第100話：熱戦の決闘者・1　作：光芒

第100話（番外編第19話）：熱戦の決闘者・1



「ベアトリスおねえちゃん、おはしはこうやってもつんだよ？」
「んん……中々難しいですね。歩美ちゃん、教えてくれてありがとうございます」

　2日目はまさに日本特有の真夏の暑さが襲ってきた、というレベルの気温となった。暑さで体力を奪われては元も子も無いということで昼食は日本の夏を代表する食べ物である素麺となった。
　しかし箸を使い慣れていないベアトリスが食べるのに一苦労していたため、隣に座っていた歩美が手取り足取り箸の使い方をレクチャーしていたため、全く食べることができないわけではないようだった。そんな微笑ましい光景を尻目に遊希の口から出された衝撃の提案に凛と心は驚きを隠せないようだった。

「ボクたちもライフ8000でデュエルするんですか！？」
「ええ。最初はずっと4000でやるつもりだったんだけど、あなたたち私たちが思っている以上に飲み込みもいいしデュエルのセンスもあるわ」
「だから午後は組み合わせを変えて8000ライフでデュエルをやってもらおうってことになったのよ。ほら、結衣と美夏にできるんだからあんたたちにだってできるでしょ？」

　千夏のその言葉に結衣と美夏が凄いだけなんじゃ、と思う凛と心であったが、2人はそれを後ろ向きではなく前向きに捉えることとした。逆を返せば「それだけ自分たちがデュエリストとしての才能に溢れている」ということになるのだから、喜ばない理由はない。

「でも組み合わせを変えるってことは心ちゃんにリベンジする機会が無くなっちゃうね」
「ま、まあさっきのデュエルの勝利は私がリベンジする側だったからね」
「で……あたしたちは別に構わないけど歩美ちゃん大丈夫なんですか？ 小学生で8000ライフのデュエルってのはさすかに……」

　美夏の問いに遊希とエヴァが口を揃えて「私たちは小学生から8000ライフのデュエルをしていた」と答えるが、デュエルを始めたばかりの歩美をプロ2人と同一視するのはさすがにどうなのか、と全員からツッコミが入る。

「でも一つだけ言えることがありマス。歩美サンは小学校2年生ながら皆さんとデュエルができているんデスヨ？ 年齢を考えると、一番すごいことデス」
「良かったですね、歩美さん。皆さんが褒めてくれていますよ？」
「ふぇっ！？ あうう……そんなわたしすごくないよ……」

　照れる歩美の愛らしさに場が和む中、素麺を流し込んだ一同は午前中のように綾香自作のクジで再度組み合わせの抽選会を行った。その結果ライフ8000でのデュエルの組み合わせは以下のように決まった。


第一試合：結衣VS歩美
第二試合：心VSベアトリス
第三試合：美夏VS凛


「じゃあ今から1時間後にデュエル開始よ。それまで食休みするなりデッキ調整するなり好きに過ごしてくれていいわ」

　遊希の指示を受けて全員がそれぞれ動き出すが、皆が皆デッキを取り出して一人で回してみたりデッキ改造に勤しんでいた。やはり遊希たちと一緒に過ごしたのが大きいのか、全員が第一にデュエルのことを考えるようになっていた。

「あ、あの……綾香おねえちゃん」

　その中で第一試合に結衣とデュエルをする歩美は綾香の元にやってきていた。歩美は昨日と比べて大幅に成長したといっていいが、さっきのデュエルを見て結衣の強さに少し及び腰でもあった。
　歩美はデュエル初心者とはいえ、今の今までデュエルをして一回も勝つことができていない。イベントに参加して、綾香たちと出会って芽生えたデュエリストとしての自我が彼女に「勝ちたい」という思いを強く根付かせていたのだ。

