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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第七十五話「D1グランプリへの道しるべ」

第七十五話「D1グランプリへの道しるべ」 作:イクス

第七十五話「D1グランプリへの道しるべ」


D1グランプリへの参加を決めた、その翌日。遊太の家に届け物が来た。
「お届け物でーす!」
「来た来た~! 来たよ、ユイ!」
「ハイ!」
二人に届いた荷物の中身。それは水色のデュエルディスクと、腕時計のようなモノがそれぞれ二つずつ。
中に入っていた紙には、こう書かれていた。

D1グランプリに参加していただき、ありがとうございます。このD1グランプリ専用のデュエルディスクとウォッチは、大会に参加する上で必要になりますので、なくさないでください。
まず一次予選として、このデュエルディスクとウォッチを持っている人を探して、デュエルを行ってください。
そのデュエルに勝利したりすると、ディスクと連動しているウォッチが計算し、ポイントを出してくれます。デュエル内容が悪いと減点されることもあるので、注意してください。
そのポイントを集め、一週間以内に30ポイント集めることができれば、晴れて2次予選へと進むことができます。
まずは皆さん、頑張ってポイントをゲットしましょう。


その紙を読み終わった後、父と母にいってきまーすと言って、ディスクとウォッチをつけてゲームショップ烏間へとやってきた遊太とユイ。
「みんなー! これ持ってるー?」
右腕のウォッチ、左腕のディスクを友人に見せる遊太。みんなも当然、腕に両方つけていた。菊姫、知多、真薄。そのついでに。
「あれ、カリンちゃん。珍しいね、こっちに来てるなんて」
「ええ。たまには遊太君たちと一緒に……と思いまして」
「それにコジロー君も!」
「うん! ボクはこの夏、お姉ちゃんとずっと一緒にいるんだぞ!」
そして、いつもの菊姫の取り巻きである岩ノ井と鏡山がいた。
コジローと菊姫の取り巻き以外は、全員デュエルディスクとウォッチを持っていた。
「よーし! みんな集まっているわね!」
ショップの中から出てきた、烏間さん。彼女はディスクやウォッチをつけていないが何やら張り切っているようである。
「烏間さん、どうしたの?」
「いや、今日はね。みんなD1グランプリに出る訳でしょ? その手伝いを、私がしようと思ってね」
「手伝い?」
「ええ。プラクサスじゃみんなは優れたデュエリストだけど、その他の地域じゃどうかと思ってね……」
「確かに、プラクサスのデュエリストとは一通り戦ったけど、他の地域はまだ……」
「でしょ? だからね、今回はみんなにもデュエリストとしての実力を更に高めてもらうために、今回はいろいろと用意していたの」
そうして、ショップを閉めて裏のガレージからワゴン車を動かした烏間。
「さてとりあえず……乗ってみんな!」
「乗ってと言われても、どこへ行くのですか?」
「ロカクタウンよ!」
「どこじゃん?」
「プラクサスシティの西にある、山奥の田舎よ」
「え? 田舎?」
「そんなとこじゃ、強いのはあんまりいねーんじゃないかあ?」
「どうかしらね? とりあえず来てもらうわ」
とりあえず、全員(遊太・ユイ・菊姫・真薄・知多・カリン・岩ノ井・鏡山・コジロー)そのワゴンに乗り、そのロカクタウンへと行くことにしたのだ。


