『雪と光竜と夢幻世界』コラボ・4　作：光芒

「バトルフェイズを終了。この時、除外されている双爆裂龍と光子竜はフィールドに戻る……よね？」
「ええ。除外ゾーンにいる2体はフィールドに帰ってくるわ」

　青眼以上に馴染みのない銀河眼の効果を正確に理解できているかどうか微妙な遊貴は首を傾げながら尋ねる。黒猫と周囲から呼ばれているだけあって、その仕草は猫のように愛らしさを感じさせており、遊希はデュエルの最中でありながらも笑みをこぼしていた。

「メインフェイズ2……といってももう何もしない。ターンエンド」


遊貴　LP1800　手札3枚
デッキ：20　モンスター：2（青眼の双爆裂龍、青眼の精霊龍）魔法・罠：0　墓地：15　Pゾーン：青/赤　除外：1　エクストラデッキ：12（0）
遊希　LP3500　手札2枚
デッキ：29　モンスター：1（銀河眼の光子竜）魔法・罠：0　墓地：10　Pゾーン：青/赤　除外：3　エクストラデッキ：10（0）


☆TURN06（遊希）

（彼女のフィールドには双爆裂龍に精霊龍、そして手札は3枚。1枚はヴェーラーとして、残り2枚はモンスターか通常魔法か……）
「私のターン、ドロー。私も手札から魔法カード、トレード・インを発動するわ。手札の銀河眼の光子竜をコストに2枚ドローするわ」

　遊希のライフも余裕綽々とは言えなくなってきた。相手の青眼も遊希の銀河眼と同じように高い攻撃力を持ったモンスターが揃っている。そのため少しでも隙を見せればこちらが返り討ちに遭ってしまう恐れがあった。現に遊希は竜司ら青眼使いとのデュエルでそうやって苦汁を味わっている。同じ轍は踏まない。それがデュエリストとして強くあるために必要なことなのだ。
　そのため、ここでのドローソースは遊希にとっては文字通り喉から手が出るものだったと言っていいだろう。しかし、そんな遊希に対して遊貴も思い切った行動に出た。

「……そのトレード・インにチェーンして手札の《増殖するG》を発動」
「このタイミングで増殖するG？」

《増殖するG》
効果モンスター
星2/地属性/昆虫族/攻500/守200
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できず、相手ターンでも発動できる。
(1)：このカードを手札から墓地へ送って発動できる。このターン、以下の効果を適用する。●相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、自分はデッキから1枚ドローしなければならない。

チェーン2（遊貴）：増殖するG
チェーン1（遊希）：トレード・イン

「チェーン2の増殖するGの効果はそのまま適用される。そしてトレード・インの効果で2枚ドロー……何のつもりかしら？ このターン私が特殊召喚しなかったらその増殖するGは空撃ちに終わってしまうのよ？」
「……空撃ちにはならない。あなたはこのターン嫌でも特殊召喚する必要があるから」

　遊希の脳裏には前のターンに青き眼の賢士で遊貴が手札に加えたエフェクト・ヴェーラーの存在がちらついていた。エフェクト・ヴェーラーは手札誘発の代表的なカードであるが、このモンスターはレベル1のチューナーモンスターである。青眼の精霊龍は自身をリリースすることで光属性・ドラゴン族のSモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚することができる。これから導き出される答えがわからない遊希ではない。

（そうね……このターンで私は精霊龍を倒さなければならない。次のターン、精霊龍の効果で彼女がレベル7のドラゴン族のSモンスターを特殊召喚すれば、エフェクト・ヴェーラーとの組み合わせで《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》のS召喚ができる。クリスタルウィングは対モンスターに特化されている以上、光子竜でも止められない。そんなモンスターを出されたら私の負けは必至……わかったわ。その誘い、乗ってあげる）

「私のフィールドにフォトンまたはギャラクシーモンスターが存在する時、このカードはリリースなしで特殊召喚できるわ。銀河騎士を召喚。そしてこの方法で召喚に成功した銀河騎士の効果を発動する。銀河騎士は自身の効果で召喚に成功した場合、ターン終了時まで攻撃力を1000下げ、墓地の銀河眼の光子竜1体を守備表示で特殊召喚するわ」
「その効果にチェーンして手札のエフェクト・ヴェーラーの効果を発動」

《エフェクト・ヴェーラー》
チューナー・効果モンスター
星1/光属性/魔法使い族/攻0/守0
(1)：相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

