第68話：不可解なこと　作：光芒

☆TURN03


『私ノターン、ドローダ。サテ、貴様ノエースモンスターハ幻影霧剣ノ効果デ攻撃モ効果ノ発動モ無効化サレタ』
「……だったら何」
『シカシソノモンスターガ存在スル限リ私モダイレクトアタックガ出来ナイ。ナノデ破壊サセテモラオウ。幻影騎士団ブレイクソードノ効果ヲ発動スル！』

　ブレイクソードのかざす壊れかていた大剣にオーバーレイユニットが力を与える。ブレイクソードは自分フィールドのカード1枚を破壊することで相手フィールドに存在するカード1枚を破壊することが出来るのだ。

『オーバーレイユニットヲ1ツ取リ除キ、私ノフィールドノ幻影霧剣ト貴様ノフィールドノ銀河眼の光子竜ヲソレゾレ破壊スル！ 断チ切レ、ブレイクソード！！』

　ブレイクソードの剣に切り裂かれる形で銀河眼の光子竜が破壊される。これで遊希のフィールドはモンスターが1体も存在しないがら空きの状態となってしまった。もしこのまま何も手を打たなければ攻撃力の上がったブレイクソードと自己強化の出来るダンテの攻撃で一気に遊希のライフが削られてしまう。

「っ……！」
（ごめん、銀河眼）
―――この程度……痛くも痒くもない。それよりお前は自分のライフの心配をした方がいいぞ。
（わかってる！）
『ダンテヲ攻撃表示ニ変更シ、オーバーレイユニットヲ1ツ取リ除イテソノ効果ヲ発動。自分ノデッキノ上カラカードヲ3枚墓地ニ送リ、ダンテノ攻撃力ヲ1500ポイントアップサセル！』

彼岸の旅人 ダンテ ATK1000→2500

『ソシテ墓地ノ幻影霧剣と“幻影翼”ノ効果ヲ発動スル』


※幻影翼（ファントム・ウイング）
通常罠
「幻影翼」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1)：フィールドの表側表示モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターの攻撃力は500アップし、このターンに1度だけ戦闘・効果では破壊されない。
(2)：墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「幻影騎士団」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合に除外される。


（見たことのないカードがまた……ダンテの効果で墓地に落ちたやつね）
『墓地ノコノ2枚ヲゲームカラ除外スルデ、墓地ノ幻影騎士団モンスター2体ヲ特殊召喚スル！ 蘇レ、幻影騎士団サイレントブーツ、“幻影騎士団ダスティローブ”！！』


※幻影騎士団ダスティローブ
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻800/守1000
「幻影騎士団ダスティローブ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1)：このカードがフィールドに攻撃表示で存在する場合、フィールドの闇属性モンスター1体を対象として発動できる。このカードを守備表示にし、対象のモンスターの攻撃力・守備力は相手ターン終了時まで800アップする。
(2)：墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「幻影騎士団ダスティローブ」以外の「幻影騎士団」カード1枚を手札に加える。


「不滅の騎士というだけあるわね……あっさりと蘇る」
『ダスティローブノ効果ヲ発動！ 1ターンニ1度、コノカードヲ守備表示ニスルコトデ、フィールドノ闇属性モンスター1体ノ攻撃力・守備力ヲ相手ターンノ終了時マデ800ポイントアップサセル！ アップサセルノハ当然ブレイクソード！』

幻影騎士団ブレイクソード ATK3000→3800 DEF1000→1800

「攻撃力……3800！？」
『ソシテ私ハレベル3ノサイレントブーツトダスティローブデオーバーレイ！ 2体ノモンスターデオーバーレイ・ネットワークヲ構築！ エクシーズ召喚！“虚空ヲ往ク海竜ヨ、次元ト次元ヲ繋グ架ケ橋トナレ！”現レヨ“虚空海竜リヴァイエール”！！』