そうして、車に揺られてしばらくした後、目的地であるロカクタウンへとやってきた。
田んぼやあぜ道が多く、家や建物もまばらで田舎という感じが色濃く出ていた。
「ここがロカクタウンなのか~?」
「結構な田舎じゃん!」
「ホントにこんなトコに、強いデュエリストがいるのかよ~?」
「いるのよ、強さに場所は関係ないわ」
あぜ道をワゴンで走っていると、途中で大八車を引いているおばあさんがいた。その大八車には、山のように段ボールが乗っているが、どこかに引っかかっているのか全然前に進んでない。それを見て、烏間は車を止める。
「どしたの、烏間さん?」
「いや、ちょっとね……知り合いよ。オバア!」
「あら、雛姫ちゃん。こっちに来るのは久々だねえ」
「お、オバア?」
「知り合いですか?」
「私のカードショップ経営を手伝ってくれた、大先輩よ」
「だ、大先輩!? こんなおばあさんが!?」
烏間が車から降りると同時に、遊太たちも車から降りる。
「おやおやおやおや、今日はやけに大所帯だけど、なんかあったのかい?」
「久々に、オバアのとこのデュエリストとデュエルしてもらいたい子たちがいてね。それがこの子たちよ」
「へえ~、あたしんとこの連中とねえ……あの子たちもD1グランプリに向けて、いろいろと頑張っているみたいだから、よその子とデュエルすると良い刺激になるんじゃない?」
「ええ。なんてったって、プラクサスで新たにチャンピオンになった子と、それに追いすがった子たちだからね」
「へえ~? なんか向こうで、そんなことが起きたのは知っていたけど、まさかそんな子たちを連れてくるなんてねえ」
「でも、オバアんとこのヤツも強いんでしょ?」
「ああ、結構強い子が現れてねえ、それは……」
「君たち、やめなさい!」
「?」
突然、遊太たちの後ろから声がした。その子は、遊太たちより1~2才くらい上の男の子であり、坊主頭が特徴的であった。
「おや……?」
「白昼堂々、か弱いおばあさんを取り囲んで、どういうつもりなんですか! 恥を知りなさい!」
「ええ~?」
そんなことを堂々と言われたものだから、遊太たちは一瞬固まる。そうして、遊太たちは改めて弁解する。
「誤解だよ誤解。このおばあさんと僕らのお姉さんが知り合いでね、久々に会ったからいろいろ話をしていたんだ」
「え……」
「そうだよ」
遊太の説明に、オバアのその一言を付け足したことで、その坊主頭の少年は固まる。
「君の、早とちりっ」
「……」
オバアのとどめの一言で、顔を赤くして汗を垂らす少年。
「ご、ごめんなさいごめんなさい! つい、誤解してしまいましたあ!」
何回もお辞儀をして、謝罪する少年。それを、オバアと呼ばれたおばあさんは優しく諭す。
「いいんだよ。誰にだって間違いはあるんだから」
「オバア、この子ってあなたがデュエルを教えた子?」
「ああそうだよ。この子は赤井剣太郎(あかいけんたろう)君、うちじゃ結構強い子なのさ」
「へえ~、君が?」
「コイツが? なあ遊太、コイツ……」
「えっ、遊太!?」
菊姫が遊太に話しかけた時、剣太郎は目の色を変えて遊太に詰め寄ってくる。
「君が六道遊太君? 嬉しいなあ、デュエルを初めてたった1ヶ月くらいでプラクサスの頂点に立ったていう、スーパールーキーだよね!」
「あ、うんそうだけど……」
「僕と同じだね! 僕も1年前に始めたばかりなんだけど、あちこちの大会で優勝したりしてるんだ!」
「へえ、そうなの!? すっごーい!」
「僕もオバアからデュエルを教えてもらって、それから上手くなったんだ!」
「僕もみんなにデュエルを教えてもらって、それで上手くなったんだ!」
「へえ~君も!」
いつの間にか剣太郎と遊太はいつの間にか二人で盛り上がり、みんなはそれに取り残される。
そうして、ひとしきり話を終えた後、
「そうだ! 今日これから、僕らがいつもデュエルしているとこに来ない? きっとみんな、喜ぶと思うよ!」
「うん! それで、そこはどこにあるの?」
「この先のお店だよ。近くだから、すぐいけるよ!」
「本当!? それじゃあ……」
「待って、遊太君」
勝手に盛り上がる遊太と剣太郎を、制止する烏間。
「この子の言う『近く』は、結構遠いわよ。すぐには行けないわ」
「そうなの?」
「でなきゃ、オバアがこんなとこで立ち往生してないわよ。5~6キロくらいかしら」
「そうなの!?」
「歩くには辛いじゃねえか」
「だから、車で来たのよ。ささ、みんな。大八車を動かして、ワゴンにつないで」
「え、僕たちがやるの!?」
「ええ、やんなさい」
「ありがたいねえ。この年になると、カードを運ぶのも辛くて、そこの穴に引っかかったりして……」
「はい、わかりました……」
そういうわけで、遊太たちは苦心して大八車を引っかかってた穴から出して、ワゴンに大八車つなげてあぜ道を走り出した。
「にしても驚きましたよ。こんな田舎町に、結構なデュエリストがいるなんて」
「ああ。みんなあたしたちのかわいい子供たちさ。なかでも、剣太郎を含めた4人の子は、とっても強い子よ。都会の方じゃ優勝もしてる」
「オバアさんが教えたからじゃん?」
「ああ。あたしも昔は、プロデュエリストとしてならしたものさ。だけど老いぼれた今じゃ、駄菓子を食べながら子供たちにデュエルを教えるのが唯一の楽しみさ」
「駄菓子?」
「あたしの店さ。ここら辺の子はみんな入り浸ってる」
そうしてやってきた、『よろずや』と書かれた古めかしい看板がかかった駄菓子屋があった。店の目の前には、遊太たちと同じくらい、または幼い子供たちがたくさんいた。その中で、異彩を放つ子供が三人。