「銀河騎士の効果をターン終了時まで無効にする」
「とかなんとか言った割にあっさり切るのね。でも残念……その効果に更にチェーンして速攻魔法《墓穴の指名者》を発動」

《墓穴の指名者》
速攻魔法
(1)：相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外する。次のターンの終了時まで、この効果で除外したモンスター及びそのモンスターと元々のカード名が同じモンスターの効果は無効化される。

「むぅ……チェーンはない」

チェーン3（遊希）：墓穴の指名者
チェーン2（遊貴）：エフェクト・ヴェーラー
チェーン1（遊希）：銀河騎士

「ではチェーン3の墓穴の指名者により、チェーン2のエフェクト・ヴェーラーを除外。その効果は無効化される。そしてチェーン1の銀河騎士の効果は適用される」

銀河騎士　ATK2800→1800

　遊希のフィールドには銀河騎士の効果で墓地の光子竜1体が蘇る。それに応じて増殖するGの効果が適用されたことで、遊貴はカードを1枚ドローする。

「私は銀河眼の光子竜2体と銀河騎士の3体でオーバーレイ！ 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚！」

　光子竜2体と銀河騎士の3体のギャラクシーモンスターの身体が閃光と化して天空へと飛翔し、星空を割くかのように生じた漆黒の渦に吸い込まれていく。それを見つめる遊希の目の前には巨大な槍のようなものが現れた。
　遊希はその槍を地面から引き抜くと、それをその渦目掛けて思い切り投げた。槍もまた3体のモンスターと同じようにその渦へと吸い込まれていく。そして、その槍を吸い込んだ渦からは身を引き裂かんとばかりに巨大な力が光となって溢れ出す。

「“逆巻く銀河よ。今こそ怒涛の光となりてその姿を現わせ。降臨せよ！ 我が魂の化身！！” 咆哮せよ！《超銀河眼の光子龍》！！」

《超銀河眼の光子龍（ネオギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン）》
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻4500/守3000
レベル8モンスター×3
「銀河眼の光子竜」を素材としてこのカードがエクシーズ召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする。
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールド上のエクシーズ素材を全て取り除き、このターンこのカードの攻撃力は取り除いた数×500ポイントアップする。さらに、このターンこのカードは取り除いた数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。

「銀河眼の光子竜を素材にX召喚に成功した超光子龍の効果を発動。このカード以外のフィールドに表側表示で存在するカードの効果を無効にする！」
「増殖するGの効果で1枚ドロー……その効果にチェーンして青眼の精霊龍の効果を発動」

チェーン2（遊貴）：青眼の精霊龍
チェーン1（遊希）：超銀河眼の光子龍

「青眼の精霊龍をリリースし、EXデッキから光属性・ドラゴン族のSモンスター1体を特殊召喚する。《蒼眼の銀龍》を守備表示で特殊召喚」

《蒼眼の銀龍》
シンクロ・効果モンスター
星9/光属性/ドラゴン族/攻2500/守3000
チューナー＋チューナー以外の通常モンスター1体以上
(1)：このカードが特殊召喚に成功した場合に発動する。自分フィールドのドラゴン族モンスターは次のターンの終了時まで、効果の対象にならず、効果では破壊されない。
(2)：自分スタンバイフェイズ毎に自分の墓地の通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

蒼眼の銀龍　DEF3000

「チェーン1の超光子龍の効果で超光子龍以外のフィールドの全てのカードの効果は無効化される。でも無効にされる前に精霊龍の効果で銀龍を守備表示で特殊召喚すれば、精霊龍を攻撃されての敗北は防げる……そういう算段ね。でも双爆裂龍の効果も無効化されているから、双爆裂龍の効果で超光子龍は除外されない。そして無効にされていることで銀龍の効果も発動しないわ。バトルよ！ 超銀河眼の光子龍で青眼の双爆裂龍を攻撃！ “アルティメット・フォトン・ストリーム”！！」

超銀河眼の光子龍　ATK4500　VS　青眼の双爆裂龍　ATK3000

遊貴　LP1800→300

「くっ……！！ 墓地の復活の福音をゲームから除外して効果を発動。双爆裂龍の破壊を無効にする！」
「……そう言えばまだ残っていたわね。でもこれでもう破壊は防げない。バトルフェイズを終了してメインフェイズ2に移る。私は超銀河眼の光子龍でオーバーレイ！」
「えっ、攻撃力4500の超銀河眼を素材に……」
「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築！ エクシーズ・チェンジ！ “銀河の瞳を持つものよ。冷たき鎧をその身に纏い、抗う者に無慈悲なる鉄槌を下せ！” エクシーズチェンジ！ 天孫降臨！《ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン》！！」

《ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン》
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻4000/守3500
レベル8モンスター×3
このカードは「ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン」以外の自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事ができる。
(1):1ターンに1度、このカードの装備カードを2枚まで対象として発動できる。そのカードをこのカードの下に重ねてX素材とする。
(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

「増殖するGの効果で1枚ドローする」
「……流石に3枚ドローはあげ過ぎたかしら。まあいいわ、ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴンの効果。オーバーレイユニットを1つ取り除き、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象にして発動。そのカードを破壊する。対象は青眼の双爆裂龍よ！」

　鎧を纏ったFA・フォトンの斬撃が、双爆裂龍の二つの首をまとめて引き裂いた。墓地の復活の福音を既に除外してしまっているため、双爆裂龍を守るカードは既にない。

「私はカードを1枚セット。これでターンエンド。でもこのままターンエンドとは行かないわよね？」
「……青眼の精霊龍の効果で特殊召喚された蒼眼の銀龍は破壊される」
「そう。これで本当の本当にターンエンドよ」

遊貴　LP300　手札4枚
デッキ：17　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：17　Pゾーン：青/赤　除外：3　エクストラデッキ：11（0）
遊希　LP3500　手札0枚
デッキ：26　モンスター：1（ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン ORU：2）魔法・罠：1　墓地：14　Pゾーン：青/赤　除外：3　エクストラデッキ：8（0）


☆TURN07（遊貴）

「私のターン、ドロー……これがこのデュエルにおける私の最後のドロー」
「……ええ、そうなるわね。あなたの残りライフは300。その5枚の手札でFA・フォトン・ドラゴンを攻略しつつ、私のライフを0にしなければならない。まあFA・フォトン・ドラゴンを撃破したところで私のライフを0にするには攻撃力4000を上回るモンスターを複数体並べるかしなければいけないけれど」
（そう。全部あの人の言う通り。でもだからと言って……ここでこのカードに頼る時が来るなんて）

　もしこの世界にデュエルモンスターズの神が存在するならば。この時、遊貴はその神に対してなんて演出めいたデュエルが好きな物好きなんだ、と吐き捨てたかった。

「私は《マンジュ・ゴッド》を召喚」

《マンジュ・ゴッド》
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1400/守1000
(1)：このカードが召喚・反転召喚に成功した時に発動できる。デッキから儀式モンスター1体または儀式魔法カード1枚を手札に加える。

「デッキから2枚目の高等儀式術を手札に加える。そして今手札に加えた高等儀式術を発動。デッキから最後の青眼の白龍を墓地に送り、レベル8の《青眼の混沌龍》を儀式召喚！」

《青眼の混沌龍（ブルーアイズ・カオス・ドラゴン）》
儀式・効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守0
「カオス・フォーム」により降臨。このカードは儀式召喚でしか特殊召喚できない。
(1)：このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
(2)：「青眼の白龍」を使用して儀式召喚したこのカードの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの表示形式を変更する。この効果で表示形式を変更したモンスターの攻撃力・守備力は０になる。このターン、このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

「青眼の混沌龍……なるほど、そのモンスターならFA・フォトンであっても苦にしないわね」
「……まだ。手札から魔法カード《龍の鏡》を発動」

《龍の鏡（ドラゴンズ・ミラー）》
通常魔法
(1)：自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

「墓地の青眼の白龍3体をゲームから除外して……融合！《青眼の究極竜》を融合召喚！」

《青眼の究極竜（ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン）》
融合モンスター
星12/光属性/ドラゴン族/攻4500/守3800
「青眼の白龍」＋「青眼の白龍」＋「青眼の白龍」

「……恐れ入ったわ。増殖するGの効果もあったとはいえ、究極竜までも融合召喚するとはね」
（……まだ天都 遊希の態度には余裕が見える。あのセットカードか）
「そして魔法カード《死者蘇生》を発動」

《死者蘇生》
通常魔法（制限カード）
(1)：自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

「墓地の青眼の精霊龍を守備表示で特殊召喚」
「……精霊龍を？」

　遊希のセットカードを考慮しないのであれば、遊貴は青眼の混沌龍と青眼の究極竜の2体でこのデュエルに勝利する。そのためこの死者蘇生による精霊龍の蘇生はあまり必要性を感じられないものだ。精霊龍には2体以上のモンスターを同時に特殊召喚することを封じる効果と墓地発動のカードを無効にできる効果があるため、有用と言えば有用なのだが、それでもこのタイミングで貴重な死者蘇生を消費してまで召喚する意義があるモンスターだろうか。