「あのね、歩美ちゃん。勝つことだけが全てじゃないんだよ？ 負けてそこから何を学べるかも大事なの」
「うん、それは……わかっているんだけど。でもわたしがかったら綾香おねえちゃんをもっとよろこばせてあげられるから……」
「歩美ちゃん……おねえちゃん嬉しいよ。わかった、じゃあ歩美ちゃんに私―――星乃 綾香のデュエルを教えてあげるね」





＊





　デュエル開始の時間となり、外に出た一同は午前中のようにデュエルの態勢を整える。正午を過ぎて暑さがピークになりつつあるため、2人にはスポーツドリンクが手渡された。デュエルの最中に熱中症で倒れた、などとなれば元も子もない。

「歩美ちゃん、宜しくね」
「あ、あの！ 結衣おねえちゃん！」

　そう言ってデュエルスペースに向かおうとした結衣を歩美が呼び止めた。

「なに？ どうしたの？」
「結衣おねえちゃんはとってもつよいけど……わたし、まけません。だからぜんりょくでデュエルしてください！」
「歩美ちゃん……わかりました。私も本気で行かせてもらいます」

　図らずも自分の教え子同士がデュエルをすることとなった遊希と綾香は2人並んで座っては、デュエル前の結衣と歩美の様子を見守っていた。

「歩美ちゃん……目つきが昨日と違うわね。もうデュエリストの眼をしてる」
「そうね。可愛さの中にも強さがあるって感じ。はうう……お持ち帰りしたい」
「いい加減警察に通報するわよロリ乃ロリ香さん。でも、単純なデッキパワーでは結衣の【海皇水精鱗】の方が上。歩美ちゃんには厳しいデュエルになるかもしれないわね」
「あら、小学生に嫉妬してるの？ 言っておくけど、歩美ちゃんには私のデュエルを教えたから一筋縄ではいかないわよ？」

　綾香のデュエルとはいったいなんなんだろうか、と思いつつ遊希は視線をデュエルスペースの結衣と歩美に戻す。コンピューターによって先攻後攻の決定権は歩美に与えられたようだった。
　歩美は少し悩みつつ、先攻を選択した。マドルチェの展開力を活かして先に場を固めるつもりなのだろうか。「どっちも頑張れ！」という美夏や凛の声援が飛ぶ中、歩美にとって未知の境地である8000ライフのデュエルが始まろうとしていた。

「デュエル！」
「でゅえる！」


歩美　LP8000　手札：5枚
デッキ：38　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0
結衣　LP8000　手札：5枚
デッキ：36　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN01


「わたしのターンです！……あう」

　先攻を取った歩美であったが、またしても手札にマドルチェ・シャトーならびにそれをサーチできるテラ・フォーミングを引き当てることができなかった。しかし、最初のターンでできることを見つけることが大事、という綾香の言葉を忘れないようにして手札を見つめてじっと考える。

（……あれ、このカードをここでこうつかえば……綾香おねえちゃんのいってたとおりに……）
「えっと、わたしはマドルチェ・マジョレーヌさんをしょうかんします！」

　歩美のフィールドにはすっかりお馴染みとなったマドルチェ・マジョレーヌが召喚され、自身の効果が発動する。

「マドルチェ・マジョーレヌさんがしょうかんにせいこうしたとき、デッキからほかのマドルチェさん1体をてふだにくわえることができます！」
「サーチ効果ですか……手札はあまりよくないようでしたが、しっかり引き当てる辺りは流石ですね」
「マジョーレヌさんのこうかにチェーンしてこのカードをはつどうします！ そっこうまほう、きんきゅうテレポート！」


※緊急テレポート
速攻魔法（制限カード）
(1)：手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。


「緊急テレポート！？ そんなカード、マドルチェには……」
「まだだよ！ きんきゅうテレポートにチェーンしててふだからそっこうまほう、“サモンチェーン”もはつどうします！」


※サモンチェーン
速攻魔法
チェーン3以降に発動できる。
このターン自分は通常召喚を3回まで行う事ができる。
同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動している場合、このカードは発動できない。


