝したのだからもうちょっとちゃんとして下さい。」
 「にゃぅ……ふぁい。」

 会話を終える頃には、両者堂々たる面持ちで授賞式に臨んでいた。





---





 「……先、帰るわ。」

 遊貴の優勝を見届けて数分。授賞式も終わり、さて声を掛けに行こうかと各人思案していた最中、遊希がそう言って席を立った。

 「え、ちょっと遊希?待ちなさいって。」

 千夏の制止も聞かず、遊希は他の観衆に紛れて外へ続く扉をくぐっていった。

 「きっと彼氏が恋しいのよ。ちょっと残念がるかもしれないけれど、私たちだけでも声かけに行きましょう。」
 「出来たてのカップルは熱いデスネ!」

 綾香とエヴァが冷やかし半分に冗談を交えつつ、出口へ向かう波が引いた頃に4人揃って控え室の方へと向かった。



 「優勝、おめでとうございます。興味深い戦術でした。」

 控え室で金楯を眺めていた遊貴に、はじめに声を掛けたのは詩織であった。

 「ありがとうございます……」

 見知った仲とはいえ、遊希の仲介あってこその面々である。遊貴は借りてきた猫の如くに肩を窄めながら返した。

 「あー……ごめんね。遊希ったら、先に帰っちゃったのよ。全く、声ぐらい掛けなさいっての。」
 「あ、いえ……見に来てくれただけで、嬉しいですから。」

 感想を聞きたかった、というのが本音ではあるが、そこまで声に出すのは憚られる。



 「でも、もう一度……」
 「遊希サンとデュエルしたい、デスカ?」

 遊貴の呟きに反応したのはエヴァであった。

 「ふぇ……!?声に出てました?」

 遊貴がちらりと見遣ると、全員が頷いた。



 「だったら、今から挑めばいいじゃない!声掛けもせずにさっさと彼氏の元に向かうような礼儀知らず、優勝の勢いで叩きのめしちゃいなさいよ!」

 さらりと至極真面目に、大胆な発言をするのは当然というか千夏である。

 「えぇ……」

 突拍子もない提案に、遊貴は戸惑う。

 「それ、良いわね。どうせ冬休みでうちの学校にほとんど人残ってないし、部外者連れ込んでもパパに言えばどうとでもなるわ。」
 「そうデスヨ!私もふたりのデュエル、観たいデス!」
 「実力は証明されましたから、何か言われてもゲストとして呼んだ、と言えばどうにかなると思います。勿論、遊貴さんが望むのなら、ですけれど。」

 否定意見は全くもって出ないようである。

 「…………いつの間にか外堀が埋まってる。」

 金楯を鞄に投げ込んで立ち上がると、遊貴はぴょこりと頭を下げた。

 「では、よろしくお願いします。」




 「よろしくお願いする前に、インタビューをお願いしたいのですけれど。」

 声の方を振り返ると、扉のすぐ近くに女性が一人立っていた。

 「あ、芹野先輩……お久しぶりです。」
 「はい、お久しぶりです。もう先輩じゃないですけれど……」

 女性-芹野舞はそう返すと、一呼吸おいて言葉を続けた。

 「あの、優勝インタビューの記事を書く、というお話は覚えておられますよね?」
 「あー……それ、今日じゃないと駄目ですか?」

 熱の高まったところに水を差された遊貴は、舞から目を逸らして訊いた。

 「〆切明日ですから、今日か早くても明日の早朝には入稿しないとまずいですね。」
 「むぅ……あ、そうだ。芹野先輩も来たらどうです?」

 流石に無理だろうか、と思いながらも呟く。

 「そうですね……では、エヴァさんとの対談インタビューを取る、という名目で案内するのはどうでしょう?」
 「エヴァさんとの……?」
 「対談、デスカ?」

 暫し考え込んだ詩織がようやく出した提案に、当事者ふたりが疑問符を浮かべて訊く。

 「はい。私たちがこのデュエルを観戦していることは校長先生も把握しておられます。プロデュエリストから見た大会決勝、という題を付ければ校舎に入っても問題ないでしょう。」
 「なるほど!詩織、あんたも悪知恵が回るようになったわね!」

