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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第154話:望まぬ戦い

第154話:望まぬ戦い 作:光芒




 光子竜たちが現れたことでカオス・キマイラ・ドラゴンとHeart-eartH Dragonがギアーカから離れた。ギアーカはその場に滞空しているのがやっとというレベルの重傷を負っており、文字通りスクラップ寸前にまで追い込まれていた。
 そんなギアーカの大きな身体を波動音壁を張ってなんとか支えて運ぶスターダスト。ガーカもそうであるが、ギアーカもすぐにエンタープラズニルでの修理が必要だった。

「ギアーカさん、大丈夫……ですか?」
「スター……ダストさん。申し訳ありません。幻獣機部隊の誇りを傷つけてしまうような真似を……」
「ううん、それよりも……」

 そう言ってスターダストはエンタープラズニルの甲板を指さした。甲板の上では既に応急処置を済ませたガーカがギアーカを心配そうに見つめていた。彼女は右の翼が折られてしまったため、本格的な修理を行わないと戦いに参加することはできない。飛べない幻獣機はただのポンコツでしかないことは幻獣機である自分たちが一番よくわかっていた。

「ギアーカ姉様! ああ、酷い怪我……すぐに治さないと……」
「ガーカ……ごめんなさい。でも私は幻獣機部隊の隊長なのにこんな……」
「ギアーカさん、あなたは使命や誇りを大事にするかもしれないけど……でもそれも命あってこそだよ。もしここで死んでしまえば一時の汚名を濯ぐことすらできない」
「綾香さん……」

 今まで言葉にしたこともないようなことを思わず口走る綾香。我に返った彼女は顔を真っ赤にして両手で口をふさぐ。
 精霊界に来て様々なことを体験したからか綾香は知らず知らずのうちに命について考えるようになっていた。遊希の無事もそうだが、見ず知らずの自分たちに力を貸してくれた精霊界の住人たちのこともである。

「やだっ、私ったら……」
「ふふ、綾香……かっこいい」
「ちょっ、スターダスト!」
「綾香さん、相手はナンバーズです。私のような……並大抵の精霊では手も足も出ませんでした。ですが、精霊界には存在しない人間の力と共鳴した精霊なら……」

 精霊と比べて人間とはずいぶん非力な生き物である。空は飛べないし、海は進めないし、炎は起こせないし、資源を自分の力だけで作ることはできない。岩領域から輸入した鉱石を加工し鋼材にすることで様々なものを作り出す機領域の精霊からしてみれば人間とはなんと無力な生き物であると思うだろう。実際に綾香たちと出会うまで人間のことなど伝聞でしか聞いたことのなかったギアーカとガーカもそうだった。
 しかし、人間と共に過ごし人間によって存在が確立されているスターダストやスカーライトの姿を見ていると、自分たちとはまた違う精霊に思えてならなかったのである。

「どうか、気を付けて。エンタープラズニルは私たちが守ります」
「うん!」

 ガーカによってギアーカがエンタープラズニルの格納庫に運ばれていくのを尻目に綾香とスターダストは光子竜たちの下へと向かった。光子竜とスカーライト、ネオスとブラック・マジシャン・ガールは3体のドラゴン族のNo.と対峙していた。No.たちも他の精霊と同じく死んだと思われていた光子竜が生きていたことに驚きを隠せないようだった。

「光子竜か。久しいのう」

 ただ1体、神影龍ドラッグルーオンを除いては。彼は精霊界でもかなり古くから存在していたモンスターであり、自身がNo.に任命されるずっと前から精霊界の成り立ちを見てきた精霊であった。

「……お前は驚かないのか」
「儂を誰だと思っておる。お前や時空竜が小さい頃から知っているのじゃぞ? お前がそう簡単に死ぬとは思えんわ」
「ふん。精霊界に来て様々な精霊と出会ってきたが、誰もが幽霊を見るような眼で見てくる。そう思えばお前のような反応がありがたいくらいだ」
「相変わらず口が悪いのう。性格も変わっていないようで何よりじゃ」
「私のことをよく知っているようだな。だったら私たちがこれからどうしたいか、というのもわかるだろうな?」
「ああ、よくわかる。だからこそ儂らはここを通すわけにはいかんのじゃ」

