第9話：決着！ 入学デュエル　作：光芒

☆TURN07


（天都 遊希のフィールドには攻撃力3000の銀河眼の光子竜に2枚の伏せカード。それに対して私のフィールドには守備表示のシュンゲイとヘイカンの2体。次のドローでチューナーモンスターを引けなければ私の負けはほぼ決定的となる。このドローに賭けるしかない！）

　綾香はカードをドローしようとする。しかし、その手が震えて中々カードを引くことができない。

（な、何よ私……ビビってるの？ あいつを前にして？ あいつに負けるのが……パパの前で負けるのを恐れてるって言うの？）
―――遊希、あの少女……
（……黙って待ちましょう）

　心の中で弱い自分と強い自分が戦っている。綾香はそれをまじまじと感じていた。勝つか負けるかはこのドロー次第。本物のデュエリストならここで自分が思い描いた通りのカードを引けるのだろう。しかし自分はまだ一流はおろか二流ですらないことは他の誰よりも理解していた。
　自分は偉大な父の元に生まれた平凡なデュエリスト。それでも父を越えたい、父に認められたいがためにデュエリストの道を選んだ。

（……私は負けないっ！）「ドロー！！」

　綾香は今ドローしたカードを確認する。引いたカードは望んだカードではなかった。しかし、まだ希望は残されている。

「私は魔法カード“竜星の軌跡”を発動！」


※竜星の軌跡
通常魔法
「竜星の輝跡」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1)：自分の墓地の「竜星」モンスター3体を対象として発動できる。そのモンスター3体をデッキに戻してシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。


「私は墓地のシュンゲイ、ヘイカン、ビシキの3枚をデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー！！」

　次の瞬間、綾香の顔に笑顔が戻る。

「望み通りのカードは引けたかしら？」
「ええ、このデュエル貰ったわ！ 私はチューナーモンスター、“光竜星-リフン”を召喚！」


※光竜星-リフン
チューナー・効果モンスター
星1/光属性/幻竜族/攻0/守0
「光竜星－リフン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「光竜星－リフン」以外の「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「竜星」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合除外される。


「チューナーモンスター……シンクロ召喚ね！」
「そう！ そしてこれがこのデッキの切り札！ 私はレベル4のシュンゲイ、レベル3のヘイカンに、レベル1のチューナーモンスター、リフンをチューニング！ 天空に輝く星々の光、今その力を集わせ高貴なる光の竜を呼び覚ませ！ シンクロ召喚！！ 降臨せよ、レベル8！ “輝竜星-ショウフク”！！」


※輝竜星-ショウフク
シンクロ・効果モンスター
星8/光属性/幻竜族/攻2300/守2600
チューナー+チューナー以外の幻竜族モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚に成功した時、このカードのS素材とした幻竜族モンスターの元々の属性の種類の数まで、フィールドのカードを対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す。
(2):1ターンに1度、自分フィールドのカード1枚と自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのフィールドのカードを破壊し、その墓地のモンスターを特殊召喚する。


「輝竜星-ショウフク……竜星のシンクロモンスターか……でもそのモンスターの攻撃力じゃシュンゲイの効果を足しても銀河眼を越えることは出来ないわ」
「だったら効果で銀河眼を退かすだけよ！ シンクロ召喚に成功したショウフクの効果を発動！このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカードのシンクロ素材とした幻竜族の元々の属性の種類までフィールド上のカードを選択して持ち主のデッキに戻す！」
「デッキバウンス？ 元々の属性の数ということは……」
「ショウフクの素材になったのは炎・地・光属性のモンスター。よってフィールド上のカードを3枚まで持ち主のデッキに戻せる！ 私が戻すのはあなたのフィールドの3枚全てよ！！」

　ショウフクの放った光の波動によって、遊希のフィールドの光子竜、ならびに2枚の伏せカードが全てデッキバウンスされてしまった。これにより遊希のフィールドはがら空きになってしまった。

「そしてシュンゲイを素材にしたモンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップし、ヘイカンを素材にしたモンスターは戦闘では破壊されない」

輝竜星-ショウフク ATK2300→2800　DEF2600→3100

「バトルフェイズに移行！ ショウフクでダイレクトアタック！ “竜星昇天波”！」

輝竜星-ショウフク ATK2800

遊希 LP7500→4700

「っ……」
「私はこれでターンエンドよ！」


綾香　LP2300　手札2枚
デッキ:30　モンスター:1（輝竜星-ショウフク）　魔法・罠:2（竜星の具象化）　墓地:7　除外:0
遊希　LP4700　手札3枚
デッキ:32　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:9　除外:2


