第60話：猛攻！ スピードロイド　作：光芒

「きゃあっ！？」

　魔剣ダーマの効果でバーンダメージを受けた遊希は思わず悲鳴を上げる。普段の遊希を知っているエヴァはわずか500のダメージを受けたとは思えない遊希の悲鳴に驚きの様子を隠せないようだった。

「遊希サン……？」
「な、なんでもないわ。ちょっと驚いただけよ」

　遊希から孝輔の介抱を任されたエヴァは心配そうにデュエルをする遊希を見つめていた。そんな彼女に悟られまいと遊希は何事も無かったかのように気丈に振る舞おうとする。しかし、遊希の様子がおかしいことを外からは見抜けずとも、内からは筒抜けであった。

―――遊希。何があった？
（……あのモンスターの効果でダメージを受けた時、身体に物凄い痛みが走ったのよ。こんなの初めてだわ）
―――何だと？

　光子竜は対峙する魔剣ダーマに精霊の力で探りを入れてみる。しかしあのモンスター自体は精霊でもなんでもないただのモンスターだった。恐らく精霊の力でなくとも相手にリアルダメージを与えられるような仕掛け、もしくは何かが存在するのだろう。

―――……私がこのデュエルの間に正体を突き止める。それまで耐えてくれ。
（わかったわ）

　遊希は光子竜相手にはそう強がってみるものの、500のダメージであれだけの痛みを感じるのであれば、モンスターのダイレクトアタックなどを受けてしまったらどれほどの衝撃が身体に走るのか。
　孝輔をはじめ、ここに倒れている他の学生たちもこのデュエルで傷を負って皆倒れていってしまったのだろう。精霊をその身に宿す者として相手をデュエルで傷つけてしまわないかどうか遊希もエヴァも常に細心の注意を払ってきていた。
　しかし今の目の前にいる不審者からは相手を傷つけることを恐れる、という様子が全く伝わってこない。むしろ遊希がダメージを受けて苦しむ姿を見てもなお歯を見せている有様だった。

『マダマダイクヨォ……アタシハ手札カラ“ガスタの神裔 ピリカ”ヲ召喚！』


※ガスタの神裔 ピリカ
効果モンスター
星3/風属性/サイキック族/攻1000/守1500
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地から風属性のチューナー1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
この効果を発動したターン、自分は風属性以外のモンスターを特殊召喚できない。「ガスタの神裔 ピリカ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。


『ピリカノ効果デ墓地ノ三つ目のダイスヲ特殊召喚！ ソシテレベル3ノ“ガスタ”ピリカにレベル3の三つ目のダイスヲチューニング！ “ソヨ風ノ名ヲ持ツ戦士ヨ、光ノ兵器ヲ身ニ纏イ、聖域ヲ侵ス敵ヲ殲滅セヨ！”シンクロ召喚！ 吹キ荒ベ！“ダイガスタ・スフィアード”！！』


※ダイガスタ・スフィアード
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/サイキック族/攻2000/守1300
チューナー＋チューナー以外の「ガスタ」と名のついたモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、自分の墓地の「ガスタ」と名のついたカード1枚を選択して手札に加える事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「ガスタ」と名のついたモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
また、このカードは戦闘では破壊されない。


「1ターンに2回のシンクロ召喚ですって……」
『シンクロ召喚ニ成功シタスフィアードノ効果発動！ 墓地ノ「ガスタ」ト名ノツイタカード1枚ヲ手札ニ加エル！ 今シンクロ素材ニシタピリカヲ戻ス！ ソシテアタシハカードヲ2枚セットシテターンエンドォ！！』


不審者　LP8000　手札2枚
デッキ：33　モンスター：2（HSR魔剣ダーマ、ダイガスタ・スフィアード）魔法・罠：2　墓地：3　除外：0
遊希　LP7500　手札5枚
デッキ：40　モンスター：0　魔法・罠：0　墓地：0　除外：0