 ドラッグルーオンのアイコンタクトにより、カオス・キマイラ・ドラゴンとHeart-eartH Dragonが戦闘態勢を取る。しかし、この2体は光子竜の力を知っているが故に積極的に仕掛けてこようとはしなかった。
 光子竜のカードとしての効果は自身と自身と戦闘を行う相手をゲームから除外し、それがエクシーズモンスターだった場合オーバーレイユニットの数×500ポイント攻撃力をアップさせる効果だ。精霊同士の戦いではカードの効果とは異なる力を発揮されたとしても、光子竜がそれと近い力を使えばどうなるか。
 そのため、オーバーレイユニットの数に応じて力を発揮できるカオス・キマイラ・ドラゴンとHeart-eartH Dragonでは光子竜相手では分が悪いのである。

「迂闊に攻められないようだな。自分たちでわかっているのだろう? エクシーズモンスターであるお前たちでは私には勝てないということを」
「くっ……!」
「まあ、そういうことよ。勝てないってわかってる戦いを無理にする必要はないんだし、ちゃっちゃと退いてくれない?」
「私たちは……すぐに遊希の……時空竜のところに行かなくてはならないの」

 強者は刃を交えずとも相手の力量を推し量ることができる。対峙するドラッグルーオンたちは精霊界では強者として知られているため、綾香やエヴァと共に戦場に立つスカーライトやスターダストの強さがその身にひしひしと伝わってきていた。
 それに加えてネオスやブラック・マジシャンの弟子であるブラック・マジシャン・ガール、そして配下たちの迎撃で数を減らしたとはいえ幻獣機部隊や地上のマシンナーズ部隊が後ろに控えている以上、どうにも不利は拭えなかった。

「どうする……このままでは」
「カオス・キマイラ・ドラゴン、Heart-eartH Dragonよ。今一度儂らの使命を思い出すのじゃ」
「我らの使命?」







「機領域の者どもが攻め寄せてくる。皆には領域の境界で奴らの侵攻を食い止めてもらいたい」

 先刻、時空竜に召喚された3体は時空竜より機領域からやって来る精霊たちを食い止めよ、という命令を受けていた。

「承知。それで、敵の処遇はどうするのじゃ?」
「処遇?」
「敵とあるのであれば撃破、撃墜の必要性もあると思うのだが」

 戦いに犠牲が生じるのはやむを得ないことである。しかし、時空竜はそれを望まなかった。好戦的な者が多いドラゴン族において時空竜は奇特な存在であった。

「……可能な限り命を奪う事態は避けてもらいたい。他の領域に感知されてしまえば要らぬ騒乱を引き起こす可能性がある」
「難しいことを言ってくれる。だが、心得た」







「その指示がどうしたというのだ?」
「彼奴は……時空竜は“食い止めよ”と言っておったじゃろう? 無理に戦う必要はない。あやつらの侵入を防ぐのが儂らの使命なのじゃ」
「まさかお主……あの力を?」
「若い者どもに汚れ役は担わせん。こういうのは老いぼれの役目じゃよ」

 ドラッグルーオンは不敵な笑みを浮かべて光子竜たちの方へと向き直った。

「作戦会議は終わったか?」
「ああ、じゃが儂らの決定は変わらんよ。お主たちをここから先へは行かせん」
「そうか……ではまかり通るまで」
「退かぬか。しょうがないのう……」

 ドラッグルーオンが手と翼を広げる。すると彼の周りに霧のようなもやが生じ始めた。ドラッグルーオンは“神影龍”という異名を持っており、戦闘力の高さはもちろん他のドラゴンには使えないような特異な力を使うことができる。記憶を失った光子竜には彼がそのような精霊であることなどわかりはしないが、彼の持つ力に身体が本能的に危険を感じ取った。

「皆! 奴の眼を見るな!!」
「えっ!?」
「何言って……あっ、あああ……!!」
「スカーライト!? どうしたんデスカ!?」

 光子竜の不安は的中した。自分の真横にしたスカーライトが突然頭を抱えて苦しみ始めたのである。彼女の背に乗るエヴァが何度も呼びかけるが、スカーライトにその声は届かない。
 Heart-eartH Dragonが“あの力”と呼び、ドラッグルーオン自身が“汚れ役”と自嘲したのはドラッグルーオンの力の1つである洗脳の力だ。彼はドラゴン族のみであるが、自身の力でそれを意のままに操ることができるのだ。
 最も光子竜のような精霊としての力が自分と同格かそれ以上の相手を操るのにはドラッグルーオンにもリスクがあり、スターダストはどちらかと言えば守護の力を持つ竜。そうなると彼が誰を操るのかは明白であった。