 千夏が茶化して言うが、学生であることもあってプロデュエリストと接する機会などそうない舞からすれば願ってもない好機である。

 「それで迷惑が掛からないのでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます。」

 几帳面な一例を見た面々は、待機室を後にデュエルアカデミア・ジャパン・セントラルへと向かった。



 『あ、もしもし。花鈴?私そっちの慰労会パスするから。後はよろしく。』
 「後はよろしく、じゃありません!」

 後にツケとして事後処理をする羽目になった花鈴にこっぴどく叱られるのだが、それはまた別の話である。





 「ここよ。ようこそ、私たちの学び舎へ!」

 デュエルアカデミア・ジャパン・セントラルは高等教育のみを扱っているため、規模こそ遊貴の在籍している中高一貫の学校よりも一回り小さい。が、元プロデュエリストであり一世を風靡した星野竜司を校長として迎えているだけあって、外観だけでも荘厳たる雰囲気を醸し出している。

 「お邪魔します……」

 少々恐縮しながら門をくぐり、そのまま校舎へと進む。



 「遊希サン、ひとり屋上で黄昏れているようデス!」

 冬休みにも関わらず寮に残っている後輩に聞き出した、というがエヴァ事前調査の結果であった。どうやら話題の‘‘彼氏’’も、「一人にして欲しい」という言葉を受けたとのことである。そのまま屋上へと続く階段を目指していたのだが、一行はデュエルスペースに居た生徒たちとであうことと相成った。

 「先輩、お帰りなさい。っと、お客様ですか?」

 いち早く気付いた女性が駆け寄り、それに追従するように数名の男女もこちらに向かってやってきた。

 「はい、ただいまデス!ここにおわすは……えっと、デュエルアカデミアジャパン・ウエスト校刺客にして最強のデュエリスト、宮戸遊貴さんデスヨ!」
 「刺客じゃない、最強でもない。」

 エヴァのボケなのか真面目なのかわからない発言に、遊貴が小さく呟いた。

 「こちらはデュエル関連の記事を専門に扱う記者をしておられる、芹野舞さんです。」
 「皆様初めまして、よろしくお願いします。」

 こちらは的確な詩織のフォローに完璧なお辞儀で返した舞である。

 「ほう、さいきょうだと!ならばはなしは早い、わたしとデュエルしろ!」

 開口一番、低身長に見合わぬ血気の少女が威勢をあげた。

 「私はレアですよ……?ステーキはあまり食べないけどウェルダンが良いかな。」



 「はい?」



 とりあえずボケてみた遊貴であるが、見事に空振りしたようである。

 「うん、関西と関東でノリが違うの知ってた。レアだけにブルーかもしれない。」
 「もうボケはいいわよ!舞原さん、悪いけどこの子、遊貴とデュエルしに来たのよ。だから、今は引いてくれないかしら?」
 「ことわる!天都せんぱいが屋上にいるのは知っている!ここをとおりたければ、私をたおしてからにしろ!」
 「ちょ、ちょっと、留奈ちゃん。落ち着いて。」