☆TURN08


「ふぅ……私のターン、ドローよ」

　先程までの優勢が一転、ショウフクのバウンス効果でフィールドを一掃されてしまった遊希。もし次のターンに攻撃力1900以上、つまり炎竜星-シュンゲイ以上の攻撃力を持つモンスターをフィールドに出されてしまえば自分のライフは尽きてしまう。しかしこの状況においても遊希の心に何故か動揺は無かった。

「その2枚のカードが邪魔ね……じゃあ“大嵐”を発動」


※大嵐（制限カード）
通常魔法
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。


　大嵐によって綾香のフィールドの魔法・罠ゾーンのカードが全て破壊される。

（もう片方は……見たこと無いカードだけど、幻竜族に関するカードかな？）
（“竜魂の幻泉”が……でも攻撃力の上がったショウフクを簡単に倒せるカードなんて……）
「まだ足りないわ。私はこれでターンエンドよ」


綾香　LP2300　手札2枚
デッキ:30　モンスター:1（輝竜星-ショウフク）　魔法・罠:0　墓地:9　除外:0
遊希　LP4700　手札3枚
デッキ:31　モンスター:0　魔法・罠:0　墓地:10　除外:2


☆TURN09


（天都 遊希はモンスターを出さなかった！ このドローでモンスターを引ければ！！）
「私のターン、ドロー！」
「どう？ モンスターは引けたかしら？」
（“風竜星-ホロウ”……！ このカードじゃ決めれない……！）
「メインフェイズ1を終えてバトルフェイズに移行！ ショウフクでダイレクトアタック！！」

輝竜星-ショウフク ATK2800

遊希 LP4700→1900

「どう！ これで後が無くなったわよ！ 私はモンスターをセットしてターンエンドよ」


綾香　LP2300　手札2枚
デッキ:29　モンスター:2（輝竜星-ショウフク）　魔法・罠:0　墓地:9　除外:0
遊希　LP1900　手札2枚
デッキ:31　モンスター:0　魔法・罠:1　墓地:10　除外:2


☆TURN10


「私のターン、ドロー」
―――遊希。
（ええ）
「通常魔法、ギャラクシー・トレードを発動するわ。この効果で私は手札の“ギャラクシー・サーペント”を墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする」

　ピンチの状況で大嵐、そして反撃のターンにドロー加速カードとデュエリストの需要に合わせたカードを引いてくる遊希。そしてギャラクシー・トレードによるドローですらも遊希にとってはこのフィールドを再び覆すトリガーと化していた。

「ショウフクの効果で劣勢をひっくり返したのは流石だったわ。さすがあの星乃 竜司の娘さん、というだけあるわね」
「……何が言いたいの？」
「遠回しに言っても面倒なだけだからはっきり言うわ。これがラストターンよ！」
「えっ！？」
「相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しないため、銀河悪魔を特殊召喚する！そして銀河悪魔の効果でデッキから銀河新星を手札に加える。そして今加えた新星を墓地に送ることでこのカードのレベルを4つ上げるわ！」

銀河悪魔　星4→星8

「さらに新星が墓地に送られたことで、私はデッキから「ギャラクシー」と名のついた魔法・罠カード、2枚目のギャラクシー・トレードを手札に加える。そして自分フィールド上に“ギャラクシー”と名のついたモンスターが存在する時、このカードは手札から特殊召喚できるわ。現れなさい“銀河の雷光竜”！！」


※銀河の雷光竜（ギャラクシー・リンドブルム/オリジナルカード）
効果モンスター
星5/光属性/ドラゴン族/攻2200/守800
(1):自分フィールド上に「銀河の雷光竜」以外の「ギャラクシー」と名のついたモンスターが存在する時、このカードは手札から表側守備表示で特殊召喚できる。
(2):このカードが特殊召喚に成功した時、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカード以外の「ギャラクシー」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このカードのレベルを選択したモンスターと同じにする。


「レベル5のモンスター？ それじゃエクシーズ召喚は出来ないわよ！」
「特殊召喚に成功した時、雷光竜の効果を発動。雷光竜は自分以外のギャラクシーのレベルをコピーできる。よって雷光竜のレベルは銀河悪魔の現在のレベルと同じ8になる」