「すまんのう、お嬢ちゃん。お主の持つ破壊の力……儂の意のままに操らせてもらうぞ!!」
「がっ……やめ……グガアアアッ!!」

 瞳から光が消え、霧のように真っ白になったスカーライトがぐるりと振り返る。エヴァの声も、光子竜やスターダストの声も今の彼女には届かない。

「くっ……!」
「カオス・キマイラ・ドラゴン、Heart-eartH Dragon。お主たちは兵を退かせよ。殿は儂が務める。これ以上の儂らの中から傷つく者を出すわけにはいかんからのう」
「承知した。武運を祈るぞ、ご老体」

 そう言ってカオス・キマイラ・ドラゴンとHeart-eartH Dragonはドラグニティや聖刻龍たちを伴って竜領域へと飛び去って行った。これで相手の数はさらに減り、残るは2体だけとなったのだが、ドラッグルーオンに洗脳されてしまったスカーライトがいる以上、光子竜もスターダストも迂闊に攻めることができなかった。

「ちょっと、どうするのよ!」
「どうするも何も……スカーライトには攻撃できないし、何よりスカーライトの背中にはエヴァちゃんが……」
「光子竜! 綾香サン! 私に構わず……攻撃してクダサイ!」

 エヴァは暴れるスカーライトの首になんとかしがみついては必死に彼女の名を呼び続けていた。しかし、スカーライトのエヴァを見る目はかつてないほどに冷たい。そこに普段の明るくて元気なスカーライトの面影はなかった。

「そんな……そんなことできるわけ……!」
「今、ここでスカーライトを止めないと……いつまで経っても遊希サンを助けることができマセン! お願いシマス! 早く!!」
「……っ」

 自分は何のためにここに来たのか。もちろん一番の目的は遊希を助けることである。しかし、ここ一番で綾香は決断を下すことができなかった。
 遊希を助けるために千夏と詩織にオーバーハンドレッド・ナンバーズの足止めを任せてしまった。そしてここで操られたスカーライトを倒してエヴァを傷つけてしまう。遊希を助けるため、という目的があるとはいえ、これは正しいことなのか。という疑念が彼女の判断を一瞬遅らせてしまった。

「スカーライトよ、お主の戦うべき相手はそこではないぞ?」

 ドラッグルーオンの無慈悲な言葉が響く。スカーライトは光子竜たちに視線を向けたまま、ドラッグルーオンの意思に従って光子竜たちを飛び越えていった。光子竜たちの後方には傷ついた幻獣機たちを格納するために動きを止めていたエンタープラズニルの姿があった。
 時空竜の指示はあくまで機領域の侵攻を止めるというものである。そのため、この指示に忠実に従えば、優先的に打ち倒すべきなのは光子竜たちよりも機領域の主力部隊である幻獣機たちの母艦、エンタープラズニルであることは火を見るよりも明らかだった。

「しまっ……!」

 スターダストが急ぎ、スカーライトの後を追ってエンタープラズニルを守ろうとしたが遅かった。スカーライトの攻撃を予期したエンタープラズニルが回避行動を取る前に、エンタープラズニルの主翼をスカーライトの灼熱のクリムゾン・ヘル・フレイムが貫いた。
 左の主翼とエンジンを焼き払われたエンタープラズニルは爆発を起こしてゆっくりと降下していく。さすがにスカーライトとは体格差があるため、そのまま爆発炎上という事態には至らなかったものの、このまま不時着してしまえば更なる大災害へと繋がる恐れがあった。