※虚空海竜リヴァイエール
エクシーズ・効果モンスター
ランク3/風属性/水族/攻1800/守1600
レベル3モンスター×2
(1)：1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、除外されている自分または相手のレベル4以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。


『オーバーレイユニットヲ取リ除キ、リヴァイエールノ効果ヲ発動！ 除外サレテイルレベル4以下ノモンスターヲ自分フィールドニ特殊召喚スル。帰還セヨ、サイレントブーツ！』

　除外されていたサイレントブーツがフィールドに戻る。幻影騎士団モンスターは自身を除外することで幻影と名のついた罠カードを手札に加えることが出来る。
　しかし、その効果を乱発しすぎると墓地の幻影騎士団モンスターが尽きてしまうというデメリットもある。攻撃力こそ低いものの、それらのモンスターを回収するという役割を担うためにはリヴァイエールはこのデッキの弱点を補ったモンスターであると言えるのだ。

『バトルダ！ マズハ、虚空海竜リヴァイエールデダイレクトアタック！“ディメンション・ブレス”！！』

虚空海竜リヴァイエール ATK1800

遊希 LP8000→6200

「っ、この程度……！」
『ソシテ攻撃力ノ上ガッタダンテデ追撃！“スペル・オブ・バーニングアビス”！！』

彼岸の旅人ダンテ ATK2500

遊希 LP6200→3700

「ああっ！！」
『フン、案外呆気ナカッタナ……天都 遊希。幻影騎士団ブレイクソードデダイレクトアタック！！“ブレイク・オブ・ファントム”！！』

幻影騎士団ブレイクソード ATK3800

「遊希サン！！」
「……攻撃力3800のモンスターの攻撃を受けるわけには行かないわ！ リバースカードオープン！！」
『何ッ？』
「速攻魔法、銀河竜翔還！！ 墓地またはゲームから除外されている「ギャラクシーアイズ」と名のついたモンスター1体をフィールドに特殊召喚するわ！ 墓地より舞い戻りなさい、銀河眼の光子竜！！」

　がら空きだった遊希のフィールドには眩い光を放ちながら銀河眼の光子竜が再臨する。これで戦闘の巻き戻しが発生し、ブレイクソードでの攻撃を行うか否かの選択権がターンプレイヤーである髑髏の仮面に与えられる。攻撃力に関してはブレイクソードは光子竜を上回っている。
　しかし、蘇った銀河眼の光子竜には戦闘時に自身と戦闘するモンスターをゲームから除外することが出来る。その効果を発動されてしまえば上がった攻撃力が元の2000に戻されてしまうのはもちろんのこと、オーバーレイユニットまで奪われてしまう。そのため、ここでブレイクソードで攻撃する意味は皆無に等しいのだ。

『バトルフェイズヲ終了。この時、攻撃シタダンテは守備表示トナル』

彼岸の旅人 ダンテ DEF2500

『メインフェイズ2、私ハ墓地ノ幻影騎士団……』

　メインフェイズ2に移り、髑髏の仮面が墓地の幻影騎士団の効果を発動しようとした瞬間、突如口籠る。

「……どうしたの？ カードの効果を発動するならどうぞ」
『……い、いや……私はこれデターンエンドダ』
（……？）


髑髏　LP8000　手札3枚
デッキ：21　モンスター：4（幻影騎士団ブレイクソード ORU:1、彼岸の旅人 ダンテ ORU:0、虚空海竜リヴァイエール ORU:1、幻影騎士団サイレントブーツ）魔法・罠：1　墓地：6　除外：3
遊希　LP3700　手札2枚
デッキ：33　モンスター：1（銀河眼の光子竜）魔法・罠：1　墓地：7　除外：0