「チェーン3のサモンチェーンのこうかでわたしはこのターン、3回までモンスターさんをしょうかんできます！ チェーン2のきんきゅうテレポートのこうかでわたしはデッキから“サイ・ガール”さんをとくしゅしょうかんします！」


※サイ・ガール
チューナー（効果モンスター）
星2/地属性/サイキック族/攻500/守300
ゲームから除外されているこのカードが特殊召喚に成功した時、自分のデッキの一番上のカードを裏側表示でゲームから除外する。
このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、このカードの効果で除外した自分のカードを手札に加える。


「チューナーモンスター……まさか……！」
「チェーン1のマジョレーヌさんのこうかでデッキから“マドルチェ・バトラスク”さんをてふだにくわえます！ サモンチェーンのこうかでわたしはこのターン、あと2回つうじょうしょうかんができます！ わたしはマドルチェ・メッセンジェラートさんをしょうかん！ そしてマドルチェ・バトラスクさんもしょうかんします！」


※マドルチェ・バトラスク
効果モンスター
星4/地属性/魔法使い族/攻1500/守800
このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、このカードをデッキに戻す。
このカードが召喚に成功した時、フィールド上にこのカード以外の「マドルチェ」と名のついたモンスターが存在する場合、デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える事ができる。


「しょうかんにせいこうしたバトラスクさんのこうかでデッキからフィールドまほう1まいをてふだにくわえます！ マドルチェ・シャトーをてふだにくわえます。うーん……マドルチェさんじゃなくなっちゃうけど、このモンスターさんもだします！ わたしはレベル4のマジョレーヌさんに、レベル2のサイ・ガールさんをちゅーにんぐ！ “しぜんをまもるドラゴンさん！” シンクロしょうかん！ “ナチュル・パルキオン”さん！」


※ナチュル・パルキオン
シンクロ・効果モンスター
星6/地属性/ドラゴン族/攻2500/守1800
地属性チューナー＋チューナー以外の地属性モンスター1体以上
(1)：罠カードが発動した時、自分の墓地のカード2枚を除外して発動できる。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、その発動を無効にし破壊する。


（ナチュル・パルキオン！？ そんな……！）

　ナチュル・パルキオンは自分の墓地のカード2枚を除外することで、相手の罠カードの発動を無効にして破壊する効果を持っている。これにより、結衣の【海皇水精鱗】デッキのキーカードの1つであるアビスフィアーが封じられる形となってしまった。
　本来マドルチェはエクシーズ召喚をメインに戦うデッキなのだが、全モンスターが地属性で統一されていることも相まって、地属性のチューナーを入れるだけで高い拘束力を誇る【ナチュル】のシンクロモンスターを採用することができる。綾香の言った「私のデュエル」とは歩美のマドルチェデッキに綾香の得意とするシンクロ召喚を取り入れることだったのだ。

「まだです！ わたしはレベル4のメッセンジェラートさんとバトラスクさんでおーばーれい！ 2たいのモンスターさんでオーバーレイ・ネットワークをこうちく！ エクシーズしょうかん！ “こわいこわいおはなさん！” フレシアの……？」
「歩美ちゃん、それは“蟲惑魔（こわくま）”って読むんですよ」
「あっ、ふりがなが書いてある！ えっと“フレシアの蟲惑魔”さんをしゅびひょうじ！」


※フレシアの蟲惑魔
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/地属性/植物族/攻300/守2500
レベル4モンスター×2
(1)：X素材を持ったこのカードは罠カードの効果を受けない。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、「フレシアの蟲惑魔」以外の自分フィールドの「蟲惑魔」モンスターは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にならない。
(3)：1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、発動条件を満たしている「ホール」通常罠カードまたは「落とし穴」通常罠カード1枚をデッキから墓地へ送って発動できる。この効果は、その罠カード発動時の効果と同じになる。この効果は相手ターンでも発動できる。