「光子竜、スターダスト! 君たちはスカーライトを頼む!」
「ネオス……あなたは……?」
「俺は……エンタープラズニルを安全な場所まで運ぶ!!」

 ネオスは急ぎエンタープラズニルの下へと回り込むと、飛行能力を失って落ちていく空母を1人で支えようとした。ストーム・ネオスはその名前が表わす通り、ネオスが空戦に特化した形態であるため空中でその真価を発揮する。
 しかし、いくら強い力を持っている彼であっても自分の何百倍もある大きさのエンタープラズニルを1人の力で支え切ろう、というのは無謀と言うほかなかった。しかし、無謀とわかっていてもネオスは自分の持てる力全てをエンタープラズニルを支えるために注ぎ込む。

「ネオス! あたしも手伝うわ!!」
「ブラック・マジシャン・ガール!? ダメだ、君の力では……」
「腕力じゃ無理だけどあたしだって魔法使いの端くれよ! 黒・魔・導・爆・裂・破!」

 杖に自身の持つ魔力を込めては魔法の力をエンタープラズニルにぶつけるブラック・マジシャン・ガール。超能力、とはまた違ったものだが彼女の魔力のおかげでネオスにかかる負担が少しばかり緩和されたような気がした。しかし、それでも落ちていくエンタープラズニルを支えきるにはまだまだ足りない。

「ダメ! あたしの力でも!!」
(ぐっ……このままでは……)

 ネオスの脳裏には墜落して爆発、炎上するエンタープラズニルの姿がフラッシュバックする。それだけは絶対に避けなければならない。絶対に。

「ネオス殿! 遅くなりましたであります!!」

 ネオスが諦めかけたその時である。自分たちの周りには何体もの機械兵器たちがネオスやブラック・マジシャン・ガールと同じようにエンタープラズニルを支えはじめていた。

「その声は……コヴィントン? だが、その姿は……」
「これぞマシンナーズ部隊の最終兵器!“マシンナーズ・フォース”であります!!」


※マシンナーズ・フォース
効果モンスター
星10/地属性/機械族/攻4600/守4100
このカードは通常召喚できない。「督戦官コヴィントン」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードは、1000ライフポイント払わなければ攻撃宣言をする事ができない。
フィールド上に存在するこのカードを墓地へ送る事で、自分の墓地から「マシンナーズ・ソルジャー」「マシンナーズ・スナイパー」「マシンナーズ・ディフェンダー」をそれぞれ1体ずつ選択して特殊召喚する。


 カードとしてのマシンナーズ・フォースはコヴィントンとソルジャー、スナイパー、ディフェンダーの3体がフィールドに揃っている場合にのみ特殊召喚できるモンスターであるが、高いステータスの割に攻撃宣言時にライフを1000支払わなければならないなど、その召喚の手間の割にデメリットの多いモンスターである。
 精霊界においても強大な力を持ちながらリスクが大きすぎるためにほとんど起動することない形態なのだが、マシンナーズたちはそのフォースの力をより確実なものすべく、独自に研究と訓練を重ねており、その答えが本来合体に加わらないコヴィントンを核として加えることでそのリスクを最小限に抑えるということだったのである。

「まさか今まで一度も上手くいかなかった私自身を含めた合体がこの時に初めて成功するとは……火事場の馬鹿力とはよく言ったものでありますな!」
「御託はいいから早く支えてよー! あたしたちだけじゃ無理!!」
「任せるであります!」

 マシンナーズ・フォースの号令の下、地上に控えていたマシンナーズ・フォートレス部隊はそれぞれフォートレスをコントロールしていたマシンナーズ・ギアフレーム、マシンナーズ・ピースキーパーと合体して“マシンナーズ・メガフォーム”となっていた。
 フォースと数十機のメガフォームからなる真・マシンナーズ部隊が助勢に加わればエンタープラズニルを安全な場所に降ろすことができるかもしれない。その可能性がネオスとブラック・マジシャン・ガールの尽きかけていた力を希望と共に湧き上がらせる。


※マシンナーズ・メガフォーム
効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻2600/守1500
「マシンナーズ・メガフォーム」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードをリリースして発動できる。手札・デッキから「マシンナーズ・メガフォーム」以外の「マシンナーズ」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「マシンナーズ・フォートレス」が自分の墓地へ送られた場合、その「マシンナーズ・フォートレス」1体を墓地から除外して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。


「よし! 今こそ俺たちの力を発揮する時だ!!」
「了解であります! マシンナーズ部隊! 今こそ全力を見せる時であります! マシンナーズ・フォー!!」
(光子竜、スターダスト……お願い!)