（プレイングミス？ いや、遊貴ちゃんほどのデュエリストならそんなヘマは踏まない。何か狙いがあるというの……）
「天都 遊希……さん。私はあなたとこのデュエルができたことに感謝しています。たぶん、いや絶対にこのデュエルは忘れない。だから……このデュエルは勝つ。私は―――」





―――融合モンスター、青眼の究極竜―――





―――儀式モンスター、青眼の混沌龍―――





―――Sモンスター、青眼の精霊龍―――





―――Xモンスター、ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン―――










―――これら4体のフィールドのモンスターをゲームから除外する！！―――





「なっ……！？」

　フィールドの中心に大きく開いたのは巨大なブラック・ホール。その大穴に究極竜、混沌龍、精霊龍。そして遊希のFA・フォトン・ドラゴンが吸い込まれていく。四種類の異なる召喚法によってフィールドに顕現した4体のモンスターの魂が生贄に捧げられる。そして目覚めるのは強大なる力を持った星を創った神。










―――特殊召喚……！！《創星神 sophia》っ！！―――










《創星神 sophia（そうせいしん ソピア）》
効果モンスター
星11/闇属性/天使族/攻3600/守3400
このカードは通常召喚できない。自分・相手フィールド上に表側表示で存在する、儀式・融合・シンクロ・エクシーズモンスターをそれぞれ1体ずつゲームから除外した場合のみ特殊召喚できる。
このカードの特殊召喚は無効化されない。このカードが特殊召喚に成功した時、
このカード以外のお互いの手札・フィールド上・墓地のカードを全てゲームから除外する。この効果の発動に対して魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない。




「創星神……sophia……」
「まさかこのカードに助けられるとは思わなかった。今回ばかりは琉枝に感謝してあげる。特殊召喚に成功したsophiaの効果を発動。このカード以外の互いのフィールド、墓地、そして手札を全てゲームから除外する。この効果の発動に対して相手はカードの効果を発動することはできない」
「全てを……除外！？」
「全てを消し去れ―――“リクラフト・ユニバース”―――！！」

　sophiaの力は破壊を経ての再生。その力の前には何人たりとも抗うことはできなかった。

「……見事ね。ここまで引っくり返されちゃうと何も言うことはないわ」

　この時、遊希の中には一つの後悔があった。それは一つ前のターンに遡る。遊希は青眼の双爆裂龍の効果を無効化した上で倒すため、超銀河眼の光子龍をエクシーズ召喚した。しかし、この時遊希が《No.62 銀河眼の光子竜皇》をエクシーズ召喚していたら。光子竜皇の効果を発動して青眼の双爆裂龍に攻撃すれば発生する戦闘ダメージは5600-3000の2600。

（こんな簡単なミスで勝利を取り逃す。落ち着いてデュエルしていたつもりでも、昂る気持ちを抑えられなかった。熱くなってしまっていた。私も……まだまだということね）

　遊希は左手で両目を覆った。一筋の光がその間から零れ落ちた。

「……宮戸 遊貴さん。あなたはさっき私とこのデュエルができて感謝してるって言ったわよね？ 私も……楽しかったわ。さあ、最後のバトルよ！」
「……バトルフェイズ！ 創星神 sophiaでダイレクトアタック！！ “ビヨンド・ジ・エンド”！！」

創星神 sophia　ATK3600

遊希　LP3500→0





＊





「むぅ……取り敢えずこれでも飲んで落ち着いて」

　デュエルの後、遊貴は近くの自動販売機で買ってきた二人分の缶ジュースを手にしたまま遊希の隣に座る。そしてその缶を地面に置くと、隣で膝に顔を埋めている遊希の頭を撫でる。
　デュエルの間は年長者として常にクールに振る舞っていた遊希であるが、遊貴に負けた瞬間。その双眸からはポロポロと大粒の涙が堰を切ったかのように溢れ出してきた。プロとして多大な実績を残してきた遊希であるが、そんな彼女でも勝負事における敗北は幾つになっても悔しいようだった。しかし、悔し涙に塗れるということは、それだけ遊希が真剣だったことの裏返しでもあった。

「あ、ありがとう……ごめんなさいね。年下なのに色々と気を遣って貰って。がっかりしたでしょう？ こんな泣き虫な私で」
「別に……むしろそうやって感情をむき出しにする姿は可愛かった」
「か、可愛い……？ 年下の子にそう言われるのは何か恥ずかしいわね……」

