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HOME > 遊戯王SS一覧 > 第六話「戦いの幕開け」

第六話「戦いの幕開け」 作:イクス

第六話「戦いの幕開け」


プラクサス小学校5年B組。既に放課後になり、教室の中にいる生徒達は、既に帰宅ムードであった。だがしかし、一人だけ帰り支度をしていない人間がいた。
六道遊太である。机に頬杖をついて、何か考え事をしているようであった。
「なんで、ロベルトさんは僕に『ロードナイト』を……?」
そう、ロードナイトの事である。遊太がロベルト・フランシスから貰ったロードナイトのカードは、どうも普通じゃないからだ。
デュエル中に聞こえる声、夢で見た『イクスロードナイト・アルファ』との会話、カリンから聞いた精霊の話。これらを聞くと、あのロードナイトには何かあるのではないのかと、考えてしまう。
そして、そのカード達を何故あのロベルトさんは自分に渡したのか。そういったことも、考えずにはいられなかった。
「ホントに、なんであのカードを?」
「おーい遊太、一緒に帰ろうじゃん? 今日は菊姫が俺達を凄い所に連れて行くって言うから、一緒に行こうじゃん?」
「ホントになんで……」
「おーい遊太、何を考えているんだ? もしもーし?」
「……」
知多の呼びかけも、全く耳に入らない程考え込む遊太。それを見かねてか、知多はしびれを切らして。
「おい、遊太! 俺の話聞いているのかよ!」
「あっ、うう!?」
いきなり後ろで大声を出されたものだから、びっくりする遊太。そばかすがある顔が、遊太の目に入る。
「なあ、どうしたんだよ遊太? 何か思いつめたような顔して……何かあったのかじゃん?」
「いや……ちょっとね。僕の持っているカードについて、考えていただけ」
「ふーん? 持っているカードについて……ねえ?」
「実を言うと、僕の持っているカードは普通のカードじゃないんだ。恐らく、君達からすれば凄く羨ましく思うカード……だから、秘密にしておいたけど……」
「なんだよ、そんなこと? そんなことより、菊姫が俺達に伝えたいことがあるそうだから行こうぜ! そんな辛気臭いこと考えているより、明るく楽しく行こうじゃん? ほら、行こうぜ!」
「あ、うん……行こうか」
遊太が少し暗い顔をしていたようなので、知多に連れて行かれた。遊太は、少し乗り気ではないようだが、とりあえず、知多についていくことにしたのであった。