 ネオスたちがエンタープラズニルを安全な場所まで避難させている間、光子竜とスターダストはスカーライトをエンタープラズニルに接近させまいとヒット&アウェイの戦法を取り続けてきた。
 仮にスカーライト単体なら光子竜とスターダストの連携攻撃で動きを止めることは容易かもしれない。しかし、今スカーライトの背にはエヴァが乗っており、下手に攻撃してしまえば彼女まで傷つけてしまう恐れがあった。

「スカーライト、お願いデス! 早く目を覚まして下サイ!!」
「ガアアッ……煩イ、黙レッ!!」

 エヴァは暴れるスカーライトの首にしがみついてはスカーライトに呼びかけ続ける。エヴァの声が本当に届いているのかどうかは定かではないが、スカーライトの洗脳にわずかに綻びが見えかけているのは誰の目にも明らかなことであった。
 それに対しては少し離れた場所でスカーライトを操っているドラッグルーオンも感じ取っていた。精霊界にいた時から強い力を持っていた光子竜、綾香との結びつきが強く、かつまだ見えない力を隠し持っていると思えたスターダストを避け、単純な力の強さと眠っている力をまだ解放できていないスカーライトを操ることに決めた彼だが、ここに来て誤算が生じ始めたのである。

(まさか……儂の力が落ちたのか。それとも人間との結びつきが予想だにしていない化学反応を起こしておるのか……あのままあの人間を野放しにしておくわけにはいかんのう)
「スカーライトとやら! 首にしがみつく人間を振り払うのじゃ!」

 スカーライトはガオオ、と吠えては首をグルグルと振り回す。エヴァは必至にしがみついているが、さすがに目が回ってきたのか限界が近い様子だった。

「スターダスト、エヴァちゃんを助けるわ!! 光子竜、サポートして!!」

 エヴァを助けるには今しかない。そう思った綾香はスターダストと共にスカーライトに急接近した。スカーライトは灼熱の炎を放って自分を覆いつくすが、スターダストの作り出すバリアによって2体はそれを一気呵成に突き抜ける。
 スターダストではスカーライトに力では敵わないため、光子竜がスカーライトの動きを止めている間、エヴァを助け出すことに決めた。光子竜が拳や尻尾を振り回すスカーライトを翻弄している間、スターダストは細身の身体をしなやかにくねらせてスカーライトの後ろへと回り込んだ。

「エヴァちゃん!!」

 綾香が手を伸ばす。エヴァは一瞬躊躇する様子を見せるも、最終的にその手を掴もうとした。ここで自分が離れるということはスカーライトを見捨てることになってしまうのではないか、というためらいが彼女の中にはあったのだ。しかし、その一瞬の戸惑いが明暗を分けてしまった。綾香の手を取ろうとして身を乗り出したエヴァはスカーライトによって振り落とされてしまったのである。

「スターダスト!!」
「……うん!!」

 スターダストは急降下し、落ちるエヴァをなんとか背中で受け止める。しかし、エヴァを受け止めることばかりに考えが行ってしまったため、スカーライトの攻撃が迫っていたことには気づけなかった。

「波動音……きゃああっ!!」

 スカーライトの一撃を咄嗟に身を捻って回避しようとしたスターダストであるが、避けきれずに彼女の右の翼に直撃してしまった。激しい衝撃と共に投げ出されてしまった綾香とエヴァを抱き抱えたスターダストであったが、右の翼が傷ついてしまったため満足に飛ぶことができない。
 地面に激突してしまうことだけはなんとかして避けなければならない、と感じたスターダストは出しかけた波動音壁を球状に展開することで墜落する衝撃を可能な限り和らげることに成功した。スターダストの機転で命には別状はないようだが、悪いことは続くとはよく言ったもので、球状にバリアを展開したことが災いし、スーパーボールのように跳ねたスターダストたちは運悪く、急流が轟音を立てて流れる渓谷へと落ちていった。

「綾香!! エヴァ!! スターダスト!!」
「グガアアッ!!」
「っ、貴様!!」
(っ……光子竜! スカーライト……ごめん)