 面々の内最も身長の高い男性が、留奈と呼ばれた少女の腕を掴んで制止した。

 「はなせ陸!さいきょうと聞いてだまっていられるか!」
 「そうだけど、そうじゃないって。」
 「どういうことだ!?」

 留奈の問いに答えたのは、別の男性だった。

 「強いデュエリストと戦いたい、というのはここにいる誰もが思っていることだ。違うか?」

 冷静な言葉に、一同が頷く。


 「んー……あんまり待たせるのも悪いから……」

 騒ぎを眺めながら思案していた遊貴が、おもむろに数枚のカードを取り出して皆に見せた。

 「ここに《幻獣機トークン》6枚と《幻獣機オライオン》1枚があります。」
 「なるほど、くじ引きということですか。」

 真っ先に一行をに声を掛けた少女が、得心したように声を上げる。

 「はい。不平のないように、私が配ります。オライオンを当てた方とデュエル、でどうでしょう?」

 最も公平と考えられる手法に、一同不平はなかった。

 「では、どうぞ……」

 一人ずつ裏向けに手渡す。全員に行き渡った後、誰ともなく表面を検める。


 「あっ……俺だ。」





 《幻獣機オライオン》のカードを手にしたのは、赤い髪が目を惹く少年であった。




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光芒
奇策に次ぐ奇策。【アーティファクト】と【霞の谷】の混合デッキなど誰が予想するでしょうか。しかもその奇策を通すために様々なキルパターンを考えていますし、花鈴の【影霊衣】の特色まできっちりと理解しているのだから相当のタクティクスですね。さてそんな遊貴を見て遊希は何を思ったのか……

そしてついに出てきた虹彩竜メンバーズ。舞台が変わっても平仮名だらけの留奈や即座に止めに入る陸はそのまんまですね。最初に遊貴たちに声をかけたのは口調からして留奈以外のいずれかでしょうが……普通に喋ると特徴ないですね、留奈以外は(自戒

>「あっ……俺だ。」
>《幻獣機オライオン》のカードを手にしたのは、赤い髪が目を惹く少年であった。
なんとなく予想できていましたが、遊貴の生贄になるのはやっぱりこの人でした。これは彼氏の敵討ちに彼女が燃えるパターンですねわかります(違う (2019-03-16 22:48)
Ales(from PC)
光芒さん
【影霊衣】ってどうやって倒したら良いんだっけ?とかいう倒錯した発想から出てきたのが【HAT】だったのです。が、それだけなら面白みがないので【HAT】を軽くメタれる除外軸【影霊衣】にして、それをサクッとメタる手法を考え(中略)、【アーティファクト】と【霞の谷】になりました。ぶっちゃけ《テュアラティン》が出したかっただけです。はい。

>そしてついに出てきた虹彩竜メンバーズ。舞台が変わっても平仮名だらけの留奈や即座に止めに入る陸はそのまんまですね。
>最初に遊貴たちに声をかけたのは口調からして留奈以外のいずれかでしょうが……普通に喋ると特徴ないですね、留奈以外は(自戒
この辺りのメリハリが付かないのは私の技量不足ですね……男性陣は割と描きやすいのですが、どうも……精進して参る所存。

>なんとなく予想できていましたが、遊貴の生贄になるのはやっぱりこの人でした。これは彼氏の敵討ちに彼女が燃えるパターンですねわかります(違う
遊大「俺は負ける前提なのか……」
まあ(お察しの通り)負けてもらうんですけど。 (2019-03-18 14:06)