銀河の雷光竜　星5→星8

「そして、レベル8となった銀河悪魔と銀河の雷光竜でオーバーレイ！ 2体のギャラクシーモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！ エクシーズ召喚！ 現れなさい、ランク8！ 銀河眼の竜騎士！！」

　2体のモンスターのレベル調整効果を活かしてランク8の銀河眼の竜騎士をエクシーズ召喚する遊希。しかし、銀河眼の竜騎士の攻撃力は2800でありショウフクと同値。さらに銀河眼の竜騎士の効果でショウフクよりも攻撃力の高いギャラクシーモンスターを召喚しようにも、他のギャラクシーモンスターが存在しないため、この状態ではデュエルに決着を着けることが出来ないのだ。

「まさか相討ち狙いってことはないでしょうね？ 幸いにも竜星の具象化が無いからこっちも後続を呼ぶことは出来ないけど、墓地のリフンは竜星が破壊された時に自己蘇生が可能よ？」
「相討ち？ そもそもヘイカンを素材にしたショウフクは戦闘では破壊されないし、仮に破壊出来たとしてもそんな湿気たことするわけないじゃない？」

　遊希は虚空を見上げてクスリと笑う。その笑みから光子竜は遊希の意図を汲み取った。

―――待て遊希。火球竜のみならずお前はあのカードまで使うのか？
（いけない？）
―――私や火球竜を使ったことで許容量ギリギリの負担が来ている。さらにあのカードを使うとお前の身体は……！
（悪いけど、私、このデュエル負けたくないのよね）
「私は自分フィールド上の「ギャラクシーアイズ」と名のついたエクシーズモンスターで……オーバーレイ・ネットワークを再構築！！」
「オーバーレイ・ネットワークを再構築！？」

　上空に現れた光の渦に飛び込んだ銀河眼の竜騎士の体が巨大かつ厳ついドラゴンのものへと変化していく。一部のエクシーズモンスターの中には自分より低いランクを持ったエクシーズモンスターや特定の名を持つエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚出来るモンスターも存在する。今から遊希が召喚しようとするモンスターもそのうちの1体であった。

「銀河の瞳を持つものよ、冷たき鎧をその身に纏い、抗う者に無慈悲なる鉄槌を下せ！ エクシーズチェンジ！ 天孫降臨！ “ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン”！！」


※ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン
エクシーズ・効果モンスター
ランク8/光属性/ドラゴン族/攻4000/守3500
レベル8モンスター×3
このカードは「ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン」以外の自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事ができる。
(1):1ターンに1度、このカードの装備カードを2枚まで対象として発動できる。そのカードをこのカードの下に重ねてX素材とする。
(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。


「攻撃力……4000！？ で、でもショウフクとの差は1200。まだ私のライフを0にすることは出来ないわ！」
「本当にそうかしら？ バトルフェイズ！ FA・フォトン・ドラゴンで輝竜星-ショウフクを攻撃！ “壊滅のフォトン・ストリーム”！！」

ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン ATK4000 VS 輝竜星-ショウフク ATK2800

「ダメージステップ開始時に手札の“オネスト”の効果を発動！」


※オネスト（準制限カード）
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1100/守1900
(1):自分メインフェイズに発動できる。フィールドの表側表示のこのカードを手札に戻す。
(2):自分の光属性モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。


「オっ、オネスト！？ そんなこんなタイミングで……！」
「オネストの効果により、FA・フォトン・ドラゴンにショウフクの攻撃力が加算される！ さあ、受けなさい！！」


ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴン ATK4000→6800 VS 輝竜星-ショウフク ATK2800


綾香 LP2300→0


「―――っ！」

　FA・フォトン・ドラゴンの攻撃を受けてライフが0になった綾香の身体が大きく吹っ飛ぶ。FA・フォトン・ドラゴンは精霊のカードでは無い。しかし、光子竜を始めとしたギャラクシーモンスターと精霊を宿す遊希の力に共鳴したため、力が逆流し綾香に危害を加えてしまったのだ。

「ふふ……私の勝ち……ね……」

　ミハエルをはじめとした教職員が綾香の元に駆け寄る。それと時を同じくして遊希の身体もその場に力なく崩れ落ちた。