 翼を怪我しているため、満足には飛べない。スターダストは流れに飲まれながら空中で激突する光子竜とスカーライトの姿を見ながら無力にも川の下流へと流されていった。




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ター坊
ルーオンは確かにぶんどり効果があったな…仲間の洗脳堕ちとは。スカーライトとスターダストが離脱し、綾香たちの旅はどうなるか? (2016-09-23 07:22)
光芒
>ター坊さん
【征竜】や【青眼】全盛期はメタおよびメタ返し的利用でドラッグルーオンのこの効果が活きていましたね。まあ自分フィールドに他のモンスターがいたら使えないという改悪のせいで長らく評価が低かったですが。

仲間の洗脳堕ちってよく考えたら一度取ってる手だったという(殴
離れ離れにになってしまった一行ですが、次回思わぬ人物が救いの手を差し伸べます。 (2016-09-24 10:01)

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131 第71話:黒幕との接触 1615 3 2016-02-10 -
160 第72話:決別の時 1777 3 2016-02-12 -
122 第73話:思いを一つに 1431 3 2016-02-15 -
109 第74話:邪なる同調 1556 2 2016-02-17 -
55 第75話:精霊の奇跡 1448 4 2016-02-19 -
118 第76話:星天の再会 1432 2 2016-02-22 -
119 第77話:ペンデュラムの脅威! 1472 4 2016-02-24 -
127 第78話:渾身のドロー 1702 2 2016-02-26 -
112 1万アクセス突破記念企画開催! 1882 0 2016-02-26 -
63 第79話:覇王黒竜の目覚め 1455 4 2016-02-28 -
53 第80話:進化する銀河龍 1538 2 2016-03-01 -
137 第81話:変わらぬ友情 1507 7 2016-03-03 -
117 第82話:集う決闘者 1756 6 2016-03-04 -
139 第83話:小さくたって決闘者 1738 7 2016-03-05 -
109 第84話:決意を秘めた決闘者 1474 9 2016-03-07 -
80 第85話:歩み始めた決闘者 1555 13 2016-03-08 -
127 第86話:真意を告げた決闘者 1638 7 2016-03-09 -
114 第87話:ポンコツ揃いな決闘者 1659 7 2016-03-10 -
74 第88話:とにかく可愛い決闘者・1 1576 10 2016-03-11 -
101 第89話:とにかく可愛い決闘者・2 1578 8 2016-03-13 -
99 第90話:五人五色な決闘者 1483 6 2016-03-14 -
136 遊希たちが4月改訂を語るようです 1513 8 2016-03-16 -
81 第91話:夕刻迎えし決闘者 1418 6 2016-03-16 -
95 第92話:解き放たれた決闘者 1652 6 2016-03-18 -
78 第93話:秘密を打ち明けた決闘者 1780 7 2016-03-20 -
73 第94話:一計案じる決闘者 1298 8 2016-03-22 -
83 第95話:絆深める決闘者 1472 10 2016-03-23 -
81 第96話:矛を交える決闘者・1 1429 9 2016-03-25 -
127 第97話:矛を交える決闘者・2 1358 6 2016-03-27 -
123 第98話:矛を交える決闘者・3 1477 7 2016-03-29 -
79 第99話:矛を交える決闘者・4 1442 7 2016-03-31 -
93 第100話:熱戦の決闘者・1 1412 6 2016-04-02 -
130 第101話:熱戦の決闘者・2 1448 10 2016-04-05 -
87 第102話:熱戦の決闘者・3 1473 11 2016-04-07 -
80 第103話:熱戦の決闘者・4 1415 6 2016-04-09 -
115 第104話:熱戦の決闘者・5 1556 6 2016-04-11 -
102 第105話:熱戦の決闘者・6 1479 6 2016-04-13 -
70 第106話:決戦に臨む決闘者・1 1436 6 2016-04-15 -
130 第107話:決戦に臨む決闘者・2 1502 11 2016-04-18 -
85 第108話:別れの時を迎える決闘者 1492 10 2016-04-20 -
76 番外編前編について遊希たちが語るようです 1519 6 2016-04-21 -
110 第109話:2通の手紙 1617 11 2016-04-23 -
98 第110話:青き眼のアトラクション 1519 6 2016-04-25 -
129 第111話:新時代のデュエル 1466 6 2016-04-27 -
92 第112話:ドラグーン 1390 6 2016-05-01 -
111 第113話:アクセラレーション! 1480 7 2016-05-03 -