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131 59 Brave Sword 1257 4 2016-06-10 -
127 60 Braver’s Soul 1215 2 2016-06-13 -
128 幕間 久実のだらだラジオ01 1226 0 2016-06-14 -
96 61 紙一重の差で 1269 2 2016-06-16 -
89 62 Beyond the fate 1135 2 2016-06-19 -
122 63 一点突破! 1193 2 2016-06-22 -
104 64 交わされた約束 1053 2 2016-06-25 -
128 65 狂イ咲ケ焔ノ華 1247 2 2016-06-28 -
115 66 光と焔 1215 2 2016-07-01 -
120 67 Rifling fate 1164 2 2016-07-04 -
67 68 Gunslinger in... 1120 2 2016-07-07 -
129 幕間 久実のだらだラジオ02 1120 2 2016-07-10 -
53 69 Extra-Zero 8 1101 2 2016-07-13 -
135 70 軍靴の鳴動 1053 2 2016-07-16 -
146 71 休憩の過ごしかた 1143 2 2016-07-19 -
131 72 激戦の予感 1329 2 2016-07-22 -
111 10000閲覧感謝特番(特番とはry) 1132 2 2016-07-25 -
129 73 幻竜と隼 1143 2 2016-07-28 -
108 74 薄氷 1079 2 2016-08-01 -
134 【告知】一万閲覧感謝祭について【重点】 1281 7 2016-08-02 -
110 74 バード・ストライク 1045 2 2016-08-04 -
116 75 革命と終端 1092 2 2016-08-07 -
125 76 Soldier’s Ballad 1019 4 2016-08-10 -
119 77 Full Boost! 1034 2 2016-08-13 -
131 78 Dead heat 1149 2 2016-08-16 -
131 79 フューチャー・リビジョン 1090 2 2016-08-19 -
120 幕間 久実のだらだラジオ03 1121 2 2016-08-22 -
130 80 それぞれの「加速度」 973 2 2016-08-25 -
60 81 EDEN 1062 4 2016-09-01 -
66 82 闇夜の錦 1040 2 2016-09-05 -
129 83 月影 1257 2 2016-09-09 -
95 84 宵待桜と日照の龍 1083 2 2016-09-13 -
118 85 Sakura Sunrise 1207 2 2016-09-18 -
87 閑話休題:お詫びとおまけ 1096 2 2016-09-22 -
56 86 宵闇に舞え、幽玄の桜 1063 4 2016-09-26 -
89 87 ‘‘fascination’’ 1020 4 2016-10-05 -
58 88 曙光の歌 893 2 2016-10-13 -
93 89 夜露に濡れた朝陽 1153 2 2016-10-18 -
169 90 9.A.M. 1238 2 2016-10-26 -
131 幕間 久実のだらだラジオ04 1169 2 2016-11-01 -
117 91 Gwin to run 1007 2 2016-11-09 -
122 92 ライトニング・マイル 998 4 2016-11-15 -
142 93 双振 1063 2 2016-11-20 -
50 94 鉛と金と 958 2 2016-11-25 -
111 95 剣と牙 1046 2 2016-11-29 -
115 96 剣戟連閃 *ミス有・未修正 1123 4 2016-12-04 -
120 97 Follow Tomorrow 1111 6 2016-12-06 -
72 幕間 久実のだらだラジオ05 1015 3 2016-12-07 -
70 番外編1-1 plan 8 to B 1035 3 2016-12-11 -
119 番外編1-2 †渚の大魔王† 1071 5 2016-12-15 -
158 番外編1-3 灼熱<(ヮ)> 1108 4 2016-12-18 -
120 番外編2-1 籐篠塾・開講? 986 5 2016-12-21 -
99 番外編2-2 実践?籐篠塾 1113 3 2016-12-23 -
120 そぴあちゃんのくり(ry 1211 3 2016-12-25 -
129 番外編2-3 対面する者たち 1105 3 2016-12-30 -
76 番外編2-4 集結と収束 960 7 2017-01-03 -
107 番外編2-5 勝負の鍵は右端に・1 1040 3 2017-01-05 -
136 【番外編の】閑・話・休・題【番外編】 1162 2 2017-01-10 -
98 番外編2-6 勝利の鍵は右端に・2 1057 5 2017-01-13 -
142 番外編2-7 因縁と銃弾と一瞬の隙・1 1079 2 2017-01-15 -
114 番外編2-8 因縁と銃弾と一瞬の隙・2 969 4 2017-01-18 -
133 番外編2-9 因縁と銃弾と一瞬の隙・3 1049 4 2017-01-22 -
123 番外編 2-10 山場と御山と一撃必中1 1178 9 2017-01-27 -
