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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第三十四話「いざ、帝国へ!」

第三十四話「いざ、帝国へ!」 作:イクス

第三十四話「いざ、帝国へ!」


遊太は大鴉とデュエルした後、自分の家へと帰って来た。
「ただいま、お母さんお父さん!」
「ああ、お帰り遊……太!?」
父と母が、遊太の様子を見て驚く。なぜなら、ついさっきまであんなにも落ち込んでいた息子が、元気はつらつとした表情していたことに。
「ど、どうしたんだい遊太? さっき友達に連れられて、行きつけのゲームショップに行った時は、この世の終わりみたいな顔をしていたのに……」
「悩み事があったようだけど、大丈夫だったの?」
「うん、もう悩み事は全然無くなった。大丈夫だよ!」
「あ、そうなの……」
「遊太が大丈夫なら、それで良いんだけど……」
「んじゃ、僕部屋で大会の準備するから!」
そう言って、遊太は部屋に入った。それを、父幸市と母幸子が見て。
「よかったあ……悩みが解決したみたいで。遊太が落ち込んでいる姿なんて、あんまり見たくないからねえ」
部屋に入った遊太は、自分のデッキに向かい合い、デッキに宿る『イクスロードナイト』達と話をする。
「ねえ、皆。あのビデオのこと、覚えているよね? ロベルトさんを取り戻したかったら、帝国に来いと……その挑戦を、今こそ受けて立つ時だよね!」
「ああ。さっきまではお前のことを考えずに色々言ってしまったが、今はお前と気持ちが一つになっているよ。帝国へ行き、闇の王からロベルトを取り戻すのだ! そのために……デッキを今以上に改良する必要がある。それまで、改良を重ねるのだ!」
「私達の能力を、最大限生かせるような構築にな!」
『イクスロードナイト』達とも心を通わせた遊太は、早速デッキの改良にとりかかるのだった。


そうして、ミナコ社が主催するイベント、『決闘者の帝国』が開かれる日がやってきたのだった。
「いよいよだね、皆」
「ああ。帝国へ行き、闇の王を倒してロベルトを倒す! 我々の目的は、これだけだ」
「うん。さてと……もうそろそろ、プラクサスシティから帝国の会場、デュエルランドへと向かうバスが出る時刻だね。行こう! と、その前に……お父さんお母さんに、行ってきますのあいさつしなきゃね」
遊太は部屋から出て、父である幸市と母幸子に。
「じゃあ、行ってくるね。お父さん、お母さん」
「ああ、気を付けるんだぞ遊太。そして……頑張って来いよ!」
「精一杯頑張るのよ!」
「わかった。じゃ、行ってきまーす!」
父と母への挨拶も終え、家から出る遊太。その姿を見た幸市と幸子は。
「なんか遊太……悩みを振り切って、ある何かに向かって一生懸命といった具合だな」
「本当、良いことよねえ」
遊太が家を出た時、プラクサスシティ代表のメンバーが乗る予定のバスが出るロータリーでは、知多と真薄が心配していたのであった。
「なあ真薄……この間から、遊太がちょっと変じゃん? 前はこの世の終わりみたいにどんよりしていたのに、次は俺らが話しかけても、ブツブツとデュエルに関すること言ってるだけじゃん?」
「ええ、変ですよねえ。落ち込んだり、何かを考え込んでいたり……。どうしちゃったんでしょう?」
そう言った具合に、遊太の心配をしている知多と真薄だったのだが、そこに横槍を入れる人間が一人。
「オイ、そこに茶々を入れるようで悪いが、お前らちょっと人の事を心配しすぎなんじゃねえのか?」
「アキラ君! 確かに、それはそうなんですが……」
「アイツにとっての問題は、アイツ自身が解決すべきだろ。それに、アイツは簡単に潰れるタマじゃねえ。俺が証明する」
「アキラ君……」
「ええ、アキラ君の言う通り、遊太君は思っているより心配いらない子ですわ……」
「カリンちゃんまで! うむむ。遊太の奴、意外に認められているじゃん?」
「あ、噂をすれば……!」
アキラ達が話をする中、遊太がやっとやって来た。その顔は、非常に晴れ晴れとしたものであった。
「遊太ぁ~! この間までどうしたんじゃん? 落ち込んだりブツブツ考え事してたり……何かあったのかじゃん?」
「ああ、ちょっとね……。これから行われる、帝国のデュエルについて色々……」
「やっぱり、遊太君は心配いらない子でしたね。今はもう、すっかり晴れ晴れとした表情になっていて……」
「うん! お陰で悩みはきれいさっぱり解決さ! これから帝国でのデュエルを……勝ち上がっていく次第さ! ところで、菊姫はどうしたんだい? アイツまだ来てないみたいだけど」
「そーなんですよ。菊姫さん、さっきから待っているのに全然来ないんですよ。何かあったんでしょうか?」
「アイツは流石に、何事も無いとは思うが……どうしたんだ? アイツ」
遊太達が菊姫の事を話していると、またしても噂をすれば影といった所か、菊姫の声が聞こえてきた。
「オイお前ら! お前らは参加者じゃねーんだから、帝国来ても意味ねーんだよ!」
「嫌ですアネゴ~!」
「絶対ついていきます~!」
遊太達が菊姫の姿を見た時、その姿は非常に滑稽なものだった。なんと、菊姫の足に取り巻きである二人組、岩ノ井と鏡山が纏わりついているのだった。そのせいで、とても歩きづらそうだった。
「オイオイ……」
「何やってんだ、アイツ……」
「ねー菊姫、どうしたの?」
「どーもこーもねーよ。コイツらアタシが帝国行くからって、自分達もついていこうとしてんだ! こいつらは参加者じゃねえあから、無理だって言ってんのに!」
「アネゴ~!」
「お供させてください~!」
「といった具合に、聞かねえんだコイツら……」
「ああ~……」
といった具合に、遊太達は呆れるのだった。
「全員、集まりましたね?」
呆れた遊太達の前に、バスが停まってバスの中から黒服の人物が現れる。至って普通の人なのだが、どこか生気の無い。そんな印象を受けた。
「プラクサスシティ、代表選手6名。六道遊太、一条寺菊姫、知多泉、広野真薄、榊原夏鈴、八神アキラ選手ですね? 我がミナコ社のイベント『決闘者の帝国』出場のためお迎えにあがりました」
「やっとか……」
「うん、いよいよじゃん?」
遊太達が覚悟を決める中、菊姫はというと。
「オイお前ら! アタシを無視してバスに乗り込もうとするなあっ! この二人どうすりゃいーんだよ!」
「……係員さん、どうやら菊姫の付き添いで行きたい人がいるみたいなので、一緒に連れて行っても良いですか?」
「ええ、問題ありませんよ。そこの二人も、少々イレギュラーですが連れて行きましょう」
「ホントですか!?」
「マジッスかあ~!? やったー!」
帝国へ行っても良いことがわかり、二人で一斉に飛び上がる岩ノ井と鏡山。解放されて、やっと肩の荷が降りた様子だった。
「それに、どうせ皆さまはあのお方の贄になるだけですから……」
「え、なんですか?」
「いえ、何でもありません」
「……」
係員が発した言葉は、大半の人には聞こえなかったようだったが、遊太にはしっかりと聞こえていた。あのお方。それは闇の王がしきりに言っていた、奴の上にいると思われる、謎の人物。『イクスロードナイト』と遊太は、互いにアイコンタクトをする。
「皆……」
「ああ」
「さあさあ、帝国へ行きましょう。イベントの開催は、もうすぐですよ」
「はーい、じゃあ早速乗り込もう!」
「「おーっ!」」
遊太のその言葉によって、一斉にバスに乗り込む遊太達一堂。ついでに菊姫の取り巻き二人も。
「それでは、『決闘者の帝国』の舞台、デュエルランドへ出発進行です!」
その言葉と同時に、バスが動き出す。ロータリーを抜け、そのまま道路へと走り出して行った。