☆TURN04


「私のターン、ドローよ！！」

　遊希がデッキからカードをドローする。この時、遊希と光子竜は言葉こそ交わさなくても互いに同じことを考えていた。
　それは前のターン、何故髑髏の仮面は墓地の幻影騎士団モンスターの効果を発動しなかったか、ということについてである。墓地の幻影騎士団モンスターはゲームから除外することでデッキから特定のカードをサーチするなど特定の効果を発動できる。
　ここで確実に勝利を掴むのであれば、デッキから先ほど光子竜の効果を封じた幻影霧剣のような強力な罠カードをサーチするのが普通であるが、髑髏の仮面は前のターンそれすらしなかった。作戦あってのことなのかそれとも慢心か、どちらにせよこの選択は遊希にとって好機になることに違いなかった。

（……プレイングミスかしら。でもこのミスに付け込まない手はないわね）
「私は手札から魔法カード、ギャラクシー・トレードを発動。手札の銀河新星を墓地に送り、デッキから2枚ドロー。そして手札から墓地に送られた銀河新星の効果でデッキからギャラクシーと名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加えるわ。私はハイパー・ギャラクシーを手札に加える」
『ハイパー・ギャラクシー……ソノカードノ強サハ熟知シテイル』
「それはどうも。最もハイパー・ギャラクシーでリリースしたところでそのモンスターたちを一掃出来るわけじゃない。だからこう行かせてもらうわ。私は手札からチューナーモンスター、銀河の戦乙女を召喚！」

　召喚された銀河の戦乙女の効果が発動し、墓地からはギャラクシー・トレードの効果で墓地に送られた銀河新星が蘇る。

「私はレベル4の銀河新星にレベル4のチューナーモンスター、銀河の戦乙女をチューニング！！“銀河に煌めく灼熱の星よ、その力をもってあらゆるものを滅せ。そして何物をも残すな！”シンクロ召喚！ 爆誕せよ、銀河眼の火球竜！！」

　全身に灼熱の炎を宿す銀河眼―――銀河眼の火球竜が爆発と共に咆哮を上げてフィールドに舞い降りた。

『銀河眼の火球竜……カ』
「火球竜のシンクロ召喚に成功した時、その効果を発動！ 自身を含むフィールドのモンスターを全て破壊し、この効果で破壊したモンスターの数×300ポイントのダメージを相手ライフに与えるわ！！ 火球竜、自らの命をもって全てを滅ぼしなさい！“ギャラクシー・エクスプロージョン”！！」

　火球竜の発した炎は敵味方問わず全てのモンスターを焼き尽くす。この効果により、遊希のフィールドの光子竜と火球竜、そして髑髏の仮面のフィールドのブレイクソード、ダンテ、リヴァイエール、サイレントブーツの計6体のモンスターが灰塵へと帰した。

「破壊したモンスターの数は6体。よって1800ポイントのバーンダメージを受けてもらうわよ！」
『クッ……』

髑髏　LP8000→6200

「そして効果で破壊された火球竜の効果。墓地からレベル4以下のギャラクシー2体を攻撃力を2000にして表側守備表示で特殊召喚するわ！」
『ソノ効果ニチェーンシテ破壊サレタブレイクソードトダンテノ効果ヲ発動スル！ チェーン3ノダンテノ効果デ墓地ノスカラマリオンヲ手札ニ戻シ、チェーン2ノブレイクソードノ効果デ墓地ノ幻影騎士団2体ノレベルヲ4ニシテ特殊召喚スル！ 蘇レ、ラギッドグローブ、サイレントブーツ！！』
「せっかく鬱陶しいモンスターを倒したと思ったのに……チェーン1の火球竜の効果で墓地の銀河悪魔と銀河の戦乙女の2体を特殊召喚するわ」