68 番外編 2-11 山場と御山と一撃必中2 1140 8 2017-01-31 -
124 番外編2-12 服と感性と(pt.1) 979 4 2017-02-04 -
118 番外編2 前半終了の幕間 1080 9 2017-02-06 -
135 番外編2-13 服と感性と(pt.2) 936 2 2017-02-10 -
138 幕間 論争、宇宙まで 997 2 2017-02-14 -
124 番外編2-14 服と感性と(pt.3) 992 2 2017-02-16 -
123 【緊急?更新】今後の方策について 1067 2 2017-02-18 -
110 番外編2-15 服と感性と(pt.4) 1053 10 2017-02-21 -
127 番外編2-16 漁火と陣風と(pt.1) 1174 2 2017-02-26 -
139 番外編2-17 漁火と陣風と(pt.2) 1025 2 2017-03-03 -
103 番外編2-18 Symphonic…1 1130 2 2017-03-14 -
116 【こいついつも】閑話☆休題【休んでんな】 1012 2 2017-03-20 -
118 番外編2-19 Symphonic…2 829 3 2017-03-27 -
91 番外編2-20 新乱気流…pt.1 906 2 2017-04-05 -
147 番外編2-21 新乱気流…pt.2 950 2 2017-04-16 -
133 番外編2-22 新乱気流…pt.3 963 2 2017-04-21 -
102 番外編2-23 Waltzic...p1 942 2 2017-04-26 -
128 番外編2-24 Waltzic...p2 1024 2 2017-05-02 -
110 番外編2-25 Waltzic...p3 1096 6 2017-06-03 -
88 番外編2-26 Waltzic...p4 858 3 2017-06-11 -
113 番外編2-26 Waltzic...p5 976 4 2017-06-24 -
156 98 Drawback 1108 2 2017-07-10 -
138 99 Silhouette 942 2 2017-09-22 -
130 Where is my No.100!? 1083 4 2017-11-19 -
96 番外編File-X 静かな夜に? 1030 2 2017-12-25 -
110 Over the Period -御品書 952 2 2018-06-14 -
66 OtP0 Boat 822 2 2018-07-07 -
88 OtP02 Serenade 858 0 2018-07-14 -
77 OtP03 Dirge 829 0 2018-09-01 -
86 OtP04 Requiem 831 2 2018-09-17 -
102 OtP05 Period 852 2 2018-09-24 -
60 幕間りたーんず01 新・メタフィジカ 763 0 2018-09-28 -
129 OtP06 Anthem 871 2 2018-10-14 -
110 OtP07 Perfectly 972 2 2018-10-19 -
66 OtP08 Possession 738 2 2018-11-02 -
57 OtP09 Bloomin’ 882 2 2018-11-22 -
93 OtP10 Danger! 851 2 2018-12-09 -
115 OtP11 Vidofnir 985 2 2018-12-22 -
91 OtP12 Sigmund 790 2 2019-01-01 -
61 OtP13 Quantum 862 2 2019-01-11 -
105 OtP14 Vicious 871 2 2019-01-25 -
95 OtP15 Quantize 813 3 2019-01-29 -
89 OtP16 Fragments 914 2 2019-02-04 -
77 OtP17 Nornir 747 2 2019-02-15 -
88 OtP18 Beyond the End 759 2 2019-02-20 -
75 OtP第三幕 コラボ企画おしながき 714 2 2019-02-24 -
103 OtP19 Deflect 796 2 2019-03-01 -
62 OtP20 Jokulhaups 723 2 2019-03-11 -
64 OtP21 Expedition 790 2 2019-03-15 -
60 OtP22 Lindwurm 808 2 2019-03-19 -
53 OtP23 Swords 719 2 2019-03-24 -
69 【OtP】決戦前特番嘘ですごめんなさい 771 2 2019-04-01 -
127 OtP24 Charge 792 2 2019-04-08 -
120 OtP25 Manque 765 2 2019-04-21 -
72 OtP26 Lightning 689 2 2019-05-03 -
72 OtP27 Blaze 796 2 2019-05-22 -
72 OtP28 Prelude 916 2 2019-09-29 -
91 OtP29 Phantom 758 0 2021-01-02 -
59 OtP30 mare-Nectaris 605 2 2023-01-22 -
48 OtP31 Enclosure 416 1 2023-11-06 -

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