☆TURN02


（っ……先攻1ターン目でシンクロモンスターが2体も……まずはスフィアードをなんとかしなければ）
「私のターン、ドロー！ 手札の光属性モンスター・銀河新星を墓地に送り、銀河戦士の効果を発動！ このカードを手札から表側守備表示で特殊召喚！ そして手札から墓地に送られた銀河新星の効果でデッキからギャラクシーと名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。そしてそれにチェーンして銀河戦士が特殊召喚に成功した時、デッキからギャラクシーと名のついたモンスター1体を手札に加えるわ！」

　遊希はチェーン2の銀河戦士の効果で銀河の雷光竜を、チェーン1の銀河新星の効果で魔法カード、銀河遠征をそれぞれ手札に加える。

「自分フィールドにギャラクシーと名のついたモンスターが存在する時、銀河騎士はリリースなしで召喚できる！ この効果で召喚に成功した時、銀河騎士の攻撃力はターン終了時まで1000ポイントダウンする」

銀河騎士 ATK2800→1800

「そして手札から魔法カード、銀河遠征を発動！ デッキからレベル8の銀河眼の光子竜を表側守備表示で特殊召喚！ そして手札から銀河の雷光竜を特殊召喚！ 雷光竜が特殊召喚に成功した時、レベルを変更する効果があるけど今回は使わないわ」

　これで遊希のフィールドにはレベル8のモンスターとレベル5のモンスターがそれぞれ2体ずつ存在することとなる。遊希としてはやはり戦闘で破壊できず、反射ダメージを与える効果を持っているスフィアードを戦闘以外の方法で処理できるモンスターが召喚したかったのだ。

「私はレベル5の銀河戦士と銀河の雷光竜でオーバーレイ！ 2体の光属性モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！ エクシーズ召喚！“天空を守護する星の騎士よ、その力をもって闇を祓い降臨せよ！”ランク5！“セイクリッド・プレアデス”！」


※セイクリッド・プレアデス
エクシーズ・効果モンスター
ランク5/光属性/戦士族/攻2500/守1500
光属性レベル5モンスター×2
(1)：1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す。この効果は相手ターンでも発動できる。


「更に私はレベル8の銀河眼の光子竜と銀河騎士でオーバーレイ！ 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築！ エクシーズ召喚！ 降臨せよ、神竜騎士フェルグラント！！」

　1ターンでシンクロモンスターを2体並べた不審者に負けじと、遊希もまたエクシーズモンスター2体を展開する。

『フフフ……イイモンスターヲ持ッテルジャナイ……サア、来ナヨォォ……！』
「セイクリッド・プレアデスの効果を発動！ 1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除き、フィールドのカード1枚を対象として発動！ 選択したカードを持ち主の手札に戻すわ。対象はダイガスタ・スフィアードよ！」
『ダッタラソノ効果ニチェーンシテリバースカードヲ発動！ 罠カード、ブレイクスルー・スキル！ コレデプレアデスノ効果ハ無効ダ！』
「……通らなかったか。だったらスフィアードを対象にフェルグラントの効果を発動！ スフィアードの効果を無効にし、このカードの効果以外の効果を受けなくするわ！ そしてバトル！ プレアデスでダイガスタ・スフィアードを攻撃！“セイクリッド・スラッシュ”！！」