一人は子供たちのなかで一番太っちょな子。もう一人は腰まで届く長い黒髪の女の子、ちょっとぎょろ目。三人目は子供たちの中で一番背の高い男の子だった。
そこに大八車を引いてやってきた遊太たち、最初は大八車をワゴンが引いてきたに興味津々だったが、中からオバアが出てくると、一斉にオバアに駆け寄ってくる。
「わー! オバア!」
「やーっとオバアがカードを買ってきてくれた~!」
「これでやっと、新しいカードが買える~!」
その光景に、遊太たちは驚く。
「新しいカードを買えるのが嬉しいのは、どこでも共通なんだね」
「あの子たちは特に、なのよ」
「なんでさ? 烏間さん」
「だってこの町、デュエルモンスターズのカードが買えるのはここだけで、新しいカードが買えるのは発売日から一ヶ月先になってようやくだから」
「そんなに!?」
「あのオバアが一人でやってるから、どうしてもそうなっちゃうのよね」
「へえ~」
「僕がさっきオバアのとこに行ったのも、オバアが来るのが遅かったからなんだ。だから、こうして……」
「剣太郎、さっきいなくなったのはそれが理由だっただか」
「剣ちゃん、相変わらずこういうのにはめざといのね」
「誰よりも先に新しいカードがほしい、お前らしい理由だぜ!」
「あー。バネさん、チヨちゃん、クマゴロー! 僕さ、ここに来る途中でこの子たちに会ったんだよ! プラクサスシティの六道遊太君たち!」
「よろしく!」
「よろしくじゃ~ん!」
「ほー、こいつらが? 結構強いデュエリストがいるっていう、プラクサスシティのデュエリストだか?」
一番太っちょの子供が、遊太たちを見下ろす。
「おいおいクマゴロー、都会人がそんなに珍しいか?」
「だって、オラたちの所じゃ全然見ねえ子だし、珍しいだよ」
「でもクマちゃん。わたしたちあの子たちとそんなに変わらないわ、同じ子供なのね」
「オラたちは中学生だよ」
「クマちゃんは二年で、あたしも二年よ。ついでにバネちゃんは三年生で、剣ちゃんは一年よ」
「中学生かよ、4人とも!」
驚く菊姫たち。自分たちの体格差に、少々引け目を感じるが、遊太は。
「剣太郎君って中学生なの!? すごいなー!」
「うん! 今年上がったばかりなんだ!」
といった具合に、遊太と剣太郎は自分たちで盛り上がっていた。
「あいつら……」
「なーんか、二人で勝手に盛り上がっているじゃん?」
「なんとなくですが、ウマが合うのでしょうか?」
「初めて会ったばかりなのに、なんであんなに……うらやましいデス!」
といった具合に、遊太たちのことも眺めていた。
「はいはい、そこまでね。まずはみんなにカードを売らなきゃ。さて、雛姫ちゃん手伝ってね」
「は~い。それじゃあ、遊太くんたちはその間、デュエルでもしててね」
大八車から段ボールを降ろし、店の奥へと入る烏間。そして、遊太たちは剣太郎たちに向き直る。
「……オバアさんの話だと、君たち4人がこのロカクタウンで強い人なんですか?」
「はい! 僕たちはオバアから直々にデュエルを教えてもらって、強くなったんだ!」
「剣ちゃん、一人ではりきりすぎなのね。あたしは雨崎千代(あめざきちよ)って言うのね」
「俺は赤羽根信士(あかばねしんじ)だ! ここいらの子供じゃ一番の年長者だ!」
「オラ、森野熊五郎(もりのくまごろう)だ。よろしく。ちなみに、デュエルとは関係ないけどオラちびっ子相撲じゃ一番強いだ」
「そうなのか……さっき聞いたけど、君たちもD1グランプリ出るの?」
「ああ、当然だ!」
4人は、D1グランプリ専用のデュエルディスクとウォッチを遊太たちに見せつける。
「ということは、あなたたちもポイントを得るために頑張っているのですか?」
「おう!」
「んだ!」
「けれど、この町じゃそんなヤツなかなかいねがら、ぜーんぜんポイントが集まらねんだ」
「そうなんだ! じゃあ、ここで俺たちとデュエルしたくてたまらないんだな!」
「そうだ! 全員まとめてかかってこい!」
「戦意にあふれてるじゃん……!」
「あふれすぎデス! でも、あんまり好き勝手にやっちゃダメデスよ! というわけで、表を作りマシた~!」
「早っ!」
ユイが作った対戦表を見ると、遊太たちの名前とロッカクタウンの4人の名前が書かれていた。だが、4人対6人では多すぎたのか、少しいびつな対戦表になっていたが。
最初の対戦相手は、知多VS熊五郎となっていた。
「おっ! 早速俺からやらせてもらうじゃん! 新デッキの強さ、確かめてみたかったじゃん!」
「オラもこの町では名の知れたデュエリストだ、いきなり負ける訳にはいがねだよ!」
熊五郎と知多がディスクを構える。それにつられて、周りの子供たちがはしゃぎ立てる。
「なんだなんだ!?」
「クマゴローがデュエルするんだって!」
「すごい! どっちが勝つんだろう!?」
「クマゴローに決まってるよ!」
といった具合に、少々アウェーな君間を醸し出していた。一方、遊太たちは。
「頑張れー。ほら、みんなも!」
「ボク様はお姉ちゃんの応援以外はしないんだぞ!」
「知多のイモータルデッキ、どんな具合かこの目ではっきり見せてもらおうじゃねえか」
「そういえばこの間、デッキを変更したって言ってましたからね……どんなデッキなんでしょう?」
「あらあら……遊太君以外皆さん応援してないですわね」
といった具合に、各々応援よりも知多のデッキが気になっていた。


「行くじゃん!」
「行くだよ!」

「「ルールはマスタールール3! ライフポイントは8000!」」
「「デュエル!」」



第七十五話。終わり。
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