銀河悪魔　ATK2000
銀河の戦乙女 ATK2000

「2体の攻撃力は2000だけど火球竜の効果でモンスターを特殊召喚した場合、私はバトルフェイズを行えずエクストラデッキからモンスターを特殊召喚することはできない。でもエクストラデッキ以外からなら問題ないわ。私は墓地の銀河新星をゲームから除外し、墓地の銀河眼の光子竜を手札に加える。そして銀河眼の光子竜は攻撃力2000以上のモンスター2体をリリースすることで特殊召喚できるわ！ 三度舞い降りなさい、銀河眼の光子竜！！」
『フン、シブトイナ……』
「あんたの幻影騎士団が不死の騎士なら私の銀河眼も不滅のドラゴンよ。私が立ち続けている限り、私と共に戦ってくれる！ 私はカードを1枚セットしてターンエンドよ」


髑髏　LP6200　手札4枚
デッキ：21　モンスター：2（幻影騎士団ラギッドグローブ、幻影騎士団サイレントブーツ）魔法・罠：1　墓地：9　除外：3
遊希　LP3700　手札2枚
デッキ：29　モンスター：1（銀河眼の光子竜）魔法・罠：2　墓地：10　除外：1


☆TURN05


『私ノターン、ドロー！！ 私ハレベル4トナッタラギッドグローブトサイレントブールデオーバーレイ！ 2体ノモンスターデオーバーレイ・ネットワークヲ構築！ エクシーズ召喚！“風ニ舞イシハ有翼ノ狩人、ソノ銃口デ全テヲ撃チ抜ケ！”現レヨ！“鳥銃士カステル”！！」


※鳥銃士カステル
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/風属性/鳥獣族/攻2000/守1500
レベル4モンスター×2
「鳥銃士カステル」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1)：このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示にする。
(2)：このカードのX素材を2つ取り除き、このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す。


『鳥銃士カステルノ効果！ オーバーレイユニットヲ2ツ取リ除キ、銀河眼の光子竜ヲ対象ニ発動！』
「……その効果を使わせると思ったの？ リバースカードオープン！ 速攻魔法、ハイパー・ギャラクシーよ！ 手札を1枚捨て、自分フィールドのギャラクシー1体と相手フィールドの攻撃力2000以上のモンスターをリリースし、デッキ・手札・墓地からギャラクシーアイズ1体を特殊召喚するわ！ 私は光子竜とカステルをリリースし、今リリースした光子竜を再度特殊召喚する！！ これで対象を失ったカストルの効果は不発よ」
『カワサレタカ……ダガ、コレデイイ』

　カステルの効果をリリース・エスケープという形で回避されてしまったが、髑髏の仮面の目的は厄介な魔法であるハイパー・ギャラクシーを使わせてしまうことにあった。
　エクシーズ主体のデッキでは銀河眼の光子竜は強敵であり、戦闘での破壊はかなり困難である。それでもカードの効果で除去するという手段を取るにあたっては有効なのだが、ハイパー・ギャラクシーはそれをするにしても邪魔なカードだったのだ。

『コレデリリースシテ逃ゲルコトハ出来ナイ……ソシテ貴重ナ手札モ1枚失ッタ』
「……でもその代償でフィールドが空になってしまったわね」
『私ハモンスターヲセット。ソシテカードヲ1枚セットシテターンエンドダ』


髑髏　LP6200　手札3枚
デッキ：20　モンスター：1　魔法・罠：2　墓地：12　除外：3
遊希　LP3700　手札1枚
デッキ：29　モンスター：1（銀河眼の光子竜）魔法・罠：1　墓地：12　除外：1


（……やっぱり腑に落ちないわね）
―――私もそう思う。前のターンもそうだが、何処か相手のプレイングには最初のキレがないように思えた。
（相手の手札にはスカラマリオンの効果でサーチしたファーファレルがいる。それだったらそのファーファレルをコストにオーバーレイユニットを使い切ったダンテを“永遠の淑女 ベアトリーチェ”にエクシーズチェンジすることも出来たはずよ）
―――ベアトリーチェが破壊されれば、エクストラデッキからは正規召喚の難しい“彼岸の巡礼者 ダンテ”を特殊召喚することも出来る。火力こそ私に及ばないが、それでも攻撃力は2800。その効果も優秀だ。
（……一体何が起きているというのかしら？）