そして、知多に連れられて来た遊太は今、菊姫に連れられている最中であった。その隣には、真薄や知多、菊姫の取り巻きもいる。
「ねえ、菊姫。今日は僕達を一体何処へ連れて行くのさ?」
「ああ? それは来てからのお楽しみ。まあ、行けばわかるさ。とりあえずはついて来いよ」
「いやー、楽しみじゃん?」
「一体、何を見せてくれるんでしょうねえ」
そうして、菊姫に連れられて来た場所はというと……。
「とうちゃ~く」
「うわあ、大きな建物だなあ。プラクサスシティって、こんなところもあるの?」
「ああ、ここはプラクサスアリーナと言って、プラクサスシティにおける最大のイベント施設だな。プラクサスでイベントと言ったら、大体ここと言っても過言じゃない。最大5万人も観客が収容できる」
「で、ここで何かイベントでもあるの?」
「そう、ここでアタシたちデュエリストにとっての重大イベントの開催が、発表されるのさ」
「俺達デュエリストにとっての?」
「重大発表、ですか」
「そうだ、知多や真薄、アタシに遊太とデュエリストにとっては、凄く重要な発表なんだぞ」
「そんなに重要な発表なの?」
「まあ、とりあえず来てみろって」
そう言われて、中へと入った遊太達。中は、既に人でいっぱいであったが、どうにも違和感があった。
「ねえ、菊姫。この中にいる人達って、全員僕達とそんなに年の変わらない子供達ばっかりだね」
「当たり前だろ、なんせこの発表は、アタシ達ぐらいの子供を対象に発表を行うらしいからな」
「そうなの?」
「何はともあれ、楽しみじゃん?」
「ええ、あの人も出てくるらしいですしね」
「あの人?」
「デュエリストなら、知らない人はいない、あの人ッスよね、アネゴ」
「あ、始まるみたいですよ、アネゴ」
その言葉と同時に、会場がフッと暗くなる。それと同時に、放送アナウンスが鳴る。
「えー、プラクサスアリーナにお越しの少年少女の皆さん! いよいよ皆さん向けの重大発表を行います! そして、その発表を行うのは、私ことロベルト・フランシスです!」
ロベルト・フランシス。その名前が出ただけで、会場がどよめく。その声の大きさに、地震でも起きたような揺れが起こった。
しかし遊太は、ロベルト・フランシスと聞いて驚くのであった。
「ロベルト・フランシス……まさかあの人が、ここに来るなんて……!」
「おや? さしもの遊太君も、ロベルトさんには食いつくのかじゃん?」
「いや、違うよ……ただ今は、あの人に会って聞きたいだけなんだ。あの人が、ロベルトさんがなんで僕にこのカード達を渡したのかって!」
「ええええ~っ!!??」
そのことを知多、真薄、菊姫そして取り巻きの二人に語った時、五人は凄く驚いた! そして、遊太に詰め寄る。
「オイオイオイオイオイオイ! お前、あのロベルトさんからカード貰ったのかよ!?」
「嘘だろ!? マジなの!? それだとしたら、物凄く凄い事じゃん!?」
「そりゃあ僕だって気になりますよ! どうしてロベルトさんが遊太君にカードを渡したのか! 僕だって気になりますよ!」
「アネゴの言う通りッス!」
「アネゴの言う通りですよ~!」
「ま、待ってよ皆……僕だってそれが知りたくてロベルトさんに話を聞きたくて……」
「それでは、発表をしたいと思います!」
遊太はまたしてももみくちゃにされるが、ロベルトがまた話を始めると、すぐにロベルトの所に向き直った。
「今回皆さんにお伝えしたいことは、皆さん小学生に対してのイベントです! 今日から二週間後、このプラクサスシティでデュエルモンスターズの大会を行います! 参加条件は、小学生という条件を持っていれば、他の条件は無し! 予選会は、大会の前日に行います! 皆さんこぞってご参加ください! 主催は、この私、ロベルト・フランシスとミナコ社です!」
どわあああっと、またしても会場が沸き立つ。ここにいるのは、大体小学生。それらを対象にした大会が開催されるとなると、デュエリストとしては沸き立たずにはいられないだろう。
「た、大会だとおおお!? アタシ達向けに、大会が開催されるなんて、これは出るしかないじゃあないかあああ!」
「俺も、大会となったら凄く出たくなるじゃん! やってやろうじゃん? 見せてやろうじゃん!」
「ぼ、僕だって、大会にはあんまり出た事ありませんけど、ここまで大きな大会には、出たくなりますよ!」
「アネゴ~! 頑張ってくださーい!」
「俺達も、応援するッスよ~!」
(知多や真薄君、菊姫は出るとして、取り巻きの二人は応援するだけなのか……にしても、凄い盛り上がり)
そんな疑問を抱きながらも、デュエルの大会を開催するだけで、こんなにも盛り上がるものなのか……と感心する遊太。それと……。
(ひょっとしたら、ロベルトさんからあのカードの秘密を聞けるかもしれない。後で、訳を聞きに行かなきゃ!)
会場にいる皆が沸き立つ中、遊太は一人冷静だった。全ては、ロベルトから訳を聞くために。