119 第114話:熱気溢れしサーキット 1288 6 2016-05-06 -
141 第115話:新たなるブラックフェザー 1339 5 2016-05-10 -
136 第116話:疾走の果てに 1545 7 2016-05-12 -
57 第117話:ノンストップ・ガールズ 1563 6 2016-05-14 -
81 第118話:夏の終わり 1500 9 2016-05-16 -
122 第119話:謎の美少女 1554 4 2016-05-19 -
90 第120話:真・究極 1425 8 2016-05-21 -
65 第121話:遊希の動揺、遊望の微笑 1388 4 2016-05-23 -
71 第122話:聖夜の悲劇 1345 6 2016-05-25 -
61 30000アクセス記念企画を少々。 1247 5 2016-05-27 -
83 第123話:姉として 1364 3 2016-05-29 -
74 第124話:対峙する竜と龍 1421 3 2016-06-01 -
63 第125話:顕現せし遊望の精霊 1480 5 2016-06-03 -
66 第126話:No.(ナンバーズ) 1483 4 2016-06-06 -
109 第127話:届かぬ言葉 1460 7 2016-06-08 -
78 30000アクセス記念企画 1669 4 2016-06-10 -
72 第128話:白紙のカード 1401 6 2016-06-14 -
125 第129話:青空の下で 1285 3 2016-06-17 -
135 第130話:白いドラゴンとの邂逅 1561 4 2016-06-20 -
78 第131話:試練のデュエル 1397 4 2016-06-23 -
70 第132話:第四の精霊 1342 5 2016-06-26 -
115 第133話:舞い降りる閃珖竜 1454 4 2016-06-29 -
72 第134話:親友に託された力 1378 3 2016-07-02 -
105 第135話:涙の誓い 1366 4 2016-07-06 -
107 第136話:次元転送装置 1320 3 2016-07-09 -
102 第137話:新たなる竜星 1468 5 2016-07-12 -
63 第138話:綾香の忘れたもの 1403 4 2016-07-15 -
137 第139話:決闘者たちの選択 1260 5 2016-07-19 -
111 第140話:2人の真意 1331 7 2016-07-24 -
73 第141話:精霊界への旅立ち 1357 4 2016-07-28 -
74 第142話:黒き魔術師と弟子 1310 3 2016-08-02 -
125 第143話:七星将軍の襲撃 1361 3 2016-08-05 -
94 精霊界 登場キャラクター(9/14更新) 1387 0 2016-08-07 -
77 第144話:英雄と炎拳・1 1329 5 2016-08-10 -
77 第145話:英雄と炎拳・2 1274 4 2016-08-14 -
72 第146話:騎士王の覚醒 1272 6 2016-08-17 -
89 第147話:竜姫神と岩の合成獣・1 1455 3 2016-08-21 -
81 第148話:竜姫神と岩の合成獣・2 1303 2 2016-08-23 -
54 第149話:過去への鎮魂歌 1346 7 2016-08-26 -
96 50000アクセス記念企画~短編集・1~ 1358 3 2016-08-28 -
91 第150話:機械の身体に宿る心 1179 0 2016-08-31 -
63 第151話:空を超えて 1149 0 2016-09-03 -
125 第152話:竜と機械の大会戦 1235 0 2016-09-08 -
64 第153話:竜領域のナンバーズ 1295 0 2016-09-13 -
88 50000アクセス記念企画~短編集・2~ 1532 7 2016-09-17 -
110 遊希たちが10月改訂を語るようです 1321 4 2016-09-19 -
88 第154話:望まぬ戦い 1218 2 2016-09-23 -
73 第155話:正しさと過ち 1195 4 2016-09-27 -
66 第156話:少女の決意 1311 2 2016-10-01 -
125 第157話:遊希に起きた異変 1439 4 2016-10-05 -
119 第158話:未知なるデッキ 玻星光 1369 3 2016-10-08 -
123 第159話:玻璃の如く純粋に 1339 2 2016-10-12 -
113 第160話:限界を超えて 1300 3 2016-10-15 -
137 第161話:決戦 1314 3 2016-10-18 -
106 第162話:精神の成長 1289 2 2016-10-21 -
57 第163話:聖なる珖放つ神の竜 1325 4 2016-10-24 -
51 第164話:絆が紡いだ道 1434 6 2016-10-27 -
74 第165話:戦いの終わり 1353 4 2016-10-30 -