バスはしばらく進んだのち、高速道路へと入って行った。しばらくして、帝国に着くまでの間、何もすることが無い遊太一堂は、それぞれ何かをし始めるのだった。
「なーなー、全国各地から優秀なデュエリストが沢山来るんだろ? 一体どんな奴が来るじゃん?」
「きっと、誰もかれも強いんでしょうね。少なくとも、殆どがカリンちゃんクラスか、遊太君クラス……」
「ほえ~っ、やっぱり強い連中ばっかり来るじゃん? でも、その強い連中の中に、俺達も入っていると思うとゾクゾクするじゃん?」
「はい。ですけどやっぱり、実力で勝たなくちゃダメですよねえ」
といった具合に、知多と真薄が話をしていれば。
「アネゴ~! お供出来て光栄です~」
「ったく……お前ら、本来は参加者じゃないってことを忘れるなよ? 本来行くのはアタシだけで、お前らは来ないってこと!」
「そうはいっても、俺達、アネゴの為なら火の中水の中! どこへでもついていくつもりッス!」
「あ、でも火はダメかも……」
「ったく、アタシを好き過ぎるのも困りものだな……」
取り巻きの岩ノ井、鏡山の対応に追われる菊姫。
「…………」
一体何を見据えているのか、ただ黙って外の流れる景色を眺めているアキラ。
そして。
「ロベルトさんを……絶対に……」
遊太は一人、決意を固めるのだった。その言葉を聞き、こっそり遊太に近づくカリン。
「遊太君……」
「あ、カリンちゃん。どうしたの?」
「最近遊太君に会えませんでしたが、この時遊太君の表情を見て、何かがあると思いましたわ。遊太君、一体あなたに何が起こりましたか?」
「ああ、ちょっとね……」
「言ってください。少なくとも、私にも関係ありそうなことと、ロベルトさんから……連絡が無いことに」
「じゃあ言うよ。『イクスロードナイト』達も、サフィラに言ってあげて」
「ああ、了解した」
近寄って来て、事情をわかってくれそうなカリンに、遊太は事情を話した。
事情を一通り話した後、カリンは。
「なるほど、そんなことが……サフィラ」
「ええ、この世界にも来てしまったようね。私達の世界を襲った奴らが……」
「しかも、ソイツはロベルトさんを攫って、これから行く帝国に集められた精霊を、一手に集めようとしている……ロベルトさんも、精霊も助けなきゃいけない」
「……わかりました。私も、出来る限り遊太君のお手伝いをしたいと思います。どれだけできるか、わかりませんが……」
「うん、ありがとう。おっ、見えてきたね。帝国の舞台になる、デュエルランドが……!」
バスの外に、観覧車やジェットコースターなどの遊具が見え、近づいていくにつれてデュエルランドの看板が見えた。そして、看板眼の前でバスが止まる。
「会場となるデュエルランドへ着きました。それでは皆さん、バスから降りて会場に入ってください」
「んじゃ、行くか!」
遊太のその言葉を皮切りに、次々とプラクサス出身のデュエリストがバスから降りて、会場となるデュエルランドへと入っていく。
知多と真薄は楽しみの為に、菊姫は取り巻きを鬱陶しがり、アキラは無言で会場を見据え、遊太とカリンは黒い陰謀に立ち向かう。
それぞれの思いを胸に、彼らは帝国へと足を踏み込んで行った。

第三十四話。終わり。

次回、三十五話より、第二章『決闘者の帝国』編開始!
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