そして発表が終わってアリーナの外に出た後、遊太は自分が持っている『ロードナイト』のカードは、作った人物があの高名なカードデザイナーであるロベルト・フランシスであり、親切にしたらそのカードを貰えたことを伝えた。
「……という訳なんだ」
「まさかあのロベルトさんが作ったカードを遊太君が貰ってたなんて……」
「いやあ、まさかそんな有名な人から貰ったカードだったなんて…凄く畏れ多いッス」
「よくわからないですが、とても有名な人から貰った…ということで良いですか?」
「けどそんな偶然ってあるのかじゃん? たまたまぶつかった人がかのロベルトさんで、しかも親切でカード全部貰っちゃうなんて……」
「事実は小説よりも奇なりって、こういう事を言うんだなあ……」
あまりの偶然の一致により、驚きを隠せない友達一同。当然だ、まさか友達が使っているカードが、有名なカードデザイナーの作ったカードだという事実。そしてそのカードを本人から貰ったということ。驚かない方がおかしいくらいだ。
「正直言って僕も驚いてる、まさかカードデザイナー本人からカードを貰うなんて思わないもの……」
しかし、遊太は引っ掛かる事を一つ述べた。
「けど、僕は考えているんだ。どうして、始めたばかりの僕にそんな大事なカードをあげたんだろう? って。カードデザイナーから直々に貰って、しかもそのカードは世界に一つしかないオリジナルのカード……」
「何故そんな重要なカードを、僕なんかにあげたのか?あげるんだったらもっと、大会に優勝した凄い人とか……と考えちゃうんだ」
「た、確かに……」
遊太がそう述べて、友達一同は考える。しかし、転機は訪れた。
「一体どうして……あっ!?」
遊太が遠目から見たのは、ロベルト・フランシス。アリーナの人と会話しているようである。
「……!」
「あっ、オイ!何処へ行くんだよ!?」
遊太はロベルトの所へ走り出した。自分に何故あの『ロードナイト』のカードを渡したのか、それを聞きたかったから。
そしていきなり走り出した遊太を追いかける友達五人。いきなり走り出したら訳を問いたくなる。友達だから、心配になったのである。
「あのっ!ロベルトさん!」
「あっ、君は……あの時の六道遊太君」
やっとの思いでロベルト・フランシスの所へ辿り着いた遊太。息切れしながらも、自己紹介をする。
「あの……ぼ、僕、あなたに聞きたいことがあるんです! それで、ここまで来ました!」
「どうしたんだい? なんでも言ってごらん?」
「なんで僕なんかに、『ロードナイト』という貴重なオリジナルで、公式からも発表されていない『ロードナイト』のカードをあげたんですか?僕なんかより、もっと相応しい人がいるんじゃ……」
「ほう、例えば?」
「大会に優勝した強い人とか…」
その言葉に、フゥッと息をついてから言う。
「あのさ、デュエルの強い人がこのオリジナルの『ロードナイト』のカードを持つ資格が、本当にあると思うのかな?」

「えっ? どういうことですか?」
「フゥ……じゃあ君、今デュエルに対してどんな事思ってる?」
「えっと…凄く楽しいです!色んな人とデュエルするのが楽しくて、もっと色んな人とデュエルしたいと思ってて……」
「……うん、それなら良いんだ」
「え?」
「遊太君、良かったら今回発表した大会に出場してみたらどうだい?」
「えっ、えっ?」
「その大会で良いデュエルをしたら、どうして君にこの『ロードナイト』を渡したのか話してあげても良いよ」
「良い……デュエル……?」
「勝ち負けは関係ない、これから行われる大会で良いデュエルが出来たら、教えてあげても良いよ」
「わ、わかりました!頑張って良いデュエルをしたいと思います!」
「じゃあ、頑張りなよ」
そう言ってロベルト・フランシスは去って行った。
菊姫達はその一部始終を聞いていたが、ロベルトが去ってから口を開いた。
「おい遊太、さっきの話アタシらも聞いてたけど……まさかアンタ!」
「うん、僕はあの大会に出場するよ、内容によっては聞けないかもしれないけど……僕は、あの大会に出場する!」
遊太のその決意に、言葉を同じくする友達全員。
「やれやれ、動機はどうあれ出場するんなら、アタシも出場させてもらうよ! どうせ大会に出場するんだったら、徹底的にやらなきゃいけないしな!」
「ぼ、僕も! 僕も一緒に参加します! 僕実は、まだ始めて日が浅いですが、僕のC・HERO達でやってみます!」
「俺も参加するじゃん! 大会にはあんまり出場したことないけど、やったろうじゃん!」
「皆……」
皆も大会に出場する事を知って、更に大会への思いを加速させた遊太。
「よし! まずは選考会に向けて特訓だ!」
「おーっ!」
ミナコ社が主催する、デュエルモンスターズのジュニアユース大会に出場することになった遊太達。はたして、遊太達は大会でどれだけ力を発揮出来るのか。
遊太は何故あの有名なカードデザイナーであるロベルト・フランシスが『ロードナイト』のオリジナルカードを遊太に渡したのかということを本人の口から聞けるのか。
そして遊太達は、大会に出場した猛者達にどこまで立ち向かえるのか!?

第六話。終わり。
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ター坊
ロードナイトの真相はロベルトさんのみ知る。そして答えはデュエルの中にあるという王道展開ですね。
波乱(?)の大会編、楽しみにしてます。 (2018-02-18 20:22)

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