セイクリッド・プレアデス ATK2500 VS ダイガスタ・スフィアード ATK2000

不審者 LP8000→7500

『キヒヒヒッ！ 痛イ！ 痛ァイ！！』

　不審者はダメージを受けてもなお狂気的な笑みを浮かべる。しかし、これで相手も攻撃によってライフが減った時にリアルダメージを受けることがわかった。

「まだよ！ 神竜騎士フェルグラントでHSR魔剣ダーマを攻撃！！」

神竜騎士フェルグラント ATK2800 VS HSR魔剣ダーマ ATK2200

『ソノ攻撃ハ迂闊ダヨォ！ リバースカードオープン！ フェルグラントヲ対象ニ速攻魔法、禁じられた聖槍ヲ発動！ フェルグラントノ攻撃力ハ800ポイントダウン！』

神竜騎士フェルグラント ATK2800→2000

「禁じられた聖槍！？ しまった……」
『返リ討チダァ！ 魔剣ダーマ！！』

神竜騎士フェルグラント ATK2000 VS HSR魔剣ダーマ ATK2200

遊希 LP7500→7300

「っ……200のダメージでもこんな痛みが……私はカードを1枚セットしてターンエンドよ」


不審者　LP7500　手札2枚
デッキ：33　モンスター：1（HSR魔剣ダーマ）魔法・罠：0　墓地：4　除外：0
遊希　LP7300　手札2枚
デッキ：36　モンスター：1（セイクリッド・プレアデス ORU:1）魔法・罠：1　墓地：6　除外：0


☆TURN03


『アタシノタァーン、ドロォー！ アタシハ手札カラ、ガスタの神裔 ピリカヲ召喚！ ソノ効果デ墓地ノ風属性チューナー、三つ目のダイスヲ特殊召喚！ ソシテピリカニ三つ目のダイスヲチューニング！ 現レヨ、ダイガスタ・スフィアード！！』
「せっかくバウンスしたのに……セイクリッド・プレアデスの効果で処理したいけど……」

　不審者の墓地には前のターン発動したブレイクスルー・スキルがあった。ブレイクスルー・スキルは自分のターンのメインフェイズに墓地から除外することでモンスターの効果を無効にすることが出来るのだ。
　残しておいてもいいことが無いため、早めに使わせてしまいたいと思う反面、プレアデスのバウンス効果の使いどころを見極めなければならなかった。

『スフィアードノ効果デ墓地ノピリカヲ手札ニ戻ス！ ソシテメインフェイズ1カラバトルフェイズ！ ダイガスタ・スフィアードデセイクリッド・プレアデスヲ攻撃！“ガスタ・アゲインスト・ウインド”！！」

ダイガスタ・スフィアード ATK2000 VS セイクリッド・プレアデス ATK2500

『ダイガスタ・スフィアードハ戦闘デハ破壊サレナイ！ ソシテコノ時生ジタ戦闘ダメージハ相手ガ受ケルノサ！！』

遊希 LP7300→6800

「ぐはっ……！！」
―――遊希、大丈夫か！？
（……なんとかね。でもこのまま受け続けるとやばいかも）
『アタシハ魔剣ダーマヲ守備表示ニ変更。カードヲ1枚セットシテターンエンド！！』


不審者　LP7500　手札2枚
デッキ：32　モンスター：2（HSR魔剣ダーマ、ダイガスタ・スフィアード）魔法・罠：1　墓地：4　除外：0
遊希　LP6800　手札2枚
デッキ：36　モンスター：1（セイクリッド・プレアデス ORU:1）魔法・罠：1　墓地：6　除外：0


☆TURN04


「っ……私のターン、ドロー！！」

　遊希のライフはまだまだ余裕があると言って良かった。しかし、数値以上にこのデュエルで受ける現実のダメージが大きく、またエヴァとのデュエルからまだ数時間しか経っていなかったため、完全に体力が回復しきっていなかった。そのため傍から見るエヴァからしてみれば何故遊希がここまで辛そうにデュエルをしているのか理解出来ずにいた。

「私はセイクリッド・プレアデスの効果を発動！ オーバーレイユニットを1つ取り除き、フィールドのカード1枚を選択して持ち主の手札に戻す！ 今度こそ戻させてもらうわ、ダイガスタ・スフィアード！！」

　プレアデスの放った光によってダイガスタ・スフィアードの姿が消える。これで遊希を阻むものは守備表示となっていた魔剣ダーマのみとなった。

「さらに私はランク5のセイクリッド・プレアデスをエクシーズチェンジ！ 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築！ エクシーズ召喚！ 雷雲を切り裂き飛来せよ！“迅雷の騎士ガイアドラグーン”！！」