　そう言って頬を赤く染める遊希。思えば遊貴の周りにも多種多様な人物がいるが、年長者はいずれも自分をペットの猫か何かのように扱ってくる者がほとんどで、年齢差をいい意味で感じさせない遊希という人間には自然と好感を持っていた。

「あ、そう言えば……ちょっとお願いしたいことがある」
「……何かしら？」

　そう言って遊貴が出したのは数枚のサイン色紙とサインペン。美夏に手伝いに駆り出されそうになった時、このデュエルで使った青眼デッキと共に彼女の姉である宮戸 琉枝に渡されたものであった。それを渡された時は何に使うかを直接聞かなかった遊貴であるが、琉枝という人物が何を企んでいるのかは妹である自分には痛いほどわかる。

「もしかしてサイン？ プロじゃない私ので良ければ書いてあげるけど……」
（琉枝のことだから多分ネットオークションで転売して臨時収入を期待してると思う。私としては家に先立つものが入るのは歓迎すべきことなんだろうけど）
「お願い。ちゃんと宛名も入れてほしい」

　サインをする際に転売をしないで欲しいと念押しする芸能人やプロアスリートは多い。特に口にはしていないが、遊希も自分のサインがネットオークションで出回っているとしたら悲しむのではないか。しかし、宛名入りのものならばまずそういった場所に出すことはできないだろう。

「これでいいかしら？」
「うん、ありがとう。琉枝も喜ぶ」
（琉枝には悪いけど……これがちょっとした遊希さんへのお礼）

　夜の闇に紛れて寄り添い合う二人の美少女。その時の二人を知るのは、二人を照らす星の光だけであった。










『雪と光竜と夢幻世界』コラボ　　　完



Special Thanks：Ales 様










○後書き
　この話の投稿を以て「アフターストーリー・陽川 千夏編」及び「『雪と光竜と夢幻世界』コラボ」完結となります。
　Alesさん作の『雪と光竜と夢幻世界』はよく読ませて頂いていた作品であり、文章表現やストーリー展開、オリカの設定など、私が小説を書く上で多くのことを参考にさせて頂きました。
　そのため『雪と光竜と夢幻世界』の主人公・宮戸 遊貴と拙作『銀河竜を駆る少女』の主人公・天都 遊希のデュエルを描かせて頂くという企画に賛同頂き、またコラボレーションを快く引き受けて頂けたAlesさんには感謝の言葉もございません。
　ただ、作中において遊貴が使っているデッキは【青眼】ではなく【カラクリ幻獣機】や【U.A.】そしてオリジナルカテゴリーの【メタフィジカ】でしたので、それらのカードを使ったデュエルを描けなかったのが心残りではありますが……。それでも他の作者様のキャラクターをお預かりして小説を書くという中々恵まれない機会を頂けたことは物書きとして活動している者としては物書き冥利に尽きることであります。この場を借りて改めて御礼を申し上げます。

2018.9/12　『銀河竜を駆る少女』　　　光芒


　余談ですが、実はもう一作品ほどコラボレーションをお願いしてみたい、という作品もあったりします。ただ、まだその作者様へは何の申し立ても立てていないため、企画倒れに終わる可能性もありますが……






○おまけのおまけ～遊希と遊貴のデュエルになったきっかけ～
※台本形式です。


遊希「……」
美夏「はい、あたしの勝ちっすね。遊希さん前と比べてだいぶゲーム上手くなりましたけど、流石に相手が悪いですよ」
遊希「……もう一回」
綾香「ちょっと遊希いつまでゲームしてるのよ！ 早く温泉行きたいんだけど！」
遊希「やぁだもう一回遊んでから～！」
美夏「もう一回遊んでからー！」
遊貴「むぅ……2期の宣伝動画が低評価だらけのアニメネタはNG」
詩織（それは言わなければバレないのでは……）
千夏（遊希も遊希でだいたい負けず嫌いよね）
エヴァ（プロなんてみんなそんなものデス）


美夏「遊希さん……諦めも肝心ですよ？」
遊希「……ねえ美夏」
美夏「？」
遊希「今までのゲームは言わばあなたのホームグラウンドよね。だったら……私のホームグラウンドでも戦いましょう？」
美夏「」


美夏「」
遊貴「むぅ……言わんこっちゃない」
美夏「33-4……いや4点すら取れずに負けた……遊貴、親友のあたしの敵討ちを……」
遊貴「むぅ」