「っ……！！」
「わたしはこれでたーんえんどです！」


歩美　LP8000　手札：2枚
デッキ：35　モンスター：2（フレシアの蟲惑魔 ORU:2、ナチュル・パルキオン）魔法・罠：0　墓地：4　除外：0
結衣　LP8000　手札：5枚
デッキ：36　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN02


「私のターン、ドローです！」

　結衣は歩美の初動がどのようなものになるか見極めようとしていたのだが、せいぜいマドルチェモンスターを数体並べるかゼンマインのような壁となるエクシーズモンスターを出す程度と思っていた。
　しかし、蓋を開けてみればその予想は大きく外れていた。歩美は綾香の助言を受けてシンクロ召喚を取り入れ、さらにマドルチェ以外の強力なエクシーズモンスターを召喚。そして複数チェーンの上に成り立つコンボまで最初の5枚の手札から導き出せるほどに成長していたのである。

（それにナチュル・パルキオン……あのカードは墓地のカード2枚を除外することで罠カードの発動を無効にして破壊してしまう……これではアビスフィアーが……）

　海皇水精鱗デッキにとって起爆剤となるカードの1つが罠カードのアビスフィアーである。このカードの効果でアビスリンデを特殊召喚し、戦闘の盾にするもしくはエンドフェイズの自壊効果で後続を呼びつつ、除去やサーチを相手ターン中に行うことができるのが水精鱗の強みの1つなのだ。
　それが封じられてしまえば、深海のディーヴァのような海皇子 ネプトアビスに繋げられるモンスターを素引きするしかない。40枚以上あるカードの中から数枚のそのカードを早いうちに引ける確率などたかが知れていた。

（フレシアの蟲惑魔は効果こそ厄介ですが、攻撃力は300。攻めて来ることはないと考えれば、最初に処理すべきはパルキオン！）
「私はジェネクス・ウンディーネを召喚します。そしてウンディーネの召喚に成功した時、デッキから水属性モンスターである海皇の重装兵を墓地に送り、デッキから「ジェネクス・コントローラー」1体を手札に加えます！ そして水属性モンスターの効果を発動するために墓地に送られた重装兵の効果を発動！ フィールドの表側表示のカード……ナチュル・パルキオンを破壊します！」

　両腕の盾を合わせて1つの大楯にした重装兵は捨て身の突撃を敢行。自分の数十倍の大きさを持つナチュル・パルキオンの身体を貫き、破壊した。

「はわわ、パルキオンさんがぁ……」
「これで罠カードの発動は無効化されません。私はカードを2枚セットしてターンエンドです」


歩美　LP8000　手札：2枚
デッキ：35　モンスター：1（フレシアの蟲惑魔 ORU:2）魔法・罠：0　墓地：5　除外：0
結衣　LP8000　手札：4枚
デッキ：33　モンスター：1（ジェネクス・ウンディーネ）魔法・罠：2　墓地：1　除外：0


☆TURN03


「わたしのターン、ドローです！」

　対する歩美であるが、彼女もまた動けずにいた。最初のターンでサモンチェーンからのシンクロ召喚、エクシーズ召喚と大量に手札を消費してしまったため、フィールドに出せるマドルチェモンスターが現時点で手札に存在しないのだ。

（まさかパルキオンさんがこんなにはやくやられちゃうなんて……でも結衣おねえちゃんもフレシアさんをたおせないんだったら、わたしもがまんするだけ！）
「わたしはてふだからえいぞくまほう、マドルチェ・チケットをはつどうします！ わたしはこれでターンエンドです！」

　しかし、手札にはバトラスクの効果でサーチしたマドルチェ・シャトーがあるため、全く動けないわけではない。フレシアで鉄壁の守りを維持しつつ、手札に何かしらの起点となるマドルチェモンスターが来るのを待つのみである。取り敢えず今ドローしたマドルチェ・チケットを発動して歩美はターンを結衣に渡した。