※迅雷の騎士ガイアドラグーン
エクシーズ・効果モンスター
ランク7/風属性/ドラゴン族/攻2600/守2100
レベル7モンスター×2
このカードは自分フィールド上のランク5・6のエクシーズモンスターの上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。


「このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与えるわ！ 魔剣ダーマを守備表示にしたのが仇になったわね！ バトルフェイズ！ ガイアドラグーンで魔剣ダーマを攻撃！“雷鳴槍殺（ライトニング・シェイバー）”！！」

迅雷の騎士ガイアドラグーン ATK2600 VS HSR魔剣ダーマ DEF1600

不審者 LP7500→6500

『アアアアッ！！ 貫通ダメージ……痛イイイイッ！！』
「……表情と台詞が合っていないわよ。カードを1枚セットしてターンエンド」


不審者　LP6500　手札2枚
デッキ：32　モンスター：0　魔法・罠：1　墓地：5　除外：0
遊希　LP6800　手札2枚
デッキ：35　モンスター：1（迅雷の騎士ガイアドラグーン ORU:1）魔法・罠：2　墓地：6　除外：0


☆TURN05


『イイネイイネ！ デュエルハコウデナクチャ！ アタシノターン、ドロー！ アタシハ手札カラ通常魔法“スピードリバース”ヲ発動！』


※スピードリバース
通常魔法
(1)：自分の墓地の「スピードロイド」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
(2)：墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「スピードロイド」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。


『墓地ノSRベイゴマックスヲ特殊召喚！ ソシテベイゴマックスノ特殊召喚ニ成功シタ時ニ効果発動！ デッキカラ「スピードロイド」ト名ノツイタモンスター1体ヲ手札ニ加エル！ 加エルノハモチロンタケトンボーグ！！』
「タケトンボーグ……最初に見せたコンボね……」
『ソノトオリィ！ ソシテタケトンボーグヲ特殊召喚シ、リリース！ デッキカラSRチューナー、“SR赤目のダイス”ヲ特殊召喚！」


※SR赤目のダイス
チューナー・効果モンスター
星1/風属性/機械族/攻100/守100
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、「SR赤目のダイス」以外の自分フィールドの「スピードロイド」モンスター1体を対象とし、1～6までの任意のレベルを宣言して発動できる。そのモンスターはターン終了時まで宣言したレベルになる。


『コノカードノ特殊召喚ニ成功シタ時ニ赤目のダイス以外ノスピードロイドノレベルヲ1～6マデノイズレカニカエルコトガ出来ル！ ケド今ハ使ワナイヨォ……』
「つまりレベル4のシンクロ召喚ってことかしら……」
『フヒヒ、半分正解ィ！ アタシハ手札カラチューナーモンスター、“幻獣機オライオン”ヲ召喚！！』


※幻獣機オライオン
チューナー・効果モンスター
星2/風属性/機械族/攻600/守1000
自分のメインフェイズ時に墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。手札から「幻獣機」と名のついたモンスター1体を召喚する。
自分フィールド上にトークンが存在する限り、このカードは戦闘及び効果では破壊されない。
また、このカードが墓地へ送られた場合、「幻獣機トークン」（機械族・風・星3・攻/守0）1体を特殊召喚できる。「幻獣機オライオン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。


「幻獣機！？」
『アタシハレベル3ノベイゴマックスニレベル2ノオライオンヲチューニング！ “ソノ躍動感カラ溢レルハ、剣劇ノ魂！ 所狭シト暴レ回リ世界ヲ切リ刻メ！”シンクロ召喚！“HSRチャンバライダー”！！」


※HSRチャンバライダー
シンクロ・効果モンスター
星5/風属性/機械族/攻2000/守1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分は「HSRチャンバライダー」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
(1)：このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。
(2)：このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。このカードの攻撃力は200アップする。
(3)：このカードが墓地へ送られた場合、除外されている自分の「スピードロイド」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。


　現れたのは剣のような乗り物に乗った人形のようなモンスターだった。孝輔をはじめ多くのデュエリストを葬った不審者の猛攻が遊希を追い詰める。