68 番外編 Trick or Treat 1230 5 2016-10-31 -
121 第166話:終わりの始まり 1465 9 2016-11-04 -
113 第167話:最期のワガママ 1492 4 2016-11-07 -
128 第168話:声なき再会の誓い 1357 4 2016-11-10 -
100 番外編:11月11日 1248 5 2016-11-11 -
80 第169話:七皇激突 1182 3 2016-11-15 -
57 第170話:怒りに生まれし竜 1165 3 2016-11-17 -
142 第171話:紅き新星竜 1508 5 2016-11-19 -
87 第172話:未来を賭けた戦い・1 1367 4 2016-11-22 -
127 第173話:未来を賭けた戦い・2 1289 3 2016-11-24 -
134 第174話:未来を賭けた戦い・3 1270 4 2016-11-28 -
141 第175話:神の目覚め(修正済) 1265 5 2016-11-30 -
157 第176話:ゴッド・ナンバーズ 1691 5 2016-12-02 -
110 第177話:次元を越える想い 1528 4 2016-12-05 -
146 第178話:天地創造の龍 1502 3 2016-12-07 -
114 第179話:希望への道 1391 3 2016-12-09 -
140 第180話:別れの時 1292 4 2016-12-11 -
113 第181話:少女たちの帰還 1257 5 2016-12-13 -
67 遊希たちが1月改訂を語るようです 1201 7 2016-12-15 -
130 第182話:バースデイ 1456 3 2016-12-17 -
104 第183話:星龍皇覚醒・1 1287 3 2016-12-19 -
120 第184話:星龍皇覚醒・2 1313 4 2016-12-21 -
88 第185話:星龍皇覚醒・3 1164 4 2016-12-22 -
107 番外編:一番のプレゼント 1255 5 2016-12-25 -
126 第186話:星龍皇覚醒・4(修正済) 1370 3 2016-12-26 -
108 星龍皇 設定・カード紹介 1401 0 2016-12-29 -
73 第187話:星龍皇覚醒・5 1267 4 2016-12-30 -
111 番外編:新年 1254 4 2017-01-01 -
87 第188話:星龍皇覚醒・6 1143 2 2017-01-04 -
123 第189話:星龍皇覚醒・7 1263 3 2017-01-07 -
66 第190話:神星龍皇と課せられた運命 1456 3 2017-01-09 -
136 エピローグ:未来 1716 10 2017-01-13 -
102 番外編:2月3日 1265 4 2017-02-03 -
98 番外編:愛と友情のチョコレート 1068 4 2017-02-14 -
89 番外編:桃(色)の節句 1143 4 2017-03-04 -
133 感謝とお知らせ 1290 2 2017-05-04 -
92 番外編:Gift 1161 2 2017-12-25 -
149 ゴブリンと青眼(ブルーアイズ) 1138 2 2018-01-14 -
122 アフターストーリー:星乃 綾香編・1 1801 2 2018-05-24 -
90 アフターストーリー:星乃 綾香編・2 1032 2 2018-05-28 -
103 アフターストーリー:星乃 綾香編・3 953 2 2018-05-30 -
132 アフターストーリー:星乃 綾香編・4 1124 2 2018-06-03 -
122 アフターストーリー:星乃 綾香編・5 1125 4 2018-06-06 -
63 アフターストーリー:陽川 千夏編・1 881 2 2018-08-14 -
74 アフターストーリー:陽川 千夏編・2 884 3 2018-08-20 -
114 アフターストーリー:陽川 千夏編・3 913 3 2018-08-23 -
75 アフターストーリー:陽川 千夏編・4 925 2 2018-08-25 -
46 アフターストーリー:陽川 千夏編・5 809 3 2018-08-30 -
71 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・1 943 2 2018-09-01 -
212 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・2 1059 3 2018-09-07 -
105 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・3 785 0 2018-09-09 -
71 『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・4 886 3 2018-09-12 -
126 番外編:願う幸福 1493 2 2018-12-25 -

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