（ここでマドルチェ・チケットを発動した……そして残り2枚の手札のうちの1枚はマドルチェ・シャトー。これでいつマドルチェが来ても動くことができる……だったら！）
「待ってください。私は歩美ちゃんのターンの終了時にリバースカードを発動します。永続罠、アビスフィアーです！ このカードの効果でデッキから水精鱗-アビスリンデをデッキから特殊召喚します！ そしてエンドフェイズ時にアビスフィアーおよびその効果で特殊召喚されたモンスターは破壊されます！」

　デッキから特殊召喚されたアビスリンデであるが、すぐに深海に引きずり込まれるようにして破壊される。だが、これこそが水精鱗の基本戦法なのだ。

「破壊されたアビスリンデの効果でデッキから攻撃力2700の水精鱗-リードアビスを特殊召喚します！」
「フレシアのこわくまさんのこうかをはつどうします！ デッキから……こう……かつな、おとしあなをぼちにおくって、フレシアさんのおーばーれいゆにっとを1つとりのぞいてこうかをはつどうします！」


※狡猾な落とし穴
通常罠
自分の墓地に罠カードが存在しない場合に発動できる。
フィールド上のモンスター2体を選択して破壊する。


「リードアビスさんとウンディーネさんをはかいします！」
「……まあ通りませんよね」


歩美　LP8000　手札：2枚
デッキ：33　モンスター：1（フレシアの蟲惑魔 ORU:1）魔法・罠：1（マドルチェ・チケット）墓地：7　除外：0
結衣　LP8000　手札：4枚
デッキ：31　モンスター：0　魔法・罠：1　墓地：5　除外：0


☆TURN04


「私のターン、ドロー！……歩美ちゃん」
「なに……結衣おねえちゃん？」
「このターンから攻めていきます！ 私は深海のディーヴァを召喚！ ディーヴァの効果でデッキからレベル1の海竜族モンスター、海皇子ネプトアビスを召喚！」

　深海のディーヴァもネプトアビスも攻撃力は1000にも満たない。そのため歩美はフレシアの効果でデッキに残っている奈落の落とし穴を墓地に送ってもこの2体を破壊することができないのだ。

「そのモンスターさんたち……美夏おねえちゃんとのデュエルでもかつやくしたモンスターさんたちだよね？」
「ええ。このデッキのキーカードです！ ネプトアビスの効果！ デッキから海皇の重装兵を墓地に送り、海皇の竜騎隊を手札に加えます！ 水属性モンスターの効果を発動するために墓地に送られた重装兵の効果でフレシアの蟲惑魔を破壊します！」

　2体目の重装兵によってフレシアの蟲惑魔が破壊される。これでナチュル・パルキオンおよびフレシアの蟲惑魔という敵にすると厄介なモンスター2体を召喚した歩美だったが、その2体を結衣はあっさり攻略してしまった。これで歩美のフィールドにモンスターは1体も存在しなくなってしまい、かつ彼女に結衣の展開を止める手段もなかった。

「わたしのモンスターさんたちが……」
「まだまだ行きます。私はレベル1の海皇子 ネプトアビスにレベル2の深海のディーヴァをチューニング！ “青き海に漂う小さき竜よ、珊瑚の如く美しき命の源となれ！”シンクロ召喚！ レベル3、シンクロチューナー！ たつのこ！」

　美夏とのデュエルに続いてシンクロ召喚されたたつのこが結衣のフィールドにぴょこんと躍り出る。シンクロモンスターでありチューナーモンスターでもあるこのカードには前回のデュエルで使われなかった隠された効果がある。

「シンクロ召喚されたたつのこは手札のモンスター1体もシンクロ素材にできます！」
「ふぇっ！？ てふだのモンスターさんも？」
「私は手札のレベル4・水属性モンスターの“水精鱗-アビスタージ”にフィールドのレベル3・チューナーモンスターのたつのこをチューニング！ “氷の世界に眠る神槍の名を持つ竜よ！ その咆哮で全てを貫け！” シンクロ召喚！ “氷結界の龍 グングニール”！！」

　炎天下の下、神器の名と氷の身体を持った巨竜が咆哮を上げた。